JP3885513B2 - ポリマ導波路及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリマ導波路及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリマ導波路は、簡易な方法で作製できること、大面積サイズ化が容易なこと、低コスト化の可能性があること、等の特長を有しているために実用化が期待されている。このポリマ導波路に用いられるポリマ材料としては、アクリル系、エポキシ系、ポリイミド系、シリコーン系、ポリシラン系等の材料が検討されている。これらのポリマ材料には周囲の温度変化に対して、屈折率や熱膨張係数等の特性が変化しにくいことが望まれている。このため、これらのポリマ材料の中でも特にポリイミド系、エポキシ系、ポリシラン系のポリマ材料が注目され、改良が行なわれている。
【0003】
ポリマ材料を改良する方法としてはポリマ材料に紫外線を照射することにより3次元導波路パターンを形成する例(特開平6−222234号公報参照。)、アモルファスポリシランを用いる例(特開平11−287916号公報参照。)、直鎖型ポリシラン又は分岐型ポリシランを用いる例(特開平8−267728号公報参照)等が挙げられる。
【0004】
図15は従来のポリマ導波路の外観斜視図である。
【0005】
同図において、50はポリシロキサンからなるコアを示し、51はメチルフェニルポリシランからなるクラッドを示す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来技術には以下のような問題がある。
(1) 屈折率が周囲温度によって大きく変化する。このためにこのようなポリマ材料を用いたポリマ導波路からなる光回路の光学特性(伝搬モード、パワー分布、波長特性等)が大幅に変化してしまい、所望の性能が得られない。
(2) ポリマ導波路の近傍に200℃前後で電子部品や光部品を半田実装する際に、ポリマ導波路の屈折率の値が初期の値から別の値に変わってしまい、周囲温度を元に戻してもポリマ導波路の屈折率値が元の値に戻らない。このため、(1) に示したようなポリマ導波路で構成した光回路の光学特性が変わってしまう。
(3) 直鎖型ポリシラン材料を用いた膜に紫外線を照射して3次元の導波路を形成する方法が提案されているが、(1) 及び(2) のような問題や屈折率の偏光依存性の問題等があり、実用化するまでには至っていない。また紫外線を照射してポリマ膜の屈折率を反応性よく大幅に変化させようとしても屈折率変化が照射光エネルギーに対して不連続に変化する。また大きな屈折率変化を得るためには照射エネルギーを高くしなければならない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、周囲温度が変化しても光学特性の変化が少ない低損失のポリマ導波路及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明のポリマ導波路は、低屈折率のクラッド層と、クラッド層で覆われた略矩形断面形状の高屈折率のコア層とを備えた導波路において、コア層及びコア層の両側面の側面クラッド層は分岐型ポリシラン化合物にシリコーン化合物を含有した材料で構成されているものである。
【0009】
本発明のポリマ導波路は、低屈折率のクラッド層と、クラッド層で覆われた略矩形断面形状の高屈折率のコア層とを備えた導波路において、コア層及びコア層の両側面の側面クラッド層は分岐型ポリシラン化合物にトリクロロメチルトリアジン系光酸発生剤を含有した材料で構成されているものである。
【0010】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路の側面クラッド層は紫外線の照射前と照射後とで少なくとも1%の比屈折率差が得られるように紫外線照射で屈折率が低下させられているのが好ましい。
【0011】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路のコア層は紫外線が照射され、側面クラッド層の屈折率よりも高い値に保たれているのが好ましい。
【0012】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路のクラッド層及びコア層は半導体、ガラス、磁性体、プラスチックス、あるいはこれらの複合体からなる板状部材の上に形成されているのが好ましい。
【0013】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路はクラッド層としてシリコーン化合物が用いられているのが好ましい。
【0014】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路はコア層及び側面クラッド層の上面、下面あるいは両面に紫外線カット層が形成されているのが好ましい。
【0015】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路はコア層の上側の上部クラッド層及びコア層の下側の下部クラッド層はトリクロロメチルトリアジン系光酸発生剤とポリシリコン化合物とシリコーン化合物とを含有する材料が用いられ、紫外線が照射されて屈折率が低下しているのが好ましい。
【0016】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路の分岐型ポリシラン化合物は、Si原子以外に炭化水素基、アルコキシ基、又は水素原子と結合している化合物であるのが好ましい。
【0017】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路の分岐型ポリシラン化合物は分岐度2%以上、50%以下の化合物が用いられているのが好ましい。
【0018】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路のシリコーン化合物は架橋性、あるいはアルコキシ基からなり、ポリシラン化合物に対して40〜90wt%の配合比で添加されているのが好ましい。
【0019】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路は光酸発生剤としてトリクロロメチルトリアジン系の発生剤を用い、発生剤がポリシラン化合物に対して1wt%以上、5.5wt%以下の配合比で添加されているのが好ましい。
【0020】
本発明のポリマ導波路の製造方法は低屈折率の下部クラッド層の上面に分岐型ポリシラン化合物と架橋性あるいはアルコキシ基のシリコーン化合物とを含有する高屈折率のポリマ層を形成する工程、ポリマ層の上面に所望パターン形状の描かれたフォトマスクを介して紫外線を照射して高屈折率の略矩形断面形状のコア層とその周りの側面に低屈折率に変化した側面クラッド層を形成する工程、コア層及び側面クラッド層の上面に低屈折率の上部クラッド層を形成する工程、上部クラッド層の上面にUVカット層を形成する工程からなるものである。
【0021】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路の製造方法は、低屈折率の下部クラッド層の上に分岐型ポリシラン化合物と架橋性あるいはアルコキシ基のシリコーン化合物とを含有する高屈折率のポリマ層を形成し、ポリマ層の上に低屈折率の上部クラッド層を形成し、上部クラッド層の上にフォトマスクを配置して紫外線を照射して高い屈折率の略矩形断面形状のコア層とコア層の両側面に低屈折率の側面クラッド層を形成した後、上部クラッド層の上にUVカット層を形成するものである。
【0022】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路の製造方法は、下部クラッド層を半導体、ガラス、磁性体、プラスチックスあるいはこれらの複合体かなる板状部材の上に形成するのが好ましい。
【0023】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路の製造方法は、有機溶媒に溶けた上記分岐型ポリシラン化合物と上記シリコーン化合物とを板状部材の上に塗布し、100℃以上、280℃以下で熱処理して硬化させて上記ポリマ層を形成するのが好ましい。
【0024】
本発明によれば、250℃程度の高い温度まで屈折率の温度依存性の極めて少ないフォトブリーチングによる低光伝搬損失のポリマ導波路が実現可能となる。
【0025】
これは、分岐型ポリシラン化合物を用いることと、このポリシラン化合物に光透過率の高いシリコーン化合物を所定の配合比で添加することにより、屈折率の温度依存性を小さくすると共にポリマコア層の光透過率が高められることによって達成されるものである。すなわち、分岐型ポリシラン化合物の分岐度が2%以上の材料を用い、その分岐度が高いほど、光伝搬損失を下げることができ、またその材料中へのシリコーン化合物の添加量を多くするほど、さらに低光伝搬損失が実現可能となる。
【0026】
また、フォトマスクを介して紫外線を照射することにより比屈折率差が少なくとも1%の3次元の屈折率差構造を持った導波路を容易に製造することができるので、従来のポリマ導波路に比して、構造の不均一性による光散乱損失を低く抑えることが可能となる。
【0027】
また分岐型ポリシラン化合物に、架橋性、あるいはアルコキシ基のシリコーン化合物を添加したポリマ材料はトルエンのような有機溶媒に容易に溶けて粒子径が極めて小さくなり、その結果均一になるので、微小な光散乱中心のほとんどない低損失なポリマ層を種々の基板の上に形成することができる。そしてこのように粒子径の均一な膜に所望パターンの描かれたフォトマスクを介して紫外線を照射すると上記パターンを極めて正確に転写することができる。これにより、コア層と側面クラッド層との界面を均一にすることができるので、光散乱損失の小さいポリマ導波路を実現することが可能となる。これは比屈折率差の大きい導波路を低損失で実現する上でこの界面の均一性は極めて重要である。
【0028】
また上記ポリシランとシリコーンの均一に添加された化合物とにトリクロロメチルトリアジン系光酸発生剤を所望量添加することにより、さらに高い温度まで屈折率が一定に保てることと、紫外線照射による屈折率を所望値に制御性良く変化させることができ、さらに紫外線照射に対する屈折率変化の感度も向上させることができる。
【0029】
また低屈折率のクラッド層にシリコーン化合物を用いることにより、当該クラッド層とコア層及び側面クラッド層との界面の均一性及び密着性をさらに良くすることができることと、熱膨張係数の違いによるマイクロクラックの発生を抑えることができる。
【0030】
またポリマ導波路の上部や下部を紫外線カット層で覆うことにより、ポリマ層の屈折率値の長期的な安定性を維持することができる。
【0031】
したがって容易に、かつ安価にポリマ導波路を作ることができる。
【0032】
以下にポリマ材料についてそれぞれ説明する。
(分岐型ポリシラン)
本発明で用いられるポリシランとしては、直鎖型ポリシランではなく分岐型ポリシランが挙げられる。分岐型と直鎖型とは、ポリシラン中に含まれるSi原子の結合状態によって区別される。分岐型ポリシランは、隣接するSi原子と結合している数(結合数)が、3又は4であるSi原子を含むポリシランである。これに対して、直鎖型のポリシランは、Si原子の、隣接するSi原子との結合数は2である。通常Si原子の原子価は4であるので、ポリシラン中に存在するSi原子の中で結合数が3以下のものは、Si原子以外に、炭化水素基、アルコキシ基又は水素原子と結合している。このような炭化水素基としては、炭素数1〜10のハロゲンで置換されていてもよい脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基の具体例として、メチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロプロピル基及びノナフルオロヘキシル基などの鎖型のもの、及びシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基のような脂環型のものなどが挙げられる。
【0033】
また、芳香族炭化水素基の具体例として、フェニル基、p−トリル基、ビフェニル基及びアントラシル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1〜8のものが挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。合成の容易さを考慮すると、これらの中でメチル基及びフェニル基が特に好ましい。
【0034】
分岐型ポリシランの場合には、隣接するSi原子との結合数が3又は4であるSi原子は、分岐型ポリシラン中の全体のSi原子数の2%以上であることが好ましい。2%未満のものや直鎖状のポリシランは結晶性が高く、膜中で微結晶が生成しやすいことにより散乱の原因とり、透明性が低下する。
【0035】
本発明に使用されるポリシランはハロゲン化シラン化合物をナトリウムのようなアルカリ金属の存在下、n−デカンやトルエンのような有機溶媒中において80℃以上に加熱することによる重縮合反応によって製造することができる。また、電解重合法や、金属マグネシウムと金属塩化物を用いた方法でも合成可能である。
【0036】
分岐型ポリシランの場合には、オルガノトリハロシラン化合物、テトラハロシラン化合物、及びジオルガノジハロシラン化合物から成り、オルガノトリハロシラン化合物及びテトラハロシラン化合物が全体量の2モル%以上であるハロシラン混合物を加熱して重縮合することにより、目的とする分岐型ポリシランが得られる。
【0037】
ここで、オルガノトリハロシラン化合物は、隣接するSi原子との結合数が3であるSi原子源となり、一方のテトラハロシラン化合物は、隣接するSi原子との結合数が4であるSi原子源となる。尚、ネットワーク構造の確認は、紫外線吸収スペクトルやSiの核磁気共鳴スペクトルの測定により確認することができる。
【0038】
ポリシランの原料として用いられるオルガノトリハロシラン化合物、テトラハロシラン化合物、及びジオルガノジハロシラン化合物がそれぞれ有するハロゲン原子は、塩素原子であることが好ましい。オルガノトリハロシラン化合物及びジオルガノジハロシラン化合物が有するハロゲン原子以外の置換基としては、上述の炭化水素基、アルコキシ基又は水素原子が挙げられる。
【0039】
この分岐型ポリシランは、有機溶媒に可溶であり、塗布により透明な膜が成膜できるものであれば特に限定されない。このような有機溶媒として好ましいものは、炭素数5〜12の炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、エーテル系である。
【0040】
炭化水素系の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、n−デカン、n−ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼンなどが挙げられる。ハロゲン化炭化水素系の例としては、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどが挙げられる。エーテル系の例としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラハイドロフランなどが挙げられる。
【0041】
また分岐型ポリシラン化合物には分岐度が2%以上のものを用いればその分岐度が高いほど、より光透過率を高めることができ、また重水素化、あるいは一部又はすべてをハロゲン化、特にフッ素化したものも用いることができるので、特定の波長での吸収を抑え、かつ広い波長域にわたって光透過率が高く、また紫外線照射に対して高感度、高精度で屈折率変化を起こさせることができ、また屈折率の熱安定性も向上させることが可能となる。
(シリコーン化合物)
本発明で用いられるシリコーン化合物は、
【0042】
【化1】
【0043】
で表される。
【0044】
但し、化1式中、R1からR12は、炭素数1〜10のハロゲン又はグリシジルオキシ基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基からなる群から選択される基であり、同一でも異なっていてもよい。a,b,c,及びdは0を含む整数であり、a+b+c+d≧1を満たすものである。
【0045】
このシリコーン化合物が有する、脂肪族炭化水素基の具体例として、メチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロプロピル基、グリシジルオキシプロピル基などの鎖状のもの、及びシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基のような脂環式のものなどが挙げられる。また、芳香族炭化水素基の具体例として、フェニル基、p−トリル基、ビフェニル基などが挙げられる。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、オクチルオキシ基、ter−ブトキシ基などが挙げられる。
【0046】
上記のR1〜R12の種類及びa,b,c,dの値は特に重要ではなく、ポリシラン及び有機溶媒と相溶し、膜が透明なものであれば特に限定されない。相溶性を考慮した場合には、使用するポリシランが有する炭化水素基と同じ基を有していることが好ましい。例えば、ポリシランとして、フェニルメチル系のものを使用する場合には、同じフェニルメチル系又はジフェニル系のシリコーン化合物を使用することが好ましい。また、R1〜R12のうち、少なくとも2つが炭素数1〜8のアルコキシ基であるような、1分子中にアルコキシ基を2つ以上有するシリコーン化合物は、架橋剤として利用可能である。そのようなものとしては、アルコキシ基を15〜35重量%含んだメチルフェニルメトキシシリコーンやフェニルメトキシシリコーンなどを挙げることができる。
【0047】
分子量としては、10000以下、好ましくは3000以下のものが好適に用いられる。
【0048】
またシリコーン化合物にも重水素化、あるいは一部又は全てにハロゲン化、特にフッ素化したものも用いることもできるので、特定の波長での吸収を抑え、かつ広い波長域にわたって光透過率が高く、また紫外線照射に対して高感度、高精度で屈折率変化を起こさせることができ、また屈折率の熱安定性も向上させることが可能となる。
(光酸発生剤)
光酸発生剤とは、光によって酸を発生する化合物であれば特に限定されないが、2,4,6−トリス(トリハロメチル)−1,3,5−トリアジンとその2位、又はその2位と4位が置換された化合物を例として挙げることができる。これらの化合物が有する置換基は、置換基を有していてもよい脂肪族及び芳香族炭化水素基である。一般的にはトリクロロメチル基をもつトリアジンが使用できる。
【0049】
光酸発生剤の添加は、Si−Si結合が、ハロゲンラジカルとそれから生成する酸により効率よく切断されることを利用したものである。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0051】
図1は本発明のポリマ導波路の一実施の形態を示す断面図である。
【0052】
このポリマ導波路は、コア層4及び側面クラッド層3−1、3−2として、分岐型ポリシラン化合物とシリコーン化合物とが所定の配合比で均一に添加されたフォトブリーチングポリマ層を用いたものである。
【0053】
まず本ポリマ導波路の構成について示す。
【0054】
基板1の上に低屈折率の下部クラッド層2が形成され、その下部クラッド層2の上に、分岐型ポリシラン化合物とシリコーン化合物とが所定の配合比で均一に添加されたフォトブリーチングポリマ層からなる高屈折率のコア層4が形成され、そのコア層4の側面に紫外線照射によって屈折率が低下された側面クラッド層3−1、3−2が形成されている。
【0055】
コア層4及び側面クラッド層3−1、3−2の上に低屈折率の上部クラッド層5及び紫外線カット層6が順次形成されている。下部クラッド層2及び上部クラッド層5はシリコーン化合物を用いることにより、コア層4及び側面クラッド層3−1、3−2と均一に、かつ密着性良く形成することができる。
【0056】
次に図1に示したポリマ導波路の製造について具体的な数値を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されたものではない。
【0057】
基板1にはSi基板を用い、その基板1上に純粋なシリコーンをトルエン有機溶媒に溶かしたシリコーン溶液を1000rpm、20秒のスピンコーテイング条件で塗布した。その後、200℃、20分間ベークして屈折率1.489(波長633nmでの値)の厚い膜(膜厚:約20μm)を形成した。
【0058】
次に、シリコーン化合物を50wt%添加した分岐型ポリシラン化合物をトルエンに溶かした溶液を準備し、500rpm、20秒のスピンコーティング条件で下部クラッド層2上に塗布した。その後、250℃で20分間ベークして硬化したポリマ膜(膜厚:約8μm)が得られた。
【0059】
次にフォトブリーチング用ポリマ膜上にフォトマスクを配置し、そのフォトマスクの上から紫外線を照射してフォトマスクパターンの潜像をポリマ膜に形成した。紫外線の照射エネルギーは9000mJ、18000mJ、27000mJの3条件で行ったが、いずれの場合もポリマ膜の深さ方向に略一様に屈折率が変化した略矩形断面形状の高屈折率のコア層4と、そのコア層4の側面に低屈折率の側面クラッド層3−1、3−2とが同時に形成された。
【0060】
次に、コア層4及び側面クラッド層3−1、3−2の上に下部クラッド層2の形成に用いたときと同様のポリマ溶液を同条件で塗布した後、ベークして上部クラッド層5を形成した。
【0061】
最後に上部クラッド層5の上に紫外線カット層6を約2μm形成することによりポリマ導波路が得られた。
【0062】
図2は本発明のポリマ導波路の他の実施の形態を示す断面図である。以下、図1に示した部材と同様の部材には共通の符号を用いた。
【0063】
図1に示したポリマ導波路との相違点は、コア層4−1、4−2が入力側あるいは出力側に2本形成された点である。
【0064】
すなわち、本ポリマ導波路は、基板1と、基板1上に形成されフォトブリーチング材料からなる下部クラッド層7と、下部クラッド層7上に形成され下部クラッド層7より屈折率の高くフォトブリーチング材料からなる2本のコア層4−1、4−2と、下部クラッド層7の上のコア層4−1、4−2の側面に形成されたコア層4−1、4−2より屈折率の低くフォトブリーチング材料からなる側面クラッド層3−1、3−2、3−3と、コア層4−1、4−2及び側面クラッド層3−1〜3−3の上に形成されコア層4−1、4−2よりも屈折率の低い上部クラッド層5と、上部クラッド層5の上に形成された紫外線カット層6とで構成されたものである。
【0065】
このようなポリマ導波路は方向性結合器、光スイッチ、光フィルタ等のような光回路に用いられる。このような光回路もフォトブリーチング用ポリマ膜上に紫外線をフォトマスクパターンを介して照射し、いわばフォトマスクパターンを膜に転写することにより、容易に実現することができる。
【0066】
尚、下部クラッド層にシリコーン化合物を50wt%添加した分岐型ポリシラン化合物の膜に紫外線を照射して低屈折率にしたものが用いられている。このような膜を用いると、その膜の上に形成されるコア層4−1、4−2と、側面クラッド層3−1、3−2、3−3との界面の均一性及び密着性を向上させることができる。
【0067】
図3は本発明のポリマ導波路の他の実施の形態を示す断面図である。
【0068】
図1に示したポリマ導波路との相違点は、コア層4と側面クラッド層3−1、3−2とを紫外線カット層6−1と紫外線カット層6−2とでサンドイッチ構造にした点である。
【0069】
すなわち、このポリマ導波路は、基板1と、基板1上に形成されフォトブリーチング材料からなる下部クラッド層7と、下部クラッド層7の上に形成された紫外線カット層6−1と、紫外線カット層6−1の上に形成され下部クラッド層7より屈折率の高くフォトブリーチング材料からなるコア層4と、紫外線カット層6−1の上のコア層4の側面に形成されコア層4より屈折率が低くフォトブリーチング材料からなる側面クラッド層3−1、3−2と、コア層4及び側面クラッド層3−1、3−2の上に形成された紫外線カット層6−2と、紫外線カット層6−2の上に形成されコア層4より屈折率の低い上部クラッド層5とで構成されたものである。
【0070】
ポリマ導波路をこのような構成とすることにより、コア層4及び側面クラッド層3−1、3−2の屈折率の長期的な劣化が抑えられる。
【0071】
図4は本発明のポリマ導波路の他の実施の形態を示す断面図である。
【0072】
図2に示したポリマ導波路との相違点は基板として紫外線カットシート8を用い、その紫外線カットシート8上に導波路を構成した点である。
【0073】
すなわち、本ポリマ導波路は、紫外線カットシート8と、紫外線カットシート8上に形成されたバッファ層2と、バッファ層2の上に形成されバッファ層2よりも屈折率の高くフォトブリーチング材料からなる3本のコア層4−1、4−2、4−3と、バッファ層2の上のコア層4−1〜4−3の側面に形成されコア層4−1〜4−3よりも屈折率の低くフォトブリーチング材料からなる側面クラッド層3−1〜3−4と、コア層4−1〜4−3及び側面クラッド層3−1〜3−4の上に形成されコア層4−1〜4−3よりも屈折率の低い上部クラッド層5と、上部クラッド層5の上に形成された紫外線カット層6とで構成されたものである。
【0074】
このようなポリマ導波路においても図2に示したポリマ導波路と同様の効果が得られる。
【0075】
図5は本発明のポリマ導波路の製造方法の一実施例を示す工程図である。
【0076】
このポリマ導波路の製造プロセスは、イエロールームのような紫外線の照射されない環境下で行われる。
【0077】
まず、基板上に有機溶媒に溶かしたポリマ溶液を塗布する。塗布方法はスピンコーティング、押し出しコーティング等を用いる(工程P1)。
【0078】
そのポリマ膜をプリベークする。プリベーク温度条件は120℃、20分とする(工程P2)。
【0079】
ポリマ膜のポストベークを行う。ポストベークは180℃から250℃の温度範囲で10分から1時間の範囲で行う(工程P3)。
【0080】
フォトブリーチング用ポリマ膜の上にフォトマスクを配置して紫外線を照射することにより、フォトマスクパターンをポリマ膜に転写する(工程P4)。
【0081】
ポリマ膜の上に上部クラッド層用ポリマ溶液を塗布する(工程P5)。
【0082】
上部クラッド層となるポリマ膜のベークを行う(工程P6)。
【0083】
紫外線カット層を塗布する(行程P7)。
【0084】
次いでベークを行う(行程P8)。
【0085】
尚、コア層及び側面クラッド層用のフォトブリーチング用ポリマ膜を形成してベークを行い、そのポリマ膜の上に上部クラッド層用ポリマ溶液を塗布してベークベークした後、フォトマスクを配置し、紫外線を上部クラッド層の上から照射してフォトブリーチング用ポリマ層の屈折率変化を起こさせてもよい。
【0086】
図6は本発明のポリマ導波路に用いられるポリマ材料の特性を示す図であり、横軸はベーク温度軸を示し、縦軸は屈折率軸を示している。
【0087】
同図は図5に示した工程を用いてSi基板上にシリコーン化合物を添加した分岐型ポリシラン化合物の溶液を塗布し、120℃、20分間のプリベークを行った膜についてポストベーク温度を変えて作製した膜の屈折率を室温で測定したものである。屈折率の測定波長は633nmと1550nmである。
【0088】
図6において、実線で示すL1は波長が633nmでシリコーン配合比が25%のときの特性曲線を示し、L2は波長が633nmでシリコーン配合比が30%のときの特性曲線を示し、以下同様に、L3はシリコーン配合比が40%、L4はシリコーン配合比が45%、L5はシリコーン配合比が50%、L6はシリコーン配合比が75%、L7はシリコーン配合比が90%、L8はシリコーン配合比が130%のときの特性曲線をそれぞれ示す。
【0089】
また、破線で示すL9は波長が1550nmでシリコーン配合比が25%のときの特性曲線を示し、L10は波長が1550nmでシリコーン配合比が30%のときの特性曲線を示し、以下同様に、L11はシリコーン配合比が40%、L12はシリコーン配合比が45%、L13はシリコーン配合比が50%、L14はシリコーン配合比が75%、L15はシリコーン配合比が90%、L16はシリコーン配合比が130%のときの特性曲線をそれぞれ示す。
【0090】
尚、分岐型ポリシラン化合物にはポリメチルフェニルシランを用いた。シリコーン化合物にはメトキシ基含有の架橋性メチルフェニルシリコーンを用い、その配合比を変えて膜を作製した。
【0091】
図6よりシリコーン化合物の配合比が40%から90%の範囲が屈折率の温度安定性の面で良好であることが分かる。この結果から、250℃程度の高温度まで屈折率のほとんど変化しないポリマ膜を得られることが分かる。これより、導波路の上部や中、あるいは下部に電子部品、あるいは光部品を半田で実装することができ、この半田リフローの際の導波路の屈折率変化がなくなる。
【0092】
図7及び図8はシリコーン化合物添加分岐型ポリシラン化合物に光酸発生剤としてトリクロロメチルトリアジン系材料を添加した場合のベーク温度に対する屈折率の特性を示す図であり、横軸はベーク温度軸を示し、縦軸は屈折率軸を示す。る。図7は波長633nmのときの特性を示し、図8は波長1550nmのときの特性を示す。
【0093】
図7及び図8において、トリクロロメチルトリアジンにはパラメトキシスチルトリアジンを用いた。
【0094】
図7に示すL20はパラメトキシスチルトリアジンの添加量が0%のときの特性曲線を示し、L21は同添加量が1%のときの特性曲線を示し、L22は同添加量が5%のときの特性曲線を示す。
【0095】
図8に示すL30はパラメトキシスチルトリアジンの添加量が0%のときの特性曲線を示し、L31は同添加量が1%のときの特性曲線を示し、L32は同添加量が5%のときの特性曲線を示す。
【0096】
図7及び図8よりトリクロロメチルトリアジンの添加量が多い程、屈折率の温度安定性は良い結果になることが分かる。但し、トリクロロメチルトリアジンの添加量が5%以上になると、長波長帯(>830nm)での光透過率が低下するので、トリクロロメチルトリアジンの添加量としては1%以上、5.5%以下が好ましい。
【0097】
図9は増感剤として、好ましくない材料を用いた場合のベーク温度に対する屈折率変化を示す図であり、横軸はベーク温度軸を示し、縦軸は屈折率軸を示す。
【0098】
図9に示すL40は波長が633nmで過酸化物の添加量が0%のときの特性曲線を示し、L41は波長が633nmで同添加量が5%のときの特性曲線を示す。L42は波長が1550nmで同添加量が0%のときの特性曲線を示し、L43は波長が1550nmで同添加量が5%のときの特性曲線を示す。
【0099】
この例では増感剤として光反応性の過酸化物が用いられている。この過酸化物が0%と5%とについて屈折率特性を測定したが、過酸化物を添加した方が屈折率の温度安定性は悪くなることが分かった。すなわち、増感剤にも好ましいものとそうでないものとがあることが分かった。トリクロロメチルトリアジン系については好ましい結果が得られたが、長波長帯での光透過率を考えると、できる限り光透過率の良い材料が好ましい。また、ポリシラン化合物の紫外線吸収ピーク波長に近い最大吸収波長をもった材料を選ぶ必要がある。さらに融点の高い材料を選ぶことも重要な要素である。
【0100】
本発明のシリコーン化合物を添加した分岐型ポリシラン化合物にトリクロロメチルトリアジンの添加量を変えて試作したポリマ膜の特性を図10、図11に示す。図10は図7のトリクロロメチルトリアジン添加量が0%の場合の紫外線照射による屈折率の低下の様子を示す図である。図11は図7のトリクロロメチルトリアジン添加量が5%の場合のそれぞれの紫外線照射による屈折率の低下の様子を示す図である。図10及び図11において横軸はUV光照射時間軸を示し、縦軸は屈折率軸を示す。図10に示すL50はトリアジンの添加率が0%で波長が633nmのときの特性曲線を示し、L51は同添加率が0%で波長が1550nmのときの特性曲線を示す。図11に示すL60はトリアジンの添加率が5%で波長が633nm%のときの特性曲線を示し、L61は同添加率が5%で波長が1550nmのときの特性曲線を示す。
【0101】
図10及び図11は紫外線として150W水銀キセノンランプからの紫外線をファイババンドルスコープでガイドしてきて膜表面に照射し、その照射時間に対する膜の屈折率を測定して求めたものである。但し、上記ファイババンドルスコープの出力は1200mJ/cm2 であった。図10、11より、トリクロロメチルトリアジンの添加されていない膜の屈折率は紫外線照射時間に対して不連続に変化し、屈折率を照射時間で精密に制御することが困難であった。これに対して、トリクロロメチルトリアジン5wt%を添加した膜の屈折率は紫外線の照射時間に対して連続的に変化し、照射時間で屈折率を制御することが容易となる。
【0102】
図12は分岐型ポリシラン化合物にシリコーン化合物を添加して得たポリマ膜のシリコーン化合物添加量に対する紫外線の照射前と照射後で比屈折率差が最大でどのくらい得られるかを求めた結果を示す図である。同図において横軸はポリシラン化合物に対するシリコーン化合物の添加量を示し、縦軸は紫外線照射によって得られる最大比屈折率差Δを示す。
【0103】
この図12は図6に示した特性のポリマ膜を200℃のベーク温度で熱処理したポリマ膜について波長633nmでの屈折率を紫外線の照射前と照射後とで測定し、得られた測定結果から最大比屈折率差Δを求めたものである。シリコーン化合物の添加量が多くなると、比屈折率差Δも小さくなることが分かった。この比屈折率差Δはできるだけ大きくとれることが望ましいが、屈折率の温度安定性を考慮に入れると、最適なシリコーン化合物の添加量40wt%から90wt%の範囲では比屈折率差Δは3%以上、5.5%以下の値が得られたが、この値は十分に高感度な値である。
【0104】
次に、ポリシラン化合物の最適なものについて述べる。
【0105】
図13は本発明のポリマ導波路に用いられるポリシラン膜及び従来のポリマ導波路に用いられるポリシラン膜の光透過率と波長との関係を示す図であり、横軸が波長軸を示し、縦軸が光透過率軸を示している。
【0106】
同図において、L70は本発明のポリマ導波路用の膜としての分岐型ポリシラン膜(分岐度20%)の特性曲線を示し、L71は本発明のポリマ導波路用の膜としての分岐型ポリシラン膜(分岐度3%)の特性曲線を示し、L72は従来のポリマ導波路用の膜としての直鎖型のポリシラン膜の特性曲線を示す(膜厚:約30μm)。
【0107】
ここで、ポリシラン膜には、同一条件での比較のため、全てシリコーン化合物が50wt%添加されている。同図より、従来のポリマ導波路に用いられている直鎖型ポリシラン膜より本発明のポリマ導波路に用いられる分岐型ポリシラン膜の方が光透過率は高くなることが分かる。また、本発明の分岐型の場合にはその分岐度を高くするほど、光透過率は高くなることを初めて見出すことができた。
【0108】
図14は本発明のポリマ導波路に用いられる分岐型ポリシラン化合物に添加するシリコーン化合物の添加量と光透過率特性との関係を示す図である(膜厚:約300μm)。同図において横軸は波長軸を示し、縦軸は光透過率軸を示す。
【0109】
同図に示すL80はシリコーン化合物の添加量が0%のときの特性曲線、L81は同添加量が20%のときの特性曲線、L82は同添加量が50%のときの特性曲線、L83同添加量が70%のときの特性曲線、L84は同添加量が100%のときの特性曲線をそれぞれ示す。
【0110】
同図より、シリコーン化合物の添加量が多い程、光透過率が向上することを見出すことができた。この図14に示した結果と、図6に示した結果とから、シリコーン化合物の最適な添加量を先に示したような値に選ぶことができた。
【0111】
以上において、本発明によれば
(1) 250℃程度の高い温度まで屈折率の温度依存性の極めて少ないフォトブリーチングによる低光伝搬損失のポリマ導波路を実現することができる。これはポリシラン化合物にシリコーン化合物を所望配合比で添加することによって屈折率の温度安定性と低光伝搬損失を実現することができたものである。またシリコーン化合物の添加によって屈折率も低い値に下げることができるので、ガラス系ファイバとの接続の際の接続損失を小さくすることができる。またポリシラン化合物に分岐型ポリシラン化合物を用いたことも低光伝搬損失化に効果を発揮させることができた。また上記分岐型ポリシラン化合物を用いることにより、またその分岐度として2%以上のものを用いることにより、低光伝搬損失で、偏波依存性のない導波路を実現することもできる。
(2) 分岐型ポリシラン化合物に、架橋性、あるいはアルコキシ基からなるシリコーン化合物を添加したポリマ材料はトルエンのような有機溶媒に容易に溶けて粒子径が極めて小さく、均一になるので、光散乱中心のほとんどない低損失なポリマ層を種々の基板の上に形成することができる。また上記微粒子径の均一なポリマ膜の上に所望パターンの描かれたフォトマスクを置いて紫外線を照射することにより、極めて正確なパターンを描画することができ、その結果、コア層と側面クラッド層の界面をより均一にすることができる。これにより、さらに低光散乱損失の導波路を実現することができる。
(3) また上記ポリシランとシリコーンの化合物の添加されたものにトリクロロメチルトリアジン系光酸発生剤を所望量添加することで、さらに高い温度まで屈折率を一定に保つことができ、また紫外線照射量によって屈折率を制御性良く低下させることができると共に屈折率変化の感度も向上させることができた。
(4) また低屈折率のクラッド層にシリコーン化合物を用いることにより上記コア層及び側面クラッド層との界面の均一性及び密着性を向上させることができる。またフォトブリーチング用ポリマ膜との熱膨張係数の違いを小さくすることができるので、熱膨張係数の違いによるマイクロクラックの発生を抑えることができる。
(5) 250℃程度の高い温度まで屈折率の温度依存性の極めて少ないフォトブリーチングによる低光伝搬損失のポリマ導波路であるので、導波路の上、下、あるいは中に電子または光部品を半田実装する際に上記導波路の屈折率がほとんど変化しないので、種々の高機能光電気複合デバイスを実現することができる。
(6) 高比屈折率差の導波路を低損失で実現することができる。
【0112】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、次のような優れた効果を発揮する。
【0113】
周囲温度が変化しても光学特性の変化が少ない低損失のポリマ導波路及びその製造方法の提供を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリマ導波路の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明のポリマ導波路の他の実施の形態を示す断面図である。
【図3】本発明のポリマ導波路の他の実施の形態を示す断面図である。
【図4】本発明のポリマ導波路の他の実施の形態を示す断面図である。
【図5】本発明のポリマ導波路の製造方法の一実施例を示す工程図である。
【図6】本発明のポリマ導波路に用いられるポリマ材料の特性を示す図である。
【図7】シリコーン化合物添加分岐型ポリシラン化合物に光酸発生剤としてトリクロロメチルトリアジン系材料を添加した場合のベーク温度に対する屈折率の特性を示す図である。
【図8】シリコーン化合物添加分岐型ポリシラン化合物に光酸発生剤としてトリクロロメチルトリアジン系材料を添加した場合のベーク温度に対する屈折率の特性を示す図である。
【図9】増感剤として、好ましくない材料を用いた場合のベーク温度に対する屈折率変化を示す図である。
【図10】図7のトリクロロメチルトリアジン添加量が0%の場合の紫外線照射による屈折率の低下のようすを示す図である。
【図11】図8のトリクロロトリメチルアジン添加量が5%の場合のそれぞれの紫外線照射による屈折率の低下のようすを示す図である。
【図12】分岐型ポリシラン化合物にシリコーン化合物を添加して得たポリマ膜のシリコーン化合物の添加量に対する紫外線の照射前と照射後で比屈折率差が最大でどのくらい得られるかを求めた結果を示す図である。
【図13】本発明のポリマ導波路に用いられるポリシラン膜及び従来のポリマ導波路に用いられるポリシラン膜の光透過率と波長との関係を示す図である。
【図14】本発明のポリマ導波路に用いられる分岐型ポリシラン化合物に添加するシリコーン化合物の添加量と光透過率特性との関係を示す図である。
【図15】従来のポリマ導波路の外観斜視図である。
【符号の説明】
1 基板
2 下部クラッド層
3−1〜3−3 側面クラッド層
4−1、4−2 コア層
5 上部クラッド層
6 紫外線カット層
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリマ導波路及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリマ導波路は、簡易な方法で作製できること、大面積サイズ化が容易なこと、低コスト化の可能性があること、等の特長を有しているために実用化が期待されている。このポリマ導波路に用いられるポリマ材料としては、アクリル系、エポキシ系、ポリイミド系、シリコーン系、ポリシラン系等の材料が検討されている。これらのポリマ材料には周囲の温度変化に対して、屈折率や熱膨張係数等の特性が変化しにくいことが望まれている。このため、これらのポリマ材料の中でも特にポリイミド系、エポキシ系、ポリシラン系のポリマ材料が注目され、改良が行なわれている。
【0003】
ポリマ材料を改良する方法としてはポリマ材料に紫外線を照射することにより3次元導波路パターンを形成する例(特開平6−222234号公報参照。)、アモルファスポリシランを用いる例(特開平11−287916号公報参照。)、直鎖型ポリシラン又は分岐型ポリシランを用いる例(特開平8−267728号公報参照)等が挙げられる。
【0004】
図15は従来のポリマ導波路の外観斜視図である。
【0005】
同図において、50はポリシロキサンからなるコアを示し、51はメチルフェニルポリシランからなるクラッドを示す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来技術には以下のような問題がある。
(1) 屈折率が周囲温度によって大きく変化する。このためにこのようなポリマ材料を用いたポリマ導波路からなる光回路の光学特性(伝搬モード、パワー分布、波長特性等)が大幅に変化してしまい、所望の性能が得られない。
(2) ポリマ導波路の近傍に200℃前後で電子部品や光部品を半田実装する際に、ポリマ導波路の屈折率の値が初期の値から別の値に変わってしまい、周囲温度を元に戻してもポリマ導波路の屈折率値が元の値に戻らない。このため、(1) に示したようなポリマ導波路で構成した光回路の光学特性が変わってしまう。
(3) 直鎖型ポリシラン材料を用いた膜に紫外線を照射して3次元の導波路を形成する方法が提案されているが、(1) 及び(2) のような問題や屈折率の偏光依存性の問題等があり、実用化するまでには至っていない。また紫外線を照射してポリマ膜の屈折率を反応性よく大幅に変化させようとしても屈折率変化が照射光エネルギーに対して不連続に変化する。また大きな屈折率変化を得るためには照射エネルギーを高くしなければならない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、周囲温度が変化しても光学特性の変化が少ない低損失のポリマ導波路及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明のポリマ導波路は、低屈折率のクラッド層と、クラッド層で覆われた略矩形断面形状の高屈折率のコア層とを備えた導波路において、コア層及びコア層の両側面の側面クラッド層は分岐型ポリシラン化合物にシリコーン化合物を含有した材料で構成されているものである。
【0009】
本発明のポリマ導波路は、低屈折率のクラッド層と、クラッド層で覆われた略矩形断面形状の高屈折率のコア層とを備えた導波路において、コア層及びコア層の両側面の側面クラッド層は分岐型ポリシラン化合物にトリクロロメチルトリアジン系光酸発生剤を含有した材料で構成されているものである。
【0010】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路の側面クラッド層は紫外線の照射前と照射後とで少なくとも1%の比屈折率差が得られるように紫外線照射で屈折率が低下させられているのが好ましい。
【0011】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路のコア層は紫外線が照射され、側面クラッド層の屈折率よりも高い値に保たれているのが好ましい。
【0012】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路のクラッド層及びコア層は半導体、ガラス、磁性体、プラスチックス、あるいはこれらの複合体からなる板状部材の上に形成されているのが好ましい。
【0013】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路はクラッド層としてシリコーン化合物が用いられているのが好ましい。
【0014】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路はコア層及び側面クラッド層の上面、下面あるいは両面に紫外線カット層が形成されているのが好ましい。
【0015】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路はコア層の上側の上部クラッド層及びコア層の下側の下部クラッド層はトリクロロメチルトリアジン系光酸発生剤とポリシリコン化合物とシリコーン化合物とを含有する材料が用いられ、紫外線が照射されて屈折率が低下しているのが好ましい。
【0016】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路の分岐型ポリシラン化合物は、Si原子以外に炭化水素基、アルコキシ基、又は水素原子と結合している化合物であるのが好ましい。
【0017】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路の分岐型ポリシラン化合物は分岐度2%以上、50%以下の化合物が用いられているのが好ましい。
【0018】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路のシリコーン化合物は架橋性、あるいはアルコキシ基からなり、ポリシラン化合物に対して40〜90wt%の配合比で添加されているのが好ましい。
【0019】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路は光酸発生剤としてトリクロロメチルトリアジン系の発生剤を用い、発生剤がポリシラン化合物に対して1wt%以上、5.5wt%以下の配合比で添加されているのが好ましい。
【0020】
本発明のポリマ導波路の製造方法は低屈折率の下部クラッド層の上面に分岐型ポリシラン化合物と架橋性あるいはアルコキシ基のシリコーン化合物とを含有する高屈折率のポリマ層を形成する工程、ポリマ層の上面に所望パターン形状の描かれたフォトマスクを介して紫外線を照射して高屈折率の略矩形断面形状のコア層とその周りの側面に低屈折率に変化した側面クラッド層を形成する工程、コア層及び側面クラッド層の上面に低屈折率の上部クラッド層を形成する工程、上部クラッド層の上面にUVカット層を形成する工程からなるものである。
【0021】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路の製造方法は、低屈折率の下部クラッド層の上に分岐型ポリシラン化合物と架橋性あるいはアルコキシ基のシリコーン化合物とを含有する高屈折率のポリマ層を形成し、ポリマ層の上に低屈折率の上部クラッド層を形成し、上部クラッド層の上にフォトマスクを配置して紫外線を照射して高い屈折率の略矩形断面形状のコア層とコア層の両側面に低屈折率の側面クラッド層を形成した後、上部クラッド層の上にUVカット層を形成するものである。
【0022】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路の製造方法は、下部クラッド層を半導体、ガラス、磁性体、プラスチックスあるいはこれらの複合体かなる板状部材の上に形成するのが好ましい。
【0023】
上記構成に加え本発明のポリマ導波路の製造方法は、有機溶媒に溶けた上記分岐型ポリシラン化合物と上記シリコーン化合物とを板状部材の上に塗布し、100℃以上、280℃以下で熱処理して硬化させて上記ポリマ層を形成するのが好ましい。
【0024】
本発明によれば、250℃程度の高い温度まで屈折率の温度依存性の極めて少ないフォトブリーチングによる低光伝搬損失のポリマ導波路が実現可能となる。
【0025】
これは、分岐型ポリシラン化合物を用いることと、このポリシラン化合物に光透過率の高いシリコーン化合物を所定の配合比で添加することにより、屈折率の温度依存性を小さくすると共にポリマコア層の光透過率が高められることによって達成されるものである。すなわち、分岐型ポリシラン化合物の分岐度が2%以上の材料を用い、その分岐度が高いほど、光伝搬損失を下げることができ、またその材料中へのシリコーン化合物の添加量を多くするほど、さらに低光伝搬損失が実現可能となる。
【0026】
また、フォトマスクを介して紫外線を照射することにより比屈折率差が少なくとも1%の3次元の屈折率差構造を持った導波路を容易に製造することができるので、従来のポリマ導波路に比して、構造の不均一性による光散乱損失を低く抑えることが可能となる。
【0027】
また分岐型ポリシラン化合物に、架橋性、あるいはアルコキシ基のシリコーン化合物を添加したポリマ材料はトルエンのような有機溶媒に容易に溶けて粒子径が極めて小さくなり、その結果均一になるので、微小な光散乱中心のほとんどない低損失なポリマ層を種々の基板の上に形成することができる。そしてこのように粒子径の均一な膜に所望パターンの描かれたフォトマスクを介して紫外線を照射すると上記パターンを極めて正確に転写することができる。これにより、コア層と側面クラッド層との界面を均一にすることができるので、光散乱損失の小さいポリマ導波路を実現することが可能となる。これは比屈折率差の大きい導波路を低損失で実現する上でこの界面の均一性は極めて重要である。
【0028】
また上記ポリシランとシリコーンの均一に添加された化合物とにトリクロロメチルトリアジン系光酸発生剤を所望量添加することにより、さらに高い温度まで屈折率が一定に保てることと、紫外線照射による屈折率を所望値に制御性良く変化させることができ、さらに紫外線照射に対する屈折率変化の感度も向上させることができる。
【0029】
また低屈折率のクラッド層にシリコーン化合物を用いることにより、当該クラッド層とコア層及び側面クラッド層との界面の均一性及び密着性をさらに良くすることができることと、熱膨張係数の違いによるマイクロクラックの発生を抑えることができる。
【0030】
またポリマ導波路の上部や下部を紫外線カット層で覆うことにより、ポリマ層の屈折率値の長期的な安定性を維持することができる。
【0031】
したがって容易に、かつ安価にポリマ導波路を作ることができる。
【0032】
以下にポリマ材料についてそれぞれ説明する。
(分岐型ポリシラン)
本発明で用いられるポリシランとしては、直鎖型ポリシランではなく分岐型ポリシランが挙げられる。分岐型と直鎖型とは、ポリシラン中に含まれるSi原子の結合状態によって区別される。分岐型ポリシランは、隣接するSi原子と結合している数(結合数)が、3又は4であるSi原子を含むポリシランである。これに対して、直鎖型のポリシランは、Si原子の、隣接するSi原子との結合数は2である。通常Si原子の原子価は4であるので、ポリシラン中に存在するSi原子の中で結合数が3以下のものは、Si原子以外に、炭化水素基、アルコキシ基又は水素原子と結合している。このような炭化水素基としては、炭素数1〜10のハロゲンで置換されていてもよい脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基の具体例として、メチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロプロピル基及びノナフルオロヘキシル基などの鎖型のもの、及びシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基のような脂環型のものなどが挙げられる。
【0033】
また、芳香族炭化水素基の具体例として、フェニル基、p−トリル基、ビフェニル基及びアントラシル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1〜8のものが挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。合成の容易さを考慮すると、これらの中でメチル基及びフェニル基が特に好ましい。
【0034】
分岐型ポリシランの場合には、隣接するSi原子との結合数が3又は4であるSi原子は、分岐型ポリシラン中の全体のSi原子数の2%以上であることが好ましい。2%未満のものや直鎖状のポリシランは結晶性が高く、膜中で微結晶が生成しやすいことにより散乱の原因とり、透明性が低下する。
【0035】
本発明に使用されるポリシランはハロゲン化シラン化合物をナトリウムのようなアルカリ金属の存在下、n−デカンやトルエンのような有機溶媒中において80℃以上に加熱することによる重縮合反応によって製造することができる。また、電解重合法や、金属マグネシウムと金属塩化物を用いた方法でも合成可能である。
【0036】
分岐型ポリシランの場合には、オルガノトリハロシラン化合物、テトラハロシラン化合物、及びジオルガノジハロシラン化合物から成り、オルガノトリハロシラン化合物及びテトラハロシラン化合物が全体量の2モル%以上であるハロシラン混合物を加熱して重縮合することにより、目的とする分岐型ポリシランが得られる。
【0037】
ここで、オルガノトリハロシラン化合物は、隣接するSi原子との結合数が3であるSi原子源となり、一方のテトラハロシラン化合物は、隣接するSi原子との結合数が4であるSi原子源となる。尚、ネットワーク構造の確認は、紫外線吸収スペクトルやSiの核磁気共鳴スペクトルの測定により確認することができる。
【0038】
ポリシランの原料として用いられるオルガノトリハロシラン化合物、テトラハロシラン化合物、及びジオルガノジハロシラン化合物がそれぞれ有するハロゲン原子は、塩素原子であることが好ましい。オルガノトリハロシラン化合物及びジオルガノジハロシラン化合物が有するハロゲン原子以外の置換基としては、上述の炭化水素基、アルコキシ基又は水素原子が挙げられる。
【0039】
この分岐型ポリシランは、有機溶媒に可溶であり、塗布により透明な膜が成膜できるものであれば特に限定されない。このような有機溶媒として好ましいものは、炭素数5〜12の炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、エーテル系である。
【0040】
炭化水素系の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、n−デカン、n−ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼンなどが挙げられる。ハロゲン化炭化水素系の例としては、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどが挙げられる。エーテル系の例としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラハイドロフランなどが挙げられる。
【0041】
また分岐型ポリシラン化合物には分岐度が2%以上のものを用いればその分岐度が高いほど、より光透過率を高めることができ、また重水素化、あるいは一部又はすべてをハロゲン化、特にフッ素化したものも用いることができるので、特定の波長での吸収を抑え、かつ広い波長域にわたって光透過率が高く、また紫外線照射に対して高感度、高精度で屈折率変化を起こさせることができ、また屈折率の熱安定性も向上させることが可能となる。
(シリコーン化合物)
本発明で用いられるシリコーン化合物は、
【0042】
【化1】
【0043】
で表される。
【0044】
但し、化1式中、R1からR12は、炭素数1〜10のハロゲン又はグリシジルオキシ基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基からなる群から選択される基であり、同一でも異なっていてもよい。a,b,c,及びdは0を含む整数であり、a+b+c+d≧1を満たすものである。
【0045】
このシリコーン化合物が有する、脂肪族炭化水素基の具体例として、メチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロプロピル基、グリシジルオキシプロピル基などの鎖状のもの、及びシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基のような脂環式のものなどが挙げられる。また、芳香族炭化水素基の具体例として、フェニル基、p−トリル基、ビフェニル基などが挙げられる。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、オクチルオキシ基、ter−ブトキシ基などが挙げられる。
【0046】
上記のR1〜R12の種類及びa,b,c,dの値は特に重要ではなく、ポリシラン及び有機溶媒と相溶し、膜が透明なものであれば特に限定されない。相溶性を考慮した場合には、使用するポリシランが有する炭化水素基と同じ基を有していることが好ましい。例えば、ポリシランとして、フェニルメチル系のものを使用する場合には、同じフェニルメチル系又はジフェニル系のシリコーン化合物を使用することが好ましい。また、R1〜R12のうち、少なくとも2つが炭素数1〜8のアルコキシ基であるような、1分子中にアルコキシ基を2つ以上有するシリコーン化合物は、架橋剤として利用可能である。そのようなものとしては、アルコキシ基を15〜35重量%含んだメチルフェニルメトキシシリコーンやフェニルメトキシシリコーンなどを挙げることができる。
【0047】
分子量としては、10000以下、好ましくは3000以下のものが好適に用いられる。
【0048】
またシリコーン化合物にも重水素化、あるいは一部又は全てにハロゲン化、特にフッ素化したものも用いることもできるので、特定の波長での吸収を抑え、かつ広い波長域にわたって光透過率が高く、また紫外線照射に対して高感度、高精度で屈折率変化を起こさせることができ、また屈折率の熱安定性も向上させることが可能となる。
(光酸発生剤)
光酸発生剤とは、光によって酸を発生する化合物であれば特に限定されないが、2,4,6−トリス(トリハロメチル)−1,3,5−トリアジンとその2位、又はその2位と4位が置換された化合物を例として挙げることができる。これらの化合物が有する置換基は、置換基を有していてもよい脂肪族及び芳香族炭化水素基である。一般的にはトリクロロメチル基をもつトリアジンが使用できる。
【0049】
光酸発生剤の添加は、Si−Si結合が、ハロゲンラジカルとそれから生成する酸により効率よく切断されることを利用したものである。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0051】
図1は本発明のポリマ導波路の一実施の形態を示す断面図である。
【0052】
このポリマ導波路は、コア層4及び側面クラッド層3−1、3−2として、分岐型ポリシラン化合物とシリコーン化合物とが所定の配合比で均一に添加されたフォトブリーチングポリマ層を用いたものである。
【0053】
まず本ポリマ導波路の構成について示す。
【0054】
基板1の上に低屈折率の下部クラッド層2が形成され、その下部クラッド層2の上に、分岐型ポリシラン化合物とシリコーン化合物とが所定の配合比で均一に添加されたフォトブリーチングポリマ層からなる高屈折率のコア層4が形成され、そのコア層4の側面に紫外線照射によって屈折率が低下された側面クラッド層3−1、3−2が形成されている。
【0055】
コア層4及び側面クラッド層3−1、3−2の上に低屈折率の上部クラッド層5及び紫外線カット層6が順次形成されている。下部クラッド層2及び上部クラッド層5はシリコーン化合物を用いることにより、コア層4及び側面クラッド層3−1、3−2と均一に、かつ密着性良く形成することができる。
【0056】
次に図1に示したポリマ導波路の製造について具体的な数値を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されたものではない。
【0057】
基板1にはSi基板を用い、その基板1上に純粋なシリコーンをトルエン有機溶媒に溶かしたシリコーン溶液を1000rpm、20秒のスピンコーテイング条件で塗布した。その後、200℃、20分間ベークして屈折率1.489(波長633nmでの値)の厚い膜(膜厚:約20μm)を形成した。
【0058】
次に、シリコーン化合物を50wt%添加した分岐型ポリシラン化合物をトルエンに溶かした溶液を準備し、500rpm、20秒のスピンコーティング条件で下部クラッド層2上に塗布した。その後、250℃で20分間ベークして硬化したポリマ膜(膜厚:約8μm)が得られた。
【0059】
次にフォトブリーチング用ポリマ膜上にフォトマスクを配置し、そのフォトマスクの上から紫外線を照射してフォトマスクパターンの潜像をポリマ膜に形成した。紫外線の照射エネルギーは9000mJ、18000mJ、27000mJの3条件で行ったが、いずれの場合もポリマ膜の深さ方向に略一様に屈折率が変化した略矩形断面形状の高屈折率のコア層4と、そのコア層4の側面に低屈折率の側面クラッド層3−1、3−2とが同時に形成された。
【0060】
次に、コア層4及び側面クラッド層3−1、3−2の上に下部クラッド層2の形成に用いたときと同様のポリマ溶液を同条件で塗布した後、ベークして上部クラッド層5を形成した。
【0061】
最後に上部クラッド層5の上に紫外線カット層6を約2μm形成することによりポリマ導波路が得られた。
【0062】
図2は本発明のポリマ導波路の他の実施の形態を示す断面図である。以下、図1に示した部材と同様の部材には共通の符号を用いた。
【0063】
図1に示したポリマ導波路との相違点は、コア層4−1、4−2が入力側あるいは出力側に2本形成された点である。
【0064】
すなわち、本ポリマ導波路は、基板1と、基板1上に形成されフォトブリーチング材料からなる下部クラッド層7と、下部クラッド層7上に形成され下部クラッド層7より屈折率の高くフォトブリーチング材料からなる2本のコア層4−1、4−2と、下部クラッド層7の上のコア層4−1、4−2の側面に形成されたコア層4−1、4−2より屈折率の低くフォトブリーチング材料からなる側面クラッド層3−1、3−2、3−3と、コア層4−1、4−2及び側面クラッド層3−1〜3−3の上に形成されコア層4−1、4−2よりも屈折率の低い上部クラッド層5と、上部クラッド層5の上に形成された紫外線カット層6とで構成されたものである。
【0065】
このようなポリマ導波路は方向性結合器、光スイッチ、光フィルタ等のような光回路に用いられる。このような光回路もフォトブリーチング用ポリマ膜上に紫外線をフォトマスクパターンを介して照射し、いわばフォトマスクパターンを膜に転写することにより、容易に実現することができる。
【0066】
尚、下部クラッド層にシリコーン化合物を50wt%添加した分岐型ポリシラン化合物の膜に紫外線を照射して低屈折率にしたものが用いられている。このような膜を用いると、その膜の上に形成されるコア層4−1、4−2と、側面クラッド層3−1、3−2、3−3との界面の均一性及び密着性を向上させることができる。
【0067】
図3は本発明のポリマ導波路の他の実施の形態を示す断面図である。
【0068】
図1に示したポリマ導波路との相違点は、コア層4と側面クラッド層3−1、3−2とを紫外線カット層6−1と紫外線カット層6−2とでサンドイッチ構造にした点である。
【0069】
すなわち、このポリマ導波路は、基板1と、基板1上に形成されフォトブリーチング材料からなる下部クラッド層7と、下部クラッド層7の上に形成された紫外線カット層6−1と、紫外線カット層6−1の上に形成され下部クラッド層7より屈折率の高くフォトブリーチング材料からなるコア層4と、紫外線カット層6−1の上のコア層4の側面に形成されコア層4より屈折率が低くフォトブリーチング材料からなる側面クラッド層3−1、3−2と、コア層4及び側面クラッド層3−1、3−2の上に形成された紫外線カット層6−2と、紫外線カット層6−2の上に形成されコア層4より屈折率の低い上部クラッド層5とで構成されたものである。
【0070】
ポリマ導波路をこのような構成とすることにより、コア層4及び側面クラッド層3−1、3−2の屈折率の長期的な劣化が抑えられる。
【0071】
図4は本発明のポリマ導波路の他の実施の形態を示す断面図である。
【0072】
図2に示したポリマ導波路との相違点は基板として紫外線カットシート8を用い、その紫外線カットシート8上に導波路を構成した点である。
【0073】
すなわち、本ポリマ導波路は、紫外線カットシート8と、紫外線カットシート8上に形成されたバッファ層2と、バッファ層2の上に形成されバッファ層2よりも屈折率の高くフォトブリーチング材料からなる3本のコア層4−1、4−2、4−3と、バッファ層2の上のコア層4−1〜4−3の側面に形成されコア層4−1〜4−3よりも屈折率の低くフォトブリーチング材料からなる側面クラッド層3−1〜3−4と、コア層4−1〜4−3及び側面クラッド層3−1〜3−4の上に形成されコア層4−1〜4−3よりも屈折率の低い上部クラッド層5と、上部クラッド層5の上に形成された紫外線カット層6とで構成されたものである。
【0074】
このようなポリマ導波路においても図2に示したポリマ導波路と同様の効果が得られる。
【0075】
図5は本発明のポリマ導波路の製造方法の一実施例を示す工程図である。
【0076】
このポリマ導波路の製造プロセスは、イエロールームのような紫外線の照射されない環境下で行われる。
【0077】
まず、基板上に有機溶媒に溶かしたポリマ溶液を塗布する。塗布方法はスピンコーティング、押し出しコーティング等を用いる(工程P1)。
【0078】
そのポリマ膜をプリベークする。プリベーク温度条件は120℃、20分とする(工程P2)。
【0079】
ポリマ膜のポストベークを行う。ポストベークは180℃から250℃の温度範囲で10分から1時間の範囲で行う(工程P3)。
【0080】
フォトブリーチング用ポリマ膜の上にフォトマスクを配置して紫外線を照射することにより、フォトマスクパターンをポリマ膜に転写する(工程P4)。
【0081】
ポリマ膜の上に上部クラッド層用ポリマ溶液を塗布する(工程P5)。
【0082】
上部クラッド層となるポリマ膜のベークを行う(工程P6)。
【0083】
紫外線カット層を塗布する(行程P7)。
【0084】
次いでベークを行う(行程P8)。
【0085】
尚、コア層及び側面クラッド層用のフォトブリーチング用ポリマ膜を形成してベークを行い、そのポリマ膜の上に上部クラッド層用ポリマ溶液を塗布してベークベークした後、フォトマスクを配置し、紫外線を上部クラッド層の上から照射してフォトブリーチング用ポリマ層の屈折率変化を起こさせてもよい。
【0086】
図6は本発明のポリマ導波路に用いられるポリマ材料の特性を示す図であり、横軸はベーク温度軸を示し、縦軸は屈折率軸を示している。
【0087】
同図は図5に示した工程を用いてSi基板上にシリコーン化合物を添加した分岐型ポリシラン化合物の溶液を塗布し、120℃、20分間のプリベークを行った膜についてポストベーク温度を変えて作製した膜の屈折率を室温で測定したものである。屈折率の測定波長は633nmと1550nmである。
【0088】
図6において、実線で示すL1は波長が633nmでシリコーン配合比が25%のときの特性曲線を示し、L2は波長が633nmでシリコーン配合比が30%のときの特性曲線を示し、以下同様に、L3はシリコーン配合比が40%、L4はシリコーン配合比が45%、L5はシリコーン配合比が50%、L6はシリコーン配合比が75%、L7はシリコーン配合比が90%、L8はシリコーン配合比が130%のときの特性曲線をそれぞれ示す。
【0089】
また、破線で示すL9は波長が1550nmでシリコーン配合比が25%のときの特性曲線を示し、L10は波長が1550nmでシリコーン配合比が30%のときの特性曲線を示し、以下同様に、L11はシリコーン配合比が40%、L12はシリコーン配合比が45%、L13はシリコーン配合比が50%、L14はシリコーン配合比が75%、L15はシリコーン配合比が90%、L16はシリコーン配合比が130%のときの特性曲線をそれぞれ示す。
【0090】
尚、分岐型ポリシラン化合物にはポリメチルフェニルシランを用いた。シリコーン化合物にはメトキシ基含有の架橋性メチルフェニルシリコーンを用い、その配合比を変えて膜を作製した。
【0091】
図6よりシリコーン化合物の配合比が40%から90%の範囲が屈折率の温度安定性の面で良好であることが分かる。この結果から、250℃程度の高温度まで屈折率のほとんど変化しないポリマ膜を得られることが分かる。これより、導波路の上部や中、あるいは下部に電子部品、あるいは光部品を半田で実装することができ、この半田リフローの際の導波路の屈折率変化がなくなる。
【0092】
図7及び図8はシリコーン化合物添加分岐型ポリシラン化合物に光酸発生剤としてトリクロロメチルトリアジン系材料を添加した場合のベーク温度に対する屈折率の特性を示す図であり、横軸はベーク温度軸を示し、縦軸は屈折率軸を示す。る。図7は波長633nmのときの特性を示し、図8は波長1550nmのときの特性を示す。
【0093】
図7及び図8において、トリクロロメチルトリアジンにはパラメトキシスチルトリアジンを用いた。
【0094】
図7に示すL20はパラメトキシスチルトリアジンの添加量が0%のときの特性曲線を示し、L21は同添加量が1%のときの特性曲線を示し、L22は同添加量が5%のときの特性曲線を示す。
【0095】
図8に示すL30はパラメトキシスチルトリアジンの添加量が0%のときの特性曲線を示し、L31は同添加量が1%のときの特性曲線を示し、L32は同添加量が5%のときの特性曲線を示す。
【0096】
図7及び図8よりトリクロロメチルトリアジンの添加量が多い程、屈折率の温度安定性は良い結果になることが分かる。但し、トリクロロメチルトリアジンの添加量が5%以上になると、長波長帯(>830nm)での光透過率が低下するので、トリクロロメチルトリアジンの添加量としては1%以上、5.5%以下が好ましい。
【0097】
図9は増感剤として、好ましくない材料を用いた場合のベーク温度に対する屈折率変化を示す図であり、横軸はベーク温度軸を示し、縦軸は屈折率軸を示す。
【0098】
図9に示すL40は波長が633nmで過酸化物の添加量が0%のときの特性曲線を示し、L41は波長が633nmで同添加量が5%のときの特性曲線を示す。L42は波長が1550nmで同添加量が0%のときの特性曲線を示し、L43は波長が1550nmで同添加量が5%のときの特性曲線を示す。
【0099】
この例では増感剤として光反応性の過酸化物が用いられている。この過酸化物が0%と5%とについて屈折率特性を測定したが、過酸化物を添加した方が屈折率の温度安定性は悪くなることが分かった。すなわち、増感剤にも好ましいものとそうでないものとがあることが分かった。トリクロロメチルトリアジン系については好ましい結果が得られたが、長波長帯での光透過率を考えると、できる限り光透過率の良い材料が好ましい。また、ポリシラン化合物の紫外線吸収ピーク波長に近い最大吸収波長をもった材料を選ぶ必要がある。さらに融点の高い材料を選ぶことも重要な要素である。
【0100】
本発明のシリコーン化合物を添加した分岐型ポリシラン化合物にトリクロロメチルトリアジンの添加量を変えて試作したポリマ膜の特性を図10、図11に示す。図10は図7のトリクロロメチルトリアジン添加量が0%の場合の紫外線照射による屈折率の低下の様子を示す図である。図11は図7のトリクロロメチルトリアジン添加量が5%の場合のそれぞれの紫外線照射による屈折率の低下の様子を示す図である。図10及び図11において横軸はUV光照射時間軸を示し、縦軸は屈折率軸を示す。図10に示すL50はトリアジンの添加率が0%で波長が633nmのときの特性曲線を示し、L51は同添加率が0%で波長が1550nmのときの特性曲線を示す。図11に示すL60はトリアジンの添加率が5%で波長が633nm%のときの特性曲線を示し、L61は同添加率が5%で波長が1550nmのときの特性曲線を示す。
【0101】
図10及び図11は紫外線として150W水銀キセノンランプからの紫外線をファイババンドルスコープでガイドしてきて膜表面に照射し、その照射時間に対する膜の屈折率を測定して求めたものである。但し、上記ファイババンドルスコープの出力は1200mJ/cm2 であった。図10、11より、トリクロロメチルトリアジンの添加されていない膜の屈折率は紫外線照射時間に対して不連続に変化し、屈折率を照射時間で精密に制御することが困難であった。これに対して、トリクロロメチルトリアジン5wt%を添加した膜の屈折率は紫外線の照射時間に対して連続的に変化し、照射時間で屈折率を制御することが容易となる。
【0102】
図12は分岐型ポリシラン化合物にシリコーン化合物を添加して得たポリマ膜のシリコーン化合物添加量に対する紫外線の照射前と照射後で比屈折率差が最大でどのくらい得られるかを求めた結果を示す図である。同図において横軸はポリシラン化合物に対するシリコーン化合物の添加量を示し、縦軸は紫外線照射によって得られる最大比屈折率差Δを示す。
【0103】
この図12は図6に示した特性のポリマ膜を200℃のベーク温度で熱処理したポリマ膜について波長633nmでの屈折率を紫外線の照射前と照射後とで測定し、得られた測定結果から最大比屈折率差Δを求めたものである。シリコーン化合物の添加量が多くなると、比屈折率差Δも小さくなることが分かった。この比屈折率差Δはできるだけ大きくとれることが望ましいが、屈折率の温度安定性を考慮に入れると、最適なシリコーン化合物の添加量40wt%から90wt%の範囲では比屈折率差Δは3%以上、5.5%以下の値が得られたが、この値は十分に高感度な値である。
【0104】
次に、ポリシラン化合物の最適なものについて述べる。
【0105】
図13は本発明のポリマ導波路に用いられるポリシラン膜及び従来のポリマ導波路に用いられるポリシラン膜の光透過率と波長との関係を示す図であり、横軸が波長軸を示し、縦軸が光透過率軸を示している。
【0106】
同図において、L70は本発明のポリマ導波路用の膜としての分岐型ポリシラン膜(分岐度20%)の特性曲線を示し、L71は本発明のポリマ導波路用の膜としての分岐型ポリシラン膜(分岐度3%)の特性曲線を示し、L72は従来のポリマ導波路用の膜としての直鎖型のポリシラン膜の特性曲線を示す(膜厚:約30μm)。
【0107】
ここで、ポリシラン膜には、同一条件での比較のため、全てシリコーン化合物が50wt%添加されている。同図より、従来のポリマ導波路に用いられている直鎖型ポリシラン膜より本発明のポリマ導波路に用いられる分岐型ポリシラン膜の方が光透過率は高くなることが分かる。また、本発明の分岐型の場合にはその分岐度を高くするほど、光透過率は高くなることを初めて見出すことができた。
【0108】
図14は本発明のポリマ導波路に用いられる分岐型ポリシラン化合物に添加するシリコーン化合物の添加量と光透過率特性との関係を示す図である(膜厚:約300μm)。同図において横軸は波長軸を示し、縦軸は光透過率軸を示す。
【0109】
同図に示すL80はシリコーン化合物の添加量が0%のときの特性曲線、L81は同添加量が20%のときの特性曲線、L82は同添加量が50%のときの特性曲線、L83同添加量が70%のときの特性曲線、L84は同添加量が100%のときの特性曲線をそれぞれ示す。
【0110】
同図より、シリコーン化合物の添加量が多い程、光透過率が向上することを見出すことができた。この図14に示した結果と、図6に示した結果とから、シリコーン化合物の最適な添加量を先に示したような値に選ぶことができた。
【0111】
以上において、本発明によれば
(1) 250℃程度の高い温度まで屈折率の温度依存性の極めて少ないフォトブリーチングによる低光伝搬損失のポリマ導波路を実現することができる。これはポリシラン化合物にシリコーン化合物を所望配合比で添加することによって屈折率の温度安定性と低光伝搬損失を実現することができたものである。またシリコーン化合物の添加によって屈折率も低い値に下げることができるので、ガラス系ファイバとの接続の際の接続損失を小さくすることができる。またポリシラン化合物に分岐型ポリシラン化合物を用いたことも低光伝搬損失化に効果を発揮させることができた。また上記分岐型ポリシラン化合物を用いることにより、またその分岐度として2%以上のものを用いることにより、低光伝搬損失で、偏波依存性のない導波路を実現することもできる。
(2) 分岐型ポリシラン化合物に、架橋性、あるいはアルコキシ基からなるシリコーン化合物を添加したポリマ材料はトルエンのような有機溶媒に容易に溶けて粒子径が極めて小さく、均一になるので、光散乱中心のほとんどない低損失なポリマ層を種々の基板の上に形成することができる。また上記微粒子径の均一なポリマ膜の上に所望パターンの描かれたフォトマスクを置いて紫外線を照射することにより、極めて正確なパターンを描画することができ、その結果、コア層と側面クラッド層の界面をより均一にすることができる。これにより、さらに低光散乱損失の導波路を実現することができる。
(3) また上記ポリシランとシリコーンの化合物の添加されたものにトリクロロメチルトリアジン系光酸発生剤を所望量添加することで、さらに高い温度まで屈折率を一定に保つことができ、また紫外線照射量によって屈折率を制御性良く低下させることができると共に屈折率変化の感度も向上させることができた。
(4) また低屈折率のクラッド層にシリコーン化合物を用いることにより上記コア層及び側面クラッド層との界面の均一性及び密着性を向上させることができる。またフォトブリーチング用ポリマ膜との熱膨張係数の違いを小さくすることができるので、熱膨張係数の違いによるマイクロクラックの発生を抑えることができる。
(5) 250℃程度の高い温度まで屈折率の温度依存性の極めて少ないフォトブリーチングによる低光伝搬損失のポリマ導波路であるので、導波路の上、下、あるいは中に電子または光部品を半田実装する際に上記導波路の屈折率がほとんど変化しないので、種々の高機能光電気複合デバイスを実現することができる。
(6) 高比屈折率差の導波路を低損失で実現することができる。
【0112】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、次のような優れた効果を発揮する。
【0113】
周囲温度が変化しても光学特性の変化が少ない低損失のポリマ導波路及びその製造方法の提供を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリマ導波路の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明のポリマ導波路の他の実施の形態を示す断面図である。
【図3】本発明のポリマ導波路の他の実施の形態を示す断面図である。
【図4】本発明のポリマ導波路の他の実施の形態を示す断面図である。
【図5】本発明のポリマ導波路の製造方法の一実施例を示す工程図である。
【図6】本発明のポリマ導波路に用いられるポリマ材料の特性を示す図である。
【図7】シリコーン化合物添加分岐型ポリシラン化合物に光酸発生剤としてトリクロロメチルトリアジン系材料を添加した場合のベーク温度に対する屈折率の特性を示す図である。
【図8】シリコーン化合物添加分岐型ポリシラン化合物に光酸発生剤としてトリクロロメチルトリアジン系材料を添加した場合のベーク温度に対する屈折率の特性を示す図である。
【図9】増感剤として、好ましくない材料を用いた場合のベーク温度に対する屈折率変化を示す図である。
【図10】図7のトリクロロメチルトリアジン添加量が0%の場合の紫外線照射による屈折率の低下のようすを示す図である。
【図11】図8のトリクロロトリメチルアジン添加量が5%の場合のそれぞれの紫外線照射による屈折率の低下のようすを示す図である。
【図12】分岐型ポリシラン化合物にシリコーン化合物を添加して得たポリマ膜のシリコーン化合物の添加量に対する紫外線の照射前と照射後で比屈折率差が最大でどのくらい得られるかを求めた結果を示す図である。
【図13】本発明のポリマ導波路に用いられるポリシラン膜及び従来のポリマ導波路に用いられるポリシラン膜の光透過率と波長との関係を示す図である。
【図14】本発明のポリマ導波路に用いられる分岐型ポリシラン化合物に添加するシリコーン化合物の添加量と光透過率特性との関係を示す図である。
【図15】従来のポリマ導波路の外観斜視図である。
【符号の説明】
1 基板
2 下部クラッド層
3−1〜3−3 側面クラッド層
4−1、4−2 コア層
5 上部クラッド層
6 紫外線カット層
Claims (16)
- 低屈折率のクラッド層と、該クラッド層で覆われた略矩形断面形状の高屈折率のコア層とを備えた導波路において、該コア層及び該コア層の両側面の側面クラッド層は分岐型ポリシラン化合物にシリコーン化合物を含有した材料で構成されていることを特徴とするポリマ導波路。
- 低屈折率のクラッド層と、該クラッド層で覆われた略矩形断面形状の高屈折率のコア層とを備えた導波路において、該コア層及び該コア層の両側面の側面クラッド層は分岐型ポリシラン化合物にトリクロロメチルトリアジン系光酸発生剤を含有した材料で構成されていることを特徴とするポリマ導波路。
- 上記側面クラッド層は紫外線の照射前と照射後とで少なくとも1%の比屈折率差が得られるように紫外線照射で屈折率が低下させられている請求項1又は2に記載のポリマ導波路。
- 上記コア層は紫外線が照射され、上記側面クラッド層の屈折率よりも高い値に保たれている請求項1から3のいずれかに記載のポリマ導波路。
- 上記クラッド層及び上記コア層は半導体、ガラス、磁性体、プラスチックス、あるいはこれらの複合体からなる板状部材の上に形成されている請求項1から4のいずれかに記載のポリマ導波路。
- 上記クラッド層としてシリコーン化合物が用いられている請求項1から5のいずれかに記載のポリマ導波路。
- 上記コア層及び上記側面クラッド層の上面、下面あるいは両面に紫外線カット層が形成されている請求項1から6のいずれかに記載のポリマ導波路。
- 上記コア層の上側の上部クラッド層及び上記コア層の下側の下部クラッド層はトリクロロメチルトリアジン系光酸発生剤とポリシリコン化合物とシリコーン化合物とを含有する材料が用いられ、紫外線が照射されて屈折率が低下している請求項1から7のいずれかに記載のポリマ導波路。
- 上記分岐型ポリシラン化合物は、Si原子以外に炭化水素基、アルコキシ基、又は水素原子と結合している化合物である請求項1から8のいずれかに記載のポリマ導波路。
- 上記分岐型ポリシラン化合物は分岐度2%以上、50%以下の化合物が用いられている請求項1から9のいずれかに記載のポリマ導波路。
- 上記シリコーン化合物は架橋性、あるいはアルコキシ基からなり、ポリシラン化合物に対して40〜90wt%の配合比で添加されている請求項1から10のいずれかに記載のポリマ導波路。
- 上記光酸発生剤としてトリクロロメチルトリアジン系の発生剤を用い、該発生剤がポリシラン化合物に対して1wt%以上、5.5wt%以下の配合比で添加されている請求項1から11のいずれかに記載のポリマ導波路。
- 低屈折率の下部クラッド層の上面に分岐型ポリシラン化合物と架橋性あるいはアルコキシ基のシリコーン化合物とを含有する高屈折率のポリマ層を形成する工程、該ポリマ層の上面に所望パターン形状の描かれたフォトマスクを介して紫外線を照射して高屈折率の略矩形断面形状のコア層とその周りの側面に低屈折率に変化した側面クラッド層を形成する工程、上記コア層及び上記側面クラッド層の上面に低屈折率の上部クラッド層を形成する工程、該上部クラッド層の上面にUVカット層を形成する工程からなることを特徴とするポリマ導波路の製造方法。
- 低屈折率の下部クラッド層の上に分岐型ポリシラン化合物と架橋性あるいはアルコキシ基のシリコーン化合物とを含有する高屈折率のポリマ層を形成し、該ポリマ層の上に低屈折率の上部クラッド層を形成し、該上部クラッド層の上にフォトマスクを配置して紫外線を照射して高い屈折率の略矩形断面形状のコア層と該コア層の両側面に低屈折率の側面クラッド層を形成した後、上記上部クラッド層の上にUVカット層を形成することを特徴とするポリマ導波路の製造方法。
- 上記下部クラッド層を半導体、ガラス、磁性体、プラスチックスあるいはこれらの複合体かなる板状部材の上に形成する請求項13又は14に記載のポリマ導波路の製造方法。
- 有機溶媒に溶けた上記分岐型ポリシラン化合物と上記シリコーン化合物とを板状部材の上に塗布し、100℃以上、280℃以下で熱処理して硬化させて上記ポリマ層を形成する請求項13から15のいずれかに記載のポリマ導波路の製造方法。
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