JP3884635B2 - 炭酸カルシウム多孔質粒子、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、孔中に各種物質を含浸させて有用な機能を発現でき、多孔質であるために各種物質に対して高い吸収量を有する多孔質粒子、特に生体安全性の高い炭酸カルシウムを基材とする多孔質粒子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、炭酸カルシウムの多孔質粒子はその多孔性を生かすべく、徐放剤・製紙用原料・食品添加剤・化粧料などとして様々な産業分野で利用されている。さらに炭酸カルシウム多孔質粒子は、種々の物質を担持させることで新規な機能を有する粒子となり、様々な応用が可能であるから、担体としての炭酸カルシウム多孔質粒子の研究開発も進められている。多孔質の炭酸カルシウムの製法としては、例えば重質炭酸カルシウムに多孔形成促進剤を添加し、焼成、蒸気消化、再炭酸化させて多孔質化させる方法(特開平4-349116)、石灰乳を複雑な炭酸化工程を行うことで炭酸カルシウムの連鎖状粒子を集合させてポーラスにする方法(特開平8-198623)、炭酸カルシウムと可溶性リン酸化合物と反応させる多孔質炭酸カルシウム系化合物の製造方法(特開平7-223813および特開平9-183617)、石灰乳を縮合リン酸化合物の存在下、塩基性炭酸カルシウムが生成する反応条件で炭酸化させる板状炭酸カルシウムの球状複合体の製造方法(特開平10-59716)などがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
よって本発明の目的は、容易かつ効率よく製造することのできる炭酸カルシウム多孔質粒子、及びその製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
炭酸カルシウムは、通常、水に生石灰を加えて調製する石灰乳に炭酸ガスを吹き込む炭酸ガス化合法で工業的に生産されている。本発明は、水に生石灰を加えて得られる非常に微細な消石灰粒子が懸濁している石灰乳に代わって、水1Lに対して粒径0.5−5mmの粒状消石灰を25g以上の割合で混合した混合物を用いることで、炭酸ガスが吹き込まれる際に従来の石灰乳とは異なった炭酸カルシウム結晶の核形成と成長の場を導入し、炭酸カルシウム粒子を凝集させて多孔質粒子を形成させるものである。本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子は、水に粒状消石灰を投入後、炭酸ガスを吹き込むことで、特別に工夫された炭酸化工程や添加薬品を必要とすることなく容易に得られ、炭酸化反応を行う温度によって多孔質粒子の特性を変化させることもできる。50℃を越える温度の下で炭酸化反応させると針状粒子が含まれた多孔質粒子が生成される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態によれば、以下の工程を経ることにより、炭酸カルシウム多孔質粒子を製造することできる。
【0006】
出発原料となる粒状消石灰(粒径0.5−5mm)は、例えば、次のような粉末消石灰の製造工程中から得ることができる。生石灰粒(粒径10mm以下)を約5.5t/h、井戸水(水温15−20℃)を約3.3t/hの流量で混合・連続消化させた後、エアセパレーターで微粉を除去し、ふるいによって所望のサイズの粒状消石灰(粒径0.5−5mm)を回収する。このような選別過程を経ることにより、粒径0.5mm未満の粒状消石灰は(その後の破砕で生ずるもの等を除き)実質的に除去され、粒径5mmを越える粒状消石灰も除去される。
【0007】
炭酸化反応を行う所定温度に調整された水1Lに対して選別された粒状消石灰(粒径0.5−5mm)を25g以上の割合で投入後、炭酸ガスを吹き込んで炭酸化反応を行う。温度を15−50℃に調整して炭酸ガスを吹き込めば、カルサイトの含まれる割合が多く、外観上は微細粒子の多い多孔質粒子が、50℃を越える温度で炭酸ガスを吹き込めば、アラゴナイトの割合が増え、外観上は針状粒子の目立つ多孔質粒子が生成される。
【0008】
粒状消石灰を水1Lに対して25g投入する最低濃度の場合でも、pH=7−8となる炭酸化終了までの時間が60分以上になるように、炭酸ガスを吹き込むのが好ましい。炭酸ガスの吹き込み量が多すぎると、pH=7−8に達しても粒状消石灰の表面が炭酸化されているだけで内部は消石灰のままになっている粒が残存している場合があり、好ましくない。
【0009】
粒状消石灰の粒径は0.5−5mmであり、好ましくは0.5−2mmである。粒径が大きくなればなるほど、上述の理由により、よりゆっくりと炭酸ガスを吹き込まなければならないため、炭酸化に長い時間を要するようになる。
【0010】
粒状消石灰を水1Lに対して25g以上の割合で混合して炭酸化させると、微細なカルサイト粒子や針状のアラゴナイト粒子が凝集した多孔質粒子が得られる。投入量が25g未満では凝集が不十分で、多孔質粒子が形成されていない状態が観察される。従来の炭酸カルシウムの製造過程における水に生石灰を加えて調製した石灰乳は非常に微細な消石灰粒子が生成しているため、高濃度では粘度が高く、場合によってはクリームもしくはペースト状となり、取り扱いにくい。一方、本発明においては粒径0.5−5mmの粒を水に投入するため、例えば所定温度の水1Lに対して300gの割合で粒状消石灰を投入した高濃度の混合物も簡単に調製でき、そのまま炭酸ガスを吹き込むことで、目的に応じた多孔質粒子が容易に得られる。
【0011】
炭酸化温度を15℃より低くすると、多孔質粒子は形成されず、通常のコロイダル状炭酸カルシウムとなる。温度調整の要らない室温付近で炭酸化させて得られる多孔質粒子の細孔直径:3−0.0065μmの細孔容積は約0.5cc/g(水銀圧入法)、50℃では約1.0cc/gとほぼ倍増する。室温から温度を50℃に上昇させて炭酸化反応を行うと、得られる多孔質粒子中に針状結晶(アラゴナイト)粒子が含有されるようになるため、多孔質粒子内の空隙が増えて細孔容積が増大したものと、電顕観察と粉末X線回折の結果から推測される。
【0012】
本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子は、従来の炭酸カルシウム多孔質粒子と同様の用途に適応できるほか、特に炭酸化反応を行う温度を50℃以上に設定して得られた針状粒子を含む多孔質粒子は研磨剤として使用した場合の効果が大きい。
【0013】
【発明の効果】
本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子は種々の物質を担持させることで新規な機能を有する粒子となり、食品添加剤・徐放剤・研磨剤などの分野で様々な応用が期待される。また、炭酸カルシウムは、新しく骨が生成されるにつれて生体内に吸収されるか分解して体外に排出され、最終的には自己骨によって欠損部が修復される有用な骨修復用生体材料であるが、これを多孔質粒子にすることで、早く新しい骨の生成を促進させる物質を担持させ、さらに骨修復機能を高めることも期待される。本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子の製造方法によれば、生体安全性の高い炭酸カルシウムであって、上記のような可能性を持った多孔質粒子を容易かつ効率よく製造することができる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明に係る炭酸カルシウムの製造方法の実施例について説明する。以下の実施例についての説明は本発明をより深く理解するためのものであって、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0015】
(実施例1)
25℃の水2Lに粒状消石灰(粒径0.5−2mm)を100g投入後、25℃で炭酸ガスを0.5L/minの流量でpH=7−8となるまで撹拌しながら2h吹き込んで炭酸化させた。生成物をろ過して回収し、約105℃で乾燥させて試料1を得た。図1及び図2に試料1の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察写真を示す。これらのSEM写真から、得られた生成物が粒径約5−20μmの粒子で、一つの粒子は微細な粒子からなっている多孔質粒子であることが観察された。試料1のメジアン径は11.2μm(レーザ回折式粒度分布測定装置(分散媒:水))、細孔直径:3−0.0065μmの細孔容積は0.52cc/g(水銀圧入法)であった。X線回折(XRD)から、この多孔質粒子の結晶相はカルサイトであった。
【0016】
(実施例2)
25℃の水2Lに粒状消石灰(粒径0.5−2mm)を600g投入後、25℃で炭酸ガスを1.5L/minの流量でpH=7−8となるまで撹拌しながら7.2h吹き込んで炭酸化させた。生成物をろ過して回収し、約105℃で乾燥させて試料2を得た。図3及び図4に試料2のSEM観察写真を示す。これらのSEM写真から、得られた生成物が粒径約5−15μmの粒子で、一つの粒子は微細な粒子からなっている多孔質粒子であることが観察された。試料2のメジアン径は7.8μm、細孔直径:3−0.0065μmの細孔容積は0.49cc/gであった。
【0017】
(実施例3)
50℃の水2Lに粒状消石灰(粒径0.5−2mm)を100g投入後、50℃で炭酸ガスを0.5L/minの流量でpH=7−8となるまで撹拌しながら2.5h吹き込んで炭酸化させた。生成物をろ過して回収し、約105℃で乾燥させて試料3を得た。図5及び図6に試料3のSEM観察写真を示す。これらのSEM写真から、得られた生成物が粒径約5−20μmの粒子で、一つの粒子は微細な粒子と針状粒子からなっている多孔質粒子であることが観察された。試料3のメジアン径は12.0μm、細孔直径:3−0.0065μmの細孔容積は1.00cc/gであった。XRDから、この多孔質粒子の結晶相はカルサイトとアラゴナイトであった。
【0018】
(実施例4)
60℃の水2Lに粒状消石灰(粒径0.5−2mm)を200g投入後、60℃で炭酸ガスを0.5L/minの流量でpH=7−8となるまで撹拌しながら4.75h吹き込んで炭酸化させた。生成物をろ過して回収し、約105℃で乾燥させて試料4を得た。図7及び図8に試料4のSEM観察写真を示す。これらのSEM写真から、得られた生成物が粒径約5−20μmの粒子で、一つの粒子はほとんど針状粒子からなっている多孔質粒子であることが観察された。試料4のメジアン径は12.4μmであった。XRDから、この多孔質粒子の結晶相はカルサイトとアラゴナイトであった。
【0019】
(比較例)
水に粒状消石灰を投入した液に代わって、水に生石灰を加えて得られる石灰乳を用いて実施例3と同様の操作を行い、試料5を得た。石灰乳は以下のようにして調製した。60℃の水0.8Lに生石灰(JIS工業石灰の生石灰特号、粒径5−35mm)を160g投入、約1時間撹拌した。続いて水で希釈し、目開き150μmのふるいで粗粒子及び異物等を取り除いて、濃度5g/100mLの石灰乳を調製した。図9及び図10に試料5のSEM観察写真を示す。これらのSEM写真から、石灰乳に炭酸ガスを吹き込んで得られた試料5は、通常、軽微性炭酸カルシウムと呼ばれている紡錘状粒子であることが観察された。試料5のメジアン径は3.2μmであった。XRDから、この炭酸カルシウムの結晶相はカルサイトであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子の製造方法の実施例1により得られた試料1の走査型電子顕微鏡写真(X600)である。
【図2】図2は、試料1の走査型電子顕微鏡写真(X12000)である。
【図3】図3は、本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子の製造方法の実施例2により得られた試料2の走査型電子顕微鏡写真(X600)である。
【図4】図4は、試料2の走査型電子顕微鏡写真(X12000)である。
【図5】図5は、本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子の製造方法の実施例3により得られた試料3の走査型電子顕微鏡写真(X600)である。
【図6】図6は、試料3の走査型電子顕微鏡写真(X6000)である。
【図7】図7は、本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子の製造方法の実施例4により得られた試料4の走査型電子顕微鏡写真(X600)である。
【図8】図8は、試料4の走査型電子顕微鏡写真(X6000)である。
【図9】図9は、石灰乳に炭酸ガスを吹き込んで製造した軽微性炭酸カルシウムの走査型電子顕微鏡写真(X600)である。
【図10】図10は、図9の軽微性炭酸カルシウムの走査型電子顕微鏡写真(X12000)である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、孔中に各種物質を含浸させて有用な機能を発現でき、多孔質であるために各種物質に対して高い吸収量を有する多孔質粒子、特に生体安全性の高い炭酸カルシウムを基材とする多孔質粒子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、炭酸カルシウムの多孔質粒子はその多孔性を生かすべく、徐放剤・製紙用原料・食品添加剤・化粧料などとして様々な産業分野で利用されている。さらに炭酸カルシウム多孔質粒子は、種々の物質を担持させることで新規な機能を有する粒子となり、様々な応用が可能であるから、担体としての炭酸カルシウム多孔質粒子の研究開発も進められている。多孔質の炭酸カルシウムの製法としては、例えば重質炭酸カルシウムに多孔形成促進剤を添加し、焼成、蒸気消化、再炭酸化させて多孔質化させる方法(特開平4-349116)、石灰乳を複雑な炭酸化工程を行うことで炭酸カルシウムの連鎖状粒子を集合させてポーラスにする方法(特開平8-198623)、炭酸カルシウムと可溶性リン酸化合物と反応させる多孔質炭酸カルシウム系化合物の製造方法(特開平7-223813および特開平9-183617)、石灰乳を縮合リン酸化合物の存在下、塩基性炭酸カルシウムが生成する反応条件で炭酸化させる板状炭酸カルシウムの球状複合体の製造方法(特開平10-59716)などがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
よって本発明の目的は、容易かつ効率よく製造することのできる炭酸カルシウム多孔質粒子、及びその製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
炭酸カルシウムは、通常、水に生石灰を加えて調製する石灰乳に炭酸ガスを吹き込む炭酸ガス化合法で工業的に生産されている。本発明は、水に生石灰を加えて得られる非常に微細な消石灰粒子が懸濁している石灰乳に代わって、水1Lに対して粒径0.5−5mmの粒状消石灰を25g以上の割合で混合した混合物を用いることで、炭酸ガスが吹き込まれる際に従来の石灰乳とは異なった炭酸カルシウム結晶の核形成と成長の場を導入し、炭酸カルシウム粒子を凝集させて多孔質粒子を形成させるものである。本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子は、水に粒状消石灰を投入後、炭酸ガスを吹き込むことで、特別に工夫された炭酸化工程や添加薬品を必要とすることなく容易に得られ、炭酸化反応を行う温度によって多孔質粒子の特性を変化させることもできる。50℃を越える温度の下で炭酸化反応させると針状粒子が含まれた多孔質粒子が生成される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態によれば、以下の工程を経ることにより、炭酸カルシウム多孔質粒子を製造することできる。
【0006】
出発原料となる粒状消石灰(粒径0.5−5mm)は、例えば、次のような粉末消石灰の製造工程中から得ることができる。生石灰粒(粒径10mm以下)を約5.5t/h、井戸水(水温15−20℃)を約3.3t/hの流量で混合・連続消化させた後、エアセパレーターで微粉を除去し、ふるいによって所望のサイズの粒状消石灰(粒径0.5−5mm)を回収する。このような選別過程を経ることにより、粒径0.5mm未満の粒状消石灰は(その後の破砕で生ずるもの等を除き)実質的に除去され、粒径5mmを越える粒状消石灰も除去される。
【0007】
炭酸化反応を行う所定温度に調整された水1Lに対して選別された粒状消石灰(粒径0.5−5mm)を25g以上の割合で投入後、炭酸ガスを吹き込んで炭酸化反応を行う。温度を15−50℃に調整して炭酸ガスを吹き込めば、カルサイトの含まれる割合が多く、外観上は微細粒子の多い多孔質粒子が、50℃を越える温度で炭酸ガスを吹き込めば、アラゴナイトの割合が増え、外観上は針状粒子の目立つ多孔質粒子が生成される。
【0008】
粒状消石灰を水1Lに対して25g投入する最低濃度の場合でも、pH=7−8となる炭酸化終了までの時間が60分以上になるように、炭酸ガスを吹き込むのが好ましい。炭酸ガスの吹き込み量が多すぎると、pH=7−8に達しても粒状消石灰の表面が炭酸化されているだけで内部は消石灰のままになっている粒が残存している場合があり、好ましくない。
【0009】
粒状消石灰の粒径は0.5−5mmであり、好ましくは0.5−2mmである。粒径が大きくなればなるほど、上述の理由により、よりゆっくりと炭酸ガスを吹き込まなければならないため、炭酸化に長い時間を要するようになる。
【0010】
粒状消石灰を水1Lに対して25g以上の割合で混合して炭酸化させると、微細なカルサイト粒子や針状のアラゴナイト粒子が凝集した多孔質粒子が得られる。投入量が25g未満では凝集が不十分で、多孔質粒子が形成されていない状態が観察される。従来の炭酸カルシウムの製造過程における水に生石灰を加えて調製した石灰乳は非常に微細な消石灰粒子が生成しているため、高濃度では粘度が高く、場合によってはクリームもしくはペースト状となり、取り扱いにくい。一方、本発明においては粒径0.5−5mmの粒を水に投入するため、例えば所定温度の水1Lに対して300gの割合で粒状消石灰を投入した高濃度の混合物も簡単に調製でき、そのまま炭酸ガスを吹き込むことで、目的に応じた多孔質粒子が容易に得られる。
【0011】
炭酸化温度を15℃より低くすると、多孔質粒子は形成されず、通常のコロイダル状炭酸カルシウムとなる。温度調整の要らない室温付近で炭酸化させて得られる多孔質粒子の細孔直径:3−0.0065μmの細孔容積は約0.5cc/g(水銀圧入法)、50℃では約1.0cc/gとほぼ倍増する。室温から温度を50℃に上昇させて炭酸化反応を行うと、得られる多孔質粒子中に針状結晶(アラゴナイト)粒子が含有されるようになるため、多孔質粒子内の空隙が増えて細孔容積が増大したものと、電顕観察と粉末X線回折の結果から推測される。
【0012】
本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子は、従来の炭酸カルシウム多孔質粒子と同様の用途に適応できるほか、特に炭酸化反応を行う温度を50℃以上に設定して得られた針状粒子を含む多孔質粒子は研磨剤として使用した場合の効果が大きい。
【0013】
【発明の効果】
本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子は種々の物質を担持させることで新規な機能を有する粒子となり、食品添加剤・徐放剤・研磨剤などの分野で様々な応用が期待される。また、炭酸カルシウムは、新しく骨が生成されるにつれて生体内に吸収されるか分解して体外に排出され、最終的には自己骨によって欠損部が修復される有用な骨修復用生体材料であるが、これを多孔質粒子にすることで、早く新しい骨の生成を促進させる物質を担持させ、さらに骨修復機能を高めることも期待される。本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子の製造方法によれば、生体安全性の高い炭酸カルシウムであって、上記のような可能性を持った多孔質粒子を容易かつ効率よく製造することができる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明に係る炭酸カルシウムの製造方法の実施例について説明する。以下の実施例についての説明は本発明をより深く理解するためのものであって、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0015】
(実施例1)
25℃の水2Lに粒状消石灰(粒径0.5−2mm)を100g投入後、25℃で炭酸ガスを0.5L/minの流量でpH=7−8となるまで撹拌しながら2h吹き込んで炭酸化させた。生成物をろ過して回収し、約105℃で乾燥させて試料1を得た。図1及び図2に試料1の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察写真を示す。これらのSEM写真から、得られた生成物が粒径約5−20μmの粒子で、一つの粒子は微細な粒子からなっている多孔質粒子であることが観察された。試料1のメジアン径は11.2μm(レーザ回折式粒度分布測定装置(分散媒:水))、細孔直径:3−0.0065μmの細孔容積は0.52cc/g(水銀圧入法)であった。X線回折(XRD)から、この多孔質粒子の結晶相はカルサイトであった。
【0016】
(実施例2)
25℃の水2Lに粒状消石灰(粒径0.5−2mm)を600g投入後、25℃で炭酸ガスを1.5L/minの流量でpH=7−8となるまで撹拌しながら7.2h吹き込んで炭酸化させた。生成物をろ過して回収し、約105℃で乾燥させて試料2を得た。図3及び図4に試料2のSEM観察写真を示す。これらのSEM写真から、得られた生成物が粒径約5−15μmの粒子で、一つの粒子は微細な粒子からなっている多孔質粒子であることが観察された。試料2のメジアン径は7.8μm、細孔直径:3−0.0065μmの細孔容積は0.49cc/gであった。
【0017】
(実施例3)
50℃の水2Lに粒状消石灰(粒径0.5−2mm)を100g投入後、50℃で炭酸ガスを0.5L/minの流量でpH=7−8となるまで撹拌しながら2.5h吹き込んで炭酸化させた。生成物をろ過して回収し、約105℃で乾燥させて試料3を得た。図5及び図6に試料3のSEM観察写真を示す。これらのSEM写真から、得られた生成物が粒径約5−20μmの粒子で、一つの粒子は微細な粒子と針状粒子からなっている多孔質粒子であることが観察された。試料3のメジアン径は12.0μm、細孔直径:3−0.0065μmの細孔容積は1.00cc/gであった。XRDから、この多孔質粒子の結晶相はカルサイトとアラゴナイトであった。
【0018】
(実施例4)
60℃の水2Lに粒状消石灰(粒径0.5−2mm)を200g投入後、60℃で炭酸ガスを0.5L/minの流量でpH=7−8となるまで撹拌しながら4.75h吹き込んで炭酸化させた。生成物をろ過して回収し、約105℃で乾燥させて試料4を得た。図7及び図8に試料4のSEM観察写真を示す。これらのSEM写真から、得られた生成物が粒径約5−20μmの粒子で、一つの粒子はほとんど針状粒子からなっている多孔質粒子であることが観察された。試料4のメジアン径は12.4μmであった。XRDから、この多孔質粒子の結晶相はカルサイトとアラゴナイトであった。
【0019】
(比較例)
水に粒状消石灰を投入した液に代わって、水に生石灰を加えて得られる石灰乳を用いて実施例3と同様の操作を行い、試料5を得た。石灰乳は以下のようにして調製した。60℃の水0.8Lに生石灰(JIS工業石灰の生石灰特号、粒径5−35mm)を160g投入、約1時間撹拌した。続いて水で希釈し、目開き150μmのふるいで粗粒子及び異物等を取り除いて、濃度5g/100mLの石灰乳を調製した。図9及び図10に試料5のSEM観察写真を示す。これらのSEM写真から、石灰乳に炭酸ガスを吹き込んで得られた試料5は、通常、軽微性炭酸カルシウムと呼ばれている紡錘状粒子であることが観察された。試料5のメジアン径は3.2μmであった。XRDから、この炭酸カルシウムの結晶相はカルサイトであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子の製造方法の実施例1により得られた試料1の走査型電子顕微鏡写真(X600)である。
【図2】図2は、試料1の走査型電子顕微鏡写真(X12000)である。
【図3】図3は、本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子の製造方法の実施例2により得られた試料2の走査型電子顕微鏡写真(X600)である。
【図4】図4は、試料2の走査型電子顕微鏡写真(X12000)である。
【図5】図5は、本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子の製造方法の実施例3により得られた試料3の走査型電子顕微鏡写真(X600)である。
【図6】図6は、試料3の走査型電子顕微鏡写真(X6000)である。
【図7】図7は、本発明に係る炭酸カルシウム多孔質粒子の製造方法の実施例4により得られた試料4の走査型電子顕微鏡写真(X600)である。
【図8】図8は、試料4の走査型電子顕微鏡写真(X6000)である。
【図9】図9は、石灰乳に炭酸ガスを吹き込んで製造した軽微性炭酸カルシウムの走査型電子顕微鏡写真(X600)である。
【図10】図10は、図9の軽微性炭酸カルシウムの走査型電子顕微鏡写真(X12000)である。
Claims (8)
- 水1Lに対して粒径0.5−5mmの粒状消石灰を25g以上の割合で混合した混合物中に炭酸ガスを吹き込み、炭酸化反応させることにより得ることができる炭酸カルシウム多孔質粒子。
- 15−50℃で炭酸化反応させることにより得ることのできる請求項1に記載の炭酸カルシウム多孔質粒子。
- 50℃を越えて炭酸化反応させることにより得ることのできる請求項1に記載の炭酸カルシウム多孔質粒子。
- 混合物がpH=7−8となる炭酸化終了までの時間を60分以上で行うことにより得ることのできる請求項1ないし3のいずれかに記載の炭酸カルシウム多孔質粒子。
- 水1Lに対して粒径0.5−5mmの粒状消石灰を25g以上の割合で混合した混合物中に炭酸ガスを吹き込み、炭酸化反応させることを特徴とする炭酸カルシウム多孔質粒子の製造方法。
- 15−50℃で炭酸化反応させる請求項5に記載の炭酸カルシウム多孔質粒子の製造方法。
- 50℃を越えて炭酸化反応させる請求項5に記載の炭酸カルシウム多孔質粒子の製造方法。
- 混合物がpH=7−8となる炭酸化終了までの時間を60分以上で行う請求項5ないし7のいずれかに記載の炭酸カルシウム多孔質粒子の製造方法。
Priority Applications (1)
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