JP3884502B2 - テプレノン経口投与用製剤 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、テプレノンを有効成分とする経口投与用製剤に関する。詳しくは、本発明は、高齢者にも服用し易い液剤であり、且つテプレノンの保存安定性がよく製剤安定性にも優れた乳濁液である経口投与用製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
テプレノンを有効成分とする医薬製剤は、胃粘膜病変(びらん、出血、発疹、浮腫)の改善、急性胃炎、慢性胃炎の急性憎悪期そして胃潰瘍などの治療に広く一般に使用されている。従来、上記疾患の治療に用いられるテプレノン経口投与用製剤の剤形は、主に顆粒剤又はカプセル剤であった。
【0003】
しかしながら、これらの剤形は、嚥下能力が衰えている高齢者にとって必ずしも服用し易い剤形でない。そこで、これら従来の固形製剤に代えて、服用し易い液剤の開発が望まれていた。
【0004】
テプレノンを液剤化するにあたっては、テプレノンは油状物質であることから、動植物性油に混和して投与することも考えられるが、油を飲むのはベタツキ感があり飲み易いとは言い難く、また製剤安定性等の問題解決が困難である。
【0005】
また、テプレノンは、2重結合を4箇所にもち、酸化分解し易い物質であり、これを含有する既存の医薬品には抗酸化剤が必須であるという欠点がある。なお、抗酸化剤を添加してテプレノンの酸化を防止し、テプレノンの安定化を図ることについては特開平62−9096号公報等に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記観点に鑑みなされたものであり、水に極めて溶けにくいテプレノンを液剤化し、抗酸化剤を添加しなくてもテプレノンが酸化分解しにくく、また製剤安定性にも優れたテプレノン経口投与用製剤を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
テプレノンは水に極めて溶け難い(100000mlの水に1g以下)ので、水溶液製剤の設計は困難であった。そこで、本発明者らは、テプレノンの乳濁液の研究に着手し、乳化剤の検討を開始したが、一般に用いられる界面活性剤でテプレノンを乳化した液は、水とクリームとに相分離するクリーミングが経時的に起こり、また不安定であったテプレノンが酸化分解してしまいテプレノン自体の安定性も大変悪かった。
【0008】
本発明者らは、目的を達成するべく、さらに鋭意研究を重ねた結果、テプレノンを脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールの存在下に乳化することにより、油滴が均一で超微粒子の水中油型乳濁液が得られ、しかもこの乳濁液はクリーミングを生じにくく、乳化安定性に大変優れていることを見いだした。
【0009】
さらにこの乳濁液は、驚くべきことに抗酸化剤を添加しなくてもテプレノンの酸化分解が抑制され、テプレノン自体の経時安定性にも大変優れた乳濁液であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、テプレノンを有効成分とする経口投与用製剤であって、テプレノン、脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールを含む乳濁液である、テプレノン経口投与用製剤に関する。
【0011】
また、本発明は、テプレノンを、脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールの存在下に乳化して乳濁液を形成させる乳化工程を含む、テプレノン経口投与用製剤の製造方法に関する。
【0012】
テプレノンは水に極めて溶けにくいため水溶性製剤の設計は困難であったが、本発明においては、テプレノンを脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールによって乳化し乳濁液とすることにより、服用容易な液剤とすることができ、且つテプレノンの保存安定性を向上させることができる。また、本発明のテプレノン経口投与用製剤は、油滴が均一で超微粒子である乳化安定性に優れた水中油型乳濁液であり、具体的には、油滴の最大粒径を1μm以下とすることでき、製剤安定性に優れた経口投与用製剤である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0014】
(1)本発明のテプレノン経口投与用製剤
本発明のテプレノン経口投与用製剤は、テプレノンを有効成分とする製剤であって、テプレノン、脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールを含む乳濁液である。
【0015】
脂肪酸トリグリセリドとしては、特に限定されないが、炭素数4〜15の中鎖脂肪酸のトリグリセリドであることが好ましく、特に好ましくは炭素数8〜12の脂肪酸のトリグリセリドを用いる。このような脂肪酸トリグリセリドの具体例としては、ODO(日清製油社製)、商品名ココナード(花王社製)、商品名ミグリオール(ミツバ貿易社製)及び商品名パナセート(日本油脂社製)等が挙げられ、市販品として入手することもできる。
【0016】
ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものであり、一般的に乳化剤として使用できることが知られている。本発明の製剤に含まれるポリビニルアルコールとしては、好ましくはケン化度78〜96mol%のポリ酢酸ビニル部分ケン化物が用いられる。また、ポリビニルアルコールの重合度(又は分子量)としては特に限定されないが、好ましくは500〜2000程度である。
【0017】
テプレノン、脂肪酸トリグリセリド、ポリビニルアルコールの製剤中の含有量は特に制限はないが、それぞれ以下のようにすることが好ましい。テプレノンの乳濁液全量に対する含有量は、好ましくは0.1〜10%重量/容量であり、より好ましくは0.2〜8%重量/容量であり、さらに好ましくは0.4〜5%重量/容量である。脂肪酸トリグリセリドの含有量は、テプレノン1重量部に対し、好ましくは0.05〜4重量部であり、より好ましくは0.2〜3重量部であり、さらに好ましくは0.3〜2重量部である。ポリビニルアルコールの含有量は、テプレノン1重量部に対し、好ましくは0.1〜5重量部であり、より好ましくは0.2〜4重量部であり、さらに好ましくは0.3〜3重量部である。
【0018】
本発明の経口投与用製剤は、このようにテプレノンを脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールによって乳化された乳濁液である。その乳濁液は油滴にテプレノンを含む水中油型乳濁液であって油滴が均一で超微粒子であり、乳化安定性に優れている。具体的には、油滴の最大粒径を1μm以下とすることができる。
【0019】
本発明の経口投与用製剤には、服用し易いように、例えば緩衝剤、矯味剤、香料、増粘剤など医薬として経口投与可能な他の成分を添加してもよい。
緩衝剤の例としては、リン酸、酢酸又はその塩類など、矯味剤としては、D−ソルビトール、ショ糖、アスパルテーム、ストロベリー、サッカリン、食塩、還元麦芽糖水飴など、香料としてはメントールなど、増粘剤としては、キサンタンガム、トラガントガム、カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩などの水溶性高分子類を挙げることができる。これらの成分は任意の1種又は2種以上を混合してよく、それぞれ必要に応じた量を添加してよい。
【0020】
本発明の経口投与用製剤は、胃粘膜病変(びらん、出血、発疹、浮腫)、急性胃炎、慢性胃炎の急性憎悪期、胃潰瘍などの改善に好適である。また、高齢の患者にとっても大変服用し易い液剤である。
【0021】
本発明の経口投与用製剤中のテプレノンは酸化分解し難く安定している。また、その乳濁液は長期間にわたりクリーミング等の相分離も生じず、製剤としても安定している。
【0022】
(2)本発明のテプレノン経口投与用製剤の製造方法
本発明のテプレノン経口投与用製剤の製造方法は、テプレノンを、脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールの存在下に乳化して乳濁液を形成する乳化工程を含むことを特徴とする。このような各成分の存在下に乳化を行う方法であれば、各成分の混合方法、乳化の方法等は特に制限されるものではない。
【0023】
前記乳化工程は、テプレノンと脂肪酸トリグリセリドとの混合物を、ポリビニルアルコール水溶液中で乳化する工程とするのが好ましい。テプレノンと脂肪酸トリグリセリドの混合は、一般的な方法、例えば撹拌機等を用いて行えばよく、必要に応じて温度、撹拌機の回転数等を調整することができる。次いで、テプレノンと脂肪酸トリグリセリドの混合物をポリビニルアルコール水溶液に混合し乳化する。乳化は一般的な方法に従って行えばよく、例えば撹拌乳化機又は真空撹拌乳化機で予備乳化し、その後加圧衝突式乳化機で再乳化することにより超微粒子の乳濁液を得ることができる。また、予備乳化液を加圧式ろ過乳化機、高圧ホモジナイザー又は大出力の超音波乳化機などを用いて再乳化してもよいが、本発明は、乳化の際の使用機器や乳化方法については特に限定されない。
【0024】
【実施例】
以下に実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0025】
【実施例1】
テプレノン:50gと脂肪酸トリグリセリド(商品名:パナセート、日本油脂社製、脂肪酸の炭素数:8):100gとの混合油液を、D−ソルビトール:1000gとポリビニルアルコール(商品名:クラレPVA、製造及び販売元:クラレ社、ケン化度:78〜96mol%):65gとを溶解した水4Lに加えて、撹拌乳化機(特殊機化社製)で予備乳化を行った。
【0026】
予備乳化した乳濁液にさらに水を加えて5Lに調製した。この乳濁液をナノマイザー(特殊機化社製:超微粒子乳化機)にて再乳化し、本発明の経口投与用製剤を得た。これにより得られた経口投与用製剤は、メンブランフィルター(0.2μm孔)を透過した。
【0027】
【実施例2】
テプレノン:5gと脂肪酸トリグリセド(商品名:パナセート):10gとの混合油液を、D−ソルビトール:100gとポリビニルアルコール(クラレ社製):6.5gとを溶解した水400mLに加えて、実施例1と同じ撹拌乳化機で予備乳化を行った。予備乳化した乳濁液にさらに水を加えて500mLに調製した。この乳濁液を超音波乳化機(岩城硝子社製)で再乳化し、本発明の経口投与用製剤を得た。これによって得られた経口投与用製剤は、メンブランフィルター(0.2μm孔)を透過した。
【0028】
【比較例1】
テプレノン:10gとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名:ポリソルベート80、日本油脂社製、HLB:15.0)との混合油液を、D−ソルビトール:150gを溶解した水:800mLに加えて、実施例1と同じ撹拌乳化機で撹拌乳化し、その後さらに水を加えて1Lに調製した。この乳濁液はメンブランフィルター(0.2μm孔)を透過した。
【0029】
【比較例2】
テプレノン:500mgとポリエチレングリコール脂肪酸エステル(商品名:MYS−40、日光ケミカルズ社製、HLB:17.5):250mgとを50℃に加温して混合油液とし、これを50℃に加温した水:40mLに加えて、実施例1と同じ撹拌乳化機で撹拌乳化した。得られた乳濁液を冷却し、さらに水を加えて50mLに調製した。この乳濁液はメンブランフィルター(0.2μm孔)を透過した。
【0030】
【比較例3】
テプレノン:500mgとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:HCO−60、日光ケミカルズ社製、HLC:14.0):250mgとを50℃に加温して混合油液とし、これを50℃に加温した水:40mLに加えて、実施例1と同じ撹拌乳化機で撹拌乳化した。得られた乳濁液を冷却し、さらに水を加えて50mLに調製した。この乳濁液はメンブランフィルター(0.2μm孔)を透過することができなかった。
【0031】
【比較例4】
テプレノン:500mgとポリグリセリン脂肪酸エステル(商品名:DGDO、日光ケミカルズ社製、HLB:7.0):250mgとグリセリン:250 mgとを混合油液とし、これを水:40mLに加えて実施例1と同じ撹拌乳化機で予備乳化した後、実施例2と同じ超音波乳化機で再乳化を行った。再乳化の後、さらに水を加えて50mLに調製して乳濁液を得た。この乳濁液はメンブランフィルター(0.2μm孔)を透過することができなかった。
【0032】
【比較例5】
テプレノン:5gを、D−ソルビトール:100gとポリビニルアルコール(クラレ社製):6.5gとを溶解した水400mLに加えて、実施例1と同じ撹拌乳化機で撹拌し乳化を試みたが、乳化しなかった。
【0033】
【比較例6】
テプレノン:1gとソルビタン脂肪酸エステル(商品名:SO−15R、日光ケミカルズ社製、HLB:4.5):0.5gとを50℃に加温して混合油液とし、これを50℃に加温した水:80mLに加えて実施例1と同じ撹拌乳化機で撹拌乳化し放冷したが、乳化できなかった。
【0034】
【比較例7】
テプレノン:1gとグリセリン脂肪酸エステル(商品名:MGS−F50、日光ケミカルズ社製、HLB:3.5):0.5gを50℃に加温して混合油液とし、これを50℃に加温した水:40mLに加えて、実施例1と同じ撹拌乳化機で撹拌乳化し放冷したが、乳化できなかった。
【0035】
【試験例1】
本発明品の安定性を検討する目的で、本発明品をポリプロピレンの投薬瓶に充填し、40℃、75%RHの条件にて保存し、乳化状態(外観)を肉眼観察により、また、テプレノンの安定性(含量)を高速液体クロマトグラフ(HPLC)法により調べた。
【0036】
本発明品は、表1に示したように乳化状態が安定で、さらにテプレノン含量低下は微量であった。一方、比較例1〜4は、保存1ヶ月で水とクリームが相分離するクリーミングが確認され、その後の経過に従ってさらに外観変化が顕著に進み、またテプレノンの含量も経時的に著しく低下した。比較例5〜7は乳化しなかった。
【0037】
【表1】
【0038】
これらの試験結果から明らかなとおり、本発明の経口投与用製剤は、テプレノン自体の安定性及び製剤としての安定性に優れていることが確認された。
他方、比較例1〜4は乳化が不安定で含量低下が著しく、経口投与用製剤としての調製は満足できるものではなかった。また比較例5〜7は乳化が困難であった。
【0039】
【発明の効果】
テプレノンを有効成分とする本発明の経口投与用製剤は、製剤安定性(乳化安定性)に優れた乳濁液であり、液剤であるため高齢者でも服用が容易である。また、抗酸化剤を添加しなくてもテプレノンが酸化分解しにくく、テプレノンの安定性においても優れている。
【発明の属する技術分野】
本発明は、テプレノンを有効成分とする経口投与用製剤に関する。詳しくは、本発明は、高齢者にも服用し易い液剤であり、且つテプレノンの保存安定性がよく製剤安定性にも優れた乳濁液である経口投与用製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
テプレノンを有効成分とする医薬製剤は、胃粘膜病変(びらん、出血、発疹、浮腫)の改善、急性胃炎、慢性胃炎の急性憎悪期そして胃潰瘍などの治療に広く一般に使用されている。従来、上記疾患の治療に用いられるテプレノン経口投与用製剤の剤形は、主に顆粒剤又はカプセル剤であった。
【0003】
しかしながら、これらの剤形は、嚥下能力が衰えている高齢者にとって必ずしも服用し易い剤形でない。そこで、これら従来の固形製剤に代えて、服用し易い液剤の開発が望まれていた。
【0004】
テプレノンを液剤化するにあたっては、テプレノンは油状物質であることから、動植物性油に混和して投与することも考えられるが、油を飲むのはベタツキ感があり飲み易いとは言い難く、また製剤安定性等の問題解決が困難である。
【0005】
また、テプレノンは、2重結合を4箇所にもち、酸化分解し易い物質であり、これを含有する既存の医薬品には抗酸化剤が必須であるという欠点がある。なお、抗酸化剤を添加してテプレノンの酸化を防止し、テプレノンの安定化を図ることについては特開平62−9096号公報等に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記観点に鑑みなされたものであり、水に極めて溶けにくいテプレノンを液剤化し、抗酸化剤を添加しなくてもテプレノンが酸化分解しにくく、また製剤安定性にも優れたテプレノン経口投与用製剤を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
テプレノンは水に極めて溶け難い(100000mlの水に1g以下)ので、水溶液製剤の設計は困難であった。そこで、本発明者らは、テプレノンの乳濁液の研究に着手し、乳化剤の検討を開始したが、一般に用いられる界面活性剤でテプレノンを乳化した液は、水とクリームとに相分離するクリーミングが経時的に起こり、また不安定であったテプレノンが酸化分解してしまいテプレノン自体の安定性も大変悪かった。
【0008】
本発明者らは、目的を達成するべく、さらに鋭意研究を重ねた結果、テプレノンを脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールの存在下に乳化することにより、油滴が均一で超微粒子の水中油型乳濁液が得られ、しかもこの乳濁液はクリーミングを生じにくく、乳化安定性に大変優れていることを見いだした。
【0009】
さらにこの乳濁液は、驚くべきことに抗酸化剤を添加しなくてもテプレノンの酸化分解が抑制され、テプレノン自体の経時安定性にも大変優れた乳濁液であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、テプレノンを有効成分とする経口投与用製剤であって、テプレノン、脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールを含む乳濁液である、テプレノン経口投与用製剤に関する。
【0011】
また、本発明は、テプレノンを、脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールの存在下に乳化して乳濁液を形成させる乳化工程を含む、テプレノン経口投与用製剤の製造方法に関する。
【0012】
テプレノンは水に極めて溶けにくいため水溶性製剤の設計は困難であったが、本発明においては、テプレノンを脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールによって乳化し乳濁液とすることにより、服用容易な液剤とすることができ、且つテプレノンの保存安定性を向上させることができる。また、本発明のテプレノン経口投与用製剤は、油滴が均一で超微粒子である乳化安定性に優れた水中油型乳濁液であり、具体的には、油滴の最大粒径を1μm以下とすることでき、製剤安定性に優れた経口投与用製剤である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0014】
(1)本発明のテプレノン経口投与用製剤
本発明のテプレノン経口投与用製剤は、テプレノンを有効成分とする製剤であって、テプレノン、脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールを含む乳濁液である。
【0015】
脂肪酸トリグリセリドとしては、特に限定されないが、炭素数4〜15の中鎖脂肪酸のトリグリセリドであることが好ましく、特に好ましくは炭素数8〜12の脂肪酸のトリグリセリドを用いる。このような脂肪酸トリグリセリドの具体例としては、ODO(日清製油社製)、商品名ココナード(花王社製)、商品名ミグリオール(ミツバ貿易社製)及び商品名パナセート(日本油脂社製)等が挙げられ、市販品として入手することもできる。
【0016】
ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものであり、一般的に乳化剤として使用できることが知られている。本発明の製剤に含まれるポリビニルアルコールとしては、好ましくはケン化度78〜96mol%のポリ酢酸ビニル部分ケン化物が用いられる。また、ポリビニルアルコールの重合度(又は分子量)としては特に限定されないが、好ましくは500〜2000程度である。
【0017】
テプレノン、脂肪酸トリグリセリド、ポリビニルアルコールの製剤中の含有量は特に制限はないが、それぞれ以下のようにすることが好ましい。テプレノンの乳濁液全量に対する含有量は、好ましくは0.1〜10%重量/容量であり、より好ましくは0.2〜8%重量/容量であり、さらに好ましくは0.4〜5%重量/容量である。脂肪酸トリグリセリドの含有量は、テプレノン1重量部に対し、好ましくは0.05〜4重量部であり、より好ましくは0.2〜3重量部であり、さらに好ましくは0.3〜2重量部である。ポリビニルアルコールの含有量は、テプレノン1重量部に対し、好ましくは0.1〜5重量部であり、より好ましくは0.2〜4重量部であり、さらに好ましくは0.3〜3重量部である。
【0018】
本発明の経口投与用製剤は、このようにテプレノンを脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールによって乳化された乳濁液である。その乳濁液は油滴にテプレノンを含む水中油型乳濁液であって油滴が均一で超微粒子であり、乳化安定性に優れている。具体的には、油滴の最大粒径を1μm以下とすることができる。
【0019】
本発明の経口投与用製剤には、服用し易いように、例えば緩衝剤、矯味剤、香料、増粘剤など医薬として経口投与可能な他の成分を添加してもよい。
緩衝剤の例としては、リン酸、酢酸又はその塩類など、矯味剤としては、D−ソルビトール、ショ糖、アスパルテーム、ストロベリー、サッカリン、食塩、還元麦芽糖水飴など、香料としてはメントールなど、増粘剤としては、キサンタンガム、トラガントガム、カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩などの水溶性高分子類を挙げることができる。これらの成分は任意の1種又は2種以上を混合してよく、それぞれ必要に応じた量を添加してよい。
【0020】
本発明の経口投与用製剤は、胃粘膜病変(びらん、出血、発疹、浮腫)、急性胃炎、慢性胃炎の急性憎悪期、胃潰瘍などの改善に好適である。また、高齢の患者にとっても大変服用し易い液剤である。
【0021】
本発明の経口投与用製剤中のテプレノンは酸化分解し難く安定している。また、その乳濁液は長期間にわたりクリーミング等の相分離も生じず、製剤としても安定している。
【0022】
(2)本発明のテプレノン経口投与用製剤の製造方法
本発明のテプレノン経口投与用製剤の製造方法は、テプレノンを、脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールの存在下に乳化して乳濁液を形成する乳化工程を含むことを特徴とする。このような各成分の存在下に乳化を行う方法であれば、各成分の混合方法、乳化の方法等は特に制限されるものではない。
【0023】
前記乳化工程は、テプレノンと脂肪酸トリグリセリドとの混合物を、ポリビニルアルコール水溶液中で乳化する工程とするのが好ましい。テプレノンと脂肪酸トリグリセリドの混合は、一般的な方法、例えば撹拌機等を用いて行えばよく、必要に応じて温度、撹拌機の回転数等を調整することができる。次いで、テプレノンと脂肪酸トリグリセリドの混合物をポリビニルアルコール水溶液に混合し乳化する。乳化は一般的な方法に従って行えばよく、例えば撹拌乳化機又は真空撹拌乳化機で予備乳化し、その後加圧衝突式乳化機で再乳化することにより超微粒子の乳濁液を得ることができる。また、予備乳化液を加圧式ろ過乳化機、高圧ホモジナイザー又は大出力の超音波乳化機などを用いて再乳化してもよいが、本発明は、乳化の際の使用機器や乳化方法については特に限定されない。
【0024】
【実施例】
以下に実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0025】
【実施例1】
テプレノン:50gと脂肪酸トリグリセリド(商品名:パナセート、日本油脂社製、脂肪酸の炭素数:8):100gとの混合油液を、D−ソルビトール:1000gとポリビニルアルコール(商品名:クラレPVA、製造及び販売元:クラレ社、ケン化度:78〜96mol%):65gとを溶解した水4Lに加えて、撹拌乳化機(特殊機化社製)で予備乳化を行った。
【0026】
予備乳化した乳濁液にさらに水を加えて5Lに調製した。この乳濁液をナノマイザー(特殊機化社製:超微粒子乳化機)にて再乳化し、本発明の経口投与用製剤を得た。これにより得られた経口投与用製剤は、メンブランフィルター(0.2μm孔)を透過した。
【0027】
【実施例2】
テプレノン:5gと脂肪酸トリグリセド(商品名:パナセート):10gとの混合油液を、D−ソルビトール:100gとポリビニルアルコール(クラレ社製):6.5gとを溶解した水400mLに加えて、実施例1と同じ撹拌乳化機で予備乳化を行った。予備乳化した乳濁液にさらに水を加えて500mLに調製した。この乳濁液を超音波乳化機(岩城硝子社製)で再乳化し、本発明の経口投与用製剤を得た。これによって得られた経口投与用製剤は、メンブランフィルター(0.2μm孔)を透過した。
【0028】
【比較例1】
テプレノン:10gとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名:ポリソルベート80、日本油脂社製、HLB:15.0)との混合油液を、D−ソルビトール:150gを溶解した水:800mLに加えて、実施例1と同じ撹拌乳化機で撹拌乳化し、その後さらに水を加えて1Lに調製した。この乳濁液はメンブランフィルター(0.2μm孔)を透過した。
【0029】
【比較例2】
テプレノン:500mgとポリエチレングリコール脂肪酸エステル(商品名:MYS−40、日光ケミカルズ社製、HLB:17.5):250mgとを50℃に加温して混合油液とし、これを50℃に加温した水:40mLに加えて、実施例1と同じ撹拌乳化機で撹拌乳化した。得られた乳濁液を冷却し、さらに水を加えて50mLに調製した。この乳濁液はメンブランフィルター(0.2μm孔)を透過した。
【0030】
【比較例3】
テプレノン:500mgとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:HCO−60、日光ケミカルズ社製、HLC:14.0):250mgとを50℃に加温して混合油液とし、これを50℃に加温した水:40mLに加えて、実施例1と同じ撹拌乳化機で撹拌乳化した。得られた乳濁液を冷却し、さらに水を加えて50mLに調製した。この乳濁液はメンブランフィルター(0.2μm孔)を透過することができなかった。
【0031】
【比較例4】
テプレノン:500mgとポリグリセリン脂肪酸エステル(商品名:DGDO、日光ケミカルズ社製、HLB:7.0):250mgとグリセリン:250 mgとを混合油液とし、これを水:40mLに加えて実施例1と同じ撹拌乳化機で予備乳化した後、実施例2と同じ超音波乳化機で再乳化を行った。再乳化の後、さらに水を加えて50mLに調製して乳濁液を得た。この乳濁液はメンブランフィルター(0.2μm孔)を透過することができなかった。
【0032】
【比較例5】
テプレノン:5gを、D−ソルビトール:100gとポリビニルアルコール(クラレ社製):6.5gとを溶解した水400mLに加えて、実施例1と同じ撹拌乳化機で撹拌し乳化を試みたが、乳化しなかった。
【0033】
【比較例6】
テプレノン:1gとソルビタン脂肪酸エステル(商品名:SO−15R、日光ケミカルズ社製、HLB:4.5):0.5gとを50℃に加温して混合油液とし、これを50℃に加温した水:80mLに加えて実施例1と同じ撹拌乳化機で撹拌乳化し放冷したが、乳化できなかった。
【0034】
【比較例7】
テプレノン:1gとグリセリン脂肪酸エステル(商品名:MGS−F50、日光ケミカルズ社製、HLB:3.5):0.5gを50℃に加温して混合油液とし、これを50℃に加温した水:40mLに加えて、実施例1と同じ撹拌乳化機で撹拌乳化し放冷したが、乳化できなかった。
【0035】
【試験例1】
本発明品の安定性を検討する目的で、本発明品をポリプロピレンの投薬瓶に充填し、40℃、75%RHの条件にて保存し、乳化状態(外観)を肉眼観察により、また、テプレノンの安定性(含量)を高速液体クロマトグラフ(HPLC)法により調べた。
【0036】
本発明品は、表1に示したように乳化状態が安定で、さらにテプレノン含量低下は微量であった。一方、比較例1〜4は、保存1ヶ月で水とクリームが相分離するクリーミングが確認され、その後の経過に従ってさらに外観変化が顕著に進み、またテプレノンの含量も経時的に著しく低下した。比較例5〜7は乳化しなかった。
【0037】
【表1】
【0038】
これらの試験結果から明らかなとおり、本発明の経口投与用製剤は、テプレノン自体の安定性及び製剤としての安定性に優れていることが確認された。
他方、比較例1〜4は乳化が不安定で含量低下が著しく、経口投与用製剤としての調製は満足できるものではなかった。また比較例5〜7は乳化が困難であった。
【0039】
【発明の効果】
テプレノンを有効成分とする本発明の経口投与用製剤は、製剤安定性(乳化安定性)に優れた乳濁液であり、液剤であるため高齢者でも服用が容易である。また、抗酸化剤を添加しなくてもテプレノンが酸化分解しにくく、テプレノンの安定性においても優れている。
Claims (9)
- テプレノンを有効成分とする経口投与用製剤であって、テプレノン、脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールを含む乳濁液である、テプレノン経口投与用製剤。
- 前記テプレノンの含有量が、乳濁液全量に対して0.1〜10%重量/容量である、請求項1記載の経口投与用製剤。
- 前記脂肪酸トリグリセリドの含有量が、テプレノン1重量部に対し0.05〜4重量部である、請求項1記載の経口投与用製剤。
- 前記ポリビニルアルコールの含有量が、テプレノン1重量部に対し0.1〜5重量部である、請求項1記載の経口投与用製剤。
- 前記脂肪酸トリグリセリドが、炭素数4〜15の脂肪酸のトリグリセリドである、請求項1記載の経口投与用製剤。
- 前記ポリビニルアルコールが、ケン化度78〜96mol%のポリ酢酸ビニル部分ケン化物である、請求項1記載の経口投与用製剤。
- 前記乳濁液が、油滴の最大粒径が1μm以下である水中油型乳濁液である、請求項1記載の経口投与用製剤。
- テプレノンを、脂肪酸トリグリセリド及びポリビニルアルコールの存在下に乳化して乳濁液を形成させる乳化工程を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のテプレノン経口投与用製剤の製造方法。
- 前記乳化工程が、テプレノンと脂肪酸トリグリセリドとの混合物をポリビニルアルコール水溶液中で乳化する工程である、請求項8記載の製造方法。
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