JP3884327B2 - フォトニック結晶ファイバの端末処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトニック結晶ファイバの端末処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトニック結晶ファイバは、ファイバ中心に中実に形成されたコア部と、コア部を囲うように設けられ且つコア部に沿って延びる多数の細孔を有する多孔部と、を備える。かかるフォトニック結晶ファイバは、多孔部で囲われたコア部に光を閉じ込めて伝送するものであるが、細孔の大きさや間隔を変えるなどして光の波長分散を自由に制御することができるため、従来の光ファイバでは実現できなかった新しい波長域での通信が可能となり、通信の高速化やコストダウンが期待されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このフォトニック結晶ファイバをコネクタに接続する際には、フォトニック結晶ファイバのファイバ端面を被接続ファイバのファイバ端面に突き合せて接続する。しかしながら、ファイバの端面同士を接触させる際、一方のファイバ端面と他方のファイバ端面との間に空気層ができてしまうと、コア部と空気層との境界部で光が反射してしまう、或いは、光の一部が損失してしまうことになる、という不都合がある。そこで、それらの両ファイバ端面間に隙間ができないようにファイバ端面を研磨するようにしている。ところが、フォトニック結晶ファイバの場合、多孔部に細孔が形成されているため、研磨の際この細孔に研磨剤や研磨屑が入り、それらが光学特性を劣化させたり、また、それが後に細孔内より出てきてコア部に付着することにより光の伝播を妨げたりするなどの障害を起すという問題がある。
【0004】
また、細孔同士の間隔は10μm以下程度と非常に狭いので、研磨の際の振動や衝撃によって多孔部に亀裂が入ったり割れたりするという問題もある。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フォトニック結晶ファイバのファイバ端面の研磨の際に多孔部の細孔に研磨剤や研磨屑が入ることがないフォトニック結晶ファイバの端末処理方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、ファイバ中心をなし且つ中実に形成されたコア部と、該コア部を囲うように設けられ且つ該コア部に沿って延びる多数の細孔を有する多孔部と、を備えたフォトニック結晶ファイバのファイバ端面を研磨するフォトニック結晶ファイバの端末処理方法において、
上記ファイバ端面の研磨を行なう前に、上記ファイバ端部の細孔の開口を閉塞材で塞ぎ、該ファイバ端面の研磨を行なった後に、上記ファイバ端部の細孔の開口を塞いだ閉塞材を除去することを特徴とする。
【0007】
上記の方法によれば、ファイバ端面を研磨する前に、予め細孔の開口を閉塞材で塞ぐので、ファイバ端面の研磨の際に研磨剤や研磨屑等が細孔に入ることがなく、細孔に入った研磨剤や研磨屑等が光学特性を低下させたり、細孔から出た研磨剤や研磨屑等がコア部に付着して光の伝播を妨げる、といったことを防ぐことができる。
【0008】
また、細孔の開口を塞いだ閉塞材が研磨の際の振動や衝撃を和らげるので、ファイバ端面の多孔部における細孔と細孔との間に亀裂が入ったり割れたりするのを回避することができる。
【0009】
さらに、細孔の開口を塞いだ閉塞材は研磨終了後に除去されるので、実際にフォトニック結晶ファイバを使用する際にはそれが光学特性に及ぼす影響はない。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のフォトニック結晶ファイバの端末処理方法において、
上記閉塞材は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂のうちいずれかであることを特徴とする。
【0011】
閉塞材をアクリル系樹脂とする場合、アクリル系樹脂は熱可塑性樹脂であるので熱成形が可能であり、直径が数μmである細孔の開口を塞ぐ作業が容易であるとともに、またこれを除去する作業も容易である。また、アクリル系樹脂は酸に弱く、この性質を利用することにより細孔からの閉塞材の除去を行うことも可能である。
【0012】
閉塞材をエポキシ系樹脂とする場合、未硬化の液状のエポキシ樹脂を細孔に流し込んだ後、加熱することにより短時間でそれを硬化させることが可能である。また、エポキシ系樹脂は、その中に含まれる硬化剤として酸硬化剤が使われているときアルカリによって加水分解され、アミン硬化剤が使われているとき酸性物質によって加水分解される。よって、これを利用することにより細孔からの閉塞材の除去を容易に行うことが可能である。
【0013】
現在ウレタン系樹脂は熱可塑性で溶剤に可溶なものが開発されている。閉塞材としてこれを使用する場合、細孔の開口を塞ぐ成形作業が容易である。また、これを細孔から除去する方法として、適当な溶剤に溶かして細孔から除去することが可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明による実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1のフォトニック結晶ファイバ1の端末部を示す。
【0016】
このフォトニック結晶ファイバ1は、石英やプラスチック等により形成されており、ファイバ中心をなすコア部2と、そのコア部2を囲うように設けられた多孔部3と、多孔部3を囲うように設けられた被覆部4と、を備えている。
【0017】
コア部2は、中実に形成されており、ゲルマニウム(Ge)等の機能性物質がドープされていてもよい。光信号は、このコア部2を長手方向に沿って伝送される。
【0018】
多孔部3は、ファイバ横断面において三角格子を構成するようにコア部2に沿って延びる複数の細孔3aが形成されており、この複数の細孔3aがファイバ半径方向にフォトニック結晶構造を形成している。光信号は、この多孔部3によってコア部2に閉じ込められる。
【0019】
かかるフォトニック結晶ファイバ1は、以下のようにして製造される。
【0020】
まず、円筒状のサポート管に複数本のキャピラリと1本のコア部材とを充填したプリフォームを作製する。このとき、コア部材が中心軸位置に配置されるようにする。
【0021】
次いで、プリフォームを線引き機にセットし、それを高温に加熱すると共に高速で延伸して細径化(ファイバ化)する。
【0022】
このフォトニック結晶ファイバ1の端末処理方法について説明する。
【0023】
上記のようにして製造されたフォトニック結晶ファイバ1は、図2(a)に示すように、その端面が凹凸を有している。
【0024】
かかるフォトニック結晶ファイバ1に対して、まず、ファイバ端部の多孔部3の細孔3aに、加熱して溶融した熱可塑性のアクリル系樹脂を閉塞材5として注入し、図2(b)に示すように、それを冷却して多孔部3の細孔3aを塞ぐ。
【0025】
次に、フォトニック結晶ファイバ1の端面を研磨機等を用いて研磨し、図2(c)に示すように、ファイバ端面をファイバ軸に対して垂直面に形成する。
【0026】
次いで、被覆部4がファイバ端部において邪魔とならないように、図2(d)に示すように、ファイバ端部における被覆部4を研磨機で研磨してテーパ状に形成する。
【0027】
最後に、図2(e)に示すように、多孔部3の細孔3aを閉塞していた閉塞材5たるアクリル系樹脂を除去する。
【0028】
このような端末処理を施したフォトニック結晶ファイバ1は、図3及び4に示すように、ファイバ端部にコネクタ6が取り付けられ、被接続光ファイバ7に突き合わせるようにして接続される。
【0029】
上記のフォトニック結晶ファイバ1の端末処理方法によれば、ファイバ端面を研磨する前に、予め細孔3aの開口を閉塞材5で塞ぐので、ファイバ端面の研磨の際に研磨剤や研磨屑等が細孔3aに入ることがなく、細孔3aに入った研磨剤や研磨屑等が光学特性を低下させたり、細孔3aから出た研磨剤や研磨屑等がコア部2に付着して光の伝播を妨げる、といったことを防ぐことができる。
【0030】
また、細孔3aの開口を塞いだ閉塞材5が研磨の際の振動や衝撃を和らげるので、ファイバ端面の多孔部3における細孔3aと細孔3aとの間に亀裂が入ったり割れたりするのを回避することができる。
【0031】
さらに、細孔3aの開口を塞いだ閉塞材5は研磨終了後に除去されるので、実際にフォトニック結晶ファイバ1を使用する際にはそれが光学特性に及ぼす影響はない。
【0032】
また、閉塞材5としてアクリル系樹脂を用いており、アクリル系樹脂は熱可塑性樹脂であるので熱成形が可能であり、直径が数μmである細孔3aの開口を塞ぐ作業が容易であるとともに、またこれを除去する作業も容易である。そして、アクリル系樹脂は酸に弱く、この性質を利用することにより細孔3aからの閉塞材5の除去を行うことも可能である。
【0033】
(実施形態2)
実施形態2のフォトニック結晶ファイバ1の端末処理方法は、先の実施形態1のものと類似であり、細孔3aの開口を閉塞する閉塞材5としてエポキシ系樹脂を用いたことのみ異なる。
【0034】
多孔部3の細孔3aに未硬化の液状のエポキシ系樹脂を流し込み、加熱によりエポキシ系樹脂を硬化させてその開口を塞ぐ。その後、実施形態1と同様にファイバ端面の研磨をおこなう。研磨終了後、多孔部3の細孔3aの開口を閉塞していた閉塞材5たるエポキシ系樹脂を細孔3aから除去する。
【0035】
上記のフォトニック結晶ファイバ1の端末処理方法によれば、閉塞材5としてエポキシ系樹脂を用いており、未硬化の液状のエポキシ樹脂を細孔3aに流し込んだ後、加熱することにより短時間でそれを硬化させることが可能である。また、エポキシ系樹脂は、その中に含まれる硬化剤として酸硬化剤が使われているときアルカリによって加水分解され、アミン硬化剤が使われているとき酸性物質によって加水分解される。よって、これを利用することにより細孔3aからの閉塞材5の除去を容易に行うことが可能である。
【0036】
その他の作用・効果は、実施形態1と同一である。
【0037】
(実施形態3)
実施形態3のフォトニック結晶ファイバ1の端末処理方法は、先の実施形態1のものと類似であり、細孔3aの開口を閉塞する閉塞材5としてウレタン系樹脂を用いたことのみ異なる。
【0038】
多孔部3の細孔3aに加熱して溶融した熱可塑性のウレタン系樹脂を閉塞材5として注入し、それを冷却して多孔部3の細孔3aを塞ぐ。その後、実施形態1と同様にファイバ端面の研磨を行う。研磨終了後、細孔3aの開口を閉塞していたウレタン系樹脂を細孔3aから除去する。
【0039】
上記のフォトニック結晶ファイバ1の端末処理方法によれば、閉塞材5として熱可塑性のウレタン樹脂を用いているので、細孔3aの開口を塞ぐ成形作業が容易である。また、これを細孔3aから除去する方法として、適当な溶剤に溶かして細孔3aから除去することが可能である。
【0040】
その他の作用・効果は、実施形態1と同一である。
【0041】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、ファイバ端面を研磨する前に細孔の開口を閉塞材で塞ぐようにしているので、ファイバ端面を研磨する際、研磨剤や研磨屑が細孔内に入るのを防ぐことができる。また、この閉塞材が研磨の際に生じる振動や衝撃を緩和させるので、多孔部3に亀裂が入ったり割れたりするなどの損傷を防ぐことができる。さらに、細孔の開口を塞いだ閉塞材は研磨終了後に除去されるので、実際にフォトニック結晶ファイバ1を使用する際にそれが光学特性に影響を及ぼすことはない。
【0042】
請求項2に係る発明によれば、閉塞材としてアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂のうちいずれかが用いられているので、細孔の開口を閉塞するための加工が容易であり、また、その除去も比較的簡単に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態1のフォトニック結晶ファイバの斜視図である。
【図2】 図1におけるII-II断面においてフォトニック結晶ファイバの端部処理方法を説明する説明図である。
【図3】 フォトニック結晶ファイバと被接続光ファイバとの第1の接続構造を示す図である。
【図4】 フォトニック結晶ファイバと被接続光ファイバとの第2の接続構造を示す図である。
【符号の説明】
1 フォトニック結晶ファイバ
2 コア部
3 多孔部
3a 細孔
4 被覆部
5 閉塞材
6 コネクタ
7 被接続光ファイバ
Claims (2)
- ファイバ中心をなし且つ中実に形成されたコア部と、該コア部を囲うように設けられ且つ該コア部に沿って延びる多数の細孔を有する多孔部と、を備えたフォトニック結晶ファイバのファイバ端面を研磨するフォトニック結晶ファイバの端末処理方法において、
上記ファイバ端面の研磨を行なう前に、上記ファイバ端部の細孔の開口をアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂のうちいずれか一つである閉塞材で塞ぎ、該ファイバ端面の研磨を行なった後に、上記ファイバ端部の細孔の開口を塞いだ閉塞材を除去することを特徴とするフォトニック結晶ファイバの端末処理方法。 - 請求項1に記載のフォトニック結晶ファイバの端末処理方法において、
上記フォトニック結晶ファイバは石英からなっていることを特徴とするフォトニック結晶ファイバの端末処理方法。
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