JP3884261B2 - スタータクラッチのシール構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スタータクラッチのシール構造、特にオーバランニングクラッチのクラッチローラを収容するクラッチアウタの開口端を閉塞したその部位から、クラッチアウタ内に充填された潤滑用グリースが外部へ漏出するのを防止するようにしたスタータクラッチのシール構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スタータのオーバランニングクラッチのシール構造として、ローラ及びスプリングを収容するクラッチアウタとクラッチインナとの間の輪状空間を閉塞するために、クラッチアウタの開口端面近傍にパッキンとこのパッキンを押さえる部材とを用いて、クラッチアウタ内の潤滑用グリースの漏出を防止する構造が採られている。
【0003】
12は従来のスタータクラッチのシール構造の部分断面図を示しており、同図図示のオーバランニングクラッチ1において、出力シャフト2にはオーバランニングクラッチ1のクラッチアウタ3がヘリカルスプライン4を介して摺動可能に嵌装されると共に、一端にピニオン5が形成されるクラッチインナ5aの他端の外周面が複数のクラッチローラ6を介してクラッチアウタ3内に嵌装され、クラッチローラ6の周面を潤滑するために、クラッチアウタ3内には潤滑用グリースが充填されている。
【0004】
クラッチアウタ3内に充填された潤滑用グリースの漏出を防止するため、クラッチアウタ3の開口端面に設けられた段差溝16とクラッチインナ5aに形成された環状溝7の溝壁とに2つの半割りリングプレート8を設けると共に、この2つの半割りリングプレート8とクラッチアウタ3の開口端面を覆う形状の外周部が膨らんだリング状のパッキン9を、中心部に孔が形成された有底で開放端部10aを有するカバー10をクラッチアウタ3の外周に遊嵌して、クラッチアウタ3の外周面を覆い、カバー10の開放端部10aをクラッチアウタ3に固定することにより、有底部10bでリング状のパッキン9を押圧する構造が採られていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
12で示される従来のスタータクラッチのシール構造では、リング状のパッキン9を用いてカバー10の開放端部10aをクラッチアウタ3に固定することより、リング状のパッキン9に締代を与えてクラッチアウタ3内に充填された潤滑用グリースの漏出を防止しているが、ヘビーデューティ用スタータのように厳しい振動条件の下での使用、クラッチの高回転によるクラッチ内のグリースに作用する遠心力の増大等が重なるとシール機能を維持できる寿命の低下が懸念され、高品質・長寿命化はコストダウンとともに市場から要求される重要な改善項目となっている。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、クラッチアウタの開口端面に配設されるシールプレートの内周と外周部分にシール部材を用いて遠心力による潤滑用グリース流出を遮断し、潤滑用グリースの完全な漏出防止がなされるスタータクラッチのシール構造を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を解決するために、本発明のスタータクラッチのシール構造は、出力シャフトにクラッチアウタが摺動可能に嵌装されると共に、一端にピニオンが形成されたクラッチインナの他端の外周面が複数のクラッチローラを介して前記クラッチアウタに嵌装されてなるオーバランニングクラッチにおいて、開口端部を有するクラッチアウタと、クラッチインナの外周面に摺接してシールする第1のシール部材と、クラッチアウタの開口端部に配置される第2のシール部材と、中央に形成された孔の内周部分に第1のシール部材が固着されかつ第2のシール部材が一体に焼き付けられて構成されてなり、当該第2のシール部材を押圧すると共にクラッチアウタの開口端面を閉塞するシールプレートと、押圧されたとき、当該シールプレートを介して第2のシール部材を押圧させる、断面がS字状の保持板と、一端に開放端部を有し他端に中心孔が形成された有底部を有する円筒形状のカバーとを備え、当該カバーは、クラッチアウタの開口端部側から挿入されてクラッチアウタの外周面を被覆し、当該カバーの開放端部のクラッチアウタ端面でのカシメに基づいて当該カバーの有底部で保持板を押圧する保持板押圧構造を備えてなり、クラッチアウタ内に充填された潤滑用グリースの外部への漏出を防止するようにしたことを特徴としている。
【0008】
また、出力シャフトにクラッチアウタが摺動可能に嵌装されると共に、一端にピニオンが形成されるクラッチインナの他端の外周面が複数のローラを介して前記クラッチアウタに嵌装されてなるスタータのオーバランニングクラッチにおいて、開口端面を有し、この開口端面に段差溝と該段差溝に同心円状のシール溝が設けられたクラッチアウタと、前記シール溝を側面で覆う円盤状シールプレートと、前記クラッチインナの外周面に摺接してシールする第1のシール部材が前記シールプレートの中央に形成される孔に固着されると共に、前記シールプレートに一体に焼き付けられて構成され、当該シールプレートの側面と前記シール溝との間に介在する第2のシール部材と、押圧されたとき、当該シールプレートを介して第2のシール部材を押圧させると共に、前記段差溝に係合し前記シールプレートを前記開口端面で閉塞する、断面がS字状の保持板と、一端に開放端部を有し他端に中心孔が形成された有底部を有する円筒形状のカバーとを備え、該カバーは前記クラッチアウタの開口端面側から挿入されて前記クラッチアウタの外周面を被覆し、当該カバーの開放端部のクラッチアウタ端面でのカシメに基づいて前記有底部で前記保持板を押圧しつつ前記クラッチアウタに固着することにより、クラッチアウタ内に充填された潤滑用グリースの外部への漏出を防止するようにしたことを特徴としている。
【0009】
また、出力シャフトにクラッチアウタが摺動可能に嵌装されると共に、一端にピニオンが形成されるクラッチインナの他端の外周面が複数のローラを介して前記クラッチアウタに嵌装されてなるスタータのオーバランニングクラッチにおいて、開口端面を有し、この開口端面の外周端に円周状のシール溝が設けられたクラッチアウタと、前記シール溝を側面で覆う円盤状シールプレートと、前記クラッチインナの外周面に摺接してシールする第1のシール部材が前記シールプレートの中央に形成される孔に固着されると共に、前記シールプレートに一体に焼き付けられて構成され、当該シールプレートの側面と前記シール溝との間に介在する第2のシール部材と、押圧されたとき、当該シールプレートを介して第2のシール部材を押圧させると共に、前記シールプレートにおける、前記第2のシール部材の反対側に位置する、断面がS字状の保持板と、一端に開放端部を有し他端に中心孔が形成された有底部を有する円筒形状のカバーとを備え、該カバーは前記クラッチアウタの開口端面側から挿入されて前記クラッチアウタの外周面を被覆し、当該カバーの開放端部のクラッチアウタ端面でのカシメに基づいて前記有底部で前記保持板を押圧しつつ前記クラッチアウタに固着することにより、クラッチアウタ内に充填された潤滑用グリースの外部への漏出を防止するようにしたことを特徴としている。
【0010】
また、出力シャフトにクラッチアウタが摺動可能に嵌装されると共に、一端にピニオンが形成されるクラッチインナの他端の外周面が複数のローラを介して前記クラッチアウタに嵌装されてなるスタータのオーバランニングクラッチにおいて、開口端面を有し、この開口端面に段差溝が設けられたクラッチアウタと、前記段差溝に接する側面に環状シール凹部が設けられた略円盤状シールプレートと、前記クラッチインナの外周面に摺接してシールする第1のシール部材が前記シールプレートの中央に形成される孔に固着されると共に、前記略円盤状シールプレートに焼き付けられてなり、前記段差溝と前記環状シール凹部との間に介在する第2のシール部材と、押圧されたとき、当該シールプレートを介して第2のシール部材を押圧させると共に、前記段差溝に係合し前記シールプレートを前記開口端面で閉塞する、断面がS字状の保持板と、一端に開放端部を有し他端に中心孔が形成された有底部を有する円筒形状のカバーとを備え、該カバーは前記クラッチアウタの開口端面側から挿入されて前記クラッチアウタの外周面を被覆し、当該カバーの開放端部のクラッチアウタ端面でのカシメに基づいて前記有底部で前記保持板を押圧しつつ前記クラッチアウタに固着することにより、クラッチアウタ内に充填された潤滑用グリースの外部への漏出を防止するようにしたことを特徴としている。
【0011】
また、出力シャフトにクラッチアウタが摺動可能に嵌装されると共に、一端にピニオンが形成されるクラッチインナの他端の外周面が複数のローラを介して前記クラッチアウタに嵌装されてなるスタータのオーバランニングクラッチにおいて、開口端面を有するクラッチアウタと、前記開口端面に接する側面に環状シール凹部が設けられた略円盤状シールプレートと、前記クラッチインナの外周面に摺接してシールする第1のシール部材が前記シールプレートの中央に形成される孔に固着されると共に、前記略円盤状シールプレートに焼き付けられてなり、前記開口端面と前記環状シール凹部との間に介在する第2のシール部材と、押圧されたとき、当該シールプレートを介して第2のシール部材を押圧させると共に、前記シールプレートにおける、前記開口端面に接する側面の反対側面に位置する、断面がS字状の保持板と、一端に開放端部を有し他端に中心孔が形成された有底部を有する円筒形状のカバーとを備え、該カバーは前記クラッチアウタの開口端面側から挿入されて前記クラッチアウタの外周面を被覆し、当該カバーの開放端部のクラッチアウタ端面でのカシメに基づいて前記有底部で前記保持板を押圧しつつ前記クラッチアウタに固着することにより、クラッチアウタ内に充填された潤滑用グリースの外部への漏出を防止するようにしたことを特徴としている。
【0012】
そして、前記カバーの内周面の一部に内径が小さい段差部が全周に亘って形成されると共に、前記クラッチアウタの外周部の一部であって前記段差部と対応した位置に外径が大きい膨出部が全周に亘って形成され、前記段差部と前記膨出部とが圧入されることにより密着構造を有している。
【0015】
そして、出力シャフトにクラッチアウタが摺動可能に嵌装されると共に、一端にピニオンが形成されるクラッチインナの他端の外周面が複数のローラを介して前記クラッチアウタに嵌装されてなるスタータのオーバランニングクラッチにおいて、一端に開放端部を有し他端に中心孔が形成された有底部を有して内周面の一部に内径が小さい段差部が全周に亘って形成される円筒形状のカバーと、開口端面を有すると共に外周部の一部であって前記段差部と対応した位置に外径が大きい膨出部が全周に亘って形成されるクラッチアウタと、前記開口端面に配設されるシールプレートと、前記クラッチインナの外周面に摺接してシールする第1のシール部材が前記シールプレートの中央に形成される孔に固着されると共に、前記シールプレートに一体に第2のシール部材が焼き付けられて構成され、押圧されたとき、当該シールプレートを介して第2のシール部材を押圧させると共に、前記シールプレートにおける、前記開口端面とは反対側面に位置する、断面がS字状の保持板とを備え、該カバーは前記クラッチアウタの開口端面側から挿入され、前記段差部と前記膨出部とが圧入されて前記クラッチアウタの外周面を被覆し、当該カバーの開放端部のクラッチアウタ端面でのカシメに基づいて前記有底部で前記保持板を押圧しつつ前記クラッチアウタに固着することにより、前記有底部で前記保持板を押圧しつつ前記クラッチアウタに固着することにより、クラッチアウタ内に充填された潤滑用グリースの外部への漏出を防止するようにしたことを特徴としている。
【0016】
上記カバーの前記クラッチアウタへの固着は、前記クラッチアウタの端面で前記カバーの開放端部をカシメることにより固着される密着構造を有する。
【0017】
かかる構成によれば、クラッチインナの外周面に摺接してシールする第1のシール部材と、クラッチアウタとの間をシールする第2のシール部材との両者により、潤滑用グリースの流出を完全に防止し得る。
【0018】
また、遠心力に起因する潤滑用グリースの外部への更なる漏出防止対策として、円筒形状のカバーの内周面の一部に内径が小さい段差部が全周に亘って形成されると共に、クラッチアウタの外周部の一部であって段差部と対応した位置に外径が大きい膨出部が全周に亘って形成され、段差部と膨出部とが圧入される密着構造を有しているので、この密着構造により、クラッチアウタ内に充填された潤滑用グリースの外部への漏出の防止が強化される。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明を説明する前に、本発明の前提となっているスタータクラッチのシール構造を図13を用いて先に説明しておくことにする。
【0020】
13は本発明の前提となっているスタータクラッチのシール構造の部分断面図を示している。
【0021】
同図において、図12と同じものは同じ符号が付されている。図13で示されるオーバランニングクラッチ1のシール構造は、クラッチアウタ3の開口端面に段差溝16が設けられ、その段差溝16に円盤状のシールプレート11の外周部分とシールプレート11を押さえる中央部が若干凹んだ形状(断面S字状の形状)をした円盤状の2つの半割り押えリング(保持板)12の外周部分とが嵌め込まれ、中心部に孔が形成された有底部13bで2つの半割り押えリング12の外周部分表面部を押さえると共に、他方に開放した開放端部13aを有し、当該開放端部13aをクラッチアウタ3の端面にカシメることによりクラッチアウタ3の外周面を覆うカバー13を備えている。
【0022】
そしてシールプレート11は、その内部の孔の周縁部分にシール部材14が固着されている。当該シール部材14の内周端部からなるシールリップ部14aは、クラッチインナ5aの外周面に摺接してこの部位をシールするようになっていて、クラッチ内部のグリース漏出とともに外部からの塵埃の侵入を防止している。
【0023】
13で示されるスタータクラッチのシール構造においては、特に遠心力に起因する漏出に対してシールプレート11や2つの半割り押えリング12の外周部でのシール対策は完全となるまでには至っていなかった。
【0024】
図1は本発明のスタータクラッチのシール構造の第一の実施例の部分断面図、図2は図1のA−A矢視部分断面図、図3は図1のシール部分の拡大説明図をそれぞれ示している。
【0025】
図1ないし図3において、出力シャフト2にはオーバランニングクラッチ1のクラッチアウタ3がヘリカルスプライン4を介して摺動可能に嵌装されると共に、一端にピニオン5が形成されたクラッチインナ5aの他端の外周面が複数のクラッチローラ6を介してクラッチアウタ3内に嵌装される。クラッチアウタ3内は、複数の楔形の凹部23が形成され、凹部23内にクラッチローラ6がスプリグ20により押圧され、クラッチローラ6の側面は凹部23の側壁とクラッチインナ5aの外周面に接するよう保持されている。クラッチローラ6の外周面等を潤滑するために、凹部23の空間には潤滑用グリースが充填されている。
【0026】
本発明に係るオーバランニングクラッチ1のシール構造は、クラッチアウタ3の開口端面に段差溝16と、この段差溝16に更に同心円状のシール溝17が設けられている。前記段差溝16には、円盤状のシールプレート18の外周部分及びシールプレート18を押さえる保持板12の外周部分とが嵌め込まれて係合される。保持板12は、中央部が若干凹んだ形状をした円盤形状部材を2つに半割りしたもので段差溝16を閉塞するようクラッチインナ5aに形成された環状溝15に嵌め込まれる。
【0027】
クラッチアウタ3の外周面を被覆するカバー13は、一端側に開放した開放端部13aと他端側の中心部に孔が形成された有底部13bとを有する円筒形状のものであり、その開放端部13aはクラッチアウタ3の開放端面側からクラッチアウタ3の外周面を被覆するよう挿入されて、保持板12の外縁部を有底部13bで押圧すべくクラッチアウタ3の他端面で開放端部13aがカシメられる。
【0028】
図4,図5をあわせて参照して、円盤状のシールプレート18は、孔設された中央部の孔の周縁部分にシール部材14が固着されて、その内周端部からなるシールリップ部14aがクラッチインナ5aの外周面に摺接してシールされると共に、当該シールプレート18の反対側の側面は上記クラッチアウタ3の開口端面の段差溝16に設けられたシール溝17を覆い、しかも、シールプレート18とシール溝17との間にシール部材19を介在させている。
【0029】
シール部材19は、クラッチアウタ3のシール溝17と対応した位置のシールプレート18に、例えば焼き付け工法で固着され、断面が図6に示された如く放物線状や台形をした形状のゴムや合成ゴムなどの材料が用いられる。このシール部材19の断面形状としては放物線状のものが台形のものより優れた形状であることが実験によって得られている。カバー13の開放端部13aをクラッチアウタ3の端面にカシメることにより、シール溝17内のシール部材19が押圧変形され、当該シール部材19がそのシール効果を発揮するようになっている。
【0030】
以上の様に構成された本発明のスタータクラッチのシール構造では、シールプレート18に固着された2つのシール部材14、19によって、クラッチアウタ3内に充填された潤滑用グリースの漏出が完全な形で防止される。
【0032】
図7はクラッチアウタの外周面を覆うカバーの他の実施例部分断面図、図8はクラッチアウタの他の実施例部分断面図を示している。
【0033】
図7において、カバー13の内周面は、有底部13bに近い部分に形成された内径の小さい段差部21が切削加工等で全周に亘って形成されており、また、図8に示されたクラッチアウタ3の開口端面に近い部分では、その外径が他の部分より大きい膨出部22が全周に亘って形成される。カバー13の段差部21の内径は、クラッチアウタ3の膨出部22の外径より若干小さく加工されている。
【0034】
従って、カバー13の開放端部13aからクラッチアウタ3に挿入される途中で、クラッチアウタ3とカバー13とは圧入による組み立てとなり、クラッチアウタ3とカバー13と密着度が良好となる。しかも上記カバー13の段差部21とクラッチアウタ3の膨出部22との一部分での圧入であるので、クラッチアウタ3とカバー13との全体が圧入組み立ての場合に比べ、圧入工程での圧力が比較的小さく、製造機械の簡素化と生産効率の向上が図れると共に、構造上においてはカバー13の塑性変形が限定的となり、振動等による金属疲労の低減や長寿命化を達成する利点を有する。
【0035】
従って、クラッチアウタ3の外周面とカバー13間における空間密閉性が向上するので、遠心力に起因するクラッチアウタ3内の潤滑用グリースの漏出を防止することができる。更にシール部材19と合わせて構成すれば、潤滑用グリースの漏出防止性の更なる向上を図ることが可能になる。
【0036】
図9は本発明のシール構造の第二の実施例のシール部分の拡大説明図を示している。同図において、クラッチアウタ3の開口端面の外周端には円周状のシール溝30が設けられており、これは半径方向の外端が一段低くなって外側に開放している形状を有している。このシール溝30は円盤状シールプレート31の側面で軸方向で覆われるよう構成される。
【0037】
円盤状のシールプレート31の側面であってシール溝30に対応する位置にはシール部材19が焼き付けられている。シール部材19は、第一の実施例と同様な構造であるので説明は省略する。シールプレート31におけるシール部材19の反対側面には保持板32が接しており、保持板32は、中央部が若干凹んだ形状をした円盤形状部材を2つに半割りしたものでシールプレート31を押圧して出力シャフト2を除く部分の開口端面を閉塞している。
【0038】
クラッチアウタ3の外周面を被覆するカバー13は、第一の実施例と同様に、一端側に開放した開放端部13aと他端側の中心部に孔が形成された有底部13bとを有する円筒形状のものであり、その開放端部13aはクラッチアウタ3の開放端面側からクラッチアウタ3の外周面を被覆するよう挿入されて、保持板32の外縁部を有底部13bで押圧するため、シール部材19がシール溝30の中で変形してクラッチアウタ3の内部とオーバランニングクラッチ1の外側とを遮断してシールし、クラッチアウタ3の内部のグリースの漏出を防止する。
【0039】
図10は本発明のシール構造の第三の実施例のシール部分の拡大説明図を示している。同図において、クラッチアウタ3の開口端面に段差溝が設けられている。前記段差溝には、シールプレート40の外周部分及びシールプレート40を押さえる保持板12の外周部分とが嵌め込まれて係合される。
【0040】
一方、略円盤状シールプレート40は、その外周端の段差溝底面に環状シール凹部41が形成されるようになっており、その環状シール凹部41の位置にシール部材19が焼き付けられている。シール部材19は、その高さが環状シール凹部41の深さより大きく設定される他は、第一の実施例と同様な構造であるので説明は省略する。シールプレート40は環状シール凹部41を形成するため、段差溝の中で開口端面方向に曲げられるフランジ部を有し、フランジ部に保持板12が接している。保持板12は、中央部が若干凹んだ形状をした円盤形状部材を2つに半割りしたものでシールプレート40を押圧して段差溝を閉塞するようクラッチインナ5aに形成された環状溝15に嵌め込まれる。
【0041】
クラッチアウタ3の外周面を被覆するカバー13は、第一の実施例と同様に、一端側に開放した開放端部13aと他端側の中心部に孔が形成された有底部13bとを有する円筒形状のものであり、その開放端部13aはクラッチアウタ3の開放端面側からクラッチアウタ3の外周面を被覆するよう挿入されて、保持板12の外縁部を有底部13bで押圧するため、シール部材19が環状シール凹部41の中で変形してクラッチアウタ3の内部とオーバランニングクラッチ1の外側とを遮断してシールし、クラッチアウタ3の内部のグリースの漏出を防止する。
【0042】
図11は本発明のシール構造の第四の実施例のシール部分の拡大説明図を示している。同図において、クラッチアウタ3の開口端面は平面形状を有している。
【0043】
一方、略円盤状シールプレート50は、その外周端の開口端面側に環状シール凹部51が形成されるようになっており、その環状シール凹部51の位置にシール部材19が焼き付けられている。シール部材19は、その高さが環状シール凹部51の深さより大きく設定される他は、第一の実施例と同様な構造であるので説明は省略する。シールプレート50は、環状シール凹部51を形成するため、開口端面の反対側面方向に曲げられるフランジ部を有し、フランジ部を除いて保持板52が接している。保持板52は、中央部が若干凹んだ形状をした円盤形状部材を2つに半割りしたもので、後述するカバー13の有底部13bの軸方向の圧力をシールプレート50に伝達する作用を有する。
【0044】
クラッチアウタ3の外周面を被覆するカバー13は、第一の実施例と同様に、一端側に開放した開放端部13aと他端側の中心部に孔が形成された有底部13bとを有する円筒形状のものであり、その開放端部13aはクラッチアウタ3の開放端面側からクラッチアウタ3の外周面を被覆するよう挿入されて、保持板52の外縁部を有底部13bで押圧するため、シール部材19が環状シール凹部51の中で変形してクラッチアウタ3の内部とオーバランニングクラッチ1の外側とを遮断してシールし、クラッチアウタ3の内部のグリースの漏出を防止する。
【0048】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明によれば、クラッチアウタの開口端面にシールプレートを配設し、該シールプレートにはクラッチインナの外周面に摺接してシールする第1のシール部材がシールプレートの中央に形成される孔に固着されると共に、クラッチアウタとシールプレートの外周側面との間に第2のシール部材を介在させ、シールプレートを押圧する保持板と、一端に開放端部を有し他端に中心孔が形成された有底部を有する円筒形状のカバーをクラッチアウタの開口端面側から挿入してクラッチアウタの外周面を被覆し、有底部で保持板を押圧しつつクラッチアウタに固着する構造を備えたので、クラッチが回転する際の遠心力に起因するクラッチ内の潤滑用グリースの外周方向への移動を遮断し外部へ漏出を防止可能とし、高回転負荷の厳しいスタータにおいて、長寿命かつ確実な品質を保持できるスタータクラッチのシール構造を提供することができる。
【0049】
また、カバーの内周面の一部に内径が小さい段差部が全周に亘って形成されると共に、クラッチアウタの外周部の一部であって段差部と対応した位置に外径が大きい膨出部が全周に亘って形成され、段差部と膨出部とが圧入されることにより密着構造を有する構成では、潤滑用グリースの外部への漏出防止を更に強化することができ、振動条件や周囲温度条件が厳しいスタータにおいても適用することが可能なスタータクラッチのシール構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のスタータクラッチのシール構造の第一の実施例の部分断面図である。
【図2】 図1のA−A矢視部分断面図である。
【図3】 図1のシール部分の拡大説明図である。
【図4】 シールプレートの一実施例正面図である。
【図5】 図4のB−B矢視部分断面図である。
【図6】 図5のシール部材の拡大断面図である。
【図7】 クラッチアウタの外周面を覆うカバーの他の実施例部分断面図である。
【図8】 クラッチアウタの他の実施例部分断面図である。
【図9】 シール構造の第二の実施例のシール部分の拡大説明図である。
【図10】 シール構造の第三の実施例のシール部分の拡大説明図である。
【図11】 シール構造の第四の実施例のシール部分の拡大説明図である。
【図12】 従来のスタータクラッチのシール構造の部分断面図である。
【図13】 本発明の前提となっているスタータクラッチのシール構造の部分断面図である。
【符号の説明】
1 オーバランニングクラッチ
2 出力シャフト
3 クラッチアウタ
5 ピニオン
5a クラッチインナ
6 クラッチローラ
12 保持板
13 カバー
13a 開放端部
13b 有底部
14 シール部材
16 段差溝
17 シール溝
18 シールプレート
19 シール部材
21 段差部
22 膨出部
30 シール溝
31 シールプレート
32 保持板
40 シールプレート
41 環状シール凹溝
50 シールプレート
51 環状シール溝
52 保持板

Claims (7)

  1. 出力シャフトにクラッチアウタが摺動可能に嵌装されると共に、一端にピニオンが形成されたクラッチインナの他端の外周面が複数のクラッチローラを介して前記クラッチアウタに嵌装されてなるオーバランニングクラッチにおいて、
    開口端部を有するクラッチアウタと、
    クラッチインナの外周面に摺接してシールする第1のシール部材と、
    クラッチアウタの開口端部に配置される第2のシール部材と、
    中央に形成された孔の内周部分に第1のシール部材が固着されかつ第2のシール部材が一体に焼き付けられて構成されてなり、当該第2のシール部材を押圧すると共にクラッチアウタの開口端面を閉塞するシールプレートと、
    押圧されたとき、当該シールプレートを介して第2のシール部材を押圧させる、断面がS字状の保持板と、
    一端に開放端部を有し他端に中心孔が形成された有底部を有する円筒形状のカバーとを備え、
    当該カバーは、クラッチアウタの開口端部側から挿入されてクラッチアウタの外周面を被覆し、当該カバーの開放端部のクラッチアウタ端面でのカシメに基づいて当該カバーの有底部で保持板を押圧する保持板押圧構造を備えてなり、
    クラッチアウタ内に充填された潤滑用グリースの外部への漏出を防止するようにしたことを特徴とするスタータクラッチのシール構造。
  2. 出力シャフトにクラッチアウタが摺動可能に嵌装されると共に、一端にピニオンが形成されるクラッチインナの他端の外周面が複数のローラを介して前記クラッチアウタに嵌装されてなるスタータのオーバランニングクラッチにおいて、
    開口端面を有し、この開口端面に段差溝と該段差溝に同心円状のシール溝が設けられたクラッチアウタと、
    前記シール溝を側面で覆う円盤状シールプレートと、
    前記クラッチインナの外周面に摺接してシールする第1のシール部材が前記シールプレートの中央に形成される孔に固着されると共に、
    前記シールプレートに一体に焼き付けられて構成され、当該シールプレートの側面と前記シール溝との間に介在する第2のシール部材と、
    押圧されたとき、当該シールプレートを介して第2のシール部材を押圧させると共に、前記段差溝に係合し前記シールプレートを前記開口端面で閉塞する、断面がS字状の保持板と、
    一端に開放端部を有し他端に中心孔が形成された有底部を有する円筒形状のカバーとを備え、
    該カバーは前記クラッチアウタの開口端面側から挿入されて前記クラッチアウタの外周面を被覆し、当該カバーの開放端部のクラッチアウタ端面でのカシメに基づいて前記有底部で前記保持板を押圧しつつ前記クラッチアウタに固着することにより、
    クラッチアウタ内に充填された潤滑用グリースの外部への漏出を防止するようにしたことを特徴とするスタータクラッチのシール構造。
  3. 出力シャフトにクラッチアウタが摺動可能に嵌装されると共に、一端にピニオンが形成されるクラッチインナの他端の外周面が複数のローラを介して前記クラッチアウタに嵌装されてなるスタータのオーバランニングクラッチにおいて、
    開口端面を有し、この開口端面の外周端に円周状のシール溝が設けられたクラッチアウタと、
    前記シール溝を側面で覆う円盤状シールプレートと、
    前記クラッチインナの外周面に摺接してシールする第1のシール部材が前記シールプレートの中央に形成される孔に固着されると共に、
    前記シールプレートに一体に焼き付けられて構成され、当該シールプレートの側面と前記シール溝との間に介在する第2のシール部材と、
    押圧されたとき、当該シールプレートを介して第2のシール部材を押圧させると共に、前記シールプレートにおける、前記第2のシール部材の反対側に位置する、断面がS字状の保持板と、
    一端に開放端部を有し他端に中心孔が形成された有底部を有する円筒形状のカバーとを備え、
    該カバーは前記クラッチアウタの開口端面側から挿入されて前記クラッチアウタの外周面を被覆し、当該カバーの開放端部のクラッチアウタ端面でのカシメに基づいて前記有底部で前記保持板を押圧しつつ前記クラッチアウタに固着することにより、
    クラッチアウタ内に充填された潤滑用グリースの外部への漏出を防止するようにしたことを特徴とするスタータクラッチのシール構造。
  4. 出力シャフトにクラッチアウタが摺動可能に嵌装されると共に、一端にピニオンが形成されるクラッチインナの他端の外周面が複数のローラを介して前記クラッチアウタに嵌装されてなるスタータのオーバランニングクラッチにおいて、
    開口端面を有し、この開口端面に段差溝が設けられたクラッチアウタと、
    前記段差溝に接する側面に環状シール凹部が設けられた略円盤状シールプレートと、
    前記クラッチインナの外周面に摺接してシールする第1のシール部材が前記シールプレートの中央に形成される孔に固着されると共に、
    前記略円盤状シールプレートに焼き付けられてなり、前記段差溝と前記環状シール凹部との間に介在する第2のシール部材と、
    押圧されたとき、当該シールプレートを介して第2のシール部材を押圧させると共に、前記段差溝に係合し前記シールプレートを前記開口端面で閉塞する、断面がS字状の保持板と、
    一端に開放端部を有し他端に中心孔が形成された有底部を有する円筒形状のカバーとを備え、
    該カバーは前記クラッチアウタの開口端面側から挿入されて前記クラッチアウタの外周面を被覆し、当該カバーの開放端部のクラッチアウタ端面でのカシメに基づいて前記有底部で前記保持板を押圧しつつ前記クラッチアウタに固着することにより、
    クラッチアウタ内に充填された潤滑用グリースの外部への漏出を防止するようにしたことを特徴とするスタータクラッチのシール構造。
  5. 出力シャフトにクラッチアウタが摺動可能に嵌装されると共に、一端にピニオンが形成されるクラッチインナの他端の外周面が複数のローラを介して前記クラッチアウタに嵌装されてなるスタータのオーバランニングクラッチにおいて、
    開口端面を有するクラッチアウタと、
    前記開口端面に接する側面に環状シール凹部が設けられた略円盤状シールプレートと、
    前記クラッチインナの外周面に摺接してシールする第1のシール部材が前記シールプレートの中央に形成される孔に固着されると共に、
    前記略円盤状シールプレートに焼き付けられてなり、前記開口端面と前記環状シール凹部との間に介在する第2のシール部材と、
    押圧されたとき、当該シールプレートを介して第2のシール部材を押圧させると共に、前記シールプレートにおける、前記開口端面に接する側面の反対側面に位置する、断面がS字状の保持板と、
    一端に開放端部を有し他端に中心孔が形成された有底部を有する円筒形状のカバーとを備え、
    該カバーは前記クラッチアウタの開口端面側から挿入されて前記クラッチアウタの外周面を被覆し、当該カバーの開放端部のクラッチアウタ端面でのカシメに基づいて前記有底部で前記保持板を押圧しつつ前記クラッチアウタに固着することにより、
    クラッチアウタ内に充填された潤滑用グリースの外部への漏出を防止するようにしたことを特徴とするスタータクラッチのシール構造。
  6. 前記カバーの内周面の一部に内径が小さい段差部が全周に亘って形成されると共に、前記クラッチアウタの外周部の一部であって前記段差部と対応した位置に外径が大きい膨出部が全周に亘って形成され、前記段差部と前記膨出部とが圧入されることにより密着構造を有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のスタータクラッチのシール構造。
  7. 出力シャフトにクラッチアウタが摺動可能に嵌装されると共に、一端にピニオンが形成されるクラッチインナの他端の外周面が複数のローラを介して前記クラッチアウタに嵌装されてなるスタータのオーバランニングクラッチにおいて、
    一端に開放端部を有し他端に中心孔が形成された有底部を有して内周面の一部に内径が小さい段差部が全周に亘って形成される円筒形状のカバーと、
    開口端面を有すると共に外周部の一部であって前記段差部と対応した位置に外径が大きい膨出部が全周に亘って形成されるクラッチアウタと、
    前記開口端面に配設されるシールプレートと、
    前記クラッチインナの外周面に摺接してシールする第1のシール部材が前記シールプレートの中央に形成される孔に固着されると共に、
    前記シールプレートに一体に第2のシール部材が焼き付けられて構成され、
    押圧されたとき、当該シールプレートを介して第2のシール部材を押圧させると共に、前記シールプレートにおける、前記開口端面とは反対側面に位置する、断面がS字状の保持板とを備え、
    該カバーは前記クラッチアウタの開口端面側から挿入され、
    前記段差部と前記膨出部とが圧入されて前記クラッチアウタの外周面を被覆し、
    当該カバーの開放端部のクラッチアウタ端面でのカシメに基づいて前記有底部で前記保持板を押圧しつつ前記クラッチアウタに固着することにより、
    前記有底部で前記保持板を押圧しつつ前記クラッチアウタに固着することにより、
    クラッチアウタ内に充填された潤滑用グリースの外部への漏出を防止するようにしたことを特徴とするスタータクラッチのシール構造。
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