JP3883934B2 - 生化学解析用ユニットを利用した化学発光法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、標識レセプタまたは標識リガンドを化学発光法(ケミカルルミネッサンス法)により検出する方法に関し、詳しくは多孔性の吸着性領域を有する生化学解析用ユニットを利用して、標識レセプタまたは標識リガンドを化学発光法により検出する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マイクロアレイ解析システムやマクロアレイ解析システムにおいては、メンブレンフィルタなどの生化学解析用ユニットの表面の異なる位置に、特異的結合物質(ホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アブザイム、その他のタンパク質、核酸、cDNA、DNA、RNAなど、生体由来の物質と特異的に結合可能で、かつ、塩基配列や塩基の長さ、組成、特性などが既知の物質)を含む溶液を滴下して多数のスポット状領域を形成し、放射線標識物質、蛍光物質、化学発光基質と接触させることによって化学発光を生じさせる標識物質などによって標識された生体由来の物質(ホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アブザイム、その他のタンパク質、核酸、DNA、mRNAなどの抽出、単離などによって生体から採取された、あるいは、採取された後に化学的処理が施された物質であって、放射線標識物質、蛍光物質、化学発光基質などの標識物質によって標識された物質)を、スポット状領域に含まれている特異的結合物質にハイブリダイズ等させて特異的結合物質と特異的に結合させ、多数のスポット状領域に選択的に含まれている放射性標識物質によって蓄積性蛍光体シートの輝尽性蛍光体層を露光し、露光された輝尽性蛍光体層を励起光によって走査して、輝尽性蛍光体層に含まれている輝尽性蛍光体を励起し、輝尽性蛍光体から放出された輝尽光を光電的に検出して生化学解析用データを生成し、あるいは、多数のスポット状領域を励起光によって走査して多数のスポット状領域に選択的に含まれている蛍光物質を励起し、蛍光物質から放出された蛍光を光電的に検出して生化学解析用データを生成し、あるいは、多数のスポット状領城に選択的に含まれている標識物質を化学発光基質と接触させ、標識物質から放出される化学発光を光電的に検出して生化学解析用データを生成することが要求されている。
【0003】
従来、生化学解析用ユニットを利用した解析システムにおいては、上記ハイブリダイゼーション等を行う際に、実験者が手作業で、特異的結合物質が固定された生化学解析用ユニットをハイブリダイゼーションバッグ内に入れ、ハイブリダイゼーションバッグ内に標識された生体由来物質を含む反応溶液を加え、ハイブリダイゼーションバッグに振動を加えて標識された生体由来物質を対流あるいは拡散によって移動させて、特異的結合物質に標識された生体由来物質を特異的に結合させ、その後、生化学解析用ユニットをハイブリダイゼーションバッグから取り出して、洗浄溶液が満たされた容器内に入れて洗浄する、いわゆる振盪方式によって行うのが一般的であった。
【0004】
しかしながら、上述の振盪方式の場合、ハイブリダイゼーション反応溶液を特異的結合物質を含む多数のスポット状領域に、均一に接触させることは困難であり、効率的に、特異的結合物質と標識された生体由来物質標識とをハイブリダイズさせることができないという問題があった。
【0005】
さらに、振盪方式の場合、実験者によってハイブリダイゼーションの結果がばらつき、再現性が低下するという問題があり、また、同じ実験者であっても再現性が低下するおそれがある。
【0006】
このような問題を解決するために、本出願人は、吸着性領域に標識された生体由来物質を含む反応液を強制的に流動させ、標識された生体由来物質を生化学解析用ユニットの吸着性領域の内部にまで充分に浸透させる方法を提案している(特願2002−26816号)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、化学発光基質と接触させることによって化学発光を生じさせる標識物質によって生体由来物質を検出する化学発光法を用いた検出方法では、特異的結合物質(以下、化学発光法においてはリガンドまたはレセプタという)に標識された生体由来物質(以下、化学発光法においては標識レセプタまたは標識リガンドという)を特異的に結合した後、さらに、標識レセプタまたは標識リガンドを標識している抗原などの物質に対する抗体に、酵素のように化学発光を生じさせる標識物質で標識し(以下、酵素標識抗体という)、この酵素標識抗体を標識レセプタまたは標識リガンドの抗原と特異的に結合させ、続いて酵素標識抗体の酵素が反応する化学発光基質を接触させる手順が必要である。
【0008】
従来の化学発光法では、蛍光物質や放射線物質を用いた生化学解析用ユニットの手順に加えてさらに、標識レセプタまたは標識リガンドが吸着性領域に結合した生化学解析用ユニットを、実験者が手作業で、再びハイブリダイゼーションバッグ内に入れ、ハイブリダイゼーションバッグ内に標識レセプタまたは標識リガンドの抗原と特異的に反応する酵素標識抗体を含む反応溶液を加え、ハイブリダイゼーションバッグに振動を加えて、酵素標識抗体を対流あるいは拡散によって移動させて、酵素標識抗体を標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させ、その後、化学発光基質を接触させて反応させる必要がある。
【0009】
しかし、従来の振盪方式による化学発光法においては、酵素標識抗体が生化学解析用ユニットの吸着性領域の内部にまで充分に浸透せず、標識されたリガンドまたはレセプタが結合していない吸着性領域の発光量(ノイズあるいはバックグラウンド)に対する、標識された標識レセプタまたは標識リガンドが結合した量に対応する発光量(信号)の比(S/N比)が小さく、吸着性領域に結合する標識された標識レセプタまたは標識リガンドが微量(1ピコグラム以下)となると検出することが困難になるという問題があった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、生化学解析用ユニットに固定されたリガンドあるいはレセプタに結合した標識レセプタまたは標識リガンドに、効率的に酵素標識抗体を結合させることができ、再現性、定量性に優れたデータを得ることが可能な生化学解析用ユニットを利用した化学発光法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の生化学解析用ユニットを利用した化学発光法は、リガンドまたはレセプタが結合された多孔性の吸着性領域を有する生化学解析用ユニットの前記リガンドまたはレセプタに、標識物質により標識された標識レセプタまたは標識リガンドを特異的に結合させ、酵素標識抗体を前記標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させ、該標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合した前記酵素標識抗体に化学発光基質を反応させる化学発光法において、前記酵素標識抗体を前記標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させる際に、前記酵素標識抗体を含む反応溶液を前記吸着性領域を横切るように強制的に流動させることを特徴とする方法である。
【0012】
前記酵素標識抗体を含む反応溶液を前記吸着性領域を横切るように強制的に流動させた後、該強制的に流動させた時間よりも長い時間、該流動を停止することが好ましい。この場合、前記酵素標識抗体を含む反応溶液を強制的に流動させた後、流動させた時間よりも長い時間、流動を停止してもよいし、前記酵素標識抗体を含む反応溶液の強制的流動と流動停止のサイクルを繰り返して、全体として強制的に流動させた時間よりも長い時間、流動を停止する態様としてもよい。
【0013】
また、別の態様としては、本発明の生化学解析用ユニットを利用した化学発光法は、リガンドまたはレセプタが結合された多孔性の吸着性領域を有する生化学解析用ユニットの前記リガンドまたはレセプタに、標識物質により標識された標識レセプタまたは標識リガンドを特異的に結合させ、酵素標識抗体を前記標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させ、該標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合した前記酵素標識抗体に化学発光基質を反応させる化学発光法において、前記リガンドまたはレセプタに前記標識物質により標識された標識レセプタまたは標識リガンドを特異的に結合させる際に、前記標識物質により標識された標識レセプタまたは標識リガンドを含む反応溶液を前記吸着性領域を横切るように強制的に流動させ、前記酵素標識抗体を前記標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させる際に、前記酵素標識抗体を含む反応溶液を前記吸着性領域を横切るように強制的に流動させることを特徴とする方法である。
【0014】
この場合においても、前記酵素標識抗体を含む反応溶液を前記吸着性領域を横切るように強制的に流動させた後、該強制的に流動させた時間よりも長い時間、該流動を停止することが好ましい。
【0015】
本発明の化学発光法に用いる反応装置は、リガンドまたはレセプタが結合された多孔性の吸着性領域を有する生化学解析用ユニットを内部に着脱可能に取り付ける取付部を有し、前記リガンドまたはレセプタと特異的に結合した標識物質により標識された標識レセプタまたは標識リガンドと酵素標識抗体を特異的に結合させるための反応容器と、該反応容器内に前記酵素標識抗体を含む反応溶液を流動させる流動手段とからなる化学発光法に用いられる反応装置において、前記流動手段が、前記酵素標識抗体を含む反応溶液を前記吸着性領域を横切るように強制的に流動させることを特徴とするものである。
【0016】
前記流動手段は、前記酵素標識抗体を含む反応溶液を前記吸着性領域を横切るように強制的に流動させ、さらに、前記標識レセプタまたは標識リガンドを含む反応溶液を前記吸着性領域を横切るように強制的に流動させるものであることが好ましい。
【0017】
【発明の効果】
本発明の生化学解析用ユニットを利用した化学発光法は、酵素標識抗体を標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させる際に、酵素標識抗体を含む反応溶液を生化学解析用ユニットの吸着性領域を横切るように強制的に流動させることとしたので、吸着性領域の内部にまで充分に酵素標識抗体を浸透させることが可能となり、標識レセプタまたは標識リガンドの検出限界を向上させることができ、かつ標識レセプタまたは標識リガンドが微量であってもS/N比の大きい検出を行うことができる。従って、より正確な検出を行うことが可能となるとともに、再現性、定量性に優れたデータを得ることができる。
【0018】
なお、酵素標識抗体を含む反応溶液を吸着性領域を横切るように強制的に流動させた後、強制的に流動させた時間よりも長い時間、流動を停止することによって、標識レセプタまたは標識リガンドの検出限界をさらに向上させることができるとともに、よりS/N比の大きい検出を行うことが可能となる。
【0019】
また、リガンドまたはレセプタに標識物質により標識された標識レセプタまたは標識リガンドを特異的に結合させる際に、標識物質により標識された標識レセプタまたは標識リガンドを含む反応溶液を吸着性領域を横切るように強制的に流動させ、かつ酵素標識抗体を標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させる際に、酵素標識抗体を含む反応溶液を吸着性領域を横切るように強制的に流動させることによって、吸着性領域の内部にまで充分に標識レセプタまたは標識リガンドおよび酵素標識抗体を浸透させることが可能となるので、標識レセプタまたは標識リガンドが微量であってもよりS/N比の大きい検出を行うことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明のの化学発光法に用いられる生化学解析用ユニットの概略斜視図である。図1に示す生化学解析用ユニット1は、孔3が複数設けられた基板2と、孔3の内部に充填され、多孔性材料が基板2と接着された吸着性領域4とからなる。この吸着性領域4には、構造または特性が既知のリガンドまたはレセプタ5が滴下され、その後の処理により固定化されている。
【0021】
基板2の材質としては、生化学解析用ユニット内部での光の散乱を防止するために、光を透過させないか、減衰させる材質が好ましく、金属、セラミックが好ましい。また、孔を開ける加工が容易であるプラスチックを基板として用いる場合は、光をより一層減衰させるために、粒子をプラスチック内部に分散させることが好ましい。
【0022】
金属としては、銅、銀、金、亜鉛、鉛、アルミニウム、チタン、錫、クロム、鉄、ニッケル、コバルト、タンタルあるいは、ステンレス鋼や黄銅などの合金が好ましくあげられる。セラミックとしては、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、石英などが好ましくあげられる。プラスチックとしては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレートやポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン−6やナイロン−6,6などの脂肪族ポリアミド、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリジフェニルシロキサンなどのケイ素樹脂、ノボラックなどのフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、酢酸セルロースやニトロセルロースなどのセルロース類、ブタジエン−スチレン共重合体などのコポリマー、さらにはプラスチックをブレンドしたものなどが好ましくあげられる。
【0023】
基板2に開ける孔3の開口部の面積(サイズ)は、孔3の密度を高めるために、一般には5mm2 未満であり、好ましくは1mm2 未満であり、0.3mm2 未満がより好ましく、さらには0.01mm2 未満であることが好ましい。そして、より好ましくは0.001mm2 以上であることが好ましい。
【0024】
孔3のピッチ(隣接する二つの孔の中心から中心までの距離)は0.05〜3mmの範囲であることが好ましく、孔3の間隔(隣接する二つの孔の端部から端部までの最短距離)は、0.0l〜1.5mmの範囲であることが好ましい。孔3の数(密度)は、一般には10個/cm2 以上であり、好ましくは100個/cm2 以上、より好ましくは500個/cm2 以上、さらには1000個/cm2 以上であることが好ましい。そして、好ましくは100000個/cm2 以下、さらには10000個/cm2 以下であることが好ましい。なお、必ずしも、孔3は全て図1に示したように等間隔で設けられている必要はなく、幾つかのブロック(単位)に別れてブロック毎に複数の孔が設けられていてもよい。
【0025】
本発明において、吸着性領域を形成する多孔性材料としては、多孔質材料あるいは繊維材料が好ましく使用される。また、多孔質材料と繊維材料とを併用して吸着性領域を形成することもできる。本発明において、吸着性領域を形成するために使用される多孔性材料は、有機材料、無機材料のいずれでもよく、有機/無機複合体でもよい。
【0026】
吸着性領域を形成するために使用される有機多孔質材料は、特に限定されるものではないが、活性炭などの炭素多孔質材料あるいはメンブレンフィルタを形成可能な多孔質材料が好ましく用いられる。メンブレンフィルタを形成可能な多孔質材料としては、セルロース誘導体(例えば、ニトロセルロース、再生セルロース、セルロースアセテート、酢酸セルロース、酪酸酢酸セルロースなど)、脂肪族ポリアミド類(例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,10など)、ポリオレフィン類(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、含塩素ポリマー類(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなど)、フッ素樹脂類(例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオライドなど)、ポリカーボネート、ポリスルフォン、アルギン酸及びその誘導体(例えば、アルギン酸、アルギン酸カルシウム、アルギン酸/ポリリシンポリイオンコンプレックスなど)、コラーゲンなどがあげられ、これらポリマーの共重合体や複合体(混合体)も用いることができる。
【0027】
また、吸着性領域を形成するための繊維材料としては、特に限定されるものではないが、好ましくは前述したセルロース誘導体類、脂肪族ポリアミド類などがあげられる。
【0028】
吸着性領域を形成するために使用される無機多孔質材料は、特に限定されるものではないが、好ましくは、金属(例えば、白金、金、鉄、銀、ニッケル、アルミニウムなど)、金属等の酸化物(例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ゼオライトなど)、金属塩(例えぱ、ヒドロキシアパタイト、硫酸カルシウムなど)及びこれらの複合体などがあげられる。
【0029】
基板2に複数の孔3を開ける方法としては、ピンで打ち抜くパンチング、電極に高電圧をパルス状に印加して基板を揮発する放電加工、エッチング、レーザー照射などがあげられる。基板の材料が、金属材料またはプラスチック材料の場合は、基板の表面にコロナ放電またはプラズマ放電を施して接着剤を塗工した後、吸着性領域を形成するための多孔性材料をプレスなどの手段により貼り合わせることで生化学解析用ユニットが作製される。貼り合わせる際に、吸着性領域を形成するための多孔性材料を加熱して軟化すると、孔内部に吸着性領域が容易に形成される。また、基板に吸着性領域を形成するための多孔性材料をプレスする場合には、基板と吸着性領域を形成するための材料を、事前に1枚毎に分割してから間欠的にプレスしてもよいし、基板と吸着性領域を形成するための材料をそれぞれ長尺帯状としたものを2つのロール間に連続搬送してもよい。
【0030】
なお、本発明の生化学解析用ユニットを利用した化学発光法においては、上記の材料や方法によって作製した生化学解析用ユニットを使用することも可能であるが、市販されている生化学解析用ユニットを用いてもよく、また多孔性の吸着性領域にリガンドまたはレセプタがすでに結合されている生化学解析用ユニットを用いることも可能である。
【0031】
図2は、本発明の生化学解析用ユニットを利用した化学発光法に用いられるリアクタ(反応装置)の一の実施の形態を示す概略断面図である。リアクタは、反応容器10と流動手段20とからなり、反応容器10は、反応容器上半部13と反応容器下半部14とからなり、反応容器上半部13は反応容器下半部14に取り外し可能に設けられている。また、反応容器10は、リガンドまたはレセプタが結合された多孔性の吸着性領域を有する生化学解析用ユニット1を内部に着脱可能に取り付ける、上側挟持片11と下側挟時片12からなる取付部を有し、生化学解析用ユニット1は反応容器上半部13を取り外すことによってセットすることができるように構成されている。さらに、反応容器下半部14の底壁には反応溶液が流通可能な溶液流入口15が形成され、反応容器上半部13の頂壁には同様に反応溶液が流通可能な溶液流出口16が形成されている。
【0032】
流動手段20は溶液循環パイプ21とポンプ22から構成され、溶液循環パイプ21の一端は反応容器10の溶液流入口15に、他端は溶液流出口16に取り外し可能に取り付けられている。反応溶液はポンプ22によって溶液流入口15から反応容器10内に入り、生化学解析用ユニット1の吸着性領域4を横切るように強制的に流動した後、溶液流出口16から出て、溶液循環パイプ21を通って循環するように構成されている。
【0033】
図3は、本発明の生化学解析用ユニットを利用した化学発光法に用いられるリアクタの別の実施の形態を示す概略断面図である。このリアクタは、図2に示すポンプの代わりにシリンジ23とピストン24が設けられているもので、反応溶液が反応容器内で往復流動するように構成したものである。このように、反応溶液の強制的流動は、生化学解析用ユニット1の吸着性領域4を往復流動するものであってもよい。
【0034】
なお、図2および図3はともに、反応溶液が生化学解析用ユニットを循環するタイプのリアクタを示しているが、反応溶液が生化学解析用ユニットの下から上(あるいは上から下)に通過するのみで、反応溶液が循環しないタイプのリアクタを用いることも可能である。
【0035】
次に、本発明の生化学解析用ユニットを利用した化学発光法を順を追って説明する。
本発明の生化学解析用ユニットを利用した化学発光法では、まず、多孔性の吸着性領域を有する生化学解析用ユニットの吸着性領域にリガンドまたはレセプタを結合させる。
【0036】
多孔性の吸着性領域に結合されるリガンドまたはレセプタは、ホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アブザイム、その他のタンパク質、核酸、cDNA、DNA、RNAなどであって、特性、組成、構造あるいは塩基配列や塩基の長さなどが既知のものである。リガンドまたはレセプタは、吸着性領域に滴下した後、紫外線の照射などによって吸着性領域に固定することができる。なお、上述したように、多孔性の吸着性領域にリガンドまたはレセプタがすでに結合されている生化学解析用ユニットを用いる場合には、この段階は省略される。
【0037】
次に、吸着性領域に結合されたリガンドまたはレセプタに標識レセプタまたは標識リガンドを特異的に結合させる。標識レセプタまたは標識リガンドは、多孔性の吸着性領域に結合されるリガンドまたはレセプタと特異的に結合するホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アブザイム、その他のタンパク質、核酸、DNA、mRNAなどの抽出、単離などによって生体から採取された、あるいは、採取された後に化学的処理が施され、標識物質によって標識されたものである。レセプタまたはリガンドを標識する標識物質としては、ジゴキシゲニン、ビオチン、アビジン、フルオロセインなどの抗原、及びこれらの抗原に対する抗体などを好ましくあげることができる。
【0038】
なお、標識レセプタまたは標識リガンドが、多孔性の吸着性領域に結合されているリガンドまたはレセプタとではなく、生化学解析用ユニットに設けられた吸着性領域に直接結合または吸着することを防止するために、標識レセプタまたは標識リガンドを含む溶液を生化学解析用ユニットに接触させる前に、いわゆるブロッキング剤を生化学解析用ユニットの吸着性領域に接触させておくことが好ましい。ブロッキング剤は、後述する酵素標識抗体と同様に濾過して用いることが好ましい。
【0039】
標識レセプタまたは標識リガンドを多孔性の吸着性領域に結合されているリガンドまたはレセプタと特異的に結合させた後、生化学解析用ユニットを上記図2または図3等に示す、反応溶液を吸着性領域を横切るように強制的に流動させることが可能な反応容器に取り付ける。なお、標識レセプタまたは標識リガンドが吸着性領域を閉塞させるようなものではない、例えば標識DNAのような場合には、吸着性領域に結合したリガンドまたはレセプタに標識レセプタまたは標識リガンドを特異的に結合させる段階から生化学解析用ユニットを反応容器に取り付けてもよい。この場合には、吸着性領域に結合されているリガンドまたはレセプタに、標識レセプタまたは標識リガンドを効率的かつ均一に接触させることができるので、標識レセプタまたは標識リガンドの検出限界を向上させることができるとともに、標識レセプタまたは標識リガンドが微量であっても、よりS/N比の大きい検出を行うことができる。
【0040】
また、多孔性の吸着性領域に結合されているリガンドまたはレセプタと標識レセプタまたは標識リガンドを特異的に結合する段階から、標識レセプタまたは標識リガンドに酵素標識抗体に特異的に結合する段階まで、吸着性領域にそれぞれの反応溶液を強制的に流動させる方法により行うことができるので、工程を単純化することができるとともに、より精度の高い検出が可能となる。
【0041】
なお、多孔性の吸着性領域に結合されているリガンドまたはレセプタと標識レセプタまたは標識リガンドを特異的に結合する段階から、上記図2または図3等に示す反応容器等を用いて標識レセプタまたは標識リガンドを含む反応溶液を強制的に流動させて行う場合には、その前段階のブロッキング剤を生化学解析用ユニットの吸着性領域に接触させる段階も、反応容器を用いて、ブロッキング剤を含む反応溶液を強制的に流動させて行うことが可能である。このようにすれば、工程を単純化することができるとともに、より正確で、再現性、定量性に優れたデータを得ることが可能となる。
【0042】
反応容器に取り付けた生化学解析用ユニットは、多孔性の吸着性領域に結合されているリガンドまたはレセプタに特異的に結合しなかった標識レセプタまたは標識リガンドを除去するために、吸着性領域にいわゆる洗浄液を強制的に流動させて洗浄することが好ましい。吸着性領域を洗浄液が強制的に流動するので、多孔性の吸着性領域に結合されているリガンドまたはレセプタに特異的に結合していない標識レセプタまたは標識リガンドを、効率的に剥離させ、除去することが可能になり、洗浄効率を大幅に向上することができる。
【0043】
なお、この洗浄工程は、後述する酵素標識抗体を吸着性領域を横切るように強制的に流動させて標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させた後、特異的に結合しなかった酵素標識抗体を除去する場合にも行うことが好ましい。これによって、標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合していない酵素標識抗体を、効率的に剥離させ、除去することが可能になり、洗浄効率を大幅に向上することができる。
【0044】
吸着性領域に結合したリガンドまたはレセプタに特異的に結合した標識レセプタまたは標識リガンドに、酵素標識抗体を結合させる前に、吸着性領域の孔径よりも小さい孔径のフィルターで酵素標識抗体を濾過することが好ましい。酵素標識抗体は凝集しやすいため多孔性の吸着性領域に詰まる場合があるが、このように濾過することで吸着性領域の内部にまで充分に酵素標識抗体を浸透させることができる。
【0045】
吸着性領域の孔径はPMI(Porous Materials, Inc.)社製の多孔質材料自動細孔測定システムにより測定できる。測定手順は、試液で濡らした多孔性の吸着性領域に徐々に圧力を上げて空気を送り込んで空気透過流量を測定し(濡れ流量曲線)、一方、同じ圧力で吸着性領域が試液で濡れていない時の空気透過流量を測定する(乾き流量曲線)。この2つの透過流量を比較することによって(乾き流量曲線の1/2の傾きの曲線と濡れ流量曲線の交わる点の圧力を求め)、圧力と細孔細孔径の関係式から平均細孔径を計算により求めることができる。酵素標識抗体を濾過するフィルターは通常、ある大きさの粒子を通して粒子が通るか通らないかで孔径が規定されているから、上記により測定した吸着性領域の孔径よりも小さい孔径のフィルターを選択し、このフィルターで酵素標識抗体を濾過して用いる。選択されるフィルタの孔径は、吸着性領域の孔径の半分以下であることがより好ましい。
【0046】
次に、酵素標識抗体を吸着性領域を横切るように強制的に流動させて標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させる。酵素標識抗体を含む反応溶液を吸着性領域を横切るように強制的に流動させた後、強制的に流動させた時間よりも長い時間、流動を停止することが好ましい。強制的に流動させる時間および流動を停止する時間は、リガンドまたはレセプタ、標識レセプタまたは標識リガンドの種類、量等によって異なり一概には言えないが、強制的に流動させる時間が1分〜30分の場合、流動を停止する時間は30分〜1時間が好ましい。なお、1分間強制的に流動させた後、30分間流動を停止し、再び1分間強制的に流動させた後、30分間流動を停止するといったように、流動と停止をサイクルで繰り返し行ってもよい。
【0047】
酵素標識抗体は、標識レセプタまたは標識リガンドの標識物質に対する抗体(標識レセプタまたは標識リガンドが抗体である場合には抗原)を酵素で標識したものである。酵素標識抗体の酵素としては、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼなどの酵素を好ましく用いることができる。
【0048】
続いて、生化学解析用ユニットを反応容器から取り出して、標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合した酵素標識抗体に化学発光基質を接触させる。酵素標識抗体に反応させる化学発光基質は、酵素がアルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼである場合には、特に限定するものではないが、それぞれジオキセタン、ルミノール、ルシフェリンを用いることができる。
【0049】
化学発光基質と酵素との接触によって可視光波長領域の化学発光を生ずるので、これを光電的に検出して生化学解析用画像データを生成すれば、標識レセプタまたは標識リガンドを検出、測定することができる。
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0050】
【実施例】
(実施例1)
大きさが90mm×90mm、厚み100μmのSUS304シート(基板材料シート)に、孔径0.3mmの開口部が円形の微細孔を、エッチングによって孔ピッチ0.4mm、孔間隔0.1mmで、計400個形成した。
【0051】
次に、基板材料シートの片面に接着剤を塗工し、続いて基板材料シートに形成した孔内部に入り込んだ接着剤を吸引除去した後、乾燥した。続いて、基板材料シートの接着剤を塗工した面に、ポアサイズ0.45μm、厚み170μmのナイロン6,6メンブレンを重ね、150℃に加熱しながら、圧力が1cm2 当たり300kgとなるようにプレスして、基板材料シートの孔内部にナイロン6,6メンブレンを圧入することで、ステンレス障壁と多数孔のポリマー充填領域とからなる生化学解析用ユニットを作製した。
【0052】
ジゴキシゲニンで標識されたpBR328−DNA溶液(ロッシュ株式会社製)をTEバッファ(10mMのTris−HClと1mMのEDTAの混合溶液:ニッポンジーン株式会社製)で希釈して濃度を50pg/μlとした後、熱変性を行ってジゴキシゲニンで標識されたpBR328−DNAを1本鎖とし、ジゴキシゲニン標識pBR328−DNA溶液を上記で作製した生化学解析用ユニットの吸着性領域に10nlづつ滴下し、その後紫外線を照射(254nm、33mJ/cm2 )して吸着性領域に1本鎖のジゴキシゲニン標識pBR328/BgII,HinfIを固定した。
【0053】
上記生化学解析用ユニットを図2に示す反応容器に収容し、洗浄バッファ(ロッシュ株式会社製)を滅菌された純水で濃度が1/10となるように希釈して洗浄液を調整し、生化学解析用ユニットが収容されている反応容器内にこの洗浄液を供給し、ポンプを駆動して生化学解析用ユニットの吸着性領域を洗浄した。
【0054】
続いて、滅菌された純水で濃度が1/10となるように希釈したマレイン酸バッファ(ロッシュ株式会社製)を用いて、ブロッキングバッファ溶液(ロッシュ株式会社製)を濃度が1/10となるように希釈した後、ポリエーテルスルフォン製のフィルター(φ=0.2μm)で濾過してブロッキング剤とした。これを洗浄液を廃棄した後の反応容器内に供給し、所定時間ポンプを駆動した後、所定時間静置することでブロッキング反応を行った。
【0055】
次に、アンチ−ジゴキシゲニン−AP−コンジュゲイト(アルカリホスファターゼ標識ジゴキシゲニン抗体)を、ポリビニリデンフルオライド製のフィルター(φ=0.2μm)で遠心濾過後、上記のブロック剤で濃度が1/10000になるように希釈して酵素標識抗体溶液を調整した。これをブロッキング剤を廃棄した後の反応容器内に供給し、所定時間ポンプを駆動した後、所定時間静置することで抗原抗体反応を行った。
【0056】
抗原抗体反応の完了後、洗浄バッファを反応容器内に供給し、ポンプを駆動して生化学解析用ユニットの吸着性領域を15分間洗浄し、これを3回繰り返した。生化学解析用ユニットを取り出して、化学発光基質であるCDP−star(CDP−star,read to use:ロッシュ株式会社製)を含む溶液と接触させて、生化学解析用ユニットの吸着性領域から放出される化学発光を冷却CCDカメラ(LAS1000:富士写真フィルム社製)によって光電的に検出し、デジタル信号を生成した。
【0057】
(比較例1)
実施例1の1本鎖のジゴキシゲニン標識pBR328/BgII,HinfIが固定された生化学解析用ユニットをハイブリダイゼーションバッグに入れて、実施例1と同じ洗浄液を供給し、ハイブリダイゼーションバッグに振動を加えて5分間振盪させた。続いて、洗浄液を廃棄し、ここに実施例1と同じブロッキング剤を供給して1時間振盪させ、ブロッキング反応を行った。次に、実施例1と同じ酵素標識抗体溶液を供給し、1時間振盪させて抗原抗体反応を行った。抗原抗体反応の完了後、洗浄バッファを反応容器内に供給して15分間振盪して洗浄し、これを3回繰り返した。洗浄後、生化学解析用ユニットをハイブリダイゼーションバッグから取り出して、化学発光基質であるCDP−starを含む溶液と接触させて、生化学解析用ユニットの吸着性領域から放出される化学発光を冷却CCDカメラLAS1000によって光電的に検出し、デジタル信号を生成した。
【0058】
実施例1において、上記ブロッキング反応および抗原抗体反応のそれぞれのポンプ駆動時間および静置時間を変えた場合のバックグラウンドおよびシグナルのデジタル信号量とS/N比、従来のハイブリダイゼーションバッグの振盪方式で実施した比較例1のバックグラウンドおよびシグナルのデジタル信号量とS/N比をまとめたものを表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1から明らかなように、酵素標識抗体を標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させる際に、酵素標識抗体を含む反応溶液を生化学解析用ユニットの吸着性領域を横切るように強制的に流動させた実施例1では、酵素標識抗体を含む反応溶液を生化学解析用ユニットの吸着性領域を横切るように強制的に流動させたので、吸着性領域の内部にまで充分に酵素標識抗体を浸透させることが可能となり、反応溶液を強制的に流動させた時間の長短にかかわらず、従来のハイブリダイゼーションバッグを用いた振盪方式の比較例1よりもシグナルが大きく検出され、バックグラウンドは小さく検出された。
【0061】
また、実施例1から、抗原抗体反応のシグナルの大きさはポンプ駆動時間の長さよりもポンプ駆動後の静置時間の長さに、より大きな影響を受けていた。これは、酵素標識抗体を含む反応溶液を生化学解析用ユニットの吸着性領域を横切るように強制的に流動させた後、その状態で流動を停止すること、さらに言えば、強制的に流動した時間よりも長く流動を停止することによって、酵素標識抗体は標識レセプタまたは標識リガンドと多く接触することができ、かつその結合を強固なものとすることができ、S/N比の大きい検出を行うことができたものと推察される。
【0062】
また、ブロッキング反応においても、反応溶液を生化学解析用ユニットの吸着性領域を横切るように強制的に流動させた後に、その状態で流動を停止した方がよりバックグラウンドが小さく検出された。これは、静置することによって、ブロッキング剤が吸着性領域により安定に結合または吸着したものと推察される。
【0063】
(実施例2)
TEバッファに溶解した分子量マーカーpBR328/BgII,HinfI(25ng/μl:ロッシュ株式会社製)を5分間煮沸後、1分間氷冷しpBR328/BgII,HinfIを1本鎖とした。これを実施例1で作製した生化学解析用ユニットの吸着性領域にスポットし、その後紫外線を照射(254nm、33mJ/cm2 )して、吸着性領域に1本鎖のpBR328/BgII,HinfIを固定した。
【0064】
次に、100ml中に、滅菌された純水52ml、20×SSC(ニッポンジーン株式会社製)30ml、0.5MのEDTA(pH8.0)2ml、50×denhard's 溶液10ml、10%のSDS溶液5ml、濃度100μg/mlのサケ精子の変性DNA1mlの割合で含むハイブリダイゼーション溶液を調整した。
【0065】
ジゴキシゲニンで標識されたpBR328−DNA溶液5ng/μlをTEバッファによって希釈してジゴキシゲニンによって標識されたpBR328−DNA溶液の濃度を所定値に調整し、熱変性を行って1本鎖にした後、ハイブリダイゼーション溶液によりさらに希釈して、所定の濃度のジゴキシゲニンによって標識されたpBR328−DNA溶液(ハイブリダイゼーション反応溶液)を調整した。
【0066】
上記生化学解析用ユニットをハイブリダイゼーションバッグに入れて、ここに調整したハイブリダイゼーション反応溶液を満たし、ハイブリダイゼーションバッグに振動を加えて18時間に亘って振盪し、ハイブリダイゼーション反応を行った。
【0067】
上記生化学解析用ユニットを図2に示す反応容器に固定し、以下、実施例1と同様に洗浄、ブロッキング反応、抗原抗体反応後、化学発光基質と接触させて、生化学解析用ユニットの吸着性領域から放出される化学発光を冷却CCDカメラLAS1000によって光電的に検出し、デジタル信号を生成した。
【0068】
(実施例3)
実施例2において、ハイブリダイゼーション反応を図2に示す反応容器に収容してポンプを駆動し、18時間に亘ってハイブリダイゼーション反応を行った以外は、洗浄、ブロッキング反応、抗原抗体反応、化学発光基質との接触全て実施例2と同様に行って、生化学解析用ユニットの吸着性領域から放出される化学発光を冷却CCDカメラLAS1000によって光電的に検出し、デジタル信号を生成した。
【0069】
(比較例2)
実施例2のハイブリダイゼーション反応が終了した生化学解析用ユニットを、そのままハイブリダイゼーションバッグに入れたまま、実施例2と同じ洗浄液を供給して5分間振盪した。続いて、洗浄液を廃棄し、ここに実施例1と同じブロッキング剤を供給して1時間振盪しブロッキング反応を行った。次に、実施例1と同じ酵素標識抗体溶液を供給して1時間振盪し、抗原抗体反応を行った。抗原抗体反応の完了後、洗浄バッファを反応容器内に供給して15分間振盪して洗浄し、これを3回繰り返した。洗浄後、生化学解析用ユニットを取り出して、化学発光基質であるCDP−starを含む溶液と接触させて、生化学解析用ユニットの吸着性領域から放出される化学発光を冷却CCDカメラLAS1000によって光電的に検出し、デジタル信号を生成した。
【0070】
実施例2,3および比較例2において、ジゴキシゲニンで標識されたpBR328−DNA量を変化させた場合の、バックグラウンドおよびシグナルのデジタル信号量とS/N比をまとめたものを表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表2から明らかなように、ハイブリダイゼーション反応を従来のハイブリダイゼーションバッグを用いた振盪方式、抗原抗体反応を本発明の反応装置で実施した実施例2およびハイブリダイゼーション反応、抗原抗体反応ともに本発明の反応装置で実施した実施例3は、ハイブリダイゼーション反応、抗原抗体反応ともに従来のハイブリダイゼーションバッグを用いた振盪方式で実施した比較例2に比べて、はるかに微量のジゴキシゲニン標識pBR328−DNAをS/N比を大きく検出することができた。
【0073】
以上のように、本発明の生化学解析用ユニットを利用した化学発光法は、酵素標識抗体を標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させる際に、酵素標識抗体を含む反応溶液を生化学解析用ユニットの吸着性領域を横切るように強制的に流動させることとしたので、吸着性領域の内部にまで充分に酵素標識抗体を浸透させることが可能となり、標識レセプタまたは標識リガンドが微量であってもS/N比の大きい検出を行うことができた。
【0074】
また、実施例3からも明らかなように、リガンドまたはレセプタに標識レセプタまたは標識リガンドを特異的に結合させる際にも、標識物質により標識された標識レセプタまたは標識リガンドを含む反応溶液を吸着性領域を横切るように強制的に流動させることによって、標識レセプタまたは標識リガンドがさらに微量であってもよりS/N比の大きい検出を行うことができた。
【0075】
また、酵素標識抗体を含む反応溶液を吸着性領域を横切るように強制的に流動させた後、強制的に流動させた時間よりも長い時間、流動を停止することによって、よりS/N比の大きい検出を行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化学発光法に用いられる生化学解析用ユニットの概略斜視図
【図2】本発明の生化学解析用ユニットを利用した化学発光法に用いられるリアクタの一の実施の形態を示す概略断面図
【図3】本発明の生化学解析用ユニットを利用した化学発光法に用いられるリアクタの別の実施の形態を示す概略断面図
【符号の説明】
1 生化学解析用ユニット
2 基板
3 孔
4 吸着性領域
5 リガンドまたはレセプタ
10 反応容器
11 上側挟持片
12 下側挟持片
20 流動手段
21 パイプ
22 ポンプ
Claims (5)
- リガンドまたはレセプタが結合された多孔性の吸着性領域を有する生化学解析用ユニットの前記リガンドまたはレセプタに、標識物質により標識された標識レセプタまたは標識リガンドを特異的に結合させ、酵素標識抗体を前記標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させ、該標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合した前記酵素標識抗体に化学発光基質を反応させる化学発光法において、
前記生化学解析用ユニットが、リガンドまたはレセプタが結合された多孔性の吸着性領域を基板に設けられた複数の孔に有し、該基板が光を透過させないまたは減衰させる材質からなり、
前記酵素標識抗体を前記標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させる際に、前記酵素標識抗体を含む反応溶液を前記吸着性領域を横切るように強制的に、循環または往復流動させることを特徴とする生化学解析用ユニットを利用した化学発光法。 - 前記酵素標識抗体を含む反応溶液を前記吸着性領域を横切るように強制的に流動させた後、該強制的に流動させた時間よりも長い時間、該流動を停止することを特徴とする請求項1記載の生化学解析用ユニットを利用した化学発光法。
- リガンドまたはレセプタが結合された多孔性の吸着性領域を有する生化学解析用ユニットの前記リガンドまたはレセプタに、標識物質により標識された標識レセプタまたは標識リガンドを特異的に結合させ、酵素標識抗体を前記標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させ、該標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合した前記酵素標識抗体に化学発光基質を反応させる化学発光法において、
前記生化学解析用ユニットが、リガンドまたはレセプタが結合された多孔性の吸着性領域を基板に設けられた複数の孔に有し、該基板が光を透過させないまたは減衰させる材質からなり、
前記リガンドまたはレセプタに前記標識物質により標識された標識レセプタまたは標識リガンドを特異的に結合させる際に、前記標識物質により標識された標識レセプタまたは標識リガンドを含む反応溶液を前記吸着性領域を横切るように強制的に循環または往復流動させ、前記酵素標識抗体を前記標識レセプタまたは標識リガンドと特異的に結合させる際に、前記酵素標識抗体を含む反応溶液を前記吸着性領域を横切るように強制的に循環または往復流動させることを特徴とする生化学解析用ユニットを利用した化学発光法。 - リガンドまたはレセプタが結合された多孔性の吸着性領域を有する生化学解析用ユニットを内部に着脱可能に取り付ける取付部を有し、前記リガンドまたはレセプタと特異的に結合した標識物質により標識された標識レセプタまたは標識リガンドと酵素標識抗体を特異的に結合させるための反応容器と、該反応容器内に前記酵素標識抗体を含む反応溶液を流動させる流動手段とからなる化学発光法に用いられる反応装置において、
前記生化学解析用ユニットが、リガンドまたはレセプタが結合された多孔性の吸着性領域を基板に設けられた複数の孔に有し、該基板が光を透過させないまたは減衰させる材質からなり、
前記流動手段が、前記酵素標識抗体を含む反応溶液を前記吸着性領域を横切るように強制的に循環または往復流動させるものであることを特徴とする化学発光法に用いる反応装置。 - 前記流動手段が、さらに、前記標識レセプタまたは標識リガンドを含む反応溶液を前記吸着性領域を横切るように強制的に循環または往復流動させるものであることを特徴とする請求項4記載の化学発光法に用いる反応装置。
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