JP3882847B2 - 強誘電性ガラスセラミックスおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、低温焼成でき、比誘電率の制御が可能なBaO−SrO−TiO2−SiO2−Al23系の強誘電性ガラス組成物に関する。
セラミックス多層配線基板は、各種の電気機器、電子機器の電子回路部品として広く用いられており、近年の携帯電話、携帯可能なパソコンなどの需要増大に伴い、これら電子機器の小型化、軽量化、高機能化等が要望され、それに伴う回路の高密度化や高周波数化が進行している。このような動向に対し、回路基板用セラミックスとしては、高周波における損失が小さく、銀(Ag)、銅(Cu)等の低融点導電材料による回路が基板と同時に焼成できる、1000℃以下の低温焼成が可能なものが開発されてきた。
回路構成要素としてのコンデンサ素子や抵抗素子は、従来、個々に回路基板外部に実装されており、このために小型化には限界があったが、セラミックス多層基板内部に比誘電率の高い強誘電性セラミックス層を介装させ、それによりコンデンサ素子を内蔵させて小型化、高密度化した構造の基板が提案され、実用化されつつある。
強誘電性のセラミックス材料には、BaTiO3、CaTiO3、MgTiO3などをベースにしたものが多く使われるが、これらのセラミックスの焼結温度は通常1300℃以上の高温であり、低融点導電材料を同時焼成により焼成させる基板等には適用できない。このため、融点の低いシリカガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラスなどガラスのマトリックスの中に、上記の強誘電性セラミックス粒子が分散した形態のガラスセラミックスあるいはガラス組成物が、低温焼成可能な強誘電性セラミックスとして種々開発された。しかしながら、ガラス相は一般的に比誘電率が低く、これらのガラス組成物では必ずしも十分高い比誘電率は得られていない。
焼結温度を低くできる強誘電性セラミックスとして、BaTiO3のBaを鉛(Pb)で置換し、Tiの4価のサイトを3価−5価や2価−6価のイオンの組合せで置換した複合ペロブスカイト系化合物があるが、Pbを含むセラミックスは廃棄物の環境汚染問題があり、使用できない。
このような低温焼成可能な強誘電性ガラスセラミックスの中で、現在、実用的に最も多く活用されているのは、酸化物の形としてBaO、TiO2、SiO2およびAl23を含むBaO−TiO2−SiO2−Al23系のアルミノケイ酸ガラスセラミックスである。これはガラスからの熱処理により、強誘電性のBaTiO3を主とする相を析出させるもので、他のガラス組成物に比較して比誘電率が高く、高周波における誘電損失が低く、組成を選ぶことにより1000℃以下での焼成が可能である。
この高い比誘電率を有し、しかも低温焼成により基板に組込むことができるガラスセラミックスあるいはガラス組成物は、さらに直流電圧印加により誘電率可変とすることが可能になれば、フィルタ、位相制御、整相型アンテナ等へ、その適用範囲を大幅に拡大できる。
一般に強誘電性セラミックスは、温度を上げていくと強誘電性相から常誘電性相に転移するが、この転移温度はキュリー温度と呼ばれている。キュリー温度を超えた温度では、常誘電性相でありながら強誘電性相ドメインの残骸が残存しているので高誘電率であり、誘電損失が小さくヒステリシスがない。このためマイクロ波帯などの高周波域での誘電率可変用途には、主としてこの領域が利用される。
BaTiO3系セラミックスの場合、ペロブスカイト結晶構造の各サイトのイオンをSr、Ca、Sn、あるいはZrなどに部分的に置き換えることで、キュリー温度の制御が行なわれている。BaO−TiO2−SiO2−Al23系のガラス組成物においても、その強誘電性は析出してくるBaTiO3を主とする相の誘電特性に基づいており、この相のイオンを置き換える変性を行なえば、強誘電性ガラス組成物のキュリー温度が低下できると推測される。
しかしながら、これまで上記の系のガラス組成物に対しSrなどの置換によるキュリー温度の低下が種々試みられてきたが、100℃を大きく下回るたとえば室温、またはそれ以下の温度への制御は実現されていない。これは、置換量を増そうとして原料へのSrなどの配合比率を大きくしても、六方セルシアンなどの相が現れてその相への置換析出が支配的となり、BaTiO3を主とする析出相に対する置換率は、容易には増加させることができないからである。
本発明はAgやCuなどの低融点良伝導性の内部導電体を採用することのできる、低温焼成可能な強誘電性のガラス組成物に関するものであり、その中でも特に、印加電圧により容量を変えることのできる可変容量コンデンサ素子形成に適した、キュリー温度を低下させたガラス組成物の提供を目的とする。
本発明者らは、低温焼成が可能な高誘電率のガラス組成物において、高周波域での損失の少ない比誘電率可変の誘電体を得るため、種々検討を行なった。この場合、絶縁抵抗や誘電特性の安定性から、BaO−TiO2−SiO2−Al23系の強誘電性ガラス組成物が好ましいと考えられ、この系のガラス組成物にてキュリー温度を低下させることの可能性を調査した。
ガラス組成物の製造は、通常、原料粉末を混合し、高温で加熱溶融して均一相の溶融体とした後、急冷してガラスカレットとし、粉砕してガラス焼成用の粉末を作製する。この粉末にバインダ等を添加し混練して所要形状に成形後、焼成してガラス組成物とする。上記の系の組成物の場合、焼成の過程でBaTiO3を主とする強誘電性相がガラスの中に析出し、析出相が多くなればその強誘電性相がガラスの網目構造に囲まれた、いわゆるガラスセラミックスの形態を取る。
BaO−TiO2−SiO2−Al23系の強誘電性ガラス組成物の場合、キュリー温度は組成範囲を変えても150℃前後より低い温度に低下させるのは困難である。このようなガラス組成物のキュリー温度を低下させるには、析出するBaTiO3等のBaOの一部をSrOに置換すればよいと考えられる。またその場合も、導電率の優れたAgやCuなどの低融点材料を内部導体に使用し、同時焼成により基板内部等に組込もうとすれば、ガラス組成物形成に必要な焼成温度が低くなければならない。
BaO−TiO2−SiO2−Al23系の強誘電性ガラス組成物の製造は、通常、1500℃またはそれ以上の温度に加熱して溶融し単相化する。焼成の過程で析出してくる強誘電性相中のBaの一部をSrにて置換するには、ガラスを溶融製造するときにSrOを原料に添加する必要がある。ところがSrOを添加すると、その量が増すにつれて融液の粘度が増し、キュリー温度を十分低下できる程度まで添加しようとすると、1600℃以上に加熱しなければ単相化しなくなり、ガラス化が困難になる。
ガラス化が不十分のまま、粉末にしてガラス組成物を焼成しても、キュリー温度は低下せず、目的とするガラス組成物は得られない。これは、SrOの融点がBaOに比し高いため、ガラス化を困難にさせ、その結果としてセルシアンなど第三相を形成させたり、強誘電性相への固溶を妨げたりしていると推測される。
そこでまず、SrOを添加したガラスの溶融温度を低下させることを目的に、助剤の添加やガラス組成の変更等を検討したが、十分な結果は得られなかった。しかし、それらの検討の中で、Al23を含有させるために通常は原料にAl23を用いるが、これに代えてAlF3を原料に用いれば、ガラス作製のための溶融温度を低下できるばかりでなく、SrOを添加するとガラス組成物のキュリー温度が低下して、100℃を下回る温度にまで低下できることが見出された。
このように、原材料にAlF3を用いると、ガラスの製造時にSrOを多く添加しても1500℃を下回る温度で溶融でき、粘性の低い単相のガラス融液が得られた。これはAlF3の融点がAl23の融点よりもはるかに低いためであろう。そしてこのガラス製造のための温度を低くできたことが、析出する強誘電性相中へのSrOの固溶あるいはBaOとの置換を容易にし、その結果としてキュリー温度を低下させたものと思われる。
ガラス形成の温度を低下させることは、他の融点の低い酸化物を添加しても可能であったが、これら添加物は最終のガラス組成物中にも残存し、その比誘電率、温度特性、高調波における誘電損失等に悪影響を及ぼす。これに対しAlF3は、融液を急冷してガラスカレットとし粉砕して基板等に焼成する製造過程でAl23に変化していき、最終のガラス組成物中には殆ど残存しない。
AlF3を製造の原料に用いることにより、ガラス溶融温度を低下させることができ、上記のガラス組成物において、特にBaOのSrOによる置換を容易にし、キュリー温度を低下できることがわかった。このAlF3を用いれば、ガラス溶融温度を低くできるが、他のCaO、SnO2、ZrO2などによる変性が容易になり、これらの成分を添加することによって、ガラス組成物のキュリー温度を低下させることも可能であった。
以上のようにして、BaO−TiO2−SiO2−Al23系の強誘電性ガラスにて、従来実現できなかった、キュリー温度を大きく低下させることが可能になった。すなわち低温焼成可能なBaO−TiO2−SiO2−Al23系の強誘電性ガラスの、高誘電率、低損失、高絶縁性、安定性等の特徴を維持したまま、キュリー温度を、要すれば室温以下にするなど大幅に変えることができ、それによって、直流電圧印加による誘電率変化幅の大きい強誘電性ガラス組成物が得られるようになった。
このような結果に基づき、さらに適用限界を明確にして本発明を完成させた。本発明の要旨は次のとおりである。
本発明は、酸化物の形としてBaO、SrO、TiO2、SiO2およびAl23を含み、それぞれの含有量は分子濃度比にてBaO+SrO+TiO2:0.2〜0.8、TiO2:0.1〜0.7、SiO2:0.1〜0.6、Al23:0.05〜0.25で、SrOおよびBaOの合計量を1とするとき、
xSrO+(1−x)BaO=1 (1)
で示される式にてx:0.1〜0.7であるガラス組成物を焼成して得られるガラスセラミックスであって、このガラスセラミックスは、(Ba,Sr)TiO 3 を主とする強誘電性相を析出しており、かつ、キュリー温度が−100℃から80℃までの範囲にあることを特徴とする強誘電性ガラスセラミックスである。
本発明にかかる強誘電性ガラスセラミックスにおいては、上記ガラス組成物における上記TiO2の一部SnO2で置換このSnO2の置換比、置換前のTiO2の含有量を1とするとき、0.42以下とし、上記ガラスセラミックス中に、(Ba,Sr)(Ti,Sn)O 3 で形成される強誘電性相を析出させることができる。また、上記ガラス組成物における上記SrOの含有量を、上記ガラス組成物におけるガラス組成物中の分子濃度比で0.075〜0.225とすることができる。
本発明は、上記強誘電性ガラスセラミックスを製造する方法であって、上記ガラス組成物中でAl23となる素材原料にAlF3を用い、所定組成の原料粉末を混合して1300〜1400℃にて溶融した後、急冷して得たガラスカレットを粉砕し、この粉末を用いて900〜1200℃で焼成することを特徴とする強誘電性ガラスセラミックスの製造方法である。
本発明によれば、マイクロ波帯等の高周波域で使用される低温焼成可能な強誘電性のガラス組成物において、キュリー温度を大きく低下させたものとすることができる。キュリー温度の低下は、印加電圧で容量を変えられる可変容量コンデンサ素子の形成が可能になり、フィルタ、位相制御、整相型アンテナ等へ、この強誘電性ガラス組成物の適用範囲を大幅に拡大させることができる。
本発明のガラス組成物において、酸化物の形で表わした成分の含有範囲を請求項1のように限定するのは、以下の理由による。
BaO+SrO+TiO2の含有量を分子濃度比にて0.2〜0.8の範囲とするのは、0.2未満では誘電率が低くなり過ぎ、強誘電性のガラス組成物にならないからであり、0.8を超える場合はマトリックスとなるガラスの形成が困難になり、溶融温度が高くなってしまうからである。なお、本発明の強誘電性とは、比誘電率が60〜500程度の比誘電率を有することを意味する。
上記の範囲で、TiO2は0.1〜0.7とする。これは、0.1より小さくても、0.7より大きくても誘電率の高いガラス組成物が得られなくなるからである。これはガラス組成物中の強誘電性相における(Ba1-xSrx)TiO3の存在量が不十分になるためと思われる。
上記TiO2の一部はSnO2で置換することができる。SnO2の置換比は、置換前のTiO2の含有量を1(100モル%)とするとき、0.42(42モル%)以下とすることができる。この場合、焼成後のガラス組成物において、(Ba,Sr)(Ti,Sn)O3の強誘電性相が析出し、比誘電率がさらに高くなる。
BaOおよびSrOは、いずれもTiO2と共に含有されることにより、ガラス組成物の誘電率を高くする効果があるが、BaOに対してSrOを置換していくとキュリー温度が低下していくので、目的とするキュリー温度からSrOの含有量を選定する。その場合、分子濃度比でガラス組成物中のBaO量とSrO量との合計量を1とするとき、SrOは0.1〜0.7の範囲とするのがよい。すなわちSrOおよびBaOの量を
xSrO+(1−x)BaO=1 (1)
と表わしたときx:0.1〜0.7である。
これは、xが0.1を下回る場合は、キュリー温度低下の顕著な効果は現れず、xが0.7を超える範囲にしようとすれば、ガラスの溶製が困難になるからである。キュリー温度低下の効果をより明確に現出させるには、0.2以上の含有が望ましい。
BaO、SrOおよびTiO2は、ガラス組成物中に析出分散した強誘電性相を形成し、その強誘電性相は、ガラス組成物の誘電特性を支配すると推定される。強誘電性相はそのBaOおよびSrOの合計量と、TiO2の量との比が1:1である(Ba1-xSrx)TiO3の形態をとるとき、最も高い比誘電率を示すと考えられる。したがって、比誘電率に関して含有元素の効果を最大限に発揮させるためには、BaOおよびSrOの合計量と、TiO2の量との比が1:1になるよう含有量または配合量を制御するのが望ましい。
ガラス組成物中のBaOをSrOに置換することによりキュリー温度を変えることができる。しかし、置換できる範囲は上述のように(1)式にてxが0.1〜0.7の範囲であり、この範囲の置換により、ガラス組成物のキュリー温度は最大限−100℃から80℃までの範囲で変えることができる。
SiO2の量は0.1〜0.6とする。SiO2はガラスの形成に必要な元素であり、0.1未満ではガラスマトリックス形成が困難になる。しかし多すぎる含有は、ガラス組成物の誘電率が低くなってしまうので、多くても0.6までとする。
Al23はSiO2と共にガラスの形成に必要な元素であり、その含有量を0.05〜0.25とする。0.05未満ではガラスの形成が困難になり、0.25を超える量では、誘電率が低くなってしまうばかりでなく、溶融温度が高くなってガラスの形成も困難になる。
本発明のガラス組成物の製造は、ガラス組成物にてAl23となる成分に対しては作製用の原料にAlF3を用いる。AlF3を用いるのは、ガラス形成のための溶融温度を下げることができ、SrOを添加することにより、ガラス組成物のキュリー温度を十分低下させることが可能になるからである。AlF3を用いない場合、たとえば、通常行なわれるAl23を原料に用いると、SrO添加によりガラスを溶融する温度が上昇してしまい、均一なガラスカレットの製造が困難になる。
AlF3をガラス製造の原料とする際、ガラス組成物中のAl23成分量は、すべて出発材料がAlF3である必要はなく、AlF3と他の原料、たとえばAl23とを混合して用いてもよい。その場合、少なくとも0.05以上のAl23を成分、すなわち原料配合比率にて0.1以上のAlF3が用いられておれば、ガラスの溶融温度低下およびSrO添加によるキュリー温度の大幅低下の効果が得られる。
他のBaO、SrO、TiO2、SnO2およびSiO2については、酸化物や炭酸塩などを用いればよい。これらの原料は、AlF3を含めいずれも純度95%以上のものを用いれば、所要の性能を得ることができる。
ガラスの形成のための溶融温度は、1300〜1400℃とするのが好ましい。これは1300℃未満では原料素材が十分な溶融状態にならず、均一なガラスを得ることができないからであり、1400℃を超える温度ではAlF3の蒸散が甚だしくなるため、配合組成と大きく異なってくるおそれがあるからである。
原料は粉末を用いて十分混合し、溶融して均一化させた後、急冷してガラスカレットとし、粉砕して焼成用粉末とする。ガラス組成物は通常のセラミックス、あるいはガラスセラミックスと同様、この粉末にバインダ等を添加して混練し、所要形状に成形後、900〜1200℃にて焼成する。焼成温度は、Ag、CuあるいはNi等の低融点導電材料が適用できる温度範囲とするが、900℃以下ではガラスの焼成が困難になり、1200℃を超える温度では、低融点導電材料が適用できなくなり、ガラス組成物が焼成中に軟化変形するおそれもあるので、900〜1200℃とするのがよい。
(実施例)
表1および表2に示す酸化物組成物を原料粉末として、BaOおよびSrOは炭酸塩、TiO2、SnO2およびSiO2は酸化物、Al23はAlF3またはAl23とし、いずれも99%以上の純度のものを用いて製造を試みた。これらの原料粉末をボールミルにて湿式混合し、乾燥後、白金るつぼに入れ溶融後、水冷してガラスカレットとし、これらカレットを乾式粉砕後さらにボールミルにて湿式粉砕しガラス粉原料とした。ガラス粉にバインダとして10質量%のPVA水溶液を加えて造粒し、直径15mm、厚さ2mmの円板に成形後、予備的に温度を変えて焼成して、ガラスセラミックスとなる温度を確認し、表1中に示すその温度および時間で電気炉中にて焼成した。この試片にて比誘電率(ε)およびキュリー温度(Tc)を測定した。
また、低温焼成可能な基板素材上に電極用導電ペースト、厚さ25μmの造粒した上記ガラス粉、電極用導電ペーストの順に層形成させ、上記円板と同じ温度で焼成後、ネットワークアナライザを用い5GHzにて容量可変率を測定した。これらの結果を合わせて表1および表2に示す。
Figure 0003882847
Figure 0003882847
これらの試作ガラス組成物のうち、試番13および14はAl23成分となる原料にAl23の粉末を用いたが、溶融温度を1550℃まで上昇させても粘性が高く単相の溶融液にならず、ガラス化が困難であり、その後の処理は行なわなかった。また、試番6はAl23を含有しない組成にしようとしたが、1500℃で均一な溶融相が得られなかった。
他の、試番6を除く試番1〜12は、Al23成分となる原料にAlF3を用いた。これらのうち、試番1、9および11は、溶融温度を1400℃以上に上げても均一相にならず、それ以上の温度上昇はAlF3の蒸散が甚だしくなり、目標組成のガラス組成物が得られなくなるので、試作を中断した。試番1はBaO+SrO+TiO2量が多すぎ、試番9はTiO2量が多すぎ、試番11はAl23成分量すなわちAlF3量が少なすぎ、いずれも本発明で定める範囲を逸脱しているためである。他の試番のものは、いずれも1350〜1400℃にて均一相の溶融相が得られ、急冷してガラスカレットとした。
しかし、ガラス組成物焼成後では、試番2はSrOを添加していないので、キュリー温度が125℃と高く、本発明の目標キュリー温度範囲に達していない。試番8はTiO2量が少なくその上BaO+SrO+TiO2量も低すぎて誘電率が低い。また試番10はSiO2が多すぎ、試番12はAl23が多すぎていずれも誘電率が低い。さらに試番12はガラス組成物の焼成温度が高すぎる。これらの誘電率が低い試料は、それ以上の特性測定は行なわなかった。
これらに比較して、本発明にて定める組成および方法にて製造された試番3、4、5および7は、比誘電率は60以上あり、キュリー温度は十分低く、コンデンサとして容量可変であることがわかる。また、試番15〜17のように、TiO2の一部がSnO2で置換され、SnO2の置換比が、置換前のTiO2の含有量を1とするとき、0.42以下であるものは、比誘電率が特に向上している。なお、SnO2の置換比yは、y=(SnO2の分子濃度比)/[(TiO2の分子濃度比)+(SnO2の分子濃度比)]の式で表わすことができる。

Claims (4)

  1. 化物の形としてBaO、SrO、TiO2、SiO2およびAl23を含み、それぞれの含有量は分子濃度比にてBaO+SrO+TiO2:0.2〜0.8、
    TiO2:0.1〜0.7、
    SiO2:0.1〜0.6、
    Al23:0.05〜0.25で、
    BaOとSrOとの合計量を1とするとき、
    (1−x)BaO+xSrO=1 (1)
    で示される式にてx:0.1〜0.7であるガラス組成物を焼成して得られるガラスセラミックスであって、
    前記ガラスセラミックスは、(Ba,Sr)TiO 3 を主とする強誘電性相を析出しており、かつ、キュリー温度が−100℃から80℃までの範囲にあることを特徴とする強誘電性ガラスセラミックス
  2. 前記ガラス組成物においては、前記TiO2の一部がSnO2で置換され、前記SnO2の置換比が、前記置換前のTiO2の含有量を1とするとき、0.42以下であって、
    前記ガラスセラミックスは、(Ba,Sr)(Ti,Sn)O 3 で形成される強誘電性相を析出していることを特徴とする請求項1に記載の強誘電性ガラスセラミックス
  3. 前記ガラス組成物において、前記SrOの含有量は、前記ガラス組成物中の分子濃度比で0.075〜0.225であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の強誘電性ガラスセラミックス。
  4. 請求項1に記載の強誘電性ガラスセラミックスを製造する方法であって、
    前記ガラス組成物中で前記Al23となる素材原料にAlF3を用い、所定組成の原料粉末を混合して1300〜1400℃にて溶融した後、急冷して得たガラスカレットを粉砕し、この粉末を用いて900〜1200℃で焼成することを特徴とする強誘電性ガラスセラミックスの製造方法。
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