JP3882700B2 - 排気ガス浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気ガスを浄化する技術に関し、特に、排気ガス中の微粒子と窒素酸化物(NOx)とを同時に除去するようにした排気ガス浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等に搭載される筒内噴射型の内燃機関、例えばディーゼル機関では、排気ガス中に含まれる煤等の微粒子(排気微粒子)を除去すると共に窒素酸化物(NOx)を除去することが要求されている。このような要求に対し、従来よりNOx吸蔵剤が担持されたパティキュレートフィルタ(以下、「NOx吸蔵剤担持フィルタ」ともいう)を内燃機関の排気ガス通路に配置するようにした装置が提案されている。
【0003】
このように用いられるNOx吸蔵剤は、排気ガスの空燃比がリーンの時にはNOxを吸蔵し、流通する排気ガスの空燃比がリッチとなり排気ガス中にHCやCO等の還元剤が存在する状態であると吸蔵したNOxを離脱させ還元浄化する作用(NOxの吸蔵離脱及び還元浄化作用)を有している。そこで、上述したようなNOx吸蔵剤担持フィルタを排気ガス通路に配置したタイプの装置においては、NOx吸蔵剤のこのような作用を利用して、排気ガスの空燃比がリーンの時に排気ガス中のNOxをNOx吸蔵剤に吸蔵させる一方、一定期間使用してNOx吸蔵剤の吸蔵効率が低下した時または低下する前にNOx吸蔵剤担持フィルタの上流側で還元剤(燃料)を添加する等して排気ガスの空燃比をリッチ化するNOx還元浄化制御を実施して、NOx吸蔵剤に吸蔵したNOxを離脱させると共に還元浄化するようにしている。
【0004】
なお、本明細書において「吸蔵」という語は「吸収」及び「吸着」の両方の意味を含むものとして用いる。したがって、「NOx吸蔵剤」は、「NOx吸収剤」と「NOx吸着剤」の両方を含み、前者はNOxを硝酸塩等の形で蓄積し、後者はNO2等の形で吸着する。また、NOx吸蔵剤からの「離脱」という語についても、「吸収」に対応する「放出」の他、「吸着」に対応する「脱離」の意味も含むものとして用いる。
【0005】
一方、上記のNOx吸蔵剤担持フィルタにおいては、排気ガス中の排気微粒子も捕集される。上記フィルタにより捕集された排気微粒子は、内燃機関の運転状態によって、例えば排気温度が高くなる高負荷運転時等には自然に燃焼するが、通常の運転状態では次第に堆積していく。排気微粒子が堆積すると上記フィルタにおいて生じる排気抵抗(すなわち、圧力損失)が上昇して内燃機関の性能に悪影響を及ぼす要因となる。
【0006】
このため、例えば、上記フィルタの温度を上昇させる等して堆積した排気微粒子を燃焼し除去するようにする微粒子除去制御が必要に応じて行われる。そしてこの際、微粒子除去制御を行うか否かを判定するために(すなわち上記フィルタの詰りを判定するために)上記フィルタの上流側と下流側との差圧が用いられる。すなわち、測定された上記差圧と吸入空気量等に基づいて算出される基準差圧とを比較し、測定された差圧が基準差圧を超えた時には上記微粒子除去制御を行う必要がある(すなわち上記フィルタが詰まっている)と判定する(例えば、特開平3−141812)。
【0007】
しかしながら、このような方法では、定常状態の運転がある程度継続しなければ正確な差圧を測定することが困難であり、測定中の加減速や上記フィルタの温度変化等に影響を受け易いため、誤判定をする可能性がある。また、一つの差圧センサからの出力に基づいて、すなわち測定された差圧を直接用いて判定を行う場合には、何らかの要因で測定機器の零点がずれてしまった時等に、判定に用いる測定値が真値から大きくずれ、誤判定を招く可能性もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、NOx吸蔵剤担持フィルタを具備した排気ガス浄化装置において、精度良くフィルタの詰り判定を行うことのできる排気ガス浄化装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載された排気ガス浄化装置を提供する。
【0010】
1番目の発明は、排気ガス中の微粒子を捕集するパティキュレートフィルタであって、流通する排気ガスの空燃比がリーンの時にはNOxを吸蔵し、流通する排気ガスの空燃比がリッチとなり且つ還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを離脱させ還元浄化するNOx吸蔵剤が担持されたパティキュレートフィルタが内燃機関の排気ガス通路に配置された排気ガス浄化装置であって、上記NOx吸蔵剤に吸蔵したNOxを還元浄化すべき時には、上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガスの流量を低減すると共に上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガスの空燃比がリッチになるようにするNOx還元浄化制御が行われる排気ガス浄化装置において、上記パティキュレートフィルタの上流側圧力を検出する圧力検出手段、もしくは上記パティキュレートフィルタの上流側と下流側との差圧を検出する差圧検出手段と、上記NOx還元浄化制御の際に上記排気ガス流量を低減した時の上記上流側圧力の変化の大きさまたは上記差圧の変化の大きさを検出し、該変化の大きさが予め定められる所定値以上であるときに上記パティキュレートフィルタが詰まっていると判定する詰まり判定手段とを具備していることを特徴とする排気ガス浄化装置を提供する。
【0011】
この発明によれば、上記NOx還元浄化制御の際に生じる上記パティキュレートフィルタの上流側圧力の変化の大きさ、または上記パティキュレートフィルタの上流側と下流側との差圧の変化の大きさを用いてパティキュレートフィルタの詰まりが判定されるので、誤判定の可能性が低減される。
すなわち、上記のような圧力の変化または差圧の変化の大きさの検出は、上記NOx還元浄化制御の時間が短い(例えば1〜2秒)ため、機関の運転状態の変化や上記パティキュレートフィルタの温度変化等の影響を受け難い。また、同じ検出手段からの検出値の差によって上記の夫々の変化の大きさが求められるため、検出手段の検出値が何らかの要因で一定の誤差を含んでいる場合にも、その誤差が相殺されることになる。このようなことから、本発明のように圧力の変化の大きさまたは差圧の変化の大きさを用いて詰まり判定をすることで、より精度良くパティキュレートフィルタの詰まりを判定することができる。
【0012】
2番目の発明は1番目の発明において、上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガスの流量を推定または検出する手段を有し、該手段により推定または検出された排気ガス流量が多い程、上記所定値が大きい値に補正または決定される。
上記パティキュレートフィルタの上流側圧力、並びに上記パティキュレートフィルタの上流側と下流側との差圧は、共に上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガスの流量によって変化する。したがって、本発明のように、詰まり判定の基準となる上記所定値を上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガスの流量に基づいて補正することにより、更に精度の良いパティキュレートフィルタの詰まり判定が可能となる。
【0013】
3番目の発明は1番目または2番目の発明において、上記パティキュレートフィルタの温度を推定または検出する手段を有し、該手段により推定または検出された温度が高い程、上記所定値が大きい値に補正または決定される。
上記パティキュレートフィルタの上流側圧力、並びに上記パティキュレートフィルタの上流側と下流側との差圧は、共に上記パティキュレートフィルタの温度によっても変化する。したがって、本発明のようにすることによっても、2番目の発明と同様、パティキュレートフィルタの詰まり判定の精度を向上することができる。
【0014】
4番目の発明は1番目から3番目の発明において、上記詰まり判定手段は、上記NOx還元浄化制御の際の上記上流側圧力の変化の大きさまたは上記差圧の変化の大きさが予め定めた回数連続して上記所定値以上であるときに上記パティキュレートフィルタが詰まっていると判定する。
上記NOx還元浄化制御の際の上記上流側圧力または上記差圧の変化の大きさが、例えば一度上記所定値以上となっても、詰まり以外の原因により偶発的になった可能性もある。そして、詰まりが原因であるならば、これらの圧力または差圧の変化の大きさは連続して上記所定値以上となるはずである。したがって、本発明において上記予め定めた回数を適切に定めることによって、パティキュレートフィルタにおいて詰まりが発生しているか否かを見極めることができ、誤判定の可能性を低減することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面において、同一又は類似の構成要素には共通の参照番号を付す。
また、以下ではNOx吸蔵剤を担持したパティキュレートフィルタを用いた場合について説明する。
【0016】
図1は本発明を筒内噴射型の圧縮着火式内燃機関に適用した場合を示している。なお、本発明は火花点火式内燃機関にも適用することもできる。
図1を参照すると、1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は電気制御式燃料噴射弁、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートを夫々示す。吸気ポート8は対応する吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、サージタンク12は吸気ダクト13を介して排気ターボチャージャ14のコンプレッサ15に連結される。吸気ダクト13内にはステップモータ16により駆動されるスロットル弁17が配置され、更に吸気ダクト13周りには吸気ダクト13内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置18が配置される。図1に示される実施形態では機関冷却水が冷却装置18内に導かれ、機関冷却水によって吸入空気が冷却される。
【0017】
一方、排気ポート10は排気マニホルド19および排気管20を介して排気ターボチャージャ14の排気タービン21に連結され、排気タービン21の出口には排気ガス浄化装置100が連結される。排気ガス浄化装置100は後述するようにNOx吸蔵剤46を担持しているパティキュレートフィルタ22(以下、単に「フィルタ」という)を内蔵している。また、フィルタ22の上流側には、フィルタ22へ流入する直前における排気ガス圧力(以下「上流側圧力」という。)を検出するための圧力センサ44が設けられている。
【0018】
排気マニホルド19とサージタンク12とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路24を介して互いに連結され、EGR通路24内には電気制御式EGR制御弁25が配置される。また、EGR通路24周りにはEGR通路24内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置26が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置26内に導かれ、機関冷却水によってEGRガスが冷却される。一方、各燃料噴射弁6は燃料供給管6aを介して燃料リザーバ、いわゆるコモンレール27に連結される。このコモンレール27内へは電気制御式の吐出量可変な燃料ポンプ28から燃料が供給され、コモンレール27内に供給された燃料は各燃料供給管6aを介して燃料噴射弁6に供給される。コモンレール27にはコモンレール27内の燃料圧を検出するための燃料圧センサ29が取付けられ、燃料圧センサ29の出力信号に基づいてコモンレール27内の燃料圧が目標燃料圧となるように燃料ポンプ28の吐出量が制御される。
【0019】
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。圧力センサ44及び燃料圧センサ29の出力信号は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して燃料噴射弁6、スロットル弁駆動用ステップモータ16、EGR制御弁25および燃料ポンプ28に接続される。
【0020】
図2にフィルタ22の拡大断面図を示す。図2を参照すると、フィルタ22は多孔質セラミックから成り、排気ガスは矢印で示されるように図中左から右に向かって流れる。フィルタ22内には、上流側に栓48が施された第1通路50と下流側に栓52が施された第2通路54とが交互に配置されハニカム状をなしている。排気ガスが図中左から右に向かって流れると、排気ガスは第2通路54から多孔質セラミックの隔壁を通過して第1通路50に流入し、下流側に流れる。このとき、排気ガス中の排気微粒子(パティキュレート)は多孔質セラミックによって捕集されて排気ガス中から除去され、排気微粒子の大気への放出が防止される。
【0021】
第1通路50および第2通路54の隔壁の表面及び内部の細孔内にはNOx吸蔵剤46が担持されている。NOx吸蔵剤46は、例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金Ptのような貴金属とから成る。NOx吸蔵剤46は流通排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOxを吸蔵し、流通排気ガスの空燃比がリッチとなり且つ還元剤が存在する状態であると吸蔵したNOxを離脱させ還元浄化する作用(NOxの吸蔵離脱及び還元浄化作用)を有する。
【0022】
図1に示されるような圧縮着火式内燃機関では、通常時の排気ガス空燃比はリーンである。したがって、通常時においては、フィルタ22によって、排気ガス中に含まれる排気微粒子が捕集されると共にNOxが吸蔵される。
そして、これらのNOx及び排気微粒子は次第にフィルタ22に蓄積されるため、必要に応じて、吸蔵したNOxを離脱させて還元浄化するようにするNOx還元浄化制御並びに排気微粒子を燃焼して除去するようにする微粒子除去制御を行う必要がある。すなわち、例えば、一定期間使用してNOx吸蔵剤46の吸蔵効率が低下した時または低下する前に上記NOx還元浄化制御が行われるようにされ、フィルタ22における圧力損失が所定値以上となった時、すなわちフィルタ22が詰まっていると判定された時に微粒子除去制御が行われるようにされる。
【0023】
本発明は、このような微粒子除去制御を実施するか否かを判定するため等に利用されるフィルタ22の詰まり判定を精度良く実施することを可能とするものであり、以下でその方法について、図3を参照しつつ説明する。
図3は、図1に示された構成で実施し得る方法の制御ルーチンを示すフローチャートである。なお、この制御ルーチンは一定時間毎の割り込みによって実行される。
【0024】
この制御ルーチンが実行されると、まず、ステップ101でNOx還元浄化制御の実施条件が成立したか否かが判定される。この実施条件は、例えばNOx吸蔵剤46に吸蔵されたNOx量、すなわち吸蔵NOx量が一定量以上になること等であるが、この場合、吸蔵NOx量を直接求めることは困難であるので例えば機関から排出されるNOx量、すなわち車両走行距離に基づいて吸蔵NOx量を推定する。つまり、前回NOx還元浄化制御を実施した時点からの走行距離が予め定められた設定値よりも大きくなった時にNOx還元浄化制御実施条件が成立したと判定する。
【0025】
ステップ101においてNOx還元浄化制御実施条件が成立していないと判定された場合には本制御ルーチンは終了し、成立していると判定された場合にはステップ103に進む。
ステップ103においてはNOx還元浄化制御が実施されると共に、NOx還元浄化制御の実施に伴ってフィルタ22を流通する排気ガスの流量Qを低減した時の上流側圧力Pの変化の大きさΔPが検出される。
【0026】
より詳細には、ここでNOx還元浄化制御はNOx吸蔵剤46の有する上述したような作用を利用して、すなわち、NOx吸蔵剤46(フィルタ22)を流通する排気ガスの空燃比をリッチにすることにより吸蔵したNOxを離脱させると共に還元浄化することによって行われる。そして、この際、排気ガスの空燃比をリッチ化するために必要な燃料量を抑制するために上記排気ガス流量Qを低減するような制御が行われる。具体的には本実施形態においては、スロットル弁17を制御することにより吸入空気量Aが低減される。この結果、目標とする空燃比までリッチ化するために必要な燃料量が抑制されると共にNOx吸蔵剤46(フィルタ22)を流通する排気ガスの流量Qが低減される。そしてこれに伴って、圧力センサ44で検出される上流側圧力Pも変化(減少)し、本ステップ103においてはこの上流側圧力Pの変化の大きさΔPも検出される。なお、本実施形態における空燃比の制御は上述したようなスロットル弁17による吸入空気量Aの調整と電気制御式噴射弁6による燃料噴射量の調整により達成される。
【0027】
図4は、上述したようなNOx還元浄化制御を行った時の排気ガス空燃比、吸入空気量A、排気ガス流量Q及び上流側圧力Pの経時変化の一例を示す図である。この例では、NOx還元浄化制御を実施すべく排気ガス空燃比をリッチにする際に吸入吸気量AがA1からA2に減少されている。その結果、排気ガス流量QがQ1からQ2へ減少し、上流側圧力PはP1からP2へ変化している。ステップ103において検出される上流側圧力Pの変化の大きさΔPは、この図の例ではP1−P2で表される。
【0028】
上述したような上流側圧力Pの変化の大きさΔPの検出は、上記NOx還元浄化制御の時間が短い(例えば1〜2秒)ために機関の運転状態の変化や上記フィルタ22の温度変化等の影響を受け難く、また、上記ΔPが同じ検出手段(圧力センサ44)からの検出値の差によって求められるため、検出手段の検出値が何らかの要因で一定の誤差を含んでいる場合にも、その誤差が相殺されることになること等から、上記ΔPは精度良く検出され得る。
【0029】
ステップ103で上流側圧力Pの変化の大きさΔPが検出されると、このΔPは続くステップ105において、詰まり判定の基準となる圧力変化の大きさCPと比較される。CPの値は、実験等によって目的に合わせて予め設定されるものであり、本実施形態では微粒子除去制御の実施の要否を判定するための値に設定されている。
【0030】
図5に示すように流通排気ガス流量Qが同様に変化した時の上流側圧力Pの変化の大きさΔPは、フィルタ22の詰まり度合が高くなるほど大きくなる。すなわち、図5中の曲線a、b、cは、詰まり度合の異なるフィルタ22についての上流側圧力Pと排気ガス流量Qとの関係を示したものであり、詰まり度合は曲線aの場合が最も低く、b、cと次第に高くなる。そして排気ガス流量QをQ1からQ2へ減少させた時の上流側圧力Pの変化の大きさΔPは詰まり度合が高くなるほど大きくなっている(ΔPc>ΔPb>ΔPa)。
【0031】
したがって、それ以上詰まりの度合が高くなると機関の性能に悪影響が生じてしまう等、微粒子除去制御の実施が必要となる時の詰まり度合に対応した圧力変化の大きさCPを事前に求めておけば、ステップ105における比較によって微粒子除去制御の実施の要否を判定できる。
そして上述したように上記ΔPは精度良く検出され得るので、ステップ105における詰まり判定の精度についても向上され、より適切に微粒子除去制御の実施の要否を判定できる。
【0032】
ステップ105において上記ΔPが基準となるCP未満であると判定された場合は、微粒子除去制御が必要な程の詰まり度合ではないということであるので、そのまま制御ルーチンが終了する。一方、上記ΔPがCP以上であると判定された場合にはステップ107に進み、微粒子除去制御が実施される。ここで微粒子除去制御は様々な方法で実施することができるが、例えば、ポスト噴射を行って排気ガス温度を上昇させ、フィルタ22の温度を上昇させることでフィルタ22上に堆積した微粒子を燃焼除去するようにしてもよい。
【0033】
以上説明したように、この方法においてはフィルタ22の詰まり判定がNOx還元浄化制御の際に生じるフィルタ22の上流側圧力Pの変化の大きさΔPを用いて行われ、そのことによってフィルタ22の詰まり判定の精度が向上し、誤判定の可能性が低減される。
また、以上の説明においては、詰まり判定の基準となる圧力変化の大きさCPを一定の値として説明したが、CPを排気ガス流量Qに応じて、すなわち、流量低減前の排気ガス流量Q1に応じて、または流量低減後の排気ガス流量Q2に応じて、もしくはこれら両方に応じて補正あるいは決定するようにしてもよい。
【0034】
図6は、同じ詰まり度合の場合において異なる排気ガス流量変化(Q1からQ2、Q1´からQ2、Q1´からQ2´)を行った時に生じる上流側圧力Pの変化の大きさΔP(ΔP1、ΔP2、ΔP3)について示したものであるが、この図に示すように、詰まり度合が同じであっても、流量低減前の排気ガス流量Q1またはQ1´及び流量低減後の排気ガス流量Q2またはQ2´によって上流側圧力Pの変化の大きさΔPは異なる。したがって、これらの排気ガス流量に応じて詰まり判定の基準となるCPを補正することによって、より精度の高い詰まり判定が可能となる。
【0035】
例えば、NOx還元制御の際には流量低減前の排気ガス流量に拘わらず同じ流量まで排気ガス流量が低減される場合を例にとると、この場合のCPは、流量低減前の排気ガス流量との関係において図7のように示される。つまり、流量低減前の排気ガス流量が多いほどCPは大きくなる。
また、流量低減後の排気ガス流量も異なる場合については、流量低減前の排気ガス流量と流量低減後の排気ガス流量との関係において実験等によって適切なCPを求め、マップ(図示なし)を作成しておくことが可能である。すなわち、例えば縦軸に流量低減前の排気ガス流量、横軸に流量低減後の排気ガス流量をとり、これらに対応するCPをマップ化する。
【0036】
図7に示した関係や上記マップに基づいてCPを補正あるいは決定することにより、排気ガス流量を考慮したより適切な詰まり判定が可能となる。
なお、この場合、排気ガス流量Qを推定または検出する手段が必要となるが、この手段としてフィルタ22の入口近傍に流量センサ(図示なし)を設けてもよい。あるいは、排気ガス流量Qを機関運転状態、例えば機関負荷A/N(吸入空気量A/機関回転数N)及び機関回転数Nの関数として予め求めてマップにしておき、このマップに基づいて機関負荷A/Nと機関回転数Nとから推定するようにしてもよい。
【0037】
また、上流側圧力Pの変化の大きさΔPはフィルタ22の温度Tによっても影響を受けるため、フィルタ22の温度Tに応じたCPに対する補正係数を事前に求めておくことにより、温度Tに応じたCPの補正が可能となって、更に精度の良い詰まり判定が可能となる。すなわち、例えばフィルタ22の温度Tが高い程、CPを大きい値に補正または決定するようにする。
この場合にはフィルタ22の温度Tを推定または検出する手段が必要となるが、この手段としてフィルタ22に温度センサ(図示なし)を設けてもよい。あるいは、排気ガス流量Qの場合と同様に、温度Tを機関運転状態、例えば機関負荷A/N(吸入空気量A/機関回転数N)及び機関回転数Nの関数として予め求めてマップにしておき、このマップに基づいて機関負荷A/Nと機関回転数Nとから推定するようにしてもよい。
【0038】
次に図8を参照して本発明の別の実施形態について説明する。図8に示された構成は図1に示された構成とほぼ同様であるが、排気ガス浄化装置101の部分が異なっている。より詳細には、排気ガス浄化装置101は、図1に示された構成の排気ガス浄化装置100が有している圧力センサ44の替わりに、フィルタ22の上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサ45を有している。
【0039】
図9は、図8に示した構成で実施される方法の制御ルーチンを示すフローチャートである。この方法は図3を参照して上述した方法とほぼ同様であり、各ステップが順に対応するので詳細な説明は省略するが、この方法においては、上流側圧力Pの替わりにフィルタ22の上流側と下流側との差圧Pdが利用される。
すなわち、ステップ203においては、NOx還元浄化制御の実施に伴ってフィルタ22を流通する排気ガスの流量Qを低減した時の差圧Pdの変化の大きさΔPdが検出される。このΔPdの検出についても、上述したΔPの検出と同様の理由で精度良く実施することができる。
【0040】
そして、このΔPdについても、図5に示されたΔPと同様、フィルタ22の詰まり度合が高くなるほど大きくなるので、微粒子除去制御の実施が必要となる時の詰まり度合に対応した差圧変化の大きさCPdを事前に実験等によって求めておけば、検出されたΔPdとCPdとの比較によって微粒子除去制御の実施の要否を判定できる(ステップ205)。ここで、上述したように上記ΔPdは精度良く検出され得るので、ステップ205における詰まり判定の精度についても向上され、より適切に微粒子除去制御の実施の要否を判定できる。
【0041】
このように、この方法においてはフィルタ22の詰まり判定がNOx還元浄化制御の際に生じるフィルタ22の上流側と下流側との差圧Pdの変化の大きさΔPdを用いて行われ、そのことによってフィルタ22の詰まり判定の精度が向上し、誤判定の可能性が低減される。
なお、このΔPdを用いる方法においても、先に説明したΔPを用いる方法の場合と同様に、詰まり判定の基準となる差圧変化の大きさCPdを排気ガス流量Q及びフィルタ温度Tに応じて補正あるいは決定するようにしてもよい。これにより更に精度の高い詰まり判定が可能となる。
【0042】
また、上述した各実施形態において、フィルタ22が詰まっていると判定されたことを報知する報知手段を更に具備するようにしてもよい。報知手段としては、例えば、アラーム、各種インジケータ等を用いることができる。これにより、運転者等がフィルタ22の状態を認知可能となる。
【0043】
更に、以上の説明においては、ΔPまたはΔPdが一度詰まり判定の基準となる値であるCPまたはCPd以上となれば、微粒子除去制御の実施が必要である、すなわちフィルタ22が詰まっていると判定したが、ΔPまたはΔPdが予め定めた回数連続してCPまたはCPd以上となった時にだけ、フィルタ22が詰まっていると判定するようにしてもよい。ΔPまたはΔPdが、例えば一度CPまたはCPd以上となったとしても、詰まり以外の原因により偶発的になった可能性もある。そして、詰まりが原因であるならば、これらΔPまたはΔPdは連続してCPまたはCPd以上となるはずである。したがって、上記予め定めた回数を適切に定めることによって、フィルタ22において詰まりが発生しているか否かを見極めることができ、誤判定の可能性を低減することができる。
【0044】
なお、上述した実施形態においてはNOx還元浄化制御がスロットル弁17により吸入空気量Aを低減すること等により行われたが、本発明はこれに限定されるものではなく、これまでの説明からも明らかなようにフィルタ22を流通する排気ガスの流量の変化を伴う方法であれば他の方法によりNOx還元浄化制御が行われてもよい。
【0045】
例えば、図10に示すような構成における排気ガス浄化装置102において、バイパス弁49を制御して排気ガスの一部がフィルタ22をバイパスするようにすると共にフィルタ22の上流で還元剤添加ノズル47により還元剤(燃料)を添加することで排気ガスをリッチ化してNOx還元浄化制御を行う場合においても、フィルタ22を流通する排気ガスの流量の変化を伴うので、圧力センサ44または差圧センサ45を備えることにより、図3または図9を参照する等して説明した方法によって詰まり判定をすることができる。
【0046】
【発明の効果】
以上のように、本発明によればNOx吸蔵剤を担持したパティキュレートフィルタを具備した排気ガス浄化装置において、そのパティキュレートフィルタの詰り判定を精度良く行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の排気ガス浄化装置を筒内噴射型の圧縮着火式内燃機関に適用した場合を示す図である。
【図2】図2は、NOx吸蔵剤が担持されたパティキュレートフィルタの拡大断面図である。
【図3】図3は、図1で示された構成で実施し得る方法の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】図4は、NOx還元浄化制御を行った時の排気ガス空燃比、吸入空気量、排気ガス流量及びパティキュレートフィルタ上流側圧力の経時変化の一例を示す図である。
【図5】図5は、詰まり度合の異なるパティキュレートフィルタにおいて、流通排気ガス流量が同様に変化した時のパティキュレートフィルタ上流側圧力の変化の大きさについて説明するための図である。
【図6】図6は、同じ詰まり度合のパティキュレートフィルタにおいて、異なる流通排気ガス流量変化を行った時に生じるパティキュレートフィルタ上流側圧力の変化の大きさについて示したものである。
【図7】図7は、NOx還元浄化制御における流量低減前のパティキュレートフィルタ流通排気ガス流量と詰まり判定の基準となる圧力変化の大きさCPとの関係を示す図である。
【図8】図8は、本発明の別の排気ガス浄化装置を筒内噴射型の圧縮着火式内燃機関に適用した場合を示す図である。
【図9】図9は、図8で示された構成で実施し得る方法の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の更に別の排気ガス浄化装置を筒内噴射型の圧縮着火式内燃機関に適用した場合を示す図である。
【符号の説明】
1…機関本体
5…燃焼室
6…電気制御式燃料噴射弁
22…パティキュレートフィルタ
30…電子制御ユニット
44…圧力センサ
45…差圧センサ
46…NOx吸蔵剤
47…還元剤添加ノズル
49…バイパス弁
100、101、102…排気ガス浄化装置
Claims (4)
- 排気ガス中の微粒子を捕集するパティキュレートフィルタであって、流通する排気ガスの空燃比がリーンの時にはNOxを吸蔵し、流通する排気ガスの空燃比がリッチとなり且つ還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを離脱させ還元浄化するNOx吸蔵剤が担持されたパティキュレートフィルタが内燃機関の排気ガス通路に配置された排気ガス浄化装置であって、
上記NOx吸蔵剤に吸蔵したNOxを還元浄化すべき時には、上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガスの流量を低減すると共に上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガスの空燃比がリッチになるようにするNOx還元浄化制御が行われる排気ガス浄化装置において、
上記パティキュレートフィルタの上流側圧力を検出する圧力検出手段、もしくは上記パティキュレートフィルタの上流側と下流側との差圧を検出する差圧検出手段と、
上記NOx還元浄化制御の際に上記排気ガス流量を低減した時の上記上流側圧力の変化の大きさまたは上記差圧の変化の大きさを検出し、該変化の大きさが予め定められる所定値以上であるときに上記パティキュレートフィルタが詰まっていると判定する詰まり判定手段とを具備していることを特徴とする排気ガス浄化装置。 - 上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガスの流量を推定または検出する手段を有し、該手段により推定または検出された排気ガス流量が多い程、上記所定値が大きい値に補正または決定される、請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
- 上記パティキュレートフィルタの温度を推定または検出する手段を有し、該手段により推定または検出された温度が高い程、上記所定値が大きい値に補正または決定される、請求項1または2に記載の排気ガス浄化装置。
- 上記詰まり判定手段は、上記NOx還元浄化制御の際の上記上流側圧力の変化の大きさまたは上記差圧の変化の大きさが予め定めた回数連続して上記所定値以上であるときに上記パティキュレートフィルタが詰まっていると判定する、請求項1から3の何れか一項に記載の排気ガス浄化装置。
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