JP3881208B2 - 鋳型用樹脂組成物及びそれを用いた鋳型用樹脂被覆砂 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、砂型鋳造法の主型や中子(以下、単に鋳型という)、特にヤニ、ススなどの熱分解生成物の発生量が抑制された鋳型を提供するための樹脂組成物及びそれを用いて得た鋳型用樹脂被覆砂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、砂型鋳造に用いられる鋳型の代表的な造型法として、シェルモールド法、コールドボックス法、常温自硬性法が知られている。例えば、このシェルモールド法においては、適当な混練機内で熱硬化性フェノール系樹脂と該樹脂の融点以上に加熱された鋳物砂、場合によっては硬化剤、例えばへキサメチレンテトラミンなどを混練後、強制冷却し、適当な滑剤を加えることによって得られる鋳物砂表面に熱硬化性フェノール系樹脂を溶融被覆した樹脂被覆砂、いわゆるレジンコーテッドサンドにより成形されたシェルモールド鋳型が現状では一般的に使用されている。
【0003】
ところで、このようなシェルモールド鋳型を用いた砂型鋳造で製造されている鋳物、例えば自動車用アルミニウム鋳物は、自動車の軽量化及び高性能化に対応して近年ますます鋳物の形状が複雑化ないし薄肉化の傾向にある。そのため、鋳型から発生する樹脂系結合剤などの有機質由来の熱分解生成物、例えばヤニ、ススなどは従来に増して多くなり、これに起因するガス欠陥や、鋳物の品質向上のために用いられる鋳造金型の急速冷却による該熱分解生成物の凝集に起因する湯回り不良などの鋳造欠陥などの発生が増大し問題になってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、鋳造時において、有機質由来の熱分解生成物、例えばヤニ、ススなどの発生量が抑制された鋳型を与えるための樹脂組成物、及びこれを用いて製造した鋳型用樹脂被覆砂を提供することを目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋳造時に発生するヤニ、ススなどの熱分解生成物の低減について鋭意研究を行なった結果、特定の金属酸化物が該熱分解生成物の発生量低減に有効であるが、さらにアルカリ金属酸素酸塩と併用すればより効果的であり、前記目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、(A)架橋硬化性樹脂と(B)マンガン、アルミニウム、バナジウム、チタン、スズ及び鉛の中から選ばれる金属元素の酸化物少なくとも1種と(C)アルカリ金属酸素酸塩を必須成分とすることを特徴とする鋳型用樹脂組成物及びそれを用いて得られる鋳型用樹脂被覆砂を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の鋳型用樹脂組成物において、(A)成分として用いられる架橋硬化性樹脂としては、硬化剤、例えばヘキサメチレンテトラミン、ポリイソシアネート、有機エステル、過酸化物などの存在下又は非存在下に加熱若しくは常温での架橋硬化性を示す鋳物砂の結合剤として機能するものであればよく、特に制限はないが、具体的にはフェノール樹脂、多官能性アクリルアミド系樹脂(特公平7−106421号公報参照)、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、鋳型の成形性や特性の観点から、フェノール樹脂が好ましい。
【0008】
(A)成分の使用量は、鋳物砂100質量部に対し、通常0.2〜3質量部、鋳型強度や熱分解生成物の発生量などの観点から、好ましくは0.5〜2質量部の範囲である。
【0009】
前記架橋硬化性のフェノール樹脂は、フェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールAなどのビスフェノール類の製造時に副生するビスフェノール系残渣などに代表されるフェノール類とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどのアルデヒド類とを酸性又は塩基性触媒の存在下で反応して得られる生成物、例えばノボラック型、レゾール型、アルカリ性レゾール型、含窒素レゾール型、ベンジリックエーテル型などのフェノール樹脂、あるいは任意の製造工程でキシレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、尿素系化合物、メラミン系化合物、エポキシ系化合物などと混合ないし反応して得られる変性フェノール樹脂である。
【0010】
その形状については特に制限はなく、固体状、液状、水溶液、ワニス状、エマルジョンなど、いずれであってもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらは、鋳型の強度改善に有効なシランカップリング剤、例えばγ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどを含むものが好ましい。
【0011】
本発明の鋳型用樹脂組成物においては、(B)成分として、特定の金属酸化物、すなわちマンガン、アルミニウム、バナジウム、チタン、スズ、鉛の中から選ばれる金属元素の酸化物が用いられる。この金属酸化物は、鋳造時に鋳型から発生する熱分解生成物の低減作用を有するものであり、具体例としては、二酸化マンガン、酸化マンガン、酸化アルミニウム、二酸化バナジウム、五酸化バナジウム、二酸化チタン、酸化チタン、酸化第一スズ、酸化第二スズ、酸化鉛、二酸化鉛などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、鋳型の強度の観点から、酸化アルミニウム及び二酸化チタンが好ましい。
【0012】
この(B)成分である金属酸化物の使用量としては、前記(A)成分100質量部に対し、1質量部未満では熱分解生成物の低減効果が十分に発揮されず、また50質量部を超えると鋳型の強度が低下するおそれがあるので、1〜50質量部、好ましくは5〜20質量部の範囲で選ぶのがよい。
【0013】
本発明の鋳型用樹脂組成物においては、さらに(C)成分としてアルカリ金属酸素酸塩を加える必要がある。このアルカリ金属酸素酸塩は、前記(B)成分の金属酸化物による熱分解生成物の低減作用を促進するものであり、例えば、硝酸、過マンガン酸、モリブデン酸、タングステン酸などのアルカリ金属塩が用いられる。特に、鋳型強度の低下を防ぐという点で、硝酸、モリブデン酸、タングステン酸などのアルカリ金属塩が好ましいが、入手し易さ、コストなどを考慮すれば、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムなどに代表されるアルカリ金属硝酸塩が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが一般的かつ代表的なものとして挙げられる。
【0014】
この(C)成分の使用量は、鋳型強度への影響を考慮すると、前記(A)成分100質量部に対して、0.1〜100質量部、好ましくは1〜20質量部の範囲で選ばれる。
【0015】
本発明の鋳型用樹脂組成物は、一般的には下記の方法で製造されるが、これらの方法に特に限定されるものではなく、例えば(1)(A)成分の架橋硬化性樹脂と(B)成分の特定の金属酸化物とを混合する方法、(2)(A)成分及び(B)成分の混合物と(C)成分のアルカリ金属酸素酸塩とを組み合わせ、(A)、(B)及び(C)成分を混合する方法、(3)鋳型用樹脂被覆砂を製造する際に、各成分を同時に若しくは時系的に添加する方法などにより製造される。
【0016】
本発明の鋳型用樹脂被覆砂の代表的なレジンコーテッドサンド(シェルモールド法)及び常温自硬性混練砂(常温自硬性法、コールドボックス法)の製造方法について、以下に例示的に示す。
(1)適当なサンドミキサー内で、加熱した鋳物砂、前記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分、ステアリン酸カルシウムなどの滑剤やその他任意添加物を混合し、当該技術分野で目的に応じて適用されてきた被覆方法を用いてレジンコーテッドサンドを製造した。このものは加熱した型に充填して硬化される。
(2)適当なサンドミキサー内で、鋳物砂、前記の(A)成分、硬化剤を添加又は非添加で混練し、次いで(B)成分及び(C)成分、その他任意添加物を添加して、さらに混練して常温自硬性混練砂を製造した。このものは常温の型に充填し、一定の時間放置し、又は触媒となるガスを通気し硬化される。
なお、被覆とは鋳物砂の表面の少なくとも部分的に被覆すればよく、必ずしも全面にわたって完全に被覆する必要はない。また、被覆の概念には鋳物砂表面への溶融被覆又は物理的付着が包含される。
【0017】
前記鋳物砂としては、ケイ砂をはじめ、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド、アルミナサンドなどの特殊砂、フェロクロム系のスラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグなどのスラグ系粒子、ナイガイセラビーズ(商品名)などの多孔質粒子及びこれらの回収砂若しくは再生砂並びにこれらの混合砂などが用いられる。
【0018】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、本発明の鋳型用樹脂組成物を用いて得られた鋳型用樹脂被覆砂については、以下の方法で試験した。
【0019】
(1)レジンコーテッドサンドの曲げ強度:JIS K−6910に準拠して測定した。
(2)常温自硬性混練砂の圧縮強度:JIS Z 2601−1993に準拠して測定した。
(3)熱分解生成物の発生量:ガラス試験管(内径16mm×長さ180mm)内に曲げ強度測定用テストピース(サイズ10mm×10mm×60mm)を入れた後、試験管の開口部付近にあらかじめ秤量したガラスウール(0.180mg)を挿入して熱分解生成物の発生量測定器を作った。次に、炉内温度が600℃に保持された管状加熱炉内に前記測定器を入れて6分間熱処理した後、取出して常温まで放置冷却した。その後、該測定器からガラスウールを取出して、その質量を測定した。
なお、熱分解生成物の発生量(mg)は、熱処理後のガラスウール質量(mg)から熱処理前のガラスウール質量(mg)を差し引いて算出した。
【0020】
比較例
スピードミキサー内に約140〜150℃に予熱したフリーマントル5000g、(A)成分としてノボラック型フェノール樹脂55gと(B)成分として酸化アルミニウム5.5gとを装入後、50秒間混練し、冷却水75gにへキサメチレンテトラミン9.8gを溶解させたへキサメチレンテトラミン水溶液の全量を添加し、塊状物が崩壊するまで送風冷却後、ステアリン酸カルシウム5gを添加し、15秒間混合してレジンコーテッドサンドを得た。得られたレジンコーテッドサンドについては、曲げ強度と熱分解生成物の発生量を測定した。その結果を表1に示す。
【0021】
実施例
比較例1において、酸化アルミニウムを表1に示す種類の(B)成分に変更し、さらに(C)成分として硝酸カリウム8.3gを用いた以外は、比較例1と同様にして6種類のレジンコーテッドサンド得た。得られたレジンコーテッドサンドについては、曲げ強度と熱分解生成物の発生量を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0022】
実施例
スピードミキサー内に常温のフリーマントル5000g、(A)成分として多官能性アクリルアミド系樹脂55g、硬化剤としてクメンヒドロパーオキシド1.1g、(B)成分として酸化アルミニウム5.5g及び(C)成分として硝酸カリウム8.3gを装入後、300秒間混練したのち、ステアリン酸カルシウム5gを添加し、15秒間混合してレジンコーテッドサンドを得た。得られたレジンコーテッドサンドについては、曲げ強度と熱分解生成物の発生量を測定した。その結果を表1に示す。
【0023】
比較例
比較例1において、(B)成分である酸化アルミニウムを使用しなかったこと以外は、比較例1と同様にしてレジンコーテッドサンドを得た。得られたレジンコーテッドサンドについては、曲げ強度と熱分解生成物の発生量を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0024】
比較例
実施例において、(B)成分である酸化アルミニウム及び(C)成分である硝酸カリウムを使用せずに、実施例と同様にしてレジンコーテッドサンドを得た。得られたレジンコーテッドサンドについては、曲げ強度と熱分解生成物の発生量を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
Figure 0003881208
【0026】
実施例
撹拌機、還流管、温度計を備えたガラス製反応フラスコにフェノール1000g、47質量%ホルムアルデヒド水溶液1360g、50質量%水酸化ナトリウム水溶液530gを入れてから、かき混ぜながら徐々に80℃に昇温した後、同温度で2.5時間反応させたのち、所定温度まで冷却してアルカリ性レゾール型フェノール樹脂を合成した。
次に、実験室用品川式卓上ミキサー内に、常温の三栄6号ケイ砂3000gと、(A)成分として上記のアルカリ性レゾール型フェノール樹脂を45gと、硬化剤としてエチレングリコールジアセテートを9g添加したのち、30秒間混練し、次いで酸化アルミニウムを4.5g、硝酸カリウムを6.8g添加して、さらに30秒間混練して常温自硬性混練砂を作製した。得られた常温自硬性混練砂については、圧縮強度と熱分解生成物の発生量を測定した。結果を表2に示す。
【0027】
比較例
実施例において、(B)成分である酸化アルミニウム及び(C)成分である硝酸カリウムを使用しなかった以外は、実施例と同様にして常温自硬性混練砂を得た。得られた常温自硬性混練砂については、前記と同様に圧縮強度と熱分解生成物の発生量を測定した。結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
Figure 0003881208
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の金属酸化物又はこれとアルカリ金属酸素酸塩とを併用することにより、鋳造時における有機質由来のヤニ、ススなどの熱分解生成物の発生量を大幅に低減することができる。そのため、熱分解生成物に起因する鋳物欠陥などによる鋳物の生産効率の低下を解消し、かつ鋳物製品の薄肉化を図ることができる。

Claims (3)

  1. (A)架橋硬化性樹脂と(B)マンガン、アルミニウム、バナジウム、チタン、スズ及び鉛の中から選ばれる金属元素の酸化物少なくとも1種と(C)アルカリ金属酸素酸塩を必須成分とすることを特徴とする鋳型用樹脂組成物。
  2. (C)成分のアルカリ金属酸素酸塩が、アルカリ金属硝酸塩である請求項記載の鋳型用樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2記載の鋳型用樹脂組成物を鋳物砂表面の少なくとも一部に被覆せしめてなることを特徴とする鋳型用樹脂被覆砂。
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