JP3880258B2 - プリント装置及びプリント方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は複数色のインクをプリント媒体に付与する記録ヘッドを双方向に走査してカラープリントを行う双方向プリント装置及び方法に関し、特に双方向カラープリントを行う際に生ずる色むらを軽減することが可能な双方向プリント装置、プリント方法及びプリント記録物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリント装置、特にインクジェット方式のプリント装置に於いてはカラープリントにおける記録スピードの向上が重要なテーマとなっている。記録スピードの向上の手法としては、記録ヘッドの長尺化の他に、記録ヘッドの記録(駆動)周波数の向上や双方向プリントなどが一般的である。双方向プリントは片方向プリントに比較して、同じスループットを得るときに必要エネルギの分散化が時間的になされているので、トータルシステムとしてはコスト的に有効な手段となっている。
【0003】
しかし、双方向プリント方式は記録装置、特に、記録ヘッドの構成によっては各色のインクの打ち込み順序が主走査の往方向と副方向で異なる為に、バンド状の色むらが発生するという原理的な問題を有していた。この問題は、インクの打ち込み順序に起因するため、以下のとおり、異なる色のドットが少しでも重なる場合は多かれ少なかれ発色の差として現れるものである。
【0004】
プリント媒体上に顔料や染料インク等の色剤を吐出して画像を形成した場合、先行して記録されたドットのインクがプリント媒体の表層から内部にかけて最初にプリント媒体に染着する。次に後続のドットを形成する為のインクがプリント媒体上の先行して記録されたドットの上に少なくとも一部が重なる状態で配置されると、既に先行するインクで染着されている部分よりも下方の部分に多くインクが染着する為に、発色として先行して記録されるインクの発色が強くなる傾向がある。その為に従来、各色の吐出ノズルが主走査方向に配置される物に於いては、往復プリントを行うと往走査と副走査でインクの打ち込み順序が逆転するため、発色の差によりバンド状の色むらが発生してしまっていた。
【0005】
この現象は、インクのみならずプロセスカラーを形成するワックス系色剤等でも、原理は異なるものの、先行、後続の関係に起因して同様に発生してしまう。
【0006】
双方向プリントをサポートするインクジェットプリンタでは、以下のような手法で、この問題を避けるように構成されていた。
1) 色むらを許容する。又は黒(Bk)のみ双方向プリントする。
2) カラーの各色のノズルを副走査方向に並べる、いわゆる縦並び構成とする。
3) 往路用ノズルと復路用ノズルを有し、各色の打ち込み順序が同じになるように往路と復路で使用ノズル又は使用ヘッドを切り替える(特公平3−77066号公報参照)。
4) 往路と復路でのプリントされるラスタがインターレースになるようにプリントし、補完的に記録ラスタ毎に高い周波数で打ち込み順の差による色むらが発生し、視覚的に均一に見えるようにする(特公平2−41421号公報、特開平7−112534号公報参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来の技術1)は、本質的な解決とはならず、さらにカラー画像が入るとスループットが大きく低下してしまう欠点を有していた。2)の縦並び構成は打ち込み順は往路と復路とで同一となるが、記録ヘッドが長尺になってしまう欠点と、各色の打ち込み時間差による発色の差に弱いとう別の欠点を有していた。
【0008】
3)の方法に於いては、例え同じ基板上に往路と復路用の記録ヘッドが作り込んであっても全く別の2組の記録ヘッドを用意していることと等価的には同じになるので、ヘッド間差と同様のバンド状の色差の大きい色むらが生じてしまう欠点があった。例えば、データとの干渉で往路側と復路側のデータの比率の違いにより、記録ヘッドの昇温度合いが異なっている場合は、記録ヘッド間で吐出量差が生じ、バンド状の色むらが発生してしまっていた。
【0009】
この問題は1パス双方向プリントの場合に大きな問題となるが、双方向のマルチパスプリントでも往路のプリントのパスで記録されるドット数と復路のプリントのパスで記録されるドット数の差、データを補完する間引きマスクによるドット数の差、あるいはプリントされるラスタとの同調によるプリントされるドット数の差によっては、同様の問題が発生する。
【0010】
4)は規則的に高い周波数の色むらとすることで、視覚的に色ムラを認識しにくくするものであるため、プリントデータによっては干渉によりその色差が強調される場合があった。例えば、1ラスタ毎に色差を生じさせる構成においては、網掛け等のハーフトーンで偶数ラスタのみの出現率が高いところと、奇数ラスタのみの出現率の高いところが往路と復路とで存在すると、同じ色を指定しても大きな色差を生じてしまっていた。
【0011】
そこで、本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、双方向カラープリントを行っても走査方向に起因する色むらの発生を軽減することが可能なプリント装置、プリント方法及びプリント記録物を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明はプリントデータに拘わらず走査方向に起因する色むらの発生を軽減することが可能なプリント装置、プリント方法及びプリント記録物を提供することを他の目的とする。
【0013】
さらに、本発明は低濃度部でも高濃度部でも走査方向に起因する色むらの発生を軽減することが可能なプリント装置、プリント方法及びプリント記録物を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は記録ヘッドを双方向に走査しつつ複数色のインクをプリント媒体に付与してカラー画像を形成するプリント装置において、
2次色の画素領域に当該2次色を形成するために付与される複数色のインクの付与順序を変更する変更手段と、
当該変更手段により、ラスター方向に複数配置される前記2次色の画素領域のうち略半数に対するインクの付与順序を他の前記2次色の画素領域に対するインクの付与順序と異なるように変更して複数のインクを付与し、カラー画像を形成する形成手段と
を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は複数色のインクに対応した記録素子を走査方向に対称的に配した記録ヘッドを双方向に走査しつつ複数色のインクをプリント媒体に付与してカラー画像を形成するプリント装置において、
前記対称的に配された複数の記録素子に対応する複数のプリントバッファと、
カラー画像に応じた画像信号に基づいて、ラスター方向に複数配置される2次色の画素領域に対応する前記2次色を構成する複数色のプリントデータを、前記複数のプリントバッファに分配する分配手段と、
を備え、
前記分配手段は、ラスター方向に複数配置される前記2次色の画素領域のうち、略半数の画素領域に対応するプリントデータを分配する前記プリントバッファを、他の前記2次色の画素領域に対応するプリントデータを分配するプリントバッファと異ならせることを特徴とする。
【0016】
更に、本発明は記録ヘッドを双方向に走査しつつ複数色のインクをプリント媒体に付与してカラー画像を形成するプリント装置において、
プロセスカラーの画素領域に当該プロセスカラーを形成するために付与される複数色のインクの付与順序を変更する変更手段と、
当該変更手段により、ラスター方向に複数配置される前記プロセスカラーの画素領域のうち略半数に対するインクの付与順序を他の前記プロセスカラーの画素領域に対するインクの付与順序と異なるように変更して複数のインクを付与し、カラー画像を形成する形成手段と
を有することを特徴とする。
【0017】
更にまた、本発明は記録ヘッドを双方向に走査しつつ複数色のインクをプリント媒体に付与してカラー画像を形成するプリント方法において、
2次色のある画素領域に当該2次色を形成するために複数色のインクを付与する第1工程と、
前記ある画素領域のラスター方向に配置される他の画素領域に前記2次色を形成するために複数色のインクを、前記ある画素領域への付与順序と異なるように変更して付与する第2工程と、
からなり、前記第1工程と前記第2工程により、ラスター方向に複数配置される前記2次色の画素領域のうち略半数に対するインクの付与順序を他の前記2次色の画素領域に対するインクの付与順序と異なるように変更してインクを付与することを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、ラスター方向に複数配置される2次色を含むプロセスカラーの画素領域は、複数インクの付与順序が変更されたものが支配的となるため、往路または復路のいずれの走査で画素領域を形成しようともラスター方向には付与順序に大きな違いはなく、従ってインクの付与順序に起因する色むらの発生を軽減することができる。
【0020】
ここで、「プリント媒体」とは、一般的なプリント装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板等、インクを受容可能なものを意味する。
【0021】
また、「インク」とは、上記「プリント」の定義と同様広く解釈されるべきもので、プリント媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成またはプリント媒体の加工に供され得る液体を意味する。
【0022】
さらに、「画素領域」とは、1または複数のインクが付与されることにより1次色または2次色を表現する最小の領域を意味し、ピクセルに限らずスーパーピクセルやサブピクセルを含む。また、画素領域を完成するのに要する走査の回数は1回に限定されず、複数回でも良い。
【0023】
さらに、「プロセスカラー」とは、2次色を含み、3色以上のインクをプリント媒体上で混合させて発色させた色を意味する。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態としては、少なくとも異なる色のドットの組み合わせとなったピクセルに対しては往路プリントと復路プリントで少なくとも異なる色の先うち後うちの関係が略等しい出現確率となるものが支配的になるよう制御する手段を具備する。この思想を実現可能とするプリント装置の構成としては、主走査方向に各色の記録素子が配列し、ピクセルを形成可能とした形態が好適である。更にこの形態に於いて、双方向プリント対応の対称形のヘッドを用いた1パスプリントを実行する場合、双方向プリント対応の対称形のヘッドあるいは公知の主走査方向に各色の記録素子が配列したヘッドでの双方向のマルチパスプリントを実行する場合が有効であるが、本発明の思想を実現するものであれば、これに限るものではない。
【0025】
上記形態は、カラー画像の中間調領域、特に低濃度部で効果的であるが、さらに、一つのピクセルに対し、少なくとも使用しているインクの内の1色は同色インクの複数ドットによる構成とし、少なくとも2次色以上を構成する際に各色の打ち込み順が対称な順序であるものが支配的となるような手段を有することは、高濃度部で効果的である。
【0026】
ここで言う、双方向プリント対応の対称形の記録ヘッドとは、例えば、図3に示すように各色の記録ノズルを少なくとも主走査方向に関して見た場合、対称な順序に配列した構成となる記録ヘッドを使用する場合に於いて、各ピクセルに対して各色の打ち込み順序が対称な順序になるように各色のノズルからプリント媒体上に着弾させる構成とした物を言う。
【0027】
このような構成の記録ヘッドを用いてプリントを行う際に、各ピクセルに対して2次色を含むプロセスカラーを構成する場合、少なくとも1次色の内の1つのノズルからは複数インクを付与し、かつ主走査方向に関して見た場合に往走査、復走査で対称な順序に配置した構成とすることにより、従来例で発生していた横罫線等の形状データそのものとの同調や、高濃度部に於いて発生していた打ち込み順の違いによる発色の差を解消し、更に中間調部から低濃度部にかけて主にディザ等のハーフトーニングとの同調により発生していた双方向プリントに起因する色むらを少なくとも異なる色のドットの組み合わせとなったピクセルに対しては往路プリントと復路プリントで異なる色の先うち後うちの関係が略等しい出現確率となるよう制御する手段を具備することにより改善することを可能とした物である。
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、各図において、同一符号で示す要素はそれぞれ同一または対応する要素を示す。
【0029】
図1は、本発明を適用したインク・ジェット・プリント装置の実施形態における主要部の構成を示す図である。
【0030】
図1において、ヘッド・カートリッジ1がキャリッジ2に交換可能に搭載されている。ヘッド・カートリッジ1は、プリント・ヘッド部およびインク・タンク部を有し、また、ヘッド部を駆動するための信号などを授受するためのコネクタが設けられている(不図示)。
【0031】
ヘッド・カートリッジ1はキャリッジ2に位置決めして交換可能に搭載されており、キャリッジ2には、上記コネクターを介して各ヘッド・カートリッジ1に駆動信号等を伝達するためのコネクタ・ホルダ(電気接続部)が設けられている。
【0032】
キャリッジ2は、主走査方向に延在して装置本体に設置されたガイド・シャフト3に沿って往復移動可能に案内支持されている。そして、キャリッジ2は主走査モータ4によりモータ・プーリ5、従動プーリ6およびタイミング・ベルト7等の駆動機構を介して駆動されるとともにその位置及び移動が制御される。また、ホームポジションセンサ30がキャリッジに設けられている。これにより遮蔽板36の位置をキャリッジ2上のホームポジションセンサ30が通過した際に位置を知ることが可能となる。
【0033】
プリント用紙やプラスチック薄板等のプリント媒体8は給紙モータ35からギアを介してピックアップローラ31を回転させることによりオートシートフィーダ(以降ASF)32から一枚ずつ分離給紙される。更に搬送ローラ9の回転により、ヘッド・カートリッジ1の吐出口面と対向する位置(プリント部)を通って搬送(副走査)される。搬送ローラ9はLFモータ34の回転によりギアを介して行われる。その際、給紙されたかどうかの判定と給紙時の頭出し位置の確定は、ペーパエンドセンサ33をプリント媒体8が通過した時点で行われる。更に、プリント媒体8の後端が実際にどこに有り、実際の後端から現在の記録位置を最終的に割り出す為にもペーパエンドセンサ33は使用されている。
【0034】
なお、プリント媒体8は、プリント部において平坦なプリント面を形成するように、その裏面をプラテン(不図示)により支持されている。この場合、キャリッジ2に搭載された各ヘッド・カートリッジ1は、それらの吐出口面がキャリッジ2から下方へ突出して前記2組の搬送ローラ対の間でプリント媒体8と平行になるように保持されている。
【0035】
ヘッド・カートリッジ1は例えば、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインク・ジェット・ヘッド・カートリッジであって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものである。すなわちヘッド・カートリッジ1のプリント・ヘッドは、上記電気熱変換体によって印加される熱エネルギーによる膜沸騰により生じる気泡の圧力を利用して、吐出口よりインクを吐出してプリントを行うものである。もちろん、圧電素子によってインクを吐出する等、その他の方式であっても良い。
【0036】
図2は、上記インク・ジェット・プリント装置における制御回路の概略構成例のブロック図を示す。
【0037】
同図において、コントローラ200は主制御部であり、例えばマイクロ・コンピュータ形態のCPU201、プログラムや所要のテーブルその他の固定データを格納したROM203、画像データを展開する領域や作業用の領域等を設けたRAM205を有する。ホスト装置210は、画像データの供給源(プリントに係る画像等のデータの作成、処理等を行うコンピュータとする他、画像読み取り用のリーダ部等の形態であってもよい)である。画像データ、その他のコマンド、ステータス信号等は、インタフェース(I/F)212を介してコントローラ200と送受信される。
【0038】
操作部120は操作者による指示入力を受容するスイッチ群であり、電源スイッチ222、吸引回復の起動を指示するための回復スイッチ226等を有する。
【0039】
センサ群230は装置の状態を検出するためのセンサ群であり、上述のホームポジションセンサ30、プリント媒体の有無を検出するためのペーパエンドセンサ33、および環境温度を検出するために適宜の部位に設けられた温度センサ234等を有する。
【0040】
ヘッド・ドライバ240は、プリント・データ等に応じてプリント・ヘッド1の吐出ヒータ25を駆動するドライバである。ヘッド・ドライバ240は、プリントデータを吐出ヒータ25の位置に対応させて整列させるシフト・レジスタ、適宜のタイミングでラッチするラッチ回路、駆動タイミング信号に同期して吐出ヒータを作動させる論理回路素子の他、ドット形成位置合わせのために駆動タイミング(吐出タイミング)を適切に設定するタイミング設定部等を有する。
【0041】
プリント・ヘッド1には、サブヒータ242が設けられている。サブヒータ242はインクの吐出特性を安定させるための温度調整を行うものであり、吐出ヒータ25と同時にプリント・ヘッド基板上に形成された形態および/またはプリント・ヘッド本体ないしはヘッド・カートリッジに取り付けられる形態とすることができる。
【0042】
モータ・ドライバ250は主走査モータ4を駆動するドライバであり、副走査モータ34はプリント媒体8を搬送(副走査)するために用いられるモータであり、モータ・ドライバ270はそのドライバである。
【0043】
給紙モータ34はプリント媒体8をASFから分離、給紙するために用いられるモータであり、モータ・ドライバ260はそのドライバである。
【0044】
(実施例1)
図3は、ヘッド・カートリッジ1の記録ヘッド部の主要部構造を部分的に示す模式図である。同図において、100はシアンを吐出する第一の記録ヘッド(以降C1)である。101はマゼンタを吐出する第一の記録ヘッド(M1)である。102はイエローを吐出する第一の記録ヘッド(Y1)である。103はイエローを吐出する第二の記録ヘッド(Y2)である。104はマゼンタを吐出する第二の記録ヘッド(M2)である。105はシアンを吐出する第二の記録ヘッド(M2)である。更に、この他にBkの記録ヘッドを加えても良い。
【0045】
これら上記の記録ヘッド群を一つとしてヘッドカートリッジ1を構成している。ヘッドカートリッジ1に於いて、これら上記の個々の記録ヘッドは複数の吐出ノズルを有している。一例として記録ヘッド100C1に於いて110はシアンの吐出ノズルである。記録ヘッド101M1に於いて112はマゼンタの吐出ノズルである。記録ヘッド104M2に於いて113はマゼンタの吐出ノズルである。記録ヘッド105C2に於いて111はシアンの吐出ノズルである。
【0046】
個々の記録ヘッドのノズル群は主走査方向に対してほぼ垂直な方向に配列されている。厳密には吐出タイミングのとの関係で主走査方向に多少斜めに配列されている場合も有る。更に、これらの記録ヘッド群は主走査方向と同一の方向に配列されている。具体的には図2の場合は記録ヘッド100C1、101M1、102Y1、103Y2、104M2、105C2の各々が主走査方向と同一の方向に配列されている。
【0047】
同図の121のドット位置と120のドット位置は夫々、記録ヘッド100C1の吐出ノズル110から吐出されるドットと、記録ヘッド105C2の吐出ノズル111から吐出されるドットが、ピクセル(画素)130の領域に対して配置される位置を示している。ここでは、ドット位置120が図の右上の対角位置を、ドット位置121が左上の対角位置を示している。また、R1〜R4は各ピクセルを形成する主走査のライン、すなわち、ラスターを示している。ここでは、1ラスター、つまり1走査で1ピクセルが形成される。
【0048】
図3に示す例は、シアンの一次色をピクセルとして最大濃度でプリントした場合を示している。ピクセル130に対してドット位置120とドット位置121の2つを一つのペアとしてプリントしている状態を示している。この場合、同図の矢印で示す方向にヘッドカートリッジ1が移動する場合を往路とすると、往路の場合ピクセル130内に打ち込まれるドットの順番は記録ヘッド105C2→100C1、復路の場合C1→C2となる。但し、一次色の場合はどちらも同じ色のインクの打ち込みとなる為に、打ち込み順序による発色の差はこの場合現れない。
【0049】
図4は、図3と同一構成のヘッドカートリッジ1を用いてピクセル130のドット位置121に2つのドットをピクセルとして最大濃度で配置した場合を示す。この場合は図3のピクセル130の構成と異なり、ほぼドットが重なったドットonドットの構成となっている為に、先行して記録されたドットの発色が最も強くなるドット配置となっている。この場合も一次色であって同一色のドットが配置されている為に、往路と復路での発色の差は現れない。
【0050】
図5は、図3と同一構成のヘッドカートリッジ1を用いてピクセル130のドット位置120,121に夫々シアンとマゼンタのドットをピクセルとして最大濃度で配置した場合を示す。この場合は図3のピクセル130の構成と異なり、それぞれのピクセル構成に対し各色のインクがドットonドットの構成となっている。例えば二次色としてブルーを表現する場合にはシアンとマゼンタを用いるが、ドット位置121で見れば、往路では記録ヘッド101M1のマゼンタの吐出ノズル112からのドット、次に記録ヘッド100C1のシアンの吐出ノズル110からのドットの順にプリント媒体上に着弾する。前述の原理からすると、通常は先行して着弾したマゼンタの発色が優勢な赤紫傾向のドットにドット位置121はなる。
【0051】
同様に、ドット位置120で見れば、往路では記録ヘッド105C2のシアンの吐出ノズル111からのドット、次に記録ヘッド104M2のマゼンタの吐出ノズル113からのドットの順にプリント媒体上に着弾する。前述の原理からすると、通常は先行して着弾したシアンの発色が優勢な青紫傾向のドットにドット位置120はなる。
【0052】
今度は逆に復路でのプリントの状態を考えてみると、記録ヘッド100C1のシアンの吐出ノズル110からのドット、次に記録ヘッド101M1のマゼンタの吐出ノズル112からのドットの順にプリント媒体上に着弾する。通常は先行して着弾したシアンの発色が優勢な赤紫傾向のドットにドット位置121は発色する。同様に、120のドット位置で見れば、復路では記録ヘッド104M2のマゼンタの吐出ノズル113からのドット、次に記録ヘッド105C2のシアンの吐出ノズル111からのドットの順にプリント媒体上に着弾する。通常は先行して着弾したマゼンタの発色が優勢な赤紫傾向のドットにドット位置120はなる。
【0053】
以上のように、常に赤紫傾向のブルーのドットと青紫傾向のブルーのドットがペアで使用されていることになる。微視的にはカラム毎に発色に差のあるドットが交互に並んでいることになる。これをマクロ的にピクセル130で見ると、打ち込み(付与)順としては往路はC2からのシアンドット、M2からのマゼンタドット、M1からのマゼンタドット、C1からのシアンドットとなり、復路ではC1からのシアンドット、M1からのマゼンタドット、M2からのマゼンタドット、C2からのシアンドットとなり、打ち込み順が対称なピクセル構成となる。従って、ピクセル単位ではその中間的なブルーの発色を均一に発現させることが可能となる。
【0054】
上記の様に、本発明の実現の為には、ピクセルとしての最大濃度を発色させる場合はピクセルを構成している2次色を形成する各色が順序として対称的にピクセル内に打ち込まれて形成されていることが支配的な状態となっていることが重要となる。なお、本例では2次色としてブルー(シアンとマゼンタ)を例に挙げたが、レッド(マゼンタとイエロー)やグリーン(シアンとイエロー)の場合も同様であることは、容易に理解できよう。さらには、2次色以上のプロセスカラーにおいても、プロセスカラーを形成する各色が順序として対称的にピクセル内に打ち込まれていれば同様の効果を奏することも、容易に理解できよう。
【0055】
図6は、図3と同一構成のヘッドカートリッジ1を用いてピクセル130上のドット位置121に夫々シアンとマゼンタの2つのドットを配置した場合を示す。この場合、ピクセル構成に対し各色のインクが全てほぼドットonドットの構成となっている。
【0056】
ドット位置121で見れば、往路では記録ヘッド105C2のシアンの吐出ノズル111からのドット、次に記録ヘッド104M2のマゼンタの吐出ノズル113からのドット、次に記録ヘッド101M1のマゼンタの吐出ノズル112からのドット、記録ヘッド100C1のシアンの吐出ノズル110からのドットの順にプリント媒体上に着弾する。復路ではC1からのシアンドット、M1からのマゼンタドット、M2からのマゼンタドット、C2からのシアンドットとなり、各色の打ち込み順が対称なピクセル構成となる。その為、一層ピクセル単位ではブルーの発色を均一に発現させることが可能となる。
【0057】
この場合も、重要なことはピクセルとしての最大濃度を発色させる場合には必ずピクセルを構成している2次色を形成する各色が順序として対照的にピクセル内に打ち込まれて形成されていることが支配的な状態となっている点である。
【0058】
図7は本実施形態のプリント装置のデータバッファ構造を示す図である。
【0059】
同図において、プリンタドライバ211は図2のホスト装置210において画像データの作成や、作成したデータをプリント装置に転送するプログラムに対応する。コントローラ200はプリンタドライバ211から供給された画像データを必要に応じて展開し、CMY各色2bitのデータとして振りまき回路207に供給する。振りまき回路207は後述の図9に示す対応表に従って、夫々のプリントバッファ205にCMY各色のデータを書き込む。
【0060】
その際に、例えばシアンに2bitのデータが書き込まれるとする。この時、本実施の形態の方式では最大濃度の場合は記録ヘッド100C1用と105C2用のバッファ205C1、205C2に夫々、1bitづつ書き込むように構成されている。それぞれの記録ヘッドが実際に記録を行うピクセル内の所定の位置に達したときに、それぞれのバッファ上のデータを各記録ヘッド内のレジスタに読み込み、プリント動作を行う。このようなデータとバッファ構成により、2ドットペアで異なる記録ヘッドからサブピクセル上にプリントを行うことが可能となる。ここではCMYとしたがもちろんCMYKであっても、濃淡や他の色であっても同様である。
【0061】
なお、各プリントバッファ205C1,C2,M1,M2,Y1,Y2はRAM205内に設けられている。
【0062】
今までは主にピクセル毎の最大濃度を再現する場合について述べたが、次にピクセル内で中間調を再現する場合での往復プリントの再現について説明する。ここでは具体的には多値データを受け取って行う場合の一例を示す。
【0063】
本実施例では特に説明しない場合は各ピクセルに対して各色2ビットで各色3値のデータ(ドット数が0,1,2に対応)を受け取って再現する場合について述べる。勿論、ビット数については2ビットに限るものでは無く、4ビット等の多ビットでも良い。更に、2ビットのデータ形式であってもその内の特定の2値だけを用いても良い。特にビット数に関しては記録解像度とドット径の関係、あるいはピクセル毎の階調性、最大濃度をどの程度にするかという設計思想から決定されるものであり、本発明の趣旨に於いてどれも実施可能である。
【0064】
ピクセル内で中間調を再現する場合には、上述の2ドットペアーは最大濃度を表現するため、2ドットペアーでピクセルにドットを配置することが出来ない。本発明の実施例において2ドットペアーでドットを配置しない中間調の場合は、各色が1ドットとなる場合があり、往路と復路で2次色を再現したときに従来例で説明した原理により、発色が浸透差で異なってしまう問題が発生する。
【0065】
本実施例では、ピクセルに対して各色の打ちこみ順が異なるピクセルの発生確率を往路、復路とも略同一になるように制御することにより、マクロ的に見た場合の発色を往路、復路とも同一にしようとするものである。往路、復路ともに打ちこみ順を記録走査内で切り替えるために、各色のノズルが主走査方向に対して打ちこみ順が対称的な並びとなった記録ヘッドを用いることに本実施例としての特徴がある。即ち、主走査方向に対して2つ配置された同色の記録ノズルに対してどちらの記録ノズルでドットを配置するかで、打ちこみ順を同一主記録走査内で変更することが出来る点に特徴がある。
【0066】
図8は、往復プリントを行った際の記録データと記録ノズル列の位置との同調により、使用される記録ノズルが同調してしまう従来例を示している。図から理解されるように、ブルー(シアンとマゼンタ)を形成する際、打ちこみ順が同じドットが往路方向と復路方向でそれぞれ発生し、これらの打ち込み順が異なるため、走査方向単位でバンド状の色むらが発生している。
【0067】
図10、図11は本実施例での往復プリントの様子を示すものである。本実施例では先に示した振りまき回路207が図9に示すように各色のデータに対して配置するドットを配分する。図9では主走査方向にずれた位置にドットが配置されているがこれに限らず、ドットオンドットでもそれ以外のずれた位置でも良い。
【0068】
図9(a)はシアン(C)に対する入力データとドットの配置の関係を示している。シアンのデータ00に対してはドットを配置しない。データ01に対しては、図7のプリントバッファー205C1にデータを格納したり、プリントバッファー205C2に振りまき回路207により出現確率がほぼ均等になるように格納する。すると、データ01に対するドット配置は同図(a)の01に示すように2種類のどちらかになる。
【0069】
最大のデータ10に対してはドットを2個配置するので、図7のプリントバッファー205C1、205C2にそれぞれデータが配置され、ドット配置は同図(a)の10に示すようになる。
【0070】
同図(b)はマゼンタ(M)に対する入力データとドットは位置の関係を示しているが、シアンの場合と同様であるため説明は省略する。
【0071】
同図(c)は2次色のブルー(Blue)に対する入力データとドット位置の関係を示してる。上述の1次色(シアンとマゼンタ)の場合は打ちこみ順という概念が無いので発色の差というのは生じないが、2次色の場合は上述のとおり発色の差が現れるので重要である。
【0072】
同図(c)ではBlueへの入力データとして示しているが、実際はシアンとマゼンタにそれぞれ00、01、10の均等な信号値が入ってきた場合を示している。
【0073】
入力データ00の場合はドットを配置しない。データ01の場合は同図(c)に示すように4通りの場合が存在する。データ01の場合、振りまき回路207がC、M夫々に振りまいたドット位置に対してその組み合わせとなるため、往路復路で夫々4通り組み合わせが存在するためである。一番簡単なシステムとしては、このまま、夫々4通りの組み合わせで01のデータを再現してもよい。
【0074】
この振りまき(分配)は、複数(ここでは、2つ)のバッファにデータを交互(シーケンシャル)に振りまいても良いし、ランダムに振りまいても良い。要は、ラスター方向の複数のピクセルのインクの付与順序が一方的にならないようにすれば充分である。望ましくは、その出現率がほぼ半数になることが、上述の理由から理想的である。
【0075】
画像中のドット間距離を短くし、空間周波数を上げてざらつき感を低減させたり、ドットが完全に重なって目立ちやすくするのを防止したり、スジムラを低減させたりする効果を期待する場合は、ドットが重ならないように振りまき回路207でCMYの夫々の出現をピクセル毎にチェックして振りまくように変更しても良い。
【0076】
データ10の場合は往路と復路で夫々の組み合わせが出来るが、前述の通りにピクセル単位でみれば打ち込み順が同一である為に同一の発色を得ることが可能である。
【0077】
なお、図9ではシアンとマゼンタ及びその2次色であるブルーのドット配置について説明したが、イエローと他の2次色であるグリーン、レッドについても同様である。
【0078】
図10は本実施例で再現した方法により、指定されたピクセルに各色均等にシアンとマゼンタのデータ01が入っている場合において、双方向プリントを行っている状態を示している。この状態では往路でも復路でもデータの存在するカラム毎に打ち込み順が反転(C2→M2とM1→C1)している為に、マクロ的にみればほぼ均一の色再現が可能となっている。
【0079】
図11は本実施例で再現した方法により、指定されたピクセルに各色均等にシアンとマゼンタのデータ10が入っている場合において、双方向プリントを行っている状態を示している。この状態では往路でも復路でも打ち込み順が同一(対称)の為に、ほぼ均一の色再現が可能となっている。
【0080】
(実施例2)
図12はヘッド・カートリッジ1の記録ヘッド部の他の実施例として用いられる主要部構造を部分的に示す模式図である。同図において、構成要素は図3の記録ヘッド部の構成要素と同様である。ただし、本実施例で用いられる記録ヘッド部の構成は、図3とは各色のピクセルを構成するペアーとなる同色の記録ヘッドの対が副走査方向へ1/2だけ記録ヘッドのノズルのピッチに対してずれている点で相違する構成となっている。
【0081】
上記の構成において、同図はシアンの一次色をプリントした場合を示している。ピクセル130に対してピクセルとしての最大濃度を発色させるためにドット位置121とドット位置122の2ドットを一つのペアとしてプリントしている状態を示している。同図の121のドット位置と122のドット位置は夫々、記録ヘッド100C1の吐出ノズル110から吐出されるドットと、記録ヘッド105C2の吐出ノズル111から吐出されるドットが、ピクセル(画素)130の領域に対して配置される位置を示している。ここでは、ドット位置121が図の左上の対角位置を、ドット位置122が右下の対角位置を示している。また、R11、R12はピクセル130を形成する主走査のライン、すなわち、ラスターを示している。ここでは、2ラスターで1ピクセルが形成される。
【0082】
この場合、図12の矢印で示す方向にヘッドカートリッジ1が移動する場合を往路とすると、往路の場合ピクセル130内に打ち込まれるドットの順番は記録ヘッド105C2→100C1、復路の場合C1→C2となる。但し、一次色の場合はどちらも同じ色のインクの打ち込みとなる為、打ち込み順序による発色の差は現れない。同図ではドット位置121とドット位置122のドット同士は重なっては示していないが、実際には図13で示すようにドットは一部オーバーラップしているのが通常である。
【0083】
図14は、図12と同一構成のヘッドカートリッジ1を用いてピクセル130上のドット位置121,123にドットを配置した場合を示す。この場合も一次色である同一色のドットが配置されている為に、往路と復路での発色の差は現れない。
【0084】
図15は、図12と同一構成のヘッドカートリッジ1を用いてピクセル130上のドット位置121,122に夫々シアンとマゼンタのドットを配置した場合を示す。この場合は図12のピクセル130の構成と異なり、それぞれのピクセル構成に対し各色のインクがドットonドットの構成となっている。実施例1の図6と同様に、ピクセル130で見れば常に均一な発色特性を示すことが可能となる。
【0085】
微視的にはラスター毎に発色に差のあるピクセルが交互に並んでいることになるが、これをマクロ的にピクセル130で見ると、打ち込み順としては往路はC2からのシアンドット、M2からのマゼンダドット、M1からのマゼンダドット、C1からのシアンドットとなり、復路ではC1からのシアンドット、M1からのマゼンダドット、M2からのマゼンダドット、C2からのシアンドットとなり、打ち込み順が対称なピクセル構成となる。その為、ピクセル単位ではその中間的なブルーの発色を均一に発現させることが可能となる。
【0086】
上記の様に本発明の思想の実現の為にはこの場合、重要なこととして、必ずピクセルとしての最大濃度を発色させる場合はピクセルを構成している各色が順序として対照的にピクセル内に打ち込まれて形成されていることが支配的な状態となって行われていることが本発明の必須条件となる。上記により実施例1の時と同様に130のピクセルで見れば常に均一な発色特性を示すことが可能となる。
【0087】
上記の様に、本発明の実現の為には、ピクセルとしての最大濃度を発色させる場合は、ピクセルを構成している2次色を形成する各色が順序として対称的にピクセル内に打ち込まれて形成されていることが支配的な状態となっていることが重要となる。なお、本例では2次色としてブルー(シアンとマゼンタ)を例に挙げたが、レッド(マゼンタとイエロー)やグリーン(シアンとイエロー)の場合も同様であることは、容易に理解できよう。
【0088】
図16は、図12と同一構成のヘッドカートリッジ1を用いてピクセル130のドット位置121とドット位置123に各色のインクがドットonドットで配置された構成を示す。この状態に於いても、図15と同様にピクセル130で見れば常に均一な発色特性を示すことが可能となる。
【0089】
今までは主にピクセル毎の最大濃度を再現する場合について述べたが、次にピクセル内で中間調を再現する場合での往復プリントの再現について説明する。ここでは具体的には多値データを受け取って行う場合の一例を示す。多値データや打ち込み順の変更については先の実施例と同様であるので、説明を省略する。
【0090】
図17は、往復プリントを行った際の記録データと記録ノズル列の位置との同調により、使用される記録ノズルが同調してしまう従来例を示している。ラスターR1とR5にはブルー(シアンとマゼンタ)のドットデータがある配置のハーフトーン、乃至、横罫線、ハッチングをプリントした場合のあるカラムに配置されたドットの色味を示す。
【0091】
往路では、マゼンタ(M)インクが先打ちされ、シアン(C)インクが後打されるのに対し、復路ではその逆となる。このように、往路と復路ではイエロー、マゼンタ、シアンの各ヘッドを対称に配置した記録ヘッドのみでは、プリントデータによっては色味の差がまだ生じてしまうことが示されている。
【0092】
即ち、図から理解されるように、ブルー(シアンとマゼンタ)を形成する際、打ちこみ順が同じドットが往路方向と復路方向でそれぞれ発生し、これらの打ち込み順が異なるため、走査方向単位でバンド状の色むらが発生している。
【0093】
図19、図20は本実施例での往復プリントの様子を示すものである。本実施例では先に示した振りまき回路207が図18に示すように各色のデータに対して配置するドットを配分する。図18のドット配分も図9と同様であるので説明を省略する。なお、図18のマゼンタ(M)について、記録ヘッドM1,M2の配列が図9と1/2ドットピッチずれているため、図9とはヘッドとドット位置が逆転している。
【0094】
なお、図18ではシアンとマゼンタ及びその2次色であるブルーのドット配置について説明したが、イエローと他の2次色であるグリーン、レッドについても同様である。
【0095】
図19は本実施例で再現した方法により、指定されたピクセルに各色均等にシアンとマゼンタのデータ01が入っている場合において、双方向プリントを行っている状態を示している。この状態では往路でも復路でもデータの存在するカラム毎に打ち込み順が反転(C2→M1とM2→C1)している為に、マクロ的にみればほぼ均一の色再現が可能となっている。
【0096】
図20は本実施例で再現した方法により、指定されたピクセルに各色均等にシアンとマゼンタのデータ10が入っている場合において、双方向プリントを行っている状態を示している。この状態では往路でも復路でも打ち込み順が同一(対称)の為に、ほぼ均一の色再現が可能となっている。
【0097】
(実施例3)
上述の各実施例では、1パス双方向プリント時の双方向ムラを双方向プリント対応の対称形のヘッドを用いて改善する場合について述べてきた。本発明は上記のみならず、公知の各色の記録素子がCMYKのように色順に主走査方向に配列したヘッドで双方向プリントを行った場合についても有効であることについて、以下に説明する。
【0098】
本実施例は、従来からある主走査方向にCMYKという単純な並びをした記録ヘッドで、少なくとも2パスの双方向プリントを行ったときに双方向ムラを発生させないことに主眼をおいたことに特徴がある。本実施例は、先の実施例と同様に、低濃度部では打ち込み順の異なるピクセルの出現確率がラスター方向において略等しくなるように制御することを基本的な思想としている。さらには、好適な制御として、高濃度部でのピクセルに打ち込むドットの順番を、少なくとも1色は対称的な打ち込み順としている。以上により、記録データとの同調により発生する双方向色ムラを軽減している。
【0099】
この組み合わせに限らず、低濃度部のみ上述の制御を適用しても良い。どのような方法を用いるかは設計仕様上の問題であり、記録されるドットのサイズや最大濃度により最適な組み合わせが決定される。
【0100】
一例としてC,M,Yの各記録素子が横並びの記録ヘッドで双方向のマルチパスプリントをした場合について説明する。図21に従来例、図223,24に本実施例を示す。いずれの場合も、往路方向に記録ヘッドを走査した後、記録素子数の半分(ここでは、2)±1/2記録素子分のピッチ、1.5記録素子ピッチと2.5記録素子ピッチで記録ヘッドを副走査方向に相対的に移動させ、その後復路方に記録ヘッドを走査してマルチパスプリントを行っている。
【0101】
図21の従来例は、2次色のブルーをプリントしようとすると各ピクセルに、ドットオンドットになる状態でシアンとマゼンタのドットを1ドットづつ配置するようなデータが発生している場合を示している。これ以外にも多数の組み合わせが存在するが、分かりやすい組み合わせとした。
【0102】
同図に示すとおり、従来では往路のプリントではラスターR1、R3にブルーのドットデータがある配置と復路のプリントではラスターR6にブルーのドットデータがある配置であるため、走査方向によってプリントデータとの干渉によりどちらの打ち込み順のデータが多く発生するかが左右されてしまい、色むらが発生してしまう。ディザパターン等でデータを往路でプリントするか復路でプリントするかの振り分けが均等にならない場合、発色が偏る結果となる。
【0103】
図23は本実施例で中間調のプリントを行っている状態を示し、図24はフルベタをプリントしている状態を示している。図23では、ラスターR11,R12とR21,22それぞれに打ち込み順の異なるドットが、往路走査のプリントと復路走査のプリントでほぼ等しい確率で出現するので、発色が均一化される様子を示している。図24では、1ピクセルはラスターR11,R12またはR21,22で構成されており、往路でプリントするドットと復路でプリントするドットをペアーとしてピクセルを構成させることにより、やはり発色が均一化される様子を示している。
【0104】
この際に用いる入力データに対して何処にドットを配置するかとの関係を示したのが図22である。先に説明した図9,18と見方は同様なので、説明は省略する。
【0105】
なお、図23と図24では往復プリント時のドットがインターレース(1/2ピッチずれた配置)で配置された場合を示しているが、お互いに補完される間引きマスクを用いてドットピッチと同じラスター上にドットを配置するタイプのマルチパスプリントでも原理的には同様である。また、記録素子と同一の解像度の倍数の送りで行っても同様である。
【0106】
(実施例4)
図30は、上述の実施例によって記録媒体上に形成されたカラー画像を示している。このプリント記録物は、Y、M、C各色の単色から2次色へのグラデーションを模式的に示したものである。
【0107】
単色のピクセルは原理的に双方向に起因する色むらは発生しないが、この例では2次色のピクセルもラスター方向に異なるインクの付与順序で形成されているため、マクロ的には双方向に起因する色むらは視覚上感知できない。
【0108】
このように、本発明はプリント記録物としても極めて有用である。
【0109】
なお、本発明に適用可能な対称形の記録ヘッドの構成は図3や図12に示す構成に限定されるものではない。例えば、図25乃至図29に示す各記録ヘッドの様な構成が考えられるが、本発明の作用効果が発現される構成であればこれ以外の構成でもよい。
【0110】
図25は、図12の構成に加えて、ブラック(K)のインクを付与するブラック用の記録ヘッドを設けたものである。ブラックは2次色の形成には一般的には用いないので、対称配置にする必要がなく、また、モノクロ記録における記録速度を向上させるためにノズルの数が他の色のヘッドよりも多く設けられている。
【0111】
図26は、図3の構成において、両端にブラック(K)のインクを付与するブラック用の記録ヘッドを追加するとともに、対称中心となるイエロー(Y)のヘッドを1つとして、構成の簡略化を図ったものである。対称中心の記録ヘッドはいずれの方向でプリントしても、常に後打となるためである。なお、この例ではイエローを対称中心としたが、これに限定されるものではない。
【0112】
図27は、図26の構成においてブラック(K)用の記録ヘッドを1つのしたものであり、これは図25と同様の理由である。
【0113】
図28は、図3の構成において、対称中心となるイエローのヘッドを1つとして、構成の簡略化を図ったものである。
【0114】
図29は、図25の構成において、ブラック用ヘッドの配置を対称中心としたものである。
【0115】
以上説明したように本発明の各実施例においては、第1に、低濃度部では、少なくとも異なる色のドットの組み合わせとなったピクセルに対しては往路プリントと復路プリントで少なくとも異なる色の先うち後うちの関係が略等しい出現確率となるよう制御する手段を具備し、第2に、高濃度部では、一つのピクセルに対し、少なくとも使用しているインクの内の1色は同色インクの複数ドットによる構成とし、プリント媒体上にプリントを行う場合、少なくとも2次色以上を構成する際に各色の打ち込み順が対称な順序であるものが支配的となるような手段を有している。
【0116】
このため、従来発生していたハッチングや罫線等の画像データそのものとの同調や、高濃度部に於いて発生していた打ち込み順の違いによる発色の差を解消し、更に中間調部から低濃度部にかけて主にディザ等のハーフトーニングとの同調により発生していた色むらを改善することが可能となる。
【0117】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、双方向プリントを行う際に生じていたインクの付与順序に起因する色むらの発生を、データに依存することなく軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るインク・ジェット・プリント装置の概略構成を示す図である。
【図2】プリント装置の制御回路の構成を示すブロック図である。
【図3】実施例1の記録ヘッドと吐出ノズルの配置とピクセルの構成の一例を示す図である。
【図4】記録ヘッドと吐出ノズルの配置とピクセルの構成の他の例を示す図である。
【図5】記録ヘッドと吐出ノズルの配置とピクセルの構成の更に他の例を示す図である。
【図6】記録ヘッドと吐出ノズルの配置とピクセルの構成の更に他の例を示す図である。
【図7】本発明におけるプリントデータのバッファー構成を示すブロック図である。
【図8】従来例で発生する記録データと往路走査、復路走査の同調を示す図である。
【図9】実施例1で用いる入力データと配置されるドットの位置の関係を示す図である。
【図10】実施例1での低濃度部をプリントしている状態を示す図である。
【図11】実施例1での高濃度部をプリントしている状態を示す図である。
【図12】実施例2の記録ヘッドと吐出ノズルの配置とピクセルの構成の一例を示す図である。
【図13】ピクセルの構成におけるドットの重なり具合を示す図である。
【図14】記録ヘッドと吐出ノズルの配置とピクセルの構成の他の例を示す図である。
【図15】記録ヘッドと吐出ノズルの配置とピクセルの構成の更に他の例を示す図である。
【図16】記録ヘッドと吐出ノズルの配置とピクセルの構成の更に他の例を示す図である。
【図17】従来例における双方向プリントでのデータの干渉による色むらの発生原理を示す図である。
【図18】実施例2で用いる入力データと配置されるドットの位置の関係を示す図である。
【図19】実施例2での低濃度部をプリントしている状態を示す図である。
【図20】実施例2での高濃度部をプリントしている状態を示す図である。
【図21】従来例での記録データと往路走査、復路走査の同調を示す図である。
【図22】実施例3で用いる入力データと配置されるドットの位置の関係を示す図である。
【図23】実施例3での低濃度部をプリントしている状態を示す図である。
【図24】実施例3での高濃度部をプリントしている状態を示す図である。
【図25】記録ヘッドと吐出ノズルの配置の他の例を示す図である。
【図26】記録ヘッドと吐出ノズルの配置の更に他の例を示す図である。
【図27】記録ヘッドと吐出ノズルの配置の更に他の例を示す図である。
【図28】記録ヘッドと吐出ノズルの配置の更に他の例を示す図である。
【図29】記録ヘッドと吐出ノズルの配置の更に他の例を示す図である。
【図30】プリント媒体に形成されたY、M、C各色の単色から2次色へのグラデーションを模式的に示した図である。
【符号の説明】
1 ヘッド・カートリッジ
2 キャリッジ
200 コントローラ
201 CPU
203 ROM
205 RAM
207 振りまき回路
210 ホスト装置
240 ヘッド・ドライバ
Claims (20)
- 記録ヘッドを双方向に走査しつつ複数色のインクをプリント媒体に付与してカラー画像を形成するプリント装置において、
2次色の画素領域に当該2次色を形成するために付与される複数色のインクの付与順序を変更する変更手段と、
当該変更手段により、ラスター方向に複数配置される前記2次色の画素領域のうち略半数に対するインクの付与順序を他の前記2次色の画素領域に対するインクの付与順序と異なるように変更して複数のインクを付与し、カラー画像を形成する形成手段と
を有することを特徴とするプリント装置。 - 前記記録ヘッドは、複数色のインクを付与する記録素子がある色のインクを付与する記録素子と走査方向に対して対称となるよう複数配され、
前記変更手段は、対称に配された複数の記録素子を選択することにより画素領域へのインクの付与順序を変更することを特徴とする請求項1記載のプリント装置。 - 前記変更手段は対称に配された複数の記録素子に対応する複数のプリントバッファを有し、
前記形成手段は、前記複数のプリントバッファに選択的にプリントデータを格納することで対応する記録素子からインクを付与することにより、各ラスターに複数配置される前記2次色の画素領域のうち略半数に対するインクの付与順序を他の2次色の画素領域に対するインクの付与順序と異なるように変更してカラー画像を形成することを特徴とする請求項2記載のプリント装置。 - 前記形成手段は、カラー画像に応じた画像信号に基づいて、前記複数のプリントバッファにプリントデータを分配することにより、各ラスターに複数配置される前記2次色の画素領域のうち略半数に対するインクの付与順序を他の前記2次色の画素領域に対するインクの付与順序と異なるように変更してカラー画像を形成することを特徴とする請求項3記載のプリント装置。
- 前記形成手段は、カラー画像に応じた画像信号に基づいて、前記複数のプリントバッファにランダムにプリントデータを分配することを特徴とする請求項4記載のプリント装置。
- 前記形成手段は、カラー画像に応じた画像信号に基づいて、前記複数のプリントバッファに交互にプリントデータを分配することを特徴とする請求項4記載のプリント装置。
- 前記記録ヘッドは、複数色のインクを付与する記録素子が走査方向に配され、
前記変更手段は、前記画素領域にインクを付与すべき前記記録ヘッドの走査方向を選択することにより画素領域へのインクの付与順序を変更することを特徴とする請求項1記載のプリント装置。 - 前記記録ヘッドは少なくともシアン、マゼンタ、イエローのインクを付与する記録素子を有し、いずれかの色に対応する記録素子に対して他の色に対応する記録素子が走査方向に対称に配されることを特徴とする請求項2記載のプリント装置。
- 前記記録ヘッドは少なくともシアン、マゼンタ、イエローのインクを付与する記録素子が走査方向に対称的に2組配されることを特徴とする請求項2記載のプリント装置。
- 前記記録ヘッドはブラックのインクを付与する記録素子がさらに配されることを特徴とする請求項8または9記載のプリント装置。
- 2次色の画素領域に当該2次色を形成するために付与される複数色のインクのうちのある色のインクの付与順序を他の色のインクに対して対称とすべく、少なくとも当該ある色のインクを前記画素領域に複数付与する手段を有することを特徴とする請求項1記載のプリント装置。
- 前記他のインクを前記画素領域に複数付与することを特徴とする請求項11記載のプリント装置。
- 前記画素領域に付与された複数色のインクによるドットは、その全ての重心がほぼ一致していることを特徴とする請求項11記載のプリント装置。
- 前記画素領域に付与された複数色のインクによるドットは、その少なくとも一部が重なっていることを特徴とする請求項11記載のプリント装置。
- 前記ある色のインクと前記他の色のインクの付与順序の異なる2次色のドットが前記画素領域に複数配されることを特徴とする請求項12記載のプリント装置。
- 複数色のインクに対応した記録素子を走査方向に対称的に配した記録ヘッドを双方向に走査しつつ複数色のインクをプリント媒体に付与してカラー画像を形成するプリント装置において、
前記対称的に配された複数の記録素子に対応する複数のプリントバッファと、
カラー画像に応じた画像信号に基づいて、ラスター方向に複数配置される2次色の画素領域に対応する前記2次色を構成する複数色のプリントデータを、前記複数のプリントバッファに分配する分配手段と、
を備え、
前記分配手段は、ラスター方向に複数配置される前記2次色の画素領域のうち、略半数の画素領域に対応するプリントデータを分配する前記プリントバッファを、他の前記2次色の画素領域に対応するプリントデータを分配するプリントバッファと異ならせることを特徴とするプリント装置。 - 前記分配手段は、画像信号のレベルが低い2次色の画素領域の場合は複数のプリントバッファの何れかにプリントデータを書き込むように分配し、画像信号のレベルが高い場合は複数のプリントバッファのいずれにもプリントデータを書き込むことを特徴とする請求項16記載のプリント装置。
- 記録ヘッドを双方向に走査しつつ複数色のインクをプリント媒体に付与してカラー画像を形成するプリント装置において、
プロセスカラーの画素領域に当該プロセスカラーを形成するために付与される複数色のインクの付与順序を変更する変更手段と、
当該変更手段により、ラスター方向に複数配置される前記プロセスカラーの画素領域のうち略半数に対するインクの付与順序を他の前記プロセスカラーの画素領域に対するインクの付与順序と異なるように変更して複数のインクを付与し、カラー画像を形成する形成手段と
を有することを特徴とするプリント装置。 - 記録ヘッドを双方向に走査しつつ複数色のインクをプリント媒体に付与してカラー画像を形成するプリント方法において、
2次色のある画素領域に当該2次色を形成するために複数色のインクを付与する第1工程と、
前記ある画素領域のラスター方向に配置される他の画素領域に前記2次色を形成するために複数色のインクを、前記ある画素領域への付与順序と異なるように変更して付与する第2工程と、
からなり、前記第1工程と前記第2工程により、ラスター方向に複数配置される前記2次色の画素領域のうち略半数に対するインクの付与順序を他の前記2次色の画素領域に対するインクの付与順序と異なるように変更してインクを付与することを特徴とするプリント方法。 - 前記記録ヘッドは、複数のインクを付与する2組の記録素子を走査方向に対称的に配され、
前記第1工程と前記第2工程は前記記録ヘッドの1回の走査で実行されることを特徴とする請求項19記載のプリント方法。
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