JP3879155B2 - 直接筒内噴射式火花点火エンジン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、直接筒内噴射式火花点火エンジンにおいて吸気系の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
点火栓の近傍に燃料を集める混合気の成層化をはかるため、シリンダ内にインジェクタ(燃料噴射弁)を臨ませ、シリンダ内に直接に燃料を噴射するようにした直接筒内噴射式火花点火エンジンがある。
【0003】
従来の直接筒内噴射式火花点火エンジンとして、例えば図12、図13に示すようなものがある(特開平6−207542号公報、参照)。
【0004】
これについて説明すると、インジェクタ6は燃焼室天井壁20の中央部からシリンダ5内に臨み、ピストン1の冠部10に窪むキャビティ11に向けて燃料を噴射するようになっている。
【0005】
図示しない吸気ポートがシリンダ5に沿って直立して形成されている。直立した吸気ポートからシリンダ5内に流入した吸気は、シリンダ5に沿って下降した後、ピストン冠部10に沿って旋回する逆タンブルが生起される。
【0006】
ピストン1の冠部10から突出する凸部15が形成され、凸部15の稜線19は図示しないクランクシャフトと同方向に延びている。キャビティ11は凸部15の稜線39を削除するようにして形成される。
【0007】
キャビティ11には点火栓4に向けて傾斜するスロープ12が形成されている。キャビティ11上において逆タンブルと共に旋回する燃料噴霧は、スロープ12に沿って点火栓4に向けて上昇する。これにより、濃混合気が点火栓4の近傍に集められる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の直接筒内噴射式火花点火エンジンにあっては、ピストン1が上死点近傍に達するときにピストン冠部10の外周部と燃焼室天井壁20の間で圧縮される空気に図中矢印で示すように燃焼室3の中央部に向かうスキッシュが生起されるため、このスキッシュによって点火栓4の近傍に集められた濃混合気が点火される前に吹き飛ばされてしまい、混合気の成層化がはかれない。
【0009】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、直接筒内噴射式火花点火エンジンに適した燃焼室構造を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンは、シリンダ内に吸気を導入する吸気ポートと、シリンダ内に燃料を噴射するインジェクタと、シリンダ内の混合気に点火する点火栓と、シリンダ内から排気を排出する排気ポートとを備える直接筒内噴射式火花点火エンジンにおいて、吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気にタンブルを生起するタンブル生起手段と、ピストンの冠部に形成され、タンブルによって燃料を点火栓の近傍に導くように傾斜するスロープと、吸気ポート側においてピストンの冠部と燃焼室天井壁の間で圧縮する空気に燃焼室の中央部に向かうスキッシュを生起するスキッシュ生起手段と、ピストン冠部のスロープより吸気ポート側において、スキッシュに対向する第1の傾斜面と第1の傾斜面の両側に接続される第2の傾斜面とによってピストン冠部から隆起して形成され、点火栓を避けるようにスキッシュを案内する凸部とを備える。
【0011】
請求項2に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンは、請求項1に記載の発明において、前記シリンダの中心線を含みクランクシャフトの回転中心軸と直交する平面をシリンダ中心面Cと定義し、燃焼室をシリンダ中心面Cについて対称的に形成し、凸部の稜線をシリンダ中心面C上に配置する。
【0012】
請求項3に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンは、請求項1に記載の発明において、前記シリンダの中心線を含みクランクシャフトの回転中心軸と直交する平面をシリンダ中心面Cと定義し、燃焼室をシリンダ中心面Cについて対称的に形成し、凸部の頂点をシリンダ中心面C上に配置する。
【0013】
請求項4に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンは、請求項1に記載の発明において、前記シリンダの中心線を含みクランクシャフトの回転中心軸と直交する平面をシリンダ中心面Cと定義し、燃焼室をシリンダ中心面Cについて対称的に形成し、凸部の頂面をシリンダ中心面C上に配置する。
【0014】
請求項5に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンは、請求項1から4のいずれか一つに記載の発明において、前記ピストンの冠部に凹状に窪むキャビティを形成し、キャビティを前記スロープによって画成する。
【0015】
請求項6に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンは、請求項1から5のいずれか一つに記載の発明において、前記燃焼室天井壁を吸気ポートが開口する吸気ポート側傾斜面と排気ポートが開口する排気ポート側傾斜面によって構成し、前記タンブル生起手段として吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気が排気ポート側傾斜面に沿って下降するように吸気ポートをシリンダ中心線に対して傾斜させる。
【0016】
請求項7に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンは、請求項1から6のいずれか一つに記載の発明において、前記インジェクタの燃料噴射方向をスロープに対向させて形成する。
【0017】
請求項8に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンは、請求項1から7のいずれか一つに記載の発明において、前記インジェクタの燃料噴射時期を高負荷時に吸気行程に設定し、インジェクタの燃料噴射時期を低負荷時に圧縮行程に設定する。
【0018】
【発明の作用および効果】
請求項1に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンにおいて、吸気バルブが開かれるのに伴って吸気ポートからシリンダ内に空気が吸入される。吸気ポートを通ってシリンダ内に吸入される吸気には、クランクシャフトの回転中心軸と平行な軸を中心として旋回するタンブルが生起される。
【0019】
例えば希薄空燃比で運転されるリーンバーン領域では、ピストンが上昇する圧縮行程においてインジェクタが開弁し、燃焼室に燃料が噴射される。吸気ポートを通ってシリンダ内に吸入された空気がピストンで圧縮された状態で、点火栓を介して燃料を着火燃焼させる。
【0020】
ピストンが上昇する圧縮行程においてキャビティ上においてタンブルと共に旋回する燃料噴霧は、スロープに沿って点火栓に向けて上昇することにより、濃混合気が点火栓の近傍に集められる。
【0021】
一方、ピストンが上死点近傍に達するときに、ピストン冠部と燃焼室天井壁の間で圧縮する空気に燃焼室の中央部に向かうスキッシュが生起される。このスキッシュが点火栓の近傍に向かうと、タンブルによって点火栓の近傍に集められた濃混合気が点火される前に吹き飛ばされてしまい、混合気の成層化がはかれない。
【0022】
本発明はこれに対処して、ピストン冠部から隆起した凸部によってスキッシュを点火栓を避けるようにして流動させる構成としたため、点火栓の近傍に集められた濃混合気を点火される前に吹き飛ばすことがなく、混合気の成層化がはかれる。
【0023】
こうして燃料を点火栓の近傍に集中させることにより、着火が確実に行われる。この結果、燃焼性が確保される希薄空燃比の限界値を拡大し、燃費の低減がはかれる。また、冷間時において燃料噴射量を増やす必要がなく、エミッションを改善することができる。
【0024】
請求項2に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンにおいて、凸部の稜線をシリンダ中心面C上に配置することにより、スキッシュがシリンダ中心面Cから離れるようにスロープの背後で分流し、点火栓の近傍に集められた濃混合気を点火される前に吹き飛ばすことがなく、濃混合気を燃焼室の中央部へと有効に集められる。この結果、燃焼性が確保される希薄空燃比の限界値を拡大し、燃費の低減がはかれる。
【0025】
請求項3に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンにおいて、凸部の頂点をシリンダ中心面C上に配置することにより、スキッシュがシリンダ中心面Cから離れるようにスロープの背後で分流し、点火栓の近傍に集められた濃混合気を点火される前に吹き飛ばすことがなく、濃混合気を燃焼室の中央部へと有効に集められる。この結果、燃焼性が確保される希薄空燃比の限界値を拡大し、燃費の低減がはかれる。
【0026】
請求項4に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンにおいて、凸部の頂面をシリンダ中心面C上に配置することにより、スキッシュがシリンダ中心面Cから離れるようにスロープの背後で分流し、点火栓の近傍に集められた濃混合気を点火される前に吹き飛ばすことがなく、濃混合気を燃焼室の中央部へと有効に集められる。この結果、燃焼性が確保される希薄空燃比の限界値を拡大し、燃費の低減がはかれる。
【0027】
請求項5に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンにおいて、キャビティ上においてタンブルと共に旋回する燃料噴霧は、スロープに沿って点火栓に向けて上昇することにより、濃混合気が点火栓の近傍に有効に集められる。この結果、燃焼性が確保される希薄空燃比の限界値を拡大し、燃費の低減がはかれる。
【0028】
請求項6に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンにおいて、吸気ポートを通ってシリンダ内に流入する吸気流は、排気ポート側傾斜面およびシリンダ壁に沿って下降した後にピストン冠部上へと進んで旋回する順タンブルを生起する。順タンブルと共に旋回する燃料噴霧は、スロープに沿って点火栓に向けて上昇することにより、濃混合気が点火栓の近傍に有効に集められる。この結果、燃焼性が確保される希薄空燃比の限界値を拡大し、燃費の低減がはかれる。
【0029】
請求項7に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンにおいて、インジェクタの燃料噴射方向をスロープに対向させているため、インジェクタからの燃料噴霧はスロープに沿って点火栓に向けて上昇するタンブルと合流し、濃混合気が点火栓の近傍に集められる。この結果、燃焼性が確保される希薄空燃比の限界値を拡大し、燃費の低減がはかれる。
【0030】
請求項8に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジンにおいて、低負荷時ではピストンが上昇する圧縮行程にインジェクタ6からに燃料が噴射される。燃料噴霧はタンブルと合流し、スロープに沿って点火栓の近傍へと向かい、濃混合気が点火栓の近傍に集められる。この結果、燃焼性が確保される希薄空燃比の限界値を拡大し、燃費の低減がはかれる。
【0031】
高負荷時では、ピストンが下降する吸入行程にインジェクタから噴射された燃料噴霧は、シリンダ内に生起されるタンブルとスキッシュのガス流動によって拡散する。これにより、点火時期を迎えるときに、燃焼室に均質な混合気が形成され、着火が確実に行われるとともに、火炎の伝播が促される。この結果、ガス流動強化手段を追加して設けなくても、サイクル変動に影響されない安定した燃焼性が確保され、出力の向上がはかれる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0033】
図1、図3に示すように、シリンダヘッド2に形成された燃焼室天井壁20とピストン1の間に燃焼室3が画成される。
【0034】
ペントルーフ型に傾斜する燃焼室天井壁20には2本に分岐する吸気ポート21と2本に分岐する排気ポート22が互いに対向して開口している。すなわち、燃焼室天井壁20は、各吸気ポート21が開口する吸気ポート側傾斜面23と各排気ポート22が開口する排気ポート側傾斜面24によって構成される。
【0035】
燃焼室天井壁20の中央部から燃焼室3に臨むインジェクタ6と点火栓4が設けられる。インジェクタ6と点火栓4を挟むようにして2つの吸気バルブ7と2つの排気バルブ8が互いに対向して設けられる。
【0036】
図1において、線分Oはシリンダ5の中心線である。インジェクタ6はシリンダ中心線Oと同軸上に配置され、各吸気バルブ7と各排気バルブ4の間に位置して燃焼室3に臨んでいる。
【0037】
点火栓4はインジェクタ6の側方で、かつ各吸気バルブ7の間に位置して燃焼室3に臨んでいる。すなわち、点火栓4は燃焼室天井壁20の各吸気ポート21と各排気ポート22の間でインジェクタ6より各吸気ポート21に近接する位置から燃焼室3に臨む。
【0038】
各吸気ポート21から燃焼室3に流入する吸気を図5、図7に矢印で示すように排気ポート側傾斜面24およびシリンダ5に沿って下降させて順タンブルを生起する順タンブル生起手段が備えられる。この順タンブル生起手段として、各吸気ポート21は、その通路中心線が各排気ポート側傾斜面24およびシリンダ5に対向するように、シリンダ中心線Oに対して大きく傾斜している。
【0039】
ピストン1の冠部10には凹状に窪むキャビティ11が形成される。キャビティ11はピストン冠部10の中央部から排気ポート側傾斜面24の下方に配置される。
【0040】
インジェクタ6はその噴口がキャビティ11の上方に位置し、噴口から噴射される燃料噴霧がキャビティ11に向けて放射状に拡がるようになっている。
【0041】
キャビティ11には点火栓4に向けて傾斜するスロープ12が形成される。インジェクタ6から噴射された燃料噴霧は燃焼室3に生起される順タンブルと共に旋回し、スロープ12に沿って上昇することにより、濃混合気が点火栓4の近傍に集められる。
【0042】
ピストン冠部10に対するキャビティ11の開口縁部13は、図2に示す正面図上において、円形に形成され、インジェクタ6の燃料噴射範囲を囲むように配置される。
【0043】
図1において、シリンダ中心面Cはシリンダ5の中心線Oを含み図示しないクランクシャフトの回転中心軸と直交する平面である。キャビティ11をはじめピストン1と燃焼室壁20と吸気ポート21および排気ポート23は、シリンダ中心面Cについて対称的に形成される。
【0044】
ピストン冠部10の外周部は燃焼室天井壁20に平行に対峙する平面状に形成される。これにより、ピストン1が上死点近傍に達するときにピストン冠部10と燃焼室天井壁20の間で圧縮する空気に燃焼室3の中央部に向かうスキッシュを生起するスキッシュ生起手段が構成される。
【0045】
ところで、燃焼室3に生起されるスキッシュが点火栓4の近傍に向かうと、順タンブルによって点火栓4の近傍に集められた濃混合気が点火される前に吹き飛ばされてしまい、混合気の成層化がはかれない。
【0046】
本発明はこれに対処して、ピストン冠部10から隆起してスキッシュを点火栓4から遠ざけるように案内する凸部15が形成される。
【0047】
図2、図3、図4にも示すように、ピストン冠部10の外周部からシリンダ中心面Cに向けて隆起する凸部15が形成される。凸部15はシリンダ中心面Cについて対称的に形成される。
【0048】
本実施形態において、凸部15はピストン冠部10に対して傾斜する3つの傾斜面16,17,18を有する。傾斜面16と傾斜面17はシリンダ中心面Cを挟んで傾斜している。傾斜面16と傾斜面17が交わる稜線19は、シリンダ中心面C上に位置し、シリンダ中心線Oと直交して延びる。
【0049】
三角形をした傾斜面18はスロープ12の背後でピストン冠部10の外周に向けて下降するように傾斜している。
【0050】
以上のように構成され、次に作用について説明する。
【0051】
各吸気バルブ7が開かれるのに伴って各吸気ポート21からシリンダ5内に空気が吸入される。低負荷時ではピストン1が上昇する圧縮行程の後半にインジェクタ6が開弁し、燃焼室3に燃料が噴射される。例えば圧縮上死点前60°のタイミングでインジェクタ6から図示したように燃料噴霧がキャビティ11に向けて放射状に噴射される。
【0052】
各吸気ポート21を通ってシリンダ5内に吸入された空気がピストン1で圧縮された状態で、点火栓4を介して燃料を着火燃焼させる。燃焼したガスはピストン1を下降させてクランクシャフトを介して回転力を取り出した後、ピストン1が上昇する排気行程中に排気バルブが開かれるのに伴って各排気ポート22から排出される。これらの各行程が連続して繰り返される。
【0053】
各吸気ポート21を通ってシリンダ5内に流入する吸気流は、図5に矢印で示すように、排気ポート側傾斜面24およびシリンダ壁5に沿って下降した後にピストン冠部10上へと進んで旋回する順タンブルを生起する。
【0054】
キャビティ11のスロープ12は点火栓4に向けて傾斜しているため、キャビティ11上において順タンブルと共に旋回する燃料噴霧は、スロープ12に沿って燃焼室3の中央部へと上昇する。これにより、図6にも示すように、濃混合気が点火栓4の近傍に集められる。
【0055】
一方、ピストン1が上死点近傍に達するときに、図5に矢印で示すように、ピストン冠部10と燃焼室天井壁20の間で圧縮する空気に燃焼室3の中央部に向かうスキッシュが生起される。
【0056】
このスキッシュはピストン冠部10から隆起した凸部15によって点火栓4を避けるようにして流動する。凸部15はシリンダ中心面Cについて対称的に形成され、傾斜面16と傾斜面17が交わる稜線19がシリンダ中心面C上に位置しているため、スキッシュがシリンダ中心面Cから離れるようにスロープ12の背後で分流し、点火栓4の近傍に集められた濃混合気を点火される前に吹き飛ばすことがなく、混合気の成層化がはかれる。
【0057】
こうして燃料を点火栓4の近傍に集中させることにより、着火が確実に行われる。この結果、燃焼性が確保される希薄空燃比の限界値を拡大し、燃費の低減がはかれる。また、冷間時において燃料噴射量を増やす必要がなく、エミッションを改善することができる。
【0058】
シリンダ5内に点火栓4を避けるようにしてスキッシュが生起されることにより、スキッシュのガス流動により火炎の伝播が促される。この結果、燃焼性が確保される希薄空燃比の限界値を拡大し、燃費の低減がはかれる。
【0059】
高負荷時では、ピストン1が下降する吸入行程にインジェクタ6が開弁し、燃焼室3に燃料が噴射される。インジェクタ6から噴射された燃料が順タンブルによってピストン1のキャビティ11に沿って旋回する過程でピストン1によって加熱され、その微粒化および気化が進む。
【0060】
こうしてシリンダ5内に生起される順タンブルとスキッシュのガス流動により燃料の拡散が促され、点火時期を迎えるときに、燃焼室3に均質な混合気が形成され、着火が確実に行われるとともに、火炎の伝播が促される。この結果、ガス流動強化手段を追加して設けなくても、サイクル変動に影響されない安定した燃焼性が確保され、出力の向上がはかれる。
【0061】
次に、図8、図9に示す実施形態について説明する。なお、図2、図3との対応部分には同一符号を付す。
【0062】
本実施形態において、凸部15はピストン冠部10に対して傾斜する3つの傾斜面26,27,28を有する。傾斜面26と傾斜面27はシリンダ中心傾斜面Cを挟んで傾斜している。傾斜面26,27,28が交わる頂点29は、シリンダ中心傾斜面C上に配置される。
【0063】
三角形をした傾斜面28はスロープ12の背後でピストン冠部10の外周に向けて下降するように傾斜している。
【0064】
以上のように構成され、次に作用について説明する。
【0065】
スキッシュはピストン冠部10から隆起した凸部15によって点火栓4を避けるようにして流動する。凸部15はシリンダ中心傾斜面Cについて対称的に形成され、傾斜面26,27,28が交わる頂点29がシリンダ中心傾斜面C上に位置しているため、スキッシュがシリンダ中心傾斜面Cから離れるようにスロープ12の背後で分流し、点火栓4の近傍に集められた濃混合気を点火される前に吹き飛ばすことがなく、混合気の成層化がはかれる。
【0066】
こうして燃料を点火栓4の近傍に集中させることにより、着火が確実に行われる。この結果、燃焼性が確保される希薄空燃比の限界値を拡大し、燃費の低減がはかれる。また、冷間時において燃料噴射量を増やす必要がなく、エミッションを改善することができる。
【0067】
次に、図10、図11に示す実施形態について説明する。なお、図2、図3との対応部分には同一符号を付す。
【0068】
本実施形態において、凸部15はピストン冠部10に対して傾斜する3つの傾斜面36,37,38と1つの頂面39を有する。傾斜面36と傾斜面37はシリンダ中心傾斜面Cを挟んで傾斜している。各傾斜面36,37,38に連接する頂面39は、シリンダ中心傾斜面C上に配置され、シリンダ中心線Cについて対称的に形成される。
【0069】
台形をした傾斜面38はスロープ12の背後でピストン冠部10の外周に向けて下降するように傾斜している。
【0070】
以上のように構成され、次に作用について説明する。
【0071】
スキッシュはピストン冠部10から隆起した凸部15によって点火栓4を避けるようにして流動する。凸部15はシリンダ中心傾斜面Cについて対称的に形成され、各傾斜面36,37,38に連接する頂面39がシリンダ中心傾斜面C上に位置しているため、スキッシュがシリンダ中心傾斜面Cから離れるようにスロープ12の背後で分流し、点火栓4の近傍に集められた濃混合気を点火される前に吹き飛ばすことがなく、混合気の成層化がはかれる。
【0072】
こうして燃料を点火栓4の近傍に集中させることにより、着火が確実に行われる。この結果、燃焼性が確保される希薄空燃比の限界値を拡大し、燃費の低減がはかれる。また、冷間時において燃料噴射量を増やす必要がなく、エミッションを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すエンジンの概略斜視図。
【図2】同じくピストンの平面図。
【図3】同じくピストンの正面図。
【図4】同じく図2の矢印A方向から見たピストンの側面図。
【図5】同じく低負荷時においてシリンダに生起されるガス流動と燃料噴霧の形態を示す説明図。
【図6】同じく低負荷時における燃料噴霧の形態を示す説明図。
【図7】同じく高負荷時においてシリンダに生起されるガス流動と燃料噴霧の形態を示す説明図。
【図8】さらに他の実施形態を示すピストンの平面図。
【図9】同じくピストンの正面図。
【図10】さらに他の実施形態を示すピストンの平面図。
【図11】同じくピストンの正面図。
【図12】従来例を示すピストンの平面図。
【図13】同じくエンジンの概略正面図。
【符号の説明】
1 ピストン
2 シリンダヘッド
3 燃焼室
4 点火栓
5 シリンダ壁
6 インジェクタ
10 ピストン冠部
11 キャビティ
12 スロープ
15 凸部
16 傾斜面
17 傾斜面
18 傾斜面
19 稜線
20 燃焼室天井壁
21 吸気ポート
22 排気ポート
26 傾斜面
27 傾斜面
28 傾斜面
29 頂点
36 傾斜面
37 傾斜面
38 傾斜面
39 頂面
Claims (8)
- シリンダ内に吸気を導入する吸気ポートと、
シリンダ内に燃料を噴射するインジェクタと、
シリンダ内の混合気に点火する点火栓と、
シリンダ内から排気を排出する排気ポートと、
を備える直接筒内噴射式火花点火エンジンにおいて、
吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気にタンブルを生起するタンブル生起手段と、
ピストンの冠部に形成され、タンブルによって燃料を点火栓の近傍に導くように傾斜するスロープと、
前記吸気ポート側においてピストンの冠部と燃焼室天井壁の間で圧縮する空気に燃焼室の中央部に向かうスキッシュを生起するスキッシュ生起手段と、
前記ピストン冠部の前記スロープより前記吸気ポート側において、前記スキッシュに対向する第1の傾斜面と前記第1の傾斜面の両側に接続される第2の傾斜面とによって前記ピストン冠部から隆起して形成され、前記点火栓を避けるように前記スキッシュを案内する凸部と、
を備えることを特徴とする直接筒内噴射式火花点火エンジン。 - 前記シリンダの中心線を含みクランクシャフトの回転中心軸と直交する平面をシリンダ中心面Cと定義し、
燃焼室をシリンダ中心面Cについて対称的に形成し、
凸部の稜線をシリンダ中心面C上に配置したことを特徴とする請求項1に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジン。 - 前記シリンダの中心線を含みクランクシャフトの回転中心軸と直交する平面をシリンダ中心面Cと定義し、
燃焼室をシリンダ中心面Cについて対称的に形成し、
凸部の頂点をシリンダ中心面C上に配置したことを特徴とする請求項1に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジン。 - 前記シリンダの中心線を含みクランクシャフトの回転中心軸と直交する平面をシリンダ中心面Cと定義し、
燃焼室をシリンダ中心面Cについて対称的に形成し、
凸部の頂面をシリンダ中心面C上に配置したことを特徴とする請求項1に記載の直接筒内噴射式火花点火エンジン。 - 前記ピストンの冠部に凹状に窪むキャビティを形成し、
キャビティを前記スロープによって画成したことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の直接筒内噴射式火花点火エンジン。 - 前記燃焼室天井壁を吸気ポートが開口する吸気ポート側傾斜面と排気ポートが開口する排気ポート側傾斜面によって構成し、
前記タンブル生起手段として吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気が排気ポート側傾斜面に沿って下降するように吸気ポートをシリンダ中心線に対して傾斜させたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の直接筒内噴射式火花点火エンジン。 - 前記インジェクタの燃料噴射方向をスロープに対向させて形成したことを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の直接筒内噴射式火花点火エンジン。
- 前記インジェクタの燃料噴射時期を高負荷時に吸気行程に設定し、
インジェクタの燃料噴射時期を低負荷時に圧縮行程に設定したことを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の直接筒内噴射式火花点火エンジン。
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