JP3877464B2 - 溶接封口電池 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型携帯用の溶接封口電池に関し、特にレーザ封口型角形イオン電池の封口蓋の形状に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯用の小型密閉型電池においては、例えば特願平7−26710号公報、同8−53032号公報にて本願出願人が開示しているがごとく、発電要素が収納された電池外装缶の開口縁(端)部に封口蓋をレーザー溶接して封口するが、この際、発電要素の最外周部分に正極板又は負極板のいずれかの芯体を配置し、更にこの芯体の露出部に略U字状の切込み(切断線)を入れて、この切込みを電池外装缶の開口側方向へ繰り返して集電タブとなし、この集電タブを電池外装缶開口縁と封口蓋との間にはさみ込み、この状態でこれら三つをレーザ溶接することにより封口し、併せて発電要素の正極あるいは負極と電池外装缶との一層の電気的接触を図っている。
【0003】
以下、本発明の趣旨に直接関係するのでこの電池の一例を、図を参照しつつ少し詳しく説明する。
【0004】
図6に、正極板20の構造を示す。
図6(a)は正極板の側面図であり、同図(b)は正面図である。これらの図に示すように、正極板は長さ335mm、幅38mm、厚さ20μmの細長く薄いアルミ箔製正極芯体21の、原則としてその両面に、LiCoO2 を主成分としその他黒鉛、カーボンブラック、N−メチル−2ピロリドンに溶かしたポリフッ化ビニリデンから成る正極活物質(スラリー)22を塗布し、これを圧延し、真空乾燥により付着させたものである。そして、電池外装缶体内に挿入される、あるいは挿入された状態ではその最外周となる側にほぼUあるいはコの字形の切込み23が設けられている。
【0005】
なお、この切込み23を設けた部分の正極芯体21には、当然正極活物質が付着されておらず、更にその近くの電池外装缶側に位置する面に正極活物質が付着されていないのは、芯体と電池外装缶との一層の電気的接触を図るためである。
【0006】
図7に、負極板の構造30を示す。
図7(a)は負極板の側面図であり、同図(b)は正面図である。これらの図に示すように、負極板は長さ315mm、幅39mm、厚さ18μmの負極芯体31の細長く薄い銅箔の両面に天然黒鉛粉末を主成分とし、その他N−メチル−2ピロリドンに溶かしたポリフッ化ビニリデンからなる負極活物質32を塗布し、乾燥、圧延により付着させ、更に後で説明する巻込中心部の負極芯体の銅箔に直接ニッケルからなるリード33を負極集電体として取り付けたものである。
【0007】
図8に、渦巻電極体40の構造を示す。
本図に示すように、渦巻電極体40は、正極板20と負極板30とを両者より多少幅広のポリエチレン製のセパレータ41を介して巻き回したものである。なおこの場合、前述の理由により正極板の正極活物質を塗布していない片面露出部が渦巻電極体の最外周部に位置するように巻回される。そしてこのもとで、巻終部分には粘着テープ(図示せず)が貼られ、また底部は電池缶体との接触防止のため絶縁テープ(図示せず)で覆われる。
【0008】
なおここで、正極集電タブは、図6に示す切込み部23を切り起こして形成されるが、この際電池の内部巻込中心側に同一極性の電極板が位置する所に設けているのは、切込み部23のバリにより万一セパレータ41の損傷が生じても内部短絡が発生しないようにするためである。
【0009】
図9及び図10に、封口蓋50の構造を示す。
図9は封口蓋を斜め下方からみた斜視図、図10は電池キャップを除いた封口蓋の部分断面図(側面)である。
【0010】
図9及び図10に示すように、封口蓋50は、中央付近に透孔を有した封口板51と、該透孔に絶縁性ガスケット52を介して配置される金属製の中空キャップ53と、中空キャップ53の上端に電気的に接続される電池キャップ(図示せず、負極外部端子を兼ねるもの)と、中空キャップ53に電気的に接続された集電端子板54と、封口板51と集電端子板54との間に介在されて両者を電気的に絶縁する絶縁部55を備えた絶縁部材56とよりなる。
【0011】
そして、絶縁性ガスケット52、絶縁板55及び集電端子板54は、中空キャップ53の上端及び下端をかしめることによって、封口板51に固定されている。また、上記絶縁部材56は、封口板51と渦巻電極体40との間に配置されて、渦巻電極体40が上下方向に揺動しないようにするものである。また、集電端子板54は、その一部が下方向に切り起こされており、この部分に先に説明した負極芯体31に接続されたリード33が電気的に接続される。
【0012】
図11に、この電池の組立て手順を示す。
(a)電池外装缶底との接触防止、巻きほぐれ防止等のため粘着テープを要所にはった渦巻電極体40の上方に、封口蓋50の封口板51を位置させる。本図において、33は負極リードである。
【0013】
(b)封口板50に固定された集電端子板54と負極リード33とを電気的に接続する。
【0014】
(c)他方、渦巻電極体40の最外周の正極芯体露出部21に形成した切込み部23を切り起こして上部に折り曲げて正極集電タブ24となす。
【0015】
そして、この正極集電タブ24は、この状態で上から保護テープ25を貼り付けることにより、渦巻電極体40の最外周の正極芯体露出部21に固定される。
【0016】
(d)負極リード33が電気接続された渦巻電極体40を、アルミニウム製のほぼ角形の電池外装缶60内に挿入する。その際、正極板20から導出した正極集電タブ24を電池外装缶60の内壁に沿って電池開口端にまで延ばし、更にその上端部を封口蓋50の封口板51の外周側面と電池外装缶60の内壁面で挟み込むようにした状態で封口蓋50を電池外装缶60の開口縁に被せる。また、挿入時には、切り欠き部57に沿って正極集電タブ24を屈曲させて、正極集電タブ24のたるみを吸収させる。
【0017】
(e)次いで、電池外装缶60と封口板51との嵌合部にレーザー光を照射して当該部分を溶接し、電池を封口する。そして、併せて正極集電タブ24と電池外装缶60とを電気的に強固に接続する。
【0018】
更に、その後、封口板51の透孔から電池外装缶60の内部に非水電解液を注入し、当該透孔に電池キャップ59を設置する。
以上の工程を経て、図12に示すように、溶接部70により正極集電タブ24と電池外装缶60とが電気的に接続された溶接封口電池が作製される。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の溶接封口電池では、電池を落下させる場合の如く電池に衝撃が加わった場合には、図13に示すように、渦巻電極体40が下向(図中C方向)に移動しようとするため、正極集電タブ24が下向に引っ張られる。このため、図14に示すように、溶接部70の近傍で正極集電タブ24のタブ切れが生じるおそれがあるという課題を有していた。
【0020】
本発明は、上記従来の課題を考慮してなされたものであって、電池を落下させる等の衝撃を加えた場合であっても、タブ切れを防止して、信頼性を向上させることができる溶接封口電池の提供を目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明においては、正極板と負極板とをセパレータを介して巻いて構成した渦巻電極体と、該渦巻電極体を収納する電池外装缶と、上記渦巻電極体の最外周部分に位置する正極板又は負極板の芯体露出部に切込みを入れ該切込みを切りおこして上記電池外装缶の開口側方向へ折り返すことにより形成される集電タブと、上記電池外装缶の開口部を封口する封口板及びこの封口板の電池内部側に固定された絶縁部材から成る封口蓋とを有し、且つ、上記集電タブを上記電池外装缶の開口縁と上記封口板との間にはさみ込んだ状態で、集電タブと電池外装缶と封口板とが溶接される構造の溶接封口電池において、上記絶縁部材の側面に上記集電タブが固定されていることを特徴とする。
【0022】
上記構成であれば、集電タブは溶接部で電池外装缶等と固定されるのみならず絶縁部材にも固定される(即ち、集電タブが2箇所で固定される)ことになるので、電池を落下させる等の衝撃を加えた場合であっても、電池内部でタブ切れが生じるのを防止することができる。
【0023】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記集電タブは、溶接部方向に向けて先細り状になるように構成されることを特徴とする。
上記の如く、集電タブが溶接部と絶縁部材とに固定される場合には、渦巻電極体に近い絶縁部材との固定部においてタブ切れが生じ易くなる。しかしながら、上記の如く、集電タブを溶接部方向に向けて先細り状になるように構成すれば、溶接部における集電タブの幅に比べて、絶縁部材との固定部における集電タブの幅が広くなるので、衝撃が加わった場合に集電タブがより切れ難くなるという効果がある。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図4に基づいて、以下に説明する。
【0025】
図1は本発明に係わる溶接封口電池の部分断面図、図2は図1のA−A線矢視断面図、図3は、本発明に係わる溶接封口電池の渦巻電極体40と封口蓋50とを接続し、そして当然正極集電タブ24を切り起こして封口蓋側へ折り曲げた状態、すなわち電池外装缶内へ挿入する直前の状態を示す図、図4は図3のB−B線矢視断面図である。
【0026】
図3及び図4に示すように、渦巻電極体40の最外周の正極芯体露出部21に形成した切込み部23を切り起こして上部に折り曲げ、封口蓋50側が狭く下側が広い(溶接部方向に向けて先細りとなっている)半直角台形状の正極集電タブ24を形成した後、熱融着性材料又は接着剤を用いて、絶縁部材56の側面に正極集電タブ24を溶着又は接着して固定する(図中71)。この際、熱融着性材料及び接着剤は耐電解液性を有し、且つ固定強度に優れるものを用いる。このようなものとして、熱融着性材料としては、変性ポリプロピレン等が例示され、接着剤としては、ポリフェノール樹脂系の接着剤等が例示される。
【0027】
しかる後、図1及び図2に示すように、渦巻電極体40と封口蓋50とを電池外装缶60内に挿入し、正極集電タブ24及び電池外装缶の最上部の開孔縁壁をレーザ光にて一体的に溶接することにより溶接封口電池を作製した。
【0028】
なお、実際の電池においては、渦巻電極体下部の絶縁テープ、切り起こし折り曲げて形成した正極集電タブを渦巻電極体外表面に固定し、併せて保護する粘着性保護テープ、負極集電体、更には安全弁等種々の要素、部品を有しているが、これらは本発明の趣旨に直接の関係はないこと、図示するとかえって煩雑となることのため、図1〜図4ではわざわざは図示していないが、本実施例の電池でも必要に応じてそれらを装備しているのは勿論である。
【0029】
以上、本発明の実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は何もこれらに限定されるものでないのは勿論である。すなわち、例えば以下のようにしてもよい。
【0030】
(1) 正負の芯体等の寸法、材質等は、他の値や材料としている。
また、電池外装缶も必ずしも、金属のみではない。
(2) 電池の形状は、水平(横)断面の頂部が丸味を有する概長方形、その他いわゆるシート型等としている。
(3) 電池の発電要素の種類は他のものである。
【0031】
【実施例】
〔実施例1〕
実施例1としては、上記発明の実施の形態に示す溶接封口電池を用いた。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A1と称する。
【0032】
〔実施例2〕
図5に示すように、正極集電タブ24を溶接部方向に向けて先細り状にするのではなく長方形状とする他は、上記実施例1と同様にして溶接封口電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A2と称する。
【0033】
〔比較例〕
従来技術で説明したように、絶縁部材の側面に集電タブを固定しない他は、上記実施例1と同様にして溶接封口電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、比較電池Xと称する。
【0034】
〔実験〕
上記本発明電池A1、A2及び比較電池Xを落下させて衝撃を加えた場合に、何回目の落下でタブ切れが発生するのかということを調べたので、その結果を表1に示す。
尚、実験は、本発明電池A1、A2及び比較電池Xを30cmの高さから硬質プラスチックタイル上に落下させるというものである。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から明らかなように、比較電池Xでは2〜6回落下させるとタブ切れが発生しているのに対して、本発明電池A2では20〜30回、本発明電池A1では35〜50回落下させないとタブ切れが発生していないことが認められた。
以上のことから、絶縁部材の側面に正極集電タブを固定するのが望ましく、更に、正極集電タブを溶接部方向に向けて先細り状になるようするのがより望ましいことがわかる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本説明によれば、電池を落下させる等の衝撃を加えた場合であっても、タブ切れが生じるのを防止できるので、溶接封口電池の信頼性を飛躍的に向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる溶接封口電池の部分断面図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】渦巻電極体及び封口蓋を電池外装缶内へ挿入する直前の状態を示す正面図。
【図4】図3のB−B線矢視断面図。
【図5】本発明の他の例に用いる正極の平面図。
【図6】従来技術に係わる溶接封口電池の正極板の構成図である。
【図7】従来技術に係わる溶接封口電池の負極板の構成図である。
【図8】従来技術に係わる溶接封口電池の渦巻電極体の横(水平)断面の構成を示す図である。
【図9】従来技術に用いる封口蓋を斜め下方からみた斜視図である。
【図10】電池キャップを除いた封口蓋の部分断面図(側面)である。
【図11】従来技術に係わる溶接封口電池の芯体を切り込み、折り曲げて形成した正極集電タブと、封口蓋と、電池外装缶との溶接等を中心とした組立方法を示す説明図である。
【図12】従来の溶接封口電池の部分断面図。
【図13】従来の溶接封口電池に衝撃が加えられた状態を示す断面図。
【図14】従来の溶接封口電池に衝撃が加えられてタブ切れが生じた状態を示す断面図。
【符号の説明】
20:正極板
23:切り込み部
30:負極板
40:渦巻電極体
41:セパレータ
50:封口蓋
51:封口板
52:絶縁性ガスケット
53:中空キャップ
54:集電端子板
55:絶縁板
56:絶縁部材
60:電池外装缶
70:溶接部
71:固定部
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型携帯用の溶接封口電池に関し、特にレーザ封口型角形イオン電池の封口蓋の形状に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯用の小型密閉型電池においては、例えば特願平7−26710号公報、同8−53032号公報にて本願出願人が開示しているがごとく、発電要素が収納された電池外装缶の開口縁(端)部に封口蓋をレーザー溶接して封口するが、この際、発電要素の最外周部分に正極板又は負極板のいずれかの芯体を配置し、更にこの芯体の露出部に略U字状の切込み(切断線)を入れて、この切込みを電池外装缶の開口側方向へ繰り返して集電タブとなし、この集電タブを電池外装缶開口縁と封口蓋との間にはさみ込み、この状態でこれら三つをレーザ溶接することにより封口し、併せて発電要素の正極あるいは負極と電池外装缶との一層の電気的接触を図っている。
【0003】
以下、本発明の趣旨に直接関係するのでこの電池の一例を、図を参照しつつ少し詳しく説明する。
【0004】
図6に、正極板20の構造を示す。
図6(a)は正極板の側面図であり、同図(b)は正面図である。これらの図に示すように、正極板は長さ335mm、幅38mm、厚さ20μmの細長く薄いアルミ箔製正極芯体21の、原則としてその両面に、LiCoO2 を主成分としその他黒鉛、カーボンブラック、N−メチル−2ピロリドンに溶かしたポリフッ化ビニリデンから成る正極活物質(スラリー)22を塗布し、これを圧延し、真空乾燥により付着させたものである。そして、電池外装缶体内に挿入される、あるいは挿入された状態ではその最外周となる側にほぼUあるいはコの字形の切込み23が設けられている。
【0005】
なお、この切込み23を設けた部分の正極芯体21には、当然正極活物質が付着されておらず、更にその近くの電池外装缶側に位置する面に正極活物質が付着されていないのは、芯体と電池外装缶との一層の電気的接触を図るためである。
【0006】
図7に、負極板の構造30を示す。
図7(a)は負極板の側面図であり、同図(b)は正面図である。これらの図に示すように、負極板は長さ315mm、幅39mm、厚さ18μmの負極芯体31の細長く薄い銅箔の両面に天然黒鉛粉末を主成分とし、その他N−メチル−2ピロリドンに溶かしたポリフッ化ビニリデンからなる負極活物質32を塗布し、乾燥、圧延により付着させ、更に後で説明する巻込中心部の負極芯体の銅箔に直接ニッケルからなるリード33を負極集電体として取り付けたものである。
【0007】
図8に、渦巻電極体40の構造を示す。
本図に示すように、渦巻電極体40は、正極板20と負極板30とを両者より多少幅広のポリエチレン製のセパレータ41を介して巻き回したものである。なおこの場合、前述の理由により正極板の正極活物質を塗布していない片面露出部が渦巻電極体の最外周部に位置するように巻回される。そしてこのもとで、巻終部分には粘着テープ(図示せず)が貼られ、また底部は電池缶体との接触防止のため絶縁テープ(図示せず)で覆われる。
【0008】
なおここで、正極集電タブは、図6に示す切込み部23を切り起こして形成されるが、この際電池の内部巻込中心側に同一極性の電極板が位置する所に設けているのは、切込み部23のバリにより万一セパレータ41の損傷が生じても内部短絡が発生しないようにするためである。
【0009】
図9及び図10に、封口蓋50の構造を示す。
図9は封口蓋を斜め下方からみた斜視図、図10は電池キャップを除いた封口蓋の部分断面図(側面)である。
【0010】
図9及び図10に示すように、封口蓋50は、中央付近に透孔を有した封口板51と、該透孔に絶縁性ガスケット52を介して配置される金属製の中空キャップ53と、中空キャップ53の上端に電気的に接続される電池キャップ(図示せず、負極外部端子を兼ねるもの)と、中空キャップ53に電気的に接続された集電端子板54と、封口板51と集電端子板54との間に介在されて両者を電気的に絶縁する絶縁部55を備えた絶縁部材56とよりなる。
【0011】
そして、絶縁性ガスケット52、絶縁板55及び集電端子板54は、中空キャップ53の上端及び下端をかしめることによって、封口板51に固定されている。また、上記絶縁部材56は、封口板51と渦巻電極体40との間に配置されて、渦巻電極体40が上下方向に揺動しないようにするものである。また、集電端子板54は、その一部が下方向に切り起こされており、この部分に先に説明した負極芯体31に接続されたリード33が電気的に接続される。
【0012】
図11に、この電池の組立て手順を示す。
(a)電池外装缶底との接触防止、巻きほぐれ防止等のため粘着テープを要所にはった渦巻電極体40の上方に、封口蓋50の封口板51を位置させる。本図において、33は負極リードである。
【0013】
(b)封口板50に固定された集電端子板54と負極リード33とを電気的に接続する。
【0014】
(c)他方、渦巻電極体40の最外周の正極芯体露出部21に形成した切込み部23を切り起こして上部に折り曲げて正極集電タブ24となす。
【0015】
そして、この正極集電タブ24は、この状態で上から保護テープ25を貼り付けることにより、渦巻電極体40の最外周の正極芯体露出部21に固定される。
【0016】
(d)負極リード33が電気接続された渦巻電極体40を、アルミニウム製のほぼ角形の電池外装缶60内に挿入する。その際、正極板20から導出した正極集電タブ24を電池外装缶60の内壁に沿って電池開口端にまで延ばし、更にその上端部を封口蓋50の封口板51の外周側面と電池外装缶60の内壁面で挟み込むようにした状態で封口蓋50を電池外装缶60の開口縁に被せる。また、挿入時には、切り欠き部57に沿って正極集電タブ24を屈曲させて、正極集電タブ24のたるみを吸収させる。
【0017】
(e)次いで、電池外装缶60と封口板51との嵌合部にレーザー光を照射して当該部分を溶接し、電池を封口する。そして、併せて正極集電タブ24と電池外装缶60とを電気的に強固に接続する。
【0018】
更に、その後、封口板51の透孔から電池外装缶60の内部に非水電解液を注入し、当該透孔に電池キャップ59を設置する。
以上の工程を経て、図12に示すように、溶接部70により正極集電タブ24と電池外装缶60とが電気的に接続された溶接封口電池が作製される。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の溶接封口電池では、電池を落下させる場合の如く電池に衝撃が加わった場合には、図13に示すように、渦巻電極体40が下向(図中C方向)に移動しようとするため、正極集電タブ24が下向に引っ張られる。このため、図14に示すように、溶接部70の近傍で正極集電タブ24のタブ切れが生じるおそれがあるという課題を有していた。
【0020】
本発明は、上記従来の課題を考慮してなされたものであって、電池を落下させる等の衝撃を加えた場合であっても、タブ切れを防止して、信頼性を向上させることができる溶接封口電池の提供を目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明においては、正極板と負極板とをセパレータを介して巻いて構成した渦巻電極体と、該渦巻電極体を収納する電池外装缶と、上記渦巻電極体の最外周部分に位置する正極板又は負極板の芯体露出部に切込みを入れ該切込みを切りおこして上記電池外装缶の開口側方向へ折り返すことにより形成される集電タブと、上記電池外装缶の開口部を封口する封口板及びこの封口板の電池内部側に固定された絶縁部材から成る封口蓋とを有し、且つ、上記集電タブを上記電池外装缶の開口縁と上記封口板との間にはさみ込んだ状態で、集電タブと電池外装缶と封口板とが溶接される構造の溶接封口電池において、上記絶縁部材の側面に上記集電タブが固定されていることを特徴とする。
【0022】
上記構成であれば、集電タブは溶接部で電池外装缶等と固定されるのみならず絶縁部材にも固定される(即ち、集電タブが2箇所で固定される)ことになるので、電池を落下させる等の衝撃を加えた場合であっても、電池内部でタブ切れが生じるのを防止することができる。
【0023】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記集電タブは、溶接部方向に向けて先細り状になるように構成されることを特徴とする。
上記の如く、集電タブが溶接部と絶縁部材とに固定される場合には、渦巻電極体に近い絶縁部材との固定部においてタブ切れが生じ易くなる。しかしながら、上記の如く、集電タブを溶接部方向に向けて先細り状になるように構成すれば、溶接部における集電タブの幅に比べて、絶縁部材との固定部における集電タブの幅が広くなるので、衝撃が加わった場合に集電タブがより切れ難くなるという効果がある。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図4に基づいて、以下に説明する。
【0025】
図1は本発明に係わる溶接封口電池の部分断面図、図2は図1のA−A線矢視断面図、図3は、本発明に係わる溶接封口電池の渦巻電極体40と封口蓋50とを接続し、そして当然正極集電タブ24を切り起こして封口蓋側へ折り曲げた状態、すなわち電池外装缶内へ挿入する直前の状態を示す図、図4は図3のB−B線矢視断面図である。
【0026】
図3及び図4に示すように、渦巻電極体40の最外周の正極芯体露出部21に形成した切込み部23を切り起こして上部に折り曲げ、封口蓋50側が狭く下側が広い(溶接部方向に向けて先細りとなっている)半直角台形状の正極集電タブ24を形成した後、熱融着性材料又は接着剤を用いて、絶縁部材56の側面に正極集電タブ24を溶着又は接着して固定する(図中71)。この際、熱融着性材料及び接着剤は耐電解液性を有し、且つ固定強度に優れるものを用いる。このようなものとして、熱融着性材料としては、変性ポリプロピレン等が例示され、接着剤としては、ポリフェノール樹脂系の接着剤等が例示される。
【0027】
しかる後、図1及び図2に示すように、渦巻電極体40と封口蓋50とを電池外装缶60内に挿入し、正極集電タブ24及び電池外装缶の最上部の開孔縁壁をレーザ光にて一体的に溶接することにより溶接封口電池を作製した。
【0028】
なお、実際の電池においては、渦巻電極体下部の絶縁テープ、切り起こし折り曲げて形成した正極集電タブを渦巻電極体外表面に固定し、併せて保護する粘着性保護テープ、負極集電体、更には安全弁等種々の要素、部品を有しているが、これらは本発明の趣旨に直接の関係はないこと、図示するとかえって煩雑となることのため、図1〜図4ではわざわざは図示していないが、本実施例の電池でも必要に応じてそれらを装備しているのは勿論である。
【0029】
以上、本発明の実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は何もこれらに限定されるものでないのは勿論である。すなわち、例えば以下のようにしてもよい。
【0030】
(1) 正負の芯体等の寸法、材質等は、他の値や材料としている。
また、電池外装缶も必ずしも、金属のみではない。
(2) 電池の形状は、水平(横)断面の頂部が丸味を有する概長方形、その他いわゆるシート型等としている。
(3) 電池の発電要素の種類は他のものである。
【0031】
【実施例】
〔実施例1〕
実施例1としては、上記発明の実施の形態に示す溶接封口電池を用いた。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A1と称する。
【0032】
〔実施例2〕
図5に示すように、正極集電タブ24を溶接部方向に向けて先細り状にするのではなく長方形状とする他は、上記実施例1と同様にして溶接封口電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A2と称する。
【0033】
〔比較例〕
従来技術で説明したように、絶縁部材の側面に集電タブを固定しない他は、上記実施例1と同様にして溶接封口電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、比較電池Xと称する。
【0034】
〔実験〕
上記本発明電池A1、A2及び比較電池Xを落下させて衝撃を加えた場合に、何回目の落下でタブ切れが発生するのかということを調べたので、その結果を表1に示す。
尚、実験は、本発明電池A1、A2及び比較電池Xを30cmの高さから硬質プラスチックタイル上に落下させるというものである。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から明らかなように、比較電池Xでは2〜6回落下させるとタブ切れが発生しているのに対して、本発明電池A2では20〜30回、本発明電池A1では35〜50回落下させないとタブ切れが発生していないことが認められた。
以上のことから、絶縁部材の側面に正極集電タブを固定するのが望ましく、更に、正極集電タブを溶接部方向に向けて先細り状になるようするのがより望ましいことがわかる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本説明によれば、電池を落下させる等の衝撃を加えた場合であっても、タブ切れが生じるのを防止できるので、溶接封口電池の信頼性を飛躍的に向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる溶接封口電池の部分断面図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】渦巻電極体及び封口蓋を電池外装缶内へ挿入する直前の状態を示す正面図。
【図4】図3のB−B線矢視断面図。
【図5】本発明の他の例に用いる正極の平面図。
【図6】従来技術に係わる溶接封口電池の正極板の構成図である。
【図7】従来技術に係わる溶接封口電池の負極板の構成図である。
【図8】従来技術に係わる溶接封口電池の渦巻電極体の横(水平)断面の構成を示す図である。
【図9】従来技術に用いる封口蓋を斜め下方からみた斜視図である。
【図10】電池キャップを除いた封口蓋の部分断面図(側面)である。
【図11】従来技術に係わる溶接封口電池の芯体を切り込み、折り曲げて形成した正極集電タブと、封口蓋と、電池外装缶との溶接等を中心とした組立方法を示す説明図である。
【図12】従来の溶接封口電池の部分断面図。
【図13】従来の溶接封口電池に衝撃が加えられた状態を示す断面図。
【図14】従来の溶接封口電池に衝撃が加えられてタブ切れが生じた状態を示す断面図。
【符号の説明】
20:正極板
23:切り込み部
30:負極板
40:渦巻電極体
41:セパレータ
50:封口蓋
51:封口板
52:絶縁性ガスケット
53:中空キャップ
54:集電端子板
55:絶縁板
56:絶縁部材
60:電池外装缶
70:溶接部
71:固定部
Claims (2)
- 正極板と負極板とをセパレータを介して巻いて構成した渦巻電極体と、該渦巻電極体を収納する電池外装缶と、上記渦巻電極体の最外周部分に位置する正極板又は負極板の芯体露出部に切込みを入れ該切込みを切りおこして上記電池外装缶の開口側方向へ折り返すことにより形成される集電タブと、上記電池外装缶の開口部を封口する封口板及びこの封口板の電池内部側に固定された絶縁部材から成る封口蓋とを有し、且つ、上記集電タブを上記電池外装缶の開口縁と上記封口板との間にはさみ込んだ状態で、集電タブと電池外装缶と封口板とが溶接される構造の溶接封口電池において、
上記絶縁部材の側面に上記集電タブが固定されていることを特徴とする溶接封口電池。 - 上記集電タブは、溶接部方向に向けて先細り状になるように構成される、請求項1記載の溶接封口電池。
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