JP3875872B2 - ポリケトン繊維を用いた縫い糸 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリケトン繊維を用いた縫い糸に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、衣料分野ではスーパー繊維と称される芳香族ポリアミド繊維や全芳香族ポリエステル繊維が、その優れた機械的性質や耐薬品性及び耐熱性等の特性を活かして、シートベルト、安全ベルト等の防護品や高機能衣料、例えばユニフォーム等の用途分野でも需要を増やしてきた。
【0003】
また、資材分野においても同様にスーパー繊維を使用した高機能製品が利用されている。例えば抄紙機において、湿紙を乾燥シリンダーに圧着して乾燥を促進するドライヤーカンバスに使用される原糸の素材は、適正な耐久性と適正なコストのバランスを保ちながら徐々に変遷してきている。抄紙機の高速化などで温湿度条件は過酷になりつつあり、近年では、ポリベンザゾールなどのスーパー繊維を使用したドライヤーカンバスが、スチーム加熱および高温加熱などの条件下で使用されている。
【0004】
以上のように、衣料分野、資材分野で使用されているスーパー繊維を用いた布帛は、従来の天然繊維や合成繊維を素材にした縫い糸(以下、ミシン糸ともいう)では、布帛との摩擦により可縫性が低下する傾向を示す。また、資材分野で使用される布帛の縫い糸は、衣料分野以上に過酷な条件で使用され、可縫性のみならず耐湿熱性が要求される。
【0005】
一方、これらの繊維素材を用いて高強度、高耐熱性の縫糸の開発が行われており、例えば実開昭52−87736号公報は、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維からなるミシン糸を、また特開昭63−92745号公報は、ポリエチレン繊維からなり軽量で高強力・低伸度で且つ耐光性及び耐薬品性に優れたミシン糸を、それぞれ提案している。
【0006】
しかしながら、これらの繊維素材を用いた縫い糸にもそれぞれ難点があった。
【0007】
全芳香族ポリアミド繊維を用いた縫い糸は、強度、耐候性、耐熱性には優れるものの、吸水性が高く寸法安定性に問題がある。これは、水に濡れた時の繊維の強度低下、縫い目のシワをもたらし、縫製物の仕上がりに影響する。また、被縫製物の種類や縫い目数などによっても異なるが、ミシン糸は、縫製時に同一箇所が数十回しごかれるため、糸が摩擦などによりフィブリル化を引き起こし、縫い目強度が低下しやすい。
【0008】
また、高分子量ポリエチレン繊維を用いた縫い糸は、水に対する寸法安定性は良いが、融点が120℃と低いために高温になると物性低下を起こしてしまう。縫製時には、高張力下で何十回と針穴でしごかれることにより発熱し、これによって引き起こされる強度低下の結果、糸切れを誘発するという問題がある。
【0009】
また、これらの物性面の問題以外にも、いずれの繊維も高価であり汎用性に乏しいという問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高強度、高弾性率で、可縫性に優れ、縫い目強度が高く、且つ、耐湿熱性に優れた縫い糸を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究した結果、ポリケトンから構成された高強度、高弾性率の繊維を用いることにより、上記課題が解決されることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は下記の通りである。
【0013】
1.繰り返し単位の90モル%以上が下記式(1)で示されるポリケトンから構成されたポリケトン繊維を用いることを特徴とする縫い糸。
【0014】
−CH2CH2−CO− ……(1)
2.撚り係数3000〜20000で施撚された単糸繊度が0.5〜8dtexのポリケトン繊維から構成され、更に上記施撚されたポリケトン繊維が2〜5本合撚されていることを特徴とする上記1に記載の縫い糸。
【0015】
3.強度が6cN/dtex以上、初期弾性率が61cN/dtex以上であることを特徴とする上記1又は2に記載の縫い糸。
【0016】
4.乾熱収縮率が2%以下であることを特徴とする上記1、2又は3に記載の縫い糸。
【0017】
以下、本発明につき詳述する。
【0018】
本発明において、ポリケトン繊維は、繰り返し単位の90モル%以上が上記式(1)で示されるポリケトンから構成される。また、10モル%未満の範囲で上記式(1)以外の繰り返し単位、例えば、下記式(2)に示す繰り返し単位等を含有していても良い。
【0019】
−R−CO− ……(2)
式(2)において、Rはエチレン以外の炭素数1〜30の有機基であり、例えば、プロピレン、ブチレン、1−フェニルエチレン等が例示される。これらの水素原子の一部または全部が、ハロゲン基、エステル基、アミド基、水酸基、エーテル基で置換されていてもよい。もちろん、Rは2種以上であってもよく、例えば、プロピレンと1−フェニルエチレンが混在していてもよい。
【0020】
高強度、高弾性率が達成可能で、高温での安定性が優れるという観点から、繰り返し単位の97モル%以上が上記式(1)で示されるポリケトンであることが好ましく、最も好ましくは100モル%である。
【0021】
また、これらのポリケトンには必要に応じて、酸化防止剤、ラジカル抑制剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属石鹸等の添加剤や他のポリマーを含んでいてもよい。
【0022】
本発明の縫い糸は、ポリケトン繊維を用いることにより、可縫性に優れ、縫い目強度の高い縫い糸となり、且つ安価なものとなる。
【0023】
本発明の縫い糸に使用されるポリケトン繊維は、単糸繊度が0.5〜8dtexであることが好ましく、更に好ましくは0.5〜7dtex、最も好ましくは0.8〜6dtexである。単糸繊度が上記の範囲であると、縫糸として用いた場合にガイドとの摩擦又は生地貫通時の摩擦抵抗による単糸切れがなく、また、縫糸が柔軟で曲がり易く、生地とのなじみが良いため浮き上がった状態になることがなく、美しい縫目の縫製が可能となり、仕立ばえが良くなる。
【0024】
ポリケトン繊維は、単独または引き揃えて施撚(下撚り)されるが、この場合、撚り係数を3000〜20000の範囲にすることが好ましく、更に好ましくは3500から15000の範囲である。
【0025】
撚り係数Kは、K=T×D1/2で定義される。
【0026】
ここで、Tは1mあたりの撚り数であり、Dは繊度を示す。
【0027】
撚り係数が上記の範囲であると、縫製時の解撚作用によっても縫い糸がバラケることがないため糸切れを引き起こすことがなく、また、縫製時に縫い糸が生地から浮き上がることがなく、縫い糸の強度低下もほとんどない。
【0028】
この下撚り糸を2〜5本引き揃えて施撚(上撚り)し、縫い糸形状にすることが好ましい。この場合、上撚り数は下撚り数に対して50〜80%の撚り数にすることが、撚りのバランス上好ましい。
【0029】
本発明の縫い糸は、強度が6cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは7cN/dtex以上であり、もっとも好ましくは9cN/dtex以上である。強度が上記の範囲であると、芳香族ポリアミド繊維や全芳香族ポリエステル繊維もしくはポリベンザゾールなどのスーパー繊維を主たる素材にした布帛の縫製において、優れた可縫性を示し、また、縫い目強度及び縫い目の耐衝撃強度を維持することができるので、スーパー繊維の力学特性を十分に活かすことが可能になる。なお、縫い糸の強度は高いほど好ましいが、製造技術上おのずから上限がある。
【0030】
また、初期弾性率は、可縫性の点から少なくとも61cN/dtex以上が好ましく、より好ましくは88cN/dtex以上である。初期弾性率が上記の範囲であると、縫製時に針糸の形成するループサイズが小さく且つループ形状が安定であるため、ルーパによる下糸通し時におけるミスの発生がない。このことは目飛びの発生がなく、可縫性が優れていることであり、つまり、縫製効率が良く構成物の品質が優れているということである。なお、初期弾性率が極端に高い場合には、パッカリングの発生頻度が高くなるので、初期弾性率は530cN/dtex未満とするのが好ましい。
【0031】
本発明の縫い糸の太さは特に限定されないが、資材分野で使用する場合には、縫製作業のしやすさ、縫い目強度の適切さ等の観点から、通常、縫い糸一本当たりの太さを660〜2200dtex程度とすることが好ましく、880〜1650dtex程度にするのがより好ましい。
【0032】
また、衣料分野で使用する場合には、55〜330dtexが好ましく、82〜275dtexがさらに好ましい。縫い糸の太さが上記の範囲であると、強力が充分で、縫製時に糸切れがなく、また、糸の配列ムラを生じないので優れた外観品位が得られる。
【0033】
本発明の縫い糸は、乾熱収縮率が2%以下であることが好ましく、更に好ましくは1%以下である。乾熱収縮率が2%以下であると、縫製時の針との摩擦熱による縮みの発生がなく、縫い目の仕立て上がりが良好になる。また、産業資材として乾熱部で使用した場合、縫製部の寸法が安定して、支障なく使用することができる。
【0034】
本発明の縫い糸は、ポリケトン繊維が用いられていれば良いが、さらに必要に応じて他の繊維素材を含んでいてもよい。その場合、ポリケトン繊維の比率は10wt%以上であることが好ましく、より好ましくは50wt%以上、さらに好ましくは70wt%以上、最も好ましくは100wt%である。他の繊維素材としては特に制限はなく、用途に応じて、合成繊維、天然繊維等を用いることができる。
【0035】
また、縫い糸の製造方法に制限はなく、従来から知られているいずれの縫い糸の製造方法でも製造することができ、例えば、前記構成比率で、他の繊維素材と混撚し、さらに双糸、三子撚などの方法を採用することにより本発明の縫い糸を製造することが出来る。
【0036】
本発明の縫い糸を衣料分野で使用する場合、必要に応じて着色することもできる。着色方法としては特に制限はなく、例えば、バット染料、ナフトール染料、硫化染料、分散染料、カチオン染料などを用いた染色糸、更に発色性を良くするためには、有機、無機の顔料を使用して原着糸とすることもできる。特に縫製物の品位を重視する場合には、ポリケトン繊維を芯糸とし、その外周に可染性の長繊維または着色された長繊維を鞘糸として螺旋状に巻き付ける事が好ましい。この場合、可染性の長繊維または着色された長繊維の質量比が0.15〜0.50であることが好ましい。質量比がこの範囲であると、芯糸のポリケトン繊維が糸条の表面に露出してくることがないため色調にムラが生じず、また、強度低下や初期弾性率の低下がなく、特に、強度6cN/dtex以上、初期弾性率61cN/dtex以上である場合には優れた力学的特性を示す。
【0037】
本発明において、ポリケトン繊維の製造は公知の紡糸方法が適用可能である。即ち、湿式紡糸、溶融紡糸、乾式紡糸が可能であり、なかでも、湿式紡糸、溶融紡糸が好ましく、最も好ましくは湿式紡糸法である。
【0038】
湿式紡糸法としては、特開平2−112413号公報、特開平4−228613号公報、特表平4−505344号公報等に記載の溶剤、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール、m−クレゾール、クロロフェノール、レゾルシン/水、フェノール/アセトン、プロピレンカーボネート/ヒドロキノン、ピロール、レゾルシン/プロピレンカーボネート、ピリジン、ギ酸等の有機溶剤を用いた湿式紡糸を適用することもできるが、これらの溶剤は高価または毒性が高いものであったり、引火性の高い凝固剤を使用する必要がある等、工業的に使用するには問題がある。
【0039】
また、米国特許第5929150号明細書、国際公開パンフレット第99/18143号には、例えば亜鉛塩溶液、リチウム塩の溶液が溶剤として使用できることが開示されている。リチウム塩の溶液は高価であるため工業的には不適切であるが、亜鉛塩の溶液は安価であり安定な湿式紡糸が可能となる。しかし、ポリケトンを亜鉛塩の溶液に溶解した場合、ポリケトン溶液を、工業的に必要な長期間安定に保つことは困難である。
【0040】
一方、本発明者らが見出した方法によれば、溶剤としてのハロゲン化亜鉛とハロゲン化アルカリ金属または/及びハロゲン化アルカリ土類金属の混合塩の水溶液は、安価で安全である上に、ポリケトン溶液の長期安定性も優れており、工業的な溶剤であるという点で、最も好ましい溶剤である。従って、本発明に用いるポリケトン繊維は、ハロゲン化亜鉛とハロゲン化亜鉛とハロゲン化アルカリ金属または/及びハロゲン化アルカリ土類金属の混合塩の水溶液を溶剤とした湿式紡糸法を用いて製造することが最も好ましい。なお、その湿式紡糸方法は国際公開パンフレット第00/9611号に詳細に記載されている。
【0041】
上記のようにして得られた繊維中には、重合触媒として使用したパラジウムが含まれる。このパラジウム元素の量は100ppm以下であることが好ましく、さらに好ましくは10ppm以下であることが好ましい。パラジウムの量を低減する方法としては、特に制限はないが、ポリケトンの重合終了時に重合溶媒を用いて1〜20回洗浄すればよい。また、紡糸溶剤として使用した亜鉛元素も残留しており、その含量は10000ppm以下であることが好ましく、さらに好ましくは3000ppm以下である。これらの元素が多量に残留したまま長期に渡り湿潤状態、高温での使用を続けると、縫い糸の強度の低下を引き起こす傾向があるため、紡糸時に充分な洗浄を施してから使用することが好ましい。
【0042】
溶融紡糸法としては公知の方法を適用することができ、例えば特開平1−124617号公報に記載の方法等が挙げられる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これらにより本発明はなんら限定されるものではない。
【0044】
なお、測定方法、評価方法等は次の通りである。
【0045】
(1)繊維の強力、強度、伸度、弾性率
JIS−L−1013に準じて測定した。
【0046】
(2)可縫性
下記条件で後進縫いを行い、上糸が切れるまでの縫製長(m)の平均値を求めた。ただし、10m以上切れない場合は縫製長10mとして平均した。
【0047】
使用ミシン:一本針本縫いミシン(DL−505:ジューキ社製)
縫い針:普通針(オルガンDB−1#20)
下糸張力:147mN
上糸張力:前進縫いで上下のバランスのとれた張力(約800mN)
回転数:1500rpm
被縫製布:縫い糸の構成に合わせて使用する被縫製布を変えた。
【0048】
測定回数:15回
(3)強度保持率(縫い目強度の代替として測定)
可縫性試験と同条件で50cm縫製し、下糸を切断して上糸を取り出し、JIS−L−1013に準じて引っ張り強さを測定し、縫製前後での強度の平均値の割合で表した。
【0049】
(4)複合縫い糸の色ムラの判定
目視により色調の均染性を判定した。ポリベンザゾール繊維が複合フィラメント縫い糸の表面に露出することなく均一な色調なものを○、ポリベンザゾール繊維の色調が反映され色調がやや淡色であるものを△、霜降りを呈するものを×で評価した。
【0050】
(5)乾熱収縮率の測定
縫い糸に、デシテックス当り1/30gの初荷重をかけ、正確に500mmの長さを計って2点の印を打ち、初荷重を取り外し、これを150℃の乾燥機中につり下げた。30分間放置後、取り出して、室温まで冷却後、再び初荷重をかけ、2点間の長さL(mm)を測り、次の式によって乾熱収縮率(%)を求めた。
【0051】
乾熱収縮率(%)={(500−L)/500}×100
〔実施例1〕
220dtex/200フィラメント、破断強度16.1cN/dtex、初期弾性率318cN/dtexのポリケトン繊維を、リング式撚糸機で撚り数580回/mでS方向に加撚し(撚り係数K=8200)、さらに、3本合糸し、リング撚糸機を用いて撚り数430回/mでZ方向に加撚して撚糸を得た。
【0052】
得られた撚糸をカセ巻きし、130℃×45分間、高温高圧染色して黒色に染色した。染色後65℃×30分間吸着性シリコーンを主成分とする油剤処理し、さらに、コーン巻き上げ時に、変性ジメチルシリコンを主成分とする油剤を付着量が3質量%となるように付与し、ミシン糸とした。
【0053】
このミシン糸の可縫性(被縫製布:クラレ社の帆布E5(OG色)、2枚重ね)、強度保持率等を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
また、可縫性を確認した縫製済みの縫製布を水に浸した後、再度乾燥した結果、縫製部に異常は見られなかった。
【0055】
〔実施例2〕
220dtex/400フィラメント、破断強度16.3cN/dtex、初期弾性率340cN/dtexのポリケトン長繊維を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてミシン糸を得た。このミシン糸の可縫性(被縫製布:クラレ社の帆布E5(OG色)、2枚重ね)、強度保持率等を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
〔実施例3〕
220dtex/33フィラメント、破断強度16.3cN/dtex、初期弾性率340cN/dtexのポリケトン長繊維を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてミシン糸を得た。このミシン糸の可縫性(被縫製布:クラレ社の帆布E5(OG色)、2枚重ね)、強度保持率等を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
〔実施例4〕
220dtex/200フィラメント、破断強度16.1cN/dtex、初期弾性率318cN/dtexのポリケトン繊維を、リング式撚糸機で撚り数210回/mでS方向に加撚した(撚り係数K=3000)こと以外は、実施例1と同様にしてミシン糸を得た。このミシン糸の可縫性(被縫製布:クラレ社の帆布E5(OG色)、2枚重ね)、強度保持率等を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
〔実施例5〕
220dtex/200フィラメント、破断強度16.1cN/dtex、初期弾性率318cN/dtexのポリケトン繊維を、リング式撚糸機で撚り数1300回/mでS方向に加撚した(撚り係数K=18400)こと以外は、実施例1と同様にしてミシン糸を得た。このミシン糸の可縫性(被縫製布:クラレ社の帆布E5(OG色)、2枚重ね)、強度保持率等を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
〔実施例6〕
220dtex/200フィラメント、破断強度10.9cN/dtex、初期弾性率115cN/dtexのポリケトン長繊維を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてミシン糸を得た。このミシン糸の可縫性(被縫製布:クラレ社の帆布E5(OG色)、2枚重ね)、強度保持率等を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
〔比較例1〕
220dtexのケブラー29(ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維:デュポン社の商標)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてミシン糸を得た。このミシン糸の可縫性(被縫製布:クラレ社の帆布E5(OG色)、2枚重ね)、強度保持率等を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
また、可縫性を確認した縫製済みの縫製布を水に浸した後、再度乾燥した結果、縫製部に異常は見られなかった。
【0062】
〔比較例2〕
220dtexのダイニーマSK60(高分子量ポリエチレン繊維:東洋紡績の商標)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてミシン糸を得た。このミシン糸の可縫性(被縫製布:クラレ社の帆布E5(OG色)、2枚重ね)、強度保持率等を測定した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
〔実施例7〕
55dtex/50フィラメント、破断強度16.0cN/dtex、初期弾性率309cN/dtexのポリケトン繊維に、28dtex/12フィラメントのポリエステル長繊維(PETと略称する。)を1m当たり300回巻き付けて芯鞘型の複合糸条とし、該複合糸条に374回/mでS方向に下撚をかけた。次いで、これを3本合糸して300回/mでZ方向に上撚をかけた後、分散染料を用いて130℃、60分のカセ染色を行い、シリコン油を0.8wt%付着させて複合フィラメント縫い糸を得た。
【0065】
得られた縫い糸の可縫性(被縫製布:ポリベンザゾール/ポリエステル混作業服地(目付270g/m3)、2枚重ね)、強度保持率等の測定結果、色ムラの判定結果を表2に示す。
【0066】
〔実施例8〕
55dtex/50フィラメントで破断強度11.2cN/dtex、初期弾性率120cN/dtexのポリケトン繊維を使用したこと以外は、実施例7と同様にして複合フィラメント縫い糸を得た。得られた縫い糸の可縫性(被縫製布:ポリベンザゾール/ポリエステル混作業服地(目付270g/m3)、2枚重ね)、強度保持率等の測定結果、色ムラの判定結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
〔実施例9〕
実施例1で使用した縫製後の縫製布を150℃で乾熱乾燥した。この時の縫い目の状態を表3に示す。
【0069】
〔比較例3〕
220dtexのポリエステル普通糸(強度6.9cN/dtex、弾性率95cN/dtex)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてミシン糸を得た。このミシン糸を使用し、クラレ社の帆布E5(OG色)、2枚重ねを縫製した。この縫製布を150℃で乾熱乾燥したときの縫い目の状態を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
【発明の効果】
従来の縫い糸では、縫製時にフィブリル化、発熱による切れ糸、及び、縫い目強度の低下があったが、本発明の縫い糸は、そのような従来品における問題がなく、高強度、高弾性率で、可縫性に優れ、縫い目強度が高く、耐湿熱性に優れ、且つ安価である。
Claims (3)
- 繰り返し単位の90モル%以上が下記式(1)で示されるポリケトンから構成されたポリケトン繊維を用い、乾熱収縮率が1%以下であることを特徴とする縫い糸。
−CH2CH2−CO− ……(1) - 撚り係数3000〜20000で施撚された単糸繊度が0.5〜8dtexのポリケトン繊維から構成され、更に上記施撚されたポリケトン繊維が2〜5本合撚されていることを特徴とする請求項1に記載の縫い糸。
- 強度が6cN/dtex以上、初期弾性率が61cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の縫い糸。
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