JP3875582B2 - 熱可塑性樹脂組成物及びポリエステル系シート - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及びポリエステル系シート Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びそれからなる熱成形性及び耐屈折性の優れたポリエステル系シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話等のボタンキー用のシートは、厚み約100μmのシートより成り、印刷工程、熱成形(深絞り成形)工程及びインモールド成形工程を経て製造される。素材は、従来は、ポリカーボネート樹脂製であり、強度、耐熱性は優れているものの、プリフォーム成形時、深絞り形状が困難なため、改善が望まれていた。それ故、最近では、これを改善した樹脂、即ち、ポリカーボネート樹脂にイソフタル酸等を共重合したポリブチレンテレフタレート樹脂をアロイした樹脂が使われている。しかしながら、ボタンキーに最も重要な耐屈折性(繰り返してボタンを押したときの耐久性)が不十分なため、改善が待たれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点を解決し、熱成形性及び耐屈折性の優れた熱可塑性樹脂組成物及びそれからなるポリエステル系シートを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、ポリカーボネート樹脂と熱可塑性共重合ポリエステル樹脂を溶融混合してなり、該熱可塑性共重合ポリエステル樹脂が(a)テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体と、(b)イソフタル酸又はそのエステル形成性誘導体2〜20モル%、及び(c)ダイマー酸又はそのエステル形成性誘導体2〜20モル%を酸成分とし、1,4−ブタンジオールをグリコール成分として得られる熱可塑性共重合ポリエステル樹脂であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物及びそれからなるポリエステル系シートによって達成される。
【0005】
【本発明の実施の形態】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂は、芳香族系ポリカーボネートである。具体的には、ビスフェノールAとホスゲンを出発原料とする界面重合法、ビスフェノールAとホスゲンとピリジンを出発原料とするピリジン法、ビスフェノールAとジフェニルジカーボネートを出発原料とするエステル交換法で得られるものである。
【0006】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量で20,000〜35,000が耐屈折性の点で好ましい。
【0007】
熱可塑性共重合ポリエステル樹脂は、酸成分としてテレフタル酸、ダイマー酸及びイソフタル酸、グリコール成分として主として1,4−ブタンジオールからなる。
【0008】
酸成分は、テレフタル酸、ダイマー酸、イソフタル酸を必須成分とするが、このうちダイマー酸は2〜20モル%、イソフタル酸は2〜20モル%であることが肝要である。
【0009】
本発明に使用する熱可塑性共重合ポリエステル樹脂の酸成分の1つであるダイマー酸の原料は、炭素数18の不飽和脂肪酸又はその低級アルキルエステル、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸等である。これらをモンモリロナイト等の粘度触媒によって重合し、炭素数36のダイマー酸以外に炭素数54のトリマー酸、炭素数18のモノマー酸の混合物が得られる。この混合物を、真空蒸留、分子蒸留及び水素添加反応により本発明に使用するダイマー酸が得られる。
【0010】
本発明に使用する熱可塑性共重合ポリエステル樹脂の酸成分の1つであるダイマー酸の好ましい具体例としては、ユニケマ社製のPRIPOL 1008、PRIPOL 1009、更にはPRIPOL 1008のエステル形成性誘導体としてユニケマ社製のPRIPLAST 3008、PRIPOL 1009のエステル形成性誘導体としてPRIPLAST 1899があげられる。
【0011】
酸成分中ダイマー酸が20モル%を超える場合、得られるシートは柔らかすぎてボタンを押したときの反発性が少なく、実用的でない。一方、ダイマー酸が2モル%未満の場合には、得られるシートは逆に硬すぎて、実用的ではない。
【0012】
酸成分中イソフタル酸が20モル%を超える場合、プリフォーム成形性が悪くなり、形状を賦与出来ない。一方、イソフタル酸が2モル%未満の場合、ボタン耐久性、即ち耐屈折性が不良となる。
【0013】
尚、酸成分中には3つの必須成分以外に少量(例えば10モル%未満)のジカルボン酸成分が1種類以上含まれていてもよい。例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが例として挙げられる。
【0014】
グリコール成分は必須成分として1,4−ブタンジオールを含む。これは、ボタンを押したときの反発性がある程度必要なためである。グリコール成分中には少量(20%以下程度)の他の成分が含まれていても良い。他のグリコール成分としては例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジメチロールヘプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリテトラメチレンオキシグリコール、ポリエチレングリコール、ダイマージオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等があげられる。
【0015】
また、本発明に使用する熱可塑性共重合ポリエステル樹脂の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法に従って行うことが出来る。
【0016】
例えば、テレフタル酸、ダイマー酸、イソフタル酸、1,4−ブタンジオールを同時に又は段階的に直接エステル化するかあるいは酸成分のジメチルエステルタイプを使用してエステル交換反応させた後、重合する方法を採用することが出来る。これらのエステル化、重合或いはエステル交換反応の際に、公知の各種触媒、安定剤、改質剤或いは添加剤などを使用しても良い。
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂及び熱可塑性共重合ポリエステル樹脂から成ることが肝要である。具体的な配合割合としては、例えば、熱成形性の面からポリカーボネート樹脂は、80重量%以下が好ましく、ボタン耐久性(耐屈折性)の面から30重量%以上が好ましい。
【0018】
また、本発明の組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で通常の添加剤、例えば酸化防止剤及び熱安定剤(例えばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、チオエーテル、ホスファイト類及びこれらの置換体及びその組合せを含む)、紫外線吸収剤(例えばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等)、結晶核剤(例えばカオリン、タルク等)、滑剤及び離型剤(例えばモンタン酸及びその塩、ステアリン酸及びその塩、ステアリルアルコール、ステアリルアミド、シリコン樹脂等)、染料(例えばニトロシン等)及び顔料(例えばカーボンブラック、硫化カドミウム、フタロシアニン等)を含む着色剤、添加剤添着液(例えばシリコンオイル等)等を1種以上添加することが出来る。
【0019】
本発明の組成物には、ポリブチレンテレフタレート樹脂を併用しても良い。この場合、配合量は熱可塑性共重合ポリエステル樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂との和に対し、ダイマー酸成分及びイソフタル酸成分が2〜20モル%になるように設定しなければならない。
【0020】
本発明の組成物にはさらに相容可能なポリマー、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー等を本発明の目的を逸脱しない範囲で配合しても良い。
【0021】
本発明の組成物の各々の成分はお互いに混ざっている必要がある。このためには、例えば、単軸または2軸の混練押出機を使用して溶融混練してペレット状の樹脂を作る方法があげられる。
【0022】
また、本発明のポリエステル系シートの製造方法は、上記ペレットをシート成形機に供し、公知の方法でシートを得る方法、ペレット状のポリカーボネート樹脂とペレット状の熱可塑性共重合ポリエステル樹脂をブレンドした後、シート成形機に供し、公知の方法でシートを得る方法がある。
【0023】
本発明の熱可塑性樹脂組成物及びポリエステル系シートの製造時のポリカーボネート樹脂と熱可塑性共重合ポリエステル樹脂を溶融混合する際に、ポリカーボネート樹脂と熱可塑性共重合ポリエステル樹脂とのエステル−カーボネート反応を抑制する添加剤を配合することが好ましい。このような添加剤としては、リン系やヒンダードフェノール系の添加剤があげられる。具体的には、モノステアリルアシッドフォスフェートやジステアリルアシッドフォスフェートがあげられる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるポリエステル系シートは、熱成形性及び耐屈折性に優れており、携帯電話等のボタンキー用のシートとして好適である。
【0025】
【実施例】
以下、実施例で説明する。尚、物性評価は以下の方法に従って実施した。
【0026】
耐屈折性評価:MIT試験機
屈折回数 2回/秒
熱成形性:金型形状 直径100mm,深さ50mmのカップ
金型温度80℃
【0027】
熱可塑性共重合ポリエステル樹脂の製造例
テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、1,4−ブタンジオール及びエステル交換触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートを所定量100Lの反応釜に仕込み、1時間当たり40℃の昇温速度で210℃まで加熱し、生成するメタノールを系外に留去し、エステル交換反応を行った。メタノール留去がほぼ完了してから、エステル化触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートをエステル交換時に仕込んだ量と同じ量及びダイマー酸を所定量添加し、1時間当たり20℃の昇温速度230℃まで加熱し、エステル化反応を行った。次に、反応生成物を重合機に移し、重合触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートをエステル交換時に仕込んだ量の2倍量を添加し、1時間かけて温度250℃、真空度60Paまでもっていき、その後3時間重縮合を行った。窒素加圧して索状樹脂を水槽に押出し、冷却固化後、ペレット化してペレット状の熱可塑性共重合ポリエステル樹脂を得た。尚、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル及びダイマー酸の組成を変えた熱可塑性共重合ポリエステル樹脂も同様の方法で得た。
【0028】
実施例1〜5、比較例1〜4
上記製造例で得られた熱可塑性共重合ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ノバレックス7030A)を表1に示す組成で配合し、この混合物100重量部に対し、更にエステル交換抑制剤としてステアリルアシッドフォスフェート(旭電化社製 アデカスタブAX−71)を0.1重量部配合し、25mm単軸押出機で溶融混合し、ペレットを得た。このペレットを用い20mm単軸押出製膜機で厚み150μmのシートを得た。得られたシートの耐屈折性及び熱成形性を評価した。その結果も表1に示した。
【0029】
【表1】
Figure 0003875582
【0030】
実施例6〜8、比較例5
上記製造例で得られた熱可塑性共重合ポリエステル樹脂及び実施例1で使用したポリカーボネート樹脂を表2に示す組成で配合し、20mm単軸押出製膜機で厚み150μmのシートを得た。同様に得られたシートの耐屈折性及び熱成形性を評価した。その結果も表2に示した。
【0031】
【表2】
Figure 0003875582
【0032】
以上より、ポリカーボネート樹脂と酸成分がテレフタル酸、イソフタル酸及びダイマー酸、ジオール成分が1,4−ブタンジオールからなる熱可塑性共重合ポリエステル樹脂とを溶融混合して得られたシートは熱成形性及び耐屈曲性に優れている。

Claims (2)

  1. ポリカーボネート樹脂と熱可塑性共重合ポリエステル樹脂を溶融混合してなり、該熱可塑性共重合ポリエステル樹脂が(a)テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体と、(b)イソフタル酸又はそのエステル形成性誘導体2〜20モル%、及び(c)ダイマー酸又はそのエステル形成性誘導体2〜20モル%を酸成分とし、1,4−ブタンジオールをグリコール成分として得られる熱可塑性共重合ポリエステル樹脂であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 請求項1項記載の熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とするポリエステル系シート。
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