JP3875381B2 - 頭部用rfコイル装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気共鳴装置による頭部撮影に好適なRFコイル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気共鳴装置では、主に被検体の大脳、小脳のイメージングあるいは脳機能イメージングを行っている。この場合、大脳や小脳のみならず下垂体や橋をも撮影できることが望ましい。図11に、このような撮影対象を模式的に示す。同図において、10は大脳、11は小脳、12は下垂体、13は橋をそれぞれ示している。
【0003】
磁気共鳴装置において用いられるRFコイルは用途に応じて種々のものがあるが、例えば二対の鞍型コイルからなるQD(Quadrature Ditection)コイルなどが知られている。
【0004】
このようなRFコイルにおいて、必要以上に視野を拡大し、感度領域を拡大することはSN比の低下をきたす。また、当然ながら、必要以上に視野を縮小することは、診断に必要となる情報が得られなくなることを意味する。
【0005】
図12及び図13は、従来例に係る頭部用RFコイルを示す概略図である。図12に示されるコイルは、その外形が円筒型であり、被検体の頭部をほぼ完全に収容可能となっている。図13に示されるコイルは、その外形がヘルメット型であり、被検体の前頭部から後頭部をカバーする。
【0006】
図12の円筒型コイルの視野内には脳以外の被検体領域が含まれており、当該コイルはこのようなイメージング対象以外の余分な領域にも感度を有している。このため当該コイルは図13のヘルメット型コイルよりもSN比が相対的に見て低い。図13のヘルメット型コイルは、脳以外の被検体領域に対する感度領域が取り除かれており、これによりSN比の向上が図られている。
そして、このような従来のRFコイル装置においては依然としてSN比と空間的感度に改良の余地がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した事情を考慮してなされたものであり、SN比及び空間的感度の向上を図った磁気共鳴装置用RFコイル装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために本発明は次のように構成されている。
(1)本発明は複数のコイルエレメントを有する頭部用RFコイル装置において、前記複数のコイルエレメントのうち、少なくとも一つのコイルエレメントは、その中心軸上の磁場方向を静磁場方向に対して直交から所定角度ずらして配置されることを特徴とする。
(2)本発明は(1)において、前記複数のコイルエレメントのうち、一つのコイルエレメントの信号を位相シフトさせ、他のコイルエレメントの信号と合成する手段を一つ以上有し、前記位相シフト手段は、合成する第1のコイルエレメントと第2のコイルエレメントの磁場感度方向の相対角に応じて前記位相シフト量を決定することを特徴とする。
(3)本発明は(1)において、前記複数のコイルエレメントのうち、一のコイルエレメントを前記ボビンの頂部に配置し、他のコイルエレメントを側面部において帯状に配置することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
本発明は複数のコイルエレメントから構成されるRFコイル装置において、これら複数のコイルエレメントのうち少なくとも一つのコイルエレメントを、その中心軸上の磁場方向が静磁場方向に対して直交から所定角度ずれるように配置することを特徴とする。ここで、コイルエレメントの中心軸とは、そのコイルエレメントが感度を有する主たる磁場方向であり、従来のRFコイル装置においては、当該中心軸が静磁場方向と直交する方向となっている。
【0010】
図1は本発明の第1実施形態に係る磁気共鳴装置用RFコイル装置の概略構成を示す図である。同図において、Pは被検体、1はRFコイル装置のボビン、及びE1,E2,E3はボビン1に配置されるコイルエレメントをそれぞれ示している。コイルエレメントは矩形コイル、8の字コイル、QDコイル若しくはその他のコイル、又はこれらの組み合わせのいずれでも良く特定のコイルに限定されない。
【0011】
本実施形態のRFコイル装置は、コイルエレメント全体から規定される中心軸A(コイル全体の中心軸)が静磁場方向(Z方向)に対して角度θだけずれるように構成されている。なお、ここでは中心軸AはRFコイル装置各々のコイルエレメントの中心軸と直交する。コイル全体の中心軸をZ方向に対してずらす場合の角度θは、イメージング対象である被検体の脳との位置関係に基づいて定める。ここでは、RFコイル装置全体の中心軸をずらす場合について述べたが、一部のコイルエレメントのみ中心軸をずらすことも可能である。
【0012】
このように構成されているため、RFコイル装置の空間的感度を向上することができ、当該RFコイル装置の視野は大脳や小脳のみならず下垂体や橋を含む被検体領域を適切にカバーできる。
【0013】
静磁場方向に対してコイルを傾けるとSN比が若干低下するが、脳との位置関係上、角度θは比較的小さな値となり、(SN比) (cosθ)なる関係からSN比の低下量はほとんど無視できる。
【0014】
以上説明した本実施形態によれば、イメージング対象を適切にカバーできる点において空間的感度を向上でき、軸をずらすことによるSN比の低下よりも、不要領域からの雑音がなくなることによるSN比の向上の方が大きくなり、その結果SN比が向上するRFコイル装置を提供できる。
【0015】
(第2実施形態)
本実施形態はRFコイルを構成するコイルエレメントの配置構造に関する。
図2は、本発明の第2実施形態に係る磁気共鳴装置のRFコイル装置の概略構成を示す図であり、同図(a)は側面図、同図(b)は頭頂部の方向から見た正面図である。
【0016】
本実施形態のRFコイル装置は、略半球形状のボビン1に配置される略矩形のコイルエレメントE1乃至E8(E2,E4,E6,E8は点線によって図示されている)を有し、また、ボビン1の頂点付近に開口部Tを有し、コイルエレメントE1乃至E8を電気的開口部Tを除くボビン1の側面に配置して成る。なお、コイルエレメントE1乃至E8は矩形コイルのみならず8の字コイルQDコイル若しくは他のコイル、又はこれらの組み合わせのいずれでも良く特定のコイルに限定されない。また、上記電気的開口部Tは、実際に穴が空いている必要はない。
【0017】
特に本実施形態は、コイルエレメントE1乃至E8の端部を略半球形状のボビン1の頂点にどれだけ近づけて配置するかについて着目したものである。具体的には、ボビン1内の所定の点Bから見た電気的開口部Tの角度θを規定するものである。なお、点Bは例えば略半球の中心又は頭頂部に内接し、頭頂部の曲率をもつ球の中心であるが、この点Bはこれらの点のみに限定されない。
【0018】
図3は、図2のA−A’方向の断面を簡略的に示す図である。
コイルエレメントE1乃至E8の端部をボビン1の頂部に対し可能な限り近づけた場合、角度θは図3(a)に示す通りとなり、電気的開口部Tの口径は小さくなり、感度領域を大きく取ることができる。しかし、このような配置とした場合、図3(b)から明らかなように、コイルエレメントが作る磁界のZ方向成分は大きくなる。このことは、Z方向に沿った磁場成分に対する感度が大きくなることを意味する。しかし、Z方向には磁気共鳴イメージングのための信号は存在しないのでコイルは雑音のみを受信することになる。このためSN比が低下してしまう。また頭頂部付近にコイルエレメントが集中し、頭頂部が必要以上に明るく撮影されるので読影上の支障となる。
【0019】
一方、コイルエレメントE1乃至E8の端部をボビン1の頂部から遠ざけた場合、角度θは図3(b)に示す通りとなり、電気的開口部Tの口径は大きくなる。このような配置とした場合、コイルが作る磁界のZ方向成分は小さくなるが、図3(d)に示す領域Rの感度が低下してしまう。
【0020】
つまり、空間的感度とSN比の両者はトレードオフの関係にある。そして本実施形態は両者を考慮して適切なコイルエレメントの配置を提供するものであり、より具体的には、点Bから開口部を見た角度θが10°乃至50°、好ましくは30°程度となるようにコイルエレメントE1乃至E8を配置する。
【0021】
図4は角度θを30°とした場合のRFコイル装置の感度分布を示すグラフである。同図(a)はコロナル断面、同図(b)はアキシャル断面の感度分布をそれぞれ示している。これらのグラフに示されるような感度分布となるコイルエレメントの配置は、均一性及びカップリング性の観点から見ても好ましい。
【0022】
以上説明したように本実施形態によれば、空間的感度とSN比の両者が適切となるようなコイルエレメントの配置構造を有するRFコイル装置を提供できる。
(第3実施形態)
本実施形態は、RFコイルを構成する各々のコイルエレメントからの信号合成に関する。
【0023】
QD技術を応用すれば受信機のチャネル数をnとするとき、2つのコイルエレメントを1組(セット)としてn組(総数2n個)のコイルエレメントを配置することができる。この場合、コイルエレメントの1組においては、両コイルエレメントから出力される信号同士を合成する。例えばチャネル数nが4の場合は、図5(a)(b)に示すように円筒型のボビン10の周囲に4組(総数8)のコイルエレメントEを配置することができる。コイルエレメントは矩形コイル、8の字コイル、QDコイル若しくはその他のコイル、又はこれらの組み合わせのいずれでも良く特定のコイルに限定されない。
【0024】
図6は本発明の第3実施形態に係るコイルエレメントの組合わせ方及び信号の合成法を示す図である。本実施形態では、コイルエレメントを間に2つ挟むように隔てられたコイルエレメント同士を一組とする。すなわち同図に示すように、E11とE12、E21とE22、E31とE32、そしてE41とE42がそれぞれ組み合わされている。
【0025】
この場合、コイルエレメントの一組において、両コイルエレメントの磁場感度方向の相対角θは90°となる。この相対角に応じて一方のコイルエレメントからの信号の位相を、位相シフタにより90°シフトさせたのち、合成器によって他方のコイルエレメントからの信号と合成する。同図において、例えばコイルエレメントE21からの信号は、位相シフタPS2によって90°の位相シフトが施され、この信号は合成器AD2によりコイルエレメントS22からの信号と合成される。
【0026】
このように、コイルエレメントの各組において、いずれかのコイルエレメントからの信号の位相を両コイルエレメントの磁場の感度方向の相対角に応じた量だけシフトさせてから信号合成を行うことにより、コイルの中心部(円筒型コイルの中心軸に沿った領域)において最適なSN比を得ることができる。
【0027】
なお、本発明は上述した例に限定されず、コイルエレメントの組合わせ方及び信号の合成法に関し、図7に示すような構成としても良い。なお、図7に示す構成例は、上記の例と同様に円筒型コイルに適用されている。同図において、(a)は隣合うコイルエレメント同士を一組とする例を示しており、この場合、両コイルエレメントの磁場感度方向の相対角θは45°であり、これに応じて一方のコイルエレメントからの信号の位相を45°シフトさせてから合成を行う。
【0028】
また同図(b)は、コイルエレメントを間に2つ挟むように隔てられたコイルエレメント同士を一組とする例であって、この場合、両コイルエレメントの磁場感度方向の相対角θは135°であり、これに応じて一方のコイルエレメントからの信号の位相を135°シフトさせてから合成を行う。また同図(c)は、コイルエレメントを間に3つ挟むように隔てられたコイルエレメント同士を一組とする例であって、この場合、両コイルエレメントの磁場感度方向の相対角θは180°であり、これに応じて一方のコイルエレメントからの信号の位相を180°シフトさせてから合成を行う。
【0029】
なお、本実施形態ではRFコイル装置の具体例として円筒型コイルを例にとって説明したが、これに限定されない。また、受信チャンネル数を4とした場合を例にとったが、これに限定されない。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によればコイルエレメントの組において適切な信号合成を行なうことにより、所定の領域(ここでは円筒型コイルの中心部)において最適なSN比を得ることができるRFコイル装置を提供できる。
【0031】
(第4実施形態)
本実施形態は、RFコイルを構成するコイルエレメントの配置構造に関する。図8(a)は、例えばチャネル数が4であるヘルメット型の従来のRFコイル装置におけるコイルエレメントの配置を示す図である。
【0032】
本実施形態は、上述した第1実施形態と同様にコイルエレメント全体から規定される中心軸(コイル全体の中心軸)が静磁場方向(Z方向)に対して所定角度だけずれるようにRFコイル装置を構成する場合において、個々のコイルエレメントをボビンに対してどのように配置するかを定めるものである。
【0033】
図9は本発明の第4実施形態に係るRFコイル装置におけるコイルエレメントの配置を示す図である。同図に示すように、側頭(面)部に3個、頭頂部に1個のコイルエレメントを配置する。側頭部においては、コイルエレメントを一本の帯状に配置する。なお、コイルエレメントは矩形コイル、8の字コイル、QDコイル若しくはその他のコイル、又はこれらの組み合わせのいずれでも良く特定のコイルに限定されない。
【0034】
図8(a)に示した従来のヘルメット型RFコイル装置におけるコイルエレメントの配置では、図8(b)に示すように、Z方向に略直交するコイルエレメントの繋ぎ目C1及びC2が生じる。この繋ぎ目C1及びC2においてはどうしてもコイルの感度が低下してしまう。
【0035】
一方、本実施形態のRFコイル装置におけるコイルエレメントの配置によれば、Z方向と交差するコイルエレメントの繋ぎ目は図9(b)に示すC3の一つのみとなり、上記ヘルメット型コイルに比べて感度低下部分を減少させることができる。
【0036】
図10は上記ヘルメット型RFコイル装置と本実施形態のRFコイル装置の側面図及び断面図である。同図(a)はヘルメット型RFコイル装置の側面図、同図(b)は同コイル装置のX1−X1’方向の断面図、同図(c)は本実施形態のRFコイル装置の側面図、同図(d)は同装置のX2−X2’方向の断面図である。同図(a)及び(c)において、ハッチングは側頭部のコイルエレメントを示している。
【0037】
ヘルメット型RFコイル装置では、側頭部を2つのコイルエレメントによってカバーしている。また、このとき、一のコイルエレメントの広がり角θ1は180°となっている。
【0038】
一方、本実施形態のRFコイル装置では、側頭部を3つのコイルエレメントによってカバーするようにこれらが配置される。このとき、一のコイルの広がり各θ2は高々120°となる。
【0039】
このような本実施形態のRFコイル装置の側頭部におけるコイルエレメントの配置によると、上記ヘルメット型RFコイル装置に比較して多数のコイルエレメントによって撮影領域がカバーされることになり、一のコイルエレメントは小さくて済む。これにより相対的にSN比を向上できる。
【0040】
以上説明したように本実施形態によれば、第1実施形態と同様にイメージング対象を適切にカバーできる点において空間的感度を向上できる上、ヘルメット型RFコイル装置に比べて感度低下を抑えることができるとともにSN比を向上できるRFコイル装置を提供できる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず種々変形して実施可能である。例えば上述した第1乃至第4実施形態は幾つかを適宜組み合わせて実施可能である。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、SN比及び空間的感度の向上を図った磁気共鳴装置用RFコイル装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る磁気共鳴装置用RFコイル装置の概略構成を示す図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る磁気共鳴装置用RFコイル装置の概略構成を示す図であり、同図(a)は側面図、同図(b)は頭頂部の方向から見た正面図。
【図3】図2のA−A’方向の断面を簡略的に示す図。
【図4】角度θを30°とした場合のRFコイル装置の感度分布を示すグラフ。
【図5】円筒形コイルにおけるコイルエレメントの配置を示す図。
【図6】本発明の第3実施形態に係るコイルエレメントの組合わせ方及び信号の合成法を示す図。
【図7】上記実施形態に係る第3実施形態に係るコイルエレメントの組合わせ方及び信号の合成法の他の例を示す図。
【図8】例えばチャネル数が4であるヘルメット型の従来のRFコイル装置におけるコイルエレメントの配置を示す図。
【図9】本発明の第4実施形態に係るRFコイル装置におけるコイルエレメントの配置を示す図。
【図10】従来のヘルメット型RFコイル装置と第4実施形態のRFコイル装置の側面図及び断面図。
【図11】従来例に係る撮影対象を模式的に示す図。
【図12】従来例に係る頭部用円筒型コイルを示す概略図。
【図13】従来例に係る頭部用ヘルメット型コイルを示す概略図。
【符号の説明】
1…ボビン
E1〜E3…コイルエレメント
P…被検体
A…コイル全体の中心軸
Z…静磁場方向
Claims (3)
- 複数のコイルエレメントを有する頭部用RFコイル装置において、
前記複数のコイルエレメントのうち、少なくとも一つのコイルエレメントは、その中心軸上の磁場方向を静磁場方向に対して直交から所定角度ずらして配置されることを特徴とする頭部用RFコイル装置。 - 前記複数のコイルエレメントのうち、一つのコイルエレメントの信号を位相シフトさせ、他のコイルエレメントの信号と合成する手段を一つ以上有し、前記位相シフト手段は、合成する第1のコイルエレメントと第2のコイルエレメントの磁場感度方向の相対角に応じて前記位相シフト量を決定することを特徴とする請求項1に記載の頭部用RFコイル装置。
- 前記複数のコイルエレメントのうち、一のコイルエレメントを前記ボビンの頂部に配置し、他のコイルエレメントを側面部において帯状に配置することを特徴とする請求項1に記載の頭部用RFコイル装置。
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