JP3875333B2 - 無線受信機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無線受信機に関し、例えば、音声信号を符号化して送受信するデジタル移動電話装置に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一種の無線電話であるデジタル移動電話装置は、音声信号を符号化して送受信する時分割多重方式により1つのチャネルを複数の端末が同時に使用できるように設計されている。
即ち、この種の端末は、スイッチが入れられると、例えば124個の所定数のチャネルの受信周波数を順次走査し、所定の周期(大抵、10又は11フレームである。)でチャネル内に挿入されているFCCH(周波数修正チャネル)を電/磁界の強い方から順に探索し、該FCCHを含むチャネルを制御チャネルとして認識する。
それから直ぐ、端末は、自分が属する地域に割当てられた制御チャネルを検出して受信する。
【0003】
制御チャネルは、各種の情報を送信するためのタイムスロットを形成し、それにより、デジタル移動電話装置において、各端末が制御チャネルを受信して、制御チャネルを送っている基地局に関する情報、隣接する基地局に関する情報、及び端末を呼出すための情報などの情報を受取るように設計されている。
【0004】
この目的のために、端末は、このFCCHに基いて処理タイミングを修正する。
ここに、FCCHは、復号されると「0」値のデータが所定ビット数の間にわたって継続するビットパターンで与えられている同期信号である。デジタル移動電話装置では、そのビットパターンを差分符号化したあとGMSK(Gaussian filtered minimum shift keying)変調してから送信している。
【0005】
即ち、デジタル移動電話は、このFCCHを検出し、その検出結果に基いて動作全体を大まかに同期させている(即ち、フレーム同期)。
この種の端末は、フレーム同期が終わると、FCCHに基いて基地局に対する自己の内部クロックの周波数ずれを補正し、それから所定の基準信号に基いて動作全体を正確に同期させている。
【0006】
こうして制御チャネルを受信する態勢が整うと、端末は、自分に割当てられたタイムスロットを受信することにより、基地局から送られる制御データを受取り、必要に応じて送受信周波数を制御チャネルから通話チャネルに切替える。
そして、端末は、この通話チャネルを用いて被呼局から又は被呼局へ音声信号を送受信する。
【0007】
今のところ、デジタル移動電話装置は、送信すべきデータに誤り訂正コードを付加し、該データを差分符号化及びGMSK変調してから送出するように設計され、これによって安定した通信が保証されている。
この種の端末は、自動車などに使用されることがあり、そんな場合、端末は基地局に対して高速で移動することになる。
【0008】
この場合、端末局と基地局との間の相対的移動速度を「v」とし、デジタル移動電話の送信搬送周波数を「λ」とすると、送受信信号は、次式で表される如く周波数fdpだけドップラー偏移される。
Figure 0003875333
【0009】
図1に示す如く、車内に端末をもつ移動局が基地局に対してαの角度で動いているとすれば、(1)式は次のように表される。
Figure 0003875333
【0010】
この場合、搬送周波数がデジタル移動電話では約950MHzに選択されるので、端末が基地局に対して毎時250kmで動くとき、これらの値を(2)式に入れると、受信信号は最大220Hzだけ周波数がドップラー偏移されることが分かる。
【0011】
かようなドップラー周波数偏移が搬送周波数のずれとして端末に現れると、デジタル復調時の復号効率の低下や端末全部に対するビット誤り率の悪化を生じる。
【0012】
かかる場合、上述したFCCHに基いてドップラー偏移された搬送周波数を修正することが考えられる。しかし、ドップラー偏移の量は端末の移動速度に応じて変わるので、制御チャネルに間欠的に挿入されているFCCHに基いても、偏移量の変化に対して適切にドップラー偏移を修正することはできないであろう。
【0013】
特に、端末が上記のように動いているとき、その上フェージングが起きることが多い。かような場合、受信信号のレベルと位相が同時に変化するので、ドップラー偏移の修正は困難となる。
【0014】
他方、受信したデータを所定メモリ手段に記憶させ、その記憶データに基いて周波数偏移量を推定し、その推定結果で周波数偏移を修正する方法が提案された(The Transactinons of IECE Japan, B-11, Vol. J73-8-11, No. 11, pp.736−744, 1990 年11月)。この方法は、全体の構成を複雑にするので、基地局には適用できても、端末には適用が難しいという問題がある。
【0015】
この理由により、デジタル移動電話装置では、搬送周波数の偏差が0.1ppm(搬送周波数が950MHzの場合、95Hzの周波数に相当する。)以下であることが指定されている。周波数が上述の如く220Hzも大きくドップラー偏移すれば、ビット誤り率が悪くなるのみならず、基地局との同期を達成することも難しくなる。
【0016】
また、デジタル移動電話装置は、外部雑音が小さい時にドップラー周波数偏移の影響が顕著になるという特性をもっており、そのため、電/磁界の強さは十分であるのに受信状態が悪いという奇妙な事態が発生する。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上述した点に鑑み、本発明は、簡単な構成でドップラー周波数偏移を修正することができる無線受信機を提供しようとするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の上述した課題及び他の課題は、次の如き構成の無線受信機を提供することによって解決された。
その無線受信機は、アンテナ(2)を介して入力される所定の受信信号を受信し、無線送信されるデータ(y)を復号する無線受信機(1)であって、
上記受信信号を検波して基本帯域信号を発生する検波手段(15)と、
上記基本帯域信号を所定周期でサンプリングし、連続する受信データ(I,Q)を該サンプリング周期で順次出力するアナログ・デジタル変換回路(16)と、
上記受信データ(I,Q)を順次入力し、最も大きい公算を推定することによって上記送信データ(y)を復号する最大公算推定回路(25)と、
上記送信データ(y)に対応する上記受信データ(I,Q)を推定して推定信号(EXn )を発生し、且つ、該推定信号(EXn )又は上記受信データ(I,Q)から所定量だけ移相された受信推定信号を発生する推定信号発生回路(41,43,44,45,47)と、
上記受信推定信号と上記受信データ(I,Q)との間、又は上記推定信号(EXn )と上記受信推定信号との間の分岐距離BM+,BM,及びBM−を検出し、上記受信推定信号の位相シフト0,+Δ,又は−Δに対応して、上記受信データ(I,Q)が上記推定信号(EXn )と同相のときは第1の分岐距離BMを、上記推定信号(EXn )が上記受信データ(I,Q)に対し進んだ位相にあるときは第2の分岐距離BM+を、また、上記推定信号(EXn )が上記受信データ(I,Q)に対し遅れた位相にあるときは第3の分岐距離BM−を検出する分岐距離検出回路(42)と、
上記第1ないし第3の分岐距離BM+,BM,及びBM−の比較結果に基いて、上記受信データ(I,Q)の上記推定信号(EXn )からの位相差を検出し、この検出された位相差に基いて上記受信データ(I,Q)の位相差を修正する位相修正回路(26,43,44,47)とを具えるものである。
【0019】
第2の発明では、上記推定信号発生回路(41,43,44,45,47)は上記受信データ(I,Q)のサンプル毎に上記推定信号(EXn )を発生し、上記分岐距離検出回路(42)は、上記受信データ(I,Q)のサンプル毎に上記第1ないし第3分岐距離BM+,BM,及びBM−を検出し、上記位相修正回路(26,43,44,47)は、上記受信データ(I,Q)のサンプル毎に上記受信データ(I,Q)の位相差を修正している。
【0020】
また、第3の発明では、上記分岐距離検出回路(42,51)は、各受信データ(I,Q)の上記第1ないし第3分岐距離BM+,BM,及びBM−を上記受信データ(I,Q)の所定サンプル数だけ累積し、上記位相修正回路(26,43,44,47)は、上記累積された第1ないし第3分岐距離に基き上記受信データ(I,Q)の上記推定信号(EXn )からの位相差を検出して、上記第1ないし第3分岐距離BM+,BM,及びBM−の比較結果に基いて上記受信データ(I,Q)の上記推定信号(EXn )の位相差を検出している。
【0021】
また、第4の発明では、上記最大公算推定回路(25)は、ビタビ等化器(Viterbi equalizer)を含んでいる。
更に、第5の発明では、上記推定信号発生回路(41,43,44,45,47)は、ビタビ等化器(25)によって検出された最も確率が高い経路に対応する上記受信データ(I,Q)を推定することにより、上記推定信号(EXn )を発生している。
【0022】
位相偏差は、次のように構成された最大公算推定回路(25)による推定結果を利用することにより、容易に検出することができる。その最大公算推定回路(25)は、最大公算順序推定される上記送信データ(y)に対応して上記受信データ(I,Q)を推定することにより、上記推定信号(EXn )を発生し、上記受信データ(I,Q)が上記推定信号(EXn )と同相のときは第1分岐距離BMを、上記推定信号(EXn )の位相が上記受信データ(I,Q)に対して進んでいるときは第2分岐距離BM+を、また、上記推定信号(EXn )の位相が上記受信データ(I,Q)に対して遅れているときは第3分岐距離BM−を検出し、上記第1ないし第3分岐距離BM+,BM,及びBM−の比較結果に基いて上記受信データ(I,Q)の上記推定信号(EXn )からの位相差を検出するよう構成されたものである。
【0023】
こうすれば、受信データI及びQのサンプル毎に推定信号EXn を発生し、第1ないし第3の分岐距離BM+,BM,及びBM−を検出して、受信データI及びQの位相差を修正することにより、ドップラー周波数偏移を修正することが可能である。また、第1ないし第3分岐距離の累積(加算)に基いて受信データI及びQの位相差を検出することにより、ノイズの影響を有効に避けながらドップラー周波数偏移を修正することも可能である。
【0024】
また、最大公算推定回路(25)としてビタビ等化器を使用すれば、ドップラー周波数偏移を容易に修正することができる。この場合、ビタビ等化器(25)によって検出される最も確率が高い経路に対応するように受信データI及びQを推定して推定信号を発生すれば、ビタビ等化器(25)を有効に利用してドップラー周波数偏移を修正することができる。
【0025】
本発明によれば、このように最大公算推定された送信データに対応する受信データの推定信号を発生し、推定データが、受信データに対して夫々同相であるとき又は進んだ位相にあるとき又は遅れた位相にあるときの分岐距離を検出し、この位相差検出の結果に基いて位相差を修正することにより、ドップラー周波数偏移を容易に修正しうる無線受信機を得ることができる。
【0026】
本発明の特質、原理及び有用性は、次の詳細な説明を添付図面と一緒に読めば、一層明らかとなるであろう。なお、図面において、対応する部分には類似の符号を付してある。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施態様を説明する。
(1)第1の実施態様
(1−1)この実施態様の一般的構成
図2は、本発明の第1の実施態様によるデジタル移動電話の端末を示すブロック図である。図2において、1で全体的に示したデジタル移動電話装置の端末は、基地局から送出される送信信号をアンテナ2で受信し、この受信信号をアンテナ接続デバイス(図示せず)を介して増幅回路3に出力する。
【0028】
この場合、増幅回路3は、所定の利得で受信信号を増幅してRF処理回路(RFプロセッサ)4に出力する。RF処理回路4は、所定の局部発振信号を用いて受信信号を周波数変換し、端末1は、局部発振信号の周波数を切替えることにより所望のチャネルを選択的に受信するように構成される。
【0029】
RF処理回路4はまた、周波数変換された受信信号を直交検波して、受信信号の基準位相と同期しているI信号を復調すると共に、Q信号を復調する。RF処理回路は、自己内蔵のアナログ・デジタル変換回路において、これらのI及びQ信号を所定の周期でサンプリングしてデジタル値に変換する。
【0030】
こうして、端末1は、受信信号の基準位相と対応する復調結果であるIデータと、Qデータとを復調し、これらのI及びQデータをデータ処理回路5に供給する。
【0031】
データ処理回路5は、I及びQデータを処理するデジタル・プロセッサより成り、I及びQデータから元の差分符号化データを復調するように設計されている。その際、データ処理回路は、内蔵されたビタビ等化器による波形等化及び歪み補正のあと差分符号化データを出力し、フェージング及び多重経路(マルチパス)の影響を軽減するようにしている。
【0032】
その際、データ処理回路5はまた、I及びQデータを参照してFCCHを検出し、その検出結果に基いて周波数誤差を検出する。この検出結果を、データ処理回路5及び所定基準信号発生回路などの動作を制御するための基準として使用し、それによって基地局とのフレーム同期を達成し、基地局に対する内部クロックの周波数ずれを補正する。
【0033】
この処理の外に、データ処理回路5は、差分符号化データを差分復号し、それから誤差の補正処理をし、復号したデータを音声処理回路6又は中央処理ユニット(CPU)8に選択的に供給する。
【0034】
ここで、音声処理回路6は、復号データを音声伸長することにより音声データを復号し、内蔵されたデジタル・アナログ変換回路によって音声データを音声信号に変換する。音声処理回路6はまた、音声信号でスピーカ7を駆動し、これにより、端末1は基地局から送出される起呼者の音声信号を受信することができる。
【0035】
他方、中央処理ユニット8は、復号されたデータに基いて基地局から送出される所定の情報を受信し、その受信結果に基いて局部発振信号の周波数を切替えるように設計されており、それによって送受信周波数が所定の通話チャネルに切替えられ、また、端末1が所定の通話チャネルを選択することにより音声信号を送受信することができる。
【0036】
一方、端末1の送信系は、マイクロホン9から出力される音声信号を音声処理回路6で音声データに変換して音声圧縮を行う。
【0037】
データ処理回路5は、音声処理回路6の出力データに誤り訂正コードを加えて差分符号化を行うのみならず、音声処理回路6からの出力の代わりに中央処理ユニット8から出力される各種の制御コードに誤り訂正コードを加えて差分符号化することも行う。
【0038】
RF処理回路4は、データ処理回路5から出力される差分符号化データをGMSK変調して送信信号を発生し、該送信信号を所定の周波数に周波数変換する。RF処理回路4は更に、周波数変換した送信信号を増幅回路10を介してアンテナ2に出力し、それによって、端末1は、起呼者の音声信号又は起呼信号を基地局に送信することができる。
【0039】
このとき、端末1は、データ処理回路5によって検出された所定の検出結果に基いて、送受信のタイミングを切替える。よって、端末1は、時分割多重方式を適用することにより、基地局から複数の端末1に送信される信号から、自分に割当てられたタイムスロットを選択して受信し、割当てられたタイムスロットを選択的に使用して音声データなどを基地局に送信することができる。
【0040】
この目的のために、中央処理ユニット8は、ランダムアクセスメモリ(RAM)13の作業領域を確保しながら、リードオンリメモリ(ROM)11に記憶された処理プログラムを実行し、必要に応じて各回路ブロックに制御コードを出力することにより、装置全体の動作を制御する。例えば、表示/キー入力部12の所定の操作子を押すと、この操作に応答して起呼信号が基地局に送出され、また、起呼信号が基地局から入ってくると、受信チャネルなどが切替えられる。
【0041】
(1−2)入力データの処理
ここで、端末1は、基地局から送信される信号を図3に示す如き受信系で受信する。
即ち、端末1のRF処理回路4は、セレクタ回路(RF)、中間周波回路(IF)及び検波回路(DET)(これら全体を符号15で示す。)並びにアナログ・デジタル変換回路16より成り、アナログ・デジタル変換回路16は、I及びQデータを発生する。
【0042】
一方、データ処理回路5は、内蔵された復調器(DEMOD)及びデジタル信号プロセッサ(DSP)(これらを符号17で示す。)で、I及びQデータを元のデータストリームに復号する。
【0043】
その際、デジタル信号プロセッサは、I及びQデータに基いてFCCHを検出し、受信信号の等化及び復号されたデータストリームに対する誤り訂正を行う。
【0044】
他方、音声処理回路6は、音声データを処理するデジタル信号プロセッサ(VOICE DSP)より成り、データ処理回路5からの出力データをデータ伸長し、音声圧縮された送信データを音声伸長し、元のデータストリームに変換する。該データストリームは、アナログ信号に変換されてスピーカ7を駆動する。
【0045】
(1−3)等化器
このように受信されたデータを処理するとき、データ処理回路5は、内蔵されたビタビ等化器(Viterbi equalizer)においてビタビ・アルゴリズムを適用することにより、I及びQデータを差分符号化されたデータyに変換する。
即ち、図4に示す如く、等化器25は、移相器26を介してI及びQデータを分岐距離(BM)計算回路31に入力し、そこで、I及びQデータから分岐距離BM(branch metric)を発生する(後述参照)。
【0046】
ACS(加算・比較・選択)計算回路32は、各経路に対する分岐距離を累積して状態距離(state metric)を発生し、この状態距離の比較結果に基いて差分符号化データyの経路(a path)を選択する。
【0047】
この場合、ビタビ等化器25は、差分符号化データyの状態(経路)を32個の状態に設定し、その送信経路を送信経路推定器36で推定し、受信信号推定回路37で各状態に対応するI及びQデータの推定信号を発生する。
【0048】
これにより、分岐距離計算回路31は、各推定信号En (EIn ,EQn )とそれに対応するI及びQデータ(In ,Qn )との間を結ぶ次式を計算して、各状態に対する分岐距離BMを検出する。
BM=(In −EIn )2+(Qn −EQn )2 ‥‥‥ (3)
【0049】
一方、ACS計算回路32は、状態距離メモリ33に記憶された現在状態から32の状態に対応して分岐距離BMを累積加算し、現在状態から32の状態への各経路に対する分岐距離BMを累積することにより、状態距離を発生する。
【0050】
ACS計算回路32はまた、こうして発生した各状態距離について値が小さい方の状態距離を選択する。
こうして、ACS計算回路32は、検出した経路にあとの状態を合せ、検出した状態距離をまた状態距離メモリ33に記憶させる。
【0051】
こうして、ビタビ等化器25は、この処理手順を繰返すことにより、順次入力されるI及びQデータに対する最も確率が高い経路を順次選択し、選択した経路を、この適切な経路に対する状態距離と一緒に経路メモリ34に記憶させる。
【0052】
等化器25はまた、経路メモリ34に記憶された経路選択の結果に基いて、最大公算決定回路35で差分符号化データyの信頼性及びぼんやりした(soft)決定レベルを設定し、それにより、最大公算順次推定のアルゴリズムを適用して信号が復調される。
【0053】
処理手順の中で、データ処理回路5は、ドップラー修正回路40を用いてドップラー周波数偏移を推定し、その推定結果に基いて次の入力I及びQデータの位相を修正することにより、ドップラー周波数偏移を修正する。
【0054】
即ち、図5に示す如く、ドップラー修正回路40は、ビタビ等化器25によって検出された状態情報ST(即ち、経路選択の結果から導出される状態を表す。)を受信信号推定回路41に入力し、そこで、この状態に対応するI及びQデータの推定信号が発生される。
【0055】
分岐距離計算回路42は、この推定信号とIQデータとの間でI及びQデータが正側又は負側に移相している場合に、夫々分岐距離BM+及びBM−を発生し、ビタビ等化器25により検出された分岐距離BM及びこの分岐距離BM+又はBM−を次のセレクタ回路43に出力する。
【0056】
即ち、ドップラー修正回路40は、ビタビ等化器25によって最大可能性が推定された状態から更に位相が変化している場合に分岐距離BM+及びB−を、位相が変化していない場合には分岐距離BMを検出するように設計される。
【0057】
この場合、セレクタ回路43は、接点を順次切替えることにより、予め定めた位相データ+Δ,0,及び−Δを選択して出力する。加算回路44は、この位相データθを前回の位相誤差φに加算して、位相誤差φを作る。
【0058】
乗算回路45は、この位相誤差φとI及びQデータとの間で乗算を行い、次式で表される計算を実行する。
Figure 0003875333
こうして、乗算回路45は、前回の位相誤差φだけI,Qデータが位相変化した第1のI,Qデータ、In 及びQn と、In 及びQn から進む側に位相差Δだけ第1のI,Qデータが変位した第2のI,Qデータ、In 及びQn と、In 及びQn から遅れる側に位相差Δだけ第1のI,Qデータ、In 及びQn が変位した第3のI,Qデータ、In 及びQn とを発生する。
【0059】
分岐距離計算回路42は、第2及び第3のI,Qデータ、In 及びQn と受信信号推定回路41から出力される推定信号との間で(3)式を計算することにより(この場合、推定信号はEIn 及びEQn に対応する。)、I及びQデータが進む側及び遅れる側に夫々移相される場合に、分岐距離BM+及びBM−を発生する。
【0060】
更に、この場合、分岐距離計算回路42は、ビタビ等化器によって検出された分岐距離BMを利用し、位相がシフトされないときの分岐距離BMとしてこの分岐距離をセレクタ回路43に出力する。こうすれば、全体の計算が簡単になる。
【0061】
セレクタ回路43は、3つの分岐距離BM+,BM,及びBM−から値の最も小さいものを選び、その選んだ分岐距離に対応する位相データθを選択的に出力する。
【0062】
即ち、推定信号とI及びQデータとの間の距離が短いとき、分岐距離の値はそれだけ小さくなるので、そのI及びQデータはそれだけ確率が高くなる。
つまり、+Δ,0,及び−Δだけ移相されたI,Qデータと推定信号とで得られる分岐距離のうち、移相後推定信号に対し最小距離をもつI及びQデータに対応する分岐距離が、最小の値をもつことになる。
【0063】
よって、最小値をもつ分岐距離に対応する位相差だけI及びQデータを位相回転すれば、上記の位相差を修正することができる。
したがって、この処理を連続するI及びQデータに順次繰返すことにより、連続的に変化する位相差を容易に修正でき、それにより、ドップラー偏移も修正できることが認められる。
【0064】
また、ドップラー周波数偏移の外に、例えば内部クロックに基地局に対する周波数偏差があっても、これを容易に修正できることが認められる。
【0065】
即ち、加算回路44は、セレクタ回路43から選択的に出力される位相データθを位相差φに加算して移相器26に出力し、移相器26は、この位相データθを用いて次のI及びQデータXn+1 に対し(4)式の計算を行い、その位相差を修正する。
【0066】
こうして、データ処理回路5は、ビタビ等化器で次のI,QデータXn+1 に対し最大公算順序推定を行って、状態及び分岐距離を検出する。ドップラー修正回路40は、この検出結果に基いてI及びQデータXn+1 の位相差φを検出する。この位相差は、これら一連の処理を繰返して順次修正を行うことにより、ビット毎に検出される。
【0067】
この実施態様では、移相器26は、FCCHに基いて周波数誤差を修正するのにも使えるように設計される。こうして、データ処理回路は、この移相器26を共用することにより、装置全体を簡略化するよう設計される。
【0068】
遅延回路(D)47は、移相器26へ供給される位相データθを1サンプリング周期だけ遅らせ、それを加算回路44に出力し、これにより、前回の位相差φを次のI及びQデータの位相データθに加算する。
【0069】
このようにして、端末1は、ビタビ等化器25の処理結果を有効に利用することにより、ドップラー周波数偏移を容易に修正するので、簡単な構成でドップラー周波数偏移を修正でき、それだけ電力消費の増加が有効に回避される。また、ビット誤り率が改善されるので、次の復号処理において復号が能率よく行われる。
【0070】
実際に、図6に示す如く、シミュレーションによりビット誤り率BERがよくなることが判明した。
端末1が郊外において250km/hの速度で移動した場合のフェージングのシュミレーションにより、ノイズが少なかった場合、即ちEb/NOが大きかった場合に、能率が著しく改善されることが認められた。
【0071】
(1−4)この実施態様の利点
上述の構成によれば、ビタビ等化器の検出結果に基いて位相差の分岐距離を検出し、その検出結果に基いて位相差を修正し、すべてのI及びQデータに対して該処理手順を繰返すことにより、ドップラー周波数偏移を修正することができる。
【0072】
(2)第2の実施態様
この実施態様では、ドップラー周波数偏移は、図7に示すドップラー修正回路50によって修正される。
即ち、ドップラー修正回路50では、分岐距離計算回路42とセレクタ回路43との間に平均回路51が挿入される。平均回路51は、各分岐距離BM+,BM,及びBM−を所定サンプル数の間加算する。
【0073】
こうして、平均回路51は、この加算結果をセレクタ回路43に供給し、セレクタ回路は、最小値をもつ加算結果を選択し、対応する位相データ+Δ,0,又は−Δを選択的に出力する。
即ち、ドップラー修正回路50は、分岐距離BM+,BM,及びBM−を平均化して位相差を検出するので、ノイズなどの影響を有効に避けながら、ドップラー周波数偏移を確実に修正することができる。また、処理の全体量を平均化の量だけ減らすことができる。
【0074】
図7に示す構成によれば、位相に偏差があるとき、分岐距離を平均した結果に基き位相差を修正するようにしても、第1実施態様により得られた効果と類似の効果を得ることができる。また、ノイズなどの影響を有効に避けながら、ドップラー周波数偏移を確実に修正することができる。
【0075】
(3)第3の実施態様
この実施態様では、ドップラー周波数偏移は、データ処理回路5に組込んだデジタル信号プロセッサで図8に示す処理手順を繰返すことによって修正する。
この場合、デジタル信号プロセッサはまず、この修正に必要な変数を設定してから処理手順を開始する。
【0076】
即ち、デジタル信号プロセッサは、ステップSP1からステップSP2に入り、位相データ+Δ,0,−Δを夫々の前回の位相誤差φに加算して、3つの異なる位相誤差φを作る。
それから、デジタル信号プロセッサは、ステップSP3に進んでビタビ等化器により決定される状態を検出した後、次のステップSP4でこの状態及び3つの位相誤差φから推定信号En を発生する。
【0077】
そして、次のステップSP6で、デジタル信号プロセッサは、推定信号En のすべてに対する分岐距離BM+,BM,及びBM−を発生し、次のステップSP7で、最小値をもつ分岐距離を検出する。
デジタル信号プロセッサは、検出された分岐距離から対応する位相差を検出し、次のステップSP8で、この位相差をもつI及びQデータXn+1 を修正し、ステップSP9に進んで処理手順を終了する。
【0078】
図8に示す処理手順を、必要に応じて、ビタビ等化器による処理に対しサブルーチン・プログラムを用いて実行し、デジタル信号プロセッサが簡単なプログラムでドップラー周波数偏移を修正できるようにしてもよい。
【0079】
図8に示す構成によれば、位相にずれがあるとき、分岐距離を計算で得て位相差を修正するようにしても、第1実施態様によって得られる効果と類似の効果を得ることができる。
【0080】
(4)他の実施態様
上述した実施態様は、ビタビ等化器を応用して最大公算を推定する場合について述べたものであるが、本発明は、かかる場合に限定されるものではなく、種々の最大公算推定アルゴリズムを適用して波形を等化する場合にも、広く適用できるものである。
【0081】
また、上述の実施態様は、等化器25の出力データを更に差分符号化して復号を行う場合について述べたものであるが、本発明は、かような場合に限られるものではなく、上記の出力データを直接出力する場合にも、広く適用できるものである。
【0082】
更に、上述の実施態様は、乗算回路45でI及びQデータを位相シフトすることにより、分岐距離を検出する場合について述べたが、本発明は、かかる場合に限定されるものではなく、I及びQデータの代わりに推定信号EXn を移相することにより、分岐距離を検出してもよい。
【0083】
また、上述の実施態様は、(4)式を計算して分岐距離を求める場合について述べたが、本発明は、かような場合に限られるものではなく、(4)式の代わりに次式を計算することにより、分岐距離BMを求めてもよい。
BM=|In −EIn |+|Qn −EQn | ‥‥‥ (5)
【0084】
かような構成にすれば、(4)式により自乗の和を求める場合に比し容易に分岐距離を求めうるので、処理全体を簡略化することができる。
【0085】
更に、上述の実施態様は、ドップラー修正処理をビット毎に実行する場合について述べたが、本発明は、これに限定されることなく、数ビットの間隔でドップラー修正を実行してもよい。これに関連して、このように数ビットの間隔でドップラー修正を実行する場合、本発明は、期間内のΔθを合算することにより平均してもよい。それにより、上述の実施態様と同じ効果を実現することができる。
【0086】
上述の実施態様はまた、差分符号化データyの状態を32個の状態に設定した場合について述べたが、本発明は、かかる場合に限ることなく、必要に応じ、上記状態を種々の値に設定して復調を行う場合にも、広く適用できるものである。
【0087】
上述の実施態様は更に、位相差がない場合、位相が進む方にずれている場合、及び位相が遅れる方にずれている場合に対して分岐距離を検出する場合について述べたが、本発明は、かような場合に限定されるものではなく、必要に応じ、更に移相量を細かく分けて分岐距離を検出してもよい。
【0088】
上述の実施態様はまた、本発明をデジタル移動電話装置の端末に実施した場合について述べたが、本発明は、差分符号化されたデータを送信する無線装置、記録/再生装置より成る送信路を用いて所望のデータを復号する再生装置などに広く適用できるものである。
【0089】
以上、本発明の好適な実施態様を説明したが、当業者には、本発明の特許請求の範囲内においてこれらに種々の変更及び変形を施しうることは明らかであろう。
【0090】
【発明の効果】
本発明の効果については、これまで既に繰返し述べてきたので、重複記載を省略する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ドップラー周波数偏移についての説明図である。
【図2】本発明の第1の実施態様によるデジタル移動電話の端末を示すブロック図である。
【図3】図2の端末の受信系を示すブロック図である。
【図4】図2の端末のデータ処理部を示すブロック図である。
【図5】図4のデータ処理部のドップラー修正回路を示すブロック図である。
【図6】シミュレーションの結果を示す特性曲線図である。
【図7】本発明の第2の実施態様におけるドップラー修正回路を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施態様におけるドップラー修正回路の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
特許請求の範囲において、本発明の構成要素のあとに、これと対応する図面に用いた符号を括弧内に記載して示したので、重複説明を省略する。

Claims (5)

  1. アンテナ(2)を介して入力される所定の受信信号を受信し、無線送信されたデータ(y)を復号する無線受信機(1)であって、
    上記受信信号を検波して基本帯域信号を発生する検波手段(15)と、
    上記基本帯域信号を所定周期でサンプリングし、連続した受信データ(I,Q)を該サンプリング周期で順次出力するアナログ・デジタル変換回路(16)と、
    上記受信データ(I,Q)を順次入力し、最も公算が大きいと推定することによって上記送信データ(y)を復号する最大公算推定回路(25)と、
    上記送信データ(y)に対応する上記受信データ(I,Q)を推定して推定信号(EXn )を発生し、且つ、該推定信号(EXn )又は上記受信データ(I,Q)から所定量だけ移相された受信推定信号を発生する推定信号発生回路(41,43,44,45,47)と、
    上記受信推定信号と上記受信データ(I,Q)との間、又は上記推定信号(EXn )と上記受信推定信号との間の分岐距離BM+,BM,及びBM−を検出し、上記受信推定信号の位相シフトに対応して、上記受信データ(I,Q)が上記推定信号(EXn )と同相のときは第1の分岐距離BMを、上記推定信号(EXn )が上記受信データ(I,Q)に対し進んだ位相にあるときは第2の分岐距離BM+を、また、上記推定信号(EXn )が上記受信データ(I,Q)に対して遅れた位相にあるときは第3の分岐距離BM−を検出する分岐距離検出回路(42)と、
    上記第1ないし第3の分岐距離BM+,BM,及びBM−の比較結果に基いて、上記受信データ(I,Q)の上記推定信号(EXn )からの位相差を検出し、この検出された位相差に基いて上記受信データ(I,Q)の位相差を修正する位相修正回路(26,43,44,47)と
    を具えた無線受信機。
  2. 上記推定信号発生回路(41,43,44,45,47)は、上記受信データ(I,Q)のサンプル毎に上記推定信号(EXn )を発生し、
    上記分岐距離検出回路(42)は、上記受信データ(I,Q)のサンプル毎に上記第1ないし第3の分岐距離BM+,BM,及びBM−を検出し、
    上記位相修正回路(26,43,44,47)は、上記受信データ(I,Q)のサンプル毎に上記受信データ(I,Q)の位相差を修正する、請求項1の無線受信機。
  3. 上記分岐距離検出回路(42,51)は、各上記受信データ(I,Q)の上記第1ないし第3分岐距離BM+,BM,及びBM−を上記受信データ(I,Q)の所定サンプル数だけ累積し、
    上記位相修正回路(26,43,44,47)は、上記累積された第1ないし第3分岐距離に基づき上記受信データ(I,Q)の上記推定信号(EXn )からの位相差を検出して、上記第1ないし第3分岐距離BM+,BM,及びBM−の比較結果に基いて上記受信データ(I,Q)の上記推定信号(EXn )からの位相差を検出する、請求項1の無線受信機。
  4. 上記最大公算推定回路(25)は、ビタビ等化器を含む請求項1の無線受信機。
  5. 上記推定信号発生回路(41,43,44,45,47)は、上記ビタビ等化器(25)によって検出された最も確率が高い経路に対応する上記受信データ(I,Q)を推定することにより、上記推定信号(EXn )を発生する請求項4の無線受信機。
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