JP3874713B2 - コンクリート型枠 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート型枠に関する。さらに詳しくは、本発明は、コンクリートとの剥離性がよく、さらに、熱影響を受けやすい作業現場での保管、あるいはコンクリート打設時の発熱水和反応に対する温度変化などに伴う型枠の膨張・収縮による寸法変化を極力抑えることを可能としたコンクリート型枠に関する。
【0002】
【従来の技術と解決すべき課題】
発泡剤を含んだ発泡性スチレン系樹脂粒子を、蒸気等により軟化点以上に加熱すると、独立気泡を有する粒子状の予備発泡粒子が得られる。この予備発泡粒子を小さな孔やスリットをもつ閉鎖型金型の中に充填してから更に蒸気等で内部を加熱する型内成形によって、これらの予備発泡粒子が膨張し粒子間の隙間を埋めながら互いに融着して目的の発泡成形体となる。このようにして得られたポリスチレン系発泡成形体は、比較的安価・軽量で良好な緩衝性、断熱性、形状の自由性、耐水性等の特性に優れるため、建築・土木用断熱材として多く用いられる。
【0003】
また、従来から各種土木・治水工事の擁壁等に代表されるように、耐久性、材料費あるいは施工コスト等の面から、コンクリートによる施工がなされる場合が多い。その際の型枠として、従来、木製パネルが多用されているが、コンクリートの水分や温度、さらにはコンクリート自体の付着などによる寸法変化が生じやすい。その対策として、木製パネル表面にウレタン等を塗布したものが使用されているが、廃棄の際に木材とウレタンとの分別が困難なことから木材のリサイクルが容易でなく、焼却処分されている。
【0004】
木製パネルに変わるものとして、合成樹脂発泡体からなるコンクリート型枠が使用されるようになってきている。この種の型枠では、型枠の発泡成形時に発泡体の一面に石積などの模様の外観を有する凹凸部を容易に形成することができ、打設したコンクリート表面に天然石の石積等の模様を作り出すことができる利点もある。このような型枠とそれを用いた施工方法は、例えば特許文献1(特開昭63−147606号公報)、特許文献2(実開平1−76203号公報)などに記載されている。
【0005】
上記のような合成樹脂発泡体製のコンクリート型枠を建て込み、コンクリートを打設し硬化させた場合、合成樹脂発泡体は一般にコンクリート側に付着しやすい傾向があるため、コンクリート硬化後の型枠の除去が容易でない。合成樹脂型枠を単独で使用する場合には、付着力が大きくなると剥離時に型枠が破損することも起こり得る。そのために、鋼製あるいは木製のパネルで合成樹脂発泡体製の型枠を裏打ちして、コンクリート硬化後のコンクリートと型枠との剥離を容易化することが行われる。しかし、このような合成樹脂発泡体は一般に前記鋼製あるいは木製パネルとの膨張・収縮等が異なるので、コンクリート打設後の温度変化、あるいは寒暖の差などにより合成樹脂型枠の伸縮、すなわち寸法変化が生じ、これが大きくなると、型枠間に隙間が生じたり、型枠全面にゆがみが生じるなどの不都合が生じる場合がある。また、剥離時に、発泡した合成樹脂の一部が硬化したコンクリート側に付着してしまうことも起こり得る。
【0006】
また、作業現場では、熱の影響を大きく受けやすく、夏場では70℃近く、冬場は氷点下以下に至る熱環境に曝される場合があり、型枠の保管場所としては劣悪な環境である。そこで、季節、気温、保管温度、使用までの経日、等を見込んで、予め若干大きめあるいは小さめのコンクリート型枠を準備し、工場から出荷しているのが実情であるが、在庫が多く発生すると、コンクリートの型枠寸法や打設コンクリート表面に転写される石積、幾何学、等の模様が合わなくなり、コンクリート型枠としての商品価値がまったくなくなってしまう。
【0007】
そのようなことから、合成樹脂型枠に用いる素材として、例えば、特許文献3(特開平5−162111号公報)、特許文献4(特開平10−44122号公報)など、いくつかの提案がなされている。特開平5−162111号公報には、コンクリート型枠の脱型時の付着と、膨張・収縮の問題が少ない素材として5〜55重量%のフィラーを含むポリオレフィン系樹脂組成物が記載されている。しかし、ここでは、コンクリート型枠の発泡成形がブロー成形となるため、成形設備が発泡ポリスチレンの場合に比べて高価になると共に、コンクリート型枠自体も高価なものになる。ガラス繊維、ロックウール、セラミックファイバーに代表される粉砕鉱物繊維、あるいは炭素繊維などの無機繊維、などのフィラー等を含有する樹脂組成物を押出機にて混練する際、スクリュー、金型の摩耗が非常に早く、経済的でない。また、焼却処分した場合も焼却炉の中にこれらフィラーが残り、燃焼効率が低下し、好ましくない。
【0008】
また、特開平10−44122号公報には、5〜50重量%のゴム成分の含有してなる発泡スチレン系樹脂粒子が提案されており、これを用いた合成樹脂発泡コンクリート型枠は、曲げやすく、粘りも向上し、離型性の向上が期待できるというものであるが、予備発泡粒子の表面平滑性との関連から離型性を向上させるという観点での考察はなされていない。
【0009】
一方、予備発泡粒子の表面平滑性を改善しようとする方法は報告されている。例えば、発泡成形体の表面平滑性を改善する方法として、特許文献5(特開平1−299843号公報)等において、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面近傍に存在する発泡剤を強制的に逸散させる方法が提案されている。しかし、この方法では発泡剤としてブタンやペンタン等の揮発性有機化合物を使用するため発泡成形体の表面光沢度は改善されるものの、高温雰囲気下での寸法安定性が充分とはいえない。
【0010】
ブタンやペンタン等の有機化合物に替えて、発泡剤に炭酸ガスを用いた発泡性スチレン系樹脂粒子が提案されている(特許文献6(特開平4−351646号公報参照))。これを加熱して得た予備発泡粒子を型内発泡して得た成形品は、発泡剤に炭酸ガスを用いていることから残留ガス量は少なく、寸法変化率を±0.8%程度に抑えることができる。しかしながら、この方法においても得られる予備発泡粒子の表面光沢度は充分ではなく、きれいな成形品を得る、すなわち、打設したコンクリートとの剥離性が良好なコンクリート型枠を得るためには改善の余地がある。また、特に模様を転写するような形式のコンクリート型枠として、±0.8%程度の寸法変化率でもまだ不十分であり、寸法変化率を±0.3%以内に抑えることが求められる。
【0011】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、合成樹脂発泡体製のコンクリート型枠において、コンクリートとの剥離性を良好にして、鋼板などの裏打ち材を用いることなく、型枠単独で使用しても、型枠に破損などを生じることなく、容易にコンクリート側から剥離することのできるコンクリート型枠を提供することにある。また、他の目的は、剥離時に硬化したコンクリート側に発泡樹脂の残片を残すことのない、付着状態が良好で表面平滑性に富んだ合成樹脂発泡体製のコンクリート型枠を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、温度と経時に依存する寸法変化率を小さいものとし、コンクリートの型枠寸法が合わなくなったり、打設コンクリート表面に転写される石積、幾何学、等の模様が合わなくなったりするのを大きく抑制することのできる合成樹脂発泡体製のコンクリート型枠を提供することにある。
【0013】
【特許文献1】
特開昭63−147606号公報
【特許文献2】
実開平1−76203号公報
【特許文献3】
特開平5−162111号公報
【特許文献4】
特開平10−44122号公報
【特許文献5】
特開平1−299843号公報
【特許文献6】
特開平4−351646号公報
【0014】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、多くの実験と研究をおこなうことにより、スチレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得たコンクリート型枠において、JIS A5308で規定された普通181825Nレディーミクストコンクリートを用いて打設されたコンクリートとコンクリート型枠との剥離強度が1〜20g/cm2の範囲内のものであれば、型枠単独でコンクリートからの剥離を行っても、型枠に破損などの不都合を生じることなく、良好な剥離作業を行いうることを知見した。また、用いるスチレン系樹脂予備発泡粒子の表面光沢度と平均表面気泡膜厚を特定の範囲にすることで、この予備発泡粒子から得られる成形体(コンクリート型枠)は、表面平滑性に優れたものとなり、コンクリート側に発泡体の破片などを実質的に残すことなく、コンクリート表面の付着状態を良好に保って、剥離作業を行いうることも知見した。
【0015】
さらに、本発明者らは上記のような物性を備えたコンクリート型枠を発泡成形するためのスチレン系樹脂予備発泡粒子として、炭酸ガスを含浸させて得た発泡性スチレン系樹脂粒子を、次工程にて予備発泡機に投入し、予備発泡機内の雰囲気ガスを排気しつつ、蒸気の投入圧力と発泡機内圧力との差を所定の範囲に保持したまま予備発泡させて得られるスチレン系樹脂予備発泡粒子は、特定の表面光沢度及び表面気泡膜厚を有しており、さらに、成形後の成形品の寸法変化率もきわめて小さいものとすることができることから、きわめて有効であることを知見した。
【0016】
本発明は、上記のような知見に基づくものあり、本発明によるコンクリート型枠は、炭酸ガスを含浸させた発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させたスチレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得たコンクリート型枠であって、JIS A5308で規定された普通181825Nレディーミクストコンクリートを用いて打設されたコンクリートとコンクリート型枠との剥離強度が1〜20g/cm2であることを特徴とする。また、本発明によるコンクリート型枠は、JIS−K7105に準拠して測定した表面光沢度が30〜60であり、平均表面気泡膜厚が3〜20μmであるスチレン系樹脂予備発泡粒子を用いて成形される。好ましくは、本発明によるコンクリート型枠は、75℃で720時間加熱したときの寸法変化率は±0.3%以内である。
【0017】
本発明のコンクリート型枠において、JIS A5308で規定された普通181825Nレディーミクストコンクリートを用いて打設されたコンクリートとコンクリート型枠との剥離強度が1〜20g/cm2の範囲としたのは、剥離強度が1g/cm2未満では型枠にコンクリートを流し硬化させる際に、型枠が浮いたり移動したりするために、打設コンクリート表面に石積、幾何学、等の模様を精密に転写することができなくなることによる。また、20g/cm2を超えると、発泡ポリスチレンがコンクリート側に付着し、剥離時に型枠の破損が生じたり、コンクリート側に発泡体の残滓が残ったりして、コンクリート硬化後の型枠の除去に手間がかかることによる。より好ましくは、1〜15g/cm2の範囲である。
【0018】
また、本発明によるコンクリート型枠は、JIS−K7105に準拠して測定した表面光沢度が30〜60であり、平均表面気泡膜厚が3〜20μmであるスチレン系樹脂予備発泡粒子を用いて成形される。実施例の記載から明らかなように、30〜60の表面光沢度を有する予備発泡粒子から得られたコンクリート型枠は、コンクリートとの剥離性がよく、さらに充分な強度を有するコンクリート型枠となる。さらに、この予備発泡粒子から得られるコンクリート型枠は、特に熱影響を受けやすい作業現場での保管、あるいはコンクリート打設時の発熱水和反応に対する温度変化等を伴う型枠の膨張・収縮による寸法変化を極力抑えることができる。なお、表面光沢度が30以下であると、型枠を脱型する際に、コンクリート部分にコンクリート型枠の部材への食い込みが発生し、コンクリート型枠とコンクリートとの離型性が悪くなり、コンクリート型枠やコンクリート部が破壊したり傷付いたりして見栄えが悪くなる。また、その補修作業の工数が発生し、好ましくない。また、発泡粒子の表面光沢度が60以上であるとコンクリート型枠としたときの内部融着が悪く、充分な機械強度が得られないため、脱型する際にコンクリート型枠が容易に破壊され、再度使用することができなくなる。
【0019】
また、平均表面気泡膜厚が3〜20μmであるスチレン系樹脂予備発泡粒子を用いて成形されるコンクリート型枠は、脱型時にコンクリートとの剥離性が良好となる。特に好ましくは、5〜15μmである。平均表面気泡膜厚が3μm未満であると成形時の高温加熱によって、発泡粒子の表面だけでなく内部の気泡膜が破壊されて連続気泡構造となりやすく、最終的に得られるコンクリート型枠の外観は著しく悪いものになるばかりか、表面層の気泡膜圧が薄いために、コンクリートとの接着強度に耐えきれず、脱型時にコンクリートとの剥離性が悪くなり、型枠破壊などを生じる。一方、平均表面気泡膜厚が20μmを超えると、発泡粒子の二次発泡性が低下し、融着並びに外観の伸びのよい発泡成形体が得られないばかりでなく、発泡時の張力に耐えきれず、予備発泡粒子の表面に亀裂が入り、コンクリートを打設した際、コンクリートが発泡粒子の亀裂に入り込む。そのため、脱型時にコンクリートとの剥離性が悪くなり、型枠破壊などを生じることとなる。
【0020】
本発明において、コンクリート型枠の好ましい態様では、75℃で720時間加熱したときの寸法変化率は±0.3%以内である。75℃で720時間を要件とした理由は、コンクリート打設時の発熱水和反応に対する温度の影響を考慮したためである。このようにすることにより、コンクリート打設時の発熱水和反応に対する温度変化等に伴う型枠の膨張・収縮による寸法変化を極力抑えることができる。これにより、従来のように、季節等に合わせて若干大きめあるいは小さめに型枠を準備しておく必要がなくなり、安定した商品を供給することができる。
【0021】
上記のような特性値を持つ本発明によるコンクリート型枠は、以下のようにして製造されるスチレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡することにより得ることができる。すなわち、最初に、スチレン系樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させて発泡性スチレン系樹脂粒子とし、次工程で蒸気投入ラインと排気ラインを備えた予備発泡機内に前記発泡性スチレン系樹脂粒子を投入し、蒸気投入ラインから蒸気を0.5〜5.0kg/cm2Gの投入圧力で供給すると共に、排気ラインから蒸気を含む雰囲気ガスを排気し、かつその間、発泡機内圧力を蒸気の投入圧力より0.05〜1.0kg/cm2G低く維持しながら予備発泡させて得たスチレン系樹脂予備発泡粒子である。
【0022】
本発明による発泡性スチレン系樹脂粒子(以下、「発泡性粒子」という)を構成するスチレン系樹脂粒子(以下、「樹脂粒子」という)としては、一般に知られているスチレン系樹脂の粒状物を使用することができる。具体的には、このような樹脂粒子としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン(2官能性単量体)等のスチレン系単量体の単独重合粒子又はこれら単量体を2種以上組み合わせた共重合体粒子、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレート等のアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレート、アルキレングリコールジメタクリレート(2官能性単量体)等のスチレン系単量体以外の単量体との共重合体粒子等が挙げられる。更に、これらスチレン系樹脂粒子中のスチレン成分が50重量%を超える範囲内でスチレン系樹脂以外の樹脂と押し出しブレンドして得られた樹脂粒子であってもよい。スチレン系樹脂以外の樹脂としては、ポリフェニルエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ゴム成分等が挙げられる。特に、スチレン系樹脂粒子としてはポリスチレン樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の粒径は、コンクリート型枠の使用環境に応じて適宜選択することができ、例えば、0.2〜5mmの粒径のものを使用することができる。
【0023】
上記の樹脂粒子に発泡剤としての炭酸ガスを含浸させて発泡性粒子を得る。発泡剤としての炭酸ガスは、炭酸ガス100%でもよいが、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の発泡剤を加えてもよい。他の発泡剤としては、空気、窒素等の無機発泡剤、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素、フッ化炭化水素等の有機発泡剤を混合することもできる。フッ化炭化水素としては、オゾン破壊係数がゼロであるジフルオロエタン、テトラフルオロエタン等を使用することが好ましい。ここで、有機発泡剤は、発泡剤の全体量の20重量%を超えない範囲で使用することが好ましい。発泡性粒子中の炭酸ガスの含有割合は、1〜15重量%が好ましい。
【0024】
樹脂粒子中に炭酸ガスを含浸させるには、例えば、耐圧密閉容器に樹脂粒子を入れた後、炭酸ガスを圧入して、樹脂粒子を加圧された炭酸ガスと接触させることによって行うことができる。含浸温度は、樹脂粒子どうしが互いに合着して団塊化しない温度まで高くしてもよいが、通常0〜40℃である。樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させるときの圧力は、10kg/cm2G以上であることが好ましく、より好ましくは15〜40kg/cm2Gである。含浸時間は、樹脂粒子が前記の炭酸ガス含有量となるように適宜調整することができ、1〜20時間が好ましく、2〜8時間がより好ましい。
【0025】
樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させるに際し、樹脂粒子の表面には各種の表面処理剤を塗布しておくことが好ましい。そのような表面処理剤としては、例えば加熱発泡時の予備発泡粒子の結合を防止する結合防止剤、成形時の融着促進剤、帯電防止剤、展着剤等が挙げられる。
【0026】
結合防止剤としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルシリコン等が挙げられる。
【0027】
融着促進剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0028】
帯電防止剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
【0029】
また、他の添加剤として、樹脂粒子中には所望によりメタクリル酸エステル系共重合ポリマー、エチレンビスステアリン酸アミド、ポリエチレンワックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の気泡調整剤等を予め含有させておいてもよい。
【0030】
上記結合防止剤、成形時の融着促進剤、帯電防止剤、展着剤及び他の添加剤は、単独もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
また、樹脂粒子中には所望により難燃剤を含有することが好ましい。このときに使用できる難燃剤は特に限定されないが、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、トリプロモフェノール、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、ペンタプロモトルエン、ヘキサプロモベンゼン、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0032】
スチレン系予備発泡粒子は、上記したスチレン系樹脂粒子(樹脂粒子)に炭酸ガスを含浸させて発泡性スチレン系樹脂粒子(発泡性粒子)とし、次工程で、蒸気投入ラインと排気ラインを備えた予備発泡機内に、前記発泡性スチレン系樹脂粒子を投入し、蒸気投入ラインから蒸気を0.5〜5.0kg/cm2Gの投入圧力で供給すると共に、排気ラインから蒸気を含む雰囲気ガスを排気し、かつその間、発泡機内圧力を蒸気の投入圧力より0.05〜1.0kg/cm2G低く維持しながら予備発泡させることにより調整される。この方法において、前記した炭酸ガスを含浸させる工程に次いで、直ちに上記の予備発泡を行うようにし、表面の炭酸ガスを逸散させるような加圧及び/又は加熱を経ない方が好ましい。
【0033】
予備発泡機内の発泡性粒子は、通常110〜160℃程度に加熱されることが好ましく、より好ましい加熱温度は110〜130℃である。加熱温度が110℃を下回ると、嵩密度0.5g/cm3以下の予備発泡粒子は得られ難いので好ましくない。また、加熱温度が160℃を上回ると予備発泡粒子同士が合着する傾向が強くなるので好ましくない。
【0034】
この方法、すなわち本発明によるスチレン系樹脂予備発泡粒子を製造するのに使用できる予備発泡機の一例を、図1により説明する。図中、1は予備発泡機、2は撹拌モーター、3は撹拌翼、4は邪魔棒、5は発泡槽上面検出器、6は発泡性粒子輸送器、7は発泡性粒子計量槽、8は発泡性粒子投入器、9は蒸気吹込制御弁、10は蒸気チャンバー、11は凝縮水排出弁、12は排気制御弁、13は予備発泡粒子排出口、14は予備発泡粒子一時受器、15は空気輸送設備、16は内圧検出・制御装置、17は蒸気吹込孔、18は蒸気投入圧力計、19は減圧弁、20は蒸気元圧力計を意味する。
【0035】
詳細には、一定量の蒸気が常に予備発泡機1内に供給されるように排気制御弁12等で予備発泡機1内の圧力(内圧検出・制御装置16で圧力検出)が常に供給圧力を下回るように制御を行う。例えば、蒸気の投入圧力を1.2kg/cm2G(蒸気投入圧力計118で検出)、予備発泡機内の圧力を0.8kg/cm2Gに設定した場合、予備発泡機1内の圧力を内圧検出・制御装置16にて検出し、制御信号が排気制御弁12へ送られ、排気ラインから0.4kg/cm2G圧分の圧力を抜きながら圧力の制御を行うこととなる。このように、予備発泡機1内圧力と排気制御弁12とをリンクさせて制御することにより、予備発泡機1内圧力の調整することができる。
【0036】
投入圧力と予備発泡機内圧力との差が、0.05kg/cm2G未満であると低密度の予備発泡粒子が得られ難いばかりか、発泡時の張力に耐えきれず、予備発泡粒子の表面に亀裂が入り、コンクリートを打設した際にコンクリートが発泡粒子の亀裂に入り込む。そのため、脱型時にコンクリートとの剥離性が悪くなり、コンクリート型枠の破壊などを生じることとなる。また、1.0kg/cm2Gを超えると予備発泡時の結合が増加するばかりか、表面層の気泡膜厚が薄くなるために、コンクリートとの接着強度に耐えきれず、脱型時にコンクリートとの剥離性が悪くなり、コンクリート型枠の破壊などを生じるため好ましくない。より好ましい圧力差は、0.1〜0.5kg/cm2Gである。
【0037】
予備発泡粒子の粒径は、0.3〜10mm程度が好ましい。また、このような予備発泡粒子を用いて発泡成形されたコンクリート型枠では、発泡後の粒子径が小さい場合には、発泡倍率が小さくなってコンクリート型枠の曲げやすさが小さくなる一方、発泡後の粒子径が大きすぎると、コンクリート型枠に形成する転写模様によっては成形型の細かい凹凸模様部分や目地部分への充填性が悪くなって所望のコンクリート型枠を得ることができなくなる。そのことから、粒子径と相俟って、コンクリート型枠の密度が0.015〜0.50g/cm3の範囲とすることが好ましく、特に、0.02〜0.2g/cm3程度が好ましい。
【0038】
上記の予備発泡粒子を発泡成形することで得られるスチレン系樹脂発泡成形体は、長期にわたる寸法安定性に優れている。実施例にも記載したとおり、75℃で720時間加熱したときの寸法安定性(加熱前と加熱後の寸法変化率)を±0.3%以内にすることができる。発泡成形法としては、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、予備発泡粒子を成形用型内に充填し、蒸気により加熱する。蒸気との接触によって予備発泡粒子が加熱されると、予備発泡粒子は膨張するが、成形用型によって発泡できる空間が限定されているので、互いに密着すると共に融着一体化して所望の形状をした発泡樹脂成形体(コンクリート型枠)を得ることができる。
【0039】
こうして得られたコンクリート型枠は、通常のコンクリート打設用型枠と同様バタやフォームタイ、セパレータなどを用いて建て込んだり、コンクリート打設用型枠に取り付けて使用してもよく、コンクリートが打設されて凹凸模様などが反転転写され、コンクリート表面に化粧が施される。コンクリート型枠へのコンクリートの打設前に予め離型剤を塗布するようにすれば、一層コンクリート型枠の離型を容易に行うことができる。また、このコンクリート型枠は曲げやすく粘りもあるので、平坦面への化粧のみならず、曲げて取り付けるようにして曲面へ化粧を施すこともできる。
【0040】
本発明において、打設するコンクリートは任意であり、一般的に使用されている、例えば普通コンクリート、軽量コンクリートなどを使用できる。コンクリートに使用されるセメントは、普通ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント(低アルカリ形)、早強ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント(低アルカリ形)、超早強ポルトランドセメント、超早強ポルドランドセメント(低アルカリ形)、中庸熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント(低アルカリ形)、低熱ポルトランドセメント、低熱ポルドランドセメント(低アルカリ形)、耐硫酸塩ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルドランドセメント(低アルカリ形)、高炉セメントA種、高炉セメントB種、高炉セメントC種、シリカセメントA種、シリカセメントB種、シリカセメントC種、フライアッシュセメントA種、フライアッシュセメントB種、フライアッシュセメントC種などを用いることができる。コンクリートに使用される粗骨材の最大寸法は、40mm、25mm、20mm、15mmなどが使用できる。コンクリートのスランプは21cm、18cm。15cm、12cm、8cm、5cmなどが使用できる。コンクリートの呼び強度は、40、36、33、30、27、24、21、18、16などが使用できる。
【0041】
【実施例】
以下に、本発明を実施例及び比較例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されることはない。なお、以下に示す実施例1〜3及び比較例1〜4において、コンクリート型枠とコンクリートとの剥離強度、表面光沢度、平均表面気泡膜厚、投入寸法変化率、及びコンクリート表面の発泡体の付着状態の測定及び評価は以下のようにして行った。
【0042】
<コンクリート型枠とコンクリートとの剥離強度>
発泡成形用型から取り出した板状の発泡樹脂成形体(900mm×400mm×厚さ30mm)を50℃の恒温恒湿室で24時間乾燥させた後、その上の中央部に、内寸100mm×100mm×厚さ40mmの空洞な木枠を設置し、その木枠の中にコンクリートを打設した。具体的には、JIS A5308で規定された普通181825Nレディーミクストコンクリート(最大径25mmの粗骨材、細骨材投入普通セメントによって、呼び強度180kgf/cm2、スランプ値18cm、水/セメント比が63.5の普通コンクリート)を建て込んだ木枠内に打設した。打設された普通コンクリートは空洞の発生を防止するために、棒バイブレータ(直径25mm)によって締め固めた。その後、木枠をはずし、測定用金具を中心部から均等な距離で4箇所固定させた後、締め固められた標準コンクリートを4日間に亘って養生した。養生後、バネ計りと固定させた金具とを接続した状態で、かつ、板状成形体を固定した状態でバネ計りを持ち上げ、板状成形体とコンクリートとが剥離する最大強度を測定した。
【0043】
この一連の測定を、実施例1〜3、比較例1〜4のそれぞれに得られた板状成形体1種類について7回行い、最大値と最小値を除した5点の平均値を剥離強度とした。
【0044】
<表面光沢度>
JIS−K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に準じて測定した。試験片は、予備発泡粒子をプレスした予備発泡粒子板を作成した。この平滑面に60度の角度で光を当てた時の反射の割合(%)を表面光沢度とした。具体的には、ステンレス製円筒容器(内径76mm、深さ15mm)に予備発泡粒子を山盛りにならないよう満杯に入れ、この容器の開口部をアルミ箔にて覆い、直径75mmのステンレス製円板(表面鏡面仕上げ)にてプレス機を用いて予備発泡粒子を圧縮して15Mpaの加圧状態で72時間放置し、表面平滑な予備発泡粒子板を形成した。測定面は円板側の平滑面を用いた。この平滑面を光沢度測定装置(グロスチェッカ IG−330;堀場製作所社製)を用いて入射角60度−受光角60度(60度計)の光学系により測定することで表面光沢度を得た。ただし、測定は暗室で行うなど、外光の影響を受けない条件で行った。また、予備発泡粒子はプレス機での加圧状態を開放した後、30秒以内に測定を終わらせた。試験片には発泡粒子間の境界線が現れるが、測定の際にはこの境界線を含んでいても特に問題はなかった。
【0045】
光学測定は1試験片に対し測定面上の重複しない任意の7箇所で行い、最大値と最小値を除した5点の平均値をその試験片の光沢度とした。この一連の測定を予備発泡粒子1種類について3回行い、3回の平均値をその予備発泡粒子の光沢度とした。
【0046】
<平均表面気泡膜厚>
カッター等の鋭利な刃物を用いて予備発泡粒子を切断し、その部分を走査型電子顕微鏡にて500倍の拡大写真を撮った。その後、この写真を用いて、表面の気泡厚みを任意の1気泡に対して最も薄い箇所(気泡内壁と予備発泡粒子の外壁との距離)を測定し、表面気泡膜厚とした。この一連の測定を予備発泡粒子1種類について7回行い、最大値と最小値を除した5点の平均値を平均表面気泡膜厚とした。なお、その一例の写真を図2に示す。図で、Aが表面気泡膜厚である。
【0047】
<寸法変化率>
成形金型から取り出した板状の発泡成形体(900mm×400mm×厚さ30mm)を、温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室(JIS−K7100の標準温湿度状態)に24時間放置した後、この発泡成形体の中央部に縦及び横方向にそれぞれ互いに平行に3本の直線を50mm間隔になるように記入してJIS−K6767に従う試験片とした。この試験片を75℃に保った熱風循環式乾燥機の中に水平に置き、720時間加熱試験を行った後に取り出し、再び恒温恒湿室に1時間放置した。加熱試験の前後における寸法測定はJIS−K6767に準拠して実施し、寸法変化率は次の式にしたがって求めた。
寸法変化率(%)=(L2−L1)×100/L1
(ただし、L1は、型内成形後に23℃、相対湿度50%で24時間放置された試験片の寸法、L2は試験片を75℃で720時間加熱した後の試験片の寸法である)。
【0048】
<コンクリート表面の発泡体の付着状態>
本発明による予備発泡粒子を型内発泡成形して図3に示す形状のコンクリート型枠aを成形した。図3において、bは凹陥部であり、cは凸部である。型枠aを実際に建て込んでコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後、コンクリート型枠を剥離して、コンクリート表面の発泡体の付着度合いを測定した。具体的には、予備発泡してから6時間後、600mm×400mm、最少厚み30mmのコンクリート型枠成形用金型に予備発泡した発泡スチレン系樹脂粒子を充填し、これにスチームを注入して密度0.025g/cm3の図3に示す形状のコンクリート型枠を得た。得られたコンクリート型枠を50℃の恒温室で24時間乾燥させた後、常温で熟成させた。一週間後に通常の型枠と共に建て込み、JISA5308で規定された普通181825Nレディーミクストコンクリート(最大径25mmの粗骨材、細骨材投入普通セメントによって、呼び強度180kgf/cm2、スランプ値18cm、水/セメント比が63.5の普通コンクリート)を建て込んだ型枠内に打設した。打設された標準コンクリートは空洞の発生を防止するために、棒バイブレータ(直径25mm)によって締め固めた。締め固められた標準コンクリートを4日間に亘って養生した。養生後、建て込んだ型枠すべてを取り除き、脱型した後のコンクリート表面の発泡体の付着状態を評価した。この一連の評価を、それぞれのコンクリート型枠1種類について10枚評価し、コンクリート表面の発泡体の付着度合いを評価した。
【0049】
[実施例1]
100リットルの反応器に、純水40kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ2.3g、ピロリン酸マグネシウム70gを入れ水性媒体とした。次にベンゾイルパーオキサイド(純度75%)176g、t−ブチルパーオキシベンゾエート30g及びポリエチレンワックス(分子量1000)22gを溶解したスチレン44kgを撹拌しながら加えて懸濁させ、90℃に昇温して重合を開始した。比重法で測定した重合転化率が95重量%まで進行した時点で、反応器を125℃に昇温して2時間保持した後、常温まで冷却して、スチレン樹脂粒子を取り出した。
【0050】
スチレン樹脂粒子のうち、粒径0.7〜1.0mmのもの15kgを、内容量が30リットルの回転式耐圧容器に入れた後、展着剤としてポリエチレングリコール300を7.5g、グリセリンモノステアリン酸エステルを7.5g、結合防止剤として炭酸カルシウム30gを添加して容器を回転させ、樹脂粒子の表面に付着させた。次いで回転を停止してから容器内に炭酸ガスを圧入して、25℃、30kg/cm2Gに6時間保って樹脂粒子内に炭酸ガスを含浸させ、発泡性スチレン樹脂粒子を得た。
【0051】
こうして得られた発泡性スチレン樹脂粒子を耐圧容器から取り出し、直ちに、攪拌機付き発泡機内に投入した後、1.1kg/cm2Gの蒸気を発泡機缶内に投入した。この時の発泡機内の圧力は0.8kg/cm2Gになるように、排気制御弁の開度を電気信号でコントロールしながら、排気ラインを使って余分な圧力を外部に逃がした(投入圧力と発泡機内圧力との差は0.3kg/cm2G)。このように、蒸気を発泡機内に連続して投入しながら予備発泡させてスチレン樹脂予備発泡粒子とした。
【0052】
得られたスチレン樹脂予備発泡粒子について、上記したような評価を行った。また、スチレン樹脂予備発泡粒子を定法により成形して板状発泡成形体を得、それを用いて上記した各項目について成形体評価を行った。得られた評価結果を表1に示す。さらに、得られたスチレン樹脂予備発泡粒子を定法により成形して図3に示す形状のコンクリート型枠を成形し、得られたコンクリート型枠を実際に建て込みコンクリートを打設した後、上記したようにコンクリート表面の発泡体の付着状態を評価した。得られた評価結果を表2に示す。
【0053】
[実施例2]
発泡性スチレン樹脂粒子を耐圧容器から取り出し、直ちに、0.9kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に投入し、発泡機内の圧力が0.8kg/cm2Gになるように(投入圧力と発泡機内圧力との差は0.1kg/cm2G)調整したこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子及び板状発泡成形体、コンクリート型枠を得た。得られた予備発泡粒子及び板状発泡成形体の評価結果を表1に示し、コンクリート型枠を使用したときのコンクリート表面の発泡体の付着状態の評価結果を表2に示す。
【0054】
[実施例3]
発泡性スチレン樹脂粒子を耐圧容器から取り出し、直ちに、投入圧力が1.8kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に投入し、発泡機内の圧力は0.8kg/cm2Gになるように(投入圧力と発泡機内圧力との差は1.0kg/cm2G)調整したこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子及び板状発泡成形体、コンクリート型枠を得た。得られた予備発泡粒子及び板状発泡成形体の評価結果を表1に示し、コンクリート型枠を使用したときのコンクリート表面の発泡体の付着状態の評価結果を表2に示す。
【0055】
[比較例1]
発泡性スチレン樹脂粒子を耐圧容器から取り出し、直ちに、0.8kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に投入し、発泡機内の圧力は0.8kg/cm2Gになるように(投入圧力と発泡機内圧力との差は0.0kg/cm2G)調整したこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子及び板状発泡成形体、コンクリート型枠を得た。得られた予備発泡粒子及び板状発泡成形体の評価結果を表1に示し、コンクリート型枠を使用したときのコンクリート表面の発泡体の付着状態の評価結果を表2に示す。
【0056】
[比較例2]
発泡性スチレン樹脂粒子を耐圧容器から取り出し、直ちに、2.3kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に投入し、発泡機内の圧力は0.8kg/cm2Gになるように(投入圧力と発泡機内圧力との差は1.5kg/cm2G)調整したこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子及び板状発泡成形体、コンクリート型枠を得た。得られた予備発泡粒子及び板状発泡成形体の評価結果を表1に示し、コンクリート型枠を使用したときのコンクリート表面の発泡体の付着状態の評価結果を表2に示す。
【0057】
[比較例3]
発泡性スチレン樹脂粒子を耐圧容器から取り出し、直ちに、水蒸気と空気の混合気体によって缶内温度80℃に保たれた攪拌機付き発泡槽内に投入し、15秒間加熱処理した。次に、発泡槽内へ0.8kg/cm2Gの蒸気を投入し、この水蒸気を接触させて発泡したこと以外は、実施例1と同様にして予備発泡粒子及び板状発泡成形体、コンクリート型枠を得た。得られた予備発泡粒子及び板状発泡成形体の評価結果を表1に示し、コンクリート型枠を使用したときのコンクリート表面の発泡体の付着状態の評価結果を表2に示す。
【0058】
[比較例4]
内容積5リットルの攪拌機付き耐圧容器に、実施例1で得られたスチレン樹脂粒子のうち、粒径0.7〜1.0mmのもの2.0kg、イオン交換水2.2リットル、第三りん酸カルシウム6.0g、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2gを入れて攪拌を開始した。次に90℃に昇温した後、ブタン140gを圧入して5時間保持した。次いで、30℃まで冷却し、発泡性スチレン樹脂粒子を得た。取り出した粒子を乾燥後、15℃の恒温室で5日間熟成させた。そして、予備発泡時の結合防止剤としてジンクステアレート、融着促進剤としてヒドロキシステアリン酸トリグリセライドを粒子表面に被膜処理した後、攪拌機付き発泡機内に投入した後、投入圧力が0.4kg/cm2Gの蒸気を発泡機内に投入した。この時の発泡機内の圧力は0.1kg/cm2Gになるように、排気制御弁の開度を電気信号でコントロールしながら、排気ラインを使って余分な圧力を外部に逃がした(投入圧力と発泡機内圧力との差は0.3kg/cm2G)。このように、蒸気を発泡機内に連続して投入しながら予備発泡させてスチレン樹脂予備発泡粒子とした。
【0059】
得られたスチレン樹脂予備発泡粒子(発泡剤はブタン)について、実施例1と同様な評価を行った。また、スチレン樹脂予備発泡粒子を定法により成形して板状発泡成形体を得、それを用いて実施例1と同様に成形体評価を行った。得られた結果を表1に示す。さらに、得られたスチレン樹脂予備発泡粒子を定法により成形して図3に示す形状のコンクリート型枠を成形し、得られたコンクリート型枠を実際に建て込みコンクリートを打設した後、実施例1と同様にしてコンクリート表面の発泡体の付着状態を評価した。得られた評価結果を表2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
なお、表1において、合格基準を1枚のコンクリート型枠内面積のうち、コンクリート表面の発泡体の付着面積が5%未満であるものとした。表2において、10枚中9枚上が合格のものに○を、10枚中8枚以下が合格のものに×を付した。
【0063】
表1及び表2からわかるように、本発明によるコンクリート型枠は剥離強度が実用上許容される範囲に入っており、かつ、コンクリート表面への発泡体の付着状態も良好となっている。さらに、寸法変化率もきわめて小さい。そのために、鋼板などの裏打ち材を用いることなく、コンクリート型枠単独で使用しても、型枠に破損などを生じることにく、容易にコンクリート側から剥離することのできる。また、剥離時に硬化したコンクリート側に発泡樹脂の残片を残すことのないので、きれいな表面を持つまたきれいな転写模様を持つコンクリート擁壁などを構築することができる。さらに、寸法変化率がきわめて小さいことから、夏場では70℃近く、冬場は氷点下以下に至る熱環境に曝される場合でも、コンクリートの型枠寸法や打設コンクリート表面に転写される石積、幾何学、等の模様が合わなくなるようなことを回避できる。
【0064】
【発明の効果】
本発明のコンクリート型枠は、コンクリートとの剥離性がよく、さらに、熱影響を受けやすい作業現場での保管あるいは、コンクリート打設時の発熱水和反応に対する温度変化等に伴う型枠の膨張・収縮による寸法変化を極力抑えることを可能としたコンクリート型枠であり、商品価値の非常に高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用できるチレン系樹脂予備発泡粒子を製造するのに用いられる予備発泡機の概略説明図である。
【図2】本発明での平均表面気泡膜およびその測定個所を説明する図(写真)である。
【図3】本発明によるコンクリート型枠の一例を示す図である。
【符号の説明】
a…コンクリート型枠、b…コンクリート型枠の凹陥部、c…コンクリート型枠の凸部、1…予備発泡機、2…撹拌モーター、3…撹拌翼、4…邪魔棒、5…発泡槽上面検出器、6…発泡性粒子輸送器、7…発泡性粒子計量槽、8…発泡性粒子投入器、9…蒸気吹込制御弁、10…蒸気チャンバー、11…凝縮水排出弁、12…排気制御弁、13…予備発泡粒子排出口、14…予備発泡粒子一時受器、15…空気輸送設備、16…内圧検出・制御装置、17…蒸気吹込孔、18…蒸気投入圧力計、19…減圧弁、20…蒸気元圧力計
Claims (3)
- 炭酸ガスを含浸させた発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させたスチレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得たコンクリート型枠であって、JIS−K7105に準拠して測定した表面光沢度が30〜60であり、平均表面気泡膜厚が3〜20μmであるスチレン系樹脂予備発泡粒子を用いて成形されることを特徴とするコンクリート型枠。
- 蒸気投入ラインと排気ラインを備えた予備発泡機内に炭酸ガスを含浸させた発泡性スチレン系樹脂粒子を投入し、蒸気投入ラインから蒸気を0.5〜5.0kg/cm2Gの投入圧力で供給すると共に、排気ラインから蒸気を含む雰囲気ガスを排気し、発泡機内圧力を蒸気の投入圧力より0.05〜1.0kg/cm2G低く維持しながら予備発泡させたスチレン系樹脂予備発泡粒子を用いたことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート型枠。
- 打設コンクリート表面に石積、幾何学、などの模様を有する外観を表現するための凹凸やリブ構造による模様を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載コンクリート型枠。
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