JP3873581B2 - 高加工性熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱延鋼板の製造方法に関し、特に穴拡げ性などの加工性に優れたものの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェライトとベイナイトが主体の複合組織を有する高強度熱延鋼板は、伸びフランジ性−強度バランスが良好で加工性に優れていることから、自動車の軽量化など種々の構造部材や部品に適用が進められている。最近、その適用範囲の拡大に伴い、加工性をより向上させることが望まれるようになってきた。
【0003】
高強度複合組織において伸びフランジ性−強度バランスを向上させるためには複合組織の微細化が有効とされている。複合組織鋼は、Ar3変態点以上からフェライト・オーステナイト2相が共存する温度まで冷却し、その後の冷却制御によりオーステナイト相を低温変態相とするものである。
【0004】
複合組織の微細化は、このような製造工程の限定によりなされるものであり、先行技術として、例えば、特開昭54−65118号公報、特開昭60−121225号公報、特許第2831858号等が挙げられる。
特開昭54−65118号公報では、一次冷却の冷却速度を80℃/秒以上としてフェライトの粒成長を抑制する技術、特開昭60−121225号公報ではAr3〜Ar3+40℃の温度域で、45%以上の累積圧下をおこない、フェライトを微細分散させ、マルテンサイトを微細化する技術が開示されている。
【0005】
また、特許第2831858号には穴拡げ性に有利なベイナイト主体の組織とした高強度鋼板が記載され、特公昭62−39230号公報には、仕上圧延を大圧下とし、微細組織とすることが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来技術は、冷却能力が小さい既存の設備を前提としたものであるため、複合組織の微細化や第2相組織の微細化に限界があり、最近の適用範囲の拡大に伴う伸びフランジ性向上の要望を必ずしも満足するものではなく、また、仕上大圧下圧延は熱延鋼板の製造条件として板形状の点で問題があった。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、局部伸び等の加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するため、複合組織の微細化に及ぼす仕上圧延後の冷却の影響について鋭意検討した。その結果、仕上圧延後のランナウトでの冷却において、仕上圧延後、冷却開始までの時間を1.0秒以内とし、冷却速度を200℃/sを超える高冷却速度とすることが有効なことを見出した。
【0009】
本発明は以上の知見を基に更に検討を加えてなされたものである。すなわち本発明は、
1.質量%で、C:0.04〜0.12%、Si:0.25〜2.0%、Mn:0.5〜2.5%、Sol.Al:0.1%以下,残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を連続鋳造後、粗圧延を行う工程と、
(b)圧延終了温度をAr3以上とする仕上圧延を行う工程と、
(c)圧延終了後、1.0秒以内に、冷却開始温度と冷却終了温度との差が100℃以上、250℃未満となる冷却域を200℃/s超えで冷却する工程と、(d)720℃以下580℃以上の温度域を20sec以下の間10℃/s以下で冷却する工程と、
(e)400℃以上、540℃未満で巻取りする工程とを具備したことを特徴とする、TS(MPa)×λ(%)≧71984(MPa・%)である高加工性熱延鋼板の製造方法。
【0011】
2.連続熱間仕上げ圧延機の入り側、または連続熱間仕上圧延機のスタンド間の加熱装置により、粗バーを加熱して仕上終了温度を制御することを特徴とする1記載の高加工性熱延鋼板の製造方法。
【0012】
3. 鋼成分として、更に、質量%で、Ti,Nb,V,Zrの一種又は二種以上を合計として0.01〜0.2%含有することを特徴とする1または2記載の高加工性熱延鋼板の製造方法。
【0013】
4. 鋼成分として、更に、質量%で、Cr:1%以下、Mo:1.0%以下の一種又は二種を含有することを特徴とする1乃至3の何れかに記載の高加工性熱延鋼板の製造方法。
【0014】
5. 連続熱間仕上げ圧延機における最終スタンドでの圧下率を30%未満とすることを特徴とする1乃至4の何れかに記載の高加工性熱延鋼板の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
成分組成、製造条件の限定について詳細に説明する。
【0016】
1.成分組成

Cは、オーステナイトの焼入れ性を向上させ、複合組織中に適量のベイナイトを生成させるため0.04%以上添加する。一方、0.12%を超えると加工性及び溶接性を劣化させるため、0.04〜0.12%(0.04%以上、0.12%以下)とする。
【0017】
Si
Siは、固溶強化によりフェライトを強化するとともに、熱間圧延後のAr3〜Ar1変態点における緩冷却または放冷時にフェライトの析出を促進し、オーステナイトへのCの濃縮を促進させるため、0.25%以上添加する。一方、2.0%を超えると溶接性および表面性状が劣化するため、0.25〜2.0%とする。
【0018】
Mn
Mnは、Cと同様未変態オーステナイトの焼入れ性を高めるため、0.5%以上添加する。一方、2.5%を超えるとその効果が飽和し、バンド状組織を形成して加工性を劣化させるので、0.5〜2.5%とする。
【0019】
Sol.Al
Alは脱酸材及び不可避的不純物として含有されるNを固定して加工性を向上させるため添加する。0.1%を超えるとその効果が飽和し、清浄度を悪化させ加工性を劣化させるため、0.1%以下とする。
【0020】
本発明鋼は基本成分組成として以上の元素を含有するが、所望する強度、加工性等の特性に応じてTi,Nb,V,Zr,Cr,Mo、Caの一種又は二種以上を添加することができる。
【0021】
Ti,Nb,V,Zr
強度の調整または炭窒化物形成により固溶C,Nを低減させ、非時効化し、深絞り性を向上させる場合、Ti,Nb,V,Zrの一種又は二種以上を合計として0.01〜0.2%添加する。
【0022】
Cr,Mo
Cr,Moは、オーステナイトの焼入れ性を高め、C,Mnと同様な効果を有するため、必要とする場合、添加する。高価な元素のため、多量に添加すると素材コストが上昇し、溶接性を劣化させるため、Cr:1%以下、Mo:1.0%以下とする。
Ca
Caは加工性を向上させる場合、0.005%以下添加する。
【0023】
2.製造条件
本発明鋼は、連続鋳造により鋼片を製造する。鋼片は粗圧延、仕上圧延後、直ちに冷却を行う。粗圧延の条件については特に規定せず、鋼片を再加熱後、または連続鋳造後、直接、行うことが可能である。
【0024】
仕上圧延条件
仕上圧延の圧延終了温度はAr3未満では圧延中にフェライトが生成して著しい加工組織となり伸びが大きく低下するため、Ar3以上とする。また、より有効に、組織を微細化するためには連続熱間仕上圧延機の入り側またはスタンド間に設けた加熱装置、例えば誘導加熱装置により、圧延温度を精密に制御し、仕上終了温度をAr3直上とすることが好ましい。また、形状調整を行う場合は、仕上圧延時の最終パスの圧下率を30%未満とする。
【0025】
冷却条件
冷却は仕上圧延により、導入されたオーステナイト結晶粒内の変形帯密度を維持し、オーステナイト結晶粒界のみならず結晶粒内からも多数のフェライト核生成させるため、圧延終了後、1.0秒以内に開始する。但し、冷却開始時間が0.5秒以下では圧延歪みの不均一な残量により組織が不均一になることがあるため、0.5秒超えが望ましい。冷却速度はフェライト変態開始温度を低下させ、フェライト核生成後の結晶粒成長速度を遅くするため、200℃/s超えとする。尚、冷却速度は速いほど有利であり、300℃以上が好ましい。
【0026】
冷却域は、結晶粒径の微細化と強度を確保するため冷却開始温度と冷却終了温度との差が100℃以上、220℃未満となる温度域とする。
【0027】
温度差が100℃未満では、微細なフェライトの析出が少なく結晶粒が十分微細化されず、220℃以上では冷却後の放冷において針状フェライトが析出し、十分な強度が得られない。
【0028】
冷却後、緩冷却を行う。緩冷却はフェライト変態を十分促進するために720℃以下580℃超えの温度域で2sec以上、10℃/s以下で行う。20secを超えると、パーライトが析出しやすく加工性が劣化するため、20sec以下とする。尚、緩冷却には放冷を含むものとする。
【0029】
巻取温度
巻取温度は、400℃以上、540℃未満とする。巻取温度が、540℃以上の場合、安定してベイナイト主体の組織が得られず、400℃未満では硬質相のマルテンサイトの生成量が多くなり、伸びフランジ性が劣化する。
尚、緩冷却後、巻取りまでの冷却は特に規定しないが、パーライトの生成を抑える為、1℃/s以上とすることが好ましい。
【0030】
本発明により、板厚が2.0mm以下の薄鋼板を製造する場合、連続熱間仕上圧延機のスタンド間または仕上圧延前に粗バーの幅方向エッジ部を誘導加熱装置により、加熱することが好ましく、また本発明の効果を損なうものではない。また、本発明は、コイルボックス等を用いて保熱した粗バーを溶接して行う連続熱延プロセスに適用することも可能である。
【0031】
【実施例】
表1に示す化学成分の鋼を溶製し、表2に示す製造方法で板厚3.2mmの熱延鋼板を製造した。表3に製造した熱延鋼板の機械的性質を示す。本発明の成分組成、製造条件を満足し、本発明の実施例であるサンプルNo.1,3では、比較例であるサンプルNo.2,4に対し、優れた穴拡げ率−強度バランス(λ×TS)で、加工性に優れている。穴拡げ率は、スケールを除去後、直径10mmφの穴をクリアランス12%として打ち抜きにより加工し、頂角60°の円錐ポンチによる穴拡げを行って亀裂が板厚を貫通した時点の穴径を測定、穴径の拡大率で評価した。
【0032】
図1に本実施例で得られた穴拡げ率−強度バランス(λ×TS)の結果を示す。
【0033】
【表1】
Figure 0003873581
【0034】
【表2】
Figure 0003873581
【0035】
【表3】
Figure 0003873581
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、特殊な成分組成によらず複合組織が微細化され、伸びフランジ性などの加工性に優れた熱延鋼板を製造することが可能で、産業上、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】穴拡げ率−強度バランスを示す図。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.04〜0.12%、Si:0.25〜2.0%、Mn:0.5〜2.5%、Sol.Al:0.1%以下,残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を連続鋳造後、粗圧延を行う工程と、
    (b)圧延終了温度をAr3以上とする仕上圧延を行う工程と、
    (c)圧延終了後、1.0秒以内に、冷却開始温度と冷却終了温度との差が100℃以上、250℃未満となる冷却域を200℃/s超えで冷却する工程と、
    (d)720℃以下580℃以上の温度域を20sec以下の間10℃/s以下で冷却する工程と、
    (e)400℃以上、540℃未満で巻取りする工程とを具備したことを特徴とする、TS(MPa)×λ(%)≧71984 ( MPa・% ) である高加工性熱延鋼板の製造方法。
  2. 連続熱間仕上げ圧延機の入り側、または連続熱間仕上圧延機のスタンド間の加熱装置により、粗バーを加熱して仕上終了温度を制御することを特徴とする請求項1記載の高加工性熱延鋼板の製造方法。
  3. 鋼成分として、更に、質量%で、Ti,Nb,V,Zrの一種又は二種以上を合計として0.01〜0.2%含有することを特徴とする請求項1または2記載の高加工性熱延鋼板の製造方法。
  4. 鋼成分として、更に、質量%で、Cr:1%以下、Mo:1.0%以下の一種又は二種を含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の高加工性熱延鋼板の製造方法。
  5. 連続熱間仕上げ圧延機における最終スタンドでの圧下率を30%未満とすることを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の高加工性熱延鋼板の製造方法。
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