JP3872759B2 - リボフラビンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リボフラビンの製造方法に関するもので、より詳細にはリボフラビンの生産培地中に油分吸着性を有する粘土鉱物乃至その化学処理物またはカルシウム化合物からなる担体を共存させることにより、植物油または動物油炭素源から高収率及び高生産速度でリボフラビンを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リボフラビン生産菌を培地中で培養し、リボフラビンを生成、蓄積させ、これを採取することからなるリボフラビンの製造方法は古くから知られている。また、リボフラビン生産菌として、Eremothecium ashbyii, Ashbya gossypii, Candida flareri, Mycocandida riboflavina, Clostridium acetobutylicum 等や、バチルス属リボフラビン生産菌(特開昭49−66894号公報)、ストレプトマイセス・テスタセウスの変異株(特開昭50−116690号公報)、アクロモバクター属リボフラビン生産菌(特開昭52−54094号公報)、プレビバクテリウム属リボフラビン生産菌(特開昭52−110897号公報)、サッカロミセス属リボフラビン生産菌(特開昭60−241895号公報)、カンジダ ファマタ(ATCC20849)(特表平5−509221号公報)等を用いることも知られている。
【0003】
また、培地中の炭素源としても、グルコース、シュークロース等の糖類、デンプン乃至その加水分解物、酢酸、クエン酸、エタノール、更にはある種の微生物に対しては、炭化水素類、安息香酸等を用いることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、炭素源として油脂類を用いる場合には、水性の培地中に油脂類を分散させる必要があり、このため培地を攪拌するか、或いは分散剤乃至乳化剤を系中に添加することが必要である。
ところが、油を水中に乳化乃至懸濁させるような攪拌条件下では、菌体そのものが殺傷され、リボフラビンの収率が低下することが認められる。
また、系中に分散剤や乳化剤を添加する方法では、これらの薬剤の菌体への悪い影響が避けられないと共に、添加した薬剤が生成するリボフラビンに混入するという問題もある。
【0005】
本発明者らは、植物油または動物油を炭素源とする培地中でリボフラビン生産菌を培養し、リボフラビンを生成、蓄積させ、これを採取することからなるリボフラビンの製造方法において、油分吸着性を有する粘土鉱物もしくはその化学処理物またはカルシウム化合物からなる担体を、前記培地中に共存させる時には、前記菌体を損傷するような過度の攪拌操作なしに、植物油または動物油を培地中に安定に分散させ、リボフラビンを高収率及び高生産速度で製造しうることを見出した。
【0006】
更に本発明者らは、植物油または動物油を炭素源とする培地中でリボフラビン生産菌を培養し、リボフラビンを生成、蓄積させ、これを採取することからなるリボフラビンの製造方法において、前記炭素源が植物油または動物油を包蔵した廃白土を使用することにより、廃棄処理すべき廃植物油または廃動物油を有効に利用し得ることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、植物油または動物油を炭素源とする培地中でリボフラビン生産菌を培養して、リボフラビンを製造する方法において、植物油または動物油の培地中への分散性を向上させ、リボフラビンを高収率及び高生産速度で製造しうる方法を提供する。
本発明の他の目的は、リボフラビンの濃縮及び回収が面倒な操作を必要とせずに、低いコストで行うことが可能なリボフラビンの製造方法を提供する。
本発明の更に他の目的は、廃棄処理すべき廃植物油または廃動物油を有効に利用して、これからリボフラビンを回収しうる方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、植物油または動物油を炭素源とする培地中でリボフラビン生産菌を培養し、リボフラビンを生成、蓄積させ、これを採取することからなるリボフラビンの製造方法において、前記炭素源が植物油または動物油を包蔵した廃白土であることを特徴とするリボフラビンの製造方法が提供される。
本発明によれば更に、植物油または動物油を炭素源とする培地中でリボフラビン生産菌を培養し、リボフラビンを生成、蓄積させ、これを採取することからなるリボフラビンの製造方法において、前記炭素源が植物油または動物油を包蔵した廃白土から抽出した油分であることを特徴とするリボフラビンの製造方法が提供される。
【0009】
【発明の実施形態】
[作用]
本発明では、リボフラビン生産菌を植物油または動物油を炭素源とする培地中で培養し、リボフラビンを生成、蓄積させ、これを採取するが、この培地中に、油分吸着性を有する粘土鉱物もしくはその化学処理物またはカルシウム化合物からなる担体を共存させることが特徴である。例えば、pH調整した植物油または動物油を含む培地を滅菌し、その後あらかじめ培養したリボフラビン生産菌を植菌して培養する際、この培地中に上記担体を共存させることにより、植物油または動物油の消費を促進させ、リボフラビンの収率及び生産速度を向上させることができる。
【0010】
本発明は、基本的には、植物油または動物油を含む培地中でリボフラビン生産菌を培養する際、この培地中に油分吸着性を有する粘土鉱物乃至その化学処理物またはカルシウム化合物を共存させると、リボフラビンの生成収率が向上するという知見に基づくものであり、例えば、粘土鉱物未配合の培地でのリボフラビンの生成量を100%とすると、1重量%のセピオライトを培地に配合した場合には、他の条件は同一であっても、リボフラビンの生成量は159%(約1.6倍)に向上するのである。(実験の詳細は実施例1参照)
【0011】
リボフラビン発酵では、有機物である植物油または動物油がリボフラビン生産菌により分解され、代謝物であるリボフラビンを蓄積するものであるが、本発明者らの研究によると、この分解に至る過程では、先ず植物油または動物油が菌体内に取り込まれる過程と、菌体内に取り込まれた植物油または動物油が分解される過程とがあることが判明した。
【0012】
添付図面の図1は、50ccの培地中に大豆の植物油を存在させ、培養時間と残存油量及び生成リボフラビン量との関係をプロットしたグラフであり、図2は培養時間と菌体重量増との関係をプロットしたものである。
図1によると、培養時間と共に培地中の油量は単調に減少しているが、培地中の油量減少とリボフラビン生成量との間には一定のタイムラグがあり、この図面に示す具体例では、開始48時間後にリボフラビンの生成が始まっている。
【0013】
一方、添付図面の図3は48時間経過後の菌体の顕微鏡写真(A)(×600倍)と、この菌体の油分をNile redを用いて染色し、この染色した菌体を蛍光顕微鏡で測定した顕微鏡写真(B)(×600倍)である。図3(B)において、白地の矢印で示される部分等が染色された油分である。これらの写真を参照すると、培地内の植物油は先ず菌体内に取り込まれ、次いで分解されて、代謝物であるリボフラビンを蓄積するものである。
【0014】
本発明に用いる油分吸着性を有する粘土鉱物乃至その化学処理物は、培地内の植物油または動物油の菌体内への取り込みを促進し、更にリボフラビンの生成収率を高めるものである。
添付図面の図4は、培地内にセピオライトを1%添加した場合(●)と、未添加の場合(▲)について、培地の攪拌速度を600rpmとして、培養時間と菌体重量増との関係(A)、培養時間と残存油濃度との関係(B)、及び培養時間とリボフラビン濃度との関係(C)をプロットしたものである。
この結果によると、セピオライトの添加で、油の吸収は、同程度であるがリボフラビンの生成は増進していることが分かる。
【0015】
本発明に用いる油分吸着性を有する粘土鉱物乃至その化学処理物あるいはカルシウム化合物からなる担体は、リボフラビン生産菌と同様に培地である水相中に安定に存在すると共に、その油分吸着性によって油分を取り込んで水中に微粒化分散させ、菌体による油分の取り込みを容易にし、しかもこれを促進するように作用する。
これが、粘土鉱物乃至その化学処理物を担体として添加することによる作用効果と考えられる。
【0016】
粘土鉱物乃至その化学処理物と植物油または動物油とを培地中に共存させるには、種々の手段や方策を採用することができる。例えば、粘土鉱物乃至その化学処理物と植物油または動物油とを独立に培地に添加することも、また組成物の形で培地に添加することもできる。
本発明の一つの態様では、粘土鉱物等から成る担体を植物油または動物油を包蔵した状態で培地中に共存させる。植物油または動物油を包蔵したこのような担体の最も入手が容易なものとして、廃白土を挙げることができる。
油脂類の脱色や精製には、酸性白土或いはこれを化学処理した活性白土が広く使用されているが、この処理に際して廃白土が発生し、その処理が問題となっている。即ち、この廃白土は、油類を20乃至60重量%程度含有しており、しかもこの廃白土は粘着性のペーストであるので、取り扱いの著しく困難なものである。しかも、この廃白土は、年間5万トンもの多量に達するものであるが、本発明によれば、この廃白土を植物油または動物油包蔵担体として、リボフラビンの発酵生産に利用することにより、廃白土中の植物油または動物油を資源として有効に利用し、更に植物油または動物油が取り除かれた白土を再利用することが可能となり、資源の有効再利用を計ることにより自然環境の汚染を有効に防止することが可能となる。
【0017】
本発明のリボフラビンの発酵法では、生成するリボフラビンが担体である粘土鉱物等に吸着されるというきわめて好都合な作用を示すことが分かった。すなわち、通常の発酵法では、生成リボフラビンが培地中に希薄な状態で含有されているため、その濃縮のためにかなりのエネルギーコストを必要とする。
これに対して、本発明の発酵法では、生成するリボフラビンが担体である粘土鉱物等に吸着されて存在するので、リボフラビンが吸着された担体を培地から分離し、分離した担体からリボフラビンを抽出すればよく、濃縮に必要な操作を簡略化し、且つその費用を節約することができる。
また本発明では、炭素源として植物油または動物油を包蔵した廃白土から抽出した油分を好適に使用することができ、廃白土の有効利用という点でも優れている。
【0018】
また、上記担体として、カルシウム化合物の代表例である炭酸カルシウムを使用した場合、炭酸カルシウムが油脂の分解で生成する脂肪酸によるpHの低下を防ぎ、菌が損傷するのを防ぐことによりリボフラビンの生成収率を高めるものと考えられる(実施例13参照)。また、比較例8から分かるように、カルシウムと同じアルカリ土類金属としてマグネシウム化合物である水酸化マグネシウムを使用した場合には、菌の増殖には問題ないがリボフラビンの生産には効果がなかった。これは、油脂の分解で生成した脂肪酸をリボフラビンの生産に使用するのでなく菌の増殖のエネルギー源として使用され、その後炭素源がなくなったときに胞子の形成を促進するためと考えられる。
【0019】
[粘土鉱物乃至その化学処理物]
本発明で担体として使用する粘土鉱物乃至その化学処理物は、油分吸着性を有するものであり、一般に外観形状が繊維状、鱗片状、層状であって、水−油のいずれかの相に微細に分散するものである。
【0020】
油分吸着性粘土鉱物の好適な例として、鎖状粘土鉱物を挙げることができる。
本発明に用いる鎖状粘土鉱物は、セピオライト、アタパルジャイト及びパリゴルスカイト等に代表される繊維状ケイ酸マグネシウム粘土鉱物であるが、これらは、三次元の鎖状の構造を有し、タルクのような二次元の結晶構造物とは異なり、この鎖状構造の隙間にできる空孔がBET法比表面積で100乃至350m2/gの範囲になるような大きな比表面積を有し、しかも吸着作用を有する多孔質の粘土鉱物である。
【0021】
またセピオライト等は、同じく多孔質粘土鉱物であるモンモリロナイトに代表される通常の層状粘土鉱物とは異なり、水性系で膨潤しないことも大きな特徴である。
【0022】
このようなセピオライト等の鎖状粘土鉱物が持つ特徴によって、即ち、繊維状であること及びこのものが多孔質であることが、通常の粘土鉱物やその他の無機担体に比べて、菌体との絡みをよくして、菌体の固定を強固且つ安定なものと共に、固定菌体を多孔質なものとして、菌体へ培養液や酸素の供給性を向上させ、また濾過性を向上させ得る。
【0023】
本発明では、上記鎖状粘土鉱物は、単独で使用できる他、ハロイサイト、アスベスト等の二層構造の繊維状鉱物、又は鹿沼土、赤玉土などを含む火山性の繊維状鉱物と組み合わせで用いることができる。また必要に応じてこの繊維状粘土鉱物にゼオライト、又は酸性白土に代表される吸着性の粘土鉱物やクリストバライト、石英、長石等の岩石類を併用してもよい。
【0024】
本発明において、好適に使用されるセピオライトは、式(1)
(OH2)4(OH)4Mg8Si12O30・6〜8H2O ‥‥(1)
で表される化学構造を持ち、タルクのような二次元の結晶構造物がレンガを交互に積み重ねたような鎖状の結晶構造を形成している。
またこの鎖状の隙間に出来た空孔によって繊維状であるが他の繊維状鉱物とは異なり大きな比表面積と吸着性を有することも大きな特徴である。
【0025】
本発明においては、比表面積が100乃至350m2/gの範囲にあり、吸油量が100乃至300ml/100gの範囲にあるセピオライトが好適に使用される。比表面積がこの範囲より小さいと油分吸着性が小さく、一方この範囲よりも大きくて、それ以上の効果は得られない。
【0026】
また、本発明に好適に使用される繊維状のセピオライトは、一般に繊維径が70乃至400オングストローム、繊維長が0.2乃至400μmで、アスペクト比が5乃至500の範囲にあることが好ましい。
【0027】
下記表1にセピオライト(110℃で2時間の乾燥品)の一般的化学組成の一例を示す。
【表1】
【0028】
本発明では、酸性白土(モンモリロナイト)、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト等のスメクタイト粘土鉱物や、その酸処理物を担体として用いることができる。
これらの粘土鉱物の内でも、モンモリロナイト族粘土鉱物やその酸処理物が本発明の目的に好適であり、これらのものは、油脂類の脱色、精製に広く使用されているものである。
【0029】
酸性白土のようなモンモリロナイト族粘土鉱物は、二つのSiO4の四面体層がAlO6八面体層を間に挟んでサンドイッチされた三層構造を基本単位としており、この基本単位の三層構造がさらにC軸方向に多数積層されて層状結晶構造を構成しているアルミノケイ酸塩である。この層状結晶構造はモンモリロナイト族粘土鉱物類に共通している。
【0030】
モンモリロナイトの内でも本邦において広く産出する酸性白土は、風化により、モンモリロナイトの基本単位である三層構造中のAlO6八面体層のAl原子の一部がマグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属で置換され、その原子価を補うように水素イオンが結合している。したがって、酸性白土を食塩水溶液中に懸濁させてそのpHを測定すると、前記水素イオンがナトリウム(Na)イオンで置換され、酸性を示す。一方、ベントナイトは交換性陽イオンが大部分ナトリウム(Na)であるため、pHも中性から微アルカリ性を示し、水膨潤性も大きいのに対して、酸性白土ではナトリウムイオンがアルカリ土類金属で置換され、アルカリ金属成分が少なく、しかも水膨潤性も低下しており、またケイ酸分の含有量も高いため、吸着性の点で極めて有利である。かくして、モンモリロナイトとしては、本邦で産出する任意の酸性白土が広く使用されており、また、所謂サブベントナイト(Ca型ベントナイト)と呼ばれるモンモリロナイト族粘土鉱物も使用されている。
【0031】
下記表2に酸性白土(100 ℃乾燥品)の一般的化学組成の一例を示す。
【表2】
【0032】
酸性白土を用いるに際して、その中に含有される岩石類のクリストバライト、石英、長石等は、比重差を利用した分離方法(水簸や風簸等の分級手段)で容易に分離することができる。また、この中で結晶性ケイ酸のクリストバライトはアルカリと容易に反応してケイ酸アルカリに転化できるので、この方法でも除去することができる。これらの方法によって、層状結晶構造物の純度を向上させることができる。
【0033】
一方、酸性白土の酸処理物は、一般に油脂類等の精製剤である活性白土として知られている。この酸処理物は、酸性白土を硫酸や塩酸等の鉱酸溶液で処理して、含有する塩基性成分の一部を溶出せしめ、洗浄することによって容易に調製される。この酸処理によって、本来酸性白土が持っていた層状結晶構造の一部は破壊されるが、ケイ酸 (SiO2)の含有率は増加し、このことによって、比表面積は増大し、吸着能等の物性は向上する。酸性白土の酸処理物、一般に市販されている活性白土ならびにその製造中間品は、優れた特性を有する精製剤となる。
【0034】
この酸処理物の化学組成は、原料酸性白土の種類や酸処理条件等によっても相違するが、一般に下記表3に示す組成を有する。
【表3】
【0035】
上述した酸性白土や活性白土は、植物油または動物油を吸蔵した所謂廃白土の形で本発明に用いることが好ましい。これについては、後ほど詳しく説明する。
【0036】
[カルシウム化合物]
担体として使用し得るカルシウム化合物としては、具体的には、天然炭酸カルシウム(バテライト、カルサイト、アラゴナイト)、合成炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム(アパタイト等)が使用され、特に炭酸カルシウムが好ましい。
【0037】
[その他の担体]
担体として、天然シリカ、合成シリカ、シラスバルーン、珪藻土、パーライト、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、フィロ珪酸マグネシウム、水滑石、合成水酸化マグネシウム等を前述の担体と併用して使用することができる。
【0038】
[植物油および動物油]
本発明で炭素源として用いる植物油は、天然の植物界に広く存在し、脂肪酸とグリセリンとのエステルを主成分とするものであり、例えばサフラワー油、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、綿実油、ヤシ油、米糠油、ゴマ油、ヒマシ油、亜麻仁油、オリーブ油、桐油、椿油、落花生油、カポック油、カカオ油、木蝋、ヒマワリ油、コーン油などである。本発明に用いる植物油は、少なくとも一部が不飽和である脂肪酸とグリセリンとのエステルを主体とするものが好ましい。また、動物油脂としては、イワシ油、ニシン油、イカ油、サンマ油などの魚油、肝油、鯨油、牛脂、牛酪脂、豚脂、鶏油、馬油、羊油などが使用される。
【0039】
[廃白土]
本発明の方法に用いる廃白土は、脱色乃至精製用白土を油脂類の脱色乃至精製に用い、この工程で分離副生するものであり、油分を包蔵しており、これを廃棄することは環境汚染の点から許されず、その有効利用が熱望されていたものである。
【0040】
即ち、脱色乃至精製すべき油脂に、酸性白土のごときモンモリロナイト族粘土鉱物や、これらの粘土鉱物を酸処理及び/又はアルカリ処理して得られる活性白土を、粉末の状態で脱色剤乃至精製剤として添加し、両者を均一に攪拌することにより、油脂中に含有される着色成分や不純物成分を白土粒子中に吸着させる。脱色乃至精製処理後分離される白土中には、20乃至60重量%程の油分が保持されている。
【0041】
油脂の脱色処理は、それ自体公知の条件であり、例えば油脂当たり重量基準で0.1乃至5%の白土類を脱色乃至精製剤として添加し、90乃至150℃の温度で5乃至30分間、両者の組成物を撹拌することにより、脱色乃至精製処理を完了することができる。
【0042】
脱色乃至精製処理を終えた混合物は、これを任意の濾過機、例えばフィルタープレス、ベルトフィルター、オリバーフィルター、アメリカンフィルター、遠心濾過機等の減圧乃至は加圧式濾過機に供給して、精製油脂と使用済みの脱色乃至精製剤である所謂廃白土が得られる。この廃白土には、精製する原料油の種類にもよるが、粒子に保持される油分を、一般に20乃至60重量%程含有している。また、廃白土は、触媒能を保持していると思われる。
本発明では、この廃白土をリボフラビン発酵の炭素源として利用することができる。
【0043】
[リボフラビン生産菌]
本発明において、リボフラビン生産菌としては、リボフラビンを生産することが知られているそれ自体公知の任意の菌を用いることができる。
リボフラビン生産菌として、Eremothecium ashbyii, Ashbya gossypii, Candida flareri, Mycocandida riboflavina, Clostridium acetobutylicum 等や、バチルス属リボフラビン生産菌、ストレプトマイセス・テスタセウスの変異株、アクロモバクター属リボフラビン生産菌、プレビバクテリウム属リボフラビン生産菌、サッカロミセス属リボフラビン生産菌、カンジダ ファマタ(ATCC20849)等が挙げられる。
これらのリボフラビン生産菌のうちでも、植物油または動物油を炭素源として取り込むことのできるものが好ましく、その適当な例として、Ashbya gossypii ATCC 10895が使用される。
【0044】
[培地]
本発明の発酵法は、培地中の炭素源として植物油または動物油を用いるものであるが、勿論植物油または動物油以外の炭素源を併用することもでき、このような併用可能な炭素源として、グルコース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、アラビノース、シュークロース等の糖類、グリセリンなどの糖アルコール、酢酸、グルコン酸、コハク酸、ギ酸、クエン酸、フマル酸、グルタミン酸、乳酸等の有機酸類乃至その塩類、メタノール、エタノール等のアルコール類を挙げることができる。
【0045】
一方、培地中の窒素源としては、アンモニア、塩化アンモン、硫酸アンモン、炭酸アンモン、リン酸アンモン、酢酸アンモンなどの有機或いは無機のアンモニウム化合物、尿素乃至その誘導体、その他の天然窒素源が使用される。
【0046】
また、無機物としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、ニッケル、銅、マンガン等の金属の塩類、クロル、硫酸、リン酸、硝酸などの塩類が単独或いは複数の組合せで使用される。
【0047】
使用菌が栄養要求性を示す場合には、その要求物質を培地に添加する。その他、必要に応じ、天然栄養物、各種微生物の菌体加水分解物、酵母エキス、酒粕エキス、肉エキス、ペプトン、大豆粕分解物なども培地に添加できる。
【0048】
また、培地中に各種の物質、例えばグアニン、アデニン、ヒポキサンチンらのプリン類、チミン、ウラシン、シトシンらのピリミジン類、及びそれらの糖類或いはリン酸化糖の誘導体を添加し、リボフラビンの生成量を増加させることができる場合もある。
【0049】
本発明において、リボフラビンの培養は、それ自体公知の条件下に行うことができる。温度等の培養条件はそれ自体公知のものであるが、一般に20乃至35℃、特に25乃至30℃で行うことが好ましい。
【0050】
培地中における水相と油相との範囲にも最適な範囲がある。水相と油相とは、重量比でいって、一般に200:1乃至3:1、特に50:1乃至10:1の範囲にあるのがよい。
油相の量が上記範囲よりも多い場合にも、また上記範囲よりも少ない場合にも、リボフラビンの生成速度が低下する傾向がある。
【0051】
本発明において、培地中における担体の量的範囲にも最適な範囲がある。担体の量は、培地当たり0.1乃至10重量%、特に0.5乃至5重量%の量で存在することが好ましい。
担体の量が少ないと、リボフラビンの生産性が低下し、担体の量が多すぎると、リボフラビンの発育阻害により、リボフラビンの生産性が低下する傾向がある。
【0052】
本発明の一つの好適態様において、油分を含んだ廃白土を原料及び担体として使用する場合、水相と油分を含む廃白土とは、重量比でいって、100:1乃至5:1、特に20:1乃至5:1の範囲にあるのがよい。
廃白土相の量が上記範囲よりも多い場合にも、また上記範囲よりも少ない場合にも、リボフラビンの生成速度が低下する傾向がある。
【0053】
本発明での乳化方法としては、上記の三者の添加順序には特にこだわらなくてもよいが、油と水との両相の配合割合又はその用途、使用条件による油の種類にもよるが、好ましくは水に担体を添加して攪拌後、油を加えて攪拌乳化させる方法が選ばれるが、より好ましくは油に担体を添加して攪拌後、水を加えて攪拌乳化させる方が、より安定した乳化組成物を得ることができる。また、攪拌速度としては、400〜700rpmで行うのが好ましい。
【0054】
また本発明における乳化操作は、一般的に採用される攪拌等の物理的な方法でよく、実験室的には通常の家庭用ミキサー程度の剪断力を有する機械力で数十秒乃至数分間の処理時間でよく、工業的には大量に処理できる代表的なものとしてホモジナイザー、コロイドミル、ジェットフローミキサー、ボーテーター等を挙げることができるが、本発明では必ずしもこのような物理的方法に限定されるものではなく、必要に応じて反転乳化法、ゲル乳化法、HLB−温度乳化法等の化学的方法をも採用されるものである。
【0055】
また培養にあたっては、有用菌と油脂等を含有する培養培地に本発明の粘土鉱物から成る乳化剤を添加して上記のようにして形成された乳化組成物を通常の通気攪拌槽、充填床型リアクター、エアーリフト型気泡塔等のリアクターを使用して発酵生産物の特性に応じて回分、半回分、反復回分或いは連続のいずれかの方式で培養することができる。
【0056】
【実施例】
本発明を次の実施例で説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(測定方法)
(1)油の消費量の測定方法
5mlの培養液に5mlのヘキサン(hexane)を入れて2分間混合させ3,000rpm、15分遠心分離した。ヘキサン層を取り105℃で3時間乾燥して残存油の量を求め、最初に使用した油量から差し引いて消費量とした。
(2)リボフラビンの濃度測定
リボフラビンの濃度が30mg/L以下になるように培養液を希釈し、希釈された培養液0.8mlに1N-NaOH 0.2mlを入れ混合する。NaOHが混合された培養液を0.4ml取り、更に0.1M-燐酸緩衝液(pH 6.0)1mlを加え、11,000rpmで10分遠心分離を行い、上澄み液を取り、波長444nmでの吸光度を測定した。リボフラビンの濃度は、波長444nmでの吸光度×希釈率×127.2971によってmg/Lの単位で算出した。
(3)吸光度
日立製作所(株)製 U−2001型を使用して測定した。
(4)蛍光顕微鏡写真
オリンパス光学工業製 IX−70を使用し観察した。
【0057】
(実施例1)
<フラスコ培養>
(前培養)
30gCSL(Corn Steep Liquor)、9g酵母エキス(yeast extract)、15g大豆油を溶かし、蒸留水を加えて1リットルにし、その後、5N-KOHを添加してpHを6.8に調整して培地とした。
上記で調製された培地100mlを500mlのフラスコに入れ、滅菌した後に、Ashbya gossypii ATCC 10895を植菌し、28℃、220rpmで24時間前培養を行って前培養液を得た。
(本培養)
50g大豆油とセピオライト(水澤化学(株)製商品名:エードプラス ML-50D)11.1gとを混合し、この混合物と共に、
30gゼラチン、
60g CSL、
1.5g KH2PO4、
1.5g グリシン(glycine)、
2mg Co2+、
5mg Mn2+、
10mg Zn2+、及び
1mg Mg2+
を蒸留水1リットルに溶解させ、5N-KOHでpHを6.8に調整して培地を調製した。
この培地中のセピオライト濃度は1.1重量%である。(尚、後述の実施例においても、セピオライトとしては、上記の水澤化学製のものを用いた。)
500mlのフラスコに、上記培地50mlを入れて滅菌した後、前培養液1mlを植菌し28℃、220rpmで7日培養を行う。得られたリボフラビンの濃度、収率(%)及び向上率(%)を表4に示す。
向上率は、下記式
向上率(%)=(A−B)×100/B
ここで、A:セピオライト添加でのリボフラビン濃度
B:セピオライト無添加でのリボフラビン濃度
より求めた。
また、収率は原料油(この場合は大豆油)1gが作るリボフラビンの量(%)で示した。
【0058】
(実施例2〜4)
セピオライトの使用量を、22.3g、33.4g又は55.7gに変更した以外は、実施例1と同様にしてpHが6.8に調整された本培養用の培地を調製した。得られた培地中のセピオライト濃度は、それぞれ、2wt%、3wt%、5wt%である。
上記の培地50mlを500mlのフラスコに入れて滅菌し、その後実施例1で調製された前培養液1mlを植菌し、28℃、220rpmで7日培養を行った。得られたリボフラビンの濃度、収率(%)及び向上率(%)を表4に示す。
【0059】
(比較例1)
セピオライトを使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてpHが6.8に調整された本培養用の培地を調製した。
上記の培地50mlを500mlのフラスコに入れて滅菌し、その後実施例1で調製された前培養液1mlを植菌し、28℃、220rpmで7日培養を行った。得られたリボフラビンの濃度、収率(%)及び向上率(%)を表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
(実施例5〜7)
<ジャーファーメンター培養>
(前培養)
2g酵母エキス(yeast extract)、20gペプトン(peptone)、0.6g ミオイノシトール(myo-inositol)、10gグルコースを1リットルに溶かし、5N-KOHでpHを6.8に調整し、培地Aを得た。
また、30gCSL(Corn Steep Liquor)、9g酵母エキス(yeast extract)、15g大豆油を溶かし、蒸留水を加えて1リットルにし、5N-KOHでpHを6.8に調整して培地Bを得た。
50mlの培地Aを500mlの三角フラスコに入れて滅菌し、その後Ashbya gossypii ATCC 10895を植菌し、28℃、220rpmで24時間前培養を行って培養液Aを得た。
次に、100mlの培地Bを500mlの三角フラスコに入れて滅菌した後、上記で得られた培養液A 1mlを植菌して2次前培養を24時間行い、2次培養液を得た。
(本培養)
実施例1と全く同様にして、本培養用の培地(セピオライト濃度;1重量%)を調製した。この培地2リットルを5リットルジャーファーメンターに入れて滅菌した後、上記で得た2次培養液100mlを植菌してから5日間培養を行った。攪拌速度は、400〜700rpmに変化し、酸素(1vvm)の供給を行った。
得られたリボフラビンの濃度と向上率(%)を表5に示す。尚、表5には、各攪拌速度で2回行った結果をそれぞれ示す。
【0062】
(比較例2〜4)
比較例1と全く同様にしてセピオライトを含有していない本培養用の培地を調製した。この培地2リットルを5リットルジャーファーメンターに入れて滅菌した後、実施例5で調製された2次培養液100mlを植菌してから5日間培養を行った。攪拌速度は、400〜700rpmに変化し、酸素の供給を行った。
得られたリボフラビンの濃度と向上率(%)を表5に示す。
【0063】
【表5】
【0064】
(実施例8)
菌株Ashbya gossypii ATCC 10895を用い、酵母エキス 10g、グルコース 10g、グリシン 3g、寒天 20g/Lを含んだ固体培地(pH 6)を、30℃で2日間増殖させた(固体培養)。
次に、CSL 30g/L、酵母エキス 15g/L、大豆油 6g/Lを蒸留水中に含んだ培地を使用し、これを滅菌した後、上記固体培養一白金耳量を植菌し、28℃、220rpmで24時間前培養を行い、前培養液を得た。
次に、30gゼラチン、60g CSL、1.5g KH2PO4、1.5g グリシン、2mg Co2+、5mg Mn2+、10mg Zn2+、1mg Mg2+、及び炭素源を蒸留水1Lに溶解させ、5N-KOHでpHを6.8に調整して本培養用の培地を調製した。尚、炭素源としては、菜種油を40wt%含む廃白土125gを用いた。
上記で調製された本培養用の培地に、前培養液2mlを植菌し、ロータリシェーカーで200rpmで28℃、7日間培養した。
培養終了後、廃白土を分離し、湿重量1.5g(105℃で2時間乾燥したときの乾燥後重量0.636g)を取り、リボフラビンの抽出を行った。抽出方法は、廃白土に0.4N-NaOHを加え、激しく攪拌した後、上澄みのリボフラビン濃度を測定した。
その結果、2回抽出で80%以上のリボフラビンの回収ができ、3回以上の抽出で90%以上の回収ができた。得られたリボフラビンの濃度と収率(%)を表6に示す。
【0065】
(実施例9)
菌株Ashbya gossypii ATCC 10895を用い、実施例8と同様に、固体培養及び前培養を行って前培養液を得た。
また、炭素源としてパーム油を40wt%含む廃白土125gを用いた以外は、実施例8と全く同様にして本培養を行い、且つ同様にしてリボフラビンの抽出を行った。得られたリボフラビンの濃度と収率(%)を表6に示す。
【0066】
(実施例10〜11)
菌株Ashbya gossypii ATCC 10895を用い、実施例8と同様に、固体培養及び前培養を行って前培養液を得た。
また、炭素源として廃白土から抽出された菜種油またはパーム油を50g用いた以外は、実施例8と全く同様にして本培養を行った。
培養後、油の濃度、リボフラビンの濃度を測定し、その結果から収率(%)を算出した。
油の濃度は、培養後、2mlの培養液に同量のヘキサンを入れて2分間よく混ぜてから、3,000rpmで遠心分離を行い、上澄みを取り、ヘキサンを蒸発させた後に乾燥し、油の重量を測定することにより算出した。またリボフラビンの濃度は、前述した方法で算出した。
リボフラビンの濃度及び収率(%)を表6に示す。
【0067】
【表6】
【0068】
(比較例5〜6)
菌株Ashbya gossypii ATCC 10895を用い、実施例8と同様に、固体培養及び前培養を行って前培養液を得た。
また、炭素源としてバージンの大豆油(和光純薬製試薬)または菜種油(ナカライテスク製試薬)を50g用いた以外は、実施例8と全く同様にして本培養を行った。
培養後、実施例10,11と同様にして、油の濃度、リボフラビンの濃度を測定し、その結果から収率(%)を算出した。
リボフラビンの濃度及び収率(%)を表7に示す。
【0069】
【表7】
【0070】
(実施例12)
菌株Ashbya gossypii ATCC 10895を用い、実施例8と同様に、固体培養及び前培養を行って前培養液を得た。
また、炭素源としてパーム油を40wt%含む廃白土188gを用い且つ本培養時間を10日間とした以外は、実施例8と全く同様にして本培養を行い、且つ同様にしてリボフラビンの抽出を行った。得られたリボフラビンの濃度と収率(%)を表8に示す。
【0071】
(比較例7)
菌株Ashbya gossypii ATCC 10895を用い、実施例8と同様に、固体培養及び前培養を行って前培養液を得た。
また、炭素源としてバージンのパーム油(Spectrum Chemical Mfg. Corp.)を75gを用いた以外は、実施例12と全く同様にして本培養を行った。
培養後、培養後、実施例10,11と同様にして、油の濃度、リボフラビンの濃度を測定し、その結果から収率(%)を算出した。
リボフラビンの濃度及び収率(%)を表8に示した。
【0072】
【表8】
【0073】
(実施例13)
50g菜種油を吸着させた炭酸カルシウム(白石カルシウム工業製 PC)125gを調製した。この炭酸カルシウムと共に、
30gゼラチン、
60g CSL、
1.5g KH2PO4、
1.5g グリシン(glycine)、
2mg Co2+、
5mg Mn2+、
10mg Zn2+、及び
1mg Mg2+
を蒸留水1リットルに溶解させ、5N-KOHでpHを6.8に調整して本培養用の培地を調製した。
500mlのフラスコに、上記培地50mlを入れて滅菌した後、実施例1で調製された前培養液1mlを植菌し28℃、220rpmで7日培養を行った。得られたリボフラビンの濃度及び収率(%)を表9に示す。
【0074】
(比較例8)
50g菜種油を吸着させた水酸化マグネシウム125gを、上記の炭酸カルシウムの代りに用いた以外は、実施例13と同様にして本培養を行った。得られたリボフラビンの濃度及び収率(%)を表9に示す。
【0075】
(比較例9)
50g菜種油を吸着させたシリカ(水澤化学工業製 ミズカシルP707)125gを、上記の炭酸カルシウムの代りに用いた以外は、実施例13と同様にして本培養を行った。得られたリボフラビンの濃度及び収率(%)を表9に示す。
【0076】
【表9】
【0077】
(実施例14)
菌株Ashbya gossypii ATCC 10895を用い、実施例8と同様に、固体培養及び前培養を行って前培養液を得た。
また、炭素源として牛豚脂を40wt%含む廃白土(牛脂:豚脂=1:1混合物)125gを用いた以外は、実施例8と全く同様にして本培養を行い、且つ同様にしてリボフラビンの抽出を行った。得られたリボフラビンの濃度と収率(%)を表10に示す。
【0078】
(比較例10)
菌株Ashbya gossypii ATCC 10895を用い、実施例8と同様に、固体培養及び前培養を行って前培養液を得た。
また、炭素源としてバージンの牛脂50gを用いた以外は、実施例14と全く同様にして本培養を行った。得られたリボフラビンの濃度及び収率(%)を表10に示す。
【0079】
(比較例11)
菌株Ashbya gossypii ATCC 10895を用い、実施例8と同様に、固体培養及び前培養を行って前培養液を得た。
また、炭素源としてバージンの豚脂50gを用いた以外は、比較例10と全く同様にして本培養を行った。得られたリボフラビンの濃度及び収率(%)を表10に示す。
【0080】
【表10】
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、リボフラビン生産菌を植物油または動物油を炭素源とする培地中で培養し、リブフラビンを生成、蓄積させ、これを採取することからなるリボフラビンの製造方法において、前記培地中に油分吸着性を有する粘土鉱物乃至その化学処理物またはカルシウム化合物からなる担体を共存させる時には、前記菌体を損傷するような過度の攪拌操作なしに、植物油を培地中に安定に分散させ、リボフラビンを高収率及び高生産速度で製造することができる。
【0082】
また、本発明によれば、リボフラビン生産菌を植物油または動物油を炭素源とする培地中で培養して、リボフラビンを製造する方法において、植物油または動物油の培地中への分散性を向上させ、リボフラビンを高収率及び高生産速度で製造しうる方法が提供される。
本発明によれば更にリボフラビンの濃縮及び回収が面倒な操作を必要とせずに、低いコストで行うことが可能なリボフラビンの製造方法が提供される。
更に、本発明によれば、廃棄処理すべき廃植物油または廃動物油を有効に利用して、これからリボフラビンを有効に回収することができる。回収したリボフラビンは、医薬用、動物飼料用添加剤、食品の着色剤、栄養補給助剤として用いられる。また、粘土鉱物に担持したものは、そのまま動物用飼料として有用で栄養補給、整腸作用の期待ができる。特に、廃白土を使用した場合は、廃白土の有効利用ができると同時に環境負荷を低減することができる。更にまた、最近廃棄に問題になっている家庭用、ファーストフード店、パン製造会社等からでる廃食用油に本発明で使用する担体を添加して処理し、リボフラビンを製造することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】50ccの培地中に大豆の植物油を存在させ、培養時間と残存油量及び生成リボフラビン量との関係をプロットしたグラフである。開始48時間後にリボフラビンの生成が始まっている。
【図2】培養時間と菌体重量増との関係をプロットしたグラフである。
【図3】48時間経過後の菌体の顕微鏡写真(A)(×600倍)と、菌体の油分をNile redを用いて染色し、この染色した菌体の蛍光顕微鏡写真(B)(×600倍)である。
【図4】培地内にセピオライトを1%添加した場合(●)と、未添加の場合(▲)について、培地の攪拌速度を600rpmとして、培養時間と菌体重量増との関係(A)、培養時間と残存油濃度との関係(B)、及び培養時間とリボフラビン濃度との関係(C)をプロットしたグラフである。
Claims (2)
- 植物油または動物油を炭素源とする培地中でリボフラビン生産菌を培養し、リボフラビンを生成、蓄積させ、これを採取することからなるリボフラビンの製造方法において、前記炭素源が植物油または動物油を包蔵した廃白土であることを特徴とするリボフラビンの製造方法。
- 植物油または動物油を炭素源とする培地中でリボフラビン生産菌を培養し、リボフラビンを生成、蓄積させ、これを採取することからなるリボフラビンの製造方法において、前記炭素源が植物油または動物油を包蔵した廃白土から抽出した油分であることを特徴とするリボフラビンの製造方法。
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