JP2972871B2 - 油中水滴型不溶性ミセルの乳化方法 - Google Patents

油中水滴型不溶性ミセルの乳化方法

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JP2972871B2 JP10110070A JP11007098A JP2972871B2 JP 2972871 B2 JP2972871 B2 JP 2972871B2 JP 10110070 A JP10110070 A JP 10110070A JP 11007098 A JP11007098 A JP 11007098A JP 2972871 B2 JP2972871 B2 JP 2972871B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、界面活性剤による
油の乳化方法に関し、特にラムノリピッドによる油中水
滴型不溶性ミセルの乳化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、重油をはじめとする油類の流出事
故が相次いでいる。海で流出した重油等は、乳化分散処
理剤を用いて海水に分散して、自然に存在する微生物の
力で浄化される。乳化分散処理剤として、古くは石鹸が
用いられたが、硬水では洗浄力が極端に劣化することが
問題であった。また、石油化学製品を原料とした合成中
性洗剤は、リンによる環境破壊を引き起こすという問題
があった。現在、油類乳化分散処理剤として、非イオン
性界面活性剤(通常20−30%)と石油系炭化水素溶剤(通
常70−80%)とから構成されるものが最も使用されてい
る。界面活性剤は油を水中油滴型に乳化させる働きを
し、溶剤は油の粘度を低下させ、界面活性剤と油を良く
なじませる働きをする。主として使用される界面活性剤
は、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルやポリオキシエ
チレンソルビタン脂肪酸エステルである。溶剤の代表例
はノルマルパラフィンである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の非イオン性界面
活性剤と石油系炭化水素溶剤とからなる油類乳化分散処
理剤は、油に対して30−40%程度使用する必要がある。
そのため、油類乳化分散処理剤の成分である界面活性剤
や溶剤自体が環境へ及ぼす負担も大きい。したがって、
油類乳化分散処理剤は、生分解性及び安全性が高いもの
が望まれる。
【0004】また、多量の油の乳化処理には長時間を要
する。乳化処理の初期の段階は、水の量に対して油の量
が圧倒的に多い状態であり、処理すべき廃油は混在する
水と油中水滴型のミセルを形成する。油中水滴型ミセ
ル、特にゴム状の固まりとなったものは、容易に乳化さ
れず、その後の処理操作を著しく困難にする。ところ
が、油中水滴型ミセル、特に、固形状ミセルに対する溶
解性に優れ、水中油滴型への再乳化が容易であり、なお
かつ併用する有機溶剤の減量化が可能な乳化剤はこれま
でにない。例えば、上記のポリオキシエチレン脂肪酸エ
ステルやポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
のような界面活性剤では、多量の有機溶剤の併用が必須
である。
【0005】そこで、本発明の目的は、環境に及ぼす負
担が少なく、生分解性及び安全に優れた乳化剤を用いた
油中水滴型不溶性ミセルの乳化方法を提供することにあ
る。
【0006】ラムノリピッドは、強い界面活性力を有す
ることが知られている。そして、ラムノリピッドをはじ
めとする糖脂質型の界面活性剤を廃油処理に用いる例と
して、例えばBiosurfactants in environmental biotec
hnology, Current Opinion in Biotechnology 1994, 5,
291−295がある。しかし、他の報告例を含め、最も処
理操作の困難な油中水滴型固形状ミセルをラムノリピッ
ドを用いて処理する方法については触れられていない。
また、乳化最適条件、および環境に放出されるラムノリ
ピッドの環境への残存量を制御するためのラムノリピッ
ド生分解条件等についても報告はない。このような状況
下、本発明者らが検討した結果、ラムノリピッドを用い
ることで油中水滴型固形状ミセルを乳化できることを見
出し本発明を完成した。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、油中水滴型ミ
セルをラムノリピッドの存在下、攪拌することを特徴と
する油中水滴型ミセルの乳化方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の方法で、乳化の対象であ
る油中水滴型ミセルは、例えば、油田で生産される原油
や油類の流出事故における廃油などが、油量に対して少
量の水と混合されることで生じたものであることができ
るが、これらに限定される意図ではない。油中水滴型ミ
セルとは、油中に水分が分散し、油が連続相として存在
しているために形成されたものである。
【0009】油中水滴型ミセルには、例えば、回収廃油
液がある。回収廃油液には油以外に、水、塩類、土砂等
の固形物、微生物などの生物が含まれることが多い。そ
のため、乳化処理操作前に、水洗浄による粘度低下後の
沈降でこれらのものを除去することができる。本発明で
は、このような油田で生産される原油や、流出事故によ
る廃油などの油中水滴型ミセルを乳化の対象としている
が、さらに、ラムノリピッド以外の界面活性剤を使用し
て、乳化を試みたが、乳化ができなかった油中水滴型ミ
セルも乳化の対象としている。本発明では、このような
油中水滴型ミセルをラムノリピッドにより乳化又は、再
乳化することもできる。
【0010】ラムノリピッドは、ラムノースとβ−ヒド
ロキシデカン酸から構成される糖脂質で、糖と脂肪酸の
組み合わせにより4種類ある。ラムノリピッドは、グリ
セリン、グルコース、エタノールなどの炭素源を発酵原
料として生産可能である。しかし、高い生産性を得るた
めには、n−アルカンや油脂のような水不溶性物質が必
須となる。また、窒素源としては硝酸ナトリウムなど無
機塩が有効であるが、低い濃度であることが必要で、リ
ン、K+、Ca++、Mg++、Fe+++量を制限するなどの工夫し
た培地組成が必要である。
【0011】ラムノリピッドの生産には、本出願の出願
人による特許出願(例えば、特願平8-248485号)に記載
された、エタノールによる方法を用いても良い。この製
造方法によれば、生産物の分離精製が容易にできる水溶
性炭素源を用いて、高い生産効率、特に高い蓄積濃度で
ラムノリピッドを発酵生産により製造できる。
【0012】この方法は、ラムノリピッド生産菌をエタ
ノールを含有する培地中で培養する。この際、培地中の
エタノール濃度が3%以下に維持される。培地中のエタ
ノール濃度が3%を超えると、ラムノリピッド生産菌の
発酵能が低下して、培地中のラムノリピッド蓄積濃度が
高くならない。また、エタノールは、炭素源となるた
め、培養の進行とともに上記生産菌により消費される。
そこで、培養中、培地にエタノールを断続的又は連続的
に添加することでエタノール濃度を3%以下となるよう
に維持する。エタノール濃度は、低すぎてもラムノリピ
ッドの生産速度が低下するので、例えば、1%以上とす
ることが適当である。
【0013】培地には、上記エタノール以外の栄養源を
適宜添加することができる。例えば、炭素源として、グ
ルコース、グリセリン、菜種油等を添加できる。また、
窒素源として、酵母エキス、大豆粉、ポリペプトン、コ
ーンスティープリカー(CSL)等を含有することがで
きる。培地に窒素源として酵母エキスを添加すると、ラ
ムノリピッド生産能が高まるという観点から好ましく、
例えば、0.5〜1.0%の酵母エキスを用いることができ
る。
【0014】さらに、酵母エキスに加えて大豆粉(エス
サンミート、味の素(株)製)を添加すると、ラムノリ
ピッド生産能の点で好ましく、0.5〜1%の大豆粉を用
いることが好ましい。
【0015】なお、2種以上の窒素源を用いる場合、そ
の合計が0.4〜1.2%の範囲であることが適当である。窒
素源の量が多すぎるとラムノリピッドの生産能が低下す
るので好ましくない。
【0016】培養温度及び時間等の培養条件は、使用す
るラムノリピッド生産菌の種類に応じて適宜決定でき
る。例えば、前述のラムノリピッド生産菌としてシュー
ドモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)IF
O 3924株を用いる場合、室温(例えば、20〜30℃)で、
例えば、100〜250時間培養することにより、ラムノリピ
ッドが培地に蓄積される。
【0017】ラムノリピッドが蓄積した培養物から、常
法によりラムノリピッドを採取することができる。培養
物からのラムノリピッドの採取及び精製には、例えば吸
着クロマトグラフィーが有効である。また、ラムノリピ
ッドはカルボキシル基を有することから、陰イオン交換
樹脂を使用して採取及び精製をすることもできる。より
簡便な精製法としては、pH3〜5に培養液を設定すること
により酸沈殿精製が可能である。
【0018】油中水滴型ミセルをラムノリピッドの存在
下、攪拌して乳化する場合、油中水滴型ミセル水溶液の
pHや、油中水滴型ミセルの粘度の状態、ラムノリピッド
以外の他の界面活性剤の量等により、油中水滴型ミセル
に対するラムノリピッドの使用適量は変化する。例え
ば、ラムノリピッドの量と油中水滴型ミセルの水溶液の
pHには、次のような関係が成立する。
【0019】ラムノリピッドの添加量が多いければ、そ
れだけ乳化の効果も大きい。しかし、あまり量が多すぎ
るとこれまでの油類乳化分散処理剤の使用量と同じよう
になり、環境へ及ぼす負担も大きくなるおそれがある。
もっとも、このような場合には、後述する微生物分解法
が有効な解決手段となる。ラムノリピッドの量が十分多
い場合、油中水滴型ミセルを含む水溶液のpHは、特に限
定されることはないが好ましくは、pH5以上である。よ
り好ましくは、pH6から8であり、さらに好ましくはpH7
から8である。また、ラムノリピッドの添加量が比較的
少量の場合であっても、pHを7から8に設定することによ
り、廃油を容易に水中油滴型乳化液に変換することがで
きる。油中水滴型ミセルを含む水溶液のpHの調整は、pH
調整剤を添加することで行うことができる。pH調整剤の
種類及び量は、油中水滴型ミセルを含む水溶液のpHを考
慮して適宜選択できる。このように油中水滴型ミセルの
pHを調整することで、乳化を促進することができる。
【0020】また、油中水滴型ミセルの粘度状態に応じ
て、ラムノリピッドの使用適量は異なる。好ましいラム
ノリピッドの量は、ラムノリピッドによる乳化の効果
と、環境に及ぼす負担とを考慮して適宜決定できる。以
下には、油中水滴型ミセルの粘度状態に応じた、適切な
ラムノリピッドの使用方法の一例を示す。
【0021】粘度が比較的低い油中水滴型ミセルの場合
(1000mPas以下) 粘度が比較的低い油中水滴型ミセルとは、例えば、回収
した粘度の低い廃油を挙げることができる。この場合、
回収した廃油1リットルに対し、数倍の水と廃油あたり
0.1〜1g/Lのラムノリピッドを添加することで、良好
に乳化液とすることができる。使用するラムノリピッド
は粉末であっても良い。粉末の場合には、より好ましく
は、数倍の水に粉末状のラムノリピッドを溶かした後、
油中水滴型ミセルと混合する。ラムノリピッドは粉末で
あっても、水溶液の形でも、攪拌により容易に混合す
る。有機溶剤の使用は必ずしも必要ない。但し、少量の
有機溶剤を併用することはできる。
【0022】上記粘度の低い廃油は、廃油あたり1g/L以
下の少量のポリオキシエチレン脂肪酸エステルやポリオ
キシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの界面活性
剤の存在下で水とゆっくり攪拌すると、処理の困難な粘
度の高い油中水滴型ミセルが形成されてしまう。これ
は、ノルマルパラフィンなどの溶剤がないので、界面活
性と油が良くなじまないからである。このような他の界
面活性剤を含む油中水滴型ミセルであっても、上記のラ
ムノリピッド濃度とpHを設定することにより、容易に水
となじむ形へ再乳化できる。
【0023】粘度が比較的高い油中水滴型ミセルの場合
(1000〜5000mPas) 粘度の高い油中水滴型ミセルとは、例えば、粘度の高い
廃油を挙げることができる。この場合、回収した廃油を
できる限り広げ、油1リットルに対し、数培の水と、油
あたり1〜10g/Lのラムノリピッドを添加し、攪拌する
ことが好ましい。ラムノリピッドは、上記と同様に粉末
であっても良い。粉末の場合には、より好ましくは、数
倍の水に粉末状のラムノリピッドを溶かした後、油中水
滴型ミセルと混合する。ラムノリピッドは粉末であって
も、水溶液の形でも、攪拌により容易に混合する。有機
溶剤の使用は必ずしも必要ない。但し、少量の有機溶剤
を併用することはできる。
【0024】粘度の高い油中水滴型ミセル、例えば、粘
度の高い廃油は水と練り合わされることにより、処理の
困難な固形状の油中水滴型ミセルが形成される。特に油
あたり1g/L以下の少量のポリオキシエチレン脂肪酸エス
テルやポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを
はじめとする界面活性剤の存在下で水と攪拌させること
により、油中水滴型ミセルの形成度は大きい。このよう
な油中水滴型ミセルも、上記ラムノリピッド濃度とpHを
設定することにより、容易に水となじむ形へ再乳化され
る。
【0025】極めて粘度の高い油中水滴型ミセルの場合
(5000Pas以上) 極めて粘度の高い油中水滴型ミセルとしては、例えば、
グリス状のきわめて粘度の高い廃油を挙げることができ
る。この場合、回収した廃油1リットルに対し、数倍の
水と廃油あたり1〜10g/Lのラムノリピッドを添加し、攪
拌することが好ましい。ラムノリピッドの添加は水溶液
の形が望ましく、強力な攪拌や、接触面積を広げる工夫
をすることで、乳化をより容易にすることができる。ま
た、有機溶剤の使用は必ずしも必要ない。但し、少量の
有機溶剤を併用することはできる。
【0026】特に、グリスは水と練り合わされることに
より、処理の困難な固形状の油中水滴型ミセルが形成さ
れる。このミセルは、最も処理の困難なタイプであり、
従来型の乳化処理剤では、ポリオキシエチレン脂肪酸エ
ステルやポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
と有機溶剤の併用によっても処理は難しい。しかし、上
記ラムノリピッド濃度とpHを設定することにより、この
ようなミセルでも容易に水となじむ形へ再乳化される。
この場合に限り、油に対し1/10量程度のノルマルパラフ
ィンをラムノリピッドと同時に混合することが、乳化を
より容易にするという観点からは好ましい。
【0027】本発明では、このように油中水滴型ミセル
をラムノリピッドの存在下、攪拌混合することで油中水
滴型不溶性ミセルを乳化して、油中水滴型乳化液または
水中油滴型乳化液とすることができる。
【0028】本発明の方法で乳化された水中油滴型ミセ
ルは、例えば、微生物により処理し、油分を減少させ、
さらに、自然放置することにより、不溶性塩類、固形
物、微生物などが沈降除去される。処理後は放流可能な
水とすることが可能である。
【0029】ラムノリピッドの使用量が多い場合であっ
ても、本発明の方法で得られる乳化液を微生物分解法に
よれり処理すれば、環境に対する負担も軽減される。例
えば、油中水滴型ミセルとして油を含む廃水液に、油1
リットルあたり1から10gのラムノリピッドを添加し、
乳化して得られる水中油滴型ミセルについての処理法に
ついて説明する。ラムノリピッドにより乳化された水中
油滴型ミセルに、魚粉(ないしは大豆粉)を10g/L、土
を1g/Lを添加し、pHを5-7に調整後、室温ないしは外気
温で攪拌ないしは通気し、菌を増殖させる。土は、微生
物を多く含むものであれば使用できる。菌増殖後油分は
消滅し、遠心、濾過、凝集剤による沈殿などの操作によ
り、焼却可能な不消化の窒素源を含む菌体と、放流可能
な水廃液が得られる。添加したラムノリピッドは効率的
にAlcaligenes faecalis、 Bacillusmacerans、Bordete
lla bronchiseptica、Flavobacterium aroborescensな
どの菌液を添加して処理を行えばよい。
【0030】ラムノリピッドは通常Pseudomonas aerugi
nosa菌の培養により生産できる(例えば、特願平8−248
485号)が、精製物のみではなく、培養液や酸沈殿粗精
製物でも同様な効果が得られる。
【0031】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に説明する。 実施例1 A型重油(粘度:100mPas)に由来する油中水滴型
不溶性ミセルの、ラムノリピッドとTween80の乳化力を
比較測定した。重油10mlと水1mlの液に重油あたり10g/L
から1mg/Lの濃度範囲でラムノリピッドを添加し、激し
いミキサー攪拌して1日静置後の目視により乳化程度を
調べた。その結果、ラムノリピッドを添加したものは、
重油あたり1g/L以上で乳化を示した。次に、Tween80の1
0g/L水溶液、ないしは流動パラフィン溶液を用意し、重
油10mlと水1mlの液に重油あたり10g/Lから1mg/Lの濃度
範囲でTween80または流動パラフィンを添加し、激しい
ミキサー攪拌して1日静置後の目視により乳化程度を調
べた。その結果、Tween80を添加したものは、重油あた
り10g/L以上で乳化を示し、流動パラフィンを添加した
ものは、完全な乳化を示さなかった。結果を表1に示
す。
【0032】
【表1】 ◎:完全乳化、○:部分乳化、×:乳化せず、*:実験せず
【0033】A型重油10mlと水1mlの液に乳化力以下の濃
度であって、重油あたり1g/Lないしは100mg/LのTween80
を添加し、ゆっくりしたスターラー攪拌を1時間以上続
けると、粘度の高い油中水滴型の乳化物を得ることがで
きる。水を20ml添加後、Tween80ないしはラムノリピッ
ドを乳化重油あたり10g/Lから1mg/Lの濃度範囲で添加
し、水中油滴型への乳化の有無を検討した。その結果、
重油あたり1g/L以上のラムノリピッドの添加で、完全な
水中油滴型乳化液を得た。Tween80では、流動パラフィ
ンをさらに油あたり10%添加した場合を含め水中油滴型
乳化液になることはなかった。結果を表2に示す。
【0034】
【表2】 ◎:完全乳化、○:部分乳化、×:乳化せず
【0035】粘度のある油中水滴型の乳化重油を用い
て、上記と同じ条件でpHの影響を検討した。HClとNaOH
でpHを4,5,6,7,8,9及び10に設定した条件で、乳化重油
あたり1ないし100mg/Lのラムノリピッドの濃度による乳
化試験を行った。その結果、pH4及び5では乳化せず、p
H6及び7では水層と油層が一体となった完全乳化をし、
8,9及び10では乳化は顕著なものの、乳化層はコンパク
トにまとまり、水層と分離した。結果を表3に示す。
【0036】
【表3】 ◎:完全乳化、○:部分乳化、×:乳化せず
【0037】粘度のある油中水滴型の乳化重油と水の混
合比率を変えて検討した。1)油1ml、水9ml、2)油2m
l、水8ml、3)油3ml、水7ml、4)油4ml、水6ml、5)
油5ml、水5mlのどの条件でも、乳化重油あたり1g/L以上
のラムノリピッド濃度で完全なさらさらした乳化液を得
た。結果を表4に示す。
【0038】
【表4】 ◎:完全乳化、○:部分乳化
【0039】人工海水(ハイマリン、ハイペット社製)
を用いてラムノリピット゛による乳化試験を行ったが、効
果の減少は見られなかった。
【0040】実施例2 A型重油とグリス(アポロイル, Autolex A、出光石油
社製)を2:1で攪拌し、粘度のある油(粘度:3200
mPas)を得た。油中水滴型不溶性ミセルのラムノリ
ピッドとTween80による乳化力を比較測定した。重油10m
lと水1mlの液に重油あたり10g/Lから1mg/Lの濃度範囲で
ラムノリピッドを添加し、激しいミキサー攪拌して1日
静置後の目視により乳化程度を調べた。その結果、ラム
ノリピッドを添加したものは、重油あたり1g/L以上で乳
化を示した。
【0041】Tween80の10g/L水溶液、ないしは流動パラ
フィン溶液を用意し、油10mlと水1mlの液に油あたり10g
/Lから1mg/Lの濃度範囲でTween80又はパラフィンを添加
し、激しいミキサー攪拌して1日静置後の目視により乳
化程度を調べた。その結果、Tween80を添加したもの
は、油あたり10g/L以上のTween80濃度で乳化を示し、流
動パラフィンを添加したものは、完全な乳化を示さなか
った。結果を表5に示す。次に油10mlと水1mlの液に油
あたり1g/Lないしは100mg/LのTween80を添加し、ゆっ
くりしたスターラー攪拌を1時間継続すると、粘度の高
い油中水滴型の乳化物を得ることができる。水を20ml添
加後、Tween80ないしラムノリピッドを乳化重油あたり1
0g/Lから1mg/Lの濃度範囲で添加し、水中油滴型への乳
化を検討した。その結果、ラムノリピッド1g/L以上の添
加で、完全な水中油滴型乳化液を得た。Tween80では、
流動パラフィンを油あたり10%添加した場合を含め、水
中油滴型乳化液になることはなかった。結果を表6に示
す。
【0042】
【表5】 ◎:完全乳化、○:部分乳化、×:乳化せず、*:実験せず
【0043】
【表6】 ◎:完全乳化、○:部分乳化、×:乳化せず
【0044】油中水滴型の乳化液を用いて、上記と同じ
条件でpHの影響を検討した。HClとNaOHでpHを4,5,6,7,
8,9及び10に設定した条件で、1ないし100mg/Lのラムノ
リピッドの濃度による乳化試験を行った。その結果、4
及び5では乳化せず、6及び7では水層と油層が一体と
なった完全乳化をし、8,9及び10では乳化は顕著なもの
の、乳化層はコンパクトにまとまり、水層と分離した。
結果を表7に示す。
【0045】
【表7】 ◎:完全乳化、○:部分乳化、×:乳化せず
【0046】粘度のある油中水滴型の乳化重油と水の混
合比率を変えて検討した。1)油1ml、水9ml、2)油2m
l、水8ml、3)油3ml、水7ml、4)油4ml、水6ml、5)
油5ml、水5mlのどの条件でも、乳化重油あたり1g/L以上
のラムノリピッド濃度で完全なさらさらした乳化液を得
た。結果を表8に示す。
【0047】
【表8】 ◎:完全乳化、○:部分乳化
【0048】人工海水を用いてラムノリピッドによる乳
化試験を行ったが、効果の減少は見られなかった。
【0049】実施例3 グリス(粘度:10000mPas)の油中水滴型不溶性
ミセルのラムノリピッドとTween80による乳化力を比較
測定した。グリス10mlと水1mlの液にグリスあたり1g/L
ないしは100mg/LのTween80を添加し、薬匙を用いて10分
間こねたところ粘度の高い油中水滴型の乳化物を得た。
水を20ml添加後、Tween80ないしはラムノリピッドを乳
化グリスあたり10g/Lから1mg/Lの濃度範囲で添加し、さ
らにこねた後の水中油滴型への乳化を検討した。その結
果、ラムノリピッド10g/L以上の添加で、完全な水中油
滴型乳化物を得た。Tween80では、流動パラフィンを油
あたり10%添加した場合を含め、水中油滴型乳化物にな
ることはなかった。結果を表9に示す。
【0050】
【表9】 ◎:完全乳化、○:部分乳化、×:乳化せず
【0051】実施例4 300mlの容量の金属バットを用意し、水100mlと実施例2
で作製した粘度の高い油中水滴型乳化物10mlを入れた。
重油あたり10g/L、1g/L及び100mg/Lのラムノリピッド、
またはTween80を添加し、室温で5cm振幅、100往復/分で
1日振とうした。その結果、ラムノリピッドの濃度を乳
化重油あたり1g/L以上とすることで完全な乳化を得る
ことができた。Tween80では乳化は不十分であった。結
果を表10に示す。
【0052】
【表10】 ◎:完全乳化、○:部分乳化、×:乳化せず
【0053】実施例5 窒素源0.5%、重油1%からなる培地を30ml含む250mlフ
ラスコ、培地あたり1から10g/Lのラムノリピッドと、
土壌をミクロスパーテル1杯入れ、室温において振とう
培養した。窒素液として大豆粉、魚粉、乾燥酵母、肉エ
キス、硫安、トウモロコシ粉を検討したところ、4日で
大豆粉と魚粉の場合に最も旺盛な菌生育を示した。シリ
カゲル薄層クロマトグラフィー分離後、硫酸発色による
検出の結果、重油スポットは検出されず、100mg/L以下
であった。6個所の肥沃な土壌を試験したが、どの場合
も微生物の生育は良好であった。培養液の顕微鏡観察の
結果、原虫、細菌、酵母など土壌により様々な生物が生
育していた。シリカゲル薄層クロマトグラフィー分離
後、硫酸オルシノール発色によるラムノリピッドの測定
をしたところ、添加量の1/2から1/4であった。
【0054】ラムノリピッドの代わりにTween80を検討
したが菌の生育はみられなかった。
【0055】実施例6 殺菌されたニュートリエントブロス培地(Difco社製)2
mlを含む試験管に、所有する細菌100株を植え、28℃で1
日培養後培地あたり1g/Lのラムノリピッドを添加し、
さらに2日培養したあとのラムノリピッド量を計測し
た。5株のラムノリピッドは10mg/L以下とほぼ消失し、
代わって脂肪酸と糖が検出された。その菌名はAlcalige
nes faecalis, Bacillus macerans, Bordetella bronch
iseptica, Flavobacterium arborescens, Pseudomonsa
riboflavinaである。分解産物が認められたものはこれ
らを含めて18株である。
【0056】実施例7 大豆粉0.5%、重油1%、KH2PO4 0.1%、NaCl0.2%、M
gSO4・7H2O0.05%からなる培地を30ml含む250ml含むフ
ラスコに、培地あたり1g/Lのラムノリピッドと、土壌を
ミクロスパーテル1杯入れ、室温において振とう培養し
た。2日目にPseudomonas riboflavinaのニュートリエン
トブロス培地での一夜培養液を1ml添加し、さらに1日培
養した。シリカゲル薄層クロマトグラフィー分離後、硫
酸発色による検出の結果、重油スポットは検出されず、
100mg/L以下であった。シリカゲル薄層クロマトグラフ
ィー分離後、硫酸オルシノール発色によるラムノリピッ
ドの測定をしたところ、ラムノリピッドは検出されず、
10mg/mL以下であった。ラムノリピッドの代わりにTween
80を検討したが菌の生育はみられなかった。
【0057】
【発明の効果】本発明によれば、多量の油中水滴型ミセ
ルであっても、短時間に乳化処理をすることができる。
【0058】また、ラムノリピッドは、油中水滴型ミセ
ルの粘度を低下させ油中水滴型ミセルと良くなじむこと
から、乳化処理に必要な処理剤の量が大幅に軽減され
る。
【0059】また、油中水滴型ミセルを処理するための
処理剤自体の量が軽減化されることにより、環境への負
担は少なくなる。
【0060】また、従来では、廃油液のような油中水滴
型ミセルを廃液溜めで2層分離することにより、油層を
除去した水層を得ることができるが分離は不完全であ
り、水層にはかなりの油がミセル、油滴、油層として残
っていた。しかし、本発明によれば、乳化液には、微生
物にとって分解の容易なラムノリピッドを含むので、そ
のまま放流可能な水層を得ることができる。微生物にと
って分解の容易で、生分解性の高いラムノリピッドを使
用することにより、さらに環境への負担は少なくなると
いう有利な効果を奏する。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 油中水滴型ミセルをラムノリピッドの存
    在下、攪拌することを特徴とする油中水滴型ミセルの乳
    化方法。
  2. 【請求項2】 ラムノリピッドが粉末状、又は水溶液で
    ある請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 油中水滴型ミセルが、ラムノリピッド以
    外の界面活性剤を含んでいる請求項1又は2に記載の方
    法。
  4. 【請求項4】 pH調整剤の存在下、油中水滴型不溶性ミ
    セルを攪拌して乳化を促進する請求項1〜3のいずれか1
    項に記載の方法。
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