JP3872675B2 - 排煙処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、石炭や重油等の燃料を燃焼させるボイラ、ガスタービン、エンジンや焼却炉等から排出される排ガス中の硫黄酸化物(SOx ) を除去するための排煙処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
石炭や重油等の燃料を使用するボイラを備えた火力発電設備、化学品製造プラント、金属処理プラント、焼結プラント、製紙プラント等やガスタービン、エンジン、焼却炉等から排出される排ガス中には二酸化硫黄等の硫黄酸化物(SOx ) が含まれている。排ガス中のSOx を除去する装置として排煙処理装置が用いられている。排煙処理装置では、活性炭素繊維等の多孔質炭素材料に排ガス中のSOx を吸着させ、多孔質炭素材料の触媒作用を利用して排ガス中に含まれる酸素により硫黄成分を酸化させ、これを水分に吸収させて硫酸として多孔質炭素材料から除去するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の排煙処理装置では、例えば、平板シート状の活性炭素繊維と波板シート状の活性炭素繊維を交互に積層した触媒を備え、触媒の活性炭素繊維に水を滴下すると共に排ガスをシート間の通路を通過させて硫黄分を硫酸として除去するようになっている。このため、シート状の活性炭素繊維からなる触媒の変形が懸念され、移送時等のハンドリングを慎重に行う必要があった。
【0004】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、シート状の活性炭素繊維からなる触媒であってもハンドリングを容易にした触媒を備えた排煙処理装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の排煙処理装置の構成は、硫黄酸化物を含有する排ガスが流通する装置塔内に設けられ活性炭素繊維層で形成される触媒と、触媒の上部における装置塔内に設けられ触媒に硫酸生成用の水を供給する水供給手段とからなる排煙処理装置において、平板状の平板活性炭素繊維シートと波板状の波板活性炭素繊維シートとを接合して通路シートを形成し、通路が上下に延びる状態に通路シートを枠体に積層することにより触媒の活性炭素繊維層を構成し、活性炭素繊維層の平板活性炭素繊維シートもしくは波板活性炭素繊維シートの下部縁部に波板活性炭素繊維シートもしくは平板活性炭素繊維シートの下部縁部よりも下方に位置する下辺部を形成すると共に下辺部に切欠部を形成し、切欠部が嵌合する渡部材を枠体の底部に設けたことを特徴とする。
【0006】
また、活性炭素繊維層の平板活性炭素繊維シートもしくは波板活性炭素繊維シートの下辺部に幅方向で高さが不連続となる不連続部を形成したことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1には本発明の一実施形態例に係る排煙処理装置を備えた排ガス処理システムの全体構成、図2には通路シートの斜視状態、図3には枠体の斜視状況、図4には触媒の概略平面、図5には図4中のV-V 線矢視、図6には触媒の斜視状況、図7には通路シートの正面視状態、図8には通路シートの装着状況の説明、図9には活性炭素繊維層の底面視状態を示してある。
【0008】
図1に基づいて排煙処理装置を備えた排ガス処理システムを説明する。
【0009】
図に示すように、例えば、火力発電設備の図示しない蒸気タービンを駆動するための蒸気を発生させるボイラ1では、石炭や重油等の燃料fが炉で燃焼されるようになっている。ボイラ1の排ガスには硫黄酸化物(SOx ) が含有され、排ガスは図示しない脱硝装置で脱硝されてガスガスヒータで冷却された後に集塵機2で除塵される。
【0010】
除塵された排ガスは押込ポンプ3により下部の導入口5から装置塔としての脱硫塔4に導入される。脱硫塔4の内部には活性炭素繊維層で形成される触媒6が備えられ、触媒6には硫酸生成用の水が上部の散水ノズル7から散布される。散水ノズル7には水タンク8からの水がポンプ9を介して供給され、散水ノズル7、水タンク8及びポンプ9により水供給手段が構成されている。
【0011】
水が上部から散布された触媒6の内部に排ガスを下部から通過させることにより、排ガスからSOx を反応除去する。触媒6を通過した排ガスは排出口12から排出され、煙突13を通して大気に放出される。
【0012】
触媒6の活性炭素繊維層の表面では、例えば、以下の反応により脱硫反応が生じる。即ち、
(1) 触媒6の活性炭素繊維層への二酸化硫黄SO2 の吸着。
(2) 吸着した二酸化硫黄SO2 と排ガス中の酸素O2(別途供給することも可)との反応による三酸化硫黄SO3 への酸化。
(3) 酸化した三酸化硫黄SO3 の水H2O への溶解による硫酸H2SO4 の生成。
(4) 生成された硫酸H2SO4 の活性炭素繊維層からの離脱。
【0013】
この時の反応式は以下の通りである。
SO2+1/2O2+H2O →H2SO4
【0014】
反応除去された硫酸H2SO4 は希硫酸となって排出ポンプ10を介して硫酸タンク11に排出される。このようにして、触媒6中で排ガス中の二酸化硫黄SO2 を吸着して酸化し、水H2O と反応させて硫酸H2SO4 を生成して離脱除去することにより、排ガス流の脱硫が行われる。
【0015】
図2乃至図7に基づいて触媒6における活性炭素繊維層の構成を説明する。
【0016】
図2に示すように、平板状の平板活性炭素繊維シート21と波板状の波板活性炭素繊維シート22とが接合されて通路15を有する通路シート16とされている。平板活性炭素繊維シート21及び波板活性炭素繊維シート22は、ピッチ系、フェノール系等の綿状の活性炭素繊維がバインダを用いて板状にされ、波板活性炭素繊維シート22はコルゲータにより波型にされる。その後、窒素ガス等の非酸化雰囲気下で、例えば、600 ℃乃至1200℃に熱処理されて脱硫反応用の活性炭素繊維を得る。即ち、熱処理により、疎水性の大きな表面にして二酸化硫黄SO2 の吸着を容易に起こさせると共に生成された硫酸H2SO4 の離脱を速やかに進行させる状態にする。
【0017】
熱処理を行った平板活性炭素繊維シート21及び波板活性炭素繊維シート22をバインダの融着により接合して通路シート16を形成する。バインダの融着により接合しているので、有機物等の接着剤が用いられていない。このため、接着剤が脱硫反応に影響を与えることがなくなり、また、接合の信頼性が高まり圧力損失への影響をなくすことができる。
【0018】
通路シート16は、図3に示した枠体17に重ねて順次挿入され、図4乃至図6に示すように、枠体17に多数枚の通路シート16が通路15を上下方向にして所定の圧力で充填されることで活性炭素繊維層20とされる。つまり、枠体17及び多数枚の通路シート16が枠体17に充填された状態で形成される活性炭素繊維層20とから触媒6が構成されている。
【0019】
図3に示すように、枠体17は、四角枠状の上部フレーム35と四角枠状の底部を形成する下部フレーム36との四隅同士が上下に延びるコーナーアングル37によって連結されて立体的に構成されている。そして、上部フレーム35及び下部フレーム36にはサポートが適宜設けられ、下部フレーム36には通路シート16の下辺部位が載置される側部サポート38が設けられている。
【0020】
また、下部フレーム36には通路シート16の積層方向に延びる渡部材39が設けられ、多数枚の通路シート16が渡部材39に沿って充填されて活性炭素繊維層20とされると、枠体17の側面周囲部はカバー40によって覆われるようになっている。また、コーナーアングル37の上部には吊り上げ用(ハンドリング用)の穴34が形成されている。
【0021】
通路シート16の形状及び活性炭素繊維層20の状況を図2及び図6、図7に基づいて説明する。
【0022】
図6に示すように、所定の状態で多数枚の通路シート16が充填されて活性炭素繊維層20とされた平板活性炭素繊維シート21の間のピッチpは例えば、4 mm程度に設定され、波板活性炭素繊維シート22の山部の幅hは10mm程度に設定される。そして、触媒6には、上から粒径が200 μm 程度の水が噴霧されて供給されると共に排ガスが下から送られ、活性炭素繊維層20を流通した水は粒径が数mm程度となって脱硫塔4の下部に落下する。排ガスは、通路シート16を積層して形成される比較的小さな通路15を流通するようになっているので、圧力損失の増大が抑制されている。
【0023】
図2及び図7に示すように、活性炭素繊維層20の平板活性炭素繊維シート21の下部縁部には波板活性炭素繊維シート22の下端縁部よりも下方に配される下辺部23が形成されている。例えば、波板活性炭素繊維シート22が500mm 程度の場合、下辺部23は20mm程度とされる。尚、下辺部は波板活性炭素繊維シート22の下端側に設けてもよく、寸法も通路15の断面積に応じて増減させることが可能である。そして、下辺部23には幅方向に鋸歯状の高低縁24が形成されている。つまり、高低縁24により下辺部23が幅方向で高さが不連続となる不連続部が形成されている。
【0024】
一方、平板活性炭素繊維シート21の下辺部23の両端部には端部切欠部26が形成され、下辺部23の中央部には切欠部27が形成されている。通路シート16を積層して充填する際に、端部切欠部26が側部サポート38に嵌合すると共に切欠部27が渡部材39に嵌合する。このため、活性炭素繊維層20の下部の板状の下辺部23の中央部が渡部材39により補強され、変形等が生じることがなくなる。
【0025】
触媒6を構成するに際して枠体17に活性炭素繊維層20を形成する場合、図8に示すように、下辺部23の端部切欠部26を側部サポート38に嵌合載置すると共に切欠部27を渡部材39に嵌合しながら通路シート16を一枚ずつ積層して枠体17に充填していく。この時、切欠部27を渡部材39に嵌合することで、通路シート16の幅方向の位置決めが容易に行え、積層の作業性を向上させることができる。
【0026】
所定枚数の積層が完了した後(所定圧力で充填された後)、図示しない固定手段等で多数枚の通路シート16を枠体17に固定して活性炭素繊維層20を形成する。これにより、図4乃至図6に示した触媒6とされる。触媒6は、枠体17の側部サポート38の穴34を用いて枠体17を吊り上げる等することでハンドリングされる。
【0027】
枠体17に通路シート16を積層して充填することで活性炭素繊維層20を形成し、触媒6を構成したので、触媒6のハンドリングを容易に行うことが可能になる。また、通路シート16、特に、下部の板状の下辺部23の変形等を防止することが可能になる。尚、枠体17に活性炭素繊維層20を形成した触媒6を構成する通路シート16としては、下辺部23を備えていない平板活性炭素繊維シート21を用いることも可能である。
【0028】
ところで、図9に示すように、毛細管現象により通路15の下方部に水膜31が発生して排ガスの流れを阻害したり、水の排水性を阻害することが考えられる。
【0029】
本実施形態例では、平板活性炭素繊維シート21の下辺部23が波板活性炭素繊維シート22の下端縁部よりも下方に配されているので、底部における通路15の断面積が大きくなった状態とされる。このため、通路15の下方部に水膜31が発生することがなくなる。
【0030】
また、図9に示すように、平板活性炭素繊維シート21同士の間のピッチが狭いため、下辺部23同士に水膜32が発生することが考えられる。平板活性炭素繊維シート21の下辺部23同士に水膜32が発生すると、触媒6の傾き等により水は低いほうに移動して一箇所から滴下することになる。
【0031】
例えば、上下に活性炭素繊維層20が重ねて配されている場合、上方の活性炭素繊維層20の一箇所から水が滴下すると、下方の活性炭素繊維層20には偏って水が供給されて均一に分散せず、二酸化硫黄SO2 の除去効率を低下させることになってしまう。
【0032】
本実施形態例では、下辺部23には幅方向に鋸歯状の高低縁24が形成されて幅方向で高さが不連続とされている。このため、下辺部23同士に水膜32が発生しても高低縁24の低い場所から分散して多数の箇所から水が滴下することになり、一箇所に集中して滴下することがなくなる。
【0033】
上記構成の触媒6では、枠体17に形成される活性炭素繊維層20の平板活性炭素繊維シート21に下辺部23を形成したので、通路15の下方部の断面積が大きくなった状態とされ、通路15の部位に水膜31が発生することがなくなる。このため、通路15が塞がれて排ガスの流れを阻害したり、水の排水性を阻害することがなくなる。
【0034】
また、触媒6を構成する活性炭素繊維層20の平板活性炭素繊維シート21の下辺部23に幅方向に鋸歯状の高低縁24を形成して幅方向に高さを不連続としたので、下辺部23同士に水膜32が発生しても高低縁24の低い場所から分散して多数の箇所から水が滴下する。このため、活性炭素繊維層20を複数段に配置しても活性炭素繊維層20に水が均一に分散し、二酸化硫黄SO2 の除去効率に影響を及ぼすことがなくなる。
【0035】
上述した排煙処理装置では、触媒6は枠体17に通路シート16が積層されて活性炭素繊維層20が形成されているので、触媒6のハンドリングを容易に行うことが可能になる。また、通路シート16、特に、下部の板状の下辺部23の変形等を防止することが可能になる。
【0036】
従って、水分が均一に添加され圧力損失が少ない状態で流れが阻害されずに排ガスを通過させることができハンドリングが容易な触媒を備えた排煙処理装置とすることが可能になる。
【0037】
尚、上述した実施形態例の排煙処理装置では、排ガスを脱硫塔4の下部から導入して上部に排出する例を挙げて説明したが、排ガスの導入位置及び排出位置はこれに限定されず、排ガスを脱硫塔4の上部から導入して下部に排出する等の構成でも可能である。また、希硫酸を硫酸タンク11に排出する例を挙げて説明したが、希硫酸を石膏析出槽に排出するようにすることも可能である。
【0038】
【発明の効果】
本発明の排煙処理装置は、硫黄酸化物を含有する排ガスが流通する装置塔内に設けられ活性炭素繊維層で形成される触媒と、触媒の上部における装置塔内に設けられ触媒に硫酸生成用の水を供給する水供給手段とからなる排煙処理装置において、平板状の平板活性炭素繊維シートと波板状の波板活性炭素繊維シートとを接合して通路シートを形成し、通路が上下に延びる状態に通路シートを枠体に積層することにより触媒の活性炭素繊維層を構成したので、触媒のハンドリングを容易に行うことが可能になる。この結果、ハンドリングが容易な触媒を備えた排煙処理装置とすることが可能になる。
【0039】
また、活性炭素繊維層の平板活性炭素繊維シートもしくは波板活性炭素繊維シートの下部縁部に波板活性炭素繊維シートもしくは平板活性炭素繊維シートの下部縁部よりも下方に位置する下辺部を形成すると共に下辺部に切欠部を形成し、切欠部が嵌合する渡部材を枠体の底部に設けたので、下辺部により通路の下方部の断面積が大きくなった状態とされ、通路の部位に水膜が発生することがなくなるため、通路が塞がれて排ガスの流れを阻害したり、水の排水性を阻害することがなくなると共に、下辺部が補強されて変形等が生じることがなくなる。この結果、活性炭素繊維層に水分が均一に添加され圧力損失が少ない状態で流れが阻害されずに排ガスを通過させることができ、ハンドリングが容易で通路シートの積層の作業性が良好な触媒を備えた排煙処理装置とすることが可能になる。
【0040】
また、活性炭素繊維層の平板活性炭素繊維シートもしくは波板活性炭素繊維シートの下辺部に幅方向で高さが不連続となる不連続部を形成したので、下辺部同士に水膜が発生しても不連続部の低い多数の場所から水を滴下させて水を均一に分散することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1には本発明の一実施形態例に係る排煙処理装置を備えた排ガス処理システムの全体構成図。
【図2】通路シートの斜視図。
【図3】枠体の斜視図。
【図4】触媒の概略平面図。
【図5】図4中のV-V 線矢視図。
【図6】触媒の斜視図。
【図7】通路シートの正面図。
【図8】通路シートの装着状況の説明図。
【図9】活性炭素繊維層の底面図。
【符号の説明】
1 ボイラ
2 集塵機
3 押込ポンプ
4 脱硫塔
5 導入口
6 触媒
7 散水ノズル
8 水タンク
9 ポンプ
10 排出ポンプ
11 硫酸タンク
12 排出口
13 煙突
15 通路
16 通路シート
17 枠体
20 活性炭素繊維層
21 平板活性炭素繊維シート
22 波板活性炭素繊維シート
23 下辺部
24 高低縁
26 端部切欠部
27 切欠部
34 穴
35 上部フレーム
36 下部フレーム
37 コーナーアングル
38 側部サポート
39 渡部材
Claims (2)
- 硫黄酸化物を含有する排ガスが流通する装置塔内に設けられ活性炭素繊維層で形成される触媒と、触媒の上部における装置塔内に設けられ触媒に硫酸生成用の水を供給する水供給手段とからなる排煙処理装置において、平板状の平板活性炭素繊維シートと波板状の波板活性炭素繊維シートとを接合して通路シートを形成し、通路が上下に延びる状態に通路シートを枠体に積層することにより触媒の活性炭素繊維層を構成し、活性炭素繊維層の平板活性炭素繊維シートもしくは波板活性炭素繊維シートの下部縁部に波板活性炭素繊維シートもしくは平板活性炭素繊維シートの下部縁部よりも下方に位置する下辺部を形成すると共に下辺部に切欠部を形成し、切欠部が嵌合する渡部材を枠体の底部に設けたことを特徴とする排煙処理装置。
- 請求項1において、活性炭素繊維層の平板活性炭素繊維シートもしくは波板活性炭素繊維シートの下辺部に幅方向で高さが不連続となる不連続部を形成したことを特徴とする排煙処理装置。
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