JP3872419B2 - 光電陰極、電子管及び光電陰極の組立方法 - Google Patents

光電陰極、電子管及び光電陰極の組立方法 Download PDF

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    • H01J43/08Cathode arrangements

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光透過部材を透過した光を光電陰極板に入射させて光電子を放出させる光電陰極、そのような光電陰極を備えた電子管及び光電陰極の組立方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来におけるこの種の技術としては、例えば、特許文献1に記載された電子管がある。この特許文献1記載の電子管は、光電陰極板を面板と支持板とで挟み込み、面板に埋め込んだピンと支持板とを接合することで、光電陰極板を面板に固定している。この電子管において長波長光を検出するためにフィールドアシスト型の光電陰極として用いる場合には、ピンと支持板とを導電性材料により形成すれば、これらを介して光電陰極板にバイアス電圧を印加することが可能になる。
【0003】
なお、上述したようなフィールドアシスト型の光電陰極は、例えば、特許文献2にも記載されている。この特許文献2記載のフィールドアシスト型の光電陰極の光電陰極板は、接着剤を用いて電子管の本体内面に固定されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−42636号公報
【特許文献2】
特開平8−255580号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1記載の電子管にあっては、面板に貫通孔を形成してピンを埋め込むという作業に細心の注意を要するため、作業性が若干低下してしまう。また、特許文献2記載の電子管にあっては、温度変動などによって接着剤が劣化し、最悪の場合には光電陰極板が剥がれ落ちてしまうという問題が考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、作業性良く確実に光透過部材に光電陰極板を保持させることのできる光電陰極、電子管及び光電陰極の組立方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る光電陰極は、光透過部材を透過した光を光電陰極板に入射させて、光電陰極板から光電子を放出させる光電陰極において、光透過部材に取り付けられると共に、光電陰極板が配置される第1の開口部を有する保持部材と、光電陰極板を光透過部材とで挟み込むと共に、光電子を通過させる第2の開口部を有する支持板とを備え、保持部材には、支持板に押し付けられるように折り曲げられて、支持板を光電陰極板に押圧する爪部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この光電陰極においては、光透過部材に取り付けられた保持部材の爪部を支持板に押し付け、光電陰極板を光透過部材と支持板とで挟み込む。これにより、支持板が光電陰極板に押圧されるため、光電陰極板は支持板によって光透過部材に押圧されることになる。したがって、光電陰極板を光透過部材に対して確実に保持させることができ、しかも、構成が簡易であるため組立ての作業性も良い。さらに、光電陰極板に保持部材の爪部を直接押し付けるのではなく、爪部と光電陰極板との間に支持板を介在させているため、光電陰極板に破損等が生じるのを防止することができる。
【0009】
また、爪部は、等間隔をもって支持板を囲むように複数設けられていることが好ましい。支持板を囲んで等間隔に配置された複数の爪部が支持板に押し付けられるため、支持板は均一な荷重配分で光電陰極板に押圧されることになる。したがって、より安定した光電陰極板の保持が可能になる。
【0010】
また、光電陰極板は、保持部材の第1の開口部内に嵌り込むことが好ましい。このような構成によれば、光電陰極の組立時において光電陰極板の組込み及び位置決め作業が極めて容易になり、光電陰極の組立作業の効率化がより一層図られる。さらに、光電陰極板の横方向への位置ずれが防止される。
【0011】
また、保持部材には、光電陰極板を包囲する環状の包囲部が設けられ、その包囲部内に支持板が嵌り込むことが好ましい。このような構成によれば、光電陰極の組立時において支持板の組込み及び位置決め作業が極めて容易になり、光電陰極の組立作業の効率化がより一層図られる。しかも、支持板と包囲部とを密接させた場合には、支持板の第2の開口部から覗く光電陰極板の電子放出面に対し、仕事関数を低下させて光電子を放出させやすくするためのアルカリ金属等を蒸着する際に、このアルカリ金属が光電陰極板の側面に付着するのを防止することが可能になる。
【0012】
また、光透過部材には、光電陰極板と電気的に接続する第1の導電膜が形成され、その第1の導電膜を介して光電陰極板に電圧が印加されることが好ましい。このような構成においては、例えば、第1の導電膜に電圧印加用電源の負極を接続することで、光電陰極板と電圧印加用電源の負極との電気的接続が達成される。したがって、光電陰極板の光入射面側に接するように設けられた負極側の電極に対してワイヤやピン等によるアクセスが不要になり、光電陰極の複雑化を防止することができる。
【0013】
また、保持部材は、導電性材料により形成され、第1の導電膜と電気的に接続し、その保持部材と第1の導電膜とを介して光電陰極板に電圧が印加されることが好ましい。このような構成においては、例えば、保持部材に電圧印加用電源の負極を接続することで、光電陰極板と電圧印加用電源の負極との電気的接続が達成される。したがって、光電陰極板の光入射面側に接するように設けられた負極側電極に対してワイヤやピン等によるアクセスが不要になり、光電陰極の複雑化を防止することができる。
【0014】
また、光電陰極板は、その両面にバイアス電圧が印加されてもよい。このような構成においては、例えば、保持部材にバイアス電圧印加用電源の負極を接続することで、光電陰極板とバイアス電圧印加用電源の負極との電気的接続が達成される。したがって、フィールドアシスト型の光電陰極として用いる場合にも、光電陰極板の光入射面側に接するように設けられた負極側電極に対してワイヤやピン等によるアクセスが不要になり、光電陰極の複雑化を防止することができる。
【0015】
また、支持板には、光電陰極板と電気的に接続する第2の導電膜が、光電陰極板と接触する面からその反対側の面に第2の開口部の壁面を介して連続するように形成され、その第2の導電膜を介して光電陰極板に電圧が印加されることが好ましい。このような構成においては、例えば、支持板の反対側の面に形成された第2の導電膜にバイアス電圧印加用電源の正極を接続することで、光電陰極板とバイアス電圧印加用電源の正極との電気的接続が達成される。したがって、フィールドアシスト型の光電陰極として用いる場合にも、光電陰極板の光電子放出面側に接するように設けられた正極側の電極に対してワイヤやピン等によるアクセスが不要になり、光電陰極の複雑化を防止することができる。
【0016】
本発明に係る電子管は、上述した光電陰極を備えたことを特徴とする。
【0017】
この電子管における光電陰極は、光透過部材に取り付けられた保持部材の爪部を支持板に押し付け、光電陰極板を光透過部材と支持板とで挟み込むことで、光電陰極板を光透過部材に確実に保持させている。このように、光電陰極板の保持に接着剤を用いないで済むので、そのような接着剤からのガスの発生によって電子管内の真空度が低下するというようなこともない。なお、電子管とは、光電陰極を用いて微弱光を検出する装置をいい、光電子増倍管、ストリーク管、イメージインテンシファイア等が含まれる。
【0018】
本発明に係る光電陰極の組立方法は、光透過部材を透過した光を光電陰極板に入射させて、光電陰極板から光電子を放出させる光電陰極において、光電陰極板が配置される第1の開口部を有する保持部材を光透過部材に取り付ける工程と、光電子を通過させる第2の開口部を有する支持板と光透過部材とで光電陰極板を挟み込む工程と、保持部材に設けられた爪部を支持板に押し付けるように折り曲げて、支持板を光電陰極板に押圧する工程とを備えたことを特徴とする。
【0019】
この光電陰極の組立方法によれば、一例として、光透過部材に保持部材を取り付けた後、光電陰極板を光透過部材と支持板とで挟み込んで、保持部材が有する爪部を支持板に押し付けるという極めて容易な作業によって、光電陰極板を光透過部材に保持させることができる。したがって、光電陰極の組立てを効率良く行うことが可能になる。なお、光電陰極板を光透過部材と支持板とで挟み込んだ後に、光透過部材に保持部材を取り付けることもできる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る光電陰極、光電陰極の組立方法及び電子管の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、光電陰極1は、前方(上方)から入射した光(hν)に感応して後方(下方)に光電子(e-)を放出する光電陰極板(いわゆる光電面として機能する半導体結晶)2が組み込まれた透過型のフィールドアシスト型光電陰極であり、光電子増倍管等の電子管における光電変換部として用いられる。この光電陰極1は、石英ガラスにより形成された円板状の光透過板(光透過部材)3を有し、この光透過板3の下面3aには、軸線Lを中心として円形の凹部4が形成されている。
【0022】
図1及び図2に示すように、この凹部4の底面4aには、軸線Lを中心とした円形の光通過領域Aを除いて、Crからなる第1の導電膜6が形成されており、この第1の導電膜6は、凹部4の底面4aから側面4b、さらに下面3aにかけて一様に広がっている(図2の梨地領域)。したがって、光透過板3を透過する光(hν)は、底面4aの光通過領域Aを通過することになる。なお、第1の導電膜6の材料は、石英ガラスへの馴染が良く剥離しにくいことからCr,Ti,Cu等が好適であるが、導電性を有していれば他の材料であってもよい。
【0023】
この光透過板3の凹部4内には、光電陰極板2を保持するためのコバール製保持部材7が嵌め込まれている。この保持部材7は、凹部4の底面4aに接触する円形薄板状の保持部8を有すると共に、この保持部8と底面4aに形成された導電膜6とがIn(インジウム)接合されることで、光透過板3に強固に固定される。なお、保持部材7をNi製としても、In接合によって強固な固定力を確保することができる。
【0024】
この保持部8には、光通過領域Aよりも広い矩形の第1の開口部9が形成されており、この第1の開口部9内に、軸線L方向から見たときの外形が第1の開口部9と同形状である矩形薄板状の光電陰極板2が光透過部材3に接触するように嵌め込まれる。これにより、光電陰極板2の光入射面2aは、保持部8の第1の開口部9から覗く第1の導電膜6と電気的に接続される。
【0025】
さらに、保持部8の外縁には、凹部4の側面4bに沿わせるための円環状の包囲部11が一体的に形成されている。この包囲部11は、光電陰極板2の側面2cとの間に空隙Sをもって光電陰極板2を包囲している。そして、この包囲部11内には、軸線L方向から見たときの外形が包囲部11の内面と同形状である円板状のセラミックス製支持板12が光電陰極板2に接触するように嵌め込まれる。この支持板12には、光電陰極板2の電子放出面2bから放出される光電子(e-)を通過させる円形の第2の開口部13が形成されている。
【0026】
この支持板12の第2の開口部13側の縁部には、Crからなる第2の導電膜14が形成されている(図2の梨地領域)。この第2の導電膜14は、第2の開口部13の壁面を介して支持板12の上面12aから下面12bにかけて連続するように形成されると共に、上面12a側において光電陰極板2の電子放出面2bと電気的に接続される。なお、第2の導電膜14の材料は、電子管の真空度の低下を招くガス発生を起こさないことからCr,Ti,Ag等が好適であるが、導電性を有していれば他の材料であってもよい。
【0027】
さらに、包囲部11の下端部には、軸線Lを中心に等間隔をもって(90度毎に)4つの爪部16が一体的に形成されている。この爪部16は、図1及び図3に示すように、支持板12の下面12bの外縁における非導電性領域B(第2の導電膜14が形成されていない領域)に押し付けられるように軸線Lに向けて直角に折り曲げられて、支持板12を光電陰極板2に押圧する。なお、爪部16の個数は4つに限定されない。例えば、包囲部11の下端部に、対向する一対の爪部16を一体的に形成してもよい。
【0028】
以上のように構成された光電陰極1においては、光透過板2に固定された保持部材7の爪部16を支持板12の下面12bに押し付け、光電陰極板2を光透過板3と支持板12とで挟み込む。これにより、支持板12が光電陰極板2に押圧されるため、光電陰極板2は支持板12によって光透過板3に押圧されることになる。したがって、光電陰極板2を光透過板3に対して確実に保持させることができる。
【0029】
また、保持部材7は、コバールという導電性材料からなり、第1の導電膜6を介して光電陰極板2の光入射面2aと電気的に接続されているが、保持部材7の爪部16は、セラミックスという電気的絶縁性材料からなる支持板12を介して光電陰極板2を電子放出面2b側から押圧している。そのため、光電陰極板2の光入射面2aと電子放出面2bとが保持部材7を介して導通することもない。
【0030】
しかも、光電陰極板2の電子放出面2bに爪部16を直接押し付けるのではなく、爪部16と光電陰極板2との間にセラミックス製の支持板12を介在させて光電陰極板2と支持板12とを面接触させるため、光電陰極板2に破損等が生じるのを防止することができる。
【0031】
さらに、4つの爪部16は、等間隔をもって支持板12を囲むように設けられて、支持板2に押し付けられるため、支持板12は均一な荷重配分で光電陰極板2に押圧されることになる。したがって、安定した光電陰極板2の保持が可能になる。
【0032】
次に、上述した光電陰極1の組立方法について説明する。
【0033】
まず、光透過板3において、下面3a、凹部4の底面4aのうち光通過領域Aを除く領域及び凹部4の側面4bにCrを蒸着して第1の導電膜6を形成する。同様に、支持板12の第2の開口部13側縁部の所定領域にCrを蒸着して第2の導電膜14を形成する。導電膜6,14の形成後、図4に示すように、光透過板3の凹部4内に保持部材7を嵌め込み、保持部材7の保持部8と凹部4の底面4aとをIn接合することで、光透過板3に保持部材7を固定する。このとき、保持部材7の爪部16は折り曲げず、下方に向けて真直ぐに延在させておく。
【0034】
続いて、図5に示すように、保持部材7の第1の開口部9内に光電陰極板2を嵌め込み、光電陰極板2の光入射面2aと、光透過板3に形成された第1の導電膜6とを電気的に接続させる。このように、第1の開口部9内に光電陰極板2を嵌め込むという極めて容易な作業によって、光電陰極板2の組込み及び位置決め、並びに光入射面2aと第1の導電膜6との電気的接続が達成され、光電陰極板2の横方向への位置ずれも防止される。
【0035】
光電陰極板2の嵌め込み後、図6に示すように、保持部材7の包囲部11内に支持板12を嵌め込み、光電陰極板2の電子放出面2bと、支持板12の上面12aに形成された第2の導電膜14とを電気的に接続させる。このように、包囲部11内に支持板12を嵌め込むという極めて容易な作業によって、支持板2の組込み及び位置決め、並びに電子放出面2bと第2の導電膜14との電気的接続が達成される。続いて、図7に示すように、保持部材7の爪部16を支持板12の下面12bに押し付けるように折り曲げて、支持板12を光電陰極板2に押圧することによって、光電陰極板2を光透過板3に対して保持させる。
【0036】
そして最後に、光電陰極板2の電子放出面2bに対し、仕事関数を低下させて光電子(e-)を放出させやすくするため、Cs等のアルカリ金属(或いはその酸化物等)を蒸着する。このとき、図1に示すように、光透過板3と接触する光電陰極板2の側面2cは包囲部11と支持板12とで覆われているため、包囲部11と光電陰極板2の側面2cとの間に形成された空隙Sへのアルカリ金属蒸気の流入が防止される。そのため、支持板12の第2の開口部13から覗く電子放出面2bにのみアルカリ金属層が形成されて、側面2cへのアルカリ金属の付着は防止される。したがって、側面2cを介した光入射面2aと電子放出面2bとの短絡を防止することができる。なお、支持板12の材料として面の粗いセラミックスを用いれば、支持板12の表面にアルカリ金属が付着しても支持板12の電気抵抗は高く維持される。したがって、支持板12及び保持部材7を介した光入射面2aと電子放出面2bとの短絡を防止することができる。
【0037】
以上のような光電陰極1の組立方法によれば、光透過板3に保持部材7を固定した後、光電陰極板2を光透過板3と支持板12とで挟み込んで、保持部材7の爪部16を支持板12に押し付けるという極めて容易な作業によって、光電陰極板2を光透過板3に保持させることができる。したがって、光電陰極1の組立てを効率良く行うことが可能になる。
【0038】
なお、電気的接続を確実なものとするために、光入射面2aと導電膜6とをIn接合してもよい。同様に、電子放出面2bと導電膜14とをIn接合してもよい。そして、光電陰極1においては、In接合に代えて、他の低融点金属を用いた接合を行ってもよい。
【0039】
次に、上述した光電陰極1を備えた電子管である光電子増倍管について説明する。
【0040】
図8に示すように、光電子増倍管20においては、金属製のステム21に金属製の側管22が気密に固定され、さらに、この側管22の上端部に光電陰極1が気密に固定されることで、真空容器が形成されている。この側管22と光電陰極1との固定は、側管22の上端部に形成された内向きフランジ部23と光透過部材3の下面3aに形成された第1の導電膜6とをIn接合することで達成されている。
【0041】
このように形成された真空容器内にはメタルチャンネルダイノード24が設置され、このメタルチャンネルダイノード24と光電陰極1との間には、ステムピン26と接続された格子状の収束電極27が設置されている。したがって、光電陰極板2から放出された光電子(e-)は、収束電極27によってメタルチャンネルダイノード24の一段目のダイノード24aに収束される。これにより、光電子(e-)はメタルチャンネルダイノード24内で順次増倍され、最終段のダイノード24bから2次電子群が放出される。この二次電子群はアノード28に達し、このアノード28と接続されたステムピン29を介して外部に出力される。
【0042】
さらに、収束電極27には、支持板12の下面12bに向かって内側に傾いて延在する一対のコンタクト用電極31が一体的に形成されている。このコンタクト用電極31の上端部は、支持板12の下面12bに形成された第2の導電膜14に圧接されている。
【0043】
以上のように構成された光電子増倍管20によれば、バイアス電圧印加用電源(図示せず)の負極を側管22に接続することで、第1の導電膜6を介して光電陰極板2の光透過面2aとの電気的接続が達成される。一方、バイアス電圧印加用電源の正極をステムピン26に接続することで、収束電極27、コンタクト用電極31及び第2の導電膜14を介して光電陰極板2の電子放出面2bとの電気的接続が達成される。
【0044】
このように、フィールドアシスト型の光電陰極板2のバイアス電圧印加用電極に対してワイヤやピン等によるアクセスが不要になり、光電陰極1の複雑化を防止することができ、光電子増倍管20を小型化することが可能になる。なお、バイアス電圧印加用電源の負極を保持部材7に接続しても、第1の導電膜6を介して光透過面2aとの電気的接続が達成される。
【0045】
また、光電子増倍管20においては、光電陰極板2の保持に接着剤を用いないで済むため、そのような接着剤からのガスの発生によって光電子増倍管20内の真空度が低下するというようなこともない。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上述した光電陰極1は、保持部材7において保持板8の外縁に包囲部11を一体的に形成した場合であったが、図9に示す光電陰極10のように、保持板8の開口部9側の縁部に環状の包囲部11を一体的に形成してもよい。この場合には、光電陰極板2の光透過面2aと電子放出面2bとの短絡を防止するため、光電陰極板2の側面2cと包囲部11との間に電気的絶縁性部材(図示せず)を介在させることが望ましい。
【0047】
また、上記光電陰極1においては、光透過板3の下面3aに凹部4を形成したが、このような凹部4を形成しなくても光電陰極板2の保持には影響がない。また、本発明に係る光電陰極によれば、フィールドアシスト型の光電陰極に限らず種々の光電陰極において光電陰極板の保持が可能である。さらに、本発明に係る光電陰極は、上述の光電子増倍管20に限らず、ストリーク管やイメージインテンシファイア等、種々の電子管に対して光電陰極としての適用が可能である。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る光電陰極、電子管及び光電陰極の組立方法よれば、光透過部材に取り付けられた保持部材の爪部を支持板に押し付け、光電陰極板を光透過部材と支持板とで挟み込むことで、作業性良く確実に光透過部材に光電陰極板を保持させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光電陰極の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示した光電陰極の分解斜視図である。
【図3】図1に示した光電陰極の底面図である。
【図4】光透過板の凹部内に保持部材を嵌め込んだ状態を示す斜視図である。
【図5】保持部材の開口部内に光電陰極板を嵌め込んだ状態を示す斜視図である。
【図6】保持部材の包囲部内に支持板を嵌め込んだ状態を示す斜視図である
【図7】保持部材の爪部を支持板に押し付けるように折り曲げた状態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る電子管の一実施形態である光電子増倍管を示す断面図である。
【図9】本発明に係る光電陰極の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1,10…光電陰極、2…光電陰極板、3…光透過板(光透過部材)、6…第1の導電膜、7…保持部材、9…第1の開口部、11…包囲部、12…支持板、13…第2の開口部、14…第2の導電膜、16…爪部、20…光電子増倍管(電子管)。

Claims (10)

  1. 光透過部材を透過した光を光電陰極板に入射させて、前記光電陰極板から光電子を放出させる光電陰極において、
    前記光透過部材に取り付けられると共に、前記光電陰極板が配置される第1の開口部を有する保持部材と、
    前記光電陰極板を前記光透過部材とで挟み込むと共に、前記光電子を通過させる第2の開口部を有する支持板とを備え、
    前記保持部材には、前記支持板に押し付けられるように折り曲げられて、前記支持板を前記光電陰極板に押圧する爪部が設けられていることを特徴とする光電陰極。
  2. 前記爪部は、等間隔をもって前記支持板を囲むように複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の光電陰極。
  3. 前記光電陰極板は、前記保持部材の前記第1の開口部内に嵌り込むことを特徴とする請求項1又は2記載の光電陰極。
  4. 前記保持部材には、前記光電陰極板を包囲する環状の包囲部が設けられ、その包囲部内に前記支持板が嵌り込むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光電陰極。
  5. 前記光透過部材には、前記光電陰極板と電気的に接続する第1の導電膜が形成され、その第1の導電膜を介して前記光電陰極板に電圧が印加されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の光電陰極。
  6. 前記保持部材は、導電性材料により形成され、前記第1の導電膜と電気的に接続し、その保持部材と前記第1の導電膜とを介して前記光電陰極板に電圧が印加されることを特徴とする請求項5記載の光電陰極。
  7. 前記光電陰極板は、その両面にバイアス電圧が印加されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光電陰極。
  8. 前記支持板には、前記光電陰極板と電気的に接続する第2の導電膜が、前記光電陰極板と接触する面からその反対側の面に前記第2の開口部の壁面を介して連続するように形成され、その第2の導電膜を介して前記光電陰極板に電圧が印加されることを特徴とする請求項7記載の光電陰極。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項記載の光電陰極を備えたことを特徴とする電子管。
  10. 光透過部材を透過した光を光電陰極板に入射させて、前記光電陰極板から光電子を放出させる光電陰極において、
    前記光電陰極板が配置される第1の開口部を有する保持部材を前記光透過部材に取り付ける工程と、
    前記光電子を通過させる第2の開口部を有する支持板と前記光透過部材とで前記光電陰極板を挟み込む工程と、
    前記保持部材に設けられた爪部を前記支持板に押し付けるように折り曲げて、前記支持板を前記光電陰極板に押圧する工程とを備えたことを特徴とする光電陰極の組立方法。
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