JP3871988B2 - 土留め枠及びこれを使用した土留め工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、法面や崖等の盛り土周囲の土留めを行うために使用する土留め枠に関し、特に、間伐材等の表面材を使用して、枠表面の美観を高めることができるようにした土留め枠に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
法面や崖等の盛り土は、既存のものでも新規のものでも、その周囲を何等かの手段によって保護しておかないと、風雨によって崩れてしまう。このため、法面や崖等の盛り土周囲の土留めは必ず行わなければならないが、この土留めを行うための土留め枠としては、従来種々なものが提案されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、図16に示すような「土留柵」が提案されているが、この土留柵は、当該公報の実用新案登録請求の範囲の記載からすると、
「少なくとも前面を斜面とし、底面の前後端にそれぞれ連結横材を嵌合させるための湾曲部を下方に膨出させて形成した支持枠と、該支持枠における前面の内側に横向きにして重積され、最下段に位置するものが上記湾曲部に嵌合せしめられた複数の土留用の棒材と、支持枠における底面の後端部に上記湾曲部への嵌合状態で横向きに載置され、土圧による支持枠の変移を防止する固定用の棒材と、からなる」
ものである。
【0004】
この図16に示したような従来の「土留柵」であれば、土留めの機能を発揮させることができるだけでなく、間伐材等の棒材を表面に露出させることができることから、各棒材自身の美しさによって、施工周囲の自然景観に合わせた美観を作り出すことができるものと考えられる。
【0005】
しかしながら、この図16に示した従来の「土留柵」は、複数の土留用の棒材を、「支持枠における前面の内側に横向きにして重積」しなければならず、また各棒材の内側には土を施工しなければならない筈であるから、その載置作業あるいは施工は、非常に手間と時間を要するのではないかと考えられる。何故なら、各棒材は、図16に示したように傾斜している支持枠の内面に載置しなければならないから、これを施工中に落下しないように保持しなければならないからである。
【0006】
以上の図16に示した土留柵での不便さを解消しているものとして、例えば図17に示したような「土留め柵」が提案されている。この土留め柵は、特許文献2にて提案されているものであって、図16に示した「土留柵」と同様に、棒材を「枠体」の裏面側にて支持するものである。また、この土留め柵は、当該公報の実用新案登録請求の範囲の記載からすると、棒材は、「(枠体の)傾斜部の凹凸に掛止され、傾斜部の上下方向に一定間隔おきに複数載置される受け金具」にて受けられるようにしたものである。このため、各棒材を受け金具によって支持させておけば、当該「土留め柵」の施工やその内側への客土が容易に行えるものとなったと考えられる。
【0007】
しかしながら、この図17に示した従来の「土留め柵」も、次のような不便さがある。つまり、横方向に載置された各棒材の間には、これを支持していた受け金具が存在していて、施工後に、この受け金具による「隙間」が各棒材間に残存することになるのである。横方向に載置された棒材間に隙間が存在すれば、この隙間から土が零れ出ることは当然あり得るものであり、施工の仕方によって隙間が不揃いとなれば、美観に悪影響を及ぼすことにもなると考えられる。
【0008】
そこで、本発明者は、間伐材等の表面材を使用して美観のある土留めを行うに当たって、土留めを確実に行えることは当然として、上述したような施工上の不便さがなく、しかも十分な美観を維持することのできる土留め枠とするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0009】
【特許文献1】
実開昭64−651号公報(実用新案登録請求の範囲)
【特許文献2】
実開平2−42942号(実用新案登録請求の範囲)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この種の土留め枠における以上の経緯に基づいてなされたもので、その解決しようとする課題は、土留めを確実に行うことができて、施工も簡単であり、しかも美観の維持及び形成を良好に行うことのできる土留め枠、及びこれを使用した土留め工法を、簡単な構成によって提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する実施の形態の説明中において使用する符号を付して説明すると、
「施工現場上に載置される載置部11aと、この載置部11aの前端から立ち上がって棒材や面材等の表面材20を支持することになる立ち上がり部11bとを有する複数のL型材11と、
これらのL型材11の各立ち上がり部11bと略平行でこれより前方に突出する立ち上がり部11bと、この立ち上がり部11bの下端に一体化された載置部11aとを有する複数の突出L型材11Aとを備え、
これらの突出L型材11A及びL型材11を連結横材12によって互いに連結することにより、突出L型材11AとL型材11との各立ち上がり部11bの間に、表面材20の複数を横にして収納できる収納空間Rを形成したことを特徴とする土留め枠10」
である。
【0012】
すなわち、この土留め枠10は、図13または図14に示すように、施工現場上に載置される載置部11aとこの載置部11aの前端から所定角度傾斜した状態で立ち上がる立ち上がり部11bとを有する複数のL型材11と、これらのL型材11と同様な載置部11a及び立ち上がり部11bを有してはいるが、この立ち上がり部11bがL型材11のそれより所定寸法前方へ突出することになる複数の突出L型材11Aとを、互いに平行に載置した状態で連結横材12によって連結したものである。これにより、この土留め枠10においては、図2に示すように、各L型材11の立ち上がり部11bの前面と、各突出L型材11Aの立ち上がり部11bの内面とで、間伐材等の棒材、あるいはブロック等の表面材20が収納されるべき収納空間Rが形成されることになる。以下で詳述する実施形態にあっては、表面材20として間伐材を採用しているから、収納空間Rの上方からみた幅はこの間伐材の太さ程度としたものである。
【0013】
これらのL型材11、突出L型材11A及び連結横材12は、土留め用の部材としての強度を確保するため、及び溶接で簡単に接続できるようにするために、鋼材によって形成することが最もよいが、例えば木材や、鋼材をモールドした強化樹脂等の他の材料で形成してもよい。各載置部11aと連結横材12との連結は、針金等によって行ってもよいし、上述したように溶接によって行ってもよい。
【0014】
当該土留め枠10の内側には、図2あるいは図6に示すように客土40が入れられるものであるため、各L型材11及び突出L型材11Aの載置部11a、これらを連結する連結横材12は施工現場上に載置され、かつアンカー16や杭等によって位置決め固定される部分となる。このため、各載置部11aの内端等には、アンカー16が挿通されるべき円環部を形成することもある。
【0015】
一方、L型材11や突出L型材11Aの立ち上がり部11bは、土留めをすべき施工現場の傾斜面(法面)の傾斜角度を決定することになる部分であるから、上述した載置部11aに対して施工現場に応じた角度で傾斜したものとなっている。図1に示す例では、載置部11aが水平面上に載置されるものとした場合、載置部11aと立ち上がり部11bとの角度を約90度としたものであるが、この角度は、30度〜90度の範囲で自由に選定できる。
【0016】
収納空間R内に収納されるべき表面材20としては、種々なものが適用できるのであり、上述したような間伐材は勿論、その他の棒材、あるいは吸音構造を有したブロック、さらに図12に示すような補強シート、土のう、種々なネットやパネル、ポット等が適用できる。後述する土留め工法では、当該土留め枠10を護岸工事用のものとした場合を想定しており、間伐材として水に強い松材や杉材を採用している。また、新規造成の宅地の法面にあっては、表面材20として、種々な模様を付したブロックが適しており、道路に沿った法面では、上述した吸音構造を有したブロックを採用するとよい。
【0017】
表面材20としては、図1〜図5に示した太鼓引き間伐材の他に、図12に示すような補強シートも使用できる。この補強シートは、合成樹脂を材料としてパンチングメタルのような形状のものに形成したものであり、多数の穴を有したものである。この穴の形状は、図12に示したような四角に限らず、円や楕円、あるいは菱形等、種々のものがある。
【0018】
このような補強シートは、例えばU字状に折り曲げて上記収納空間R内に収納されるものであり、この収納空間R内にさらに収納空間を形成するように、その二つの面がL型材11及び突出L型材11Aの各立ち上がり部11bの内面に接触する状態で載置されるものである。そして、この表面材20によって形成された空間内に、U字状となった表面材20の上方開口から、例えば客土40を行うのである。これにより、当該土留め枠10を施工した後には、この補強シートが表面に現れることになるとともに、当該補強シート内に収納した客土40によって土留め枠10の表面を安定的に保護することになるものである。
【0019】
以上のように、収納空間Rは、L型材11及び突出L型材11Aの各立ち上がり部11bによって形成されるものであるため、上方に開口したものとなっている。また、この収納空間Rを形成しているのは、直線状に立ち上がる立ち上がり部11bであるため、図2に示すように、間伐材等の表面材20を上方から収納したり、あるいは図8に示すように、表面材20をこれに設けた挿通穴21によって各立ち上がり部11bに挿通したりするのに有利なように、何らの突起物もない状態となっている。このため、収納空間Rの上方開口からの表面材20の収納または挿通は、これを単に落とし込むだけで完了するため、非常に簡単に行えるのである。この場合、直線状の立ち上がり部11bは、各表面材20の案内と位置決めを行うことになり、収納空間R内に落とし込まれた表面材20を、図1に示すように、美麗に収めることになるのである。
【0020】
また、収納空間R内に収納された複数の表面材20は、多数の立ち上がり部11bによってのみ支えられているのであるから、図17に示した従来技術におけるような挟雑物は何もない。このため、各表面材20間は完全に密着した状態となっていて、図1に示すように、密着し合った各表面材20によって美しい壁面が形成されることになるのである。勿論、各表面材20間には隙間がないのであるから、当該土留め枠10の施工後において内側に投入される客土40が前面側に漏れ出ることも全くないのである。
【0021】
従って、以上のように構成した土留め枠10は、これを施工現場に載置して形成されている収納空間R内に表面材20を単に挿入し、その内側に客土40を行うだけで、法面や崖等の盛り土周囲の土留めを簡単に行えるだけでなく、この土留め後の法面表面の装飾を、収納空間R内に表面材20を単に収納するだけで簡単に行えるのであり、法面等の土留めが確実に行え、施工も簡単であり、しかも土留め施工を行った場所の美観の維持及び形成を良好に行えるのである。
【0022】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の土留め枠10について、
「突出L型材11Aを構成している立ち上がり部11bと、L型材11の立ち上がり部11b、またはこの立ち上がり部11bを互いに連結している横連結部材11cとを連結するための前後連結部材13を備えたこと」
である。
【0023】
すなわち、この請求項2の土留め枠10は、L型材11及び突出L型材11Aの各立ち上がり部11bによって形成した収納空間Rが、表面材20施工後に広がってしまわないようにしたものであり、そのために、突出L型材11Aを構成している立ち上がり部11bと、L型材11の立ち上がり部11b、またはこの立ち上がり部11bを互いに連結している横連結部材11cとを前後連結部材13によって連結できるようにしたものである。
【0024】
勿論、この前後連結部材13は、収納空間R内に表面材20を収納した後に使用されるものであり、突出L型材11Aを構成している立ち上がり部11bと、L型材11の立ち上がり部11b、またはこの立ち上がり部11bを互いに連結している横連結部材11cとにそれぞれ連結されるものである。この場合、この前後連結部材13は、図4及び図5に示すように、最上段の表面材20を跨ぐようにして連結されることもあるし、図8及び図9に示すように、最上段の表面材20の下側を通して連結されることもあるものである。また、この前後連結部材13は、鋼材によって収納空間Rの平面からみた幅程度の長さのものとして予め用意されたものであってもよいが、針金を施工現場の状況に合わせて使用するようにしたものであってもよい。
【0025】
従って、この請求項2に係る土留め枠10は、収納空間Rが表面材20施工後に広がってしまわないようにすることができるだけでなく、法面等の土留めが確実に行え、施工も簡単であり、しかも土留め施工を行った場所の美観の維持及び形成を良好に行えるのである。
【0026】
また、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の土留め枠10について、
「突出L型材11Aを、その各立ち上がり部11bの上端を互いに連結する横連結部材11cを有したものとし、この横連結部材11cと、L型材11の立ち上がり部11b、またはこの立ち上がり部11bを互いに連結している横連結部材11cとを連結するための前後連結部材13を備えたこと」
である。
【0027】
すなわち、この請求項3に記載の土留め枠10も、収納空間Rが表面材20施工後に広がってしまわないようにするものであるが、前後連結部材13の連結をより簡単に行えるようにするためと、各突出L型材11Aの載置部11aの互いの一体化を確実にするために、まず、突出L型材11Aの各立ち上がり部11bの上端を、図4及び図5に示すように、横連結部材11cによって互いに連結するようにしたものである。
【0028】
このような横連結部材11cが表面材20の前面で横方向に長く存在すれば、上記前後連結部材13の連結を行う場所の確保が簡単になるだけでなく、前後連結部材13の連結個所を多くすることもできるのである。
【0029】
従って、この請求項3に係る土留め枠10も、収納空間Rが表面材20施工後に広がってしまわないようにすることができるだけでなく、法面等の土留めが確実に行え、施工も簡単であり、しかも土留め施工を行った場所の美観の維持及び形成を良好に行えるのである。
【0030】
上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の土留め枠10について、
「各連結横材12の少なくとも一端を、側端に位置するL型材11より外方に突出させたこと」
である。
【0031】
この土留め枠10は、そのままで図1等に示した施工を行えるものではあるが、特に、崖や法面の隅角部に載置することを想定したものである。つまり、当該土留め枠10は、横方向に連続して載置される場合だけではなく、法面等の隅角部に載置しなければならない場合もある。そして、二つの土留め枠10を、平面からみて略L字状となるように連続させなければならない場合もある。
【0032】
このような場合には、図11に示すように、L字を構成する二つの土留め枠10の端部(具体的には最外端に位置する各L型材11)から、立ち上がり部11bに固定した連結横材12を互いに突出させて、これら連結横材12の突出部分を略L字に合わせて、針金で縛るか、互いに溶接等の手段によって連結するのである。このようにすれば、法面等の隅角部を囲む二つの土留め枠10は、各連結横材12の突出部分でしっかりと連結され、しかも隅角部を綺麗に仕上げることができるのである。
【0033】
従って、この請求項4の土留め枠10は、上記請求項1〜3のそれと同様な機能を発揮する他、特に、法面等の隅角部における土留めの補強を行え、かつ当該隅角部を美麗に仕上げることができるのである。
【0034】
さらに、上記課題を解決するために、請求項5に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の土留め枠10について、
「各L型材11を構成している立ち上がり部11bの上端と、載置部11aまたは連結横材12とを互いに連結する斜め連結部材14を備えたこと」
である。
【0035】
すなわち、この請求項5に係る土留め枠10は、各L型材11の立ち上がり部11bの補強を行えるようにしたものであり、そのために、図2及び図6に示すように、各L型材11を構成している立ち上がり部11bの上端と、載置部11aまたは連結横材12とを斜め連結部材14によって互いに連結したのである。各立ち上がり部11bの載置部11aに対する傾斜角度の維持は、L型材11を鋼材によって形成すればほぼ十分なものとなるのであるが、本発明に係る土留め枠10では、これを斜め連結部材14によってより確実となるようにしたものである。
【0036】
この斜め連結部材14が存在することによって、土留め枠10を構成しているL型材11の立ち上がり部11bが土圧によって前方に広がろうとしても、その土圧が当該斜め連結部材14を介して各L型材11を構成している立ち上がり部11bの上端に掛けられることになるから、立ち上がり部11bが前方に広がることは無くなるのである。
【0037】
従って、この請求項5の土留め枠10は、請求項1〜請求項4に記載の土留め枠10と同様な機能を発揮するだけでなく、各立ち上がり部11bの前方への広がりを斜め連結部材14によっても確実に防止できるのである。
【0038】
上記課題を解決するために、請求項6に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の土留め枠10について、
「突出L型材11Aの、連結横材12またはL型材11に対する連結部分において、当該突出L型材11Aの突出量を変更可能に連結したこと」
である。
【0039】
すなわち、この請求項6に係る土留め枠10は、各突出L型材11Aの、連結横材12またはL型材11に対する連結を固定的なものとしたのではなく、例えば、図15に示すような突出量調整材15によって必要に応じてある程度自在に動かし得るようにしたのである。
【0040】
もし、突出L型材11Aが固定的であると、使用すべき表面材20の仕様が限定されてしまうだけでなく、図13及び図14に示すように、収納空間Rが存在したままの状態となるから、梱包や運搬に不便となり得る。そこで、この請求項6の土留め枠10では、突出L型材11Aの、連結横材12またはL型材11に対する連結部分において、例えば図15に示すような突出量調整材15を使用して、当該突出L型材11Aの突出量を変更可能に連結したのである。
【0041】
各突出L型材11Aの突出量を変更可能に連結するには、図15に示すような突出量調整材15を採用するのが最も簡便である。この突出量調整材15は単なるパイプであり、これをL型材11の載置部11aに連結するか溶接しておき、この突出量調整材15内に突出L型材11Aの載置部11aを出入自在に挿入しておけばよいのである。なお、後述する実施形態の突出量調整材15では、これに挿通した載置部11aの内端にナット等の固定部材15aを連結して、当該載置部11aの抜け止めと、突出L型材11Aの所定位置までの引き出しを行えるようにしてある。勿論、ナットに代えて、載置部11aの内端を単に潰したり、L型に折曲するだけでも良い。
【0042】
従って、この請求項6の土留め枠10は、上記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の土留め枠10と同様な機能を発揮することは勿論、当該土留め枠10を梱包したり運搬したりする場合に、各突出L型材11Aの、L型材11に対する突出をなくすことができて、横からみた状態が一つの完全なL字状となるようにすること、つまり収納空間Rを無くすことができ、効率の良い梱包や運搬ができるものとなっているのである。
【0043】
上記課題を解決するために、請求項7に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の土留め枠10について、
「収納空間Rは、表面材20の全体を収納できるようにしたものであること」である。
【0044】
すなわち、この請求項7の土留め枠10は、図2、図4及び図5に示すように、その収納空間R内に、表面材20の全体を収納できるようにしたものである。換言すれば、この土留め枠10においては、L型材11側の立ち上がり部11bと、突出L型材11A側の立ち上がり部11bとで形成した収納空間R内に表面材20の全体を収納するようにするものである。
【0045】
従って、この請求項7に係る土留め枠10は、これを施工現場に載置して形成されている収納空間R内に表面材20を単に挿入し、その内側に客土40を行うだけで、法面や崖等の盛り土周囲の土留めを簡単に行えるだけでなく、この土留め後の法面表面の装飾を収納空間R内に収納した表面材20によって行えるのであり、法面等の土留めが確実に行え、施工も簡単であり、しかも土留め施工を行った場所の美観の維持及び形成を良好に行えるのである。
【0046】
また、上記課題を解決するために、請求項8に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の土留め枠10について、
「各突出L型材11Aの立ち上がり部11bには、表面材20がこれに形成してある挿通穴21にて挿通されるものであり、収納空間Rは、表面材20の一部を収納できるようにしたものであること」
である。
【0047】
すなわち、この請求項8の土留め枠10は、上記請求項7のそれとは異なって、図7及び図8に示すように、その収納空間R内に表面材20の一部を収納するようにしたものであり、表面材20の表面全体を施工後の法面に露出させるようにしたものである。
【0048】
つまり、この請求項8の土留め枠10は、図10の(イ)または(ロ)に示すように、中心に長穴(ホゾ穴)または単なる丸穴からなる挿通穴21が形成してある表面材20(間伐材)を使用できるようにしたものであり、各突出L型材11Aの立ち上がり部11bまたはこれに連結してある横連結部材11cには、図8に示すように、各表面材20がこれに形成してある挿通穴21にて挿通されるものである。このようにすることによって、当該土留め枠10の施工後においては、法面の表面全体が各表面材20の表面そのものとなるのであり、例えば図1に示しているような突出L型材11Aの一部が見えると言うようなことはなくなるものである。
【0049】
従って、この請求項8に係る土留め枠10は、これを施工現場に載置して形成されている収納空間R内に表面材20の一部を収納し、その内側に客土40を行うだけで、法面や崖等の盛り土周囲の土留めを簡単に行えるだけでなく、この土留め後の法面表面の装飾を表面材20の美しさを十分利用して行えるのであり、法面等の土留めが確実に行え、施工も簡単であり、しかも土留め施工を行った場所の美観の維持及び形成を良好に行えるのである。
【0050】
そして、上記課題を解決するために、請求項9に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項8のいずれかに記載の土留め枠10について、
「各L型材11の立ち上がり部11bを、突出L型材11Aのそれよりも短くしたこと」
である。
【0051】
すなわち、この請求項9に係る土留め枠10は、図7〜図9に示すように、各L型材11の立ち上がり部11bを、突出L型材11Aのそれよりも短くしたものであり、これにより、最上段となる表面材20の内側に、何らの突出物もないようにするものである。
【0052】
本発明に係る土留め枠10は、これを上下に積んで、ある法面を段差のない平らなものとする場合には何等問題となることはないのであるが、図2及び図7に示すように、上下に載置される各土留め枠10を遊歩道となる程度の幅でズラせた場合に、もし、1つの土留め枠10について、L型材11側の立ち上がり部11bの上端が突出L型材11A側の立ち上がり部11bの上端と一致していたとすると、L型材11側の立ち上がり部11bの上端がこの遊歩道上に露出する。
【0053】
その点、この請求項9に係る土留め枠10は、図7〜図9に示すように、各L型材11の立ち上がり部11bを、突出L型材11Aのそれよりも短くしたものであるから、L型材11側の立ち上がり部11bの上端がこの遊歩道上に露出することはなくなる。
【0054】
従って、この請求項9の土留め枠10は、上記請求項1〜8のそれと同様な機能を発揮する他、図1に示すように、後方へズラせながら積んだとしても、L型材11側の立ち上がり部11bの上端を露出させることはなく、例えば遊歩道表面を完全な平らなものにすることができるのである。
【0055】
さて、上記課題を解決するために、請求項10に係る発明の採った手段は、
「施工現場上に載置される載置部11aと、この載置部11aの前端から立ち上がって棒材や面材等の表面材20を支持することになる立ち上がり部11bとを有する複数のL型材11と、これらのL型材11の各立ち上がり部11bと略平行でこれより前方に突出する立ち上がり部11bと、この立ち上がり部11bの下端に一体化された載置部11aとを有する複数の突出L型材11Aとを備え、これらの突出L型材11A及びL型材11を連結横材12によって互いに連結することにより、突出L型材11AとL型材11との各立ち上がり部11bの間に、表面材20の複数を横にして収納できる収納空間Rを形成した土留め枠10を使用する土留め工法であって、
当該土留め枠10を施工現場上に載置した後、各載置部11aの後端部を施工現場上にアンカー16や杭等の固定部材によって固定することにより当該土留め枠10全体を施工現場上に固定し、
固定された土留め枠10の収納空間R内に表面材20を横方向に順次収納するとともに、当該土留め枠10内側に客土40を行うようにしたことを特徴とする土留め工法」
である。
【0056】
すなわち、この土留め工法は、上記請求項1〜請求項9のいずれかの土留め枠10を採用して行うものであり、各土留め枠10を施工現場の所定位置に載置する。また、図1に示すように法面等が高い場合には、図2にも示すように、各土留め枠10の載置及び当該土留め工法を順次下側から行っていけばよい。
【0057】
まず、一段目の土留め枠10を施工現場上に載置する。この場合、法面の隅角部においては、請求項4に係る土留め枠10を採用するとよく、また図1に示すような横方向に長い部分については、連結横材12が突出していないものを使用すると良い。この土留め枠10の載置後、各載置部11aを施工現場上にアンカー16や杭等の固定部材によって固定することにより当該土留め枠10全体を施工現場上に固定する。ここで、土留め枠10が請求項6に係るものであった場合には、各突出L型材11Aを前方に引き出して、収納空間Rを確保するようにする。
【0058】
その後、固定された土留め枠10の収納空間R内に、図1から図6に示すように、表面材20を横方向に順次収納するとともに、図2に示すように、当該土留め枠10内側に客土40を行うのである。この場合、土留め枠10が請求項2〜請求項9のいずれかに係るものにあっては、突出L型材11Aの上端側と、L型材11の上端側とを前後連結部材13によって連結する。これにより、表面材20の収納空間R内での固定が確実に行われる。
【0059】
また、この土留め工法は、通常の陸地での施工は勿論、河川の岸や湖岸あるいは海岸の保護を行うにあたっても採用されるものである。例えば、河川の護岸を行う場合には、図6に例示するように、まず最下段の土留め枠10の下側に魚巣ブロック33を載置する。この魚巣ブロック33は、河川のビオトープを形成するための魚や水性動物の隠れ家となる空所を有したものであり、その上に上記土留め枠10による当該土留め工法を行っていけばよい。そして、波に洗われることになる表面材20として、腐食しにくい松材の間伐材を使用すると、恒久的な護岸を形成できることになる。
【0060】
従って、この請求項10に係る土留め工法によれば、見た目にも美しく、耐久性にも優れた土留めを施工することができるのである。
【0061】
また、上記課題を解決するために、請求項11に係る発明の採った手段は、上記請求項10の土留め工法について、
「土留め枠10を載置するにあたって、その下側に平らな補強材を敷設してから行うようにしたこと」
である。
【0062】
すなわち、この土留め工法は、土留め枠10を施工現場上に載置するにあたって、図2及び図6に示すように、整地した施工現場上に補強材、つまり補強シート30を敷くようにするものである。この補強シート30を施工しておくことにより、土留め枠10、ひいては客土40のズレ防止と、この客土40からの雨水等の排水を行うことができる。
【0063】
従って、この請求項11の土留め工法は、上記請求項10と同様な施工が行えることは当然として、完成後の土留めを補強材である補強シート30によって確実なものとすることができるのである。
【0064】
さらに、請求項12に係る発明の採った手段は、上記請求項10または請求項11に記載の土留め工法について、
「施工現場上に固定された土留め枠10の少なくとも内側に、客土40の漏れ出を防止する平らな漏出防止材を、客土40作業前に敷設するようにしたこと」である。
【0065】
つまり、後述する実施の形態では、漏出防止材として、図2にも示す壁面シート31を採用するようにしたものであり、この壁面シート31により収納空間R内に収納された表面材20の隙間から、雨水等によって客土40の漏出を防止するものである。
【0066】
そして、請求項13に係る発明の採った手段は、上記請求項10〜請求項12のいずれかに記載の土留め工法について、
「突出L型材11Aは、連結横材12またはL型材11に対する連結部分において、当該突出L型材11Aの突出量が変更可能にしてあること」
である。
【0067】
すなわち、この請求項13の土留め工法は、上記請求項6の土留め枠10を使用するものであり、これにより、施工前の土留め枠10の保管や運搬を効率よく行えるのであり、結果として、土留め工法そのものをより効率化できるのである。
【0068】
【発明の実施の形態】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図1〜図6に示した第一実施例と、図7〜図9に示した第二実施例とに係る土留め枠10、及びその施工状況について説明するが、これらの土留め枠10及び施工状況は、上記各発明の全てを含むものである。
【0069】
(第一実施例)
図1には、本発明に係る土留め枠10を使用して、法面あるいは傾斜面の保護を行った状態の斜視図が示してあり、この保護は、同じく本発明に係る土留め工法を採用して施工したものである。また、この施工例では、各立ち上がり部11bが略垂直に立ち上がる土留め枠10の合計3段を、少しずつ後退させながら積んだものである。そして、この施工例では、表面材20として、松材の間伐材を使用したものであるが、各表面材20は、木口面からみた上下両面を切り落とした、所謂「太鼓引き」したものであり、これにより、各表面材20が上下に密着状態で載置され得るようにしてある。
【0070】
この図1に示した施工例において、その縦断面を採ってみると、図2に示す通りである。すなわち、まず整地された施工現場上に、土留め枠10ひいてはその内側に打設される客土40のズレ防止機能と、客土40内からの雨水等の排水機能をも有する補強シート30を敷き、その上に本発明に係る最下段の土留め枠10を所定位置に載置して位置決めする。そして、この土留め枠10を構成しているL型材11等をアンカー16によって施工現場上に固定し、当該土留め枠10が動かないようにする。
【0071】
この土留め枠10の基本構成は、図13及び図14に示したように施工現場上に載置される載置部11aと、この載置部11aの前端から立ち上がって棒材や面材等の表面材20を支持することになる立ち上がり部11bとを有する複数のL型材11と、これらのL型材11の各立ち上がり部11bと略平行でこれより前方に突出する立ち上がり部11bと、この立ち上がり部11bの下端に一体化された載置部11aとを有する複数の突出L型材11Aとを備え、これらの突出L型材11A及びL型材11を連結横材12によって互いに連結することにより、突出L型材11AとL型材11との各立ち上がり部11bの間に、表面材20の複数を横にして収納できる収納空間Rを形成したことである。
【0072】
この土留め枠10の構成部材であるL型材11、突出L型材11A及び連結横材12は、鋼棒材を利用するのがよく、連結横材12による連結は、溶接であっても、針金で縛るようにしてもよい。いずれにしても、当該土留め枠10によって土留めが完了すれば、この土留め枠10は客土40中に埋設されたままとなるから、各鋼棒材に塗装を行ったり、合成樹脂による被覆を行ったりして、防錆を施すとよい。
【0073】
さらに、複数のL型材11の各立ち上がり部11b、及び突出L型材11Aの各立ち上がり部11bの上端を、図1、図13あるいは図14に示したように、横連結部材11cによって連結すると、収納空間Rの形成を確実にすることができる。勿論、この横連結部材11cとしては、連続した鋼棒材を「コ」の字に曲げた中央部をそのまま利用してもよいし、図13及び図14に示したように、別の棒部材を用意して、これを各L型材11または突出L型材11Aの立ち上がり部11bの上端に固定するようにしたものであってもよい。
【0074】
また、この土留め枠10において、各L型材11及び突出L型材11Aを、収納空間Rを形成する状態で連結横材12によって完全に連結固定しておくこともあるが、図15に示したように、突出L型材11Aの、連結横材12またはL型材11に対する連結部分において、当該突出L型材11Aの突出量を変更可能に連結したこともなされる。その場合、L型材11または連結横材12に筒体等の突出量調整材15を固定しておいて、この突出量調整材15に突出L型材11Aの載置部11aを挿通し、この載置部11aの端部にナット等の固定部材15aを取り付けて抜け止めを行うようにするとよい。この抜け止めは、載置部11aの内端を単に潰すだけでもよい。
【0075】
この土留め枠10は、法面等の隅角部に載置しなければならない場合もあるが、そのような場合には、二つの土留め枠10を、平面からみて略L字状となるように連続させなければならない。このような場合には、図11に示したように、L字を構成する二つの土留め枠10を構成している各立ち上がり部11bに固定した連結横材12の少なくとも一端を、側端に位置するL型材11より外方に突出させて、これら連結横材12の突出部分をL字に合わせて針金で縛るか、互いに溶接等の手段によって連結するのである。このようにすれば、法面等の隅角部を囲む二つの土留め枠10は、各連結横材12の突出部分でしっかりと連結され、しかも隅角部を綺麗に仕上げることができるのである。
【0076】
このようにした土留め枠10は、上記と同様な機能を発揮する他、特に、法面等の隅角部における土留めの補強を行え、かつ当該隅角部を美麗に仕上げることができるのである。
【0077】
以上のような1段目の土留め枠10の載置が完了すれば、図2に示したように、太鼓引きした間伐材や角材、あるいはブロック等の表面材20を収納空間R内に収納するのである。この表面材20は、文字通り、土留めした斜面の表装を行うものであり、間伐材や角材の表面の美しさをそのまま利用するものである。勿論、吸音のための凹凸を表面に形成したブロックや、表面に装飾を施したブロックを使用すれば、突出L型材11Aの立ち上がり部11bは、図1にも示したように表面をそれ程多く覆うものではないから、表面材20による装飾を確実に発揮させることができるのである。
【0078】
表面材20としては、図1〜図6に示した太鼓引き間伐材の他に、図12に示すような補強シートも使用できる。この補強シートは、合成樹脂を材料としてパンチングメタルのような形状のものに形成したものであり、多数の穴を有したものである。この穴の形状は、図12に示したような四角に限らず、円や楕円、あるいは菱形等、種々のものがある。
【0079】
このような補強シートは、例えばU字状に折り曲げて上記収納空間R内に収納されるものであり、この収納空間R内にさらに収納空間を形成するように、その二つの面がL型材11及び突出L型材11Aの立ち上がり部11bの内面に接触する状態で載置されるものである。そして、この表面材20によって形成された空間内に、U字状となった表面材20の上方開口から、例えば客土40を行うのである。これにより、当該土留め枠10を施工した後には、この補強シートが表面に現れることになるとともに、当該補強シート内に収納した客土40によって土留め枠10の表面を安定的に保護することになるものである。
【0080】
図1〜図5に示した土留め枠10においては、その収納空間R内に、表面材20の全体を収納するようにしているが、これが請求項7に係る土留め枠10である。
【0081】
すなわち、この土留め枠10は、図2、図4及び図5に示すように、その収納空間R内に、表面材20の全体を収納できるようにしたものである。換言すれば、この土留め枠10においては、L型材11側の立ち上がり部11bと、突出L型材11A側の立ち上がり部11bとで形成した収納空間R内に表面材20の全体を収納するようにするものである。
【0082】
このようにした土留め枠10は、これを施工現場に載置して形成されている収納空間R内に表面材20を単に挿入し、その内側に客土40を行うだけで、法面や崖等の盛り土周囲の土留めを簡単に行えるだけでなく、この土留め後の法面表面の装飾を収納空間R内に収納した表面材20によって行えるのであり、法面等の土留めが確実に行え、施工も簡単であり、しかも土留め施工を行った場所の美観の維持及び形成を良好に行えるのである。
【0083】
収納空間R内への表面材20の投入後に、この収納空間Rが広がらないようにする必要がある場合には、L型材11側の立ち上がり部11bと、突出L型材11A側の立ち上がり部11bとを前後連結部材13によって連結することがある。この前後連結部材13は、収納空間Rの平面から見た幅に応じた長さの金属棒材であったり、番線等の太い金属線材であったりするが、いずれにしても、この前後連結部材13は、突出L型材11Aを構成している立ち上がり部11bの上端と、L型材11の立ち上がり部11b、またはこの立ち上がり部11bを互いに連結している横連結部材11cとを連結するものである。
【0084】
また、この前後連結部材13は、突出L型材11Aを、その各立ち上がり部11bの上端を互いに連結する横連結部材11cを有したものとしておき、この横連結部材11cと、L型材11の立ち上がり部11b、またはこの立ち上がり部11bを互いに連結している横連結部材11cとを連結することにもなるものである。
【0085】
上述した収納空間R内への表面材20の挿入は、当該土留め枠10の内側への客土40投入後に行ってもよい。この客土40の投入を行うに当たって、本実施形態ではL型材11の各立ち上がり部11bの裏面側に、図2に示したように、壁面シート31を載置することがなされる。この壁面シート31は、客土40が表面材20から漏れ出ないようにするものであり、客土40投入前に適宜なひもやフック等で、載置部11aや立ち上がり部11bに固定される。
【0086】
収納空間R内へ挿入される表面材20には、図10の(イ)に示すように、中心に長穴(ホゾ穴)からなる挿通穴21が形成してあることもあるし、図10の(ロ)に示すように、中心に単なる丸穴からなる挿通穴21が形成してあることもある。
挿通穴21が長穴である場合には、図10の(イ)に示すように、この挿通穴21内には各立ち上がり部11bを連結している横連結部材11cが挿入されるのであるし、挿通穴21が丸穴である場合には、図10の(ロ)に示すように、この挿通穴21内には各立ち上がり部11bの上端部がそのまま挿通されることになるものである。
【0087】
本実施形態の施工では、図2に示したように、収納空間R内への表面材20の挿入、及び土留め枠10背面への客土40の投入が済んだ後に、客土40の露出面に植生を施すための植生張芝32を敷設する。この植生張芝32は、布状物に、植生植物の種子や肥料等を添加したものである。
【0088】
以上の行程を必要回数(図1に示した例では3回)繰り返せば、施工現場の土留めが完成するのであり、完成後には、図1に示すように、美麗な構造物となるのである。
【0089】
また、土留め枠10の載置を完了して、その収納空間R内への表面材20の挿入、及び土留め枠10背面への客土40の投入が完全に終了した後に、その全体表面に緑化植生基材の吹き付けを行うようにしてもよい。この場合には、表面材20の表面全体の緑化を行うことができる。
【0090】
(第二実施例)
図7〜図9には、本発明の第二実施例に係る土留め枠10が示してあるが、この土留め枠10は、主として請求項8または請求項9に該当するものである。この第二実施例に係る土留め枠10では、以下に述べる点以外は、上記の第一実施例と同様であるので、第一実施例と共通する部分については、前述した符号を各図面中に付すことによって、その詳細説明は省略する。
【0091】
すなわち、この第二実施例の土留め枠10においては、図7及び図8に示したように、各突出L型材11Aの立ち上がり部11bに、表面材20がこれに形成してある挿通穴21にて挿通されることになるものであり、その結果、収納空間R内には、表面材20の一部が収納されることになるのである。つまり、この土留め枠10は、図7及び図8に示すように、その収納空間R内に表面材20の一部を収納するようにしたものであり、表面材20の表面全体を施工後の法面に露出させるようにしたものである。
【0092】
換言すれば、この土留め枠10は、図8に示したように、中心に挿通穴21が形成してある表面材20(間伐材)を使用できるようにしたものであり、各突出L型材11Aの立ち上がり部11bには、各表面材20がこれに形成してある挿通穴21にて挿通されるものである。このようにすることによって、当該土留め枠10の施工後においては、法面の表面全体が各表面材20の表面そのものとなるのであり、例えば図1に示しているような突出L型材11Aの一部が見えると言うようなことはなくなるものである。
【0093】
従って、この土留め枠10は、これを施工現場に載置して、各突出L型材11Aの立ち上がり部11bに各表面材20に形成してある挿通穴21を挿通させて収納空間R内に表面材20の一部を収納してから、その内側に客土40を行うだけで、法面や崖等の盛り土周囲の土留めを簡単に行えるだけでなく、この土留め後の法面表面の装飾を表面材20の美しさを十分利用して行えるのであり、法面等の土留めが確実に行え、施工も簡単であり、しかも土留め施工を行った場所の美観の維持及び形成を良好に行えるものなのである。
【0094】
また、この土留め枠10は、図7〜図9に示したように、その各L型材11の立ち上がり部11bを、突出L型材11Aのそれよりも短くして形成されるものである。すなわち、この第二実施例に係る土留め枠10は、各L型材11の立ち上がり部11bを、突出L型材11Aのそれよりも短くしたものであり、これにより、最上段となる表面材20の内側に、何らの突出物もないようにしたものである。
【0095】
本発明に係る土留め枠10は、これを上下に積んで、ある法面を段差のない平らなものとする場合には何等問題となることはないのであるが、図2及び図7に示すように、順に上方に載置される各土留め枠10を遊歩道となる程度の幅で後方にズラせた場合に、もし、1つの土留め枠10について、L型材11側の立ち上がり部11bの上端が突出L型材11A側の立ち上がり部11bの上端と一致していたとすると、L型材11側の立ち上がり部11bの上端がこの遊歩道上に露出する可能性がでてくる。また、各段において、各土留め枠10の内側に客土40をした後に壁面シート31をその客土40上面に折り曲げることになるのであるが、その折り曲げを強く行えば、L型材11側の立ち上がり部11bの上端の露出は避けられない。
【0096】
その点、この第二実施例に係る土留め枠10は、図7〜図9に示したように、各L型材11の立ち上がり部11bを、突出L型材11Aのそれよりも短くしたものであるから、L型材11側の立ち上がり部11bの上端がこの遊歩道上に露出することはなくなる。勿論、各段において、客土40をした後に壁面シート31をその客土40上面側に大きくかつ強く折り曲げても、L型材11側の立ち上がり部11bの上端が露出することはないのである。
【0097】
【発明の効果】
以上詳述した通り、請求項1〜請求項9に係る土留め枠10は、上記実施形態にて例示した如く、
「施工現場上に載置される載置部11aと、この載置部11aの前端から立ち上がって棒材や面材等の表面材20を支持することになる立ち上がり部11bとを有する複数のL型材11と、
これらのL型材11の各立ち上がり部11bと略平行でこれより前方に突出する立ち上がり部11bと、この立ち上がり部11bの下端に一体化された載置部11aとを有する複数の突出L型材11Aとを備え、
これらの突出L型材11A及びL型材11を連結横材12によって互いに連結することにより、突出L型材11AとL型材11との各立ち上がり部11bの間に、表面材20の複数を横にして収納できる収納空間Rを形成したこと」
にその主たる構成上の特徴があり、これにより、土留めを確実に行うことができて、施工も簡単であり、しかも美観の維持及び形成を良好に行うことのできる土留め枠10を、簡単な構成によって提供することができるのである。
【0098】
また、請求項10〜請求項13に係る土留め工法では、
「施工現場上に載置される載置部11aと、この載置部11aの前端から立ち上がって棒材や面材等の表面材20を支持することになる立ち上がり部11bとを有する複数のL型材11と、これらのL型材11の各立ち上がり部11bと略平行でこれより前方に突出する立ち上がり部11bと、この立ち上がり部11bの下端に一体化された載置部11aとを有する複数の突出L型材11Aとを備え、これらの突出L型材11A及びL型材11を連結横材12によって互いに連結することにより、突出L型材11AとL型材11との各立ち上がり部11bの間に、表面材20の複数を横にして収納できる収納空間Rを形成した土留め枠10を使用する土留め工法であって、
当該土留め枠10を施工現場上に載置した後、各載置部11aの後端部を施工現場上にアンカー16や杭等の固定部材によって固定することにより当該土留め枠10全体を施工現場上に固定し、
固定された土留め枠10の収納空間R内に表面材20を横方向に順次収納するとともに、当該土留め枠10内側に客土40を行うようにしたこと」
にその主たる構成上の特徴があり、これにより、土留めを確実に行うことができて、施工も簡単であり、しかも美観の維持及び形成を良好に行うことのできる土留め工法を提供することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る土留め枠及び土留め工法を使用して土留めが完成された斜面を示す斜視図である。
【図2】図1に示した斜面の要部縦断面図である。
【図3】図1に示した斜面の正面図である。
【図4】本発明に係る1個の土留め枠の収納空間内に表面材を収納した状態を示すもので、前面側からみた斜視図である。
【図5】本発明に係る1個の土留め枠の収納空間内に表面材を収納した状態を示すもので、後面側からみた斜視図である。
【図6】同土留め枠を護岸用に使用した例を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第二実施例に係る土留め枠及び土留め工法を使用して土留めが完成された斜面の要部縦断面図である。
【図8】同要部拡大縦断面図である。
【図9】本発明の第二実施例に係る土留め枠の側面図である。
【図10】表面材に形成される挿通穴と、これが挿通されるべきものとの関係を示すもので、(イ)は挿通穴が横連結部材が挿通できる長穴である場合を、(ロ)は挿通穴が立ち上がり部が挿通できる丸穴である場合をそれぞれ示す斜視図である。
【図11】各連結横材の端部を最外端のL型材から突出させて、これを互いに連結した状態を示す部分平面図である。
【図12】表面材として採用される補強シートの部分平面図である。
【図13】長尺な横連結部材を使用して各立ち上がり部を連結した土留め枠の斜視図である。
【図14】L型材と突出L型材とを一本おきに載置した土留め枠であって、(イ)は長尺な横連結部材によってL型材の各立ち上がり部を連結した例を、(ロ)は短い横連結部材によって突出L型材の各立ち上がり部を連結した例を示す斜視図である。
【図15】突出L型材のL型材に対する突出量を変換できる土留め枠であって、その突出量調整材を中心にしてみた部分拡大平面図である。
【図16】従来の技術を示す斜視図である。
【図17】従来の他の技術を示すものであって、(イ)は法面上に多数の土留め枠を配列した状態を示す斜視図、(ロ)は一つの土留め枠の斜視図である。
【符号の説明】
10 土留め枠
11 L型材
11A 突出L型材
11a 載置部
11b 立ち上がり部
11c 横連結部材
12 連結横材
13 前後連結部材
14 斜め連結部材
15 突出量調整材
15a 固定部材
16 アンカー
20 表面材
21 挿通穴
30 補強シート
31 壁面シート
32 植生張芝
33 魚巣ブロック
40 客土
R 収納空間
Claims (13)
- 施工現場上に載置される載置部と、この載置部の前端から立ち上がって棒材や面材等の表面材を支持することになる立ち上がり部とを有する複数のL型材と、
これらのL型材の各立ち上がり部と略平行でこれより前方に突出する立ち上がり部と、この立ち上がり部の下端に一体化された載置部とを有する複数の突出L型材とを備え、
これらの突出L型材及び前記L型材を連結横材によって互いに連結することにより、前記突出L型材とL型材との各立ち上がり部の間に、前記表面材の複数を収納できる収納空間を形成したことを特徴とする土留め枠。 - 前記突出L型材を構成している立ち上がり部と、前記L型材の立ち上がり部、またはこの立ち上がり部を互いに連結している横連結部材とを連結するための前後連結部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の土留め枠。
- 前記突出L型材を、その各立ち上がり部の上端を互いに連結する横連結部材を有したものとし、この横連結部材と、前記L型材の立ち上がり部、またはこの立ち上がり部を互いに連結している前記横連結部材とを連結するための前後連結部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の土留め枠。
- 前記各連結横材の少なくとも一端を、側端に位置する前記L型材より外方に突出させたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の土留め枠。
- 前記各L型材を構成している立ち上がり部の上端と、前記載置部または連結横材とを互いに連結する斜め連結部材を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の土留め枠。
- 前記突出L型材の、前記連結横材またはL型材に対する連結部分において、当該突出L型材の突出量を変更可能に連結したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の土留め枠。
- 前記収納空間は、前記表面材の全体を収納できるようにしたものであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の土留め枠。
- 前記各突出L型材の立ち上がり部には、前記表面材がこれに形成してある挿通穴にて挿通されるものであり、前記収納空間は、前記表面材の一部を収納できるようにしたものであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の土留め枠。
- 前記各L型材の立ち上がり部を、前記突出L型材のそれよりも短くしたことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の土留め枠。
- 施工現場上に載置される載置部と、この載置部の前端から立ち上がって棒材や面材等の表面材を支持することになる立ち上がり部とを有する複数のL型材と、これらのL型材の各立ち上がり部と略平行でこれより前方に突出する立ち上がり部と、この立ち上がり部の下端に一体化された載置部とを有する複数の突出L型材とを備え、これらの突出L型材及び前記L型材を連結横材によって互いに連結することにより、前記突出L型材とL型材との各立ち上がり部の間に、前記表面材の複数を収納できる収納空間を形成した土留め枠を使用する土留め工法であって、
当該土留め枠を施工現場上に載置した後、各載置部の後端部を前記施工現場上にアンカーや杭等の固定部材によって固定することにより当該土留め枠全体を施工現場上に固定し、
固定された土留め枠の前記収納空間内に前記表面材を横方向に順次収納するとともに、当該土留め枠内側に客土を行うようにしたことを特徴とする土留め工法。 - 前記土留め枠を載置するにあたって、その下側に平らな補強材を敷設してから行うようにしたことを特徴とする請求項10に記載の土留め工法。
- 前記施工現場上に固定された土留め枠の少なくとも内側に、客土の漏れ出を防止する平らな漏出防止材を、客土作業前に敷設するようにしたことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の土留め工法。
- 前記突出L型材は、前記連結横材またはL型材に対する連結部分において、当該突出L型材の突出量が変更可能にしてあることを特徴とする請求項10〜請求項12のいずれかに記載の土留め工法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002261290A JP3871988B2 (ja) | 2002-05-21 | 2002-09-06 | 土留め枠及びこれを使用した土留め工法 |
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