JP3871448B2 - p−N−置換アミノベンズアルデヒドの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、香料、染料などの中間体として有用なp−N−置換アミノベンズアルデヒドの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
芳香族アルデヒドの製法については数多く知られており、中でもN−置換アニリンをVilsmeier錯体と反応させてp−N−置換アミノベンズアルデヒドを得る製法についてはいくつかの提案がなされている。その例としてOrg.Synth.,a,331(1963)、特開昭52−125138号公報、特開平10−17520号公報に記載の方法などが挙げられる。これら記載の方法は酸アミドにオキシ塩化燐、塩化チオニル、炭酸ビス(トリクロロメチル)などのハロゲン化試剤を反応させて生成した錯体(Vilsmeier錯体)を芳香族化合物と反応させることにより、ホルミル化を行なうものである。N−置換アニリンの場合、ホルミル基はp−位に導入されるが、少量o−位の異性体が生成する。この異性体はp−位との分離が困難であり、取り出したp−N−置換アミノベンズアルデヒドの純度を低下させる原因となる。しかしながら上記記載の方法には副生する異性体の分離及び除去法についての詳細な記載はなく、工業的にも有用な方法で高純度且つ高収率でp−N−置換アミノベンズアルデヒドを製造する方法は知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、N−置換アニリンをホルミル化することにより、p−N−置換アミノベンズアルデヒドを製造する際に、生成する異性体を選択的に分離除去し、高純度且つ高収率で目的物を得る工業的にも有用な製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記した課題を解決するために鋭意検討した結果、p−N−置換アミノベンズアルデヒド及びo−N−置換アミノベンズアルデヒドの混在する有機溶媒中から、酸性水によって異性体であるo−N−置換アミノベンズアルデヒド選択的に抽出除去できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0005】
即ち、本発明は以下のものである。
(1)有機溶媒中、Vilsmeier錯体とN−置換アニリンとを反応させて加水分解するp−N−置換アミノベンズアルデヒド化合物を製造する方法において、生成するo−位の異性体を酸性水により抽出除去することを特徴とする製造方法、
(2)有機溶媒が炭化水素系溶媒、またはハロゲン化炭化水素溶媒である(1)記載の製造方法、
(3)Vilsmeier錯体が、ホスゲンと第2級酸アミドを反応させた錯体である(1)記載の製造方法、
(4)第2級酸アミドがジメチルホルムアミドである(3)記載の製造方法、
(5)N−置換アニリンがN,N−ジメチルアニリンである(1)記載の製造方法、
(6)p−N−置換アミノベンズアルデヒド化合物がp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドである(1)記載の製造方法に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、具体的に本発明の製造方法を説明する。
本発明において実施される反応の形態としては、例えば、第2級酸アミドを有機溶媒に溶解させ、ハロゲン化試剤が液体の場合は滴下、気体の場合は液中に吹き込むなどしてVlsmeir錯体を生成させたのちにN−置換アニリンを装入し反応させる方法、有機溶媒に第2級酸アミドとN−置換アニリンを溶解させ、ハロゲン化試剤を滴下あるいは液中に吹き込むなどして装入し反応させる方法などがある。反応後、水を装入して加水分解を行ない、次いで酸性水を装入して抽出を行ない、有機層と水層に分液し、得られた有機層をそのまま濃縮乾固させるか、再結晶するなどして異性体が除去されたp−N−置換アミノベンズアルデヒドを得る方法などが挙げられる。
【0007】
本発明で使用される有機溶媒としては、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、o−クロロトルエン、m−クロロトルエン、p−クロルトルエンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。その中でも錯体と芳香族アミンが反応して生成する中間体の溶解度が大きい1,2−ジクロロエタンが特に好ましい。
有機溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、第2級酸アミドのに対して1〜20倍量、好ましくは5〜10倍量である。
【0008】
本発明においてVilsmeir錯体は、第2級酸アミドとハロゲン化試剤を反応させることにより合成できる。この際に使用される第2級酸アミドとしては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどが挙げられる。
使用されるハロゲン化試剤としては、オキシ塩化燐、ホスゲン、塩化チオニル、トリフェニルホスフィン・臭素、炭酸ビス(トリクロロメチル)などが挙げられるが、反応収率及び排水処理などの問題を考慮すると、近年ウレタン工業の発展と共に多量に生産され、安価で入手可能なホスゲンが好ましい。
ハロゲン化試剤の使用量としては、第2級酸アミドに対して等モル以上であれば特に限定されるものではないが、1〜1.5倍モル、好ましくは1〜1.1倍モル量が好ましい。
【0009】
本発明に使用されるN−置換アニリンとしては、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンなどが挙げられる。
本発明におけるN−置換アニリンは、Vlsmeir錯体と反応する際に、副生してくる塩酸ガスの受容体としての効果も持っている。副生してくる塩酸ガスの受容体としては、N−置換アニリン以外の3級アミン、例えばピリジン、ピコリン等も用いることができる。
N−置換アニリンの使用量は、第2級酸アミドに対して2〜10倍モル量が好ましく、より好ましくは経済的な点から考慮すると2〜2.2倍モル量である。
【0010】
本発明におけるVilsmeir錯体を合成する際の反応温度は、−10〜50℃、好ましくは10〜30℃である。この範囲内では反応は良好に進行する。本発明におけるVilsmeir錯体とN−置換アニリンとの反応温度は0〜100℃、好ましくは0〜50℃の温度範囲で実施される。0℃以下では反応速度が低下し、100℃以上ではVilsmeir錯体及び中間体の安定性がなくなるため好ましくない。
反応は速やかに進行するため、N−置換アニリンとVilsmeir錯体を反応させたのち、1時間程度熟成するとほとんど反応を完結させることができる。
【0011】
反応終了後は水を装入し、反応中間体を加水分解するが、その際使用する水の量は加水分解に要する理論量以上であれば問題はなく、使用する第2級酸アミドに対して2〜10倍モルで十分である。この範囲内では加水分解は良好に進行する。
【0012】
本発明において有機溶媒層を抽出するに装入される酸性水は、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、酢酸、蟻酸などの有機酸などの希薄水溶液である。
使用する酸性水中に含まれる酸の量としては、有機溶媒層中に含有するo−位の異性体に対し、1〜3倍モル、好ましくは1〜2倍モルである。1倍モルより少ない場合は水層への抽出効果が減少し、3倍モルより多くなると目的物であるp−N−置換アミノベンズアルデヒドが水層へ抽出され、収率の低下を招くため好ましくない。
酸性水の使用量は使用する有機溶媒に対して0.1〜3.0倍重量、好ましくは0.3〜1.0倍重量である。0.1倍重量以下では異性体の抽出効果が低下し、3.0倍重量以上では容積効率の悪化、排水量の増加などの点から好ましくない。
【0013】
本発明は作業効率の向上及び製造プロセスの簡素化などの点から、Vilsmeir錯体とN−置換アニリンを反応させたのち、酸性水を装入して加水分解及び抽出を行なっても何ら問題はない。その際の酸性水の使用量は使用する有機溶媒に対して0.1〜3.4倍重量、好ましくは0.3〜1.0倍重量である。この範囲であれば良好に加水分解が進行し、抽出効果も問題なく得られる。
【0014】
抽出後の反応マスは静置、分液して有機溶媒層と水層の2層に分液される。得られた有機溶媒層には目的物であるp−N−置換アミノベンズアルデヒドが、水層には異性体であるo−N−置換アミノベンズアルデヒドがそれぞれ抽出される。
【0015】
分液した有機溶媒層はそのまま濃縮乾固させるか、再結晶するなどして目的のp−N−置換アミノベンズアルデヒドを得ることができる。
又、この時濃縮回収される有機溶媒は再度反応溶媒としてリサイクル使用することができる。
【0016】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
1,2−ジクロロエタン(EDC)100gにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)14.6gを溶解し、20℃でホスゲンガス22.0gを1時間で吹き込み、Vilsmeir錯体を合成した。その後30℃に昇温してN,N−ジメチルアニリン48.9gを1時間で装入し同温度で1時間熟成を行なった。反応終了後、水20gを装入し加水分解したのち、2.9%塩酸水溶液50gを装入し室温で1時間攪拌した。反応液をEDC層と水層に分液し、それぞれの層をHPLC分析を行なった。分析の結果、原料DMFに対して、EDC層にはp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが85.1%、o−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが0.1%みられ、水層にはp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが4.5%、o−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが8.9%で存在していた。
分液したEDC層を80℃減圧下で濃縮し、EDCを留去した。その後溶融物をフレ−ク化(溶融物を冷却し薄い膜状に結晶化させ、フレ−ク状に粉砕)して取り出したところ、26.3gのp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが得られた。純度96.4wt%、収率は85.1%であった。
【0017】
(実施例2)
実施例1と同様の反応を行ない、反応終了後2.1%塩酸水溶液70gを装入後室温で1時間攪拌し、加水分解と抽出操作を同時に行なった。反応液をEDC層と水層に分液し、それぞれの層をHPLC分析を行なった。分析の結果、原料DMFに対して、EDC層にはp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが85.0%、o−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが0.3%みられ、水層にはp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが5.1%、o−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが8.7%存在していた。
分液したEDC層を80℃減圧下で濃縮し、EDCを留去した。その後溶融物をフレ−ク化して取り出したところ、25.9gのp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが得られた。純度98.0wt%、収率は85.0%であった。
【0018】
(比較例1)
実施例1と同様の反応を行ない、反応終了後、水20gを装入し加水分解したのち、次いで50gの水を装入して室温で1時間攪拌し、抽出操作を行なった。反応液をEDC層と水層に分液し、それぞれの層をHPLC分析を行なった。分析の結果、原料DMFに対して、EDC層にはp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが89.6%、o−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが8.8%みられ、水層にはp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが0.5%、o−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが0.7%で存在していた。
分液したEDC層を80℃減圧下で濃縮し、EDCを留去した。その後溶融物をフレ−ク化して取り出したところ、30.0gのp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが得られた。純度は89.1wt%で異性体であるo−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが8.8%含まれていた。p−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドの純換収率は89.6%であった。
【0019】
【発明の効果】
本発明の方法により、N−置換アニリンをホルミル化してp−N−置換アミノベンズアルデヒドを製造する際に、生成する異性体を選択的に分離することで、高純度及び高収率で目的物が得られ、なお且つ工業的にも有用な製造方法を提供することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、香料、染料などの中間体として有用なp−N−置換アミノベンズアルデヒドの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
芳香族アルデヒドの製法については数多く知られており、中でもN−置換アニリンをVilsmeier錯体と反応させてp−N−置換アミノベンズアルデヒドを得る製法についてはいくつかの提案がなされている。その例としてOrg.Synth.,a,331(1963)、特開昭52−125138号公報、特開平10−17520号公報に記載の方法などが挙げられる。これら記載の方法は酸アミドにオキシ塩化燐、塩化チオニル、炭酸ビス(トリクロロメチル)などのハロゲン化試剤を反応させて生成した錯体(Vilsmeier錯体)を芳香族化合物と反応させることにより、ホルミル化を行なうものである。N−置換アニリンの場合、ホルミル基はp−位に導入されるが、少量o−位の異性体が生成する。この異性体はp−位との分離が困難であり、取り出したp−N−置換アミノベンズアルデヒドの純度を低下させる原因となる。しかしながら上記記載の方法には副生する異性体の分離及び除去法についての詳細な記載はなく、工業的にも有用な方法で高純度且つ高収率でp−N−置換アミノベンズアルデヒドを製造する方法は知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、N−置換アニリンをホルミル化することにより、p−N−置換アミノベンズアルデヒドを製造する際に、生成する異性体を選択的に分離除去し、高純度且つ高収率で目的物を得る工業的にも有用な製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記した課題を解決するために鋭意検討した結果、p−N−置換アミノベンズアルデヒド及びo−N−置換アミノベンズアルデヒドの混在する有機溶媒中から、酸性水によって異性体であるo−N−置換アミノベンズアルデヒド選択的に抽出除去できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0005】
即ち、本発明は以下のものである。
(1)有機溶媒中、Vilsmeier錯体とN−置換アニリンとを反応させて加水分解するp−N−置換アミノベンズアルデヒド化合物を製造する方法において、生成するo−位の異性体を酸性水により抽出除去することを特徴とする製造方法、
(2)有機溶媒が炭化水素系溶媒、またはハロゲン化炭化水素溶媒である(1)記載の製造方法、
(3)Vilsmeier錯体が、ホスゲンと第2級酸アミドを反応させた錯体である(1)記載の製造方法、
(4)第2級酸アミドがジメチルホルムアミドである(3)記載の製造方法、
(5)N−置換アニリンがN,N−ジメチルアニリンである(1)記載の製造方法、
(6)p−N−置換アミノベンズアルデヒド化合物がp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドである(1)記載の製造方法に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、具体的に本発明の製造方法を説明する。
本発明において実施される反応の形態としては、例えば、第2級酸アミドを有機溶媒に溶解させ、ハロゲン化試剤が液体の場合は滴下、気体の場合は液中に吹き込むなどしてVlsmeir錯体を生成させたのちにN−置換アニリンを装入し反応させる方法、有機溶媒に第2級酸アミドとN−置換アニリンを溶解させ、ハロゲン化試剤を滴下あるいは液中に吹き込むなどして装入し反応させる方法などがある。反応後、水を装入して加水分解を行ない、次いで酸性水を装入して抽出を行ない、有機層と水層に分液し、得られた有機層をそのまま濃縮乾固させるか、再結晶するなどして異性体が除去されたp−N−置換アミノベンズアルデヒドを得る方法などが挙げられる。
【0007】
本発明で使用される有機溶媒としては、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、o−クロロトルエン、m−クロロトルエン、p−クロルトルエンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。その中でも錯体と芳香族アミンが反応して生成する中間体の溶解度が大きい1,2−ジクロロエタンが特に好ましい。
有機溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、第2級酸アミドのに対して1〜20倍量、好ましくは5〜10倍量である。
【0008】
本発明においてVilsmeir錯体は、第2級酸アミドとハロゲン化試剤を反応させることにより合成できる。この際に使用される第2級酸アミドとしては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどが挙げられる。
使用されるハロゲン化試剤としては、オキシ塩化燐、ホスゲン、塩化チオニル、トリフェニルホスフィン・臭素、炭酸ビス(トリクロロメチル)などが挙げられるが、反応収率及び排水処理などの問題を考慮すると、近年ウレタン工業の発展と共に多量に生産され、安価で入手可能なホスゲンが好ましい。
ハロゲン化試剤の使用量としては、第2級酸アミドに対して等モル以上であれば特に限定されるものではないが、1〜1.5倍モル、好ましくは1〜1.1倍モル量が好ましい。
【0009】
本発明に使用されるN−置換アニリンとしては、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンなどが挙げられる。
本発明におけるN−置換アニリンは、Vlsmeir錯体と反応する際に、副生してくる塩酸ガスの受容体としての効果も持っている。副生してくる塩酸ガスの受容体としては、N−置換アニリン以外の3級アミン、例えばピリジン、ピコリン等も用いることができる。
N−置換アニリンの使用量は、第2級酸アミドに対して2〜10倍モル量が好ましく、より好ましくは経済的な点から考慮すると2〜2.2倍モル量である。
【0010】
本発明におけるVilsmeir錯体を合成する際の反応温度は、−10〜50℃、好ましくは10〜30℃である。この範囲内では反応は良好に進行する。本発明におけるVilsmeir錯体とN−置換アニリンとの反応温度は0〜100℃、好ましくは0〜50℃の温度範囲で実施される。0℃以下では反応速度が低下し、100℃以上ではVilsmeir錯体及び中間体の安定性がなくなるため好ましくない。
反応は速やかに進行するため、N−置換アニリンとVilsmeir錯体を反応させたのち、1時間程度熟成するとほとんど反応を完結させることができる。
【0011】
反応終了後は水を装入し、反応中間体を加水分解するが、その際使用する水の量は加水分解に要する理論量以上であれば問題はなく、使用する第2級酸アミドに対して2〜10倍モルで十分である。この範囲内では加水分解は良好に進行する。
【0012】
本発明において有機溶媒層を抽出するに装入される酸性水は、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、酢酸、蟻酸などの有機酸などの希薄水溶液である。
使用する酸性水中に含まれる酸の量としては、有機溶媒層中に含有するo−位の異性体に対し、1〜3倍モル、好ましくは1〜2倍モルである。1倍モルより少ない場合は水層への抽出効果が減少し、3倍モルより多くなると目的物であるp−N−置換アミノベンズアルデヒドが水層へ抽出され、収率の低下を招くため好ましくない。
酸性水の使用量は使用する有機溶媒に対して0.1〜3.0倍重量、好ましくは0.3〜1.0倍重量である。0.1倍重量以下では異性体の抽出効果が低下し、3.0倍重量以上では容積効率の悪化、排水量の増加などの点から好ましくない。
【0013】
本発明は作業効率の向上及び製造プロセスの簡素化などの点から、Vilsmeir錯体とN−置換アニリンを反応させたのち、酸性水を装入して加水分解及び抽出を行なっても何ら問題はない。その際の酸性水の使用量は使用する有機溶媒に対して0.1〜3.4倍重量、好ましくは0.3〜1.0倍重量である。この範囲であれば良好に加水分解が進行し、抽出効果も問題なく得られる。
【0014】
抽出後の反応マスは静置、分液して有機溶媒層と水層の2層に分液される。得られた有機溶媒層には目的物であるp−N−置換アミノベンズアルデヒドが、水層には異性体であるo−N−置換アミノベンズアルデヒドがそれぞれ抽出される。
【0015】
分液した有機溶媒層はそのまま濃縮乾固させるか、再結晶するなどして目的のp−N−置換アミノベンズアルデヒドを得ることができる。
又、この時濃縮回収される有機溶媒は再度反応溶媒としてリサイクル使用することができる。
【0016】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
1,2−ジクロロエタン(EDC)100gにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)14.6gを溶解し、20℃でホスゲンガス22.0gを1時間で吹き込み、Vilsmeir錯体を合成した。その後30℃に昇温してN,N−ジメチルアニリン48.9gを1時間で装入し同温度で1時間熟成を行なった。反応終了後、水20gを装入し加水分解したのち、2.9%塩酸水溶液50gを装入し室温で1時間攪拌した。反応液をEDC層と水層に分液し、それぞれの層をHPLC分析を行なった。分析の結果、原料DMFに対して、EDC層にはp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが85.1%、o−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが0.1%みられ、水層にはp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが4.5%、o−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが8.9%で存在していた。
分液したEDC層を80℃減圧下で濃縮し、EDCを留去した。その後溶融物をフレ−ク化(溶融物を冷却し薄い膜状に結晶化させ、フレ−ク状に粉砕)して取り出したところ、26.3gのp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが得られた。純度96.4wt%、収率は85.1%であった。
【0017】
(実施例2)
実施例1と同様の反応を行ない、反応終了後2.1%塩酸水溶液70gを装入後室温で1時間攪拌し、加水分解と抽出操作を同時に行なった。反応液をEDC層と水層に分液し、それぞれの層をHPLC分析を行なった。分析の結果、原料DMFに対して、EDC層にはp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが85.0%、o−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが0.3%みられ、水層にはp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが5.1%、o−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが8.7%存在していた。
分液したEDC層を80℃減圧下で濃縮し、EDCを留去した。その後溶融物をフレ−ク化して取り出したところ、25.9gのp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが得られた。純度98.0wt%、収率は85.0%であった。
【0018】
(比較例1)
実施例1と同様の反応を行ない、反応終了後、水20gを装入し加水分解したのち、次いで50gの水を装入して室温で1時間攪拌し、抽出操作を行なった。反応液をEDC層と水層に分液し、それぞれの層をHPLC分析を行なった。分析の結果、原料DMFに対して、EDC層にはp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが89.6%、o−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが8.8%みられ、水層にはp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが0.5%、o−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが0.7%で存在していた。
分液したEDC層を80℃減圧下で濃縮し、EDCを留去した。その後溶融物をフレ−ク化して取り出したところ、30.0gのp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが得られた。純度は89.1wt%で異性体であるo−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドが8.8%含まれていた。p−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドの純換収率は89.6%であった。
【0019】
【発明の効果】
本発明の方法により、N−置換アニリンをホルミル化してp−N−置換アミノベンズアルデヒドを製造する際に、生成する異性体を選択的に分離することで、高純度及び高収率で目的物が得られ、なお且つ工業的にも有用な製造方法を提供することができた。
Claims (6)
- 有機溶媒中、Vilsmeier錯体とN−置換アニリンを反応させて加水分解するp−N−置換アミノベンズアルデヒドを製造する方法において、生成するo−位の異性体を酸性水により抽出除去することを特徴とする製造方法。
- 有機溶媒が炭化水素系溶媒、またはハロゲン化炭化水素溶媒である請求項1記載の製造方法。
- Vilsmeier錯体が、ホスゲンと第2級酸アミドを反応させた錯体である請求項1記載の製造方法。
- 第2級酸アミドがジメチルホルムアミドである請求項3記載の製造方法。
- N−置換アニリンがN,N−ジメチルアニリンである請求項1記載の製造方法。
- p−N−置換アミノベンズアルデヒドがp−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドである請求項1記載の製造方法。
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