JP3870935B2 - 金属基板チップに分子を固定化したアレイの作製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動的に接触的にスポッティングすることによる金属基板上のチップの作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体分子の機能解析、もしくは細胞内に発現している生体分子を調べる手段として相互作用解析が注目を浴びている。中でも表面プラズモン共鳴(SPR)法、エリプソメトリー法をはじめとした光学的検出方法はラベルフリーかつリアルタイムに測定できる相互作用解析法として広く使われるようになっている。このような光学的検出方法は金属基板上に分子を固定化し、相互作用するかどうか調べたい測定対象物質(アナライト)を表面に曝露させる。アナライトが表面に結合したかどうかを反射光を分析することで知ることができる。蛍光やラジオアイソトープを用いた方法ではアナライトをそれぞれのラベル物質で標識しておく必要があるのに対し、上記の光学的検出法ではアナライトをラベルする必要がないのが大きな利点である。
【0003】
しかし、従来の光学的相互作用検出法は、多数点での検出は困難であり、最大4点までしか検出できず、研究の効率は不十分であった。Jordanらはレーザー光を広げてから偏光平行光にし、金薄層を蒸着したチップの広い面積に照射し、その反射光を撮影することで、DNAハイブリダイゼーションによるSPR変化を観察するのに成功した(非特許文献1参照)。Brockmanらは白色光源を用いることで干渉縞を低減し、DNA−蛋白相互作用を観察した。スポッティングは手動で行い、自動でスポットすることは行っていない。その論文内にはインクジェット技術により、多数の生体分子をアレイ化する可能性は示唆している。何らかのアレイ作製手段により、SPR法により多数点の相互作用を行う手段は示されている(非特許文献2参照)。
【0004】
しかし、インクジェット法によるスポッティングは金属薄層表面を傷つける心配はないものの、装置は極めて高価である。また、サンプルの粘度が異なるとノズルから液滴を飛ばす条件が大きく変化するため、液滴大きさの制御は非常に難しいのが問題であった。
【0005】
従来のDNAマイクロアレイ用のスポッターでは高密度が求められるため、スポット液滴量は1nl未満に設定されている。スポッティングに用いられるピンの先端は鋭利であり、チップ表面の金属薄層を傷つける問題があった。また、ピンにはスプリングばねが備えられている場合が多く、強い応力でピンが基板に押しつけられ、金属基板が傷つけられるため好ましくなかった。金属薄層が傷つくと、上記の光学的検出方法では測定は不可能である。また、スポットの液適量が1nl未満であると、スポットが小さすぎて上記光学的検出方法では測定できない。
【0006】
本発明は光学的検出方法に対応し、金属基板上にスポット液滴を自動的に形成させ、分子を表面に固定化してチップを作製する手段を提供する。
【非特許文献1】
Jordanら Anal. Chem., 69, 1449−1456, 1997
【非特許文献2】
Brockmanら j. Am. Chem. Soc., 121, 8044−8051, 1999
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、特定の先端を有するピンを用いて、自動的にスポッティングすることで、基板を傷つけることなく、容易に金属基板上に分子を固定化したチップを得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出した。
1.固定化する物質を含む溶液をピンに保持させ、先端部図形の面積が0.01mm2以上であるピンを基板に接触させることにより、金属基板チップ上に溶液をスポッティングする操作を含むアレイ作製方法
2.ピンの上部にポリマー緩衝材を配置していることを特徴とする1に記載のアレイ作製方法
3.スポッティングとピン洗浄、ピン乾燥を自動的に行う操作を含む1または2に記載のアレイ作製方法
4.96穴プレートもしくは384穴プレートに用意したサンプルを自動的に金属基板上にスポッティングする1〜3のいずれかに記載のアレイ作製方法
5.96穴プレートもしくは384穴プレートの配置を反映した形でスポッティングを行う1〜4のいずれかに記載のアレイ作製方法
6.上記金属基板チップが金を蒸着した平面ガラスである1〜5のいずれかに記載のアレイ作製方法
7.上記アレイが表面プラズモン共鳴測定用である1〜6のいずれかに記載のアレイ作製方法
8.表面プラズモン共鳴が表面プラズモン共鳴イメージングである1〜7のいずれかに記載のアレイ作製方法
9.隣り合うスポットの中心間の距離が1.5mm以下である1〜8のいずれかに記載のアレイ作製方法
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明は、金属基板チップ上にピンの接触によってのアレイを作製する方法を開示している。
【0010】
本発明において、固定化する物質を含む溶液を保持したピンと金属基板チップが接触することで基板上に液滴を形成する。固定化する物質は限定されるものではなく、チップ上に固定化され、分子間の相互作用観察に用いられる。溶液の溶媒も限定されるものではなく、水、緩衝液、有機溶媒などが挙げられる。ピンと基板は接触することが好ましい。インクジェット法などの液滴を飛ばす手段は非常に高価であり、サンプルの粘度によってスポットの圧力条件が変わるために、設定が難しく好ましくない。ピン接触させる手段は非常に容易、かつ安価であり好ましい。
【0011】
金属基板を傷つけないため、ピンと基板が接触する際に、高い応力がかからない方が好ましい。応力を低く抑える手段として、ピンが基板に接触する面積は大きい方がよく、ピンにかかる重さは小さい方がよい。
【0012】
ピンの先端部図形の面積は0.01mm2以上であることが好ましく、より好ましくは0.02mm2以上、さらに好ましくは0.03mm2以上である。0.01mm2未満であると、スポット時のピン先端にかかる応力が大きくなり、金属基板を傷つける恐れがあるため、好ましくない。
なお、ここで、ピン先端部図形の面積を言う場合は、先端部が完全に平面となっていなくても、基板と接触する先端部が半径100μm以上、好ましくは半径150μm以上、特に好ましくは半径200μm以上の球形に相当する曲面であれば、その部分は面積として数えることができる。
また、先端部の面積の上限は、特に限定するものではないが2mm2であることが好ましく、さらには1mm2であることが好しい。2mm2を越えるとスポット面積が大きくなりすぎ、基板上にスポット出来る数が少なくなるため好ましくない。
【0013】
先端部の図形の形状は特に限定されるものではなく、円形、多角形、それぞれに溝がはいったものや穴があいたものなどを含む。また、ピンには先端部から上部にかけて毛細管状の加工が施され、溶液が保持される機構を持つものであっても良い。これらのピンの例を図10〜13に挙げる。図10はピン先端から上部に向かってスリットが設けられており、スリットに溶液が保持される構造となっている。図11は2枚のプレートが先端に向かって互いに狭まり毛細管を形成する構造となっている。図12はピン先端に凹みが設けられている。図13はピン先端から側面にかけて溝が設けられている。
また、ピンの先端部と側面部の角は基板の金属が傷付きにくいように角を丸めておいても良い。丸める場合には半径10μm以上であることが好ましい。
【0014】
ピンの材質としては、ステンレス、金、白金、チタンなどの不活性な金属や合金類、セラミック、ガラス、プラスチック、天然石など溶液のスポッティングの目的に用いられるものであれば特に限定されるものではない。これらの中でも、金属や合金類が好ましい。
【0015】
スポッティング時に衝撃を吸収し、ピンの先端にかかる応力を調整する手段としては、ピンの支持体部分に緩衝機構を設けることが好ましい。ピンが基板に接触して押し込まれた際に緩衝機構によりピンにかかる衝撃を吸収すると共に、適度な反力が発生してピンの先端に応力をかけることが出来る。また、ピンは上方には自由に可動する構造とし、ピン(およびその付属物)の自重によりピン先端に応力をかけることも出来る。
【0016】
緩衝機構としてはポリマー製の緩衝材を用いることが好ましい。基板と接触することによる圧力を吸収することができるためである。DNAマイクロアレイに広く使用されている金属ばねはばねの強度が強すぎて好ましくない場合がある。ポリマーの素材は特に限定されるものではないが、軟質の発泡系(フォーム)のものが好ましく、ポリオレフィン系、ゴム系、ウレタン系のフォームなどが挙げられる。
【0017】
基板周囲の湿度は70%RH以上が好ましく、80%RH以上がより好ましい。70%RH未満であると、スポットした液滴が乾燥し、溶液状態での固定化反応が進行しないため好ましくない。またスポット内の固定化密度のムラが生じるため好ましくない。スポット後、スポットされた液が乾燥されない状態で5分以上、好ましくは10分以上放置され、固定化が完全に行われることが好ましい。
【0018】
湿度を70%RH以上に維持する手段としては、スポッター内部を閉鎖空間とし、加湿機構を設けることが好ましい。加湿機構としては、水のたまり場を設ける方法、ヒーター等で水を加熱して水蒸気を発生させる方法、超音波で霧を噴霧する方法等、任意のものが挙げられる。また、加湿機構と湿度センサーを連動させ、一定の湿度にコントロールされるようにすることも好ましい。
周囲温度は特に限定されるものではないが、常識的には4℃から30℃でスポッティングは行われる。室温25℃前後で使用するのが安価であり簡便であるが、4〜10℃に冷やす方法も湿度を高める手段として有効である。
【0019】
本発明ではピンは自動的に固定化する物質を含む溶液を保持し、金属基板上に保持した溶液の一部もしくは大部分をスポットする。同一の溶液のスポットは繰り返されることもある。異なる溶液のスポットを作製する場合は、直前にスポットした溶液とコンタミする恐れがあるため、ピンの洗浄、ピンの乾燥が連続して自動的に行われることが好ましい。洗浄液および洗浄液は特に限定されるものではなく、水、アルコール類を含んだ液、界面活性剤を含んだ液が挙げられ、洗浄方法も、液に浸ける方法、流水(溶液)をかける方法やこれらの組み合わせが用いられ、超音波処理したりする手段も挙げられる。
【0020】
洗浄回数も限定されるものではないが、2回以上行うとコンタミを抑制して洗浄することができる。ピンを複数回洗浄する場合でも、同一の洗浄液で洗う場合、異なる洗浄液で洗う場合の両方を含む。
【0021】
自動的にスポッティングするため、ピンは保持具に保持され、縦、横、高さ方向に可動である構造にする必要がある。さらに、ピンは駆動装置で駆動可能とし、駆動装置はコンピュータ等を用いて動きが制御できるようプログラムされている必要がある。駆動方法としてはステッピングモータやサーボモータ、リニアモータによる方法等挙げられ、これらの技術は従来のアレイ等の自動スポッターで用いられる技術をそのまま転用することが出来る。
【0022】
固定化する物質を含む溶液は96穴プレートもしくは384穴プレートに用意されることが好ましい。いずれも汎用品としてほぼ同じ形状のものが実験用に市販されているため容易に手に入れることができ、固定化する物質を含む溶液の調整をこれらプレート上で行い、そのままスポッターに固定できるためである。
【0023】
自動的に液滴を作製するパターンも96穴プレートもしくは384穴プレートの配列を反映した形でスポットすることが好ましい。例えば、96種類のサンプルが96穴プレートに用意された場合、96穴プレートに用意した配列をそのまま基板上に再現すると、スポットした場所が特定しやすく好ましい。ただし、96穴プレートの配列の点対称、線対称、180°回転もしくはそれらの組み合わせも含む。
【0024】
もう一つの例として、12種類のサンプルの場合はn=8でスポットすることができる。同一のサンプルを縦方向に8つスポットすることや、斜めに一つ又はそれ以上ずつずらしてスポットする場合も、本発明に含まれる。それを対称・回転したパターンも含まれる。固定化する物質を含まないブランクを入れる場合も本発明に含まれる。
【0025】
金属基板チップは金薄膜をコーティングした平面ガラスであることが好ましい。金は金−硫黄結合により、表面修飾が容易であるためである。例えば、末端にアミノ基やカルボキシル基などの官能基をもつアルカンチオールを溶液中で接触させることでアルカンチオールの自己組織化表面が形成され、表面に官能基を導入することができる。また、金基板はSPR法、エリプソメトリー法、和周波発生(SFG)法などに使用することができるため好ましい。
【0026】
中でもSPR法は広く用いられており、相互作用の測定方法として信頼性が高く、好ましい。また、SPRイメージング法は広い範囲の相互作用を観察することができるため、さらに好ましい。
【0027】
金薄膜をコーティングする手段は特に限定されるものではないが、蒸着法、スパッタリング法、イオンコーティング法などが挙げられる。金の厚さは特に限定されるものではないが、通常は30〜100nmの範囲で使用される。金の剥離を防ぐために、金をコーティングする前に、基板にあらかじめクロムもしくはチタンの層を1〜10nmだけ形成しておくのが一般的である。
【0028】
ガラスはさまざまな屈折率を有する透明基板が用意できるため好ましい。プラスチックも基板に使うことは可能であるが、成形は困難である場合がある。ガラス板は平面であることが好ましい。回折格子などの加工を行ったものであっても良い。しかし加工を行うことで、プリズムを用いずに測定ができることができるものの、加工は高価であるだけでなく、微小な溝があるために、スポットが難しくなることがある。
【0029】
隣り合うスポットの中心間の距離は1.5mm以下であると、スポットが高密度になるため好ましい。96穴プレート、384穴プレートのパターンを反映させるため、高密度である方が小さな面積の上に多くのサンプルを固定化することができるため好ましい。
【0030】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0031】
[実施例]
末端にチオール基を有するポリエチレングリコール(PEGチオール:日本油脂製SUNBRIGHT MESH−50H)を1mMの濃度で7mlのエタノール:水=6:1の混合溶液に溶解させた。PEGチオールの分子量は5,000であり、親水性が非常に高い。また、PEGの末端はメトキシ基であり、反応性をほとんど有さない。
【0032】
18mm四方、1mm厚のLak10ガラススライドにクロムを3nm蒸着し、金を45nm蒸着した金蒸着スライドを、上記PEGチオール溶液に3時間浸漬させ、金基板全体にPEGチオールを結合させた。
【0033】
スライドをミリQ水とエタノールで洗浄し、空気噴霧により乾燥させたのち、このスライドの上に図1に示すフォトマスクを載せ、500W超高圧水銀ランプ(ウシオ電機製)で2時間照射し、照射された部分のPEGチオールを除去した。フォトマスクのパターンは500μm×500μmの四角形が96個並んだものである。
【0034】
ミリQ水とエタノールで洗浄したのち、7−カルボキシル−1−ヘプタンチオール(7−CHT:同仁化学研究所)の1mM溶液中にスライドを1時間浸漬し、紫外線照射部にカルボキシル基を導入した。
【0035】
300μLの0.2M 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(水溶性カルボジイミド)/0.05M N−ヒドロキシスクシンイミド PBS(−)溶液をスライドの上に滴下して一時間反応させ、COOH基をスクシンイミドエステルとして活性化した。
【0036】
スライドを水洗後、空気噴霧により乾燥させ、自動スポッターに装着した。13種類の抗ヤギIgGモノクローナル抗体を100μg/mlの濃度に調整し(PBS(−))、10μlを96穴プレートのA1〜12、B1のウェルに用意した。自動スポッターの内部湿度を81±2%に保ち、n=4でスポッティングを行った。湿度はアズワン社NT−1800デジタル温湿度計をチップ置場横に置いて測定した。
【0037】
スポッティングのパターンを図2に示す。このように、96穴プレートに入れたサンプルの入れ方を反映した形でスポッティングを行った。B2〜12のウェルにはモノクローナル抗体サンプルは入っていないため、ブランクのスポットとなる。
【0038】
スポッティングに用いたピンの先端の図を図3に示す。ピンの直径は487μmであり、200μmの幅の溝が入っている。従って、面積は0.09mm2である。また、ピンが取り付けられたヘッド部分の内部構造の概略図を図4に示す。ピンはガイドを通して内部のピン固定治具に取り付けられており、ピン固定治具は上下方向に移動可能となっている。ピン固定治具の上には緩衝材として軟質ウレタンフォームが設けられ、ピンが基板に押し付けられた時には、ピンがピン固定治具と共に上方に移動し、緩衝材が圧縮され、衝撃を緩和すると共にピンに適度な応力を与える。
【0039】
スポッティングは自動的に行われる。図5に使用した自動スポッターの内部の配置の概略を示す。ピンは96穴プレートに浸漬され、ウェル内のサンプルを保持し、スライド上へと移動し、スポッティングを行う。実施例の場合はn=4であるため、96穴プレートとスライドの間を3回往復する。4回目のスポッティングが終わった段階でピンは洗浄浴へと移動し、ミリQ水で2回洗浄される。洗浄後にドライヤー内にて上下運動が30mmの振り幅で3回行われ、ピンが乾燥される。次のウェルにてサンプルと採取し、同様の動作は付属したコンピュータで制御されて自動的に行われる。
湿度の調整は超音波加湿器を用いて、超音波により発生した霧をスポッター内部に吹き込む方式とし、チップ置き場周辺での湿度を測定し、このデータを元に超音波加湿器のON/OFFを切り替えて調整した。
【0040】
スポッティング終了後、スポッターからスライドを取り出し、直ちに加湿チャンバー内にスライドを移し、2時間保持してスライド上の官能基と抗体のアミノ基を反応させ、抗体を表面に固定化した。なお、加湿チャンバーは、容器の底部に水を張り、中段にスライドを置ける構造となったものであり、密閉が可能であるため、長時間乾燥させることなく反応の進行を続けることが出来る。
反応終了後のチップをミリQ水で数回洗浄した上で、空気噴霧により水を取り除き、分子量2,000のアミノ基末端ポリエチレングリコール水溶液を2mg/mlの濃度でpH8.5に調製し、300μlをスライド上に注ぎ、残存するスクシンイミド基にポリエチレングリコールを反応させ、ブロッキング反応を行った。表面固定化の反応スキームを図6に示す。
【0041】
抗体を固定化したスライドを3回水洗した後、空気噴霧により乾燥させ、SPRイメージング装置(東洋紡績製)にセットした。緩衝液としてPBS(−)を250μl/mlの流速で30分通液し、100μl/mlの流速で30分通液して安定化させた。その際のSPRイメージング像を図7に示す。白くなっているスポット部分には抗体が固定化されており、その他の部分には固定化されていない。ピンが接触してサンプル液がスポットされた部分には全く傷は見当たらなかった。
【0042】
次に抗原であるヤギIgGを1μg/mlから8μg/mlまで濃度(C)を段階的に倍増させて流し、各々の濃度における平衡時のシグナル(Req)を得た。この際のSPRシグナルの変化を図8に示す。
【0043】
Req/CとCをプロットした(スキャッチャードプロット)結果を図9に示す。いずれもほぼ直線関係が得られている。図9の直線の傾きから結合平衡定数を算出し、表1に示す。
【0044】
ただし、シグナルが低いために相関係数が0.8未満となったデータは省いている。このように金属基板上に基板を傷つけることなく、分子のアレイを作製し有用なデータを取ることが可能となった。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
本発明により、金属基板上に生体分子のアレイを容易にかつ安価に得ることができるようになった。金属基板は傷つけられることなく、また、生体分子は活性を保ったままアレイが得られる。今後、本発明により作製されたアレイは生体分子の相互作用解析に広く使用されていくと期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例に使用したフォトマスクパターン。黒色部分にクロムがコーティングされ光を遮断する。
【図2】 実施例1で使用したスポッティングのパターン。上図がスライド上を表し、下図が96穴プレートを示す。96穴プレートのA1〜B12のウェル内のサンプルを、上図のパターンでスポットした。実施例1ではB2〜12はブランクとした。
【図3】 実施例で使用したピンの先端の概略図
【図4】 実施例で使用したピンの取り付けヘッド内部の概略図
【図5】 実施例の自動スポッターの内部構造概略
【図6】 実施例でのスライド上の反応スキーム
【図7】 実施例での抗体を固定化したスライドのSPRイメージング像
【図8】 実施例での抗原の濃度を段階的に増加させた場合のSPRシグナル変化
【図9】 図8のデータから作成したスキャッチャードプロット
【図10】 ピンの先端部の例
【図11】 ピンの先端部の例
【図12】 ピンの先端部の例
【図13】 ピンの先端部の例
Claims (9)
- 固定化する物質を含む溶液をピンに保持させ、先端部図形の面積が0.01mm2以上であるピンを基板に接触させることにより、金属基板チップ上に溶液をスポッティングする操作を含むアレイ作製方法
- ピンの上部にポリマー緩衝材を配置していることを特徴とする請求項1に記載のアレイ作製方法
- スポッティングとピン洗浄、ピン乾燥を自動的に行う操作を含む請求項1または2に記載のアレイ作製方法
- 96穴プレートもしくは384穴プレートに用意したサンプルを自動的に金属基板上にスポッティングする請求項1〜3のいずれかに記載のアレイ作製方法
- 96穴プレートもしくは384穴プレートの配置を反映した形でスポッティングを行う請求項1〜4のいずれかに記載のアレイ作製方法
- 上記金属基板チップが金を蒸着した平面ガラスである請求項1〜5のいずれかに記載のアレイ作製方法
- 上記アレイが表面プラズモン共鳴測定用である請求項1〜6のいずれかに記載のアレイ作製方法
- 表面プラズモン共鳴が表面プラズモン共鳴イメージングである請求項1〜7のいずれかに記載のアレイ作製方法
- 隣り合うスポットの中心間の距離が1.5mm以下である請求項1〜8のいずれかに記載のアレイ作製方法
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