JP3870525B2 - トロイダル形無段変速機のトラニオン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば自動車用の変速機として用いるトロイダル形無段変速機のトラニオンに関する。
【0002】
【従来の技術】
トロイダル形無段変速機のトラニオン部は、図7及び図8に示すように構成されている。すなわち、エンジン等の駆動源(図示しない)に連結される入力軸1には入力ディスク2と出力ディスク3がニードルベアリングを介して回転自在に支持されている。入力ディスク2の背面側にはカム板4が入力軸1に対してスプライン係合しており、カム板4と入力ディスク2との間にはローラ5が介在され、入力ディスク2を出力ディスク3側に押し付けるローディングカム式の押圧機構6が設けられている。
【0003】
入力ディスク2と出力ディスク3との間には枢軸7を中心として揺動するトラニオン8a,8bが設けられ、トラニオン8a,8bの中心部には変位軸9が設けられている。そして、この変位軸9にはパワーローラ10が回転自在に支持され、このパワーローラ10は入力ディスク2及び出力ディスク3と接するトラクション部を有し、入力ディスク2と出力ディスク3との間に傾転自在に転接されている。
【0004】
また、トラニオン8a,8bとパワーローラ10との間にはパワーローラ軸受11が設けられている。このパワーローラ軸受11はパワーローラ10に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、パワーローラ10の回転を許容するものである。このようなパワーローラ軸受11の複数個の玉12はトラニオン8a,8b側に設けられた円環状の外輪13と回転部としてのパワーローラ10との間に設けられた円環状の保持器14によって保持されている。
【0005】
さらに、前記トラニオン8a,8bの本体部分の外周部には溝15が設けられ、この溝15には止め具16によって無端ループ状に連結された伝達ケーブル17が掛け渡されている。前記溝15の断面形状には従来2通りあり、第1の従来例は、溝15のうち伝達ケーブル17のケーブル部分と当接する部分は、図8(b)に示すように、断面が略半円形状で、ケーブル部分の断面の略半分が嵌合されており、止め具16と当接する部分は図8(c)に示すように、断面が略U字状で、止め具16の断面の略全体が嵌合するようになっている。
【0006】
第2の従来例は、溝15のうち伝達ケーブル17のケーブル部分と当接する部分は、図9(a)に示すように、断面が略1/4円形状で、ケーブル部分の断面の略1/4が係合されており、止め具16と当接する部分も図9(b)に示すように、断面が略1/4円形状で、止め具16の断面の略1/4が係合されるようになっている。
【0007】
また、図10に示すように、前記トラニオン8a,8bのパワーローラ10を囲む袋部19の上下部は、2つまたは4つの円弧面19aを組み合わせた形状に形成されている。このため、機械加工によって袋部19の上下部の円弧面19aを同時に加工することはできず、例えばフライス盤を用いてエンドミルで上下部の円弧面19aを別々に加工しているため、加工時間が長く、コストアップの原因になっていた。
【0008】
また、図11に示すように、従来のトラニオン8a,8bは、傾転を支持するラジアルニードル軸受28aの転送部となる円筒部42は研磨工程が必要なため、この円筒部42と垂直な平面部43とのつなぎ部には研磨逃げ部44が設けられていた。しかし、高出力のトロイダル形無段変速機ではトラニオン8a,8bに大きな力がかかる。また、駆動系に衝撃トルクが入った時にはトラニオン8a,8bにも瞬間的に大きな力がかかることになる。このとき、トラニオン8a,8bの背面方向の位相に位置する研磨逃げ部44には引張り応力が集中し、この集中が繰り返されるとトラニオン8a,8bは研磨逃げ部44より破損する恐れがある。
【0009】
また、この引張り応力の集中する部位を高周波熱処理して材料の引張り応力に対する耐力を高めることが望ましい。しかし、この位置はシャフトトラニオン45の抜止めピン46の位置にも相当しており、ピン孔47はトラニオン8a,8bとシャフトトラニオン45を嵌合した後、つまり高周波熱処理より後工程に加工されるので、この部位が熱処理によって硬化されていると加工が困難になり、製作コストアップの原因となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述した第1の従来例の場合には、溝15の断面が略半円形状であるため、伝達ケーブル17を組み付ける際に、左右のトラニオン8a,8bのうち一方を入力ディスク2と出力ディスク3の軸心方向にt1 の距離だけ近付けて組み付ける必要があり、組み立てが困難であった。
【0011】
また、第2の従来例の場合には、溝15の断面が略1/4円形状であるため、伝達ケーブル17を組み付ける際に、左右のトラニオン8a,8bを入力ディスク2と出力ディスク3の軸心方向に近付ける必要はないが、伝達ケーブル17と溝15との係合深さが浅いため、特に伝達ケーブル17のテンションがない場合に脱落しやすいという問題がある。
【0012】
なお、トラニオンの本体部分の外周部に溝を設け、この溝に止め具によって無端ループ状に連結された伝達ケーブルを掛け渡す公知例としては、特開昭63−67458号公報に開示されているが、溝の形状については言及していない。
【0013】
この発明は、トラニオンを機械加工する際に、袋部の上下部の円弧面を同時に加工でき、加工時間の短縮およびコストの低減を図ることができるトロイダル形無段変速機のトラニオンを提供することに有る。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記目的を達成するために、入力ディスクと出力ディスクとの間に傾転自在に転接されたパワーローラを回転自在に支持するトロイダル形無段変速機のトラニオンにおいて、パワーローラの曲率に沿ってトラニオンの袋部の上部と下部を同一の円周に沿う円弧面に形成したことを特徴とする。
【0019】
前記構成によれば、トラニオンを機械加工、例えば旋盤で加工する際に、袋部の上下部の円弧面を同時に加工でき、加工時間の短縮とコストの低減を図れる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の各実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は第1の実施形態を示し、図1はトロイダル形無段変速機のトラニオンを示す。(a)はトラニオン部を示し,(b)はY−Y線に沿う断面図、 (c)はZ−Z線に沿う断面図である。トラニオン8の基本的構成は従来と同一であり、説明を省略する。本実施形態のトラニオン本体21の外周部には伝達ケーブル22を掛け渡すための溝23が設けられている。伝達ケーブル22はワイヤケーブルを金属管状体からなる止め具24によって無端ループ状に連結することにより形成されている。
【0023】
前記溝23の伝達ケーブル22のケーブル部分と当接する部分23aの断面は略1/2円形状に形成され、ケーブル部分の断面の略半分が係合するようになっている。また、前記止め具24と当接する部分23bの断面は略1/4円部25aとこれと連続する直線部分25bの組合わせた形状であり、止め具24の円周の略1/4が係合するようになっている。
【0024】
したがって、止め具24と溝23の係合深さが浅くなり、トラニオン本体21に伝達ケーブル22を組み付ける際に、左右のトラニオン8a,8bのうち一方を入力ディスク2と出力ディスク3の軸心方向に伝達ケーブル22のケーブル部分の断面の略半分の距離t2 だけ近付ければよくなり、伝達ケーブル22の組み付けが容易となる。また、溝23の伝達ケーブル22のケーブル部分と当接する部分23aの断面は略1/2円形状に形成され、ケーブル部分の断面の略半分が係合しているために伝達ケーブル22の脱落を防止できる。
【0025】
したがって、本実施形態によれば、トラニオン本体21に対して伝達ケーブル22の組み付が容易であると共に、伝達ケーブル22の脱落を防止できるという効果がある。
【0026】
図2(a)はパワーローラ10を回転自在に支持する支持構造を示すもので、パワーローラ10を回転自在に支持するピボット軸26はブッシュ27を介してトラニオン8a,8bに支持されている。このトラニオン8a,8bは傾転を支持するラジアルニードル軸受28aを介してケーシング30に支持されている。
【0027】
トラニオン8a,8bには上下方向に貫通する油孔29が穿設され、この油孔29の上下開口端はプラグ31によって閉塞され、プラグ31には図2(b)に示すように,例えば1mmφの小孔32が穿設されている。そして、ラジアルニードル軸受28aを潤滑するようになっている。さらに、トラニオン8a,8bの袋部平面33からピボット軸26の軸方向に沿ってパワーローラ軸受用油孔34とスラストニードル潤滑用油孔35とが穿設されている。
【0028】
パワーローラ軸受用油孔34は変位軸9の背面に相当する位置に設けられ、パワーローラ軸受11を潤滑するようになっており、スラストニードル潤滑用油孔35はパワーローラ軸受用油孔34より小径で、スラストニードル軸受36の背面部で、トラニオン8a,8bを車両に搭載したときに上方に相当する位置に設けられている。
【0029】
前記構成によれば、パワーローラ10を支持するパワーローラ軸受11は拘束(10000rpm以上)で回転するので多量の油が必要であり、スラストニードル軸受36はピボット軸26の揺動を支持するのみの油でよいため、油孔の内径をパワーローラ軸受11に油を供給するパワーローラ軸受用油孔34の方をスラストニードル潤滑用油孔35より大きくすることで油量をコントロールしている。さらに、パワーローラ軸受用油孔34は変位軸9に設けた油孔に対応した位置にあり、油が流れやすくなる。
【0030】
さらに、図3に示すように、トラニオン8a,8bの袋部37の上下部は、パワーローラ10の曲率に沿って円弧面37a,37bに形成されている。したがって、トラニオン8a,8bを機械加工、例えば旋盤で加工する際に、袋部37の上下部の円弧面37a,37bを同時に加工でき、加工時間の短縮とコストの低減を図ることができる。
【0031】
図4〜図6は第2の実施形態を示し、図4はトラニオン8a,8bの傾転を支持するラジアルニードル軸受28aの転送部を示し、ラジアルニードル軸受28aの転送部となる円筒部42と垂直な平面部43とのつなぎ部48はR形状に形成されている。このRの大きさは円筒部42の直径Dの0.05倍以上とすることにより自動車用として実用上十分な耐久性を得ている。
【0032】
つなぎ部48のR形状の大きさを円筒部42の直径Dの0.05倍以上とすることにより耐久性を得る理由は,次の通りである。図5はR/Dを種々に変化させたときのつなぎ部48の最大引張り力が約600N/mm2 程度となり、R/Dが0.05より小さいところでは最大引張り応力が急激に上昇している。一方、金属材料研究所の「JIS機械構造用鋼の基準的疲労特性」によれば、図6に示すように、曲げ疲労限度はビッカース硬さに略比例し、Hv400では疲労限度は約600N/mm2 であり、この応力以下であれば、自動車として実用上十分な耐久性を確保できると考えられる。
【0033】
また、トラニオン8a,8bとシャフトトラニオン45とを止める抜止めピン46は、パワーローラ10の回転軸線と90゜位相がずれ、応力が高くなるつなぎ部48は、図4のAの位置に当たり、抜止めピン46と90゜位相がずれた位置となる。したがって、図4の斜線で示す部分を高周波熱処理によりHv400以上に硬化し、ピン孔47を穿設する位置は硬化しないように高周波熱処理パターンを設定することによりピン孔47の加工性を上げ、コストダウンを図ることができる。なお、高周波熱処理により硬度の必要な部位のみを硬化させる代りに、浸炭と防炭により硬度が必要な部位を硬化することも可能である。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、トラニオンを機械加工、例えば旋盤で加工する際に、袋部の上下部の円弧面を同時に加工でき、加工時間の短縮とコストの削減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態におけるトロイダル形無段変速機のトラニオンを示し、(a)はトラニオン部の正面図、(b)はY−Y線に沿う断面図、(c)はZ−Z線に沿う断面図。
【図2】同じくトラニオン部の縦断側面図。
【図3】同じくトラニオン部のローラ支持部材の正面図。
【図4】 この発明の第2の実施形態におけるトロイダル形無段変速機のトラニオンを示し、(a)は縦断正面図、(b)はB−B線に沿う断面図、(c)は下面図。
【図5】同じくR/Dを種々に変化させたときのつなぎ部の最大引張り応力を示すグラフ図。
【図6】同じくJIS機械構造用鋼の基準的疲労特性図。
【図7】従来のトロイダル形無段変速機のトラニオンを示す縦断側面図。
【図8】トラニオンの第1の従来例を示し、(a)はトラニオン部の正面図、(b)はY−Y線に沿う断面図、(c)はZ−Z線に沿う断面図。
【図9】トラニオンの第2の従来例を示し、(a)は図8のY−Y線に沿う断面図、 (b)は図8のZ−Z線に沿う断面図。
【図10】従来のトラニオンの正面図。
【図11】 従来のトラニオンを示し、(a)は縦断正面図、(b)はC−C線に沿う断面図、(c)は下面図。
【符号の説明】
1…入力軸
2…入力ディスク
3…出力ディスク
8a,8b…トラニオン
10…パワーローラ
21…トラニオン本体
22…伝達ケーブル
23…溝
24…止め具
29…油孔
34…パワーローラ軸受用油孔
35…スラストニードル潤滑用油孔
Claims (1)
- 入力ディスクと出力ディスクとの間に傾転自在に転接されたパワーローラを回転自在に支持するトロイダル形無段変速機のトラニオンにおいて、パワーローラの曲率に沿ってトラニオンの袋部の上部と下部を同一の円周に沿う円弧面に形成したことを特徴とするトロイダル形無段変速機のトラニオン。
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