従来のレンズシャッタカメラのシャッタ装置としては、図16に示すものがある。
同図において、101は永久磁石であるマグネット、102は駆動レバー、102aは駆動レバー102に設けられた駆動ピンである。駆動レバー102はマグネット101に固着され、マグネット101と一体的に回転する。103はコイル、104,105は軟磁性材料から成り、コイル103により励磁されるステータである。ステータ104とステータ105は端部104aと端部105aにおいて接合されており、磁気回路上一体となっている。コイル103への通電により、ステータ104およびステータ105が励磁され、マグネット101は所定の角度内を回転する。106,107はシャッタ羽根であり、108は地板である。シャッタ羽根106,107は地板108のピン108b,108cへ穴部106a,107aにおいて回転可能に取り付けられ、長穴106b,107bが駆動ピン102aに摺動可能に嵌合し、マグネット101とともに駆動レバー102が回転する事で、シャッタ羽根106,107は穴部106a,107aを中心として回転駆動され、地板の開口部108aを開閉する。コストアップを防ぐ為にマグネットをプラスチックマグネットで形成し、駆動ピンを一体的に成形したものもある。
109はシャッタ羽根106,107を地板108との間で移動可能に保持する前地板であり、110はステータ104,105を保持し、マグネット101を回転可能に保持する後地板である(従来例1、特許文献1参照)。
ところで、撮像素子にCCDなどを用い、被写界像を光電変換して記憶媒体に静止画像の情報として記録するデジタルカメラが普及してきている。この種のデジタルカメラの露光に関する動作の一例について、以下に簡単に説明する。
まず撮影に先立って主電源が投入され、撮像素子が動作状態になるとシャッタ羽根は撮像素子に露光可能な開位置に保持される。これにより撮像素子にて電荷の蓄積と放出転送が繰り返され、画像モニターによって被写界の観察が可能になる。
その後、レリーズボタンが押されると、その時点での撮像素子の出力に応じて絞り値と露光時間が決定され、それに基づいて、露光開口の口径を絞る必要がある場合には、まず、絞り羽根が駆動されて所定の絞り値にセットされる。次に、蓄積電荷の放出がされている撮像素子に対して電荷の蓄積開始が指示され、それと同時にその蓄積開始信号をトリガー信号として露光時間制御回路が起動され、所定の露光時間の経過により、シャッタ羽根が撮像素子への露光を遮る閉位置へと駆動される。撮像素子への露光が遮られた後、蓄積された電荷の転送が行われ、画像書き込み装置を介して記録媒体に画像情報が記録される。電荷の転送中に撮像素子への露光を防ぐのは、電荷の転送中に余分な光によって電荷が変化してしまうことを防ぐためである。
上記のようなシャッタ装置の他に、NDフィルターを進退させる機構を持つものや、小さな絞り径をもつ絞り規制部材を進退させる機構を持つものがある。
上記のシャッタ装置は、その厚みを薄くすることはできるが、コイルやステータが地板上において多くの範囲を占めてしまう。この点に鑑み、図17及び図18に示す光量調節装置が提案されている。
同図において、201は筒状のマグネットであるロータであって、201aがN極、201bがS極に着磁されている。201gはロータ201と一体に成形された腕であり、この腕201gから駆動ピン201hがロータ201の回転軸方向に延びている。202はコイルであり、ロータ201の軸方向に配置される。203は軟磁性材料から成り、コイル202によって励磁されるステータである。ステータ203はロータ201の外周面と対向する外側磁極部203aと、ロータ201の内部に挿入される内筒203bと、ロータ201の軸部201fが回転可能に嵌合される穴部203cを有している。204は補助ステータであり、ステータ203の内筒に固定され、ロータ201の内周面と対向する。コイル202への通電により、外側磁極部203a、補助ステータ204が励磁され、ロータ201は所定の位置まで回転する。207,208はシャッタ羽根であり、205は地板であり、穴部205dにロータ201の軸部201eが嵌合している。シャッタ羽根207,208は地板205のピン205b,205cへ穴部207a,208aにおいて回転可能に取り付けられ、長穴207b,208bが駆動ピン201hに摺動可能に嵌合する。206はトーションバネであり、駆動ピン201hを長穴207b,208bの端部に押し付けるように弾性力をロータ201に付与している。209は前地板である。
上記構成において、コイル202へ通電し、トーションバネ206の弾性力に逆らってロータ201とともに駆動ピン201hを回転させることで、シャッタ羽根207,208は穴部207a,208aを中心として回転駆動され、地板205の開口部205aの開閉駆動を行う(従来例2、特許文献2参照)。
上記光量調節装置を、カメラのシャッタ装置として用いるのであれば、コイル202への通電時間を変化させる事で露光量を調節する事ができ、ビデオカメラの絞り調節機構として用いるのであれば、コイル202への通電電流値を変更する事により露光量を調節する事ができる。そして、駆動ピン201hは外側磁極とは離れたところに位置するため、駆動ピン201hを永久磁石の材料で構成し該駆動ピンが着磁されても駆動ピンにより発生する電磁力は非常に小さく、ロータ全体の出力特性に影響を及ぼさずに光量調節装置の安定したアクチエータとする事ができる。また、駆動ピン201hはロータ201と一体的に成形されるので、別部品で構成される場合に比べ低コストで少ない組み立て誤差となる。また、ロータ201の回転軸に関して外側磁極とは重複する位置に駆動ピン201hを配置できるので、円筒形状のこのアクチエータの軸方向の長さL(図18参照)を低く抑える事もできる。
特開2001−75146号公報
特開2002−49076号公報
図1〜図4は本発明の実施例1に係る光量調節装置を示す図であり、そのうち、図1は光量調節装置に具備されるシャッタ羽根駆動機構の分解斜視図、図2はその断面図、図3はシャッタ閉鎖時の図2のB−B断面図、図4はシャッタ開放時の図2のB−B断面図である。
これらの図において、1は概略円筒形状のマグネット部をもつプラスチックマグネット材料から成るロータであり、マグネット部は外周面を円周方向に4分割して交互にS極とN極に着磁されている。詳しくは図3に示すように、着磁部1a,1cは外周面がN極に、着磁部1b,1dは外周面がS極に、それぞれ着磁されている。この実施例1では、着磁極数は4極であるが、2極以上であればよい。2は後述のボビン9の円筒外径部9aに巻き回される円筒形状のコイルであり、該コイル2はロータ1のマグネット部と同心でかつ、ロータ1と軸方向に隣り合う位置に配置され、コイル2はその外径がロータ1のマグネット部の外径とほぼ同じ寸法である。
3は軟磁性材料から成るステータであり、該ステータ3は、先端部に歯形状の外側磁極部3aが形成された外筒および円柱形状の内筒3bから成る。外側磁極部3aはステータ3の外筒からマグネット部(ロータ1)の回転軸と平行に板状に延出した形状で形成されるとともに、ロータ1の外周面に所定の隙間を持って所定の角度(A度)対向するように構成(図3参照)されている。ここでの角度とは、外側磁極部3aとマグネット部の回転中心位置とで構成される扇型の中心角を指す。この実施例1における所定の角度に関しては後述する。4は補助ステータであり、内径部4a(図2参照)がステータ3の内筒3bに嵌合して固着されている。また、補助ステータ4の外径部には、ステータ3の外側磁極部3aに対向した位相に図3に示すように対向部4bが形成されている。
ステータ3の円柱形状の内筒3bと補助ステータ4とで、内側磁極部を構成している。内側磁極部は対向部4bが外側磁極部3aに向かう出っ張りとして形成されているが、単に円筒形状であっても構わないし内筒3bのみで内側磁極部を構成しても構わない。その場合は多少出力が低下する可能性がある。
ロータ1には外側磁極部3aと対向していない位置に腕1gが一体的に形成されており、腕1gの先端にはロータ1の出力部材である駆動ピン1hが形成されている。外側磁極部3aと腕1gとはロータ1の軸方向の位置に関して重複する位置(前記軸方向と垂直な方向から見ると重なる位置を意味する)に配置されている。また、駆動ピン1hは後述の地板5の開口部5aの中心に向かう或いは離れる方向、すなわち、ガイド溝5eに案内されて地板5のおよそ半径方向に移動するように配置されている。5は光量調節装置の地板であり、地板5は開口部5aを備えている。
9は非磁性材料から成る円筒形状のボビンであり、胴体部である円筒外径部9aにはコイル2が卷き回されている。また、胴体部の円筒内径部9bにはステータ3の内筒3bが嵌合配置されている。また、胴体部に対して軸方向に延びるようにボビン9には円筒形状の軸受部(以下、円筒軸受部)9cが一体的に設けられており、該円筒軸受部9cは、ロータ1の円筒形状のマグネット部の内径1iと内側磁極部である補助ステータ4との間に位置し、ロータ1を回転可能に支持する。つまり、円筒形状のマグネット部を回転可能に支持する支持部を構成している。また、円筒軸受部9cは内側磁極部である補助ステータ4とマグネット部の内径1iとの距離を安定的に保持することができ、よって、内側磁極部、外側磁極部3aとロータ1とのギャップに関して部品の積み重ねによる誤差を非常に少なく構成でき、量産時の性能が安定する。また、このボビン9の材質を液晶ポリマーで構成することにより、非導電性である特性のためにコイル2が不用意にステータ3の内筒3bと導通することを防ぐことができ、同時に非磁性材料の特性のためにロータ1のマグネット部の内径1iと補助ステータ4との間に磁気ギャップが構成され、その間の吸着力の低減を図ることができる。また、液晶ポリマーは摩擦係数も小さい事からロータ1のマグネット部の内径1iと補助ステータ4との間の摩擦も低減され、ロータ1の良好な回転特性を得ることができる。
ロータ1は、図2に示すように、ボビン9の円筒軸受部9cに回転可能に支持され、スラスト方向の位置はボビン9の面9dと地板5の受け部5fに規制されている。よって、図18に示す従来例のようにロータ201を回転可能に支持する回転軸201e,201fが無く、また円筒形状のマグネット部と回転軸201e,201fをつなげる突起(該突起と回転軸201e,201fとで、ロータ201を回転可能に支持する専用の回転支持部材を構成していた)も必要ないので、駆動装置の軸方向の長さLを短く構成できる。
コイル2はロータ1と軸方向に隣り合う位置に配置され、またロータ1はその回転の中心位置が地板5の開口部5aの外側であって、その回転軸の向きが開口部5aの光軸と並行になるように配置されている。6は地板5との間に所定の空間を保ち、空間に後述の光量調節用のシャッタ羽根7,8を移動可能に保持する地板であり、開口部6aを備えている。7,8は光量調節部材であるところのシャッタ羽根であり、穴7a,8aがそれぞれ地板5のピン5b,5cに回転可能に嵌合している。また、長穴7b,8bはロータ1の駆動ピン1hに摺動可能に嵌合しており、ロータ1の回転に応じてシャッタ羽根7,8が駆動されて地板5の開口部5aの開口量を変化させる。
図3におけるロータ1の回転位置は、シャッタ羽根7,8により開口5aを閉じた状態であり、図4におけるロータ1の回転位置は、シャッタ羽根7,8が開口5aより待避した位置であって、開口部5aを開放状態にしている状態である。
図3の状態からコイル2に通電を行い、ステータ3の外側磁極部3aをS極に、内側磁極部の一部である補助ステータ4をN極に、それぞれ励磁すると、ロータ1は時計回りに回転して図4の状態となり、開口部5aが開放される。この図4の状態からコイル2に逆方向の通電を行い、ステータ3の外側磁極部3aをN極に、内側磁極部の一部である補助ステータ4をS極に、それぞれ励磁すると、ロータ1は図4において反時計回りに回転し、図3に示す開口部5aが閉じた状態になる。このようにコイル2への通電の向きを切り換えることで、駆動ピン1hが図3に示す位置と図4に示す位置とで往復運動を行う。
ロータ1に設けられる駆動ピン1hはロータ1を挟んで外側磁極部3aの反対側に配置され、外側磁極部3aとは離れているため、駆動ピン1hをマグネットの材料で構成して着磁したとしても、駆動ピン1hに発生する電磁力は非常に小さく、マグネット全体の出力特性にはほとんど影響を及ぼさない。したがって動作特性の安定した駆動装置とする事ができる。また、駆動ピン1hはプラスチックマグネット材料から成るロータ1と一体的に成形されるので、別部品で構成される場合に比べ、低コストで少ない組み立て誤差とすることができる。また、外側磁極部3aと駆動ピン1hを有する腕1gとはロータ1の軸方向における位置が重複しており、概略円筒形状の駆動装置の軸方向の長さL(図2参照)を抑えることもできる。駆動装置の軸方向の向きは、本光量調節装置の光軸に並行となるように配置されているので、光軸方向と平行方向の寸法に関してはコンパクトな光量調節装置となる。
上記構成において、コイル2はロータ1の軸方向に配置されるので、外側磁極部3aからガイド溝5eまでの、図3における左右方向の寸法に関して、地板5上においてコイル等の部品が多くの範囲を占めないコンパクトな駆動装置となる。また、ロータ1の外周面と内周面に対向する外側磁極部と内側磁極部とで該ロータ1を挟む磁路となるので、磁気抵抗が少ないものとなる。さらに、前記コイル2により発生する磁力線が効果的にロータ1に作用するため、出力の高い駆動装置となり、結果的にコンパクトで、安定した動作特性を有する光量調節装置とすることができる。更に、ステータ3の外側磁極部3aをロータ1の軸方向と平行方向に延出する歯形状(外側磁極部が複数で構成される場合は櫛歯形状)により構成しているので、ステータ3の直径はロータ1のマグネット部の直径に磁気ギャップと自らの肉厚を加えた最小限の寸法に抑える事ができ、非常に小径の駆動装置とする事ができる。
次に、外側磁極部3aの詳細な形状について説明する。ロータ1はコイル2への無通電時にシャッタ開放もしくは閉鎖の状態でその回転位置が保持される。この様子を図5および図6を用いて説明する。
図5において、縦軸はロータ1に作用する外側磁極部と内側磁極部との間で発生する磁力を示し、横軸はロータ1の回転位相を示す。
E1点,E2点で示されるところは、正回転しようとすると逆回転しようとする力が働いて元の位置に戻ろうとし、逆回転しようとすると正回転しようとする力が働いて元の位置に戻される。すなわち、マグネット部と外側磁極部の間の磁力によってロータ1がE1点或いはE2点に安定的に位置決めされようとするコギングの位置である。F1点,F2点,F3点はマグネットの位相が少しでもずれると前後のE1点、或いは、E2点の位置に回転する力が働く不安定な均衡状態にある停止位置である。コイル2への通電がなされない状態では、振動や姿勢の変化によってF1点,F2点,F3点に停止していることはなく、E1点或いはE2点の位置で停止する。
E1点,E2点のようなコギング安定点はマグネット部の着磁極数をnとすると、(360/n)度の周期で存在し、その中間位置がF1点,F2点,F3点のような不安定点になる。
有限要素法による数値シミュレーションの結果、マグネット部の着磁される1極あたりの角度(マグネット部の着磁部の中心角)と外側磁極部のマグネット部に対向する対向角度(図3においてAで示すものであり、外側磁極部3aとマグネット部の回転中心位置とで構成される扇型の中心角)との関係に応じて、コイルへの通電がなされていない状態での外側磁極部とマグネット部との吸引状態の様子が変化することが明らかになった。それによると、外側磁極部のマグネット部に対向する角度によりマグネット部のコギング位置が変化する。すなわち、外側磁極部のマグネット部に対向する角度が所定値以下の場合には、マグネット部の極の中心が外側磁極部の中心に対向する位置で安定的に保持される。つまり、図5で述べたE1点およびE2点がこの状態である。逆に、外側磁極部のマグネット部に対向する角度が所定値を超える場合には、マグネット部の極と極の境界が外側磁極部の中心に対向する位置で安定的に保持され、この位置が図5で述べたE1点およびE2点となる。その様子を図6を用いて説明する。
図6は、外側磁極部の幅寸法とコギングトルク、マグネット寸法の関係を示す図である。図6において、横軸は「マグネット部の厚み/ロータ1極あたりの外周長さ」、縦軸は「外側磁極部1つあたりのマグネット部に対する対向角度/ロータ1極あたりの角度」(言い換えれば、外側磁極部1つあたりの中心角/マグネット部の1極あたりの中心角)である。例えば、マグネット部の外径寸法が10mm、内径寸法が9mmで極数が16極の場合、マグネット部の厚みは「(10−9)/2」、着磁された1極あたりの外周長さは「10×π/16」であるから、横軸の「マグネット部の厚み/ロータ1極あたりの外周長さ」の値は0.255となる。また、外側磁極部1つあたりのマグネット部に対する対向角度を13度とすると、ロータ1極あたりの角度は22.5度であるから、縦軸の「外側磁極部1つあたりのマグネット部に対する対向角度/ロータ1極あたりの角度」は0.578となる。
図6中の各ポイントはコギングトルクがほぼ0、或いは最小となるときの、モータの「外側磁極部1つあたりのマグネット部に対する対向角度/ロータ1極あたりの角度」および「マグネットの厚み/ロータ1極あたりの外周長さ」をプロットしたものであり、図7に示す9種類のモータについてグラフ化したものである。
図6の縦軸を「Y=外側磁極部1つあたりのマグネット部に対する対向角度/ロータ1極あたりの角度」、横軸を「X=マグネット部の厚み/ロータ1極あたりの外周長さ」とすると、これらのポイントは「Y=−0.3X+0.63」の式で近似した直線1と、「Y=−0.3X+0.72」の式で近似した直線2とに囲まれた領域に存在する。
直線1より図中下の範囲、即ち、「Y<−0.3X+0.63」の範囲はマグネット部の極の中心が外側磁極部の中心に対向する位置で安定的に保持され、「Y>−0.3X+0.72」ならば、マグネット部の極と極の境界が外側磁極部の中心に対向する位置で安定的に保持される。
直線1と直線2とに囲まれた領域、即ち、次の条件を満たしている場合は、コギングトルクが極めて小さく構成される。
ここで、外側磁極部3aの軸方向のマグネット部(ロータ1)に対する各対向角度Aは、マグネット部の軸方向の位置によって徐々に変化するような場合であれば、平均的な対向角度が上記の条件式を満たしていれば良い。即ち、マグネット部の端面部付近の対向角度Aが例えば15度であって、外側磁極部の先端部付近の対向角度Aが13度程度なら、それらの平均値である14度を上記条件式に当てはめれば良い。
図8,図9,図10に、実験結果を示す。図8,図9,図10ともに、図5と同様、縦軸はロータ1に作用する外側磁極部と内側磁極部とで発生する磁力によるトルクを示し、横軸はロータ1の回転位相を示す。コイルに無通電時のトルク、即ちコキングトルクとコイル端子間に3Vの電圧を印加した時の発生トルクを示している。
このモデルとなるモータは
・マグネットは、外径φ10.6mm、内径φ9.8mm、着磁極数16極
・コイルは、巻き数が112ターン、抵抗10Ω
・ステータの外側磁極部は、外径φ11.6mm、内径φ11.1mm
・ステータの内側磁極部は、外径φ9.3mm、内径φ8.8mm
で構成されたものである。モータの形状は図1から図4に示したものと同様である。
図8は、外側磁極部のマグネット部に対する各対向角度Aは10.35度のものである。X,Yの値は、X=0.192、Y=0.46となる。図9は、外側磁極部のマグネット部に対する各対向角度Aは13.45度のものである。この場合が無通電時の発生するトルク、即ちコキングトルクが一番小さくなっているのである。X,Yの値は、X=0.192、Y=0.60となる。図10は、外側磁極部のマグネット部に対する各対向角度Aは15.52度のものである。X,Yの値は、X=0.192、Y=0.69となる。
上記図8,図9,図10の構成のものを、図6で求めた直線を示した図11上において、それぞれa,b,cで示す。 図8に特性を示した構成のもの、つまり外側磁極部のマグネット部に対する対向角度Aが10.35度のものは、X=0.192、Y=0.46で、「Y<−0.3X+0.63」の条件に当てはまり、マグネット部の安定位置は着磁部の極の中心が外側磁極部の中心に対向する位置であった。 図9に特性を示した構成のもの、つまり外側磁極部のマグネット部に対する対向角度Aが13.45度のものは、X=0.192、Y=0.60で、「−0.3X+0.63≦Y≦−0.3X+0.72」の条件に当てはまり、コキングトルクが極めて小さくなっている。図10に特性を示した構成のもの、つまり外側磁極部のマグネット部に対する対向角度Aが15.52度のものは、X=0.192、Y=0.69で、「Y>−0.3X+0.72」の条件に当てはまり、マグネット部の安定位置は着磁部の極の境界が外側磁極部の中心に対向する位置であった。
本実施例1では、「Y<−0.3X+0.63」となるように寸法が設定されており、コイル2への通電がなされていない状態では、図5に示した上記E1点およびE2点が、ロータ1の極の中心がステータ3の外側磁極部3aの中心に対向する位置となり、ロータ1の極の中心が外側磁極部3aの中心に対向する位置で安定して停止するようになっている。しかし、ロータ1の極の中心と外側磁極部3aの中心とが対向した状態からコイル2へ通電を行って外側磁極部3aを励磁しても、両方の回転方向に均等な力が加わってしまうためロータ1に回転力が生じない。
そこで、本実施例1では、地板5のガイド溝5eとロータ1の駆動ピン1hの関係を以下のように設定し、ロータ1の極の中心と外側磁極部3aの中心とが対向する位置までロータ1が回転しないようにしている。図3に示すように、駆動ピン1hがガイド溝5eの一方の端面に当接するときに、ロータ1のマグネット部の極、即ち着磁部1bの中心Q1とステータ3の外側磁極部3aの中心R1とのなす角度がα度(≠0度)になるように設定してある。図3の状態からコイル2へ通電して外側磁極部3aをS極に励磁すると、ロータ1に時計回りの回転力が生じて、図4に示す開口を開放する状態になる。
また、図3の状態を図5に当てはめると、G点の位置となる。この位置でのコギングトルク(ロータ1に作用するステータ3との間で発生する吸引力)はT2であり、これは、E1点に戻ろうとする回転方向にマイナスの力(図3において反時計方向の力)が働くことになる。すなわち、ロータ1の駆動ピン1hが地板5のガイド溝5eの一方の端面に当接する位置でのロータ1のマグネット部の保持力がT2となる。よって、図3の状態においてコイル2への通電を切ってもロータ1のマグネット部は安定的にこの位置(図3の位置)に停止する。
同様に、ロータ1の時計方向の回転に関しては、駆動ピン1hがガイド溝5eの他方の端面に当接するときに、ロータ1のマグネット部の極、即ち着磁部1aの中心Q2とステータ3の外側磁極部3aの中心R1とのなす角度がβ度(≠0度)になるように設定してある。図3と同様に、図4に示す開口を開放する状態で通電を断っても、ロータ1は安定的にこの位置(図4の位置)に停止する。
図4の状態を図5に当てはめると、H点の位置となる。この位置でのコギングトルク(ロータ1に作用するステータ3との間で発生する吸引力)はT1であり、これは、E2点に進もうとする回転方向にプラスの力(図4において時計方向の力)が働くことになる。すなわち、地板5のガイド溝5eの他方の端面がロータ1の駆動ピン1hに当接する位置の保持力がT1となる。よって、コイル2への無通電時には、ロータ1は安定的にこの位置(図4の位置)に停止する。図3の状態と図4の状態とではロータ1はθ度回転したことになるように設定してある。
図4の状態からコイル2へ逆方向に通電してステータ3の外側磁極部3aをN極に励磁すると、ロータ1のマグネット部に反時計方向の回転力が生じて、図3に示す開口を閉じる状態になる。この図3に示す状態になるとコイル2への通電を断ってもそのままの状態が保持されるのは前述した通りである。
以上のように、コイル2への通電方向を切り換えることにより、ロータ1のマグネット部は図3の状態から図4の状態、或いは、図4の状態から図3の状態に切り換わる。このように、外側磁極部の形状を上記の条件を満たすように設定するとともに、ロータ1の回転角度を、ロータ1のマグネット部に作用するコギング力が反対向きとなる範囲を含み、かつ、ロータ1の着磁部の中心位置と外側磁極部の中心位置とが対向する範囲を含まないように設定することにより、無通電の状態で2つの停止位置にロータ1を保持できる駆動装置を構成することができる。
シャッタ羽根7およびシャッタ羽根8はロータ1に連動して回転する。上述したようにロータ1のマグネット部が図4の状態にある時、シャッタ羽根7およびシャッタ羽根8はそれぞれ地板5の開口部5bから退避する位置にある。一方、ロータ1のマグネット部が図3の状態にある時、シャッタ羽根7およびシャッタ羽根8により地板5の開口部5bは閉鎖される。よって、コイル2への通電方向を切り換えることにより、シャッタ羽根7およびシャッタ羽根8の位置を開放位置と閉鎖位置とに制御可能となり、地板6の開口部6aおよび地板5の開口部5bの通過光量を制御できる。
さらに、コイル2への無通電時には、ロータ1のマグネット部と磁極部との吸引力により、それぞれの位置が保持される。よって、通電していなくても振動等によりシャッタ羽根7およびシャッタ羽根8の位置が変化することはなく、シャッタの信頼性が向上するとともに、省エネルギーになる。
したがって、本実施例1における光量調節装置は、開き位置でも閉じ位置でも無通電で安定して保持できるシャッタ装置や絞り装置として作用する。本実施例1では外側磁極部を1箇所の歯形状としたが、後述するように複数個設けても良い。
上記の駆動装置は、以下の特徴もある。コイル2への通電により発生する磁束は、外側磁極部と内側磁極部との間にあるマグネット部を横切るので効果的に作用する。外側磁極部は円筒形状のマグネット部の軸方向と平行方向に延出する歯形状もしくは櫛歯形状により構成されるため、軸の中心に向かうような半径方向への凹凸により構成されるものに比べて直径方向に関する寸法は小さく構成できる。これにより、非常に小径の円筒状の駆動装置とすることができる。また、コイル2は一つで構成されるので通電の制御回路も単純になり、コストも安く構成できる。更に、コイル2はマグネット部(ロータ1)と軸方向に並べて配置され、前記ロータ1の回転中心は前記地板5の開口部5aの外に該開口部5aの光軸と並行に配置されているため、小径で、地板5上においてコイルやマグネットが多くの範囲を占めることのないコンパクトな駆動装置となり、シャッタを小型化できる。
以上により、出力が高く、かつ安価でコンパクトな駆動装置および光量調節装置を提供することができる。
図15は本発明の実施例4に係るレンズ駆動装置を示す図であり、図1と同じ部分(形状やその材質を含めて)は同一符号を付してある。
上記の実施例1〜3ではシャッタ羽根や絞り部材を駆動していたが、勿論、他の部材を駆動する構成であってもよい。図15に示すレンズ駆動装置は、上述した光量調節装置のシャッタ羽根や絞り部材に代えて、レンズを駆動するためのものである。
40はレンズホルダー、41はレンズホルダーに取り付けられたレンズである。レンズホルダー40の穴部40aが地板5の突起5bに回転可能に嵌合している。40bはレンズホルダー40に設けられた長穴であり、長穴40bは上記実施例1におけるシャッタ羽根8或いは9と同様に、ロータ1の駆動ピン1hに摺動可能に嵌合している。レンズホルダー40はロータ1の駆動ピン1hの回転位置により地板5の開口部5a内にレンズ41を進入させたり、開口部5aからレンズ41を退避させたりして、開口部5aを通過する光の焦点調節を行う。
上記実施例1と同様、外側磁極部のマグネット部に対向する前記所定の角度とマグネット部の着磁された1極あたりの角度の比率をY、前記マグネット部の半径方向の厚みに対する該マグネット部の着磁された1極あたりの円周上の長さの比の値をXとすると
−0.3X+0.63>Y
の条件を満たすように設定してあるので、コイル2への無通電時には、ロータ1のマグネット部と磁極部との吸引力により、それぞれの位置が保持される。よって、通電していなくても振動等によりレンズ31の位置が変化することはなく、レンズ駆動装置の信頼性が向上するとともに、省エネルギーになる。
したがって、本実施例4におけるレンズ駆動装置は、レンズが開口部内に侵入した位置でも開口部の外に退避した位置でも無通電で安定して保持できるレンズ駆動装置として作用する。このように本駆動装置は一旦通電を行っても通電によって位置だしされた位置にした後は、非通電でもその位置にロータを保持可能となり、消費電力の少ない駆動装置とする事ができる。本実施例ではレンズを光軸とは垂直方向に駆動したが、レンズ光軸に沿って駆動する装置に用いても良い。
以上の実施例1〜4における効果を以下にまとめて列挙する。
1)ボビン9に、マグネット部の内周面(内径1i)とステータの内側磁極部(補助ヨーク4)との間に介在する支持部(円筒軸受部9c)を具備し、この支持部によりロータ1を回転可能に支持するとともに、ロータ1のスラスト方向の位置をボビン9の面9dと地板5の受け部5fにより規制する構成にしているので、図18に示す従来例に比べ、駆動装置の軸方向の長さLを短く構成できる。また、該駆動装置を用いた光量調節装置は光軸方向に関して特にコンパクトなものとなる。
2)ボビン9に具備された支持部(円筒軸受部9c)は、上記のようにロータ1を回動可能に支持するのみならず、内側磁極部である補助ステータ4とマグネット部の内周面(内径1i)との距離を安定的に保持できるので、内側磁極部、外側磁極部とロータ1とのギャップに関して部品の積み重ねによる誤差は非常に少なく構成でき、量産時の性能が安定する。
3)ボビン9の材質を液晶ポリマーで構成する事により、非導電性である特性のためにコイル2が不用意にステータ3の内筒3bと導通することを防ぐことができ、かつ、ロータ1のマグネット部の内径1iと補助ステータ4との間に磁気ギャップが構成され、その間の吸着力の低減を図ることができる。また、液晶ポリマーは摩擦係数も小さい事から、ロータ1のマグネット部の内径1iと補助ステータ4との間の摩擦も低減され、ロータ1の良好な回転特性を得ることができる。
4)地板5には駆動ピン1hの作動範囲を規制する案内溝(ガイド溝5e)が形成されており、該案内溝5eの一方もしくは他方の端面に駆動ピン1hが突き当たった状態時に、シャッタ羽根、光量調節用フィルタ板、絞り口径板の何れかの光量調節部材が地板5の開口部5aを開放状態もしくは閉鎖状態となるように構成されており、前記案内溝の一方もしくは他方の端面に駆動ピン1hが突き当たった状態時に、マグネット部の着磁された極の中心とステータの外側磁極部3aの中心とのなす角度が一定の角度(A)になるように設定している。よって、コイル2への非通電時において、マグネット部の着磁された極の中心位置が歯形状の外側磁極部3aの中心に対向する位置で安定的に保持されるようにし、一旦コイル2へ通電を行っても通電により位置だしした後は、コイル2への通電を断っても、前記位置だしされた状態を保持することができ、省電力化を達成することができる駆動装置とすることができる。
5)マグネット部と一体的に構成される駆動ピン1hは、外側磁極部3aの歯形状磁極部とは対向しない部分に構成されているので、小径で、地板5上にコイルやマグネット部が多くの範囲を占めることのないコンパクトな装置とすることができる。