JP3869602B2 - 細径耐熱光ファイバセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化型プラスチックに埋設して温度あるいは歪みを検出するための細径耐熱光ファイバセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
図2は従来の耐熱光ファイバの断面図である。
【0003】
同図に示す耐熱光ファイバ10は、コア及びコアを覆うクラッドからなる直径φ125μmガラスファイバ11と、ガラスファイバ11を覆う直径φ145μmの耐熱被覆層12とで構成されている。耐熱光ファイバ10はシングルモード用またはマルチモード用である。ガラスファイバ11のクラッド表面の耐熱被覆層12はファイバ線引工程で被覆されたものである。例えば耐熱被覆層としてポリイミドが用いられる。シングルモードの場合の耐熱光ファイバ10の伝送特性は通常のUV硬化型樹脂やシリコーン樹脂を被覆した通信用のファイバと同等であり、伝送損失は波長1.3μm帯で0.34dB/kmである。
【0004】
この耐熱光ファイバ10の用途は、発電所、製鉄所内で使用される高温領域での通信、温度センサ用である。通常は耐熱光ファイバ10単体で布設されるケースは少なく、この耐熱光ファイバ10の外周にさらにテフロン系の耐熱樹脂を被覆したり、あるいは金属管の中にこの耐熱光ファイバ10を挿入した後布設される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、光ファイバの用途の多様化に伴い、光ファイバをセンサとして用い構造物等の歪みを測定する技術が実用化されつつある。これらの中でFRP(繊維強化型プラスチック)の歪みを計測したり、破壊を予知する目的でFRP内に直接光ファイバを埋設する技術が実用化されつつある。
【0006】
しかしながら、光ファイバをFRP内に埋設する上で二つの課題がある。
【0007】
▲1▼FRP成型時の樹脂温度が200℃近くまで達するため、光ファイバに耐熱性が要求される。
【0008】
▲2▼FRPの強化用繊維は予めシート状に織り込まれており、その厚さは約100μmである。このシートを何枚も積層しプラスチックで一体成型するが、光ファイバ径がシート厚100μmを超えると、ファイバ埋設部が起点となりクラック(亀裂)が頻繁に発生し樹脂の強度が著しく低下してしまうという問題があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、FRPに埋設してもFRPの強度低下を招かない細径耐熱光ファイバセンサを提供することにある。
【0010】
上記目的を達成するために本発明の細径耐熱光ファイバセンサは、コア及び該コアを覆うクラッドからなる石英系のガラスファイバの周囲に、有機系耐熱材料または金属材料を被覆、あるいは有機系耐熱材料と金属材料とで積層して被覆した光ファイバにおいて、繊維強化型プラスチック内に直接埋設すべく、ガラスファイバ外径がコアの直径の3倍以上、70μm以下であり、かつ被覆厚が10μm以下である細径耐熱光ファイバを繊維強化型プラスチック内に直接埋設してその繊維強化型プラスチックの温度あるいは歪みを検出するものである。
【0011】
上記の構成に加え本発明の細径耐熱光ファイバセンサは、有機系耐熱材料としてポリイミドを用いるのが好ましい。
【0012】
上記の構成に加え本発明の細径耐熱光ファイバセンサは、金属材料として金またはニッケルを用いるのが好ましい。
【0013】
上記の構成に加え本発明の細径耐熱光ファイバセンサは、一部被覆層を除去し、該被覆除去部のコアの屈折率を局所的に変化させた後、再度該被覆層除去部に耐熱性被覆を施すことが好ましい。
【0015】
本発明によれば、ガラスファイバ及び被覆構造を最適化したので、伝送特性を劣化させることなく、FRPに埋設してもFRPの強度低下を招くことがない。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1は本発明の細径耐熱光ファイバの一実施の形態を示す断面図である。
【0018】
本細径耐熱光ファイバ1は、コア及びコアを覆うクラッドからなる石英系のガラスファイバ2の周囲に耐熱被覆層3を施した光ファイバであって、ガラスファイバ2の外径をコアの直径の3倍以上、70μm以下とし、かつ耐熱被覆層3の厚さを10μm以下としたものである。
【0019】
耐熱被覆層3の材料としては有機系耐熱材料であるポリイミドあるいは金属材料である金またはニッケルを用いるのが好ましく、あるいはこれらの材料を積層してもよい。
【0020】
また本発明では被覆層を一旦除去した後、被覆除去部分のコアの屈折率を局所的に変化させ、さらに再度耐熱性被覆層を施してもよい。このように長手方向の一部の屈折率を変化させた光ファイバは、線状のセンサとして利用することができる。
【0021】
本細径耐熱光ファイバは、このように構成したことで、伝送特性を劣化させることなく、FRPに埋設してもFRPの強度低下を招くことがない。
【0022】
【実施例】
(実施例)
本細径耐熱光ファイバ1のガラスファイバ2の外径は40μmであり、コアの直径は8.5μmで耐熱被覆層3の外径はφ55μm(厚さは7.5μm)である。本細径耐熱光ファイバ1のガラス母材は通常のφ125μmシングルモードファイバ母材のクラッド厚を約1/3としたものであり、φ40μm線引き後でコア径が同一になるように予め調整されている。そのため通常径のシングルモード光ファイバと接続しても大きな接続損を生じることはない。
【0023】
また、ガラスファイバ2の外径は40μmでコア直径の3倍以上とすることで曲げによる損失増加を抑制することができる。
【0024】
ポリイミドの耐熱被覆層3は、光ファイバ線引き時にオンラインで行い、東レ(株)製セミコファインを3層に分けて連続被覆したものである。
【0025】
本細径耐熱光ファイバ1の伝送損失は、波長1.3μm帯で0.34dB/km、波長1.55μm帯で0.20dB/kmと通常の通信用光ファイバと同等であった。また、破断強度は約7Nで安定し、ファイバ寿命の最も重要なパラメータである疲労係数n=23とφ125μmの通常の光ファイバと同等であった。
【0026】
次に最適条件の根拠について述べる。
【0027】
(1) ガラスファイバの外径がコアの直径の3倍以上70μm以下の根拠
ガラスファイバの外径がコアの直径の3倍以下、すなわちクラッド層が薄い場合、曲げによる損失が無視できなくなる。本発明の細径光ファイバの外径が従来の1/3程度であり、機械的許容曲げは約10mmと低減できる。この最小許容曲げ半径とすると、ガラスファイバの外径がコアの直径の3倍以上では曲げ損失は実用上無視できる。
【0028】
また、FRP内に埋設した場合、ガラスファイバの外径が概ね70μmを超えると、そのガラスファイバが起点となりクラックが頻繁に発生し、FRPの強度が著しく低下してしまう。
【0029】
ここで、確認実験としてFRP内にガラスファイバ外径約60、70、80、90μmのポリイミド被覆ファイバをFRP内に実装してヒートサイクル試験を実施した。
【0030】
表1にその結果を示す。
【0031】
【表1】
【0032】
ガラスファイバ外径がφ70μm以下ではFRPに異常は見られなかったが、直径φ80、90μmではクラックが発生した。
【0033】
(2) 被覆厚10μm以下の根拠
前述したガラスファイバ外径φ40μmのシングルモードファイバに被覆厚を変えてポリイミド被覆したときの波長1.3μm帯の伝送損失を測定した。その結果を図3に示す。
【0034】
図3は耐熱光ファイバの伝送損失の被覆厚依存性を示す図であり、横軸がポリイミド被覆厚軸であり、縦軸が1.3μm帯伝送損失軸である。
【0035】
同図より被覆厚10μmまでは0.34dB/kmと良好であったが、被覆厚10μmを超えると損失が増加することが分かる。
【0036】
なお、本実施例では被覆用材料にポリイミドを用いた場合で説明したが、これに限定されるものではなく、200℃以上の耐熱性を備え、かつ薄膜被覆でもファイバ保護が可能な程度の弾性率を有する材料であればよい。例えば、ガラスファイバの周りに金、ニッケル等の金属をメッキ等で被覆したり、硬質のラダー型シリコーン等を被覆してもよい。
【0037】
また、本発明では上記最適条件を満足した細径光ファイバにおいて、被覆層の一部を一旦除去した後、被覆除去部のコアの屈折率を局所的に変化させた。こあの屈折率を局所的に変化させる手法としては、エキシマレーザ照射によるGe添加SiO2 ガラスの光誘起屈折率効果、あるいはCO2 レーザ照射による熱拡散効果を利用することができ、このようにしてコアの屈折率を長手方向に変化させることができる。その後再び被覆除去部に本発明の条件を満足する耐熱被覆層を被覆する。このような細径耐熱光ファイバは、屈折率が変化した部分の位置と光学特性の変化を検出することにより、温度や歪を計測する線状のセンサとして機能させることができる。
【0038】
以上において本発明によれば、
(1) FRPクラックを防止できる。
【0039】
FRP内の温度あるいは歪み検出用センサとして埋設しても、細径であるため光ファイバを起点としたクラックの発生が皆無となる。
【0040】
(2) 許容曲げ半径を小さくできる。
【0041】
光ファイバ外径が従来の約1/3で疲労係数が同等であることから、埋設の際のコーナー部での許容曲げ半径が従来の約30mmから約10mmと1/3に低減できるため、埋設の自由度が広がる。
【0042】
(3) 曲げ剛性が減少する。
【0043】
光ファイバ外径が従来の約1/3、被覆外径でも1/2未満であるため、光ファイバの曲げ剛性が1/80以下に減少する。その結果、複雑な光ファイバ取り回しが容易になる。
【0044】
ここで、従来の耐熱光ファイバ(ポリイミド被覆ファイバ)の曲げ剛性EI1 は数1式で表される。
【0045】
【数1】
EI1 =Eπd4 /64
(但し、dはガラスファイバの直径、Eは弾性率を示す。)
数1式に数値(石英の弾性率7200kg/mm2 、ポリイミドの弾性率300kg/mm2 )を代入すると、数2式となる。
【0046】
【数2】
EI1
=7200×π×0.1254 /64+300×(0.144 −0.1254 )/64
=8.835×10-2(kg/mm4 )
本発明の細径耐熱光ファイバの曲げ剛性EI2 は数3式で表される。
【0047】
【数3】
EI2
=7200×π×0.044 /64+300×π×(0.0554 −0.044 )/64=0.1002×10-2(kg/mm4 )
【0048】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、次のような優れた効果を発揮する。
【0049】
FRPに埋設してもFRPの強度低下を招かない細径耐熱光ファイバセンサの提供を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の細径耐熱光ファイバの一実施の形態を示す断面図である。
【図2】従来の耐熱光ファイバの断面図である。
【図3】耐熱光ファイバの伝送損失の被覆厚依存性を示す図である。
【符号の説明】
1 細径耐熱光ファイバ
2 ガラスファイバ
3 耐熱被覆層(有機系耐熱材料、金属材料)
Claims (4)
- コア及び該コアを覆うクラッドからなる石英系のガラスファイバの周囲に、有機系耐熱材料または金属材料を被覆、あるいは有機系耐熱材料と金属材料とで積層して被覆した光ファイバにおいて、繊維強化型プラスチック内に直接埋設すべく、ガラスファイバ外径がコアの直径の3倍以上、70μm以下であり、かつ被覆厚が10μm以下である細径耐熱光ファイバを繊維強化型プラスチック内に直接埋設してその繊維強化型プラスチックの温度あるいは歪みを検出することを特徴とする細径耐熱光ファイバセンサ。
- 上記有機系耐熱材料としてポリイミドを用いた請求項1に記載の細径耐熱光ファイバセンサ。
- 上記金属材料として金またはニッケルを用いた請求項1に記載の細径耐熱光ファイバセンサ。
- 耐熱性被覆を施した細径耐熱光ファイバにおいて、一部被覆層を除去し、該被覆除去部のコアの屈折率を局所的に変化させた後、再度該被覆層除去部に耐熱性被覆を施した請求項1〜3いずれかに記載の細径耐熱光ファイバセンサ。
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