JP3869504B2 - アルキレンオキシド重合体の分散液およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルキレンオキシド重合体の分散液およびその製造方法に関する。
さらに詳しくは、製紙工程に用いる製紙用薬剤、排水処理用の凝集剤等として使用できるアルキレンオキシド重合体の分散液に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルキレンオキシド重合体は、抄紙用粘剤、凝集剤、分散剤、沈降促進剤等の種々の用途に供される極めて有用な重合体であり、これらの分野においては、一般に1ppm〜15%程度の水溶液として使用されることが多い。
【0003】
しかし、アルキレンオキシド重合体は、一般に乾燥粉末品として市販されているので、使用時に粉末を水に溶かさなければならない。アルキレンオキシド重合体を水に溶解するに際しては、それ自身の溶解度がかなり大きいにもかかわらず高重合度であるために難溶性の固まり、いわゆる「ままこ」が生成し易く、短時間で均一な水溶液を得ることは非常に困難であり、また、生成した「ままこ」を溶解するのに溶解時間が大幅に長くなると共に、操作や設備等の種々のトラブルの原因となる。
【0004】
これを解決するために、特開昭49−111961号公報や特開平4−266945号公報には、アルキレンオキシド重合体を油中水型エマルジョン又は塩水溶液に分散させ、低粘性で流動性のある液状組成物とした後、水に添加する方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のアルキレンオキシド重合体の油中水型エマルジョンや塩水溶液中液状組成物は、液状組成物の経時安定性が悪く、液状組成物を調製してから短時間で重合体が沈殿し、液状組成物の流動性が失われてしまう等の問題があった。
そこで、本発明は、長期にわたり安定性、流動性を保つアルキレンオキシド重合体の分散液およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アルキレンオキシド重合体を、疎水性有機溶剤、塩水溶液、界面活性剤からなるエマルジョン中に分散させることにより、長期にわたり安定性、流動性を保つアルキレンオキシド重合体の分散液が得られることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は、疎水性有機溶剤、塩水溶液、界面活性剤からなるエマルジョン中にアルキレンオキシド重合体を分散してなるアルキレンオキシド重合体の分散液およびその製造方法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の対象となるアルキレンオキシド重合体としては、エチレンオキシドの単独重合体、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等を挙げることができる。特に、分子量が5万〜1000万のポリエチレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体およびこれらの混合物が好適に用いられる。
【0008】
本発明においては、通常、アルキレンオキシド重合体の粉末を疎水性有機溶剤、塩水溶液、界面活性剤からなるエマルジョン中に分散させる。上記アルキレンオキシド重合体の粉末の粒子径については特に制限はないが、150μm以下の微粒子を用いると好結果が得られる。
【0009】
本発明のアルキレンオキシド重合体分散液におけるアルキレンオキシド重合体の含有量は、分散液の全重量に対して1〜35重量%、好ましくは5〜30重量%である。上記アルキレンオキシド重合体の含有量が35重量%を超えると、均一な分散液を得ることができないため好ましくない。
【0010】
本発明に使用する疎水性有機溶剤としては、例えば、工業用ガソリン1号(ベンジン)、工業用ガソリン2号(ゴム揮発油)、工業用ガソリン3号(大豆揮発油)、工業用ガソリン4号(ミネラルスピリット)、工業用ガソリン5号(クリーニングソルベント)、灯油等の脂肪族炭化水素が挙げられる。これらのうち、引火性が低く、揮発しにくい点から、工業用ガソリン4号、工業用ガソリン5号、灯油が好ましく用いられる。
上記工業用ガソリン4号としては、例えば、エクソール(エクソン社製、脂肪族炭化水素)を、上記工業用ガソリン5号としては、例えば、0号ソルベント(日本石油社製、脂肪族炭化水素)等を挙げることができる。
【0011】
疎水性有機溶剤の含有量は、分散液の全重量に対して15〜50重量%、好ましくは18〜35量量%の範囲である。含有量が15重量%未満であると、分散液が増粘し、流動性が著しく損なわれ、50重量%を超えると、安定なエマルジョンが得られなくなるため好ましくない。
本発明に使用する塩水溶液としては、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、ぎ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩の水溶液、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ぎ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等のアルカリ金属塩の水溶液が挙げられる。特に、重合体粉末を分散した時に液が増粘しない点で硫酸アンモニウムの水溶液が好ましい。
塩水溶液は、アルキレンオキシド重合体は不溶であるが界面活性剤は可溶である濃度範囲、即ち、10〜35重量%濃度の水溶液として用いられる。
【0012】
塩水溶液の含有量は、分散液の全量量に対して35〜55重量%、好ましくは45〜55重量%の範囲である。塩水溶液の含有量が35重量%未満であると、安定なエマルジョンが得られず、分散液を作成してから短時間で重合体粒子が沈降し、55重量%を超えると、重合体粉末をエマルジョンに分散した時に増粘し、流動性のよい分散液が得られない。
【0013】
本発明に用いられる界面活性剤としては、HLBが9〜11の非イオン性界面活性剤と、HLBが14〜16の非イオン性界面活性剤とを混合し、HLBが11〜14、好ましくは12.0〜13.5になるように配合したものが用いられる。
HLBが9〜11の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(4)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(4)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(4,5)オクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン(6)ノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0014】
また、HLBが14〜16の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。好ましくはHLBが9〜11の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ソルビタントリオレートが用いられる。また、HLBが14〜16の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレートが好ましく用いられる。
HLBが9〜11の非イオン性界面活性剤と、HLBが14〜16の非イオン性界面活性剤との混合割合は、99:1〜1:99、好ましくは4:1〜1:9の範囲である。
界面活性剤の含有量は、分散液の全重量に対して2〜6重量%、好ましくは3〜5重量%の範囲である。界面活性剤の含有量が2重量%未満であると、安定なエマルジョンが得られず、分散液を作成しても短時間で重合体が沈殿し、6重量%を超えて用いても、安定なエマルジョンが得られない。
【0015】
次に、本発明のアルキレンオキシド重合体分散液の製造方法について説明する。まず、分散槽を用意し、これに上述の疎水性有機溶剤、塩水溶液、界面活性剤を投入する。これらは別個に投入しても良いし、予め界面活性剤を塩水溶液に溶解させておき、それと疎水性有機溶剤とを各々投入しても良い。次に攪拌機を用いて分散層の内容物を攪拌し、均一なエマルジョンを製造する。なお、ここで用いる分散槽、攪拌機は特殊なものを用いる必要はなく、通常のものを用いることができる。次いで、得られたエマルジョンにアルキレンオキシド重合体の粉末を加え、更に攪拌することにより本発明のアルキレンオキシド重合体分散液を得ることができる。
【0016】
本発明のアルキレンオキシド重合体分散液は、アルキレンオキシド重合体粉末を疎水性有機溶剤、塩水溶液、界面活性剤からなる水中油型エマルジョンに分散させることにより、油相が水中に分散した重合体微粒子の周りを覆うため微粒子同士の付着を防ぎ、均一な分散状態を保つことができる。その結果、高濃度で流動性のある分散液を形成でき、更に、エマルジョンの乳化状態が安定に保たれることにより、粒子の沈降が抑えられ、長期にわたり分散液の安定性が保たれる。
【0017】
本発明においては、特にHLBが9〜11の非イオン性界面活性剤と、HLBが14〜16の非イオン性界面活性剤から選択された界面活性剤を混合し、混合物のHLBが、11〜14になるように配合したものを界面活性剤として用いることが、油相の適度な分散を促し、エマルジョンの安定性を長期に保つ効果に寄与しているものと考えられる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明の実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0019】
実施例1
内容積500mlの分散槽に、0号ソルベント(日本石油社製、脂肪族炭化水素)52.8g、30重量%濃度の硫酸アンモニウム水溶液137g、HLBが10.0であるポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル3.8gとHLBが15.0であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート5.1gを混合し、予めHLB12.9に調製した界面活性剤8.9gを添加し、400〜500rpmで5分間攪拌し、均一なエマルジョンを得た。得られたエマルジョンにポリエチレンオキシドの粉末(住友精化社製、PEO−18、分子量450万)69.9gを添加し、更に500〜700rpmで10分間攪拌しポリエチレンオキシドの分散液を得た。
【0020】
得られたポリエチレンオキシド分散液は、適度な流動性を示し、約1ヶ月室温で静置保存後も流動性が損なわれず、また相分離もみられなかった。
また、得られた分散液中のポリエチレンオキシドの経時安定性をみるために、一定期間毎に、分散液を水で希釈してポリエチレンオキシドの0.5重量%水溶液を調製し、水溶液粘度の経時変化を測定した。その結果、1ヶ月間分散液を室温で静置保存した後も初期の水溶液粘度を保っており、分散液中でポリエチレンオキシドが劣化せず安定に存在していることを確認した。
【0021】
実施例2
ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルの代わりにHLBが10.0であるポリオキシエチレン(4)ソルビタントリオレート3.8gを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリエチレンオキシドの分散液を得た。
得られたポリエチレンオキシド分散液は、実施例1と同様に適度な流動性を示し、約1ヶ月室温で静置保存後も流動性が損なわれず、相分離もみられなかった。また、分散液中のポリエチレンオキシドも実施例1と同様に安定であった。
【0022】
実施例3
0号ソルベントの代わりにエクソール(エクソン社製、脂肪族炭化水素)52.8gを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリエチレンオキシドの分散液を得た。
得られたポリエチレンオキシド分散液は、実施例1と同様に適度な流動性を示し、約1ヶ月室温で静置保存後も流動性が損なわれず、相分離もみられなかった。また、分散液中のポリエチレンオキシドも実施例1と同様に安定であった。
【0023】
実施例4
0号ソルベントの代わりにエクソール52.8gを、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルの代わりにHLBが10.0であるポリオキシエチレン(4)ソルビタントリオレート3.8gを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリエチレンオキシドの分散液を得た。
得られたポリエチレンオキシド分散液は、実施例1と同様に適度な流動性を示し、約1ヶ月室温で静置保存後も流動性が損なわれず、相分離もみられなかった。また、分散液中のポリエチレンオキシドも実施例1と同様に安定であった。
【0024】
比較例1
界面活性剤として、HLBが13.0であるポリオキシエチレン(9)ノニルフェノール8.9gを単独で用いた以外は実施列1と同様にして、ポリエチレンオキシドの分散液を得た。
得られたポリエチレンオキシド分散液は、実施例1と同様に適度な流動性を示したが、一晩で相分離しポリエチレンオキシド粒子が沈降し、流動性を失った。
【0025】
比較例2
HLBが10.0であるポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル2.1gとHLBが15.0であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート2.9gを混合し、予めHLB12.9に調製した界面活性剤5.0gを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリエチレンオキシドの分散液を得た。
得られたポリエチレンオキシド分散液は、実施例1と同様に適度な流動性を示したが、一晩で相分離しポリエチレンオキシド粒子が沈降し、流動性を失った。
【0026】
比較例3
HLBが3.7のソルビタンセスキオレート1.5gと、HLBが15.0のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート7.4gを混合し、予めHLB13.1に調製した界面活性剤8.9gを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリエチレンオキシドの分散液を得た。
得られたポリエチレンオキシド分散液は、実施例1と同様に適度な流動性を示したが、一晩で相分離しポリエチレンオキシド粒子が沈降し、流動性を失った。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、長期にわたり安定性、流動性を保つアルキレンオキシド重合体の分散液が得られる。その結果、本発明のアルキレンオキシド重合体分散液を、水に少量添加するだけで、短時間で均一なアルキレンオキシド重合体の水溶液を得ることができる。
Claims (10)
- 疎水性有機溶剤、塩水溶液、界面活性剤からなるエマルジョン中にアルキレンオキシド重合体を分散してなるアルキレンオキシド重合体の分散液であって、
前記疎水性有機溶剤は、脂肪族炭化水素であり、
前記界面活性剤は、前記分散液の全量量に対して2〜6重量%含むものであり、
前記界面活性剤は、HLB9〜11の非イオン性界面活性剤と、HLB14〜16の非イオン性界面活性剤とを混合し、HLBが11〜14になるように配合したものである
アルキレンオキシド重合体の分散液。 - 疎水性有機溶剤、塩水溶液、界面活性剤からなるエマルジョン中にアルキレンオキシド重合体を分散してなるアルキレンオキシド重合体の分散液であって、
前記塩水溶液は、アンモニウム塩又はアルカリ金属塩の10〜35重量%水溶液であり、
前記界面活性剤は、前記分散液の全量量に対して2〜6重量%含むものであり、
前記界面活性剤は、HLB9〜11の非イオン性界面活性剤と、HLB14〜16の非イオン性界面活性剤とを混合し、HLBが11〜14になるように配合したものである
アルキレンオキシド重合体の分散液。 - アルキレンオキシド重合体が、分子量5万〜1000万のものである請求項1又は2記載の分散液。
- アルキレンオキシド重合体が、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体およびこれらの混合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2記載の分散液。
- 分散液の全量量に対して、アルキレンオキシド重合体を1〜35重量%、疎水性有機溶剤を15〜50重量%、塩水溶液を35〜55重量%含む請求項1又は2記載の分散液。
- アルキレンオキシド重合体を、疎水性有機溶剤、塩水溶液、界面活性剤からなるエマルジョン中に分散液の全重量に対して1〜35重量%になるように分散させることを特徴とするアルキレンオキシド重合体分散液の製造方法であって、
前記疎水性有機溶剤は、脂肪族炭化水素であり、
前記界面活性剤は、前記分散液の全量量に対して2〜6重量%含むものであり、
前記界面活性剤は、HLB9〜11の非イオン性界面活性剤と、HLB14〜16の非イオン性界面活性剤とを混合し、HLBが11〜14になるように配合したものである
アルキレンオキシド重合体分散液の製造方法。 - アルキレンオキシド重合体を、疎水性有機溶剤、塩水溶液、界面活性剤からなるエマルジョン中に分散液の全重量に対して1〜35重量%になるように分散させることを特徴とするアルキレンオキシド重合体分散液の製造方法であって、
前記塩水溶液は、アンモニウム塩又はアルカリ金属塩の10〜35重量%水溶液であり、
前記界面活性剤は、前記分散液の全量量に対して2〜6重量%含むものであり、
前記界面活性剤は、HLB9〜11の非イオン性界面活性剤と、HLB14〜16の非イオン性界面活性剤とを混合し、HLBが11〜14になるように配合したものである
アルキレンオキシド重合体分散液の製造方法。 - アルキレンオキシド重合体が、分子量5万〜1000万のものである請求項6又は7記載の製造方法。
- アルキレンオキシド重合体が、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体およびこれらの混合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項6又は7記載の製造方法。
- 分散液の全重量に対して、アルキレンオキシド重合体を1〜35重量%、疎水性有機溶剤を15〜50重量%、塩水溶液を35〜55重量%含む請求項6又は7記載の製造方法。
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