本発明は、カッタヘッドに平行リンク運動を与えて切羽を掘削する型式のシールド機に関する。
この種、カッタヘッドに平行リンク運動を与えて切羽を掘削する型式のシールド機は、平行リンク機構を備えている。
前記平行リンク機構は、シールド機の隔壁に、互いに所定の間隔をおいて回転可能に組み込まれかつ回転駆動装置に連結された旋回体と、各旋回体に、所定の偏心距離をおいた偏心位置に直接またはクランク腕や偏心回転体等を介して偏心軸を取り付けて構成されている。
そして、複数本の偏心軸に、共通にカッタヘッドが連結されており、この結合構造を介して平行リンク機構にカッタヘッドが取り付けられている。
しかして、各旋回体や偏心軸のごとく回転または旋回する部材と、固定側の部材間には、軸受やシール部材が設けられている。
なお、この種シールド機の特許文献としては、次のようなものがある。
特許第2024196号公報
特許第2050584号公報
特許第2050596号公報
特許第2552255号公報
特公平7−68868号公報
ところで、従来技術では掘削土砂や地下水等を取り込むチャンバに臨む位置に介装されたシール部材に、チャンバ内の掘削土砂や泥水が浸入することに対して配慮されていない。その結果、シール部材を通して回転部と固定部間のすき間に、掘削土砂や泥水の粒子が入り込んでしまい、回転部が円滑に回転しなくなるという課題があった。
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、掘削土砂や地下水等を取り込むチャンバに臨むシール部材のシール機能を強化し、シール部材を通して、回転部と固定部間のすき間への、掘削土砂や泥水の粒子の浸入を有効に阻止でき、しかも前記シール部材に対する給脂管や他の管が捩れないように配管し得るシールド機を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明の請求項1記載の発明ではシールド機1の隔壁3に、互いに所定の間隔をおいて旋回軸受により回転可能に軸支持されて組み込まれた複数個の旋回体6と全てないしはその一部の旋回体6を回転駆動装置21に連結して回転可能として、各旋回体6に、当該旋回体6の中心に対して偏心距離eをおいた偏心位置に回転可能に軸支持されて組み込まれた偏心回転体8と、各偏心回転体8の中心部に取り付けられた偏心軸11とを有する複数組のアセンブリにより平行リンク機構を構成し、複数本の偏心軸11に共通にカッタヘッド13を取り付け、前記カッタヘッド13に平行リンク機構を介して平行リンク運動を与えて切羽を掘削するシールド機であって、掘削土砂を取り込むチャンバ18に臨む位置で、回転部と固定部の間あるいは相対的な回転部の間に、シール部材を介装し、少なくとも作泥土材供給管30、液圧配管40a,40bおよび給脂管32をシールド筒2の内部から旋回体6の内部を通り、偏心回転体8と偏心軸11のほぼ中心線に沿って貫挿し、前記給脂管32から各シール部材に油脂を供給可能に配管し、前記作泥土材供給管30を通してカッタヘッド13から作泥土材を切羽ないしはチャンバ18に注出可能に配管し、前記液圧配管40a,40bを通じてカッタヘッド13に設けられた油圧装置に圧力油を供給・排出可能に配管している。ここで、相対的な回転部とは例えば偏心回転体8と旋回体6の関係をいう。また、固定部とは例えば隔壁3をいう。
また、前記目的を達成するため、本発明の請求項2記載の発明ではシールド機41の隔壁43に、互いに所定の間隔をおいて旋回軸受により回転可能に軸支持されて組み込まれた複数個の旋回体45と全てないしはその一部の旋回体45を回転駆動装置57に連結して回転可能として、各旋回体45に、当該旋回体45の中心に対して偏心距離eをおいた偏心位置に取り付けられた偏心軸47とを有する複数組のアセンブリにより平行リンク機構を構成し、複数本の偏心軸47に共通にカッタヘッド52を取り付け、このカッタヘッド52に平行リンク機構を介して平行リンク運動を与えて切羽を掘削するシールド機であって、掘削土砂を取り込むチャンバ54に臨む位置で、各旋回体45や偏心軸47等における回転部と固定部の間あるいは相対的な回転部の間に、シール部材を介装し、前記シールド筒42の内部から各旋回体45のほぼ中心部に給脂管66を設け、この給脂管66から旋回体45および偏心軸47の内部を通じて、前記シール部材に油脂を供給可能に配管し、前記隔壁43におけるシールド筒42の中心部に当たる位置に、軸受により回転可能に軸支持された配管回転体69を設け、この配管回転体69における中心から所定の偏心距離eをおいた偏心位置に、配管回転体駆動ロッド73を取り付け、この配管回転体駆動ロッド73の前端部をカッタヘッド52の中心部に結合し、前記チャンバ54に臨む位置で、前記配管回転体69および配管回転体駆動ロッド73における回転部と固定部の間あるいは相対的な回転部の間に、シール部材を介装し、前記シールド筒42の内部から配管回転体駆動ロッド73のほぼ中心部に、少なくとも作泥土材供給管79と給脂管83と液圧配管90a,90bを設け、前記給脂管83から各シール部材に油脂を供給可能に配管し、前記作泥土材供給管79から配管回転体69および配管回転体駆動ロッド73の内部を通ってカッタヘッド52から作泥土材を切羽ないしはチャンバ54に注出可能に配管し、前記液圧配管90a,90bを通じて、カッタヘッド52に設けられた油圧装置に圧力油を供給可能に配管している。ここで、相対的な回転部とは例えば旋回体45の中心に対する偏心位置に回転体を組み込み、この回転体に偏心軸47を取り付けた場合の、前記旋回体45と回転体との関係をいい、さらには例えば配管回転体69の中心に対する偏心位置に、他の回転体を組み込み、その回転体に配管回転体駆動ロッド73を取り付けた場合の前記配管回転体69とこれに組み込まれた回転体との関係をいう。また、固定部とは例えば隔壁43をいう。
本発明の請求項1記載の発明では、掘削土砂を取り込むチャンバ18に臨む位置で、回転部と固定部の間あるいは相対的な回転部の間に、シール部材を介装し、給脂管32から各シール部材に油脂を供給する。これにより、各シール部材のシール機能を強化でき、回転部と固定部間等のすき間への掘削土砂や泥水の浸入を阻止できるので、これらのすき間に掘削土砂や泥水の粒子が浸入して付着することによって生ずるトラブルを未然に解消し得る効果がある。
また、同請求項1記載の発明では、作泥土材供給管30と給脂管32と液圧配管40a,40bをシールド筒2の内部から旋回体6の内部を通り、偏心回転体8と偏心軸11のほぼ中心線に沿って貫挿しており、偏心回転体8と偏心軸11とは旋回体6の中心の回りに公転するが、自転はしないので、作泥土材供給管30と給脂管32と液圧配管40a,40bが捩れないので、これらの管が捩れることによって生ずる不具合をも未然に解消し得る効果がある。
本発明の請求項2記載の発明では、掘削土砂を取り込むチャンバ54に臨む位置で、各旋回体45や偏心軸47等における回転部と固定部の間あるいは相対的な回転部の間に、シール部材を介装し、給脂管66から各シール部材に油脂を供給する。これにより、各シール部材のシール機能を強化することができるので、各旋回体45や偏心軸47等における各回転部と固定部間等のすき間への掘削土砂や泥水の浸入を阻止できるので、これらのすき間に掘削土砂や泥水の粒子が浸入し付着することによって生ずるトラブルを未然に解消し得る効果がある。
さらに、同請求項2記載の発明では、前記チャンバ54に臨む位置で、配管回転体69および配管回転体駆動ロッド73の間あるいは相対的な回転部の間に、シール部材を介装し、給脂管83から各シール部材に油脂を供給する。これにより、各シール部材のシール機能を強化することができるので、配管回転体69および配管回転体駆動ロッド73における回転部と固定部間のすき間への掘削土砂や泥水の浸入を阻止できるので、これらのすき間に掘削土砂や泥水の粒子が浸入し付着することによって生ずるトラブルをも未然に解消し得る効果がある。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1〜図4は本発明の実施例1を示すもので、図1は縦断側面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1の正面図、図4は図1のB部分の拡大縦断側面図である。
これら図1〜図4に示す実施例1のシールド機1は、シールド筒2を備えている。このシールド筒2の前部には、隔壁3が取り付けられている。この隔壁3の前部には、フード4が取り付けられている。また、前記シールド筒4の後部にはテールシール5が設けられている。
前記隔壁3には、シールド筒2の中心O1に対して偏心距離eをおいた偏心位置O2の回りに、互いに所定の間隔をおいて、この実施例1では複数個としての4個の旋回体6が回転可能に組み込まれている。各旋回体6の外周と隔壁3間における後述のチャンバ18に臨む位置には、シール部材7が介装されている。
各旋回体6には、当該旋回体6の中心O3に対して偏心距離eをおいた偏心位置O4に、偏心回転体8が組み込まれている。各偏心回転体8は、当該旋回体6の中心O3の回りに公転するようになっている。また、各偏心回転体8の外周と当該旋回体6の内周間における後述のチャンバ18に臨む位置には、シール部材9が介装されている。また、各偏心回転体8の後部と当該旋回体6間には、スラスト軸受10が設けられている。
各偏心回転体8の前部には、当該偏心回転体8と同一軸心上に、偏心軸11が取り付けられている。各偏心軸11の根元部分は、リブ12により補強されている。
複数本としての4本の偏心軸11の前端部には、共通にカッタヘッド13が取り付けられている。各偏心軸11の外周とカッタヘッド13間には、メタル15が設けられている。また、各偏心軸11の前端面とカッタヘッド13の前面には、カッタ固定部材16が取り付けられていて、このカッタ固定部材16を介して偏心軸11にカッタヘッド13が固定されている。さらに、カッタヘッド13の後端面側における各偏心軸11の外周には、偏心軸反力受部材17が取り付けられている。
前記旋回体6と偏心回転体8と偏心軸11とで1組のアセンブリが構成されている。そして、この実施例では4組のアセンブリにより平行リンク機構が構成されている。この平行リンク機構は、シールド筒2の中心O1の回りに、偏心距離eを回転半径としてカッタヘッド13に平行リンク運動を与えるようになっている。
前記カッタヘッド13の前面には、多数の掘削ビット14が装着されている。
前記隔壁3とフード4とカッタヘッド13とにより囲まれた空間には、チャンバ18が形成されている。このチャンバ18には、掘削土砂や地下水等を取り込むようになっている。
前記カッタヘッド13の後面には、チャンバ18に臨ませて複数本の練り混ぜ翼19が取り付けられている。また、各旋回体6の前面には同チャンバ18に臨ませて練り混ぜ翼20が取り付けられている。
各旋回体6は、当該回転駆動装置21に連結されている。したがって、この実施例では回転駆動装置21は、4組設けられている。
各回転駆動装置21は、隔壁3の後面側に支持された回転駆動源22と、この回転駆動源22の出力軸に取り付けられたピニオン23と、インターナルギヤ25および旋回軸受としてのラジアル軸受26を有する大歯車24とを備えている。前記回転駆動源22には、電動機や油圧モータ等が用いられる。前記インターナルギヤ25は、当該ピニオン23に噛み合わされていて、このピニオン23とインターナルギヤ25とにより減速機構が構成されている。前記大歯車24は、ラジアル軸受26を介して隔壁3に回転可能に組み込まれ、かつ旋回体6に連結されている。
しかして、各回転駆動装置21は切羽の掘削時に、4台の回転駆動源22が一斉に同じ回転方向に回転駆動され、ピニオン23とインターナルギヤ25とにより大歯車24が減速回転され、当該旋回体6をその中心O3の回りに回転させるようになっている。なお、全ての旋回体6に回転駆動装置21を設ける実施例に限らず、一部の旋回体6に回転駆動装置21を設けても良い。
前記隔壁3の下部側には、排土装置27が設置されている。この実施例では、排土装置27としてスクリューコンベアが用いられている。この排土装置27は、シールド筒2の内部から隔壁3を通して、土砂取り込み口を前記チャンバ18に臨ませて設置されている。
前記シールド筒2の内部には、複数基のシールドジャッキ28が設置されている。これら複数基のシールドジャッキ28は、カッタヘッド13に植え込まれた掘削ビット14により切羽を掘削した後、一斉に伸長操作され、セグメント91に反力を取って、シールド筒2とこれに付属の部材を推進させた後、縮小操作されるようになっている。
前記カッタヘッド13の前面側の偶角部には、図1および図4に示すように、オーバーカッタ36が設けられている。
このオーバカッタ36は、液圧装置としての液圧ジャッキ37に嵌挿されたピストンロッド38に取り付けられている。前記液圧ジャッキ37は、カッタヘッド13内に固定された取り付け台39に取り付けられている。
前記シールド筒2の内部から各旋回体6および偏心回転体8ならびに当該偏心軸11にわたり、偏心回転体8と偏心軸11のほぼ中心線に沿って、管束29が貫挿されている。この管束29は、図1および図4に示すように、作泥土材供給管30と、給脂管32と、液圧配管40a,40bとを一束にまとめて形成されている。
前記作泥土材供給管30は、この実施例では当該偏心軸11からカッタヘッド13の内部を通り、このカッタヘッド13に複数個設けられた作泥土材注出口31に接続され、カッタヘッド13の前方に向かって、ベントナイト等の作泥土材を注出するようになっている。なお、作泥土材をカッタヘッド13の前方または/およびチャンバ18内の掘削土砂に対して注出可能に配管しても良い。
前記給脂管32は、当該旋回体6の内部から外周に向かって設けられた給脂配管33を通じて、シール部材7にグリース等の油脂を供給するようになっている。また、給脂管32は当該偏心回転体8の内部から外周に向かって設けられた給脂配管34を通じて、シール部材9に油脂を供給するようになっている。
前記液圧配管40a,40bは、図4に示すように、当該偏心回転体8と偏心軸11のほぼ中心線上に貫挿され、液圧ジャッキ37に接続されている。
前記隔壁3には、圧力計35が複数個、適正配置されている。この圧力計35は、チャンバ18内の土圧を計測するものである。
前述のごとく構成した実施例1のシールド機1は、次のように運転され、作用する。
初期状態では、少なくとも一環、セグメント91が組み立てられており、また複数基配備されたシールドジャッキ28はそれぞれ縮小されているものとする。
この状態から、カッタヘッド用の複数組(この実施例では4組)の回転駆動装置21の回転駆動源22を同一方向に回転駆動すると、各回転駆動装置21のピニオン23と、これに噛み合わされたインターナルギヤ25を通じて大歯車24が減速されて回転し、この大歯車24に連結された旋回体6が回転し、この旋回体6に組み込まれた偏心回転体8と、この偏心回転体8に取り付けられた偏心軸11が旋回体6の中心O3の回りに、偏心距離eを回転半径として公転する。
各組の偏心回転体8と偏心軸11が旋回体6の中心O3の回りに偏心距離eを回転半径として公転するに伴い、各組の偏心軸11に共通に取り付けられたカッタヘッド13が、前記旋回体6と偏心回転体8と偏心軸11を1組とする4組のアセンブリにより構成された平行リンク機構を介して、シールド筒2の中心O1の回りに偏心距離eを回転半径として平行リンク運動する。
前述のごとく、カッタヘッド13が平行リンク運動を行うことによって、このカッタヘッド13に装着された多数の掘削ビット14により切羽を掘削する。
かかる切羽の掘削時、必要により、管束29に纒束されている作泥土材供給管30を通じてベントナイト等の作泥土材を圧送し、この作泥土材を作泥土材注出口31から掘削土砂に注出して混入させ、掘削土砂に所定の塑性流動性を付与する。
一方、管束29に纒束されている給脂管32からグリース等の油脂を圧送し、その油脂を旋回体6の内部から外周に向かって設けられた給脂配管33を通じて、当該旋回体6の外周と隔壁3間に介装されたシール部材7に供給する。また、同給脂管32から、偏心回転体8の内部より外周に向かって設けられた給脂配管34を通じて、当該偏心回転体8の外周と旋回体6の内周間に介装されたシール部材9に供給すると同時に、偏心回転体8の外周と旋回体6の内周間のすき間を通じて、スラスト軸受10に油脂を供給し、潤滑する。
前述のごとく、シール部材7に油脂を供給することによって、シール機能が強化され、、チャンバ18から旋回体6の外周と隔壁3間のすき間への掘削土砂や泥水の浸入を阻止することができ、またシール部材9に油脂を供給することによって、シール機能が強化されチャンバ18から偏心回転体8の外周と旋回体6の内周間のすき間への掘削土砂や泥水の浸入を阻止することができる。その結果、これらのすき間に掘削土砂や泥水の粒子が浸入し、付着するなどによって生ずるトラブルを未然に解消することができる。
また、固定部としての隔壁3に給脂配管33′を設け、前記シール部材7に前記給脂配管33のほかに、給脂配管33′からも給脂するようにしても良い。
さらには、必要により前記液圧配管40aを通じて液圧ジャッキ37のピストン室側に液圧を供給し、ピストンロッド38を介してオーバカッタ36を突出させ、このオーバカッタ36によりシールド筒2の外径よりも大径の断面形状を掘削する。この掘削形態によって曲線掘削時に必要な余掘りを行うことができる。
前記オーバカッタ36の使用後は、液圧配管40bから液圧ジャッキ37のピストンロッド室側に液圧を供給し、ピストンロッド38を介してオーバカッタ36を没入させる。
また、この実施例では前記作泥土材供給管30と給脂管32と液圧配管40a,40bとを一束にまとめ、その管束29をシールド筒2の内部から旋回体6に通して、偏心回転体8と偏心軸11のほぼ中心線に沿って貫挿させており、前記偏心回転体8と偏心軸11は自転しないので、作泥土材供給管30と給脂管32と液圧配管40a,40bとを簡潔に配管でき、しかもこれらの管が捩れることによって生ずるトラブルをも未然に解消することができる。
さらに、この実施例では偏心軸11の外周とカッタヘッド13間にメタル15を介装し、偏心軸11の前端面とカッタヘッド13の前面にカッタ固定部材16を取り付け、しかもカッタヘッド13の後端面側において、偏心軸11の外周に偏心軸反力部材17を設けた構造により、偏心軸11にカッタヘッド13を固定しているので、礫層などの掘削時に生ずる掘削の衝撃力が前記カッタ固定部材16、メタル15、偏心軸反力受部材17、偏心軸11および偏心回転体8を経て緩和されてスラスト軸受10に伝達されるので、このスラスト軸受10の耐久性を向上させることができる。
ところで、前述のごとくカッタヘッド13に平行リンク運動を与え、カッタヘッド13に装着された多数の掘削ビット14により切羽を掘削した後、その掘削土砂と地下水等をチャンバ18に取り込み、カッタヘッド13に設けられた練り混ぜ翼19と、旋回体6に設けられた練り混ぜ翼20により混練する。また、圧力計35によりチャンバ18内の土圧を計測する。そして、チャンバ18内を所定の土圧に保持し、切羽の崩壊を防止しつつ掘削土砂を排土装置27に取り込み、シールド筒2の内部後方に排土する。
このようにして、切羽を所定距離、掘削した後、複数基のシールドジャッキ28をセグメント91に反力を取って一斉に伸長させ、シールド筒2とこれに付属の部材を推進させる。
前述のごとく、シールド筒2とこれに付属の部材を推進後、各シールドジャッキ28を縮小させ、シールド筒2の後部に新たにセグメント91を搬入して組み立てる。
以上の作業工程を繰り返して行い、トンネルを掘進して行く。
図5は本発明の実施例2を示すもので、下部を省略して示した縦断側面図である。
この図5に示す実施例2のシールド機41は、シールド筒42を備えている。このシールド筒42の前部には、隔壁43が取り付けられている。前記隔壁43の前部には、フード44が取り付けられている。
前記隔壁43におけるシールド筒42の中心O1に対して偏心距離eをおいた偏心位置の回りには、互いに所定の間隔をおいて、例えば4個等の複数個の旋回体45が回転可能に軸支持されて組み込まれている。各旋回体45の外周と隔壁43間には、後述のチャンバ54に臨む位置に、シール部材46が介装されている。また、各旋回体45の後部と隔壁43間には、後述の回転駆動装置47の一部をなす旋回軸受としてのラジアル軸受63が設けられている。
各旋回体45には、当該旋回体45の中心O3における所定の偏心距離eをおいた偏心位置に、偏心軸47が取り付けられている。
各偏心軸47の前端部には、断面ほぼコ字型の固定ブロック48を介して共通にカッタヘッド52が取り付けられている。このカッタヘッド52の前面には、多数の掘削ビット53が装着されている。
各固定ブロック48の内部と当該偏心軸47の前端面間には、スラスト軸受49が設けられている。また、各固定ブロック48の内周と当該偏心軸47の外周間にはラジアル軸受50が設けられている。さらに、各固定ブロック48の内周と当該偏心軸47間における後述のチャンバ54に臨む位置には、シール部材51が介装されている。
各旋回体45と偏心軸47とで1組のアセンブリが構成されている。そして、例えば4組等の複数組のアセンブリにより平行リンク機構が構成されている。この平行リンク機構により、前記カッタヘッド52に平行リンク運動を与えるようになっている。
前記隔壁43とフード44とカッタヘッド52とにより囲まれた空間には、チャンバ54が形成されている。このチャンバ54には、切羽の掘削土砂や地下水等を取り込むようになっている。
前記カッタヘッド52の後面には、チャンバ54に臨ませて複数本の練り混ぜ翼55が取り付けられている。また、各旋回体45の前面には同チャンバ54に臨ませて練り混ぜ翼56が取り付けられている。
各旋回体45は、当該回転駆動装置57に連結されている。各回転駆動装置57は、取り付け部材58を介して隔壁43の後面側に支持された回転駆動源59と、この回転駆動源59の出力軸に取り付けられたピニオン60と、ラジアル軸受63の内周面に形成されたインターナルギヤ62を有する大歯車61とを備えて構成されている。前記インターナルギヤ62は、当該ピニオン60に噛み合わされており、これらピニオン60とインターナルギヤ62とにより減速機構が構成されている。前記大歯車61は、当該旋回体45に連結されている。前記ラジアル軸受63は、当該旋回体45の後部と隔壁43間に設けられている。しかして、この回転駆動装置57は複数台の回転駆動源59が同じ方向に回転駆動されるに伴い、ピニオン60とインターナルギヤ62を通じて大歯車61が減速回転され、この大歯車61を通じて当該旋回体45を回転させ、当該偏心軸47を旋回体45の中心O3に対して偏心距離eを回転半径として、旋回体45の中心O3の回りに旋回させ、複数本の偏心軸47を通じてカッタヘッド52に平行リンク運動を与えるようになっている。
前記シールド筒42の内部から各旋回体45のほぼ中心部を通って当該旋回体45の内部に、給脂管66が設けられている。各給脂管66は、スイベルジョイント65を介して給脂元管64に接続されている。各旋回体45の内部には、給脂通路67が設けられている。また、各旋回体45の内部を通り、当該偏心軸47のほぼ中心線に沿って、給脂通路68が設けられている。前記給脂通路67は、給脂管66に連通しており、当該旋回体45の外周と隔壁43間に介装されたシール部材46にグリース等の油脂を供給するようになっている。前記給脂通路68も給脂管66に連通しており、この給脂通路68からは当該固定ブロック48と偏心軸47間に設けられたスラスト軸受49およびラジアル軸受50を経て、固定ブロック48の内周と偏心軸47の外周間に介装されたシール部材51に油脂を供給するようになっている。
前記カッタヘッド52の前面側の偶角部には、オーバカッタ87が設けられている。
前記オーバカッタ87は、液圧ジャッキ88に嵌挿されたピストンロッドに取り付けられている。前記液圧ジャッキ88は、カッタヘッド52内に固定された取り付け台89に取り付けられている。
前記隔壁43には、シールド筒42の中心部に配管回転体69が組み込まれている。この配管回転体69の後部と隔壁43間には、スラスト軸受70が設けられている。また、配管回転体69の外周と隔壁43間には、ラジアル軸受71が設けられている。さらに、配管回転体69の外周と隔壁43間におけるチャンバ54に臨む位置には、シール部材72が介装されている。
前記配管回転体69には、この配管回転体69の中心に対して偏心距離eをおいた偏心位置に、管状の配管回転体駆動ロッド73が設けられている。この配管回転体駆動ロッド73の根元部分の外周と配管回転体69の内周間には、ラジアル軸受74とシール部材75が設けられている。このシール部材75は、チャンバ54に臨む位置に介装されている。また、配管回転体駆動ロッド73の前端部は、結合ブロック76を介して前記カッタヘッド52の中心部に結合されている。したがって、前記カッタヘッド52が平行リンク運動するに伴い、配管回転体駆動ロッド73が偏心距離eを回転半径として、配管回転体69の中心を回転中心として旋回し、配管回転体69を回転させるようになっている。
前記シールド筒42の内部から配管回転体駆動ロッド73の内部に、これのほぼ中心線に沿って、管束77が貫挿されている。この管束77は、作泥土材供給管79と給脂管83と液圧配管90a,90bを一束にまとめて形成されている。なお、この管束77は途中で継手78により接続されている。
前記作泥土材供給管79は、端子80の個所で複数本の作泥土材配管81に分岐されている。そして、各作泥土材配管81はカッタヘッド52に設けられた作泥土材注出口82に接続されており、この作泥土材注出口82を通じてカッタヘッド52の前方にベントナイト等の作泥土材を注出し、掘削土砂に混入させるようにしている。なお、作泥土材をカッタヘッド52の前方または/およびチャンバ54内の掘削土砂に注出するようにしても良い。
前記給脂管83には、給脂配管84,85が接続されている。そして、一つの給脂配管84からは、配管回転体69の外周と隔壁43の内周間に介装されたシール部材72にグリース等の油脂を供給するようになっている。また、他の給脂配管85からは、配管回転体駆動ロッド73の根元部分の外周と配管回転体69の内周間に介装されたシール部材75に油脂を供給するようになっている。
前記液圧配管90a,90bのうちの、液圧配管90aからは液圧ジャッキ88のピストン室側に液圧を供給し、ピストンロッドを介してオーバカッタ87を突出させ、このオーバカッタ87によりシールド筒42の外径よりも大径の断面形状を掘削する。
そして、オーバカッタ87の使用後は液圧配管90bから液圧ジャッキ88のピストンロッド室側に液圧を供給し、ピストンロッドを介してオーバカッタ87を没入させる。
前記シールド筒42の内部からチャンバ54の下部に臨ませて、排土装置が設けられているが、図面では省略されている。
前記シールド筒42の内周には、複数基のシールドジャッキ86が設置されている。これらのシールドジャッキ86は、セグメント(図示せず)に反力を取ってシールド筒42と、これに付属の部材を推進させるようになっている。
ところで、この実施例2では前記給脂元管64、スイベルジョイント65、給脂管66を通り、旋回体45の内部に設けられた給脂通路67を通じて、当該旋回体45の外周と隔壁43間に介装されたシール部材46に油脂を供給する。これにより、シール部材46のシール機能を強化できるので、チャンバ54側から旋回体45の外周と隔壁43間のすき間への掘削土砂や泥水の浸入を阻止することができる。
また、前記給脂管66から、旋回体45の内部を経て当該偏心軸47のほぼ中心線に沿って設けられた給脂通路68、固定ブロック48の内部と当該偏心軸47の前端面間に設けられたスラスト軸受49、同固定ブロック48の内周と偏心軸47の外周間に設けられたラジアル軸受50を経由して、同固定ブロック48の内周と偏心軸47の外周間に介装されたシール部材51に油脂を供給する。これにより、前記スラスト軸受49およびラジアル軸受50に潤滑材として油脂を供給すると同時に、シール部材51にも油脂を供給する。このように、シール部材51に油脂を供給することによって、シール部材51のシール機能を強化できるので、このシール部材51によりチャンバ54側から固定ブロック48の内周と偏心軸47の外周間への掘削土砂や泥水の浸入を阻止することができる。
また、この実施例2では作泥土材供給管79と給脂管83と液圧配管90a,90bを束ねた管束77、前記給脂管83および給脂配管84を通じて、配管回転体69の外周と隔壁43間に介装されたシール部材72に油脂を供給する。これにより、シール部材72のシール機能を強化できるので、このシール部材72によりチャンバ54側から配管回転体69の外周と隔壁43間のすき間への掘削土砂や泥水の浸入を阻止することができる。
さらに、前記給脂管77および給脂配管85を通じて、配管回転体駆動ロッド73の根元部分の外周と配管回転体69の内周間に介装されたシール部材75に油脂を供給する。これにより、シール部材72のシール機能を強化できるので、このシール部材72によりチャンバ54側から配管回転体駆動ロッド73の根元部分の外周と配管回転体69の内周間のすき間への掘削土砂や泥水の浸入を阻止することができる。
そして、この実施例2では前記管束77に束ねられた作泥土材供給管79、端子80、これより分岐された作泥土材配管81を通じて、カッタヘッド52に複数個設けられた作泥土材注出口82に作泥土材を圧送し、その作泥土材を作泥土材注出口82からカッタヘッド52の前方に注出し、掘削土砂に混入させ、掘削土砂に所定の塑性流動性を付与することができる。
また、この実施例2では作泥土材供給管79と給脂管83と液圧配管90a,90bを一緒にまとめて束ね、その管束77を、シールド筒42の中心O1を回転中心として回転する配管回転体69に偏心距離eをおいて取り付けられかつカッタヘッド52に結合された配管回転体駆動ロッド73のほぼ中心線に沿って貫挿している。その結果、前記配管回転体駆動ロッド73はシールド筒42の中心O1の回りに偏心距離eを回転半径として公転するが、自転はしないので、管束77は捩れない。したがって、前記管束77が捩れることによって生ずる不具合を未然に解消することができる。
さらに、この実施例2では隔壁43におけるシールド筒42の中心部に、回転可能に配管回転体69を組み込み、この配管回転体69の中心に対して所定の偏心距離eをおいた偏心位置に、配管回転体駆動ロッド73を取り付け、この配管回転体駆動ロッド73を、結合ブロック76を介してカッタヘッド52に結合している。その結果、礫層等の掘削時に生ずる掘削の衝撃力を、前記結合ブロック76、配管回転体駆動ロッド73および配管回転体69を通じて緩和することができる。したがって、大断面トンネル掘削用の大型のカッタヘッドに対して有効に適用することができる。
なお、この実施例2における他の構成および作用については、前記実施例1と同様である。
本発明の実施例1を示す縦断側面図である。
図1のA−A線断面図である。
図1の正面図である。
図1のB部分の拡大縦断側面図である。
本発明の実施例2を示すもので、下部を省略した縦断側面図である。
符号の説明
1 シールド機
2 シールド筒
3 隔壁
4 フード
6 旋回体
7 シール部材
8 偏心回転体
9 シール部材
10 スラスト軸受
11 偏心軸
13 カッタヘッド
14 掘削ビット
O1 シールド筒の中心
O2 カッタヘッドの中心
O3 旋回体の中心
O4 偏心回転体および偏心軸の中心
15 メタル
16 カッタ固定部材
17 偏心軸反力受部材
18 チャンバ
21 回転駆動装置
22 回転駆動源
23 ピニオン
24 大歯車
25 インターナルギヤ
26 ラジアル軸受
27 排土装置
28 シールドジャッキ
29 管束
30 作泥土材供給管
31 作泥土材注出口
32 給脂管
33,34 給脂配管
36 オーバカッタ
37 液圧ジャッキ
38 ピストンロッド
40a,40b 液圧配管
41 シールド機
42 シールド筒
43 隔壁
44 フード
45 旋回体
46 シール部材
47 偏心軸
48 固定ブロック
49 スラスト軸受
50 ラジアル軸受
51 シール部材
52 カッタヘッド
53 掘削ビット
54 チャンバ
57 回転駆動装置
58 取り付け部材
59 回転駆動源
60 ピニオン
61 大歯車
62 インターナルギヤ
63 ラジアル軸受
64 給脂元管
66 給脂管
67,68 給脂通路
69 配管回転体
70 スラスト軸受
71 ラジアル軸受
72 シール部材
73 配管回転体駆動ロッド
74 ラジアル軸受
75 シール部材
76 結合ブロック
77 管束
79 作泥土材供給管
81 作泥土材配管
82 作泥土材注出口
83 給脂管
84,85 給脂配管
86 シールドジャッキ
87 オーバカッタ
88 液圧ジャッキ
90a,90b 液圧配管
91 セグメント