JP3869052B2 - 重荷重用空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、一のブロックに、片側開口サイプを二本以上有し、かつ各サイプの最大深さが、幅方向溝の深さより深いブロックパターン重荷重用空気入りタイヤに関するものであり、加硫成形時のゴム流れの遅延によって生じる表層ゴムの巻込み、ひいては、それに起因するフロークラックの発生を有効に防止するものである。
【0002】
【従来の技術】
ブロックパターン空気入りタイヤにおいて、氷上性能と耐偏摩耗性能とを両立させるためには、ブロックに設けた複数本のサイプのそれぞれを、交互に反対側の周方向溝に開口する片側開口サイプとすることが有効であり、また、氷上性能を、タイヤの使用末期に至るまで有効に発揮させるためには、サイプの深さを幅方向溝の深さと同等以上とすることが有効である。
この一方で、サイプの深さを幅方向溝のそれと同じにした場合には、サイプ底からクラックが発生し易く、そのクラックがブロック欠けの原因となるため、多くは、サイプ深さを幅方向溝の深さより深くすることによってクラックの発生を抑制している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、一のブロックに設けた複数本のサイプのそれぞれを、交互に反対側の周方向溝に開口させる場合において、各サイプをその全長にわたって幅方向溝より深くするときは、とくには、タイヤの加硫成形時にそのサイプを形成する場合に、加硫成形に際する、ゴムの円滑な流動が、加硫成形型に設けたサイプ形成用ブレードによって妨げられることになり、ブロック表面のサイプ間に、ゴムの表層を巻込むことに起因するフロークラックが発生するという問題があった。
【0004】
これはすなわち、図6(a) に例示するように、一のブロックbに、互いに反対側の周方向溝に開口する二本のサイプs1, s2を設ける場合に、それらのサイプs1, s2を、加硫成形型に取付けたブレードをもって形成するときは、そのブロックbの、図のA−A線に沿う部分での成形は、図6(b) に断面図で示すように、加硫成形型mに設けたブレードcの両側での、ゴムの円滑なる流動に基づいて十分適正に行われることになるも、図のB−B線に沿う部分の成形では、図6(c) に示すように、両ブレードcに挟まれた領域内へのゴムの流入が、両ブレードcの外側領域へのゴムの流入に比して遅れて行われることになって、成形されるブロックを平面でみると、図7(a) に矢印で示すような両サイプs1, s2間へのゴムの流入が行われ、しかも、多くは、図の左右それぞれの側部からの流入に時間差を生じて、ゴムの表層の巻込みが行われることになるため、そのブロックbにおいては、両サイプs1, s2間での横断面内で、図7(b) に示すように、ブロックbの幅方向の中間部分に、クリスと称されるフロークラックdが発生し、このフロークラックdが、ブロックbへの外力の作用に際するブロック欠け等の原因となるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような問題点を解決することを課題として検討した結果なされたものであり、この発明の目的は、一のブロックに、最大深さが幅方向溝より深い複数本のサイプを設けてなお、サイプ間へのフロークラックの発生を十分に防止することができる重荷重用空気入りタイヤを提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の重荷重用空気入りタイヤは、周方向溝および幅方向溝のそれぞれによって区画されるブロックに、傾向的にトレッド幅方向に、直線状に延びる複数本のサイプを設け、それぞれのサイプの一端を交互に反対側の周方向溝に開口させるとともに、各サイプの最大深さを、幅方向溝の深さより深くしたものであって、各サイプの深さを、それの、周方向溝への開口端で最も深くするとともに、反対端に向けて次第に浅くし、最大深さと最小深さの差を2mm以上としたものである。
【0007】
ここにおいて「傾向的にトレッド幅方向に延びる」とは、実質的にトレッド幅方向に延在するもののみならず、幾分の周方向成分を有するものをも含む意である。
なお、サイプの、周方向溝への開口端から、その反対端への深さの次第の減少は、必ずしも直線状である必要はなく、ステップ状、曲線状などとすることも可能である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の一の実施形態を示す図であり、図中1はブロックを示す。このブロック1は、二本の周方向溝2,3と、二本の幅方向溝4,5とで区画されて、図では方形の平面輪郭形状を有するとともに、その表面上に、タイヤ周方向に間隔をおいて位置して、実質的にタイヤ幅方向に直線状に延びる二本のサイプ6,7を有しており、これらのサイプ6,7は、それらの各一端を、交互に反対側の周方向溝2,3に開口する。
なおそれぞれのサイプ6,7の他端はブロック内で終了する。
【0009】
ここで、このようなサイプ6,7を、タイヤの加硫成形と同時に形成する場合には、サイプ6については図1(b) に、そして、サイプ7については図1(c) に、それぞれ、加硫成形型8の型閉め状態における、それぞれのサイプ形成用ブレード9,10と、それぞれのサイプ6,7に最も近接して位置する幅方向溝4,5の溝底4a, 5aとの相対関係を、サイプの深さ方向の断面図で例示するように、加硫成形型8からの突出長さが一端から他端に向けて直線状に減少するそれぞれのブレード9,10の、ゴム中への刺さり込みをもたらして、各ブレード9,10の一部を、各溝底4a, 5aより深くゴム中に進入させることによって、各サイプ6,7を、それの周方向溝2,3への開口端で、溝底4a, 5aより深い最大深さとするとともに、その深さを、それの反対端に向けて直線状に浅くして、最大深さと最小深さの差を2mm以上とする。
【0010】
なおここで、サイプ深さを図示のように直線状に変化させる場合には、サイプ6,7の、溝底4a, 5aより深い部分の長さを、サイプ長さの100 〜80%の範囲とすることが好ましい。
【0011】
このようなサイプ構造を具えるブロック、ひいては空気入りタイヤによれば、サイプ6,7の最大深さを幅方向溝4,5の深さより深くするとともに、サイプ深さを所要の長さにわたって幅方向溝4,5のそれより深くすることで、サイプ底からのクラックの発生を有効に防止し、併せて、タイヤの使用末期に至るまで、すぐれた氷上性能および耐偏摩耗性能を発揮させることができる。
【0012】
しかもここでは、サイプ6,7の深さを、ブロック幅方向で漸次浅くすることにより、サイプ6,7を有するブロック1の加硫成形に当り、ゴムは、図1(a) に矢印A,Bで示すように、それぞれのブレード9,10と加硫成形型8との間の隙間を経て両サイプ間へ流入するのみならず、各ブレード9,10の、とくには周方向溝2,3から離れて位置して、成形型8からの突出長さの少ない部分の先端縁の、図では下方を巡ってもまた両サイプ間へ流入することができるので、サイプ間へのゴムの流入遅れを有効に緩和できることに加え、ブレード9,10の先端縁下方を巡るゴム流動の存在それ自体をもって、ゴムの表層の巻込みのおそれを効果的に取り除くことができ、それにより、両サイプ間へのフロークラックの発生を十分に防止することができる。
なおこのことは、サイプ6,7の、最大深さと最小深さの差2mm以上とした場合にとくに有効であり、これによれば、ブレード9,10の先端縁の下方を巡る、円滑にして迅速なゴム流動をもたらすことできる。
【0013】
ところで、ここにおいて、サイプ6,7の開口端側の深さを最小深さとし、それのブロック内での終端を最大深さとした場合には、サイプを成形するブレードの、加硫成形型に固定される部分が少なくなり、未加硫タイヤへのブレードの刺し込み、加硫成形型からのタイヤの取り外し等に当って、ブレードに曲がり等が発生しやすくなる。
【0014】
なお、それぞれのサイプ6,7のサイプ底側面形状、いいかえれば、サイプ形成用ブレード9,10の先端縁側面形状は、サイプの、ブロック内での終了端に向けて途中から深さが浅くなる一もしくしは複数の折曲点を有する折れ線状側面形状などとすることもできる。
【0015】
【実施例】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図2は、上述したようなサイプ構造を、サイズが11R 22.5の重荷重用空気入りタイヤに適用した場合のトレッドパターンを例示する図であり、ここでは、トレッド中央区域21内に画成した各ブロック22に、ブロック22の周方向の辺縁と平行に延びる二本の直線状サイプ23, 24をそれぞれ形成し、それらの各サイプ23, 24のサイプ底側面形状を、最大深さで18mm、最小深さ13mmとし、それらの間で直線状に変化させ、また、それぞれの幅方向溝25, 26の深さをともに14mmとした。
【0016】
この空気入りタイヤでは、フロークラックの発生位置であるサイプ中央から、終了端まででは、サイプ深さを浅くすることより、ブレードの下方からの円滑なゴム流動をもたらして、ブロック22へのフロークラックの発生率を0%とすることができた。また、ブロック欠けに関しては、サイプの開口端近傍でサイプ深さを深くして、サイプ底位置を、サイプ底歪が最大となる位置、すなわち、幅方向溝と同じ深さとなる位置からずらすことにより、ブロック欠けの発生を抑えることができる。
【0017】
なお、図示のトレッドパターンを有するタイヤにおいて、サイプの側面形状、深さ等を種々に変更したところ、フロークラックの発生状況は表1に示す通りとなった。
【0018】
【表1】
Figure 0003869052
【0019】
図3は、他の実施例を示すトレッドパターンであり、ここでは、ショルダーブロック31を除く他の各ブロック32に設けた二本の直線状サイプ33, 34のそれぞれのサイプ底側面形状を、最大深さで20mm、最小深さで10mmとし、それらの間で直線的に変化させた。
【0020】
また、図4に示すトレッドパターンは、それぞれのサイプの、サイプ底側面形状を、最大深さで18mm、最小深さで15mmとするとともに、それらの間で直線的に変化させたものである。
【0021】
さらに図5に示すトレッドパターンは、とくにはショルダーブロック列の各サイプの、サイプ底側面形状を、最大深さで20mm、最小深さで15mmとするとともに、それらの間で直線的に変化させたものである。
【0022】
これらのそれぞれの実施例においてもまた、フロークラックの発生および欠けのそれぞれを十分に防止することができる。
【0023】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、一のブロックに、最大深さが幅方向溝より深い複数本のサイプを設けることで、サイプ底クラックの発生を有効に防止してなお、タイヤの摩耗末期に至るまで、すぐれた氷上性能、耐偏摩耗性能を有効に発揮させることができ、また、サイプの深さを周方向溝への開口端で最も深くするとともに、反対端に向けて次第に浅くすることにより、タイヤの加硫成形に際するゴムの流動を、サイプ形成用ブレードの存在にもかかわらず、十分円滑かつ迅速ならしめて、複数本のサイプ間へのフロークラックの発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一の実施形態を示す図である。
【図2】この発明の一実施例を示すトレッドパターンである。
【図3】他の実施例を示すトレッドパターンである。
【図4】他の実施例を示すトレッドパターンである。
【図5】さらに他の実施例を示すトレッドパターンである。
【図6】従来技術におけるゴムの流動形態を例示する図である。
【図7】フロークラックの発生態様を例示する図である。
【符号の説明】
1 ブロック
2,3 周方向溝
4,5 幅方向溝
6,7 サイプ
8 加硫成形型
9,10 サイプ形成用ブレード

Claims (1)

  1. 周方向溝および幅方向溝のそれぞれによって区画されるブロックに、傾向的にトレッド幅方向に直線状に延びる複数本のサイプを設け、それぞれのサイプの一端を交互に反対側の周方向溝に開口させるとともに、各サイプの最大深さを幅方向溝の深さより深くしてなるタイヤであって、
    各サイプの深さを、それの、周方向溝への開口端で最も深くするとともに、反対端に向けて次第に浅くし、最大深さと最小深さの差を2mm以上としてなる重荷重用空気入りタイヤ。
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