JP3868376B2 - セルロース誘導体水性分散液の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、セルロース誘導体水性分散液の製造方法、それにより調製された該水性分散液、及び該水性分散液を用いる被覆製剤に関する。さらに詳しくは、皮膜形成性、耐1液性に優れたセルロース誘導体水性分散液の製造方法、それにより得られた該水性分散液に関する。また、該水性分散液を食品又は医薬品のコーティング剤として使用して、水系プロセスにより製造される腸溶性の医薬品製剤に関する。
従来の技術
カルボキシル基を有するセルロース誘導体は化粧品、医薬品、農薬品などで広く利用されている。なかでも医薬品分野においては腸溶性コーティング基剤として用いられている。
腸溶性コーティング剤の場合、有機溶剤系が主であったが、製剤中への溶剤の残留、溶剤のコスト高、作業環境の改善の点で、従来用いられていた有機溶剤系から水系に移行しつつある。従来、腸溶性セルロース誘導体水系コーティング剤の製造方法としては、有機溶媒中に腸溶性セルロース誘導体を溶解し、これを乳化剤存在下で水中に微分散した後、分散液から有機溶媒を蒸留して水相中に腸溶性セルロース誘導体の固体粒子を生成する方法(特公平2−7925号公報)、水にカルボキシメチルエチルセルロースの微粉末を直接分散させる方法(特開昭56−154420号公報)、アルコール水溶液中にカルボキシメチルエチルセルロースを溶解し、且つ可塑剤等の各種添加剤を添加し、その後アルコールを除去してラテックスを得る方法(特開昭61−207342号公報)、アニオン性官能基を有するセルロース誘導体を、水に混和しない有機溶媒に溶解し、この溶液と水をアルカリの存在下で分散し、得られる分散体から有機溶媒を除去するセルロース誘導体ラテックスの製造方法(特開平5−125224号公報)、カルボキシアルキルアルキルセルロースの水分散液からなる水系腸溶性コーティング剤において、アルキル化度、カルボキシアルキル化度、カルボン酸基とカルボン酸塩基との比、カルボン酸塩基とアルキル化度との比を特定したもの(特開2000−80048号公報)、カルボキシル基含有セルロースが溶解した有機溶剤又は水と有機溶剤の混合溶剤と、塩基性物質との混合溶液に、水を加えて粒子を析出させる方法(特開2000−186153号公報)、などが提案されている。
水不溶性高分子の微粒子を水に分散させて用いる方法は、懸濁安定性に欠けるため常に懸濁液を撹拌する必要があり、また、粒子径が大きい、粒子形状が不定形であることから、その成膜性が充分でないなどの問題がある。その点、特開平5−125224号公報又は特開2000−80048号公報に示される、カルボキシル基の一部を塩の形にしたラテックスタイプの水性分散液は、粒子径が小さく、また分散粒子が真球状であることから、分散安定性が極めて良いが、被膜形成性が充分ではなく、実際に医薬品腸溶性製剤に使用した場合、腸溶性コーティング剤として必要な耐1液性に欠ける場合があった。
また、特開2000−186153号公報は、粒子析出後、酸により塩型カルボキシル基を酸型に戻す旨の記載があるが、かかる公報に記載される発明は、後述のように、カルボキシル基含有セルロース製造の際に、むしろ粒径の大きい側で制御して、精製乾燥するためのものであり、被膜形成性の良好なカルボキシル基含有セルロース水分散液を得る思想はない。
発明の開示
本発明は、粒子径が小さいことによって分散安定性が高いと同時に、被膜形成性及び耐1液性に優れたセルロース誘導体水性分散液を提供することを目的とする。
なおここで、耐1液性について説明する。腸溶性製剤は、胃の保護又は胃内での薬物分解を防止するため、胃内では薬物を放出せず、腸内で薬物を放出させるものである。胃内で薬物を放出しないためには、コーティング皮膜が胃液で溶解又は分散してはいけない。その簡便な評価法として、第13改正日本薬局方・崩壊試験法があり、そこで定義されるpH1.2の第1液中で、フィルムが溶解又は分散などを起こさないこと、又はコーティング製剤が実質的に薬物を放出しないことを耐1液性と言う。
本発明者らはこれらの問題を解決するために鋭意研究を行った結果、アルカリを添加してセルロース誘導体のカルボキシル基の一部を塩の形にし、自己乳化型にすることにより、分散固体の安定性を著しく向上させた処理前水性分散液を調製し、該分散液のアルカリの一部又は全部を除去した水性分散液を調製することで、被膜形成性及び耐1液性に優れた被膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記の通りである。
(1) カルボキシル基を有するセルロース誘導体を有機溶媒に溶解して溶液を得、カルボキシル基の1〜65モル%に相当するアルカリの存在下で、該溶液と水とを分散して分散体を得、該分散体から有機溶媒を除去して処理前水性分散液を得、該水性分散液から用いたアルカリの一部又は全部を除くことからなる、セルロース誘導体水性分散液の製造方法。
(2) 有機溶媒が水に混和しない有機溶媒である、上記(1)記載の方法。
(3) 酸を添加することによりアルカリの一部又は全部を除く、上記(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 添加する酸が有機酸である、上記(3)記載の方法。
(5) 用いたアルカリの6倍当量以下の有機酸を添加する、上記(4)記載の方法。
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかの製造方法により得られる、セルロース誘導体水性分散液。
(7) 上記(6)記載のセルロース誘導体水性分散液をフィルムコーティング剤として用いる、医薬品被覆製剤。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の使用に適するカルボキシル基を有するセルロース誘導体は、人の胃液には溶解しないが腸液で溶解する性質を有するセルロース誘導体である(以下、これを「腸溶性セルロース誘導体」と称する)。その例としては、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルメチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、カルボキシブチルエチルセルロース、カルボキシエチルエチルセルロースなどが挙げられる。
中でも、本発明で用いる腸溶性セルロース誘導体としては、カルボキシメチルエチルセルロースが好ましく、特にカルボキシメチル基を8.9〜14.9%、エトキシル基を32.5〜43.0%含有するものが好ましい。これらの化合物はエステル結合を持たないため、通常の保存条件下では加水分解することがほとんどなく、セルロース誘導体水性分散液の素材として最適である。これらを単独で用いてもよいし、また2種以上を適宜選択して使用してもよい。また、場合によっては、これらとエチルセルロース等のイオン性官能基を持たない高分子やアクリル系高分子を混合して使用することも可能である。
本発明において用いられる有機溶媒は、これらの腸溶性セルロース誘導体を溶解する必要がある。かかる有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、アセトン、イソプロパノール、テトラヒドロフランなどの水と自由に混和する有機溶媒でも良いし、トルエン、シクロヘキセン等の炭化水素類、イソプロピルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル等のエステル類などの、水と自由に混和しない有機溶媒であってもよい。
ここで、水と自由に混和しない有機溶媒とは、全く水と混じり合わない有機溶媒、又は水と完全には混じり合わないが、水に溶媒が少量溶解し、また溶媒に水が少量溶解する有機溶媒を意味する。水と自由に混和する有機溶媒、又は水と部分的に混和する有機溶媒においては、腸溶性セルロース誘導体が溶解する範囲において、水を含有させたものを用いることもできる。
本発明に用いる有機溶媒は、後の工程で留去する必要があるので、沸点が水より低いものを、特に90℃以下の沸点のものを用いることが好ましい。水と自由に混和しない有機溶媒を用いる方が、使用する水の添加量が少なくて済むため、水蒸発のコスト、作業時間などの生産性の点で有利である。特に加水分解することのないメチルエチルケトン等のケトン類が好ましい。
これらの溶媒は単独で用いてもよいし、溶解性を調節するためなどの理由で、2種以上の混合溶媒を用いてもよい。腸溶性セルロース誘導体をこれらの溶媒に溶解させる時の濃度には特に制限はなく、生産性、溶液の取扱い、水との分散性を考慮して決定すればよい。適当な濃度範囲は腸溶性セルロース誘導体の種類、分子量、溶媒の種類によって異なるが、おおむね1〜30wt%が好ましく、より好ましくは4〜20wt%である。
本発明において使用する水に関しては、水を単独で使用する他に、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチルのような水に少量溶解する有機溶媒、又はエタノールなどの水に自由に溶解する有機溶媒が部分的に溶解している水を使用してもよい。
本発明において、腸溶性セルロース誘導体の溶液と水との比は、腸溶性セルロース誘導体溶液の濃度と、所望する処理前水性分散液の固形分の値から設定する。
例えば、腸溶性セルロース誘導体溶液の濃度が10wt%で、処理前水性分散液の固形分を20wt%にしたければ、溶液と水との混合比は10:4程度に設定にすればよい。もちろんこの混合比よりも水を多くして、分散、溶媒除去して低濃度の処理前水性分散液を製造した後に、蒸留、膜分離等により水を除去することにより所望の固形分まで濃縮してもよい。
本発明において使用するアルカリは水に溶解して、1価、2価又は3価のイオンに解離するもので、かつ、分散固体を形成した際に無毒性であるものが好ましい。例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。処理前水性分散液の安定性又は粘度の面から、解離したときのイオンの価数が1価又は2価のものが好ましい。
アルカリの量としては、セルロース誘導体の種類、分子量、溶媒の種類によって異なるが、概ね0.02〜1.3ミリ当量/セルロース誘導体量(g)程度が好ましい。この時のアルカリの添加量は腸溶性セルロース誘導体中のカルボキシル基の1〜65モル%を中和する量に相当する(カルボキシメチル基含量が12.0%であるカルボキシメチルエチルセルロースの場合)。従来、乳化剤を使用せずに、エマルジョン溶媒留去法で高分子をラテックスタイプの水性分散液を調製することは非常に困難であったが、乳化剤を使用せずとも、前述の量のアルカリ添加により、高分子の自己乳化作用を利用することにより、ラテックスタイプの水性分散液の製造が可能になる。
添加するアルカリの量は、水性分散液の粘性、分散安定性、被膜形成性の観点から腸溶性セルロース誘導体中のカルボキシル基の65モル%を中和する量以下が好ましく、自己乳化性、水性分散液の分散安定性、被膜形成性の観点から1モル%を中和する量以上が好ましい。より好ましくは0.12〜1.06ミリ当量/セルロース誘導体量(g)(この時のアルカリの添加量は同様に、カルボキシル基の6〜53モル%を中和する量に相当)、更に好ましくは0.24〜0.92ミリ当量/セルロース誘導体量(g)(この時のアルカリの添加量は、同様にカルボキシル基の13〜46モル%を中和する量に相当)である。
アルカリを添加する方法は、腸溶性セルロース誘導体の溶液と水の混合物中、腸溶性セルロース誘導体の溶液中、水中いずれの媒体に混合してもよいが、中和が局在的に起こらないように水中に分散、溶解する方法が好ましい。また、カルボキシル基のうち、その65モル%以下のものが予め塩型になっている腸溶性セルロース誘導体を用い、必要に応じて、カルボキシル基の1〜65モル%が塩型になるように、さらにアルカリを添加する方法も好ましい。
本発明において、腸溶性セルロース誘導体溶液と水との分散は、腸溶性セルロース誘導体の溶液に水を添加しながら行ってもよいし、水に腸溶性セルロース誘導体の溶液を添加しながら行ってもよい。水に自由に混和しない有機溶媒を使用する場合は、水の添加量を抑えることで、W/O型(油中水型)の乳化状態にすることが、水蒸発のコスト、作業時間などの生産性の点から有利であり好ましい。水に自由に混和する溶媒を使用する場合は、溶液と水を混合する段階で、腸溶性セルロース誘導体が溶解性を失ってこの段階で析出するので、粗大粒子の析出を起こさないために、徐々に添加するほうが好ましい。
本発明において、腸溶性セルロース誘導体溶液をアルカリの存在下で水と分散する際の分散機器としては、通常の撹拌力を発生するものであればよい。例えばプロペラ撹拌、ホモミキサー、マントンゴーリン型ホモジナイザー、ナノマイザー(商標)(ナノマイザー株式会社)、マイクロフルイダイザー(商標)(MICROFUIDIC社)などがある。
こうして得られた腸溶性セルロース誘導体溶液と水との分散体から有機溶媒を除去すると、水相中に腸溶性セルロース誘導体が真球状粒子となって処理前水性分散液を得ることができる。前述したように、固形分濃度をさらに高めたい場合は、水の一部を蒸留すればよい。有機溶媒の除去は、通常、常圧又は減圧下で蒸留する方法、スチームストリップによる方法、エアレーションによる方法によって行う。また、腸溶性セルロース誘導体溶液をアルカリ存在下で水と分散、乳化し、引き続き連続的に有機溶媒を除去するような場合には、T.K.アヂホモミクサー(商標)(特殊機化工業(株))のような真空乳化機を使用することが有利である。
水に自由に混和しない有機溶媒を使用した場合に有機溶媒を除去するには、W/O型エマルジョンからO/W型エマルジョンへ転相させ、処理前水性分散液を調製することが好ましい。当然O/W型エマルジョンから乳化形態を変えずに、処理前水性分散液を製造することもできるが、この場合、水の配合量が多いので水の留去が必要となる。
これに対して、転相を伴う有機溶媒留去を行って処理前水性分散液を調製する方法では、水の除去が必要最低量でよいことから、エネルギー効率及び機器の生産効率の点で有利である。従来このような転相を伴う有機溶媒留去を行った場合、乳化剤の最適化を行っても乳化が壊れてしまい、安定な処理前水性分散液を製造することが困難であった。しかしながら、本発明では、腸溶性セルロース誘導体自身に乳化性をもたせたために、このような工程をとることが可能となる。
前述の方法により有機溶媒を除去して得られた処理前水性分散液に、用いたアルカリの一部を、又は全部を除去することにより、本発明の腸溶性セルロース誘導体水性分散液を得る。処理前水性分散液は分散固体の粒子径が小さく、分散安定性には問題ないものの、フィルムの耐1液性が充分ではないため、腸溶性コーティング剤として製剤に使用するとき、多量のコーティングが必要であった。特に、フィルムの場合には耐1液性が問題ない場合でも、実際の製剤に使用すると、錠剤又は顆粒の膨潤力などが加わる中で耐1液性を求められるため、従来の水性分散液では充分ではなかった。
本発明を用いることで、分散個体の粒子径を小さく維持したままで、被膜形成性を格段に改良することができ、製剤での耐1液性が著しく向上することが見い出された。すなわち、分散安定性と被膜形成性が両立した腸溶性セルロース誘導体水性分散液とすることが可能になった。これは、塩型のカルボキシル基より、酸型のカルボキシル基の方が、可塑剤との相溶性が良好になるためと推定される。
酸の種類としては、水中で水素イオンを発生する化合物であれば特に制限はなく、塩酸、リン酸、硫酸、炭酸などの無機酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、酢酸などの有機酸が使用できるが、解離度の高い酸、特に強酸を添加する場合は酸が局在化し、分散固体の一部が壊れる可能性があるので、セルロース誘導体水性分散液の安定性の点で弱酸がより好ましく、更に好ましくは有機酸であり、そのなかでも、可塑剤との親和性が優れている点で、クエン酸が一層好ましい。
酸の添加量は、用いる腸溶性セルロース誘導体、アルカリの種類、添加量、酸の種類などにより異なる。一般的に、添加量を増加して、アルカリ除去量を増やすと、分散固体が凝集する傾向があり、逆に、添加量が不足した場合、セルロース誘導体水性分散液より得られた膜の耐1液性が劣る傾向があるので、用いる酸の種類に応じて、好適な添加量にてアルカリ除去を行うことが好ましい。
例えば、塩酸の場合は、アルカリ添加当量に対する被膜形成性の改善効果の観点から0.3倍当量以上が好ましく、酸及び可塑剤添加時の粒子径の観点から1.5倍当量以下を添加することが好ましい。特に好ましくは0.6〜1倍当量である。
弱酸の場合、一般に、強酸に比較して酸を大量に加える必要があり、有機酸を添加する場合には、用いたアルカリの6倍当量以下とすることが好ましく、より好ましくは0.6〜6倍当量、最も好ましくは0.6〜4倍当量である。クエン酸の場合も、用いたアルカリの6倍当量以下とすることが好ましく、より好ましくは0.6〜6倍当量、最も好ましくは0.6〜4倍当量である。
イオン交換樹脂は、スルホン酸型、カルボン酸型など通常使用される粒子状のものでよいが、弱酸性型のカルボン酸型のほうが分散固体の凝集を起こしにくいので好ましい。処理前水性分散液に直接投入し、撹拌放置後、濾別して除けばよい。
腸溶性セルロース誘導体水性分散液中の分散固体粒子のメジアン径は0.05〜3μm程度であって、最大径は10μm以下であることが好ましい。分散性、被膜形成性、耐1液性の観点から、メジアン径は3μm以下、最大径が10μm以下が好ましく、固体粒子の直径が小さいほど分散安定性及び被膜形成性が向上するので好ましいが、粘性の観点からメジアン径は0.05μm以上が好ましい。特に好ましくは、0.08〜2μmである。更に好ましくは、0.08〜1μmである。
その分散固体粒子の形状は、ほぼ真球状となる。真球状であることにより、分散安定性が良好で、かつ、被膜形成時の粒子充填性が向上することから被膜形成性が良好となる。
セルロース誘導体水性分散液の固形分濃度は、フィルムコーティングにかかる時間の観点から5wt%以上が好ましく、コーティング作業性の観点から40wt%以下が好ましい。特に好ましくは10〜30wt%である。
本発明において、このセルロース誘導体水性分散液及びコーティング皮膜の物性をより向上させるために、あるいは処理前水性分散液の製造を容易にするために、可塑剤、消泡剤、懸濁剤などの添加剤を分散時に、酸添加前に、又は製造したセルロース誘導体水性分散液に添加してもよい。
可塑剤としては、クエン酸トリエチル、アセチル化クエン酸トリエチルなどのクエン酸エステル類、ジアセチン、トリアセチン、オリーブ油、ラッカセイ油、ヒマシ油、ハードファット類、グリセリン、グリセリンカプリル酸エステル、アセチル化モノグリセリドなどのグリセリン脂肪酸エステル類、ブチルフタリルブチルグリコレート、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル類、中鎖脂肪酸エステル類、セバシン酸エステル類、フタル酸エステル類、セタノール、D−ソルビトールなどが挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂乳化液、シリコーン消泡剤、ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。懸濁剤としては、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、メチルセルロースなどが挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いてもよいし、2種以上の混合物を使用してもよい。
特に、可塑剤は被膜形成性を向上させるために添加することが好ましい。可塑剤の添加量は、腸溶性セルロース誘導体固形分に対して、可塑効果、被膜形成性、耐1液性の観点から5wt%以上が好ましく、コーティング性の観点、及び親水性可塑剤の場合には耐1液性の観点から100wt%以下が好ましい。特に好ましくは、15〜80wt%である。さらに好ましくは、25〜60wt%である。
乳化剤の使用は溶解性の経時変化を引き起こすなど、膜物性に悪影響を及ぼすことがあるが、場合によってはラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシソルビタントリステアレートなどを使用することもできる。
腸溶性セルロース誘導体水性分散液は、必要に応じて可塑剤などの各種添加剤を添加し、公知の方法によって、錠剤、顆粒剤、細粒剤などのコーティングに用いると良好な腸溶性医薬品被覆製剤をすることができる。水系の分散固体であるため、コーティング時の粘度をそれほど上げることなく、高濃度でコーティングできるため、コーティング時間が短くてよい。また、被膜形成性に優れるため、少ないコーティング量で腸溶性製剤とすることが可能である。
製剤中におけるコーティング量は、製剤の大きさ、他の添加剤、使用機器などにより異なるが、一般的にはコーティング前の製剤に対して、3〜50wt%程度が好ましい。錠剤の場合は3〜15wt%程度が好ましく、顆粒の場合は5〜25wt%程度、細粒の場合は10〜50wt%程度が好ましい。
コーティング機器としては通常用いられる装置を使用すればよく、錠剤の場合であれば、コーティングパン、HICOATER(フロイント産業株式会社)等の錠剤用フィルムコーティング装置が挙げられる。顆粒、細粒の場合であれば、流動層コーティング装置、転動流動層型コーティング装置、遠心流動型コーティング装置などが挙げられる。操作条件は各々の機器で、適した条件を選択すればよい。
実施例
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を制限しない。なお、実施例及び比較例における各物性の測定法は以下の通りである。
(粒度分布)
レーザー式粒度分布測定装置LA−910((株)堀場製作所製)を用い、屈折率1.20で測定し、累積体積50%のメジアン径を求めた。
(錠剤崩壊試験)
a)第1液崩壊試験
コーティング錠剤6個について、第13改正日本薬局方に記載される腸溶性錠剤の崩壊試験法に従い、崩壊試験機(富山産業(株)製)を用いて実施した。試験液は37℃の第1液を使用した。
b)第2液崩壊試験
試験液として37℃の第2液を使用する以外は、上記と同様に行った。
(顆粒溶出試験)
a)第1液溶出試験
コーティング顆粒について、第13改正日本薬局方に記載される溶出試験(パドル法100rpm)に従い、溶出試験機(日本分光製)を用いて実施した。試験液として37℃の第1液900mlを使用した。
b)第2液溶出試験
試験液として37℃の第2液を使用する以外は、上記と同様に行った。
(実施例1)
水を飽和させたメチルエチルケトン730g中に、カルボキシメチルエチルセルロース(フロイント産業(株)製、CMEC、OS。カルボキシメチル基を12.0%、エトキシル基を39.0%含有)80gを溶かして溶液とした。次いで、メチルエチルケトンを飽和させた水190gに水酸化ナトリウム1.6g(カルボキシメチルエチルセルロース1g当たり0.50ミリ当量であり、カルボン酸の25モル%が塩を形成する量に相当する)を分散、溶解させたものを加えながらホモミキサーを用いて、12000rpmで30分間、液を撹拌し、乳化させた。乳化液は油中水型となり、連続相はカルボキシメチルエチルセルロースのメチルエチルケトン溶液であった。
この乳化液を三口フラスコに入れ、スリーワンモーターで撹拌しながら、13kPa、40℃でメチルエチルケトンを留去すると、1時間ほどで連続相と分散相が転相し、水相が連続相となった。水120gを追加した後、更に留去操作を4時間行うことで、水中にカルボキシメチルエチルセルロースが分散した固形分20%の安定な処理前水性分散液(a)が得られた。この水性分散液(a)のメジアン径は0.12μmであった。
水性分散液(a)100gをホモミキサーで4000rpmで撹拌しながら、クエン酸トリエチル10gを添加した後、さらに2%クエン酸水溶液55g(カルボキシメチルエチルセルロース1gに対して0.85ミリ当量であり、アルカリ添加当量に対して、1.7倍当量に相当)を添加し、セルロース誘導体水性分散液(A)を得た。水性分散液(A)のメジアン径は0.13μmであった。
水性分散液(A)をアルミ板上に塗布し、80℃で1時間乾燥させたところ、透明で、光沢のある塗膜を形成し、極めて良好な塗膜を形成した。また、この塗膜を1液に漬け、1分間超音波処理をしたが、塗膜が分散する様子は観察されず、極めて良好な耐1液性を示した。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1で得られた水性分散液(a)をホモミキサーで4000rpmで撹拌しながら、2%クエン酸水溶液55gを添加した後、クエン酸トリエチル10gを添加し、セルロース誘導体水性分散液(B)を得た。水性分散液(B)のメジアン径は0.13μmであった。
水性分散液(B)の成膜性、耐1液性を、実施例1と同様にして評価したところ、実施例1と同等の塗膜形成及び耐1液性を示した。結果を表1に示す。
(実施例3)
水酸化ナトリウムの量を0.8g(カルボキシメチルエチルセルロース1g当たり0.25ミリ当量であり、カルボン酸の12モル%が塩を形成する量に相当する)とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、処理前水性分散液(c)を得た。水性分散液(c)のメジアン径は0.41μmであった。この水性分散液(c)に添加する2%クエン酸水溶液の量を19g(カルボキシメチルエチルセルロース1gに対して0.30ミリ当量であり、アルカリ添加当量に対して、1.2倍当量に相当)とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、セルロース誘導体水性分散液(C)を得た。水性分散液(C)のメジアン径は0.43μmであった。
水性分散液(C)の成膜性、耐1液性を、実施例1と同様にして評価したところ、実施例1と同等の塗膜形成及び耐1液性を示した。結果を表1に示す。
(実施例4)
水酸化ナトリウムの量を0.4g(カルボキシメチルエチルセルロース1g当たり0.13ミリ当量であり、カルボン酸の6モル%が塩を形成する量に相当する)とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、処理前水性分散液(d)を得た。水性分散液(d)のメジアン径は0.80μmであった。この水性分散液(d)に添加する2%クエン酸水溶液の量を15g(カルボキシメチルエチルセルロース1gに対して0.24ミリ当量であり、アルカリ添加当量に対して、1.9倍当量に相当)とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、セルロース誘導体水性分散液(D)を得た。水性分散液(D)のメジアン径は0.85μmであった。
水性分散液(D)の成膜性、耐1液性を、実施例1と同様にして評価したところ、実施例1と同等の塗膜形成及び耐1液性を示した。結果を表1に示す。
(実施例5)
水酸化ナトリウムを用いる代わりに、水酸化カルシウム2.2g(カルボキシメチルエチルセルロース1g当たり0.74ミリ当量であり、カルボン酸の37モル%が塩を形成する量に相当する)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、処理前水性分散液(e)を得た。水性分散液(e)のメジアン径は0.33μmだった。この水性分散液に添加する2%クエン酸水溶液の量を78g(カルボキシメチルエチルセルロース1gに対して1.21ミリ当量であり、アルカリ添加当量に対して、1.6倍当量に相当)とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、セルロース誘導体水性分散液(E)を得た。水性分散液(E)のメジアン径は0.33μmであった。
水性分散液(E)の成膜性、耐1液性を、実施例1と同様にして評価したところ、実施例1と同等の塗膜形成及び耐1液性を示した。結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1の水性分散液(a)100gに、クエン酸の代わりに0.5%濃度の塩酸58g(カルボキシメチルエチルセルロース1gに対して0.40ミリ当量であり、アルカリ添加当量に対して、0.8倍当量に相当)を添加し、また、クエン酸トリエチルの代わりにトリアセチン7gを添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、セルロース誘導体水性分散液(F)を得た。水性分散液(F)のメジアン径は0.48μmであった。
水性分散液(F)の成膜性、耐1液性を、実施例1と同様にして評価したところ、実施例1の塗膜に比べて、光沢の点でやや劣るものの同等の塗膜を形成し、また、耐1液性試験で塗膜の分散は認められなかったものの、実施例1に比較して膜がやや白濁した。結果を表1に示す。
(実施例7)
水を飽和させた酢酸メチル360g中に、実施例1で使用したカルボキシメチルエチルセルロース40gを溶かして溶液とした。次いで酢酸メチルを飽和させた水95gに消泡剤(信越化学工業(株)製、シリコーン樹脂製剤、KM72A)2g、水酸化カリウム1.1g(カルボキシメチルエチルセルロース1g当たり0.50ミリ当量であり、カルボン酸の25モル%が塩を形成する量に相当する)を分散、溶解させたものを加えながらホモミキサーを用いて、12000rpmで30分間、液を撹拌し、乳化させた。乳化液は油中水型となり、連続相はカルボキシメチルエチルセルロースの酢酸エチル溶液であった。
この乳化液を三口フラスコに入れ、スリーワンモーターで撹拌しながら、13kPa、40℃で酢酸メチルを留去すると、1時間ほどで連続相と分散相が転相し、水相が連続相となった。水100gを追加した後、更に留去操作を4時間行うことで、水中にカルボキシメチルエチルセルロースが分散した固形分15%の安定な処理前水性分散液(g)が得られた。この水性分散液(g)のメジアン径は0.09μmであった。
水性分散液(g)100gをホモミキサーで4000rpmで撹拌しながら、グリセリンカプリル酸エステル7gを添加した後、さらに2%クエン酸水溶液42g(カルボキシメチルエチルセルロース1gに対して0.85ミリ当量であり、アルカリ添加当量に対して、1.7倍当量に相当)を添加し、セルロース誘導体水性分散液(G)を得た。水性分散液(G)のメジアン径は0.09μmであった。
水性分散液(G)の成膜性、耐1液性を、実施例1と同様にして評価したところ、実施例1と同等の塗膜形成及び耐1液性を示した。結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例1の水性分散液(a)100gに、カルボン酸型イオン交換樹脂IRC76(オルガノ(株)製)12gを加え、2時間撹拌した後、1夜静置した。
その後、イオン交換樹脂を濾別して得た液に、クエン酸トリエチル7gをホモミキサーで撹拌しながら添加し、セルロース誘導体水性分散液(H)を得た。水性分散液(H)のメジアン径は0.60μmであった。
水性分散液(H)の成膜性、耐1液性を、実施例1と同様にして評価したところ、実施例1の塗膜に比べて、光沢の点でやや劣るものの同等の塗膜を形成し、また、耐1液性試験で塗膜の分散は認められなかったものの、実施例1に比較して膜がやや白濁した。結果を表1に示す。
(実施例9)
エタノール140g、水60g中に、実施例1で使用したカルボキシメチルエチルセルロース60gを溶かして溶液とした。次いでホモミキサーを用いて、12000rpmで撹拌しながら水酸化ナトリウム(50%濃度)を2g(カルボキシメチルエチルセルロース1g当たり0.42ミリ当量であり、カルボン酸の20モル%が塩を形成する量に相当する)添加し、10分撹拌後、水400gを同様に撹拌しながら撹拌下、90分で滴下後、さらに2時間撹拌しセルロース誘導体粒子を析出させた。この分散液を三口フラスコに入れ、スリーワンモーターで撹拌しながら、13kPa、40℃でエタノール及び水を留去し、固形分濃度20%の処理前水性分散液(i)を得た。水性分散液(i)のメジアン径は0.52μmであった。
水性分散液(i)100gをホモミキサーで4000rpmで撹拌しながら、グリセリンカプリル酸エステル7gを添加した後、さらに2%クエン酸水溶液49g(カルボキシメチルエチルセルロース1gに対して0.61ミリ当量であり、アルカリ添加当量に対して、1.5倍当量に相当)を添加し、セルロース誘導体水性分散液(I)を得た。水性分散液(I)のメジアン径は0.50μmであった。
水性分散液(I)の成膜性、耐1液性を、実施例1と同様にして評価したところ、実施例1の塗膜に比べて、光沢の点でやや劣るものの同等の塗膜を形成し、また、耐1液性試験で塗膜の分散は認められなかったものの、実施例1に比較して膜がやや白濁した。結果を表1に示す。
(実施例10)
水酸化ナトリウム(50%濃度)の量を1g(カルボキシメチルエチルセルロース1g当たり0.21ミリ当量であり、カルボン酸の10モル%が塩を形成する量に相当する)とした以外は、実施例9と同様の操作を行い、処理前水性分散液(j)を得た。水性分散液(j)のメジアン径は0.97μmであった。水性分散液(j)100gに2%クエン酸水溶液を25g(カルボキシメチルエチルセルロース1gに対して0.30ミリ当量であり、アルカリ添加当量に対して、1.4倍当量に相当)使用する以外は、実施例9と同様の操作を行い、セルロース誘導体水性分散液(J)を得た。水性分散液(J)のメジアン径は0.96μmであった。
水性分散液(J)の成膜性、耐1液性を、実施例1と同様にして評価したところ、実施例1の塗膜に比べて、透明感、光沢の点でやや劣るものの同等の塗膜を形成し、耐1液性試験で塗膜の分散は認められなかったものの、実施例1に比較して膜が白濁した。結果を表1に示す。
(実施例11)
実施例1の水性分散液(a)100gに添加する2%クエン酸水溶液の量を117g(カルボキシメチルエチルセルロース1gに対して1.80ミリ当量であり、アルカリ添加当量に対して、3.6倍当量に相当)とした以外は、実施例1と同様に操作し、セルロース誘導体水性分散液(K)を得た。水性分散液(K)のメジアン径は0.20μmであった。
水性分散液(K)の成膜性、耐1液性を、実施例1と同様にして評価したところ、実施例1と同等の塗膜形成及び耐1液性を示した。結果を表1に示す。
(実施例12)
実施例1の水性分散液(a)100gに添加する2%クエン酸水溶液の量を140g(カルボキシメチルエチルセルロース1gに対して2.13ミリ当量であり、アルカリ添加当量に対して、4.3倍当量に相当)とした以外は、実施例1と同様に操作し、セルロース誘導体水性分散液(L)を得た。水性分散液(L)のメジアン径は0.34μmであった。
水性分散液(L)の成膜性、耐1液性を、実施例1と同様にして評価したところ、実施例1の塗膜に比べて、同等の塗膜を形成し、耐1液性試験で塗膜の分散は認められなかったものの、実施例1に比較して膜がやや白濁した。結果を表1に示す。
(実施例13)
実施例1の水性分散液(a)100gに、2%コハク酸水溶液51g(カルボキシメチルエチルセルロース1gに対して0.5ミリ当量であり、アルカリ添加当量に対して、1.7倍当量に相当)を添加した以外は、実施例1と同様に操作し、セルロース誘導体水溶性分散液(M)を得た。水性分散液(M)のメジアン径は0.17μmであった。
水性分散液(M)の成膜性、耐1液性を、実施例1と同様にして評価したところ、実施例1と同等の塗膜形成及び耐1液性を示した。結果を表1に示す。
(実施例14)
結晶セルロース「アビセル」PH−101(旭化成(株)製)/100メッシュ乳糖(DMV社製)/アスピリン(保栄薬工(株)製)/ステアリン酸マグネシウム(太平化学(株)製)を30/30/40/0.5の質量比で混合した後、ロータリー打錠機を用いて、直径8mm、質量250mg、錠剤硬度9kgの錠剤に成形した。
錠剤400gを錠剤用フィルムコーティング装置ハイコーターミニ(フロイント産業(株)製)に仕込み、容器回転速度10rpm、エア温度80℃の条件で、水性分散液(A)、(C)〜(J)、(M)をそれぞれ2g/minで噴霧しながら、被膜量が錠剤質量の5%になるようにコーティングを実施した。続いて、80℃の熱風乾燥機で1時間処理して、腸溶性コーティング錠剤を得た。
それぞれのコーティング錠剤6個について、第1液崩壊試験を2時間行ったが、崩壊などの被膜損傷は観察されなかった。また、別途、それぞれのコーティング錠剤6個について、第2液崩壊試験崩壊試験を行ったところ、錠剤は全て1時間以内に崩壊した。以上のように、いずれのコーティング錠剤も腸溶性錠剤として機能した。
(実施例15)
核粒子セルフィアCP−305(旭化成(株)製)の表面にリボフラビン(三菱東京製薬(株)製)を2wt%担持させた素顆粒500gを顆粒コーティング装置マルチプレックスMP−01((株)パウレック社製)に仕込み、回転板回転数400rpm、給気温度65℃の条件で、水性分散液(A)を13g/minの速度で噴霧し、素顆粒に対して20wt%になるまでコーティングを行った。続いて、熱風乾燥機で40℃で30分間予備乾燥を行った後、80℃で1時間処理して、腸溶性コーティング顆粒を得た。
コーティング顆粒について、第1液溶出試験を2時間実施したが、ほとんど溶出は見られなかった。また、別途コーティング顆粒について、第2液溶出試験を行ったところ、速やかな溶出を示した。以上のように、このコーティング顆粒は腸溶性顆粒として機能した。
(比較例1)
実施例1の水性分酸液(a)の調製において水酸化ナトリウムを使用しなかった他は、実施例1と全く同様に操作を行ったが、水相の分離がみられるとともに、メジアン径が8μmと大きく、良好な水性分散液は得られなかった。
この水性分散液について、実施例1と同様に塗膜試験を行ったが、良好な塗膜は形成されなかった。結果を表2に示す。
(比較例2)
実施例1において、水酸化ナトリウムの量を4.5g(カルボキシメチルエチルセルロース1g当たり1.4ミリ当量であり、カルボン酸の70モル%が塩を形成する量に相当する)とした以外は、実施例1と同様の操作を行ったが、増粘した白いゲル状物となってしまい、良好な水性分散液を得られなかった。この水性分散液のメジアン径は7μmであった。
この水性分散液について、実施例1と同様に塗膜試験を行ったが、良好な塗膜は形成されなかった。結果を表2に示す。
(比較例3)
実施例1で得られた水性分散液(a)100gをホモミキサーで4000rpmで撹拌しながら、クエン酸トリエチル10gを添加し、水性分散液(N)(特開平5−125224号公報に準じた製法)を得た。水性分散液(N)のメジアン径は0.12μmであった。
水性分散液(N)についても、実施例1と同様に塗膜試験を行ったところ、ほぼ同等の塗膜形成は観察されたが、この塗膜を1液に漬け、1分間超音波処理をしたところ、塗膜が一部分散する様子が観察され、耐1液性が劣っていた。結果を表2に示す。
(比較例4)
実施例9において水酸化ナトリウムを使用しなかった他は、実施例9と全く同様に操作を行ったが、水相の分離がみられるとともに、メジアン径が5μmと大きく、良好な水性分散液は得られなかった。この分散液について、塗膜試験を行ったが、良好な塗膜は形成されなかった。結果を表2に示す。
(比較例5)
実施例9において、クエン酸を添加しなかった他は、実施例9と全く同様に操作を行って、水性分散液(O)を得た(特開2000−80048号公報に準じた製法)。水性分散液(O)のメジアン径は0.54μmであった。
水性分散液(O)についても、実施例1と同様に塗膜試験を行ったところ、光沢の点でやや劣るもののほぼ同等の塗膜形成は観察されたが、この塗膜を1液に漬け、1分間超音波処理をしたところ、塗膜が一部分散する様子が観察され、耐1液性が劣っていた。結果を表2に示す。
(比較例6)
比較例3の水性組成物を用いて、実施例14と同様の操作を行い、コーティング錠剤を得た。このコーティング錠剤について、実施例14と同様に、第1液崩壊試験を実施したところ、6錠の内、5錠が2時間以内で崩壊した。
(比較例7)
比較例5の水性組成物を用いて、実施例14と同様の操作を行い、コーティング錠剤を得た。このコーティング錠剤について、実施例14と同様に、第1液崩壊試験を実施したところ、6錠とも2時間以内で崩壊した。
産業上の利用可能性
本発明により得られた腸溶性セルロース誘導体水性分散液は、分散安定性及び被膜形成性、耐1液性に優れている。よって、医薬品製剤にコーティング剤として応用すると、従来の腸溶性セルロース誘導体水系ラテックスと比較して、腸溶性が良好となる。
Claims (7)
- カルボキシル基を有するセルロース誘導体を有機溶媒に溶解して溶液を得、カルボキシル基の1〜65モル%に相当するアルカリの存在下で、該溶液と水とを分散して分散体を得、該分散体から有機溶媒を除去して処理前水性分散液を得、該水性分散液から用いたアルカリの一部又は全部を除くことからなる、セルロース誘導体水性分散液の製造方法。
- 有機溶媒が水に混和しない有機溶媒である、請求項1記載の方法。
- 酸を添加することによりアルカリの一部又は全部を除く、請求項1又は2に記載の方法。
- 添加する酸が有機酸である、請求項3記載の方法。
- 用いたアルカリの6倍当量以下の有機酸を添加する、請求項4記載の方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法により得られる、セルロース誘導体水性分散液。
- 請求項6記載のセルロース誘導体水性分散液をフィルムコーティング剤として用いる、医薬品被覆製剤。
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