JP3868309B2 - インクジェット記録用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種のインクジェット記録方式の機器に使用される記録用シート材料に関するもので、更に詳しくは、インクジェット記録用シートのインク受容層に使用することにより、印字濃度、インク吸収性、画像保存性等の画像記録品位及び色安定性に優れた効果を発揮するインクジェット記録用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンターは、記録の鮮明さ、音の静かさ、カラー化の容易さ等の特徴を有するため、近年その普及は益々増大している。
インクジェットプリンターは、インクの乾燥によるジェットノズルの詰まりを防止するため、乾燥しにくいインクを使用する必要がある。この特性を有するインクとして一般には、結着剤、染料、溶媒、添加剤等を水に溶解又は分散した水溶性のインクが使用されている。このインクジェット記録方式の特長を有効に反映する記録用媒体として、主にパルプを抄造してなる紙等の基材表面に、水性インクを十分に吸収しながらも画像を鮮明とする特性を持ったインク受容層が積層されたものが提供されている。このインク受容層は、一般に、シリカに代表される顔料をインク受容剤とし、この顔料をカルボキシル基変性PVA(ポリビニルアルコール)等のバインダー樹脂中に分散させた塗工液を、基材表面に塗布することにより積層される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、インクジェットプリンターは安価となり、その鮮明性や色彩性が身近なものになるに従い、色校正(例えば、製版段階での試し刷り)等のプロフェッショナルユースに使用されることが多くなってきている。このような場合には、印字濃度、インク吸収性、画像保存性等の画像記録品位は勿論のこと、記録後の数時間乃至数十時間における色調変化が少ないことすなわち色安定性に対する要求レベルが高くなる。従って、これら画像の特性に対する要求を十分に満足することが、インクジェット記録用シートの用途を拡大する上で必須条件となっているのが現状である。すなわち、本発明は上記印字濃度、インク吸収性、画像保存性等の画像記録品位及び色安定性といった諸特性がいずれも高いレベルで発揮されるインクジェット記録用シートを提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を解決するために鋭意検討の結果なされたもので、支持体上に、インクジェット記録用シートのインク受容層に使用するバインダ樹脂について、種々の検討を重ねた結果、特定の条件で合成し、調製した共重合体を含む樹脂組成物をインクジェット記録用シートのインク受容層に顔料とともに使用することによって、極めて効果的に、印字濃度、インク吸収性、画像保存性等の画像記録品位に優れ、かつ色安定性の良好なインクジェット記録用シートを得ることに成功し、本発明を生み出したものである。
【0005】
そして、その概要は以下に記載のとおりである。
請求項1の発明は、基材上に、少なくとも顔料とバインダー樹脂とを含有するインク受容層が塗工されてなるインクジェット記録用シートであって、該インク受容層に少なくともアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アクリルアミド及びN−ビニルピロリドンの3成分と、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの少なくともいずれかもしくは両方をモノマー成分とした共重合体を含有することを特徴とするインクジェット記録用シートであり、請求項2の発明は、前記共重合体におけるN−ビニルピロリドンの含有量は、10〜60重量%であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用シートにして、請求項3の発明は、前記インク受容層中のバインダー樹脂と顔料との配合割合を重量比で5:95〜50:50としたことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用シートである。
【0006】
なお、本発明でいう色安定性とは、記録直後の画像における色のL、a、bの値が時間経過によって変動しない特性、すなわち目標とする色のL、a、bの値に最短時間で到達して安定している特性であり、具体的には、記録直後の色と記録してからの時間経過後の色差ΔEが時間経過によって拡大しない特性である。含有させる色安定性向上成分としては、インク受容層に少なくともアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アクリルアミド及びN−ビニルピロリドンの3成分と、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの少なくともいずれかもしくは両方が含有されているモノマー成分を共重合させた共重合体を含有することを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、好適な実施の形態について説明する。
本発明のインクジェット記録用シートは、基材上にインク受容層を塗布等の積層手段により設けてなる層構成であり、インク受容層は2層あるいは3層以上であってもよい。インク受容層の最表面は、鏡面光沢度を調整して所望の光沢度を有するインク受容層、つまり光沢度調整層であってもよい。この層は、塗工方法、乾燥方法、組成等によって、無光沢から強光沢までの任意の光沢度に調整することができる。なお、インク受容層が複数層からなる場合は、少なくとも何れか1層に本発明に於ける共重合体が含有されていればよいが、各層に含有されていることにより優れた色安定性が得られて好ましい。
【0008】
以下、基材及びインク受容層を構成する材料について説明する。
(1)基材
本発明に用いられるインク受容層が塗設される基材は、LBKP及びNBKP等の化学パルプ、GP,PGW,RMP,TMP,CTMP,CMP,CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ、等の木材パルプを主成分として、顔料、バインダー及びサイズ剤や定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の従来より紙に使用されている各種添加剤を適宜用いて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤ抄紙機等の各種装置で製造された原紙、さらに原紙に、澱粉、ポリビニルアルコール等をサイズプレスやゲートロールコーター等によりアンカーコート層を設けた原紙や、それらの上にコート層を設けたアート紙、コート紙、キャストコート紙等の塗工紙も含まれる。このような原紙及び塗工紙にそのままインク受容層を設けてもよいし、平坦化をコントロールする目的で、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置を使用してもよい。
【0009】
また、基材としては、上記原紙上にラミネート法によりポリオレフィン樹脂層を設けてもよいし、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリウレタン等の合成樹脂やこれらの混合物のフィルム材や、これらの合成樹脂を繊維化して形成したシート材も用いることができる。
【0010】
(2)インク受容層
本発明におけるインク受容層は、顔料とバインダー樹脂を主成分とするものであり、該バインダー樹脂として少なくとも特定のモノマー成分からなる共重合体を用いることを特徴とする。
【0011】
(a)顔料
本発明に用おけるインク受容層に用いられる顔料は、無機顔料及び有機顔料を適宜選択して1種以上用いることができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、尿素樹脂、メラミン樹脂等の樹脂粒子である有機顔料が挙げられる。
【0012】
上記の中でもインク受容層に主成分として含有する顔料としては、インクジェットインクの乾燥性や吸収性等が優れていることから、多孔性無機顔料が好ましく、多孔性合成非晶質シリカ、多孔質炭酸マグネシウム、多孔質アルミナ等が挙げられる。これらの中で、本発明では、印刷品質と保存安定性(耐水性、耐磨耗性、耐光性、耐環境ガス性、室内保存性、直射日光に対する保存性)の両方を満足する、比表面積200〜600g/m2程度の沈降タイプ及びゲルタイプの多孔性非晶質シリカを使用することが好適である。表層側のインク受容層を光沢度調整層とする場合には、顔料としてコロイダルシリカ又はコロイダルアルミナを用いることが最も好適である。
【0013】
(b)バインダー樹脂
本発明に用おけるインク受容層は、そのバインダー樹脂として少なくとも特定のモノマー組成を有する共重合体を使用するものである。該共重合体は、従来からインク受容層のバインダー樹脂として使用されている各種の水溶性樹脂、水分散性樹脂等と共に使用されることが好ましい。この場合の該共重合体の含有量は、良好なインクジェット記録特性と、記録画像の優れた保存安定性及び色安定性が得られることから、インク受容層のバインダー樹脂全体の5重量%以上、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。なお、最表層としての光沢度調整層に於いてコロイダルシリカやコロイダルアルミナと共に用いる場合は、バインダー樹脂として該共重合体を単独で使用してもよい。
【0014】
(b−1)共重合体のモノマー成分
共重合体の水溶性及び透明性を付与することにより、良好なインク吸収性と印字濃度の向上に効果を有するアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、ジメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0015】
これらの化合物に於いては、分子量が200〜2000のものが好ましい。ポリエチレングリコール部位の分子量が2000より大きくなると、合成した共重合体の水溶性が悪化しワックス状となるためインクの吸収性が悪くなったり、画像の鮮明性に影響を及ぼしてしまう。また、この分子量が500より小さいと共重合体自身の強度が弱くなり、層強度の低下を生じるおそれがあるため、分子量500〜1500のものがより好ましい。よって、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、特に、ジメトキシポリエチレングリコール#1000(メタ)アクリレート、ジエトキシポリエチレングリコール#1000(メタ)アクリレート、ジプロポキシポリエチレングリコール#1000(メタ)アクリレートが最適である。
【0016】
共重合体におけるモノマー成分であるアクリルアミドは、塗料の安定性に寄与するもので、均一な塗膜の形成に効果を有するものである。アクリルアミドとしては、その分子中の水素がアルキル基等の置換基で置換されている誘導体であってもよい。
また、N−ビニルピロリドンは色安定性の向上効果を有するものであり、共重合体を形成する他のモノマー成分と組合わせることによって、本発明の優れた効果、すなわち、良好なインクジェット記録特性と記録画像の保存安定性が得られるとともに、優れた色安定性が達成される。N−ビニルピロリドンとしては、その分子中の水素がアルキル基等の置換基で置換されている誘導体であってもよい。
【0017】
また、同様に共重合体の透明性を高め、鮮明で高い印字濃度が得られるという効果を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、1−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。これらの化合物の中で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが水溶性の度合い及び透明性の点で最も好適である。
【0018】
また、記録画像の劣化の防止、特に高温高湿下に於ける記録画像の変褪色防止に効果を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘプチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基が挙げられるが、中でもシクロヘキシル基であることが好ましい。
【0019】
本発明における共重合体はアクリルアミド、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びN−ビニルピロリドンの3成分とともにシクロアルキル(メタ)アクリルレートと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの5種類のモノマー成分からなる共重合体であることが特に好ましい。その際、本発明の目的を十分達成するための各共重合成分の共重合比は、N−ビニルピロリドンが10〜60重量%、好ましくは25〜55重量%、更に好ましくは25〜45重量%、アクリルアミドが2〜7重量%が好ましく、更には3〜5重量%、最も好適なのは3.5〜4.5重量%、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが5〜65重量%、更には7〜60重量%、最も好適なのは20〜45重量%である。シクロアルキル(メタ)アクリレートが3〜25重量%、更には5〜20重量%、最も好ましくは5〜15重量%が好適である。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは5〜55重量%、最も好適には20〜40重量%である。
【0020】
(b−2)共重合体の調製
共重合体の調製は、一般的な重合装置を用いて行うことができ、例えば各々のモノマー成分を重合溶媒に溶解し、ここに重合開始剤を添加し、60〜100℃、好ましくは80〜90℃に加熱することにより、重量平均分子量が数千〜100000、好ましくは10000〜20000の共重合体を調製する。加熱温度が低過ぎる場合には、重量平均分子量が非常に大きくなり、インクの吸収性に悪影響を及ぼし、高過ぎる場合には、正規の重合反応以外の副反応が進行してしまい、副生成物が多く生じてしまう。
【0021】
前記重合溶媒としては、水、アルコール、水溶性ケトン及びこれらの混合溶媒が挙げられ、水/アルコールの混合溶媒が好ましく、特に水/イソプロパノールが好適である。また、これらの混合比は、水/アルコールの重量比で、4/1〜1/1が好ましく、更には2/1がより好適である。
【0022】
前記重合開始剤としては、一般にビニル系重合体の製造に用いられているラジカル重合開始剤を使用することができる。具体的には、2,2'−アゾビス−イソブチルニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルブチルニトリル、1,1'−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、2,2'−アゾビス−(2−アミノプロパン)−2塩酸塩等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、琥珀酸パーオキサイド等の過酸化物系開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤の半減期温度は、60〜90℃が好ましく、更には65〜80℃が好適である。
【0023】
(b−3)共重合体とともに使用されるバインダー樹脂
インク受容層に含有されるバインダー樹脂として、本発明の共重合体と共に使用できる水溶性樹脂及び水分散性樹脂としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル変性やシリル変性等の変性ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白等;無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス;アクリル系エステル及びメタアクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体ラテックス;エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス;メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂等の水性接着剤;ポリメチルメタアクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系接着剤が挙げられ、その一種又はそれ以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
(c)添加剤
インク受容層には、画像の耐光性及びその他諸特性を向上させるために、水溶性の2価以上の金属塩化物を添加することができる。具体的には、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化スズ、塩化鉛、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム、硝酸カルシウム等が挙げられる。これらの金属塩の含有量は、インク受容層の総固形分に対して1.0〜40.0重量%が好ましく、より好ましくは5.0〜20.0重量%が好適である。
【0025】
また、その他添加剤として、カチオン性染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤等を必要に応じて適宜配合することもできる。
【0026】
(d)インク受容層の形成
インク受容層の形成は、層を形成するための材料を水または適当な溶媒中に溶解もしくは分散させて調整した塗工液を、各種ブレードコータ、ロールコータ、エアーナイフコータ、バーコータ、ロッドブレードコータ、ショートドウエルコータ、サイズプレス等の各種装置をオンマシンあるいはオフマシンで適宜使用して、支持体上に塗布して形成する。
【0027】
インク受容層の塗布量としては、5〜40g/m2、好ましくは5〜30g/m2である。また、2層以上積層して設けることもでき、例えば、基材上に第1インク受容層を積層し、この第1インク受容層の上に第2インク受容層を積層する場合、第1インク受容層の塗布量は5〜30g/m2が好ましく、特に5〜20g/m2がより好ましい。また、第2インク受容層の塗布量は5〜15g/m2が好ましく、特に5〜10g/m2がより好ましい。かかる範囲より塗布量が少ないと、インク吸収性や定着性が十分得られない場合があり、またかかる範囲より塗布量が多いと、生産性の低下やコストアップを招く。特に、第2インク受容層の塗布量が15g/m2を超えて多いと、第2インク受容層中をインクが通過することが困難になり、滲みを生じて画像の鮮明性が損なわれる場合がある。このように積層するインク受容層の数によってインク受容層の塗布量をコントロールすることが好ましい。また、インク受容層の塗工後にはマシンカレンダー、TGカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、等のカレンダーを用いて仕上げてもよい。なお、本発明に於ける共重合体を含有するインク受容層に於いては、バインダーと顔料の配合割合が5:95〜50:50が好ましく、さらに20:80〜35:65が好適である。また、インク受容層が光沢度調整層である場合は5:95〜30:70、特に5:95〜20:80が好ましい。
【0028】
【実施例】
次に、本発明に基づく実施例と、比較例とを示し、本発明の効果を更に明らかにする。
1.本発明の実施例及び比較例に用いる共重合体の調製
実施例及び比較例に用いる共重合体を表1に示したモノマー組成及び重合条件により以下の溶液重合法に従い調製した。
(1):1リットルの4つ口フラスコに重合用溶媒(水/イソプロピルアルコール)を仕込み、攪拌装置、温度計、冷却管、滴下ビンをセットして反応温度まで昇温した。
(2):表1に示す組成の共重合成分を重合開始剤(共重合成分に対して5重量%)と共に溶解用溶媒に混合し、溶解した。
(3):(1)を攪拌しているところに(2)を2時間かけて連続滴下し、滴下終了後、更に4時間加熱攪拌し反応を行った。
(4):反応終了後、反応混合物を減圧蒸留し、重合触媒を除去して共重合体の固形物を得た。
(5):(4)で得られた共重合体を表1に示した溶解用溶媒によって、表1に示した固形分濃度の樹脂溶液に調整し、インク受容層用塗料に使用する共重合体溶液とした。なお、表1における分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法により測定したものである。
【0029】
【表1】
【0030】
2.諸特性評価用インクジェット記録用紙の作製
本発明の実施例又は比較例の共重合体を用いたインクジェット記録用紙は、いずれも基材を坪量80g/m2の上質紙とし、この基材の片面にインク受容層、第2インク受容層としての光沢度調整層を塗布して積層して設け、インクジェット記録用紙としたものである。塗布量はいずれの層も乾燥後塗布量で10g/m2とした。なお、以下の説明に於いて「部」は「重量割合」を意味するものである。
【0031】
<実施例1〜8及び比較例1〜4>
インク受容層の形成
下記配合のインク受容層の材料を水に溶解・分散し、この塗液を基材の片面に塗布・乾燥することによってインク受容層を設けた。
【0032】
光沢度調整層の形成
次いで、下記配合の材料を水に溶解・分散した塗液を上記インク受容層上に塗布・乾燥することによって光沢度調整層を積層して設けた。
【0033】
<実施例9>
下記配合の材料を水に溶解・分散した塗液を、基材の片面に塗布・乾燥してインク受容層を設けて、光沢度調整層は形成しなかった。
【0034】
<比較例5>
インク受容層及び光沢度調整層の配合を、下記配合に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録紙を作製した。
【0035】
3.作製したインクジェット記録用紙の諸特性評価
上記実施例1〜9及び比較例1〜5のインクジェット記録用紙に、市販のインクジェットプリンター(セイコウーエプソン社製;商品名PM−800C)を使用して、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のカラーパッチやSCID画像を印刷したところ、良好な記録画像が得られた。なお、SCID画像としては、高精細カラーデジタル標準画像でISO/JIS−SCID(JIS X9201−1995に準拠)のN1ポートレート画像及びN3果物かご画像を用いた。これらの画像を用いて、下記に示すような方法で色安定性及び画像保存性の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】
色安定性は、カラーパッチ(ブラックのOD値1.0あるいは0.6)を印字した実施例1〜8及び比較例1〜4のインクジェット記録用紙を温度26℃、相対湿度55%に調温調湿した室内に放置し、安定性の評価試料とした。
調温調湿下で、分光光度計(グレタグマクベス社製:商品名GRETAG SPM50)を用いて測定された印字直後のL,a,bの値と、印字24時間後、48時間後、72時間後の各L,a,bの値とから求められる色差をΔEとし、ΔEの値から安定性を次のように評価した。24時間後、48時間後、72時間後の各ΔEの値の平均値が2未満で、48時間後と72時間後のΔEの値がほぼ一定値となるものを○、ΔEの値の平均値が2〜3で、48時間後と72時間後のΔEの値がほぼ一定値となるものを△、ΔEの平均値が3を超えているか、又はΔEの値が72時間後でも上昇傾向にあるものを×で示した。
【0038】
印字濃度は、分光光度計(グレタグマクベス社製:商品名SPM50)を用いて、各色の反射濃度を測定し、画像印字濃度特性を評価した。測定数値2.00以上を○、1.75〜1.99を△、1.75未満を×で示した。
【0039】
光沢度は、JIS Z8741に規定される測定法に準じて、60°鏡面光沢度を測定した。測定数値50以上を○、40〜49を△、40未満を×で示した。
【0040】
耐光性試験は、キセノンウエザオメータ(アトラス社製:商品名Ci5000)を使用して、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%、340nm紫外線照射強度0.35W/m2の条件で、30kJ/m2の曝露試験を行った。画像の変褪色を分光光度計(グレタグマクベス社製:商品名SPM50)で各色の濃度を測定し、最も濃度の低い色の濃度残存率90%超を○、濃度残存率80%〜90%を△、濃度残存率80%未満を×で評価した。
【0041】
画像耐湿性は、各色を印字した試料を40℃・85%の高温高湿の条件下に3昼夜放置し、各色の濃色化と輪郭の滲みが全くないものを○、若干程度の滲みがあるものを△、濃色化、輪郭の滲みがはっきりと認められるものを×で評価した。
【0042】
耐ガス性試験は、オゾンウエザーメータ(スガ試験機社製:商品名OMS−H)を使用して、オゾン濃度10ppm、温度25℃、湿度60%の条件で24時間曝露試験を行った。画像の変褪色を分光光度計(グレタグマクベス社製:商品名SPM50)で各色の濃度を測定し、最も濃度の低い色の濃度残存率90%超を○、濃度残存率80%〜90%を△、濃度残存率80%未満を×で評価した。
【0043】
インク吸収性はインクジェットプリンターでの混色ブリード及び単色で滲み出しの程度を、SCID画像について目視により次のように評価した。実用上全く問題なく優れているものを○、実用上問題ない程度のものを△、実用上劣っているものを×で評価した。
【0044】
表2によれば、本発明に基づく各実施例のインクジェット記録用紙は、概ね○評価を得ていることから高いレベルを示し、特に印字濃度やインク吸収性等の画像記録品位及び色安定性に優れた特性を有しているのに対して、各比較例のインクジェット記録用紙は、特に色安定性や、耐光性、画像耐湿性、耐環境ガス性等の画像保存性が実施例よりも劣ることが判る。従って、本発明のインク受容層に含有される特定の共重合体が色安定性及び画像保存性の向上に極めて有効であることが立証された。なお、以上は基材に紙を用いた場合について説明したが、紙以外の樹脂シートであってもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、インクジェット記録用紙のインク受容層に、少なくともアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アクリルアミド及びN−ビニルピロリドンの3成分と、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの少なくともいずれかもしくは両方をモノマー成分とした共重合体が含有されていることにより、印字濃度、インク吸収性及び画像保存性等の画像記録品位に優れ、かつ、色安定性が優れているという顕著な効果が達成される。従って、色校正などの用途に使用できるなど、高品質のインクジェット記録が達成され、広範な用途に於いて使用することが可能である。
Claims (3)
- 基材上に、少なくとも顔料とバインダー樹脂とを含有するインク受容層が塗工されてなるインクジェット記録用シートであって、該インク受容層に少なくともアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アクリルアミド及びN−ビニルピロリドンの3成分と、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの少なくともいずれかもしくは両方をモノマー成分とした共重合体を含有することを特徴とするインクジェット記録用シート。
- 前記共重合体におけるN−ビニルピロリドンの含有量は、10〜60重量%であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記インク受容層中のバインダー樹脂と顔料との配合割合を重量比で5:95〜50:50としたことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用シート。
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