JP3867536B2 - 頭部保護エアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の窓周縁の上縁側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時、窓を覆うように、下方へ展開膨張するエアバッグ、を備えた頭部保護エアバッグ装置に関し、特に、展開膨張完了時のエアバッグの保護エリアを広くすることができる頭部保護エアバッグ装置に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、この種の頭部保護エアバッグ装置としては、車両の窓周縁の上縁側に折り畳まれて収納されるエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備えて構成されていた(特開2000−335356号公報等参照)。
【0003】
そして、エアバッグは、インフレーターからの膨張用ガスの流入時、窓を覆うように、下方へ展開膨張していた。
【0004】
しかし、エアバッグは、平らに展開した状態に比べて、内部に膨張用ガスが流入されて膨張すると、実質的な前後方向の寸法が減少することが避けられず、保護エリアを大きく確保できない課題があった。
【0005】
特に、エアバッグにおける膨張用ガスを流入させて展開膨張する部位が、上下方向の棒状に膨張する縦膨張部(縦セル)を複数備える場合には、それらの縦膨張部が膨張して、平らに展開させた状態より、エアバッグの前後方向の幅寸法を、縮小させ易かった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張完了時のエアバッグの保護エアリアを、極力大きく確保することができる頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、車両の窓周縁の上縁側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時、前記窓を覆うように、下方へ展開膨張するエアバッグを備え、
該エアバッグが、膨張用ガスを流入させて展開膨張する膨張流入部を備えて構成される頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグの前後方向の端部における前記膨張流入部の部位が、車外側に折り返された状態で、前記窓周縁の上縁側に収納される構成とするとともに、
前記エアバッグにおける前記折り返し部位に、前記膨張流入部における上下方向に棒状に膨張する端側縦膨張部が配設され、
前記折り返しの折目が、前記端側縦膨張部を平らに展開させた際における前記端側縦膨張部の前後方向の略中間位置に、略上下方向に沿って、配置され、
前記端側縦膨張部の上方側における前記エアバッグの前後方向の端側に、車体側に取付可能な端側取付部が配設され、
該端側取付部が、前記端側縦膨張部を折り返した状態で、前記端側縦膨張部の車外側の位置で、前記車体側に取り付けられていることを特徴とする
【0010】
また、前記膨張流入部における車外側に折り返される部位は、上縁を、隣接する前記膨張流入部の部位の上縁より、下方に配置させて、構成することが望ましい。
【0011】
【発明の効果】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグ内に膨張用ガスが流入されれば、エアバッグは、窓周縁の上縁側から下方へ展開膨張する。そして、エアバッグの膨張流入部における車外側への折り返し部位も、膨張用ガスを流入させて、折り返しを解消しようと膨張する。すなわち、折り返し部位が、エアバッグの前後方向の端側で、前後方向の外方へ突出して、膨張を完了させることとなり、折り返し部位を設けていない場合に比べて、エアバッグの下縁側の保護エアリアを広げることが可能となる。
【0012】
したがって、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、膨張完了時のエアバッグの保護エアリアを、極力、大きく確保することができる。
【0013】
勿論、膨張流入部の折り返し部位が、車外側に折り返されているため、折りを解消させる際に、折り返し部位は、車内側へ突出し難く、乗員と不要に干渉する虞れも生じない。
【0014】
そして、展開膨張を完了させたエアバッグが、膨張流入部の各部位を、前後方向に収縮させても、本発明に係るエアバッグでは、展開膨張を完了させた膨張流入部の前後方向の長さ寸法を、極力、長く確保することができる。そのため、窓周縁の後方側の縦縁近傍に、エアバッグで覆う窓に対して略直交するように車内側に延びる後壁部を有するシングルキャブ車・ダブルキャブ車等のピックアップ車両等に、本発明に係るエアバッグを搭載する際、後壁部側に収納させるエアバッグの量を抑えて、ピックアップ車両等における窓周縁の後方側の縦縁を、エアバッグの膨張流入部により、広く覆うことが可能となる。
【0015】
そして、請求項2に記載するように、エアバッグにおける折り返しの部位に、膨張流入部における上下方向に棒状に膨張する端側縦膨張部が配設されるとともに、折り返しの折目を、端側縦膨張部を平らに展開させた際における端側縦膨張部の前後方向の略中間位置に、略上下方向に沿って、配置させる場合には、つぎのような作用・効果を得ることができる。すなわち、エアバッグが窓周縁の上縁側から下方へ展開膨張する際、折り返された端側縦膨張部は、端側縦膨張部を全て車外側へ折り返す場合に比べて、端側縦膨張部内の折目の領域が、端側縦膨張部の上下方向の略全長分に配置されるため、折目を越えて膨張用ガスが流れやすく、下端まで円滑に膨張用ガスを流入させることができる。その結果、端側縦膨張部は、確実に折り返しを解消して、膨張流入部の保護エリアを広げることが可能となる。
【0016】
ちなみに、端側縦膨張部を全て車外側に折り返す場合には、その端側縦膨張部内における折目の領域が短くなって、折り返された端側縦膨張部への膨張用ガスの流入が円滑に行われず、端側縦膨張部は、膨張した他の部位の膨張流入部と車体との間に挟まって、保護エリアを広げるように、膨張しない虞れが生ずる。
【0017】
また、請求項3に記載するように、端側縦膨張部の上方側におけるエアバッグの前後方向の端側に、車体側に取付可能な端側取付部を配設させ、端側取付部を、端側縦膨張部を折り返した状態で、端側縦膨張部の車外側の位置で、車体側に取り付ける場合には、つぎのような作用・効果を得ることができる。
【0018】
すなわち、折り返した端側縦膨張部では、上方の端側取付部が車体側に固定されているため、上部側の折り返しの解消が規制された状態で、下部側の折り返しが解消される態様となり、膨張流入部の他の部位より、上下方向に棒状に膨らんだ端側縦膨張部の剛性が向上し、エアバッグの下縁側の車内側や車外側への揺動を規制することが可能となる。その結果、乗員がエアバッグを車外側へ押圧しても、エアバッグの車外側への移動が、極力、抑えられて、エアバッグの乗員拘束性能を向上させることが可能となる。
【0019】
さらに、請求項4に記載するように、膨張流入部における車外側に折り返される部位が、上縁を、隣接する膨張流入部の部位の上縁より、下方に配置させて、構成されていれば、膨張用ガスの流入時、折り返し部位側の上縁側の膨張部位が、折目を挟んで隣接する膨張部位の上縁側の部位に対して下方にずれ、その隣接膨張部位と重なることが抑えられることから、折り返し部位付近の膨張部位の上部側が、薄い状態で、収納側の窓周縁の上縁側から、容易に、下方へ展開することが可能となって、無理な膨張を抑えて、その後の折り返し部位側の膨張を、円滑にさせることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1に示す第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1は、ダブルキャブ車Vに搭載されるものであり、エアバッグ13、インフレーター34、及び、エアバッグカバー11、を備えて構成されている。
【0022】
なお、ダブルキャブ車Vは、乗員が着座する前席・後席シートの側方に配置されて車両側面VSに位置するサイドウインドとしての窓SW(SW1・SW2)を備えるとともに、窓SW2の後方側で窓SW2と略直交するように配置される後壁部7を備えて構成されている。さらに、このダブルキャブ車Vは、窓SW1の前方側でルーフサイドレール部RRから斜め下方に延びて、略上下方向に配設されるフロントピラー部FP、窓SW1・SW2間でルーフサイドレール部RRから下方に延びるセンターピラー部CP、及び、窓SW2と後壁部7との間でルーフサイドレール部RRから下方に延びるリヤピラー部RP、を備えて構成されている。なお、窓SW1は、前席の側方に配置されて、実施形態の場合には、フロントドアの窓としており、窓SW2は、後席の側方に配置されて、実施形態の場合には、リヤドアの窓としている。
【0023】
各ピラー部FP・CP・RPには、それぞれ、車体(ボディ1)側の板金製のインナパネル1aを覆うように、合成樹脂製のガーニッシュ3・5・6が配設されている。また、ルーフサイドレール部RRにおいても、車内側では、インナパネル1aを覆うように、合成樹脂製のルーフヘッドライニング4が配設されている。
【0024】
また、後壁部7は、図1に示すように、上部に、リヤウインドRWを配設させて、車体(ボディ1)側の板金製のリヤパネル8と、リヤパネル8の車内側を覆う合成樹脂製のリヤトリム9と、を備えて構成されている。なお、後壁部7の上端側は、天井側から延びるルーフヘッドライニング4に覆われている。
【0025】
そして、エアバッグカバー11は、実施形態の場合、フロントピラーガーニッシュ3とルーフヘッドライニング4との下縁3a・4aから構成されている。エアバッグカバー11は、折り畳まれて収納されたエアバッグ13の車内側を覆うように配設されるとともに、展開膨張時のエアバッグ13を車内側へ突出可能とするために、エアバッグ13に押されて車内側に開くように、構成されている。
【0026】
エアバッグ13は、センターピラー部CPを跨いで、窓SW(SW1・SW2)の車内側の上縁側で折り畳まれて収納され、エアバッグカバー11に覆われている。エアバッグ13は、展開膨張時、図1〜3・5に示すように、窓SW1・SW2とセンターピラー部CP・リヤピラー部RPとの車内側を覆い可能な略長方形の板状としている。なお、実施形態の場合、エアバッグ13の後端側は、図1に示すように、僅かに、後壁部7の上部側に侵入して、ルーフヘッドライニング4に覆われて収納されている。
【0027】
そして、エアバッグ13は、後述する板状部26を除いて、ポリアミド糸やポリエステル糸等を利用した袋織りによって、形成されている。板状部26は、ポリアミド糸やポリエステル糸等の織布から形成されて、後述する周縁部23の前端に縫合されて連結されている。さらに、エアバッグ13は、インフレーター34からの膨張用ガスGを流入させて車内側壁部14aと車外側壁部14bとを離すように膨張するガス流入部14と、膨張用ガスGを流入させない非流入部22と、を備えて構成されている。
【0028】
ガス流入部14は、膨張用ガスGを流入させて窓SW1・SW2とセンターピラー部CP・リヤピラー部RPとの車内側を覆うように展開膨張する膨張流入部15と、供給路部21と、を備えて構成されている。膨張流入部15は、前席側方の窓SW1を覆う前席用部位16と、後席側方の窓SW2を覆う後席用部位17と、を備えて構成されている。前席用・後席用部位16・17は、それぞれ、膨張用ガスGを流入させて上下方向に棒状に膨らむ縦膨張部18(18A・18B・18C・18D・18E・18F・18G)を複数配設させて、構成されている。なお、平らに展開させたエアバッグ13の最後端の端側縦膨張部18Gは、その前後方向の幅寸法の略中間付近で、上下方向に沿った折目Xを付けて、車外側Oに折り返した状態で、他の縦膨張部18とともに、エアバッグ上縁側13aに折り畳まれることとなる(図4のB・C参照)。
【0029】
供給路部21は、前席用・後席用部位16・17における各縦膨張部18の上端と連通するように、エアバッグ13の上縁13a側に位置して、前後方向に延びるように配設されている。そして、供給路部21の前後方向の中間部位には、上方へ円筒状に突出して、インフレーター34と接続させる流入口部21aが配設されている。
【0030】
非流入部22は、ガス流入部14を囲むように、ガス流入部14の周縁に配置される周縁部23と、取付部25と、板状部26・27・28と、を備えて構成されている。さらに、非流入部22は、エアバッグ13の下縁13b側における周縁部23から上方に延びて、各縦膨張部18を前後方向で区画する複数の厚さ規制部24を備えている。
【0031】
取付部25(25A・25B・25C・25D・25E・25F・25G)は、図2に示すように、エアバッグ13の上縁13a側から上方に延びるように、複数(実施形態では、7個)配設されている。各取付部25には、取付ボルト32(図1・6参照)を挿通させる取付孔25aが設けられている。各取付部25は、当て板31(図1・6参照)が取り付けられ、ボルト32を使用して、ボディ1側のインナパネル1aに固定されている。なお、エアバッグ13の前端側の取付部25Aは、板状部26の前端に配設されており、フロントピラー部FPの下部側のインナパネル1aに、固定されることとなり、他の取付部25B・25C・25D・25E・25F・25Gは、窓SW1・SW2周縁の上縁側におけるルーフサイドレール部RRのインナパネル1aに固定されている。
【0032】
また、最後端の端側取付部25Gは、エアバッグ13を平らに展開させた状態で、端側縦膨張部18Gより後方側に配置されて、さらに、その端側取付部25Gの直前の取付部25Fは、最後端の端側縦膨張部18Gにおける前縁側の上方付近に、配置されている。そして、端側取付部25Gの直前の取付部25Fは、折り返された端側取付部25Gとともに、リヤピラー部RPの上方における後壁部7側に、配置されることとなる(図1参照)。
【0033】
すなわち、エアバッグ13を平らに展開させた状態での後端側の端側取付部25Gは、車両Vへの搭載時には、端側縦膨張部18Gが車外側Oに折り返された際、相互の取付孔25aを一致させるように、取付部25Fと重ねられ(図4のB参照)、図6のAに示すように、当て板31と取付ボルト32とを共用して、リヤピラー部RPの上方におけるルーフサイドレール部RRのインナパネル1aに、固定されることとなる。
【0034】
板状部26・27・28は、エアバッグ13の全体形状を確保するとともに、ガス流入部14の容積を少なくして、展開膨張完了までの時間を短縮させるために、配設されている。そして、板状部26は、エアバッグ13の前端側から前方に延びる三角板形状として、先端に取付部25Aを配設させ、取付部25Aをフロントピラー部FPの下部側におけるボディ1側のインナパネル1aに、取付固定させている。板状部27は、略長方形の板状として、膨張流入部15の前席用部位16と後席用部位17との間に、配設されている。
【0035】
板状部28は、エアバッグ13を平らに展開した状態で、図2に示すように、端側取付部25Gを端側縦膨張部18Gより後方側に配置させるように、三角板形状に形成されている。また、この板状部28は、下端28aが、端側縦膨張部18Gの下端18bに連結させるように、配設され、端側縦膨張部18Gの膨張完了時に、端側縦膨張部18Gの下端18bを、車両搭載時の端側取付部25G側となる車外側Oの前方側に牽引する端側牽引材としての役目も果たす。
【0036】
インフレーター34は、図1に示すように、略円柱形状の本体部34aと、本体部34aからの膨張用ガスを下方へ導く供給パイプ34bと、を備えて構成され、供給パイプ34bの下端に、エアバッグ13の供給路部21における流入口部21aの上端を外装させ、クランプ(図符号省略)を利用して、エアバッグ13と連結されている。そして、インフレーター34は、ブラケット35を利用して、センターピラー部CPの上方におけるルーフサイドレール部RRのインナパネル1aに、ルーフヘッドライニング4の下縁4aに覆われて、取付固定されている。
【0037】
第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1の車両Vへの搭載について説明すると、まず、図4のA・Bに示すように、平らに展開させたエアバッグ13の端側取付部25Gを取付部25Fに重ねるように、端側縦膨張部18Gの前後方向の幅寸法の略中間位置に、上下方向に沿った折目Xを付けて、端側縦膨張部18Gを車外側Oに折り返す。ついで、図4のB・Cに示すように、エアバッグ13の下縁13b側を上縁13a側に接近させるように、前後方向に沿った多数の折目Cを付けて、蛇腹折りする。そして、適宜、破断可能な折り崩れ防止用の図示しないテープ材でくるんでおく。
【0038】
その後、各取付部25に、当て板31を取り付ける。また、クランプを利用しつつ、流入口部21aにインフレーター34を連結し、ついで、その周囲に、取付ブラケット35を取り付け、インフレーター34をエアバッグ13に組み付けて、エアバッグ組立体を形成しておく。なお、取付部25Fと端側取付部25Gとは、当て板31を共用することとなる。
【0039】
その後、各取付部25を、取付ボルト32を使用して、インナパネル1aに取付固定するとともに、取付ブラケット35を、ボルトを使用して、インナパネル1aに取付固定すれば、エアバッグ組立体を車両Vのボディ1に取り付けることができる。
【0040】
そして、インフレーター34から延びる図示しないリード線を、所定のエアバッグ作動回路に接続させるとともに、フロントピラー部FPでは、インナパネル1aにフロントピラーガーニッシュ3を取付固定し、ルーフサイドレール部RRでは、インナパネル1aにルーフヘッドライニング4を取付固定し、さらに、センターピラー部CPやリヤピラー部RPのガーニッシュ5・6をボディ1のインナパネル1aに固定すれば、頭部保護エアバッグ装置M1を車両Vに搭載することができる。
【0041】
その後、インフレーター34が作動されれば、膨張用ガスGが、流入口部21aから膨張流入部15の供給路部21内に流入して、図示しないテープ材を破断させ、さらに、各縦膨張部18が展開膨張して、エアバッグ13は、エアバッグカバー11としてのピラーガーニッシュ3やルーフヘッドライニング4の下縁3a・4aを車内側に押して開かせ、図1の二点鎖線や図5・図6Bの実線で示すように、窓SW1・SW2の上縁側から下方へ突出し、エアバッグ13が、窓SW1・SW2やセンターピラー部CP・リヤピラー部RPの車内側を覆うこととなる。
【0042】
この時、エアバッグ13内に膨張用ガスGが流入されれば、エアバッグ13は、膨張流入部15における車外側Oへの折り返し部位19も、膨張用ガスGを流入させて、折り返しを解消しようと膨張する。すなわち、折り返し部位19が、エアバッグ13の前後方向の端側で、前後方向の外方(後方)へ突出して、膨張を完了させることとなり、折り返し部位を設けていない場合に比べて、エアバッグ13の下縁13b側の保護エアリアを広げることが可能となる。
【0043】
なお、第1実施形態の場合には、各縦膨張部18が膨張して、膨張流入部15自体の前後方向の寸法が、非膨張で平らに展開させた状態に比べて、収縮することから、膨張完了後における膨張流入部15の後席用部位17の後縁17a自体は、エアバッグ13の折り畳み時に収納された位置の端Y(図1参照)より、僅かに、前方に位置している。
【0044】
したがって、第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、膨張完了時のエアバッグ13の保護エアリアを、極力、大きく確保することができる。
【0045】
勿論、膨張流入部15の折り返し部位19は、車外側Oに折り返されているため、折りを解消させる際に、車内側Iへ突出し難く、乗員と不要に干渉する虞れも生じない。
【0046】
そして、展開膨張を完了させたエアバッグ13は、膨張流入部15の各縦膨張部18A・18B・18C・18D・18E・18Fが、それぞれ、前後方向に収縮しても、展開膨張を完了させた膨張流入部15の前後方向の長さ寸法は、端側縦膨張部18Gが折り返しを解消して、極力、長く確保することができる。そのため、窓SW(SW1・SW2)周縁の後方側の縦縁となるリヤピラー部RP近傍に、エアバッグ13で覆う窓SWに対して略直交するように車内側に延びる後壁部7を有するダブルキャブ車Vに、第1実施形態のエアバッグ13を搭載する際、後壁部7側に収納させるエアバッグ13の量を抑えて、ダブルキャブ車Vの窓SW周縁の後方側のリヤピラー部RPを、エアバッグ13の膨張流入部15により、広く覆うことが可能となる。
【0047】
そして、第1実施形態のエアバッグ13では、折り返し部位19に、膨張流入部15における上下方向に棒状に膨張する端側縦膨張部18Gが配設されるとともに、折り返しの折目Xを、端側縦膨張部18Gを平らに展開させた際における端側縦膨張部18Gの前後方向の略中間位置に、略上下方向に沿って、配置させている。そのため、エアバッグ13が窓SW(SW1・SW2)周縁の上縁側から下方へ展開膨張する際、折り返された端側縦膨張部18Gは、端側縦膨張部18Gを全て車外側Oへ折り返す場合に比べて、端側縦膨張部18G内の折目Xの領域が、端側縦膨張部18Gの上下方向の略全長分に配置されているため、折目Xを越えて膨張用ガスが折り返し部位19側へ流れやすく、下端18bまで円滑に膨張用ガスを流入させることができる。その結果、端側縦膨張部18Gは、確実に折り返しを解消して、膨張流入部15の保護エリアを広げることが可能となる。
【0048】
また、第1実施形態では、端側縦膨張部18Gの上方側におけるエアバッグ13の前後方向の後端側に、車体(ボディ)1側に取付可能な端側取付部25Gを配設させ、端側取付部25Gを、端側縦膨張部18Gを折り返した状態で、端側縦膨張部18Gの車外側Oの位置で、ボディ1側に取り付けている。
【0049】
そのため、折り返した端側縦膨張部18Gでは、上方の端側取付部25Gが取付部25Fと共締めされてボディ1に固定されているため、図5・7に示すように、上部18a側の折り返しの解消が規制された状態で、下部18b側の折り返しが解消される態様となり、膨張流入部15の他の縦膨張部部位18A・18B・18C・18D・18E・18Fより、上下方向に棒状に膨らんだ端側縦膨張部18Gの剛性が向上し、エアバッグ13の下縁13b側の車内側Iや車外側Oへの揺動を規制することが可能となる。その結果、乗員がエアバッグ13を車外側Oへ押圧しても、エアバッグ13の車外側Oへの移動が、極力、抑えられて、エアバッグ13の乗員拘束性能を向上させることが可能となる。
【0050】
さらに、第1実施形態のエアバッグ13では、展開膨張時、端側縦膨張部18Gの下端18bが、上部側の端側取付部25Gをボディ1に固定させた端側牽引材(板状部)28の引張力F(図5・図6B参照)によって、車外側Oの前方側に牽引される状態となるため、端側縦膨張部18Gの車内側Iへの突出、さらには、その端側縦膨張部18Gに連なる前方側の膨張流入部15の車内側Iへの突出が、抑えられ、極力、乗員との干渉を抑えて、エアバッグ13を展開膨張させることが可能となる。
【0051】
なお、第1実施形態では、端側縦膨張部18Gの上方に配置させた端側取付部25Gを、折り返した端側縦膨張部18Gの車外側Oのボディ1に固定させていても、端側縦膨張部18Gが、膨張流入部15内における膨張用ガスGの下流側に、配設されている。すなわち、第1実施形態のエアバッグ13では、端側縦膨張部18Gから離れた位置(第1実施形態では、エアバッグ13の前後方向の中間付近)に、インフレーター35と接続される流入口部21aを配設させている。そのため、端側縦膨張部18Gが上下方向に展開を完了させる前に、縦膨張部18D等が上下方向に展開を完了させて、エアバッグ13の下縁13b側が下方に展開され、それに引きずられるように、端側縦膨張部18Gが、膨張用ガスGを十分流入させない状態で、下方への展開を完了させることとなる。その結果、折目Xを越えて折り返し部位19側に膨張用ガスGが一層流入し易く、折り返し部位19の車内側Iへの展開が円滑に行われて、その結果、端側縦膨張部18Gは、安定して、膨張を完了させることができる。
【0052】
また、第1実施形態のエアバッグ13では、折り返す端側縦膨張部18Gの上方に、折り返した端側縦膨張部18Gの車外側Oのボディ1側に取り付けるための端側取付部25Gを、配設させた場合を示した。しかし、図8に示すように、端側取付部25Gを配設させないエアバッグ13Aを使用して、端側縦膨張部18Gを車外側Oに折り返して、エアバッグ下縁13bを上縁13a側に折り畳んで、車両Vに搭載してもよい。この場合でも、エアバッグ13Aの膨張完了時には、図9に示すように、端側縦膨張部18Gが、折目Xの折りを解消して、エアバッグ13Aの保護エリアを、極力広くさせることができる。
【0053】
さらに、第1実施形態では、エアバッグ13の折り畳み時、エアバッグ下縁13b側を上縁13a側に接近させるように蛇腹折りする前に、端側縦膨張部18Gを車外側Oに折り返した場合を示した。しかし、先に、エアバッグ下縁13b側を上縁13a側に接近させるように蛇腹折りし、ついで、端側縦膨張部18Gを車外側Oに折り返してもよい。
【0054】
図10〜13に示す第2実施形態の頭部保護エアバッグ装置M2は、エアバッグ13Bの端側縦膨張部18Gの上部18aにおける折り返し部位19側の上縁20aが、端側縦膨張部18Gの上部18aにおける上縁20aに隣接する上縁20bより、下方に位置して、縦膨張部18Fと縦膨張部18Gとを区画する厚さ規制部24Eが、エアバッグ13に比べて、下方に縮むように、短く形成されている。また、エアバッグ13Bは、テンションクロス30を備えて構成されている。これらの点を除いて、エアバッグ13Bは、第1実施形態のエアバッグ13と同様である。そして、頭部保護エアバッグ装置M2は、エアバッグ13Bがエアバッグ13と相違している点を除いて、他のインフレーター34等の部材が、第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1と同様であり、それらの同一の部材・部位には、第1実施形態と同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0055】
第2実施形態のエアバッグ13Bは、上述したように、端側縦膨張部18Gにおける折り返し部19側の上縁20aが、エアバッグ上縁13a側の周縁部23の部位23aを下方に突出させることにより、端側縦膨張部上部18aにおける折目Xを挟んで隣接する上縁20bより、下方に位置している。
【0056】
そして、後端側の規制部24Eは、端側縦膨張部18Gの折り返し部位19側への膨張用ガスGの流入が円滑に行われるように、上縁20aとの間に、他の規制部24とエアバッグ上縁13a側の周縁部23との間の隙間Tと、同様な隙間Tを設けるように、上端24aを下方に下げて、構成されている。
【0057】
テンションクロス30は、エアバッグ13Bの膨張完了時に、前後方向に、一層、強いテンションを生じさせるために、配設されるものであり、ポリアミド糸やポリエステル糸等の織布から形成されて、エアバッグ13Bとともに折り畳み可能としている。テンションクロス30は、窓SWの周縁の縦縁FPから離れる方向(すなわち、第2実施形態では、後方向)に沿って上下方向の寸法を狭めるような三角板形状としている。そして、テンションクロス30は、エアバッグ13Bの車外側Oに配置されて、縦縁としてのフロントピラー部FPから離れる後端部30aを、窓SW2周縁の上縁側(詳しく述べれば、リヤピラー部RPの上方におけるルーフサイドレール部RRのボディ1側のインナパネル1a)に固定させ、フロントピラー部FP側へ延びる前端側を、エアバッグ13Bの板状部27の車外側Oに連結させている。後端部30aには、ボルト32を挿通させる取付孔30bが形成されている。そして、後端部30aは、当て板31と取付ボルト32とを共用して、取付部25F・25Gと共締めされて、インナパネル1aに固定されることとなる。
【0058】
また、テンションクロス30の前端側は、クロス30における三角形状の辺を構成する前縁30cとして、その前縁30cの下端30dが、板状部27の下部側に連結されるように、前縁30cが板状部27の車外側Oに縫着されている。
【0059】
なお、後端部30aの取付孔30bは、エアバッグ13Bとともに、平らに展開させた際、図10に示すように、取付部25Fの取付孔25aの下方に配置されるように設定されており、エアバッグ13Bの膨張完了時に、テンションクロス30の下縁30eが大きく引っ張られて、エアバッグ13Bには、前端側の取付部25Aからテンションクロス前縁30cの下端30dにかけて、前後方向に沿った大きなテンションが、発生することとなる。
【0060】
そして、この第2実施形態のエアバッグ装置M2でも、第1実施形態と同様な工程で、車両Vに搭載されることとなる。
【0061】
勿論、エアバッグ13Bの折り畳みも、第1実施形態と同様に、まず、図12のA・Bに示すように、平らに展開させたエアバッグ13Bの端側取付部25Gを取付部25Fに重ねるように、端側縦膨張部18Gの前後方向の幅寸法の略中間位置に、上下方向に沿った折目Xを付けて、端側縦膨張部18Gを車外側Oに折り返す。ついで、図12のB・Cに示すように、テンションクロス30とともに、エアバッグ13Bの下縁13b側を上縁13a側に接近させるように、前後方向に沿った多数の折目Cを付けて、蛇腹折りする。そして、適宜、破断可能な折り崩れ防止用の図示しないテープ材でくるんでおく。
【0062】
その後、第1実施形態と同様に、各取付部25に当て板31を取り付けるとともに、流入口部21aにインフレーター34や取付ブラケット35を取り付けて、エアバッグ組立体を形成しておく。なお、取付部25F、端側取付部25G、及び、テンションクロス30の端部30aは、当て板31を共用することとなる。
【0063】
ついで、取付ボルト32等を使用して、当板31や取付ブラケット35を、インナパネル1aに取付固定すれば、エアバッグ組立体を車両Vのボディ1に取り付けることができ、さらに、ボディ1側にガーニッシュ3・5・6やルーフヘッドライニング4を取付固定すれば、頭部保護エアバッグ装置M2を車両Vに搭載することができる。
【0064】
この第2実施形態のエアバッグ装置M2では、作動時、第1実施形態と同様に作動して、第1実施形態と同様な作用・効果を得ることができる他、膨張流入部15の端側縦膨張部18Gにおける車外側Oに折り返される部位19が、端側縦膨張部18Gの後部側の上縁20aを、折目Xを挟んで隣接する端側縦膨張部18Gの上縁20bより、下方に配置させて、構成されており、膨張用ガスGの流入時、折り返し部位19側の上縁20a側の膨張部位18aaが、端側縦膨張部18Gの上部18aにおける折目Xを挟んで膨張部位18aaと隣接する膨張部位18abに対して、下方にずれ、その隣接膨張部位18abと重なることが抑えられる。そのため、膨張用ガスGの流入当初、折り返し部位19付近の端側縦膨張部18Gの上部18a側が、薄い状態で膨張して、収納側の窓SW2周縁の上縁側から、ルーフヘッドライニング4の下縁4a(エアバッグカバー11)を押し開いて、容易に、下方へ展開することが可能となる。そして、端側縦膨張部18Gは、無理な膨張を抑えて、その後の折り返し部位19側の膨張を、円滑に行うことができる。
【0065】
また、第2実施形態のエアバッグ13Bでは、テンションクロス30を備えていることから、膨張完了時の前後方向に強いテンションを発生させることができ、乗員がエアバッグ13Bを車外側Oに押しても、車外側Oに移動し難い。さらに、テンションクロス30自体が、後席用部位17の前部側から中央上部付近までの車外側Oを支持する状態となることから、後席用部位17の車外側Oへの移動を抑制することにも、寄与できる。
【0066】
なお、このようなテンションクロス30は、図2の二点鎖線に示すように、第1実施形態のエアバッグ13に配設させてもよい。
【0067】
また、各実施形態では、エアバッグ装置M1・M2を搭載する車両Vとして、ダブルキャブ車を示したが、シングルキャブ車等の車両に本発明の頭部保護エアバッグ装置M1・M2を搭載してもよい。
【0068】
さらに、エアバッグに設ける端側縦膨張部や端側取付部は、各実施形態のように、エアバッグの後端側に設ける場合ばかりでなく、前端側に配設させるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置の車両搭載状態を示す車内側から見た正面図である。
【図2】第1実施形態に使用するエアバッグを、平らに展開させた状態を示す正面図である。
【図3】第1実施形態に使用するエアバッグを折り返さずに膨張させた際の端面図であり、図2のIII−III部位に対応する。
【図4】第1実施形態のエアバッグの折り畳み工程を説明する図である。
【図5】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時を示す車内側から見た正面図である。
【図6】第1実施形態のエアバッグにおける端側縦膨張部の膨張状態を示す図であり、車両後方側から前方側を見た図である。
【図7】第1実施形態のエアバッグにおける端側縦膨張部の横断面図であり、図5のVII−VII部位に対応する。
【図8】第1実施形態のエアバッグの変形例を示す図である。
【図9】図8に示すエアバッグにおける端側縦膨張部の膨張完了時を示す車内側から見た部分正面図である。
【図10】第2実施形態に使用するエアバッグを、平らに展開させた状態を示す正面図である。
【図11】第2実施形態に使用するエアバッグを折り返さずに膨張させた際の端面図であり、図10のXII−XII部位に対応する。
【図12】第2実施形態のエアバッグの折り畳み工程を説明する図である。
【図13】第2実施形態のエアバッグ装置の作動時を示す車内側から見た正面図である。
【符号の説明】
1…(車体)ボディ、
13・13A・13B…エアバッグ、
15…膨張流入部、
18…縦膨張部、
18G…端側縦膨張部、
19…折り返し部位、
20a・20b…上縁、
25…取付部、
25G…端側取付部、
30…テンションクロス、
X…折目、
V…(車両)ダブルキャブ車、
SW(SW1・SW2)…窓、
RR…(窓周縁の上縁側)ルーフサイドレール部、
M1・M2…頭部保護エアバッグ装置。
Claims (2)
- 車両の窓周縁の上縁側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時、前記窓を覆うように、下方へ展開膨張するエアバッグを備え、
該エアバッグが、膨張用ガスを流入させて展開膨張する膨張流入部を備えて構成される頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグの前後方向の端部における前記膨張流入部の部位が、車外側に折り返された状態で、前記窓周縁の上縁側に収納される構成とするとともに、
前記エアバッグにおける前記折り返し部位に、前記膨張流入部における上下方向に棒状に膨張する端側縦膨張部が配設され、
前記折り返しの折目が、前記端側縦膨張部を平らに展開させた際における前記端側縦膨張部の前後方向の略中間位置に、略上下方向に沿って、配置され、
前記端側縦膨張部の上方側における前記エアバッグの前後方向の端側に、車体側に取付可能な端側取付部が配設され、
該端側取付部が、前記端側縦膨張部を折り返した状態で、前記端側縦膨張部の車外側の位置で、前記車体側に取り付けられていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。 - 前記膨張流入部における車外側に折り返される部位が、上縁を、隣接する前記膨張流入部の部位の上縁より、下方に配置させて、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
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