JP3867356B2 - 車両の挙動制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各車輪のホイールシリンダ液圧を個々に制御して車両の挙動を適切なものにする車両の挙動制御装置に関し、特に、運転者に制動を感じさせることなく、ホイールシリンダの液圧応答を確実に高める対策をした車両の挙動制御装置に係わる。
【0002】
【従来の技術】
車両の挙動制御装置としては種々のものが知られており、代表的には車輪のホイールシリンダ液圧を個々に制御して、車両挙動が狙い通りのものになるようにしたものが周知である。
ここで挙動制御を説明するに、操舵量、車輪速、ヨーレート、タイヤのグリップ限界を検出し、これらから目標ヨーレートを演算するとともに、車両がオーバーステア若しくはアンダーステアといったタイヤのグリップ限界を越える旋回状態に入ったか否かを判定する。
【0003】
タイヤのグリップ限界を越える旋回状態に入った時、実ヨーレートが上記の目標ヨーレートに近づくよう該当車輪のホイールシリンダ液圧を個々に制御して車両をタイヤグリップ域で走行させるようにする共に、旋回時に発生し得る不自然な車両挙動を防止するというものである。
【0004】
ここで、挙動制御中にホイールシリンダ液圧が存在している車輪については、ブレーキロータとブレーキパッドとの間や、ブレーキパッドとキャリパとの間に当然隙間がないものの、挙動制御中でも制動を行っていない車輪については、ホイールシリンダ液圧が存在しないことから、ブレーキロータとブレーキパッドとの間や、ブレーキパッドとキャリパとの間に機構上の隙間が生ずる。
かかる車輪ブレーキ構造において不可避な非制動中の隙間は、ブレーキ液量に対するホイールシリンダ液圧の変化特性を、図10に例示するように非線形にしてしまい、ブレーキ液量の増大によってもホイールシリンダ液圧が上昇しない、所謂ホイールシリンダ液圧の不感帯域αや、βを生じさせる。
【0005】
これらホイールシリンダ液圧の不感帯域α,βは、挙動制御に当たりホイールシリンダ液圧の立ち上がりを遅らせて、挙動制御の応答性を低下させ、十分な効果を期待できないことがある。
【0006】
この問題解決のため従来、例えば特開平8−80824号公報や特開平8−282461号公報に記載されているように、挙動制御開始時や挙動制御中においてホイールシリンダ液圧指令値が大気圧である間、ホイールシリンダ液圧を微小な設定圧に上昇させておき、これによりホイールシリンダ液圧を挙動制御のために立ち上げる時の応答遅れ、従って挙動制御の応答遅れが小さくなるようにする対策が提案された。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしこの対策では、ブレーキロータとブレーキパッドとの間や、ブレーキパッドとキャリパとの間に存在する隙間のために発生するホイールシリンダ液圧の不感帯が、配管や、制御弁のヒステリシスや、圧力損失要素の温度変化による特性変化の影響を受けて、図10にα,βで示すように変化することもあり、挙動制御の応答遅れを確実に解消するということができないのが実情である。
【0008】
かと言って、当該応答遅れが確実に解消されるようホイールシリンダ液圧を比較的高くした設定圧に上昇させておくのでは、場合によって運転者がブレーキペダルを踏み込んでいないのに制動を感じるような事態となり、違和感を与えることとなる。
従って上記した従来の対策では、挙動制御の応答遅れの確実な解消と、意図しない制動力の防止とを両立させることが困難で、運転者に制動を感じさせることなく、ホイールシリンダの液圧応答を高めて挙動制御の応答遅れを確実に解消することが困難であった。
【0009】
請求項1に記載の第1発明は、運転者に制動を感じさせることなく、ホイールシリンダの液圧応答を確実に高め得る車両の挙動制御装置を提案して上記の問題を解消することを目的とする。
【0011】
請求項に記載の第発明は、ホイールシリンダの液圧応答を高めるための圧力値の更なる改良提案をすることを目的とする。
【0012】
請求項に記載の第発明は、第1発明と異なる構成により、運転者に制動を感じさせることなく、ホイールシリンダの液圧応答を確実に高め得るようにした車両の挙動制御装置を提案することを目的とする。
【0014】
請求項に記載の第発明は、上記第発明の更に具体的な構成を提案することを目的とする。
【0015】
請求項に記載の第発明は、挙動制御中において特に全輪のホイールシリンダ液圧目標値が大気圧である場合に、挙動制御の応答遅れの確実な解消と、意図しない制動力の防止とを両立させるようにした車両の挙動制御装置を提案することを目的とする。
【0016】
請求項に記載の第発明は、挙動制御中において特に全輪のホイールシリンダ液圧目標値が大気圧である場合に、ステアリング特性改善制御の応答遅れの確実な解消と、意図しない制動力の防止とを両立させるようにした車両の挙動制御装置を提案することを目的とする。
【0017】
請求項に記載の第発明は、上記第発明を更に進展させて、これによる作用効果を一層確実にすることを目的とする。
【0018】
請求項に記載の第発明は、上記各発明を適用するホイールシリンダ液圧制御システムを提案することを目的とする。
【0019】
請求項に記載の第発明は、第発明におけるホイールシリンダ液圧制御システムの好適な圧力源を提案することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
これらの目的のため、先ず第1発明による車両の挙動制御装置は、
各車輪のホイールシリンダ液圧を個々に制御して車両の挙動を狙い通りのものにするための装置において、
前記狙い通りの車両挙動を実現するためのホイールシリンダ液圧目標値が大気圧である場合、該当車輪のホイールシリンダ液圧を、車両横方向または前後方向における対向車輪のホイールシリンダ液圧変化方向に応じ、
該対向車輪のホイールシリンダ液圧が増圧中である時は、制御可能なホイールシリンダ液圧下限値に対応した第1の液圧設定値にし
該対向車輪のホイールシリンダ液圧が減圧中である時は、制動力を発生開始可能なホイールシリンダ液圧に対応した第2の液圧設定値にするよう構成したことを特徴とするものである。
【0022】
発明による車両の挙動制御装置は、上記第1発明において、
前記該当車輪のホイールシリンダ液圧を、前記対向車輪のホイールシリンダ液圧が増圧速度を低下されるにつれ、又その後、減圧に移行して減圧速度を上昇されるにつれ、前記第1の液圧設定値から前記第2の液圧設定値に向けて漸増させるよう構成したことを特徴とするものである。
【0023】
発明による車両の挙動制御装置は、
各車輪のホイールシリンダ液圧を個々に制御して車両の挙動を狙い通りのものにするための装置において、
前記狙い通りの車両挙動を実現するためのホイールシリンダ液圧目標値が大気圧である場合、該当車輪のホイールシリンダ液圧を、車両挙動実際値と前記狙いとする車両挙動目標値との挙動偏差、および該挙動偏差の変化速度に応じ、
該挙動偏差が制御開始時における偏差を越えており、且つ、尚も増大している間は、制御可能なホイールシリンダ液圧下限値に対応した第1の液圧設定値にし
該挙動偏差が減少している間は、制動力を発生開始可能なホイールシリンダ液圧に対応した第2の液圧設定値にするよう構成したことを特徴とするものである。
【0025】
発明による車両の挙動制御装置は、上記第3発明において、
前記挙動偏差をヨーレート偏差、または、目標ヨーモーメント、或いは、車体スリップ角としたことを特徴とするものである。
【0026】
発明による車両の挙動制御装置は、
各車輪のホイールシリンダ液圧を個々に制御して車両の挙動を狙い通りのものにするための装置において、
前記狙い通りの車両挙動を実現するための全輪のホイールシリンダ液圧目標値が大気圧である場合、車両挙動実際値と前記狙いとする車両挙動目標値との大小比較から、車両挙動を目標値に一致させるために前記ホイールシリンダ液圧制御が開始される可能性の高い車輪のホイールシリンダ液圧を、制動力を発生開始可能なホイールシリンダ液圧に対応した第2の液圧設定値にし、他の車輪のホイールシリンダ液圧を、制御可能なホイールシリンダ液圧下限値に対応した第1の液圧設定値にするよう構成したことを特徴とするものである。
【0027】
発明による車両の挙動制御装置は、
各車輪のホイールシリンダ液圧を個々に制御して車両の挙動を狙い通りのものにするための装置において、
前記狙い通りの車両挙動を実現するための全輪のホイールシリンダ液圧目標値が大気圧である場合、車両の挙動方向ごとに、車両挙動実際値と前記狙いとする車両挙動目標値との挙動偏差からステアリング特性がオーバーステア傾向かアンダーステア傾向かを判断し、該判定結果からステアリング特性改善のために前記ホイールシリンダ液圧制御が開始される可能性の高い車輪のホイールシリンダ液圧を、制動力を発生開始可能なホイールシリンダ液圧に対応した第2の液圧設定値にし、他の車輪のホイールシリンダ液圧を、制御可能なホイールシリンダ液圧下限値に対応した第1の液圧設定値にするよう構成したことを特徴とするものである。
【0028】
発明による車両の挙動制御装置は、上記第発明において、
ステアリング特性がオーバーステア傾向である時、前記ホイールシリンダ液圧制御が開始される可能性の高い車輪を前輪または旋回方向外側車輪として、これら前輪または旋回方向外側車輪のホイールシリンダ液圧を前記第2の液圧設定値にすると同時に、他の後輪または旋回方向内側車輪のホイールシリンダ液圧を前記第1の液圧設定値にし、
ステアリング特性がアンダーステア傾向である時、前記ホイールシリンダ液圧制御が開始される可能性の高い車輪を後輪または旋回方向内側車輪として、これら後輪または旋回方向内側車輪のホイールシリンダ液圧を前記第2の液圧設定値にすると同時に、他の前輪または旋回方向外側車輪のホイールシリンダ液圧を前記第1の液圧設定値にするよう構成したことを特徴とするものである。
【0029】
発明による車両の挙動制御装置は、上記第1発明乃至第発明のいずれかにおいて、
圧力源からの液圧を各車輪のホイールシリンダに個々に供給する供給回路中に増圧弁を設けるとともに、これら増圧弁と対応するホイールシリンダとの間を個々に減圧可能な減圧弁を設け、
各車輪のホイールシリンダ液圧を、対応する増圧弁の開と減圧弁の閉とで増圧させ、対応する増圧弁の閉と減圧弁の開とで減圧させることにより、個々に制御可能にしたことを特徴とするものである。
【0030】
発明による車両の挙動制御装置は、上記第発明において、
圧力源としてマスターシリンダの他にポンプを具え、これらマスターシリンダからの液圧と、ポンプからの液圧とを切換え使用することで、マスターシリンダからの液圧が存在しない間でも車輪のホイールシリンダ液圧を制御可能にしたことを特徴とするものである。
【0031】
【発明の効果】
第1発明による車両の挙動制御装置は、各車輪のホイールシリンダ液圧を個々に制御して、前後輪間または左右輪間の制動力差により車両の挙動が狙い通りのものにする。
ところで当該挙動制御中において、上記狙い通りの車両挙動を実現するためのホイールシリンダ液圧目標値が大気圧である場合、該当車輪のホイールシリンダ液圧を、車両横方向または前後方向における対向車輪のホイールシリンダ液圧変化方向に応じ、
該対向車輪のホイールシリンダ液圧が増圧中である時は、制御可能なホイールシリンダ液圧下限値に対応した第1の液圧設定値にし
該対向車輪のホイールシリンダ液圧が減圧中である時は、制動力を発生開始可能なホイールシリンダ液圧に対応した第2の液圧設定値にする。
【0032】
よって、上記対向車輪のホイールシリンダ液圧変化方向から予測可能な直近における上記該当車輪のホイールシリンダ液圧制御態様に応じ、該当車輪のホイールシリンダ液圧の上昇が予測される場合これを高い第2の液圧設定値にして待機し、逆に上昇が予測されなければ低い第1の液圧設定値にして待機することとなり、該当車輪のホイールシリンダ液圧応答を高めることができる。
【0033】
また、上記対向車輪のホイールシリンダ液圧が上昇中である時は該当車輪のホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値にして待機し、逆に対向車輪のホイールシリンダ液圧が低下中である時は該当車輪のホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値にして待機することから、該当車輪のホイールシリンダ液圧を対向車輪のホイールシリンダ液圧変化方向と逆の方向へ高低制御することとなり
車両全体としての制動力が変化するのを防止することが可能となり、運転者に制動を感じさせなくすることができる。
以上により第1発明においては、運転者に制動を感じさせることなく、ホイールシリンダの液圧応答を高めて、挙動制御の応答遅れを確実に解消することができる。
【0034】
発明においては更に、上記該当車輪のホイールシリンダ液圧を、上記対向車輪のホイールシリンダ液圧が増圧中である時は前記第1の液圧設定値にし、前記対向車輪のホイールシリンダ液圧が減圧中である時は前記第2の液圧設定値にすることから、以下の作用効果を得ることができる。
つまり、対向車輪のホイールシリンダ液圧が上昇中である時は該当車輪が近々に増圧を指令されることはないから、そのホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値にしておき、逆に対向車輪のホイールシリンダ液圧が低下中である時は該当車輪が近々に増圧を指令される可能性が高いことから、該当車輪のホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値にしておくため、
本当に該当車輪のホイールシリンダ液圧応答が要求される後者の場合おいて、確実にこの要求を満足させることができるとともに、前者の場合から後者の場合への移行時も該当車輪のホイールシリンダ液圧が第1の液圧設定値にされているため、ここでの液圧応答も高めることができる。
【0035】
そして、上記のように該当車輪のホイールシリンダ液圧を対向車輪のホイールシリンダ液圧変化方向と逆の方向へ高低制御することになるために、車両全体としての制動力が変化するのを防止することが可能となり、運転者に制動を感じさせることなく、該当車輪のホイールシリンダの液圧応答を高めて、挙動制御の応答遅れを確実に解消することができる。
【0036】
発明においては、上記該当車輪のホイールシリンダ液圧を、上記対向車輪のホイールシリンダ液圧が増圧速度を低下されるにつれ、又その後、減圧に移行して減圧速度を上昇されるにつれ、前記第1の液圧設定値から前記第2の液圧設定値に向けて漸増させることから、
該当車輪のホイールシリンダ液圧変化がステップ的とならず、連続的となって該当車輪のホイールシリンダ液圧がオーバーシュートにより不要な制動力を発生させるといった弊害を解消することができる。
【0037】
発明においては、狙い通りの車両挙動を実現するためのホイールシリンダ液圧目標値が大気圧である場合、該当車輪のホイールシリンダ液圧を、車両挙動実際値と前記狙いとする車両挙動目標値との挙動偏差、および該挙動偏差の変化速度に応じ、
該挙動偏差が制御開始時における偏差を越えており、且つ、尚も増大している間は、制御可能なホイールシリンダ液圧下限値に対応した第1の液圧設定値にし
該挙動偏差が減少している間は、制動力を発生開始可能なホイールシリンダ液圧に対応した第2の液圧設定値にする。
【0038】
よって、上記挙動偏差および該挙動偏差の変化速度から予測可能な直近における上記該当車輪のホイールシリンダ液圧制御態様に応じ、該当車輪のホイールシリンダ液圧の上昇が予測される場合これを高い第2の液圧設定値にして待機し、逆に上昇が予測されなければ低い第1の液圧設定値にして待機することとなり、該当車輪のホイールシリンダ液圧応答を高めることができる。
【0039】
また、上記挙動偏差が制御開始時における偏差を越えており、且つ、尚も増大している時は該当車輪のホイールシリンダ液圧を上記第1の液圧設定値にして待機し、上記挙動偏差が減少している間は該当車輪のホイールシリンダ液圧を上記第2の液圧設定値にして待機することから、これにより以下の作用効果を達成することができる。
つまり、前者のように上記挙動偏差が制御開始時における偏差を越えており、且つ、尚も増大している場合は、これを解消するために他輪のホイールシリンダ液圧が上昇されているのが普通で、この時該当車輪のホイールシリンダ液圧を上記のように低い第1の液圧設定値にすることは、また、後者のように上記挙動偏差が減少している場合は、狙いとする挙動に近づいていることから他輪のホイールシリンダ液圧が低下されているのが普通で、この時該当車輪のホイールシリンダ液圧を上記のように高い第2の液圧設定値にすることは、車両全体としての制動力が変化するのを防止することに通じ、運転者に制動を感じさせなくすることができる。
以上により第発明においては、運転者に制動を感じさせることなく、ホイールシリンダの液圧応答を高めて、挙動制御の応答遅れを確実に解消することができる。
【0040】
発明においては更に、上記該当車輪のホイールシリンダ液圧を、上記挙動偏差が制御開始時における偏差を越えており、且つ、尚も増大している間は前記第1の液圧設定値にし、上記挙動偏差が減少している間は前記第2の液圧設定値にすることから、以下の作用効果を達成することができる。
つまり、上記挙動偏差が制御開始時における偏差を越えており、且つ、尚も増大している間は、他輪の制動により挙動制御がなされていて、該当車輪が近々に増圧を指令されることはないため、そのホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値にしておき、逆に上記挙動偏差が減少している間は挙動が狙い通りのものになりつつあって、該当車輪が近々に増圧を指令される可能性が高いことから、該当車輪のホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値にしておくため、
本当に該当車輪のホイールシリンダ液圧応答が要求される後者の場合おいて、確実にこの要求を満足させることができるとともに、前者の場合から後者の場合への移行時も該当車輪のホイールシリンダ液圧が第1の液圧設定値にされているため、ここでの液圧応答も高めることができる。
【0041】
そして、前者のように上記挙動偏差が制御開始時における偏差を越えており、且つ、尚も増大している場合は、これを解消するために他輪のホイールシリンダ液圧が上昇されているのが普通で、この時該当車輪のホイールシリンダ液圧を上記のように低い第1の液圧設定値にすることは、また、後者のように上記挙動偏差が減少している場合は、狙いとする挙動に近づいていることから他輪のホイールシリンダ液圧が低下されているのが普通で、この時該当車輪のホイールシリンダ液圧を上記のように高い第2の液圧設定値にすることは、車両全体としての制動力が変化するのを防止することに通じ、運転者に制動を感じさせなくすることができる。
以上により第発明においては、運転者に制動を感じさせることなく、ホイールシリンダの液圧応答を高めて、挙動制御の応答遅れを確実に解消することができる。
【0042】
発明においては、上記挙動偏差をヨーレート偏差、または、目標ヨーモーメント、或いは、車体スリップ角とするため、制御因子のバリエイションが増えて実用性を高めることができる。
【0043】
発明においては、狙い通りの車両挙動を実現するための全輪のホイールシリンダ液圧目標値が大気圧である場合、車両挙動実際値と上記狙いとする車両挙動目標値との大小比較から、車両挙動を目標値に一致させるために上記ホイールシリンダ液圧制御が開始される可能性の高い車輪のホイールシリンダ液圧を、制動力を発生開始可能なホイールシリンダ液圧に対応した第2の液圧設定値にし、他の車輪のホイールシリンダ液圧を、制御可能なホイールシリンダ液圧下限値に対応した第1の液圧設定値にする。
【0044】
よって、上記車両挙動を目標値に一致させる挙動制御のためにホイールシリンダ液圧制御を開始される可能性の高い車輪のホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値にして待機し、ホイールシリンダ液圧制御を当面は開始されない他の車輪のホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値にして待機することとなり
直近にホイールシリンダ液圧の応答が要求される前者の車輪について、確実にこの要求を満足させることができるとともに、後者の車輪についてはホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値にしているため、当該車輪が次にホイールシリンダ液圧の応答を要求される事態になって第2の液圧設定値にされる時の液圧応答も高めることができる。
更に、前者の車輪がホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値にされている時は、後者の車輪がホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値にされていることから、前者の車輪と後者の車輪が同時にホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値にされることがなく、運転者に制動を感じさせるようなこともない。
【0045】
発明においては、狙い通りの車両挙動を実現するための全輪のホイールシリンダ液圧目標値が大気圧である場合、車両の挙動方向ごとに、車両挙動実際値と上記狙いとする車両挙動目標値との挙動偏差からステアリング特性がオーバーステア傾向かアンダーステア傾向かを判断し、該判定結果からステアリング特性改善のために前記ホイールシリンダ液圧制御が開始される可能性の高い車輪のホイールシリンダ液圧を、制動力を発生開始可能なホイールシリンダ液圧に対応した第2の液圧設定値にし、他の車輪のホイールシリンダ液圧を、制御可能なホイールシリンダ液圧下限値に対応した第1の液圧設定値にする。
【0046】
よって、上記ステアリング特性の改善用にホイールシリンダ液圧制御を開始される可能性の高い車輪のホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値にして待機し、ホイールシリンダ液圧制御を当面は開始されない他の車輪のホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値にして待機することとなり
直近にホイールシリンダ液圧の応答が要求される前者の車輪について、確実にこの要求を満足させることができるとともに、後者の車輪についてはホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値にしているため、当該車輪が次にホイールシリンダ液圧の応答を要求される事態になって第2の液圧設定値にされる時の液圧応答も高めることができる。
更に、前者の車輪がホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値にされている時は、後者の車輪がホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値にされていることから、前者の車輪と後者の車輪が同時にホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値にされることがなく、運転者に制動を感じさせるようなこともない。
【0047】
発明においては、ステアリング特性がオーバーステア傾向である時、ホイールシリンダ液圧制御が開始される可能性の高い車輪を前輪または旋回方向外側車輪として、これら前輪または旋回方向外側車輪のホイールシリンダ液圧を前記第2の液圧設定値にすると同時に、他の後輪または旋回方向内側車輪のホイールシリンダ液圧を前記第1の液圧設定値にし、
ステアリング特性がアンダーステア傾向である時、前記ホイールシリンダ液圧制御が開始される可能性の高い車輪を後輪または旋回方向内側車輪として、これら後輪または旋回方向内側車輪のホイールシリンダ液圧を前記第2の液圧設定値にすると同時に、他の前輪または旋回方向外側車輪のホイールシリンダ液圧を前記第1の液圧設定値にすることから、
ステアリング特性の改善を前輪制動または後輪制動により実現したり、左車輪または右車輪の制動により実現する場合において、第8発明の上記作用効果を確実に達成することができる。
【0048】
発明においては、圧力源からの液圧を各車輪のホイールシリンダに個々に供給する供給回路中に増圧弁を設けるとともに、これら増圧弁と対応するホイールシリンダとの間を個々に減圧可能な減圧弁を設け、
各車輪のホイールシリンダ液圧を、対応する増圧弁の開と減圧弁の閉とで増圧させ、対応する増圧弁の閉と減圧弁の開とで減圧させることにより、個々に制御可能にしたブレーキシステムに適用して、第1発明乃至第発明の作用効果を達成することができる。
【0049】
発明においては、上記第発明における圧力源としてマスターシリンダの他にポンプを具え、これらマスターシリンダからの液圧と、ポンプからの液圧とを切換え使用することから、
マスターシリンダからの液圧が存在しない間でも、前記した車輪のホイールシリンダ液圧制御が可能である。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態になる車両の挙動制御装置をなす車両のブレーキシステムを示し、1はブレーキペダル、2はマスターシリンダ、3はブレーキ液リザーバである。
図示のブレーキシステムは基本的には、ブレーキペダル1の踏み込み時にマスターシリンダ2から回路4,5へ出力されたマスターシリンダ液圧をそれぞれ、左右前輪6L,6Rのホイールシリンダ8L,8Rおよび左右後輪7L,7Rのホイールシリンダ9L,9Rに向かわせて通常の制動作用を行うものとする。
【0051】
ところで本実施の形態においては特に、マスターシリンダ2と共に圧力源を構成するポンプ11およびこれからのポンプ吐出圧を蓄えるアキュムレータ12を設け、ポンプ11はマスターシリンダ2とブレーキ液リザーバ3を共有するものとする。
そして、左右前輪6L,6Rのホイールシリンダ8L,8Rおよび左右後輪7L,7Rのホイールシリンダ9L,9Rに、マスターシリンダ2からの圧力を向かわせるのか、アキュムレータ12に蓄えられている圧力を向かわせるのかを決定する、常開の圧力源切換弁13,14および常閉の圧力源切換弁15,16を設ける。
ここで常開の圧力源切換弁13,14および常閉の圧力源切換弁15,16を全てOFFする間、左右前輪6L,6Rのホイールシリンダ8L,8Rおよび左右後輪7L,7Rのホイールシリンダ9L,9Rにはマスターシリンダ2からのマスターシリンダ液圧が供給され、常開の圧力源切換弁13,14および常閉の圧力源切換弁15,16を全てONする間、左右前輪6L,6Rのホイールシリンダ8L,8Rおよび左右後輪7L,7Rのホイールシリンダ9L,9Rにはアキュムレータ12に蓄えられている圧力が供給されるものとする。
【0052】
左右前輪6L,6Rおよび左右後輪7L,7Rのブレーキ液圧回路にはそれぞれ、常開の増圧弁17L,17Rおよび18L,18Rを挿置すると共に、常閉の減圧弁19L,19Rおよび20L,20Rが挿置された減圧回路を接続し、各減圧回路を前輪用アキュムレータ21および後輪用アキュムレータ22に至らしめる。
ここで増圧弁17L,17Rおよび18L,18RをOFFし、減圧弁19L,19Rおよび20L,20RもOFFすると、左右前輪6L,6Rおよび左右後輪7L,7Rのホイールシリンダ液圧は圧力源の圧力に向けて増圧され、
増圧弁17L,17Rおよび18L,18RをONして閉じると共に、減圧弁19L,19Rおよび20L,20RをOFFして閉状態に維持すると、左右前輪6L,6Rおよび左右後輪7L,7Rのホイールシリンダ液圧はこの時の圧力に保圧され、
増圧弁17L,17Rおよび18L,18RをONして閉じると共に、減圧弁19L,19Rおよび20L,20RもONして開くと、左右前輪6L,6Rおよび左右後輪7L,7Rのホイールシリンダ液圧は、対応するアキュムレータ21,22に向けて排除され、減圧されることとなる。
なお、この時に蓄えられたアキュムレータ21,22の内圧はそれぞれのポンプ23,24により前輪ブレーキ液圧回路および後輪ブレーキ液圧回路に戻すようにする。
【0053】
以上により左右前輪6L,6Rおよび左右後輪7L,7Rのホイールシリンダ液圧は個々に制御され得るが、以下にホイールシリンダ液圧の制御態様を概略説明する。
常態では、圧力源切換弁13,14,15,16、増圧弁17L,17R,18L,18R、減圧弁19L,19R,20L,20Rが全てOFFされており、ここでブレーキペダル1を踏み込むと、マスターシリンダ2から回路4,5へのマスターシリンダ液圧が圧力源切換弁13,14、および増圧弁17L,17R,18L,18Rを経て左右前輪6L,6Rおよび左右後輪7L,7Rのホイールシリンダ液圧を上昇させ、これら車輪をブレーキペダル1の踏力に応じて制動する。
【0054】
この制動中に車輪がロックすると、ロックした車輪に係わる増圧弁17L,17R,18L,18RをONして閉じることで、該当車輪のホイールシリンダ液圧を保圧したり、減圧弁19L,19R,20L,20RをもONして開くことで、該当車輪のホイールシリンダ液圧を低下させることにより車輪のロックを防止するアンチスキッド制御を行うことができる。
【0055】
一方で、加速中に車輪がホイールスピンを生ずると、圧力源切換弁13,14をONして閉じると共に、圧力源切換弁15,16をOFFして開くことにより、左右前輪6L,6Rおよび左右後輪7L,7Rのホイールシリンダ液圧をアキュムレータ12の内圧で上昇可能にする。
そして、ホイールスピンを生じていない車輪に係わる増圧弁17L,17R,18L,18RはONして閉じ、該当車輪のホイールシリンダ液圧を発生させないが、ホイールスピンを生じた車輪に係わる増圧弁17L,17R,18L,18RをOFFして開くことにより、該当車輪のホイールシリンダ液圧をアキュムレータ12の内圧で上昇させてホイールスピンを防止し、当該ホイールシリンダ液圧が過剰になったところで、減圧弁19L,19R,20L,20RをもONして開くことにより、当該過剰分を排除するトラクションコントロールを行うことができる。
【0056】
以上のアンチスキッド制御およびトラクションコントロールはコントローラ30により実行し、このコントローラ30はこれらの他に、本発明が狙いとする後述の挙動制御を行うこともあって、左右前輪6L,6Rの車輪速VW1, V W2 および左右後輪7L,7Rの車輪速VW3, VW4に対応したパルス信号を出力する車輪速センサ31〜34からの信号と、車両の横加速度GY を検出する横加速度センサ35からの信号と、車両の前後加速度GX を検出する車両加速度センサ36からの信号と、車両のヨーレート(d/dt)φを検出するヨーレートセンサ37からの信号と、ステアリングホイールの操舵角θを検出する舵角センサ38からの信号と、ブレーキペダルの踏み込み時にONになるブレーキスイッチ39からの信号と、マスターシリンダ液圧を検出するマスターシリンダ液圧センサ40からの信号を取り込む。
【0057】
ここでコントローラ30が実行する車両の挙動制御を説明するに、これは図2および図3のごときものである。これらは定時割り込みにより一定時間Δt毎に実行されるもので、図2は挙動制御用ホイールシリンダ液圧目標値の演算プログラムを示し、図3は各輪のホイールシリンダ液圧制御プログラムを示す。
先ず、図2の挙動制御用ホイールシリンダ液圧目標値の演算処理を説明するに、ステップ49においては、挙動制御が開始されて1回目か否かをチェックする。
制御開始直後であれば、ステップ50において左右前輪6L,6Rのホイールシリンダ液圧目標値P1 * ,P2 * 、および左右後輪7L,7Rのホイールシリンダ液圧目標値P3 * ,P4 * を、後述する第1の液圧設定値P1 に初期化する。
以後、先ずステップ51において、左右前輪6L,6Rの車輪速VW1, V W2 および左右後輪7L,7Rの車輪速VW3, VW4をそれぞれ演算し、ステップ52で、その他の走行状態を表すセンサ値として操舵角θ、横加速度GY 、前後加速度GX 、およびヨーレート(d/dt)φなどを読み込む。
【0058】
次のステップ53においては車体速推定値Vi を作成する。この際本実施の形態においては、上記の車輪速VW1, V W2 ,VW3, VW4にフィルタをかけて求めたフィルタ処理値のうち、制動中であれば最高値のものが、また非制動時であれば最低値のものが実際の車速に最も近いことから、当該実際の車速に最も近いフィルタ処理値を選択し、これに基づいてアンチスキッド制御装置などで常用されている手法により疑似車速Vi を求め、これを車体速推定値とする。
なお、車体速推定値Vi を求めるに当たっては上記の代えて、車両の前後加速度GX を積分して求めた積分値に補正を加え、車体速推定値Vi とするものでも良いし、これと上記を併用するのも可能であることは勿論である。
【0059】
ステップ54においては、以下により車両の横滑り角βを算出する。先ず横加速度GY と、車体速推定値Vi と、ヨーレート(d/dt)φとから、車両の横滑り加速度βdd
βdd=GY −Vi ・(d/dt)φ
の演算により求める。そして、この横滑り加速度βddを積分することにより横滑り速度βd を求め、この横滑り速度βd を車体速推定値Vi で除算することにより横滑り角β(=βd /Vi )を演算することができる。
【0060】
ステップ55では、操舵角θと車体速推定値Vi とから目標ヨーレート(d/dt)φ* を求める。この目標ヨーレート(d/dt)φ* を本実施の形態では、各車輪において予定通りのコーナリングフォースが発生し、ニュートラルステアが達成されている場合のヨーレートとする。そしてこの場合、目標ヨーレート(d/dt)φ* が操舵角θと車体速推定値Vi とで規定されることから、これら操舵角θと車体速推定値Vi のマップとして予め設定しておき、当該マップを検索することにより目標ヨーレート(d/dt)φ* を求めることとする。
【0061】
ステップ56では、車両挙動としてのヨーレートを制御するために、上記の目標ヨーレート(d/dt)φ* と実ヨーレート(d/dt)φとの偏差(又はその変化量)、および前記スリップ角β(またはスリップ角速度βd )を基に車両挙動制御量を演算する。
そしてステップ57で、例えば走行状態に応じた制御ゲインを付加して上記の車両挙動制御量を達成するための左右前輪6L,6Rのホイールシリンダ液圧目標値P1 * ,P2 * 、および左右後輪7L,7Rのホイールシリンダ液圧目標値P3 * ,P4 * を演算する。
【0062】
図3は、各車輪のホイールシリンダ液圧を上記のようにして求められた目標値P1 * ,P2 * ,P3 * ,P4 * に基づいて制御するためのプログラムで、
先ずステップ61において、自己のホイールシリンダ液圧目標値P1 * ,P2 * ,P3 * ,P4 * (以下、P* で表す)が、実際に挙動制御を開始可能なホイールシリンダ液圧値Pmin 以上か否かを判定する。
【0063】
* ≧Pmin であれば、制御をステップ65〜67に進めて、自己のホイールシリンダ液圧PW が上記により演算した対応する目標値P* になるよう、図1の弁13〜16,17L,17R,18L,18R,19L,19R,20L,20RをON,OFF制御およびデューティ制御する。
つまり、ステップ65において自己のホイールシリンダ液圧目標値P* と現在のホイールシリンダ液圧PW との液圧偏差ΔP* =P* −PW を求め、次のステップ66において、液圧サーボにより当該液圧偏差ΔP* が小さくなるよう対応する増圧弁17L,17R,18L,18Rまたは減圧弁19L,19R,20L,20Rをデューティ制御するものとする。
なお、デューティ制御されない減圧弁または増圧弁は、上記のホイールシリンダ液圧制御に符合するようONまたはOFF状態に保つものとする。
【0064】
ここでデューティ制御は、1周期(例えば50msec)中における増圧弁または減圧弁の開時間の割合を決定するもので、このデューティ制御に当たっては、図6(a)に示す増圧特性または同図(b)に示す減圧特性を用いる。
これら特性は増圧弁または減圧弁を開状態に保った時の増減圧割合±ΔP/msecをマップ化したもので、これらを基に増圧弁または減圧弁の開時間、つまり増圧弁または減圧弁の駆動デューティを決定して出力することで、液圧偏差ΔP* を小さくし、自己のホイールシリンダ液圧PW を対応する目標値P* に一致させることができる。
【0065】
ステップ67では、上記の制御により変化する自己のホイールシリンダ液圧PW を、PW =PW ±ΔP・Δtにより演算して推定し、これを次回の制御におけるステップ65での演算に資する。
【0066】
ステップ61において、自己のホイールシリンダ液圧目標値P* が、実際に挙動制御を開始可能なホイールシリンダ液圧値Pmin 未満の大気圧付近の値であると判定するとき、つまり、該当車輪の制動が不要であるとき(この状態を本明細書では、ホイールシリンダ液圧目標値P* が大気圧指令であると称する)、ステップ62〜64において、自己のホイールシリンダ液圧(目標値P* )を、液圧応答の改善のためにどの程度の値にしておくべきかを以下の如くに決定する。
【0067】
即ち、ステップ62において車両横方向または前後方向における対向車輪のホイールシリンダ液圧目標値Po * が増圧中か否かを判定する。
ここで、車両のステアリング特性をニュートラル特性にするための挙動制御に際しては、車両横方向および前後方向における対向車輪の双方が上記の対向車輪となり得るが、車両のヨーレートなどの水平挙動を制御するに際しては、車両横方向における対向車輪のみが上記の対向車輪となる。
対向車輪のホイールシリンダ液圧目標値Po * が増圧中であれば、当該対向車輪の制動力制御による挙動制御が進行中で、直近に自己の車輪が制動による挙動制御を要求されることはないため、ステップ63で自己のホイールシリンダ液圧目標値P* を、ホイールシリンダ液圧の制御可能な下限値に対応した第1の液圧設定値P1 に設定する。
ステップ62で上記対向車輪のホイールシリンダ液圧目標値Po * が増圧中でないと判定する時は、当該対向車輪の制動力制御による挙動制御が終盤に差しかかっており、直近に自己の車輪が制動による挙動制御を要求される可能性が高いため、ステップ64で自己のホイールシリンダ液圧目標値P* を、バラツキによっても確実に制動力を発生し始めるホイールシリンダ液圧に対応した第2の液圧設定値P2 (上記実際に挙動制御を開始可能なホイールシリンダ液圧値Pmin 以下の値)に設定する。
従って、図7に示したが第2の液圧設定値P2 は第1の液圧設定値P1 よりも高く、第2の液圧設定値P2 未満のホイールシリンダ液圧で車両の挙動制御は行われ得ないし、第1の液圧設定値P1 未満の領域でホイールシリンダ液圧は制御不能である。
【0068】
上記のようにして定めた自己のホイールシリンダ液圧目標値P* は、ステップ65〜67での前記した処理により実現する。
よって、自己のホイールシリンダ液圧を図7にP* で示すように、対向車輪のホイールシリンダ液圧目標値Po * が増圧されてこれによる挙動制御がなされているC期間中は、自己車輪が近々のD期間で挙動制御のための増圧を指令されることがないのに呼応して、上記低い第1の液圧設定値P1 にすることができ、
また、対向車輪のホイールシリンダ液圧目標値Po * が減圧されてこれによる挙動制御が終盤に差しかかっているD期間中は、自己車輪が近々のE期間で挙動制御のための増圧を指令される可能性が高いことに呼応して、自己のホイールシリンダ液圧を上記高い第2の液圧設定値P2 にすることができ、
本当に自己車輪のホイールシリンダ液圧応答が要求される後者の場合おいて、確実にこの要求を満足させることができるとともに、前者の場合から後者の場合への移行時も自己車輪のホイールシリンダ液圧が大気圧ではなく第1の液圧設定値P1 にされているため、ここでの液圧応答も高めることができる。
【0069】
そして、挙動制御のための制動を要求されていない車輪のホイールシリンダ液圧を対向車輪のホイールシリンダ液圧変化方向と逆の方向へ高低制御して図10における不感帯α,βをなくすことによりホイールシリンダの液圧応答を改善するため、車両全体としての制動力が変化するのを防止することが可能となり、運転者に制動を感じさせることなく、各ホイールシリンダの液圧応答を高めて挙動制御の応答遅れを確実に解消することができる。
【0070】
なお、ホイールシリンダに液圧応答を高めるために与える液圧設定値は、上記した第1設定値P1 および第1設定値P2 の2種類にするだけでなく、図8に示すように対向車輪に係わるホイールシリンダ液圧目標値の変化割合ΔPo * に応じ、つまり、対向車輪のホイールシリンダ液圧が増圧速度を低下されるにつれ、又その後、減圧に移行して減圧速度を上昇されるにつれ、前記第1の液圧設定値P1 から前記第2の液圧設定値P2 に向けて漸増させることことができる。
この場合、自己車輪のホイールシリンダ液圧変化が図7の期間C,D間に見られるごとくステップ的とならず、連続的となってオーバーシュートを生ずることがなく、当該オーバーシュートにより不要な制動力が発生するといった弊害を解消することができる。
【0071】
また、上記した実施の形態においては図3のステップ62で対向車輪のホイールシリンダ液圧目標値の変化方向を判定し、判定結果に基づきステップ63または64で、ホイールシリンダの液圧応答を改善するための液圧設定値を決定することとしたが、この代わりに、対向車輪のホイールシリンダ液圧目標値の変化方向が車両挙動に基づいて決定されることから、この車両挙動により液圧設定値を決定することもできる。
つまり、対向車輪のホイールシリンダ液圧目標値Po * と、目標ヨーレート(d/dt)φ* に対する実ヨーレート(d/dt)φの偏差Δ(d/dt)φ* =(d/dt)φ−(d/dt)φ* と、目標ヨーモメント量ΔM* と、車両横滑り角βとの間には
o * ≒K1 ・ΔM* ≒K2 ・Δ(d/dt)φ* ≒K3 ・β
(但し、K1 ,K2 ,K3 は比例定数)
の関係があり、これらヨーレート偏差Δ(d/dt)φ* 、目標ヨーモメント量ΔM* 、および車両横滑り角βの時系列変化を併記した図7から明らかなように、当該車両挙動により液圧設定値P1 ,P2 を決定しても何ら不都合はないことが判る。
【0072】
ヨーレート偏差Δ(d/dt)φ* を例にとって、図7を参照しつつ説明すると、図3のステップ62において、ヨーレート偏差Δ(d/dt)φ* が制御開始時におけるヨーレート偏差Δ(d/dt)φ2 を越えており、且つ、尚も増大していると判定する図7のC期間中は、対向車輪のホイールシリンダ液圧目標値Po * の上昇により当該不所望な挙動が修正されている最中で、自己のホイールシリンダ液圧目標値P* が挙動制御用に上昇を指令されることはないから、図3のステップ63で自己のホイールシリンダ液圧目標値P* を前記第1の液圧設定値P1 にし、
ヨーレート偏差Δ(d/dt)φ* が減少している図7のD期間中は、対向車輪の制動による挙動制御が終盤に差しかかっており、自己のホイールシリンダ液圧目標値P* が直近に挙動制御用の上昇を指令される可能性が高いことから、図3のステップ64で自己のホイールシリンダ液圧目標値P* を前記第2の液圧設定値P2 にする。
【0073】
よって、本当に自己車輪のホイールシリンダ液圧応答が要求される後者の場合おいて、確実にこの要求を満足させることができるとともに、前者の場合から後者の場合への移行時も自己車輪のホイールシリンダ液圧が第1の液圧設定値P1 にされているため、ここでの液圧応答も高めることができる。
【0074】
そして、前者のようにヨーレート偏差Δ(d/dt)φ* が制御開始時におけるヨーレート偏差Δ(d/dt)φ2 を越えており、且つ、尚も増大している場合は、図7のC期間のようにこの不適切な挙動を解消するために対向車輪のホイールシリンダ液圧(Po * )が上昇されているのが普通で、この時自己のホイールシリンダ液圧(P* )を上記のように低い第1の液圧設定値P1 にすることは、また、後者のようにヨーレート偏差Δ(d/dt)φ* が減少している場合は、図7のD期間のように対向車輪の制動による挙動制御が終盤に差しかかって当該対向車輪のホイールシリンダ液圧(Po * )が低下されているのが普通で、この時自己のホイールシリンダ液圧(P* )を上記のように高い第2の液圧設定値P2 にすることは、車両全体としての制動力が変化するのを防止することに通じ、運転者に制動を感じさせなくすることができる。
従って、運転者に制動を感じさせることなく、上記ホイールシリンダの液圧応答の向上を実現して、挙動制御の応答遅れを確実に解消することができる。
【0075】
なお、車両挙動としてヨーレート偏差Δ(d/dt)φ* に代え、前記した目標ヨーモーメント量ΔM* 、或いは、車体横滑り角βをモニタしても同様に所期も目的を達成し得ることは言うまでもないし、制御因子のバリエイションが増えて実用性を高めることができる。
【0076】
図4および図5はステップ71で、狙い通りの車両挙動を実現するための全輪のホイールシリンダ液圧目標値が大気圧(Pmin 未満)であると判断した場合における、ホイールシリンダの液圧応答対策に関した2種類の実施形態を示す。
なお何れの実施形態においても、ステップ71において1輪でもホイールシリンダ液圧目標値がPmin 以上であると判断した場合は、ステップ72において、図3における前記したホイールシリンダ液圧制御を行うものとする。
【0077】
先ず図4の実施形態になる液圧応答対策を説明するに、ステップ73においては、実ヨーレート(d/dt)φと目標ヨーレート(d/dt)φ* との大小比較を行い、両者が同じなら制御をステップ72に進めて図3での制御を行わせる。
実ヨーレート(d/dt)φが目標ヨーレート(d/dt)φ* よりも大きいと判定した場合、これを解消するために旋回方向外側車輪の制動が指令される可能性が高いため、ステップ74において、図7のB期間に1点鎖線δで示すように旋回方向外側車輪のホイールシリンダ液圧目標値を、バラツキによっても確実に制動力を発生し始めるホイールシリンダ液圧に対応した高い第2の液圧設定値P2 にし、他の車輪のホイールシリンダ液圧目標値を、制御可能なホイールシリンダ液圧下限値に対応した低い第1の液圧設定値P1 にする。
しかるに、ステップ73で実ヨーレート(d/dt)φが目標ヨーレート(d/dt)φ* よりも小さいと判定した場合、これを解消するために旋回方向内側車輪の制動が指令される可能性が高いため、ステップ75において、旋回方向内側車輪のホイールシリンダ液圧目標値を高い第2の液圧設定値P2 にし、他の車輪のホイールシリンダ液圧目標値を低い第1の液圧設定値P1 にする。
【0078】
なお、上記のようにP2 またはP1 に設定した各車輪のホイールシリンダ液圧目標値は、ステップ65〜67において、図3において説明したと同様にして達成される。
よって、全輪のホイールシリンダ液圧目標値が大気圧(Pmin 未満)である場合においても、実ヨーレート(d/dt)φを目標ヨーレート(d/dt)φ* に一致させる挙動制御のためにホイールシリンダ液圧制御を開始される可能性の高い車輪のホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値P2 にして待機し、ホイールシリンダ液圧制御を当面は開始されない他の車輪のホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値P1 にして待機することから、
直近にホイールシリンダ液圧の応答が要求される前者の車輪について、確実にこの要求を満足させることができるとともに、後者の車輪についてはホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値P1 にしているため、当該車輪が次にホイールシリンダ液圧の応答を要求される事態になって第2の液圧設定値P2 にされる時の液圧応答も高めることができる。
【0079】
また、前者の車輪がホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値P2 にされている時は、後者の車輪がホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値P1 にされていることから、前者の車輪と後者の車輪が同時にホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値P2 にされることがないため、運転者に制動を感じさせるようなこともない。
【0080】
次に図5の実施形態になる液圧応答対策を説明するに、ステップ83ではステアリング特性がオーバーステア傾向か、アンダーステア傾向かを以下により判定する。
実ヨーレート(d/dt)φが正である場合を左旋回とし、実ヨーレート(d/dt)φと、目標ヨーレート(d/dt)φ* との偏差Δ(d/dt)φ* をΔ(d/dt)φ* =(d/dt)φ−(d/dt)φ* とすると、
(d/dt)φ>0で、且つ、Δ(d/dt)φ* >0の時、オーバーステア傾向、
(d/dt)φ<0で、且つ、Δ(d/dt)φ* >0の時、アンダーステア傾向、
(d/dt)φ>0で、且つ、Δ(d/dt)φ* <0の時、アンダーステア傾向、
(d/dt)φ<0で、且つ、Δ(d/dt)φ* <0の時、オーバーステア傾向、
としてステアリング特性の判定を行うことができる。
【0081】
オーバーステア傾向の対策は、図9(a)に左旋回の場合を示すように前輪6L,6Rに制動力を与えて前輪コーナリングフォースを低下させるか、または、旋回方向外側車輪(図では、旋回方向外側前輪6R)に制動力を与えてオーバーステ傾向をキャンセルするヨーモメントを発生させることで、ニュートラルステアにすることができる。
アンダーステア傾向の対策は、図9(b)に左旋回の場合を示すように後輪7L,7Rに制動力を与えて後輪コーナリングフォースを低下させるか、または、旋回方向内側車輪(図では、旋回方向内側前輪6L)に制動力を与えてアンダーステ傾向をキャンセルするヨーモメントを発生させることで、ニュートラルステアにすることができる。
【0082】
従って、ステップ83でステアリング特性がオーバーステア傾向であると判定した場合、これを解消するために前輪6L,6Rの制動が指令されるか、旋回方向外側車輪の制動が指令される可能性が高いため、ステップ84において、前輪6L,6Rのホイールシリンダ液圧目標値、または旋回方向外側車輪のホイールシリンダ液圧目標値を、図7のB期間に1点鎖線δで示すように、バラツキによっても確実に制動力を発生し始めるホイールシリンダ液圧に対応した高い第2の液圧設定値P2 にし、他の車輪のホイールシリンダ液圧目標値を、制御可能なホイールシリンダ液圧下限値に対応した低い第1の液圧設定値P1 にする。
しかるに、ステップ83でステアリング特性がアンダーステア傾向であると判定した場合、これを解消するために後輪7L,7Rの制動が指令されるか、旋回方向内側車輪の制動が指令される可能性が高いため、ステップ85において、後輪7L,7Rのホイールシリンダ液圧目標値、または旋回方向内側車輪のホイールシリンダ液圧目標値を高い第2の液圧設定値P2 にし、他の車輪のホイールシリンダ液圧目標値を低い第1の液圧設定値P1 にする。
【0083】
なお、上記のようにP2 またはP1 に設定した各車輪のホイールシリンダ液圧目標値は、ステップ65〜67において、図3において説明したと同様にして達成される。
よって、全車輪のホイールシリンダ液圧目標値が大気圧(Pmin 未満)である場合においても、上記ステアリング特性の改善用にホイールシリンダ液圧制御を開始される可能性の高い車輪のホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値P2 にして待機し、ホイールシリンダ液圧制御を当面は開始されない他の車輪のホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値P1 にして待機することから、
直近にホイールシリンダ液圧の応答が要求される前者の車輪について、確実にこの要求を満足させることができるとともに、後者の車輪についてはホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値P1 にしているため、当該車輪が次にホイールシリンダ液圧の応答を要求される事態になって第2の液圧設定値P2 にされる時の液圧応答も高めることができる。
更に、前者の車輪がホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値P2 にされている時は、後者の車輪がホイールシリンダ液圧を低い第1の液圧設定値P1 にされていることから、前者の車輪と後者の車輪が同時にホイールシリンダ液圧を高い第2の液圧設定値P2 にされることがなく、運転者に制動を感じさせるようなこともない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態になる車両の挙動制御装置を担うブレーキシステムを示すシステム図である。
【図2】同実施の形態におけるコントローラが実行する挙動制御用ホイールシリンダ液圧目標値の演算プログラムを示すフローチャートである。
【図3】同コントローラが実行する各輪のホイールシリンダ液圧制御プログラムを示すフローチャートである。
【図4】各輪のホイールシリンダ液圧制御プログラムに係わる他の実施形態を示すフローチャートである。
【図5】各輪のホイールシリンダ液圧制御プログラムに係わる更に他の実施形態を示すフローチャートである。
【図6】図1のブレーキシステムにおける増圧弁および減圧弁の開状態での圧力変化特性で、
(a)は、増圧弁による増圧割合の変化特性を示し、
(b)は、減圧弁による減圧割合の変化特性を示す。
【図7】図3によるホイールシリンダ液圧制御を示す動作タイムチャートである。
【図8】非作動を指令された車輪のホイールシリンダ液圧に、液圧応答の改善用に与えておく設定圧の変化特性を示す線図である。
【図9】(a)は、オーバーステア傾向をニュートラルステアにするために制動すべき車輪を示す説明図、
(b)は、アンダーステア傾向をニュートラルステアにするために制動すべき車輪を示す説明図である。
【図10】ホイールシリンダへのブレーキ液量とホイールシリンダ液圧との関係を示す線図である。
【符号の説明】
1 ブレーキペダル
2 マスターシリンダ
3 ブレーキ液リザーバ
6L 左前輪
6R 右前輪
7L 左後輪
7R 右後輪
11 ポンプ
12 アキュムレータ
13 圧力源切換弁
14 圧力源切換弁
15 圧力源切換弁
16 圧力源切換弁
17L 増圧弁
17R 増圧弁
18L 増圧弁
18R 増圧弁
19L 減圧弁
19R 減圧弁
20L 減圧弁
20R 減圧弁
21 アキュムレータ
22 アキュムレータ
23 ポンプ
24 ポンプ
30 コントローラ
31 左前輪用車輪速センサ
32 右前輪用車輪速センサ
33 左後輪用車輪速センサ
34 右後輪用車輪速センサ
35 横加速度センサ
36 車両加速度センサ
37 ヨーレートセンサ
38 舵角センサ
39 ブレーキスイッチ
40 マスターシリンダ液圧センサ

Claims (9)

  1. 各車輪のホイールシリンダ液圧を個々に制御して車両の挙動を狙い通りのものにするための装置において、
    前記狙い通りの車両挙動を実現するためのホイールシリンダ液圧目標値が大気圧である場合、該当車輪のホイールシリンダ液圧を、車両横方向または前後方向における対向車輪のホイールシリンダ液圧変化方向に応じ、
    該対向車輪のホイールシリンダ液圧が増圧中である時は、制御可能なホイールシリンダ液圧下限値に対応した第1の液圧設定値にし
    該対向車輪のホイールシリンダ液圧が減圧中である時は、制動力を発生開始可能なホイールシリンダ液圧に対応した第2の液圧設定値にするよう構成したことを特徴とする車両の挙動制御装置。
  2. 請求項1において、前記該当車輪のホイールシリンダ液圧を、前記対向車輪のホイールシリンダ液圧が増圧速度を低下されるにつれ、又その後、減圧に移行して減圧速度を上昇されるにつれ、前記第1の液圧設定値から前記第2の液圧設定値に向けて漸増させるよう構成したことを特徴とする車両の挙動制御装置。
  3. 各車輪のホイールシリンダ液圧を個々に制御して車両の挙動を狙い通りのものにするための装置において、
    前記狙い通りの車両挙動を実現するためのホイールシリンダ液圧目標値が大気圧である場合、該当車輪のホイールシリンダ液圧を、車両挙動実際値と前記狙いとする車両挙動目標値との挙動偏差、および該挙動偏差の変化速度に応じ、
    該挙動偏差が制御開始時における偏差を越えており、且つ、尚も増大している間は、制御可能なホイールシリンダ液圧下限値に対応した第1の液圧設定値にし
    該挙動偏差が減少している間は、制動力を発生開始可能なホイールシリンダ液圧に対応した第2の液圧設定値にするよう構成したことを特徴とする車両の挙動制御装置。
  4. 請求項において、前記挙動偏差をヨーレート偏差、または、目標ヨーモーメント、或いは、車体スリップ角としたことを特徴とする車両の挙動制御装置。
  5. 各車輪のホイールシリンダ液圧を個々に制御して車両の挙動を狙い通りのものにするための装置において、
    前記狙い通りの車両挙動を実現するための全輪のホイールシリンダ液圧目標値が大気圧である場合、車両挙動実際値と前記狙いとする車両挙動目標値との大小比較から、車両挙動を目標値に一致させるために前記ホイールシリンダ液圧制御が開始される可能性の高い車輪のホイールシリンダ液圧を、制動力を発生開始可能なホイールシリンダ液圧に対応した第2の液圧設定値にし、他の車輪のホイールシリンダ液圧を、制御可能なホイールシリンダ液圧下限値に対応した第1の液圧設定値にするよう構成したことを特徴とする車両の挙動制御装置。
  6. 各車輪のホイールシリンダ液圧を個々に制御して車両の挙動を狙い通りのものにするための装置において、
    前記狙い通りの車両挙動を実現するための全輪のホイールシリンダ液圧目標値が大気圧である場合、車両の挙動方向ごとに、車両挙動実際値と前記狙いとする車両挙動目標値との挙動偏差からステアリング特性がオーバーステア傾向かアンダーステア傾向かを判断し、該判定結果からステアリング特性改善のために前記ホイールシリンダ液圧制御が開始される可能性の高い車輪のホイールシリンダ液圧を、制動力を発生開始可能なホイールシリンダ液圧に対応した第2の液圧設定値にし、他の車輪のホイールシリンダ液圧を、制御可能なホイールシリンダ液圧下限値に対応した第1の液圧設定値にするよう構成したことを特徴とする車両の挙動制御装置。
  7. 請求項において、ステアリング特性がオーバーステア傾向である時、前記ホイールシリンダ液圧制御が開始される可能性の高い車輪を前輪または旋回方向外側車輪として、これら前輪または旋回方向外側車輪のホイールシリンダ液圧を前記第2の液圧設定値にすると同時に、他の後輪または旋回方向内側車輪のホイールシリンダ液圧を前記第1の液圧設定値にし、
    ステアリング特性がアンダーステア傾向である時、前記ホイールシリンダ液圧制御が開始される可能性の高い車輪を後輪または旋回方向内側車輪として、これら後輪または旋回方向内側車輪のホイールシリンダ液圧を前記第2の液圧設定値にすると同時に、他の前輪または旋回方向外側車輪のホイールシリンダ液圧を前記第1の液圧設定値にするよう構成したことを特徴とする車両の挙動制御装置。
  8. 請求項1乃至のいずれか1項において、圧力源からの液圧を各車輪のホイールシリンダに個々に供給する供給回路中に増圧弁を設けるとともに、これら増圧弁と対応するホイールシリンダとの間を個々に減圧可能な減圧弁を設け、
    各車輪のホイールシリンダ液圧を、対応する増圧弁の開と減圧弁の閉とで増圧させ、対応する増圧弁の閉と減圧弁の開とで減圧させることにより、個々に制御可能にしたことを特徴とする車両の挙動制御装置。
  9. 請求項において、前記圧力源としてマスターシリンダの他にポンプを具え、これらマスターシリンダからの液圧と、ポンプからの液圧とを切換え使用することで、マスターシリンダからの液圧が存在しない間でも車輪のホイールシリンダ液圧を制御可能にしたことを特徴とする車両の挙動制御装置。
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