JP3867151B1 - 外科用吻合器 - Google Patents
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Abstract
【課題】 実質臓器内の細径管と消化管との吻合技術において、吻合すべき器官に与える損傷を極力少なくし、確実に吻合を行うこと、それほど高度な熟練を要することなく吻合を行い、吻合に要する時間を短縮して、術者に与えるストレスを軽減する外科用吻合器を提供する。
【解決手段】 本体は、筒状部及び滑らかな先細り形状の先端部を有し、本体の先端側において内部に空洞部が形成され、空洞部の底部における孔から空洞部の底部より後方において本体の外周面における側孔に連なって延び直線状または緩い曲線状の外方に広がる経路をなして延びるガイド部が形成され、本体の筒状部の軸方向に空洞部の底部と筒状部の後端面との間に貫通する通口が形成されており、本体に挿入される操作部材は、本体の筒状部の軸方向に形成された通口内に挿入され先端が本体の空洞部内に達する棒状または筒状の操作杆の先端側に、本体のガイド部内に挿通される向きに延びる針押込み部材が取り付けられ、操作杆の後端側に操作把持部設けられてなり、本体における少なくとも1本のガイド部内にそれぞれ吻合に必要な長さの糸を接続した少なくとも1本の針が留置されており、本体の空洞部は操作部材の操作把持部を後方に引いて吻合を行う際に操作杆の先端側に取り付けられた針押込み部材が針に係合し押し込んで吻合を行うのに必要な行程だけ移動できるだけの空間を与えるようにする。
【選択図】 図1
【解決手段】 本体は、筒状部及び滑らかな先細り形状の先端部を有し、本体の先端側において内部に空洞部が形成され、空洞部の底部における孔から空洞部の底部より後方において本体の外周面における側孔に連なって延び直線状または緩い曲線状の外方に広がる経路をなして延びるガイド部が形成され、本体の筒状部の軸方向に空洞部の底部と筒状部の後端面との間に貫通する通口が形成されており、本体に挿入される操作部材は、本体の筒状部の軸方向に形成された通口内に挿入され先端が本体の空洞部内に達する棒状または筒状の操作杆の先端側に、本体のガイド部内に挿通される向きに延びる針押込み部材が取り付けられ、操作杆の後端側に操作把持部設けられてなり、本体における少なくとも1本のガイド部内にそれぞれ吻合に必要な長さの糸を接続した少なくとも1本の針が留置されており、本体の空洞部は操作部材の操作把持部を後方に引いて吻合を行う際に操作杆の先端側に取り付けられた針押込み部材が針に係合し押し込んで吻合を行うのに必要な行程だけ移動できるだけの空間を与えるようにする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、外科用吻合器に関し、より詳細には、実質臓器細径管と消化管との吻合のように、体内の2つの器官の間での吻合を行うための医療用または獣医用に用いられる外科用吻合器に関する。
例えば、消化器外科の臨床において、肝臓、膵臓などの実質臓器内の細径管、すなわち肝内胆管や膵管と消化管とを吻合する機会は多くある。その手技は、もともとの細径管の径の細さのみならず、実質臓器が固定されている故、十分な術野の展開が難しいなどの問題があった。
特に、膵頭十二指腸切除時の膵空腸吻合は、吻合部縫合不全が発生した場合、非常に危険とされる。従来、吻合部縫合不全を防ぐ目的で、主膵管内にチューブを留置し膵液のドレナージを体外に行っていた。
それに対し、膵管空腸全層吻合(粘膜吻合)は、膵実質の一部を含む膵管全層と空腸全層とを確実に吻合することにより、吻合部を通じた消化管内に膵液のドレナージを行うものであり、経験数の増加に伴って、縫合不全の発生率が低く、術後の吻合部狭窄の頻度も少ないことが判明し、最近では主流となっている。その際、残膵に随伴性膵炎を伴えば、通常、膵管は拡張・硬化し、粘膜吻合は比較的容易である。逆に、残膵機能が保たれているような症例では、残膵および主膵管は軟らかく、吻合時の膵断端における膵管径は2〜3mm程度と細くなる。この膵管と空腸全層とを損傷することなく6〜8針で吻合するためには、慎重かつ確実な運針が必要であるが、このように膵管径が細いため、従来の糸付き曲針では膵管の適切な位置に刺入しづらく、一旦刺入しても解剖学的な位置関係から術野を展開するのが困難なことが多く、どうしても術野が狭くなりがちで、針の彎曲に沿って持針器を操作しづらくなることがある。これは、拡大鏡を用いても回避できなかった。このように膵管と空腸との吻合は、熟練者にとっても非常にストレスを受ける手術操作であった。
また、縫合箇所が多いほど吻合に要する時間は長くなり、例えば8針の縫合・結紮の場合、40分程度の時間が必要であった。
従来の吻合器として、次のような文献に開示されたものがあった。
特開平9−289991号公報
特開平10−118078号公報
特公平5−79336号公報
特開平4−226644号公報
特表2003−509102号公報 特許文献1、2は、縫合でなく、ステープルやクリップにより吻合を行うものであり、ステープル等が体内に長時間または永久的に残存するものであった。特許文献3は、縫合による吻合器が示されているが、これは直腸、食道等の巾着縫合によるものであり、適用箇所が限られ、実質臓器細径管と消化管との吻合のような場合には適合しないものであった。
特許文献4は、胃と食道との吻合部を陥入させて胃底壁を内側に曲げ、胃食道逆流の矯正を行うものであり、内側に曲げた胃底壁の部分をステープル止めし、陥入装置から針を突出させるものであって、吻合の手順としては複雑になるとともに、実質臓器細径管と消化管との吻合を行うには適切でない。
特許文献5は、移植血管の端部側を大動脈の側部に縫合する装置であり、縫合装置のハウジング内の縫合糸を接続した針が移植血管の端部近辺を通過し、ガイドチャンネルに沿って方向を変え、大動脈を通って手前側に戻されるようにしたものである。この針は形状記憶合金で形成され、曲線状のガイドチャンネルに沿って変形しながら進んで行くが、ガイドチャンネルは一度ハウジングの中心軸近辺に近づいた後放射方向に向きを変えるようにしており、ガイドチャンネルの曲率が大きくなり、針の材質としてこの曲率に従うことができる程度に柔軟な形状記憶合金を用いた場合には、実際上縫合ができなくなるという難点を有している。曲率をある程度大きくしようとすれば、ハウジングの径、寸法が大きくならざるを得ず、縫合の手術に適切なものではなくなる。
本発明者は、実質臓器細径管と消化管との吻合を行うのに適切な小型の寸法の割合に、針が進むガイド部の曲率がそれほど大きくならないようにガイド部を設け、より確実に吻合がなされるようにした外科用吻合器の発明について、特願2004−372723号として出願した。ただし、この外科用吻合器においても、実際には吻合器として許容される形状、寸法の関係から、ガイド部の曲率が大きくならざるを得ず、設計上、操作上では難点を有していた。
膵頭十二指腸切除時における膵空腸吻合部の縫合不全の発生率は10〜30%であり、膵空腸吻合部の縫合不全は最悪の場合致死的要因となり得るものであり、膵管のような実質臓器内の細径管と消化管との吻合技術において、吻合すべき器官に与える損傷を極力少なくし、確実に吻合を行うこと、それほど高度な熟練を要することなく吻合を行い得ること、術者に与えるストレスを軽減することが望まれていた。また、例えば膵管と消化管の吻合の場合、吻合に要する時間が長くなると、膵液が漏れて他の器官に悪影響を及ぼすこと、麻酔時間が延長することなどにより、不都合が生じており、吻合に要する時間を極力短縮することが望まれていた。このために、従来提案されていた形状記憶合金製の変形可能な針を用いた吻合器として、実際に吻合手術に適切な寸法、形状のもので、かつ確実な運針を行うように針をガイドできるものを作成するには難点があった。
本発明は、前述の課題を解決すべくなしたものであり、本発明による外科用吻合器は、筒状部及び滑らかな先細り形状の先端部を有する本体であって、前記本体の先端側において内部に空洞部が形成され、該空洞部の底部における少なくとも1つの孔から該空洞部の底部より後方において前記本体の外周面における少なくとも1つの側孔に連なって延び直線状または緩い曲線状の外方に広がる経路をなして延びる少なくとも1本のガイド部が形成され、前記本体の筒状部の軸方向に前記空洞部の底部と前記筒状部の後端面との間に貫通する通口が形成されている本体と、前記本体の筒状部の軸方向に形成された通口内に挿入され先端が前記本体の空洞部内に達する棒状または筒状の操作杆と、該操作杆の先端側に取り付けられ前記本体のガイド部内に挿通される向きに延びる針押込み部材と、前記操作杆の後端側に取り付けられるかまたは一体的に形成された操作把持部とからなる操作部材と、前記本体における少なくとも1本のガイド部内に留置されそれぞれ吻合に必要な長さの糸を接続した少なくとも1本の針と、を備えてなり、前記本体の空洞部は前記操作部材の操作把持部を後方に引いて吻合を行う際に前記操作杆の先端側に取り付けられた針押込み部材が前記針に係合して押し込んで吻合を行うのに必要な行程だけ移動できるだけの空間を与えるようにしたものである。
前記本体の先端部の先細り形状の部分の後側に続いて先広がり状の円錘面が形成され、該先広がり状の円錐面に前記本体の側孔が形成され、前記操作部材の先端側に取り付けられた針押込み部材が前記ガイド部を通って進む際に該ガイド部の広がる形状に応じられるように変形可能でかつ針を押し込める剛性を有する材料で形成されるようにしてもよい。
前記操作杆が棒状であって、前記本体の筒状部内面及び/または前記操作部材の操作杆の外面において、前記本体または操作杆の軸方向の溝が形成され、該溝に沿って前記針に接続された糸が前記本体の筒状部内の通口に沿って後方に導かれるようにしてもよい。
前記操作部材の操作杆が筒状であるとともに前記操作部材の針押し込み部材が前記ガイド部を通って進む際に該ガイド部の広がる形状に応じられるように変形可能でかつ針を押し込める剛性を有する筒状の部材で形成され、該針押込み部材の先端側が支持部材により該操作杆の先端側に取り付けられて、前記針に取り付けられた糸が前記針押込み部材を通り抜けた後前記操作杆を先端側から後方に向かって通されるようにしてもよい。
前記針が形状記憶合金により形成されたものとしてもよい。
前記本体の筒状部の内面と前記操作部材の操作杆の周面との一方に凸部が形成され、他方において該凸部を軸方向に案内するための溝が形成されるようにしてもよい。
前記本体の外周面における側孔に剥離可能なシートを貼り付けて閉塞してもよい。
前記本体の後端部近くの位置と前記操作把持部とにわたって係脱可能な抜け止め部材を設けてもよい。
本発明による吻合器は、高度な熟練を要することなく、確実な運針を保証するものであり、吻合部縫合不全の発生率を格段に低減することができ、縫合不全を未然に防ぐ上で多大な効果を有するものである。また、細径管が細く、術野が狭くなりがちなことから術者が受けるストレスの軽減に大きく寄与するとともに、吻合に要する時間を格段に短縮することができるので、吻合に要する時間が長いために、臓器分泌液が漏れて他の器官に悪影響を及ぼすことが防止され、麻酔の作用時間との関係においてもより安全になる。さらに、吻合器として許容される形状、寸法の関係においてもガイド部の曲率を適度に小さくすることができ、吻合の動作の面でも有利になる。
本発明に係る外科用吻合器の実施形態を図を参照して説明する。
図1の(a)〜(d)は1本の針を装填する吻合器の構成を全体的には断面図として示したものであり、図1(a)は操作部材、(b)は本体、(c)は本体に操作部材を挿入した吻合器を示し、(d)は(c)の状態からさらに操作部材を後方に引いた状態の吻合器を示している。図1(a)において、操作部材4は、棒状または筒状の操作杆7と、操作杆7の先端側取り付けられた針押込み部材6と、操作杆7の後端側に取り付けられた把持部9とからなる。把持部9は操作杆7と一体的に形成してもよい。針押込み部材6は吻合の際に針を押込むのに必要な剛性を有するとともに、押込み動作においてある程度変形し得る材料、アルミニウムあるいは剛性が大きくある程度変形可能な剛性樹脂材料等で形成される。
図1(b)において、吻合器の本体11は図1(a)の操作部材4を挿入する構造となるものであり、筒状部12と、その先方に連なる先細り形状の先端部13とを有しており、外形は臓器内に挿入し易いように滑らかになっている。筒状部12は長いので一部省いて示してある(以下において同様とする)。本体の先端部13の内側には空洞部15が形成され、筒状部12には空洞部15から本体の後端までに連通する通口16が形成されている。
本体の先細り形状の先端部13の後側に外方に広がる略円錐形状の面14が形成され、この部分において側孔18が形成され、先端部13内の空洞部15から側孔18までが連通していて針のガイド部1になっている。ガイド部1は吻合前に針を収納し、吻合の際に針とその後端を押す針押込み部材6とを案内する作用をするものである。
吻合の際に針2は本体の側孔18から緩く外方に広がる角度で進むのが望ましく、そのため針押込み部材が本体の先端側の空洞部15の内面から側孔18に続くガイド部1に沿って案内されつつ、外方に緩く広がるようにするのがよい。したがって、側孔18からガイド1を経て空洞部15の内面に続く部分の形状は針押込み部材6を緩く外方に広がる角度で進むようなものとするのが望ましい。また、本体の軸方向における空洞部15の長さは、吻合の際に針押し部材6によって針を進める行程の分(例えば10mm程度)だけを確保する必要がある。
ガイド部1の内径は針及び針押込み部材6の径より若干大きい内径となるように形成する。また、この例は針が1本装填される場合であるので、側孔18は1つであり、外方に広がる略円錐形状の面14は本体の筒状部12の軸に対し一方の側に張り出した形になる。
図1(c)は、(b)の本体11に(a)の操作部材4を挿入し、糸3のついた針2を装填した吻合器を全体的に示している。針2に接続された糸3はガイド部1から、本体の先端側内の空洞部15を通って、筒状部12内の通口16内に導かれている。針2はガイド部1が直線状である場合には鋼等で形成されるが、ガイド部1に若干の曲率をもたせる場合には形状記憶合金により形成するのがよい。形状記憶合金として例えばTiNi合金、超弾性TiNi合金が使用できる。針2は例えば長さ10mm、糸3の接続される後端の径が0.5mm程度である。糸3は実質臓器細径管と消化管とを縫合するものであり、膵空腸の手術用に、体内で非吸収性材質の糸としてはポリプロピレン等の糸が用いられ、ある時間経過後に体内で吸収されるものとして、ナイロン、ポリエチレングリコール等の材質の糸を用いることができる。手術に使用できる具体的な糸3の大きさは、USP−2−0〜USP−5−0などが適宜使用できるが、糸3の大きさは手術を行う医者の判断に任せられている。
吻合の際に本体の後端側を把持するとして、本体11の筒状部12の後端から側孔18までの距離は、本体11の後端から針2が吻合の際に進む行程と本体を把持する部分とを合わせた長さ以上とする必要があり、その点と、本体の先端側の空洞部15に必要な軸方向の長さとをもとに本体全体の長さが決定される。糸3の長さは吻合部分を針2貫通した後に糸3を結びつけるのに十分な長さとすることが必要である。
図1(d)は、(c)の状態から、吻合の際に操作部材4の把持部9を持って後方に引いた状態を示しており、操作部材4の操作杆7に取り付けられた針押込み部材6が後方に移動し、ガイド部1内に留置された針2をそれに接続された糸3とともに外方に押し出している。
図1(a)〜(d)に示した吻合記では、針押込み部材6としてある程度剛性の大きい材料のものを用いていて、それほど大きく変形できないため、本体11の先端部13内のガイド部1は外方に緩く広がる状態で針を放出するような形状になる。したがって、先端部13のガイド部1のある部分が外方に若干張り出た形状になる。この本体11の先端部13が張り出るのをなくすには、針押込み部材6として、針を押し込むのに必要な剛性を有しつつ、さらに大きく変形可能でもある剛性樹脂材料のもの用いればよい。
このような大きく変形可能な針押込み部材6を用いた場合、吻合器は図2(a)に示すように、先端部13が外方に張り出さない形状にできる。この場合ガイド部1は、主として図2(a)で針2より右方に位置する面の曲線形状で針2,針押込み部材6をガイドすることになる。針2はガイド部1の曲線状部分に留置されるので曲針とする。この曲線形状は図1(b)の場合より曲率が大きくなる。針2の左方の位置ではガイド部1の肉厚はある程度なくなっており、このため、側孔18は側方から見て縦に長いスリット状になる。
図2(a)で操作杆7が上方にある状態では、針押込み部材6はガイド部1の曲線状部分に達しておらず、外方に広がっていない。操作杆7を下方に引くと針押込み部材6は、針押込み部材6の先端側からガイド部1の曲線形状に従って変形しつつガイド部1に従って糸のついた針2を押し出していき、図2(b)のように糸のついた針2を放出する。
図3(a)は図1(c)における本体の先端部における針及び針押込み部材の部分を拡大して示したものである。吻合前の状態で針2は本体の先端部13のガイド部1内において側孔18の近くで外方に出ない位置に留置されている。ガイド部1は針2がスムーズに通過できるように針2の径より若干大きい程度の内径であり、針2の径が0.5mmの場合0.7mm程度として横方向になるべく揺れないようにする。針2を後端側から押す棒状の針押込み部材6も針2と同等の径を有するものとする。針押込み部材6が針2を後面側から押す状態で、針2の後端側に接続された糸3は側方に押しやられることになる。そのためガイド部1には、図3(a)のB−B線上にとった断面を示す図3(b)のように、糸2が通るための溝部1aが設けられる。針押込み部材6が針2を後端側から押す際に、糸はガイド部1に設けられた溝部1aに寄せられて通過できるので、糸3を接続した針2の押込みがスムーズになされる。この点は、図2(a)に示したような場合でも同様である。
また、吻合を行う際に、本体11に対して操作部材4を手前側に引いて針押込み部材6により糸3のついた針2を押込んでいくと、糸3は本体の筒状部内の通口16内で先端部側に向かって進む。このため、通口16内で糸3は操作部材4の操作杆7と逆の向きの動きになり、糸3は通口16の内面と操作杆7の周面との間に挟まれて吻合のための動作に支障を与えがちになる。そのため、図1(c)における本体の筒状部のC−C線上にとった断面を示す図3(c)のように、操作杆7の周面において、その軸方向に平行な溝部7aを設けておき、糸3がこの溝部7aに沿って導かれるようにすれば、操作杆7と糸3との間での干渉が避けられる。この糸3が通る溝部7aは操作杆7側に設けた例を示したが、通口16の内面側に設けてもよく、あるいは、部分的に両方に設け、両方を合わせて糸の通路を与えるようにしてもよい。
さらに、図3(c)において、本体の筒状部内の通口16の内面側に軸方向の溝12aが形成され、これに対応する位置の操作杆7の周面に突起7bを形成したものを示している。これは操作部4を手前側に引く際に、操作部材4が本体11に対して軸方向の周りに回転するのを防止するためのものである。基本的には操作部材4を確実に軸方向に引くことができれば問題はないが、若干でも軸方向の周りの回転が加わると、針押込み部材による針2の押込み動作がスムーズにできなくなる可能性があるので、このような操作部材4の軸周りの回転を防止する手段を適宜設けるのがよい。
吻合器は、図1(b)の吻合器の本体11のガイド部1に糸3の接続された針2を留置し、図1(a)の操作部材4を挿入して構成される(図2(a)のような場合も同様)。このように吻合器を構成するために、本体11は一体型ではなく分割型に形成したものを、操作部材4の挿入後に一体的に接合するものであり、例えば本体11を軸線を通る平面で2分割したものを接合する形態、あるいは筒状部12と先端部13とに分けたものを接合する形態とすることができる。操作部材4の把持部9は操作杆7と一体的に形成してもよいが、別個のものを取り付ける場合には、把持部9以外の操作部材4の部分を本体11に挿入した後に最後に把持部9を取り付ければよい。
図4(a)は、複数本の針を装填する吻合器の構成を示すものであり、1本の針を装填する吻合記の場合と同じ番号により構成部分を示し、本体11内に操作部材4を挿入した状態で示してある。装填する針の数は、吻合の際に同時に運針を行うための針の数であり、2本、4本、6本等、適宜の本数とする。本体11において針が放出される側孔18及びこれに続くガイド部1は軸方向の周りに等角度間隔で配設するのがよく、本体の先端部13の形状は回転対称形になる。各ガイド部には図3(b)に示すような糸3が導かれる溝部1aが形成される。また、操作部材4の操作杆7の周面または本体の筒状部12の内面において糸3が導かれる軸方向の溝部7aを針2の本数と同数だけ設けておくのがよい。
操作部材4の操作杆7の先端側には、ガイド部1内に留置される針2を押込むための装填する針の本数と同数の棒状の針押込み部材6がガイド部1の方向に合うようにして固着される。
図4(a)に示すものでは、図1(a)〜(d)の場合と同様に、針押込み部材6としてある程度剛性のある材料のものを用いており、そのために本体の先端部13が外方に若干広がる形状になるが、針押込み部材6としてより剛性が低く変形し易い材料のものを用いることにより、ガイド部1の曲率を大きくして、図4(b)に示すように本体の先端部13が外方に広がらない形状にすることができる。この場合、各側孔18は軸方向に長いスリット状の形状になり、針2はガイド部1の曲線形状部分に留置されるため曲針を用いる。
図5(a)〜(d)は、操作部材4の操作杆7と針押込み部材6とを筒状にして構成した吻合の例であり、複数本の針を装填する場合を実質的に断面図で示している。図5(a)は、針だけを付随させた状態で操作部材4を示しており、この例による吻合器では、操作部材4の操作杆7と針押込み部材6とがそれぞれ筒状の部材で形成され、糸3がその筒状の部材内を通れるようにしてある。操作杆7は糸が通れるだけの内径を有し、実質的に変形しない剛性のものし、同時に運針する針の本数分だけ設けられる。
針押込み部材6は針2の径と同程度の外径を有し、内径は針2に接続された1本の糸が通過できる程度の大きさとする。また、ガイド部1を滑らかな曲線状とする場合に、針押込み部材6はガイド部に沿って屈曲する必要があり、針押込み部材6はガイド部1に沿って屈曲し得る可撓性を有するとともに、糸3のついた針2を押込めるだけの剛性を有する材料で形成する。針押込み部材6を操作杆7に取り付けるには、図5(a)のように、操作杆7の先端側に針押込み部材6の支持部材としてのフランジ部材5を取り付け、フランジ部材5に針押込み部材6を取り付ける。フランジ部材5には、針押込み部材6を取り付ける位置に孔が形成されており、この孔にそれぞれ針押込み部材6の端部側を挿入して固着する。
図5(b)は吻合器の本体11を実質的に中心軸を通る断面で示しているが、ガイド部1については概念的に示してある。本体11は筒状部12と、その先方に連なる先細り形状の先端部13とを有しており、全体的に滑らかな外形になるように形成されている。本体11の筒状部12から先端部13にかけての内部に空洞部15が形成され、筒状部12において中心の通口16が空洞部15と本体11の後端との間に貫通するように形成されている。また、空洞部15の底部における孔17から本体の筒状部11の周面における側孔18に連なるガイド部1が同時に運針を行う針の本数分だけ形成されている。ガイド部1は空洞部15の底部における孔17から筒状部12の周面における側孔18に達し滑らかな通路をなすように形成される、また、同時に運針を行う針の数だけ形成される。
ガイド部1は内側に針を収納した状態から、直線状または緩く屈曲した経路に沿って針を案内する。図5(b)では曲線状の経路のガイド部1になっており、空洞部15の底部の孔17から中心における通口16を迂回し緩やかに旋回して下降する経路をたどって側孔18に達し、糸3を接続した針2が側孔18から本体の筒状部12の周面に対して緩い角度をなして後方に広がるようなガイド部1の形状としておく。このように曲線状のガイド部1とする場合、針2は形状記憶合金で形成したものとするのがよい。また、本体11内の空洞部15は吻合の際に針を押し出す行程の分だけ操作部材4のフランジ部5が移動できる空間とすること、本対の筒状部12の後端から側孔18までの距離は本体11の後端から針2が吻合の際に進む行程と本体を把持する部分とを合わせた長さ以上とすることは、前出の例の場合と同様である。
図5(c)は図5(b)の本体11において直線D−Dにとった断面図であり、ガイド部1が6本設けられている場合を示している。図5(d)は図5(a)に示した操作部材4を図5(b)に示した本体11に挿入した吻合器を示している。操作部4を本体11に挿入する際に、針2に接続された糸3を、押込み部材6を通して、フランジ部5の穴8から操作杆7内に引き通し、針2の後端が押込み部材6の先端に当接する状態にし、同時に運針を行う分だけの針2を操作部材4に装填しておく。このように糸の接続された針2を付随させた操作部材4の操作杆7を、操作把持部9を取り付けない状態で、本体11の通口16に挿通するとともに、押込み部材6とその先端側にある針2とをそれぞれ開口17からガイド部1に挿入し、針2の先端が側孔18から外方に出ない程度に留置しておく。針2をガイド部1に挿入する段階で形状記憶合金で形成された針2はガイド部1の滑らかな屈曲形状に従って変形した状態になる。
また、各針2をガイド部1内に挿入し、操作杆7の後端が本体11の後端より出てきた段階で、操作杆7の端部側に操作把持部9を取り付け、本体11を接合して、図5(d)に示されるように、吻合を行える状態になる。ただし、吻合開始の段階で、何らかの状況で針2が本体11の側孔18から外方に突出することを防止するために、側孔18の外側に薄いシート(図示せず)を貼り付けておき、吻合を行う際にこのシートを取り外すようにするのがよい。
また、図5(d)に示される状態から、何らかの作用で操作把持部9が引き出されると、針2が側孔18から出ようとすることになるが、これを防止するために、本体11の後端近くの位置に凹部19を少なくとも1箇所形成しておき、操作把持部9にはこの凹部19に係合する凸部を出没可能に設けた抜け止め部材9aを取り付け、あるいは一体的に形成しておくのがよい。吻合を行う際には、この抜け止め部材9aの凸部を凹部19から外し、あるいは折る等により除去すれば、操作把持部9を引き出すことができる状態になる。
このように側孔18の外側に薄いシートを貼り付けること、操作把持部9の抜け止め部材を設けることは、図1、2、4に示した吻合器の場合にも同様に適宜行えばよい。
以上の説明では、本発明の吻合器の代表的な例を示したが、本体や操作部材の形状について、さらに本発明の技術的思想において、変形した形態において実施できるものである。
[吻合の手順]
本発明の吻合器を用いた実質臓器内と消化管の吻合について、膵頭十二指腸切除時の残膵主膵管と空腸を吻合する手順を例として以下説明する。
[吻合の手順]
本発明の吻合器を用いた実質臓器内と消化管の吻合について、膵頭十二指腸切除時の残膵主膵管と空腸を吻合する手順を例として以下説明する。
(a)吻合予定の対側近傍の空腸に小孔を開口させ、その開口に吻合すべき残膵主膵管端を合わせるように引き寄せる。
(b)糸3を接続した針2の運針を行う本数分だけ装填した吻合器を用意する。側孔18をシートで塞いである場合は、シートを除去しておく。吻合器の本体11の後方の部分を持って先端部13を(a)で作製した小孔から挿入し、吻合予定の粘膜面から漿膜側へと貫通させ、目的の残膵主膵管内に挿入する(図6)。
(c)次に、空腸漿膜面の吻合すべき面全体を残膵断面に密着させる。その際、挿入の深さが吻合器の本体11の側孔18の位置が針を放出して吻合を行うのに適当な位置になるようにする。
(b)糸3を接続した針2の運針を行う本数分だけ装填した吻合器を用意する。側孔18をシートで塞いである場合は、シートを除去しておく。吻合器の本体11の後方の部分を持って先端部13を(a)で作製した小孔から挿入し、吻合予定の粘膜面から漿膜側へと貫通させ、目的の残膵主膵管内に挿入する(図6)。
(c)次に、空腸漿膜面の吻合すべき面全体を残膵断面に密着させる。その際、挿入の深さが吻合器の本体11の側孔18の位置が針を放出して吻合を行うのに適当な位置になるようにする。
(d)吻合を行う位置で本体11の後方を一方の手の指で把持した状態で、吻合器の操作把持部9を他方の手の指で持って手前に引く(抜け止め部材が設けられている場合、予め外しておく)。それにより本体11の空洞15内のフランジ5及び押込み部材6が下方に(図7で左方に)移動し、押込み部材6の先端が針2の後面を押す。針2は吻合器への装填の際にガイド部1の形状に従って変形した状態になっているが、押込み部材6の先端で押されながら側孔18から出る時の形状を保って斜め後方の向きに放物線を描くように放出され、残膵主膵管および実質を突き抜け、残膵断面を経て、密着させた空腸漿筋層から空腸粘膜側に貫通する(図7)。
(e)空腸粘膜側に貫通した針2を持針器で把持し、針2および糸3を誘導する。
(f)吻合器をゆっくり抜去すると、針2および糸3だけが残る(図8)。
(e)空腸粘膜側に貫通した針2を持針器で把持し、針2および糸3を誘導する。
(f)吻合器をゆっくり抜去すると、針2および糸3だけが残る(図8)。
(g)針2を糸3から外し、それぞれの糸3の断端を結紮すると、残膵主膵管と空腸全層の吻合が完成する。
(h)最初に作製した小孔を閉鎖する。
以上の(a)〜(h)の手順により吻合が行われる。
(h)最初に作製した小孔を閉鎖する。
以上の(a)〜(h)の手順により吻合が行われる。
吻合器による吻合の動作は、上記手順のうち特に(d)の段階であり、(a)〜(c)はその前段階、(e)〜(h)は後段階になる。(d)の段階で、操作把持部9を引くことにより針2を吻合器内の位置から空腸粘膜側に貫通させるまで押込むことが必要であり、この動作において針2の進む行程は吻合器の本体11内の空洞部15におけるフランジ部5の移動行程に応じたものである。したがって、確実に吻合を行うために、フランジ部5の移動行程、押込み部材6の長さは、針2が吻合の際に最終的に空腸粘膜側に貫通するのを補償するだけのものでなければならない。
すなわち、押込み部材6は、フランジ部5が本体11内の空洞部15の下部に当接する段階で、押込み部材6の先端が本体11の側孔18より出て針2を空腸粘膜側に貫通させるだけの長さを確保する必要がある。また、押込み部材6は、ガイド部1を通り抜けながらこの針2の押込み動作を行うのに適合する剛性及び柔軟性を有する材料のものとする必要がある。さらに、ガイド部1は、針2が押込み部材6に押込まれながら本体11の側孔18から放出されて放物線状の軌道を経て残膵主膵管および実質を突き抜け、残膵断面を経て、密着させた空腸漿筋層から空腸粘膜側に貫通することができるように、滑らかに屈曲した形状とする必要がある。
本発明の吻合器を用いた吻合動作において、結紮は糸3の1本毎に行うことになるが、吻合箇所に針2を貫通させる操作は吻合器に装填された糸3の接続された針2の複数本分だけ同時に行うことができる。例えば、1本毎に針2を貫通させ、8箇所の縫合を行う場合、従来40分程度の時間を要していたが、本発明の吻合器を用いて8本の針2を同時に貫通させ結紮すれば、30分以上時間を短縮することができる。
1 ガイド部
2 針
3 糸
4 操作部材
5 フランジ部(支持部材)
6 押込み部材
7 操作杆
8 穴
9 操作把持部
9a 抜け止め部材
11 本体
12 筒状部
13 先端部
14 略円錐形状の面
15 空洞部
16 通口
17 孔
18 側孔
19 凹部
2 針
3 糸
4 操作部材
5 フランジ部(支持部材)
6 押込み部材
7 操作杆
8 穴
9 操作把持部
9a 抜け止め部材
11 本体
12 筒状部
13 先端部
14 略円錐形状の面
15 空洞部
16 通口
17 孔
18 側孔
19 凹部
Claims (8)
- 筒状部及び滑らかな先細り形状の先端部を有する本体であって、前記本体の先端側において内部に空洞部が形成され、該空洞部の底部における少なくとも1つの孔から該空洞部の底部より後方において前記本体の外周面における少なくとも1つの側孔に連なって延び直線状または緩い曲線状の外方に広がる経路をなして延びる少なくとも1本のガイド部が形成され、前記本体の筒状部の軸方向に前記空洞部の底部と前記筒状部の後端面との間に貫通する通口が形成されている本体と、
前記本体の筒状部の軸方向に形成された通口内に挿入され先端が前記本体の空洞部内に達する棒状または筒状の操作杆と、該操作杆の先端側に取り付けられ前記本体のガイド部内に挿通される向きに延びる針押込み部材と、前記操作杆の後端側に取り付けられるかまたは一体的に形成された操作把持部とからなる操作部材と、
前記本体における少なくとも1本のガイド部内に留置されそれぞれ吻合に必要な長さの糸を接続した少なくとも1本の針と、
を備えてなり、前記本体の空洞部は前記操作部材の操作把持部を後方に引いて吻合を行う際に前記操作杆の先端側に取り付けられた針押込み部材が前記針に係合して押し込んで吻合を行うのに必要な行程だけ移動できるだけの空間を与えるものであることを特徴とする外科用吻合器。 - 前記本体の先端部の先細り形状の部分の後側に続いて先広がり状の円錘面が形成され、該先広がり状の円錐面に前記本体の側孔が形成され、前記操作部材の先端側に取り付けられた針押込み部材が前記ガイド部を通って進む際に該ガイド部の広がる形状に応じられるように変形可能でかつ針を押し込める剛性を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の外科用吻合器。
- 前記操作杆が棒状であって、前記本体の筒状部内面及び/または前記操作部材の操作杆の外面において、前記本体または操作杆の軸方向の溝が形成され、該溝に沿って前記針に接続された糸が前記本体の筒状部内の通口に沿って後方に導かれるようにしたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の外科用吻合器。
- 前記操作部材の操作杆が筒状であるとともに前記操作部材の針押し込み部材が前記ガイド部を通って進む際に該ガイド部の広がる形状に応じられるように変形可能でかつ針を押し込める剛性を有する筒状の部材で形成され、該針押込み部材の先端側が支持部材により該操作杆の先端側に取り付けられて、前記針に取り付けられた糸が前記針押込み部材を通り抜けた後前記操作杆を先端側から後方に向かって通されるようにしたことを特徴とする
請求項1に記載の外科用吻合器。 - 前記針が形状記憶合金により形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の外科用吻合器。
- 前記本体の筒状部の内面と前記操作部材の操作杆の周面との一方に凸部が形成され、他方において該凸部を軸方向に案内するための溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の外科用吻合器。
- 前記本体の外周面における側孔に剥離可能なシートを貼り付けて閉塞したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の外科用吻合記器。
- 前記本体の後端部近くの位置と前記操作把持部とにわたって係脱可能な抜け止め部材を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の外科用吻合器。
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RU2574132C1 (ru) * | 2014-09-15 | 2016-02-10 | Сергей Александрович Гришанков | Способ и устройство для формирования хирургических анастомозов |
WO2016043622A1 (ru) * | 2014-09-15 | 2016-03-24 | Сергей Александрович ГРИШАНКОВ | Способ и устройство для формирования хирургических анастомозов |
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