JP3866850B2 - 誘導加熱方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁性鋼を連続的に送りながらインダクタコイルを通過させ、キューリ点を越える高温(例えば1200℃)に加熱する誘導加熱装置の待機運転機能に関するもので、かかる誘導加熱装置の待機運転中の放出材および待機運転から定常運転へ切替え後の過度的な不適温材の放出を低減させ、不適温材放出に伴い発生する電力損失を低減させ、また、放出材の冷却・再加熱に伴う品質管理、再投入作業の煩雑さを低減させるものである。
【0002】
【従来の技術】
図2は、従来の誘導加熱装置の構成の一例を示すもので、インダクタコイルは整合部を介して1台の高周波電源に接続されている。所定寸法に切断された磁性鋼片は、送り機構により所定速度でインダクタコイル内に送り込まれ、インダクタコイルを通過する間に所定温度に加熱されて、排出機構で次工程へ排出される。
誘導加熱装置においては、後工程の寸停止中には、誘導加熱装置を待機運転状態として、誘導加熱装置からの加熱材の放出を最小にし、また、定常運転へ切替え時には、素早く適温の加熱材を後工程に供給することが要求される。
【0003】
この要求を満足させるためには、後工程の寸停止中には、誘導加熱装置の送りを停止させインダクタコイルの電力を制御して、送り停止中もインダクタコイル内の加熱材の温度分布(ヒートパターン)が定常運転中のそれと変わらないようにしておき、定常運転へ切替え時に、誘導加熱装置を定常運転に戻せば良い訳であるが、この種の誘導加熱装置では、送りを止めてヒートパターンを保持することは非常に困難であるため、その対策として、従来は送り速度を定常運転の1/5〜1/10に低下させ、その速度低下に見合うように電力を制御する軽負荷運転、いわゆる、微速送り方式の待機運転を行っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のこの待機運転方法では、待機運転中に放出される加熱材が多く、また、待機運転の時間経過とともにヒートパターンがくずれて行くので、定常運転へ切替え後にも多くの不適温材の放出が生じていた。そのため、3〜5分程度のごく短い時間の寸停止にしか有効でなく、後工程の寸停止の実体に対応するには、時間が短かすぎて本来の目的である不適温材放出抑制の効果が実現できていなかった。特に、大形の誘導加熱装置では、放出材の量が膨大となるので、その改善策が要望されていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る誘導加熱方法は、インダクタコイル群により形成された誘導加熱通路を要求ヒートパターンのキューリ点対応位置で前部領域と後部領域とに分割しつつ各々独立して加熱可能とし、前記分割点において加熱材がキューリ点温度となるよう前部領域を温度制御し、前記後部領域におけるインダクタコイル群の耐火材、スキッドレール、及び断熱材の放熱係数が、当該後部領域の入口側から出口側に向けて小さくなるように変化させ、前記後部領域の出口側にて所望の最終加熱温度を得ることを特徴としている。
【0006】
また、本発明に係る誘導加熱装置は、誘導加熱通路を形成して加熱材をキューリ点以上の温度まで加熱するインダクタコイル群と、このインダクタコイル群を待機モードで運転制御させる機能を備えた制御手段とを有する誘導加熱装置において、待機モード運転時に前記インダクタコイル群を少なくとも、装置入口側の前部領域と出口側の後部領域とに分離し、その各々の領域のコイルに独立した高周波電源および整合部を接続し、前記前部領域のインダクタコイル群の後部領域との分離点の加熱温度が当該誘導加熱装置の負荷の大小に拘わらずキューリ点近辺となるように加熱電力が調節できる電力制御手段を設けたのである。この場合において、後部領域におけるインダクタコイル群の耐火材、スキッドレール、及び断熱材の放熱係数が、当該後部領域の入口側から出口側に向けて小さくなるように設定した構成とすることが望ましい。また、具体的には、前記インダクタコイル群の耐火材、並びに断熱材の厚さまたは物性値、及びスキッドレールの冷却手段を変化させることにより前記放熱係数を変化させる構成とすれば良い。
【0007】
すなわち、コイル入口から出口までのヒートパターンは、通常、装置の設備仕様として要求されるコイル出口での許容温度むら(表面温度と中心温度の差)から決められる。したがって、装置の定格出力条件において、コイル出口での温度むらを要求された許容値に抑え、かつ、できるだけ短い時間で材料の平均温度が最終目標温度に達するように平均温度のヒートパターンを決めている。このようにして決められたヒートパターン上で自ずからキューリ点に対応する位置が定まり、本発明ではこの位置でコイル群を前後に分割するようにしている。そして、分割コイルの各々で独立に温度制御ができるように構成しつつ、運転負荷の如何に拘らず(速度低下率がいかなる場合でも)、分割点で加熱材の平均温度がキューリ点に到達するように制御するように電力を調整して、不適温材放出を抑制するようにしたのである。
【0008】
【作用】
以下に、従来の待機運転方法の不具合点について具体的に説明しつつ、本発明の原理と作用を説明する。
図3は、図2に示すような従来の誘導加熱装置のヒートパターンの一例を示すイメージ図で、定常運転中のヒートパターンを実線で示し、微速送りによる待機運転中のヒートパターンを破線で示している。
前述のように、誘導加熱装置において解決すべき基本的な問題点は、待機運転中の放出材と、待機運転から定常運転へ切替え後の放出材を出来るだけ低減させることであるが、従来の誘導加熱装置では、前述のように、加熱材の送りを停止してその要求を満足させることは非常に難しいので、問題を解決するためには、送りを停止させずに、送りを出来るだけ遅くして、しかも、ヒートパターンがくずれないようにせねばならない。
【0009】
ここで、誘導加熱装置で、ヒートパターンのくずれに関して、着目せねばならない二つの点について説明する。
まず、第一は、誘導加熱装置では、磁性鋼をキューリ点を超えた温度に加熱するため、インダクタコイル入口の常温状態からインダクタコイル出口の目標温度に昇温する間に、ヒートパターンは、必ずキューリ点を通過するため、インダクタコイル入口からインダクタコイル出口までの間で、インダクタコイル内の加熱材は磁性状態と非磁性状態の混在が不可避であることである。第二は、誘導加熱装置では、強制水冷されるインダクタコイルの冷却水へ耐火材を通じて、加熱材から放熱を生じる構造が不可避であることである。
【0010】
待機運転に当たって、このような特性を有する誘導加熱装置のインダクタコイルの、入口から出口までの電力を一括で制御すると、図3に破線で示すように、待機運転中のヒートパターンは、待機運転の時間経過とともに、また、送り速度の低下率増大とともに、定常運転中のそれから大きくくずれて行くこととなり、このヒートパターンのくずれは、図3のa部では温度が上昇する方向に、また、b部では温度が下る方向に推移していく。このa部のくずれが上記のキューリ点に係わる磁性・非磁性の混在によるものであり、また、b部のくずれが加熱材の放熱によるものである。
【0011】
そして、待機運転によって、図3の破線のようにくずれてしまったヒートパターンのものを定常運転に切替えると、図3のb部に滞在していた加熱材は、所望の加熱温度より低いレスヒート材となり、また、a部に滞在していた加熱材は、所望の加熱温度より高いオーバーヒート材となるので、いずれも後工程では使用出来ない不適温材として放出されることとなる。
この傾向は、待機運転の時間が長い程、また、待機運転時の送りの低下率が大きい程、ヒートパターンのくずれが大きくなるので顕著に現れる。
そのため、従来は、送り速度の低下率を小さく、また、待機運転の継続時間を短く制限してレスヒート材、オーバーヒート材の発生の増大化を防止していた。
【0012】
以下に、上記図3のa部、b部それぞれの特性について説明する。
(イ).a部………磁性鋼のキューリ点に起因するヒートパターンのくずれ
磁化力Hのインダクタコイル内の円柱加熱材の単位表面積当たりに発生す
る電力が、次式で表されることは、周知の通りである。
【数1】
ここに、K :定数
H :磁化力
μ :透磁率
ρ :固有抵抗
f :周波数
B :磁束密度
また、強磁性体における透磁率μは、キューリ点を越える領域ではμ=1.0、キューリ点以下の領域ではμ>1.0となることも周知である。
【0013】
図4は、図3の定常運転中のヒートパターンに、その加熱材の表面温度と中心温度のヒートパターンと電力パターンなどを加えたイメージ図である。
ここで、前述の図3の定常運転中のヒートパターン曲線は、図4のθmに相当する。この図4において、θs:定常運転中の加熱材の表面温度のヒートパターン、θm:定常運転中の加熱材の断面における平均温度のヒートパターン(待機運転中に一致させねばならない加熱材のヒートパターン)、θo:定常運転中の加熱材の断面における中心温度のヒートパターン、PIO:定常加熱時の電力パターン、PI′:待機運転中の電力パターン、C:θmがキューリ点となるインダクタコイル長手方向の位置、C′:θsがキューリ点となるインダクタコイル長手方向の位置、PR:加熱材から耐火材への放射損失である。
【0014】
一般的に、誘導加熱を効率良く行うため、温度条件を満足させつつ出来るだけ早く所定温度に到達させるような急速加熱の手法が用いられる。この急速加熱の手法を用いると、表皮効果も関係して、加熱材の断面の温度分布は、表面が高く、中心が低い状態となる。
図4では、この表面の温度をθsで表し、中心の温度をθoで表している。 また、のθsとθoの平均をθmとして取り扱っている。
また、待機運転中は、軽負荷運転であり急速加熱ではないため、誘導加熱における表面と中心の温度差はほとんどないので、θs、θm、θoは、実用的に同じ値と考えた扱いにしている。
【0015】
誘導加熱装置では、表皮効果により定まる電流浸透深さに係わる部分の加熱材の温度がキューリ点以下であるかキューリ点を超えているかで、磁性として対応すべきか、非磁性として対応すべきかが決められる。したがって、円柱材を、その外周から加熱する誘導加熱装置においては、円柱材の表面温度θsで、磁性として対応すべきか、非磁性として対応すべきかが決められる。
上記数式1およびその解説から、誘導加熱装置による発生電力Pと磁化力Hの間には、発熱部の温度がキューリ点以下の領域であればP∝H3/2、キューリ点を超える領域であればP∝H2の関係があることが判る。
【0016】
図5は、これらの関係を用いて、負荷率(送り速度低下率=V′/Voここに、Voは定常運転時の送り速度、V′は軽負荷転時の送り速度)と負荷率を変えた時に一定の加熱温度を得るための誘導加熱の電力印加係数(=磁化力係数H′/ Ho ここに、Ho は定常運転時の磁化力、H′は軽負荷運転時の磁化力)の関係をキューリ点以下の領域とキューリ点を超える領域について示したものである。
詳細には、関係する比熱、固有抵抗などの物性値の変化の発生電力への影響も反映しなければならないが、その影響は小さいので、ここでは、PとHの関係のみを用いて問題点を説明する。
【0017】
図5において、100%の定常運転から1/10送り速度の待機運転(10%の軽負荷運転)へ切替えたとき、定常運転時と同じ加熱温度を得るための電力印加係数は、キューリ点以下の領域では、P∝H3/2の関係を示すカーブXから、P=0.214の値が得られ、また、キューリ点を超える領域では、P∝H2の関係を示すカーブYから、P=0.316の値となる。
このことは、定常運転から待機運転へ切替えたとき、キューリ点以下の領域は、キューリ点を超える領域よりも印加電力低減率を大きくしなければ、定常運転時と同じ温度が得られないことを意味する。
【0018】
図4において、定常運転中のヒートパターンθmがキューリ点となるまでのA〜C間のインダクタコイルの製作条件は、ヒートパターンθsが、A〜C′間の磁性領域(キューリ点以下で所要昇温値に対して、θmのヒートパターンを得るためにP∝H3/2の条件でインダクタコイルの巻数が決められる。)とC′〜C間の非磁性領域(キューリ点を超えた領域でθmのヒートパターンを得るためにP∝H2の条件でインダクタコイルの巻数が決められる。)の2つの条件の混在状態となっており、インダクタコイルはA〜C′間の磁性領域とC′〜C間の非磁性領域の作動条件となる。
【0019】
しかし、待機運転では、ヒートパターンはθm∝θsとなってしまい、インダクタコイルのA〜C間全体が磁性領域(A〜C間全体がキューリ点以下で、所要昇温値に対してθmのヒートパターンを得るための条件がP∝H3/2)となるので、インダクタコイルの作動を、A〜C間の磁性領域とC〜B間の非磁性領域とで変えないとヒートパターンを定常運転中のθmに一致させることができないことが判る。
つまり、このような変化に対応してヒートパターンを定常運転中のθmに一致させるためには、ヒートパターンθmのキューリ点を境にして、キューリ点の上下で、それぞれ独立に電力調節ができるようにせねばならない。
すなわち、キューリ点以下の領域とキューリ点を超える領域では、待機運転移行時の送り速度の低減に対して、加熱材の温度(ヒートパターン)を一定にするための印加電力低減率が異なるので、定常運転と待機運転で温度(ヒートパターン)を同一にするためには、図4のθmのヒートパターンのキューリ点以下の領域(A〜C間)とキューリ点を超える領域(C〜B間)の、インダクタコイルの電力は独立に調節できるように構成せねばならないことが判る。
【0020】
しかし、従来は、上記説明のようなヒートパターンのキューリ点を境界にしたインダクタコイルの電力調節はなされておらず、キューリ点より上の領域とキューリ点より下の領域が混在した形態で、一括で電力調節を行っていたため、図3のa部に示すようなヒートパターンのくずれを生じていた。
(ロ).b部………高温領域での放射損失に起因するヒートパターンのくずれ
インダクタコイル内の加熱材は、図4に示すような放射損失PRを生じる。一般的には、インダクタコイルの耐火材は、コイル入口から出口まで、同一の材質で同一構造で製作されるので、インダクタコイル入口から出口まで、その長手方向の熱定数は、ほぼ同じと見ることができ、また、加熱材の温度は、出口側に向けて高温になる。したがって、この放射損失は、インダクタコイルの入口側から出口側に向けてその値が大きくなっている。
【0021】
放射損失は、加熱材の表面温度と加熱材・耐火材の放射係数、耐火材の熱伝導率などが関係してその値が決まるので、定常運転であろうと待機運転であろうとヒートパターン(温度)が同じであれば、定常運転、待機運転に関係なく放射損失の値は同じになる。
また、誘導加熱により加熱材に発生する電力PIと放射損失PRおよび加熱材の温度の関係は、PI>PRであれば加熱材の温度は上昇し、PI=PRであれば加熱材の温度は一定値が保たれ、PI<PRであれば加熱材の温度は低下する関係にあり、図4のθmの昇温勾配を得るためには、PI=Put+PR(Putは加熱材を所定値に昇温させる電力)の関係が必要とされる。
【0022】
このような背影のインダクタコイルにおける図4のθmの昇温勾配を得るために加熱材に発生させるべき電力PIが、図4に、コイル入口が最も強く、出口側に向けて弱められたパターンPIOで表されており、また、図4のインダクタコイル各部のθsに対応して発生する放射損失PRが同図にコイル入口が小さく、出口に向けて大きくなるパターンで示されている。
この定常運転における関係図では、コイルの入口から出口まで全領域に亘って、当然のことながらPIO>PRとなっている。
この定常運転の状態から、たとえば、1/10送り速度の待機運転に切替えると、加熱材の発生電力は、理論的には、定常運転中の加熱材の発生電力PIO(=PutO+PR,PutOは定常運転時の加熱材を所定値に昇温させる電力)のパターンから、待機運転に対応するための加熱材の発生電力PI′(=1/10PutO+PR)のパターンへ低減されねばならない。
【0023】
しかし、従来のようにインダクタコイルの電力を、コイルの入口から出口まで一括で制御すると、制御された電力パターンは、このPI′の式に合致したものではなく、定常運転の電力PIOのパターンを1/10負荷相当に低減させた図4に破線で示すPI′の曲線となるので、インダクタコイルの後半(高温領域)では、電力PI′は、放射損失PR より小さくなってしまって、加熱材の温度が低下しヒートパターンがくずれるのである。
【0024】
この状態を第1表により具体的に説明する。
第1表は、コイルの中間部とコイルの出口部について、温度を一定に保つために加熱材に発生させねばならない電力を、1/10送り速度の待機運転では、定常運転に比べてどのように変えねばならないかを一例を用いて傾向的に比較したもので、定常運転時のコイルの中間部での加熱材に発生させねばならない電力を1.0として他の状態の電力を比較し、係数で表わしている。
第1表より、コイルの中間部では、1/10送り速度での待機運転時の加熱材の発生電力PI′は、定常運転時の加熱材の発生電力PIOの0.17に低減する必要があり、また、コイルの出口部では、1/10送り速度での待機運転時の加熱材の発生電力PI′は、定常運転時の加熱材の発生電力PIO の0.369に低減させねばならないことが判る。
【0025】
つまり、コイルの出口部は、コイルの中間部よりも電力低減率を小さくせねばならないことが判る。
従来は、このような条件下にあるインダクタコイルを一括で電力制御していたため、図3のb部に示すようなヒートパターンのくずれを生じていた。たとえば、コイルの中間部のオーバーヒートを防止しようとして、第1表の例に示すコイルの中間部を対象にした0.17程度の電力で一括で低減させた場合、コイルの出口部は電力不足となってレスヒートの状態となる。また、逆に、コイルの出口部のレスヒートを解消させようとして、第1表の例に示すコイルの出口部を対象にした0.369程度の電力に一括で低減させれば、コイルの中間部が電力過剰となってオーバーヒートの状態となるのである。 ここで、説明を簡単にするために、コイルの中間部とコイルの出口部に2分して電力低減率の傾向を説明したが、この傾向は、ヒートパターンθmの昇温勾配に関連して連続的に発生するもので、上記説明のコイル中間部内でも、その入口から出口に向けて、また、コイル出口部でも同様にその入口から出口に向けて発生する。
【0026】
【表1】
所用発生電力比較表
注)待機運転時の放射損失の値は、待機運転中の加熱材の表面温度が定常運転中よりも低くなるため、定常運転中の放射損失よりも若干小さな値としている。
【0027】
以上の説明から、待機運転時ヒートパターンのくずれを防ぐためには、先ず、前記a部の問題点に対して、キューリ点までと、それ以上のそれぞれの領域で独立の電力調節ができるようにして、加熱材のθmがキューリ点に達するまでのインダクタコイル入口からの距離を、負荷の大小に拘わらず一定になるように構成し、次に、前記b部の問題点に対して、高温領域での放射損失を、インダクタコイルの出口側へ行くほど小さくなるように構成せねばならないことが判る。
そうすることによって、待機運転中の微速送りの送り速度低下率を従来に比べ大巾に大きくしても、また、待機運転継続時間を無限に長くしても、待機運転中のヒートパターンのくずれが非常に小さくなって、待機運転中の放出材および定常運転へ切替え後の放出材を著しく低減させ得るのである。
なお、従来の方法で、特に、大容量の誘導加熱装置においては、インダクタコイルを長手に複数に分割して、それぞれのインダクタコイルに高周波電源を接続して、それぞれのインダクタコイルの印加電力を調節する方法が行われているが、本発明による概念が取り入れられていないので、好ましい待機運転機能が実現されていなかった。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下の本発明の一実施例を具体的に説明する。
図1は本発明による誘導加熱装置の一実施例を示す誘導加熱装置の構成およびヒートパターンを示す図である。
本発明は、前記a部およびb部の問題を次のような手段で解決する。
イ)前記a部の問題点の解決
インダクタコイルを前部と後部に分離して、それぞれを独立の高周波電源に接続する。そして、それぞれの電源は、それぞれ独立に負荷の大小に応じて印加電力が調節できるように構成されており、定常運転でも待機運転でも、加熱材のθmが、前部のインダクタコイルでキューリ点まで昇温できるように、また、後部のインダクタコイルでは、キューリ点から所望の最終温度まで昇温できるような能力を有している。
【0029】
すなわち、定常運転から待機運転に切替えると、それぞれのインダクタコイルの電力は、図1に示すように、定常運転に必要な電力から待機運転用で必要な電力に調節される。
このように構成すると、負荷の大小に拘わらず、前部インダクタコイルの出口での加熱材の温度を常にキューリ点に保ちつつ所望の最終加熱温度を得ることができるので、従来のようなa部でのヒートパターンのくずれは発生しなくなる。
ロ)前記b部の問題点の解決
後部のインダクタコイルは、長手方向で4分割され、入口側から出口側に向けて放射損失が小さくなるように、それぞれのインダクタコイルの耐火材や加熱材を受けるスキッドレールが工夫される。その具体例を第2表に示し、また、図1に階段状にインダクタコイルの出口に向けて小さくなっている様子が示され、本発明によるインダクタコイルの放射損失の分布状況が、インダクタコイルの出口に向けて放射損失が増大して行く従来の分布と逆の傾向になっていることが表されている。
【0030】
【表2】
後部インダクタコイルの放熱係数表
【0031】
このように構成すると、後部インダクタコイルの放射損失は、第2表の総合放熱係数で示されるように後部インダクタコイルの入口から出口に向けて放射係数が小さくなるので、軽負荷運転において、放射損失が誘導加熱による発熱を超えることはなくなり、問題のヒートパターンのくずれはなくなる。
第2表で、放射損失係数の工夫の一例を示しているが、この例に限らず、耐火材の物性値や厚さ、断熱材の物性値を変えるなど他の手段で放射損失に影響を与えることも、本発明の範囲内であることは説明するまでもない。
【0032】
なお、前部のインダクタコイルにおいては、加熱材の温度が低いので、放射損失は小さく、上記のような放射損失に対する工夫を行う必要はない。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、インダクタコイル群により形成された誘導加熱通路を要求ヒートパターンのキューリ点対応位置で前部領域と後部領域とに分割しつつ各々独立して加熱可能とし、前記分割点において加熱材がキューリ点温度となるよう前部領域を温度制御するように構成したので、安価な設備構成で非常に高性能な待機運転が可能となり、省エネ・省力化ができる。また、後部インダクタコイルの入口から出口に向けて放射係数が小さくなるので、軽負荷運転において、放射損失が誘導加熱による発熱を超えることはなくなり、問題のヒートパターンのくずれはなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘導加熱装置の構成およびヒートパターンを示す図である。
【図2】従来の誘導加熱装置の構成図である。
【図3】従来の誘導加熱装置のヒートパターンの一例を示すイメージ図である。
【図4】図3の定常運転中のヒートパターンに、その加熱材の表面温度と中心温度のヒートパターンと電力パターンなどを加えたイメージ図
【図5】負荷率と負荷率を変えた時に一定の加熱温度を得るための誘導加熱の電力印加係数の関係をキューリ点以下の領域とキューリ点を超える領域について示した図である。
Claims (3)
- インダクタコイル群により形成された誘導加熱通路を要求ヒートパターンのキューリ点対応位置で前部領域と後部領域とに分割しつつ各々独立して加熱可能とし、前記分割点において加熱材がキューリ点温度となるよう前部領域を温度制御し、前記後部領域におけるインダクタコイル群の耐火材、スキッドレール、断熱材のうちのいずれか1つまたは複数の放熱係数が、当該後部領域の入口側から出口側に向けて小さくなるように変化させ、前記後部領域の出口側にて所望の最終加熱温度を得ることを特徴とする誘導加熱方法。
- 誘導加熱通路を形成して加熱材をキューリ点以上の温度まで加熱するインダクタコイル群を有する誘導加熱装置において、
前記インダクタコイル群を少なくとも、装置入口側の前部領域と出口側の後部領域とに分離し、その各々の領域のコイルに独立した高周波電源および整合部を接続し、前記前部領域のインダクタコイル群における後部領域との分離点の加熱温度が当該誘導加熱装置の負荷の大小に拘わらずキューリ点近辺となるように加熱電力が調節できる電力制御手段を設け、後部領域におけるインダクタコイル群の耐火材、スキッドレール、断熱材のうちのいずれか1つまたは複数の放熱係数が、当該後部領域の入口側から出口側に向けて小さくなるように設定したことを特徴とする誘導加熱装置。 - 前記請求項2に記載の誘導加熱装置において、前記インダクタコイル群の耐火材、並びに断熱材の厚さまたは物性値、及びスキッドレールの冷却手段を変化させることにより前記放熱係数を変化させる構成としたことを特徴とする誘導加熱装置。
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1998
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