JP3866790B2 - 固体状チタン触媒成分、これを含むエチレン重合用触媒およびエチレンの重合方法 - Google Patents
固体状チタン触媒成分、これを含むエチレン重合用触媒およびエチレンの重合方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、エチレンを極めて高い活性で重合させることができ、しかも粒子性状に優れたエチレン重合体を製造することができるような固体状チタン触媒成分、これを含むエチレン重合用触媒およびエチレンの重合方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ホモポリエチレン、直鎖状低密度エチレン重合体(LLDPE)などのエチレン重合体は、透明性、機械的強度などに優れ、フィルムなどとして広く利用されている。
このようなエチレン重合体の製造方法は従来より種々知られているが、重合用触媒として、チタン、マグネシウム、ハロゲンおよび任意成分としての電子供与体を含むチタン触媒成分を含むチーグラー型触媒を用いると、エチレン重合体を高い重合活性で製造しうることが知られている。特にチタン触媒成分として液状状態に調製されたハロゲン含有マグネシウム化合物と、液状チタン化合物と、電子供与体とから得られる固体状チタン触媒成分を用いると、高活性を示すことが知られている。
【0003】
ところでこのようなエチレン重合体の製造においては、エチレンをより一層高い活性で重合させることができれば、生産性が向上するだけでなく、重合体当りの触媒残渣とくにハロゲン量が低減されるので、成形時の金型発錆などの問題点を解消することもできる。このためエチレンをより一層高い活性で重合させることができるようなチタン触媒成分の出現が望まれている。
【0004】
また重合直後のエチレン重合体は、スラリー法、気相法などにかかわらず、通常パウダー状で得られるが、このとき流動性に優れ、かつ微粉末などの粒子を含まず粒度分布に優れたエチレン重合体を製造することが望ましい。このように粒子性状に優れたエチレン重合体は、用途によってはペレタイズせずそのままで使用することができるなどの種々の利点を有している。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、エチレンを高活性で重合させることができ、しかも粒子性状に優れたエチレン重合体を製造することができるような固体状チタン触媒成分、エチレン重合用触媒およびこの触媒を用いるエチレンの重合方法を提供することを目的としている。
【0006】
【発明の概要】
本発明に係る固体状チタン触媒成分は、マグネシウム、チタン、ハロゲン、および(c)活性水素を有さない有機ケイ素化合物を含有している。
【0007】
このような成分を含有する固体状チタン触媒成分は、
(a)液状マグネシウム化合物と、(b)液状チタン化合物とを、
該マグネシウム化合物(a)1モルに対して0.25〜0.35モルの量の(c)活性水素を有さない有機ケイ素化合物の存在下に接触させ、
得られた接触物(i)を昇温して105〜115℃の範囲内の所定温度に保持する過程において、保持温度よりも10℃低い温度から昇温終了時までの間または昇温終了後に、前記マグネシウム化合物(a)1モルに対して0.5モル以下の量の(c)活性水素を有さない有機ケイ素化合物を添加して接触物(i)と接触させることによって得ることができる。
【0008】
本発明に係るエチレン重合用触媒は、上記のような[I]固体状チタン触媒成分と、[II]有機金属化合物とから形成される。
本発明に係るエチレンの重合方法では、このような触媒の存在下に、エチレンを重合させるかエチレンとコモノマーとを共重合させている。
【0009】
【発明の具体的説明】
以下本発明に係る固体状チタン触媒成分、これを含むエチレン重合用触媒およびエチレンの重合方法について説明する。
なお本発明において「重合」という語は、単独重合のみならず共重合を包含した意味で用いられることがあり、また「重合体」という語は、単独重合体のみならず共重合体を包含した意味で用いられることがある。
図1に、本発明に係る固体状チタン触媒成分およびこれを含むエチレン重合用触媒の調製工程の説明図を示す。
【0010】
[I]固体状チタン触媒成分
本発明に係る固体状チタン触媒成分は、(a)液状マグネシウム化合物と、(b)液状チタン化合物と、該マグネシウム化合物(a)1モルに対して特定量の(c)活性水素を有さない有機ケイ素化合物とを後述するようにして接触させて得られ、マグネシウム、チタン、ハロゲン、および(c) 活性水素を有さない有機ケイ素化合物を含有している。
以下まず本発明において、固体状チタン触媒成分を調製する際に用いられる各成分について説明する。
【0011】
(a) 液状マグネシウム化合物
本発明では、固体状チタン触媒成分を調製するに際してマグネシウム化合物は液状状態で用いられ、マグネシウム化合物が固体状であるときには液状化して用いられる。
マグネシウム化合物としては、還元能を有するマグネシウム化合物(a-1) および還元能を有さないマグネシウム化合物(a-2) を用いることができる。
【0012】
(a-1) 還元能を有するマグネシウム化合物としては、たとえば下式で表わされる有機マグネシウム化合物を挙げることができる。
Xn MgR2-n
式中、nは0≦n<2であり、Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはシクロアルキル基であり、nが0である場合2個のRは同一でも異なっていてもよい。Xはハロゲンである。
【0013】
このような還元能を有する有機マグネシウム化合物としては、具体的には、
ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、オクチルブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどのジアルキルマグネシウム化合物、
エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウムなどのアルキルマグネシウムハライド、
ブチルエトキシマグネシウム、エチルブトキシマグネシウム、オクチルブトキシマグネシウムなどのアルキルマグネシウムアルコキシド、その他ブチルマグネシウムハイドライドなどが挙げられる。
【0014】
(a-2) 還元能を有さないマグネシウム化合物としては、具体的に、
塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、沃化マグネシウム、弗化マグネシウムなどのハロゲン化マグネシウム、
メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムなどのアルコキシマグネシウムハライド、
フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムなどのアリロキシマグネシウムハライド、
エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n-オクトキシマグネシウム、2-エチルヘキソキシマグネシウムなどのアルコキシマグネシウム、
フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムなどのアリロキシマグネシウム、
ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムなどのマグネシウムのカルボン酸塩、
マグネシウム金属、
水素化マグネシウムなどを用いることもできる。
【0015】
これら還元能を有さないマグネシウム化合物(a-2) は、上述した還元能を有するマグネシウム化合物(a-1) から誘導した化合物、あるいは触媒成分の調製時に誘導した化合物であってもよい。還元能を有さないマグネシウム化合物(a-2) を、還元能を有するマグネシウム化合物(a-1) から誘導するには、たとえば還元能を有するマグネシウム化合物(a-1) を、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、シロキサン化合物、ハロゲン含有シラン化合物、ハロゲン含有アルミニウム化合物、酸ハライドなどのハロゲン含有化合物、あるいはOH基や活性な炭素−酸素結合を有する化合物と接触させればよい。
【0016】
さらに本発明では、後述するような活性水素を有さない有機ケイ素化合物(c) を用いて、還元能を有するマグネシウム化合物(a-1) から還元能を有さない化合物(a-2) を誘導することもできる。
マグネシウム化合物は2種以上組合わせて用いることもできる。
【0017】
なお上記のようなマグネシウム化合物は、アルミニウム、亜鉛、ホウ素、ベリリウム、ナトリウム、カリウムなどのマグネシウム以外の金属化合物たとえば後述する有機アルミニウム化合物との錯化合物、複化合物を形成していてもよく、あるいはこれら他の金属化合物と混合して用いることもできる。
【0018】
固体状チタン触媒成分[I]調製時には、上述した以外のマグネシウム化合物を使用することもできるが、最終的に得られる固体状チタン触媒成分[I]中において、ハロゲン含有マグネシウム化合物の形で存在することが好ましく、従ってハロゲンを含まないマグネシウム化合物を用いる場合には、触媒成分調製の過程でハロゲン含有化合物と接触反応させることが好ましい。
【0019】
上記化合物の中でも、還元能を有さないマグネシウム化合物が好ましく、特にハロゲン含有マグネシウム化合物が好ましく、さらにこれらの中でも塩化マグネシウム、アルコキシ塩化マグネシウム、アリロキシ塩化マグネシウムが好ましく用いられる。
【0020】
本発明では上記のようなマグネシウム化合物が固体であるときには、電子供与体(d-1)を用いてマグネシウム化合物を液状化することができる。
このような電子供与体(d-1) としては、アルコール類、カルボン酸類、アルデヒド類、アミン類、金属酸エステル類などを用いることができる。
アルコール類としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-メチルペンタノール、2-エチルブタノール、ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ウンデセノール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコールなどの脂肪族アルコール類、
シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノールなどの脂環族アルコール類、ベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール、イソプロピルベンジルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、α,α−ジメチルベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、ナフトールなどの芳香族アルコール類、
n-ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1-ブトキシ-2-プロパノール、メチルカルビトールなどのアルコキシ基含有アルコール類、
トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどのハロゲン含有アルコール類などが挙げられる。
【0021】
カルボン酸類としては、炭素数7以上のカルボン酸が好ましく、たとえばカプリル酸、2-エチルヘキサノイック酸、ノニリック酸、ウンデシレニック酸などが挙げられる。
アセトアルデヒド類としては、炭素数7以上のアセトアルデヒドが好ましく、たとえばカプリルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ナフトアルデヒドなどが挙げられる。
アミン類としては、炭素数6以上のアミン類が好ましく、たとえばヘプチルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ラウリルアミンなどが挙げられる。
【0022】
金属酸エステル類としては、テトラエトキシチタン、テトラ-n-プロポキシチタン、テトラ-i-プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラヘキソキシチタン、テトラブトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウムなどが挙げられる。なおこの金属酸エステル類中には、(c)活性水素を有さない有機ケイ素化合物として後述するようなケイ酸エステルは含まれない。
これらは2種以上併用することもでき、また後述するような上記以外の電子供与体(d)を併用することもできる。
これらのうちでも、アルコール類、金属酸エステル類が好ましく特に炭素数6以上のアルコール類が好ましく用いられる。
【0023】
上記のような電子供与体(d-1) を用いてマグネシウム化合物を液状化する際には、電子供与体(d-1) として炭素数6以上の電子供与体を用いる場合には、マグネシウム化合物1モルに対して通常約1モル以上好ましくは1〜40モルさらに好ましくは1.5〜12モルの量で用いられる。また炭素数5以下の電子供与体を用いる場合には、マグネシウム化合物1モルに対して通常約15モル以上必要である。
【0024】
固体状マグネシウム化合物と電子供与体(d-1)との接触時には、炭化水素溶媒を用いることができる。このような炭化水素溶媒としては、たとえばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、灯油などの脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘキセンなどの脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素類、四塩化炭素、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などを用いることができる。
【0025】
このような溶媒のうち芳香族炭化水素を用いる場合には、電子供与体(d-1) としてのたとえばアルコール類は、その種類(炭素数)にかかわらず上記の炭素数6以上の電子供与体の使用量として示した量で用いればマグネシウム化合物を溶解することができる。また脂肪族炭化水素および/または脂環族炭化水素を用いる場合には、電子供与体(d-1) としてのアルコール類は、上述したような炭素数に応じた量で用いられる。
【0026】
本発明では、炭化水素溶媒中で固体状マグネシウム化合物と電子供与体(d-1) とを接触させることが好ましい。
固体状マグネシウム化合物を電子供与体(d-1)に溶解するには、固体状マグネシウム化合物と電子供与体(d-1)とを好ましくは炭化水素溶媒の共存下に接触させ、必要に応じて加熱する方法が一般的である。この接触は、通常0〜300℃好ましくは20〜180℃より好ましくは50〜150℃の温度で、15分間〜5時間程度好ましくは30分間〜2時間程度で行なわれる。
【0027】
(b) 液状チタン化合物
本発明では、液状チタン化合物としては特に4価のチタン化合物が好ましく用いられる。このような四価のチタン化合物としては、次式で示される化合物を挙げることができる。
Ti(OR)g X4-g
式中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、0≦g≦4である。
【0028】
このような化合物としては、具体的には、
TiCl4、TiBr4、TiI4 などのテトラハロゲン化チタン、
Ti(OCH3)Cl3、
Ti(OC2H5)Cl3、
Ti(On-C4H9)Cl3、
Ti(OC2H5)Br3、
Ti(O-iso-C4H9)Br3などのトリハロゲン化アルコキシチタン、
Ti(OCH3)2Cl2、
Ti(OC2H5)2Cl2、
Ti(On-C4H9)2Cl2、
Ti(OC2H5)2Br2などのジハロゲン化ジアルコキシチタン、
Ti(OCH3)3Cl 、
Ti(OC2H5)3Cl 、
Ti(On-C4H9)3Cl 、
Ti(OC2H5)3 Br などのモノハロゲン化トリアルコキシチタン、
Ti(OCH3)4 、
Ti(OC2H5)4 、
Ti(On-C4H9)4 、
Ti(O-iso-C4H9)4 、
Ti(O-2-エチルヘキシル)4などのテトラアルコキシチタンなどが挙げられる。これらの中でもテトラハロゲン化チタンが好ましく、特に四塩化チタンが好ましい。これらのチタン化合物は、2種以上組み合わせて用いることもできる。
また(a)マグネシウム化合物を液状化する際に示したような炭化水素溶媒に希釈して用いてもよい。
【0029】
(c) 活性水素を有さない有機ケイ素化合物
本発明で用いられる活性水素を有さない有機ケイ素化合物は、たとえば
R1xR2ySi(OR3)z (R1 、R2 はそれぞれ独立して炭化水素基またはハロゲンであり、R3 は炭化水素基であり、0≦x<2、0≦y<2、0<z≦4である。)で示される。
【0030】
このような式で示される有機ケイ素化合物としては、具体的には、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(2-エチルヘキシロキシ)シラン、
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、2-メチルシクロペンチルトリメトキシシラン、2,3-ジメチルシクロペンチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、2-ノルボルナントリメトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、iso-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、トリメチルフェノキシシラン、メチルトリアリロキシ(allyloxy)シラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、
ジメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ビス(2-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ビス(2,3-ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビスo-トリルジメトキシシラン、ビスm-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジメトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスp-トリルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリシクロペンチルメトキシシラン、トリシクロペンチルエトキシシラン、ジシクロペンチルメチルメトキシシラン、ジシクロペンチルエチルメトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、シクロペンチルジメチルメトキシシラン、シクロペンチルジエチルメトキシシラン、ジシクロペンチルメチルエトキシシラン、シクロペンチルジメチルエトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサンなどが挙げられる。
【0031】
これらのうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランなどが好ましく用いられる。触媒活性の点からテトラエトキシシランが、特に好ましく用いられる。
【0032】
なお本発明では、最終的に得られる固体状チタン触媒成分中に活性水素を有さない有機ケイ素化合物(c)が含まれていればよい。したがって固体状チタン触媒成分を調製する際には必ずしも上記のような活性水素を有さない有機ケイ素化合物(c)そのものを用いなくても、固体状チタン触媒成分を調製する過程で活性水素を有さない有機ケイ素化合物を生成しうる他の化合物を用いることもできる。
【0033】
(d) 他の電子供与体
本発明では、固体状チタン触媒成分を調製するに際して、上記の活性水素を有さない有機ケイ素化合物(c)に加えて、必要に応じて活性水素を有さない他の電子供与体(d)を用いてもよい。
【0034】
本発明では、このような他の電子供与体(d)としては、たとえば有機酸エステル、有機酸ハライド、有機酸無水物、エーテル、ケトン、第3アミン、亜リン酸エステル、リン酸エステル、カルボン酸アミド、ニトリル、脂肪族カーボネート、ピリジン類などが挙げられる。より具体的には、
ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸i-ブチル、酢酸t-ブチル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、クロル酢酸メチル、ジクロル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、ピバリン酸エチル、酪酸メチル、吉草酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチルなどの炭素数2〜18の有機酸エステル類、
アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、トルイル酸クロリドなどの炭素数2〜15の酸ハライド類、
無水酢酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水トリメリット酸、無水テトラヒドロフタル酸などの酸無水物、
メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルベンジルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどの炭素数2〜20のエーテル類、
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルn-ブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾキノン、シクロヘキサノンなどの炭素数3〜20のケトン類、
トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどの第3アミン類、
亜リン酸トリメチル、トリエチルホスファイト、トリn-プロピルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト、トリn-ブチルホスファイト、トリイソブチルホスファイト、ジエチルn-ブチルホスファイト、ジエチルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類、
リン酸トリメチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリトリルなどのリン酸エステル類、
酢酸N,N-ジメチルアミド、安息香酸N,N-ジエチルアミド、トルイル酸N,N-ジメチルアミドなどの酸アミド類、
アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリルなどのニトリル類、
炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレンなどの脂肪族カーボネート、
ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、ジメチルピリジンなどのピリジン類などを挙げることができる。
これらの化合物は、2種以上併用することもできる。
【0035】
固体状チタン触媒成分の調製
本発明では、上記のような各成分から下記の方法により固体状チタン触媒成分[I]を調製することができる。
(1)(a)液状マグネシウム化合物と、(b)液状チタン化合物とを、該マグネシウム化合物(a)1モルに対して0.25〜0.35モルの量の(c)活性水素を有さない有機ケイ素化合物(以下単に有機ケイ素化合物(c) という)の存在下に接触させ、得られた接触物(i)を105〜115℃の範囲内の温度に昇温して、この温度に保持する。
【0036】
(2)上記のように接触物(i)を昇温して105〜115℃の範囲内の温度に保持する過程において、保持温度よりも10℃低い温度から昇温終了時までの間または昇温終了後に、前記マグネシウム化合物(a)1モルに対して0.5モル以下の量の有機ケイ素化合物(c)を添加して接触物(i)と接触させる。
本発明では、上記方法のうちでも方法(2)は得られる固体状チタン触媒成分の触媒活性の点で好ましい。
【0037】
本発明では、各成分を接触させる際には、有機ケイ素化合物(c) はマグネシウム化合物(a)に対して上記のように特定された量で用いられる。
チタン化合物(b) は、接触により特別な析出手段を加えなくとも固体状物を析出させうる充分な量で用いられることが好ましい。チタン化合物(b) の使用量は、その種類、接触条件、有機ケイ素化合物(c) の使用量などによっても異なるが、マグネシウム化合物(a) 1モルに対しては、通常約1モル以上であることが好ましく、さらには約5〜約200モル特に約10〜約100モルであることがより好ましい。またチタン化合物(b) は、有機ケイ素化合物(c) 1モルに対しては、1モルを超える量で用いることが好ましく、さらには5モル以上の量で用いることがより好ましい。
【0038】
上記の各接触方法についてより具体的に説明する。
液状マグネシウム化合物(a) とチタン化合物(b)との接触に用いられる液状マグネシウム化合物(a)および/またはチタン化合物(b) は、予め有機ケイ素化合物(c) を含んでいてもよい。
この場合、マグネシウム化合物(a) とチタン化合物(b) との接触時に、有機ケイ素化合物(c) を新たに添加する必要はないが、添加してもよい。いずれの場合においてもマグネシウム化合物(a)に対する有機ケイ素化合物(c)合計量が上記の範囲内であればよい。
【0039】
本発明では、有機ケイ素化合物(c)の存在下、液状マグネシウム化合物(a)と液状チタン化合物(b) との接触を、この接触によって急速に固体状物が生じないような低い温度で行っており、具体的に−70〜+50℃好ましくは−50〜+30℃さらに好ましくは−40〜+20℃の温度で行うことが望ましい。接触に用いられる各溶液の温度は異なっていてもよい。なお接触当初、接触温度が低すぎて接触物(i)中に固体状物が析出しない時には、低温での接触を長時間行なって固体状物を析出させることもできる。
【0040】
本発明では、上記で得られた接触物(i)を、次いで105〜115℃の範囲内の温度まで徐々に昇温して固体状物を徐々に析出させ、この温度を保持する。
保持時間は通常0.5時間〜6時間好ましくは1時間〜4時間程度である。
また昇温に要する時間は、反応器のスケールなどにより大きく異なる。
【0041】
このような条件で、活性水素を有さない有機ケイ素化合物(c)の存在下に、液状マグネシウム化合物(a)と液状チタン化合物(b)とを接触させると、比較的粒径が大きく、粒度分布の良好な顆粒状または球状の固体状チタン触媒成分を得ることができる。そしてこのように粒子性状に優れた固体状チタン触媒成分を用いてエチレンをスラリー重合させると、顆粒状または球状で粒度分布に優れ、嵩密度が大きく流動性も良好なエチレン重合体を得ることができる。
【0042】
接触方法(2)では、上記のような(1)において、接触物(i)を105〜115℃の範囲内の温度に昇温し、この温度を通常0.5時間〜6時間好ましくは1時間〜4時間保持する過程において、保持温度よりも10℃低い温度から昇温終了時までの間か、または昇温終了後(好ましくは直後)に、さらに前記マグネシウム化合物(a)1モルに対して0.5モル以下の量の有機ケイ素化合物(c)を添加して接触物(i)と接触させる。
【0043】
上記のように調製される本発明に係る固体状チタン触媒成分は、マグネシウム、チタン、ハロゲン、および(c) 活性水素を有さない有機ケイ素化合物を含有している。
この固体状チタン触媒成分では、マグネシウム/チタン(原子比)は、約2〜約100好ましくは約4〜約50さらに好ましくは約5〜約30であり、
ハロゲン/チタン(原子比)は、約4〜約100好ましくは約5〜約90さらに好ましくは約8〜約50であり、
有機ケイ素化合物(c) /チタン(モル比)は、約0.01〜約100好ましくは約0.2〜約10さらに好ましくは約0.4〜約6であることが望ましい。
有機ケイ素化合物(c) /マグネシウム(モル比)は、約0.001〜約0.1好ましくは約0.002〜約0.08特に好ましくは0.005〜0.05であることが望ましい。
【0044】
固体状チタン触媒成分は、これら成分以外にも他の成分たとえば担体などを含有してもよく、具体的に他の成分を、50重量%以下好ましくは40重量%以下より好ましくは30重量%以下さらに好ましくは20重量%以下の量で含有していてもよい。
触媒成分の組成は、固体状チタン触媒成分を大量のヘキサンで充分洗浄した後、0.1〜1Torr、室温の条件下で2時間以上乾燥した後、ICP(原子吸光分析)、ガスクロマトグラフィーなどにより測定することができる。
【0045】
本発明に係る固体状チタン触媒成分の形状は、顆粒状またはほぼ球状であることが望ましく、その比表面積は、約10m2/g以上好ましくは約100〜1000m2/gであることが望ましい。
本発明では、固体状チタン触媒成分は、通常炭化水素溶媒で洗浄した後用いられる。
【0046】
エチレン重合用触媒
本発明に係るエチレン重合用触媒は、上記のような
[I]固体状チタン触媒成分と、
[II]有機金属化合物と、から形成される。
本発明で用いられる有機金属化合物は、周期律表第I族〜第III族から選ばれる金属を含むものが好ましく、具体的には、有機アルミニウム化合物、第I族金属とアルミニウムとの錯アルキル化合物、第II族金属の有機金属化合物などを挙げることができる。
【0047】
このような有機アルミニウム化合物としては、たとえば、下記式で示される有機アルミニウム化合物を例示することができる。
Ra n AlX3-n
(式中、Ra は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Xはハロゲンまたは水素であり、nは1〜3である。)
Ra は、炭素数1〜12の炭化水素基たとえばアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などである。このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には、
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニム、
イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、
メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド、
ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。
【0048】
また有機アルミニウム化合物として、下記式で示される化合物を用いることもできる。
Ra n AlY3-n
上記式において、Ra は上記と同様であり、Yは−ORb 基、−OSiRc 3 基、−OAlRd 2 基、−NRe 2 基、−SiRf 3 基または−N(Rg )AlRh 2 基であり、nは1〜2であり、Rb 、Rc 、Rd およびRh はメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、Re は水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、Rf およびRg はメチル基、エチル基などである。
【0049】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には、以下のような化合物が用いられる。
(i) Ra n Al(ORb)3-n
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシドなど、
(ii) Ra n Al(OSiRc)3-n
Et2Al(OSiMe3)、
(iso-Bu)2Al(OSiMe3)、
(iso-Bu)2Al(OSiEt3)など、
(iii) Ra n Al(OAlRd 2)3-n
Et2AlOAlEt2、
(iso-Bu )2AlOAl(iso-Bu)2 など、
(iv) Ra n Al(NRe 2)3-n
Me2AlNEt2、
Et2AlNHMe 、
Me2AlNHEt 、
Et2AlN(Me3Si)2 、
(iso-Bu)2AlN(Me3Si )2 など、
(v) Ra n Al(SiRf 3)3-n
(iso-Bu)2AlSiMe3など、
(vi) Ra n Al〔N(Rg )−AlRh 2 〕3-n
Et2AlN(Me)−AlEt2
(iso-Bu)2AlN(Et)Al(iso-Bu)2 など。
【0050】
またこれに類似した化合物、たとえば酸素原子、窒素原子を介して2以上のアルミニウムが結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。より具体的に、
(C2H5)2AlOAl(C2H5)2 、
(C4H9)2AlOAl(C4H9)2 、
(C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2、
など、さらにメチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類を挙げることができる。
【0051】
第I族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物としては、下記一般式で表される化合物を例示できる。
M1AlRj 4
(M1 はLi 、Na、Kであり、Rj は炭素数1〜15の炭化水素基である)
このような化合物としては、具体的にLiAl(C2H5)4 、LiAl(C7H15)4 などが挙げられる。
【0052】
第II族金属の有機金属化合物としては、下記一般式で表される化合物を例示できる。
Rk Rl M2
(Rk 、Rl は炭素数1〜15の炭化水素基あるいはハロゲンであり、互いに同一でも異なっていてもよいが、いずれもハロゲンである場合は除く。M2 はMg、Zn、Cdである)
具体的には、ジエチル亜鉛、ジエチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどが挙げられる。
【0053】
上記のような有機アルミニウム化合物のうちでも、
Ra 3AlX3-n、Ra n Al(ORb )3-n 、Ra n Al(OAlRd 2 )3-n で表わされる化合物特にトリアルキルアルミニウムが好ましく用いられる。
これらの化合物は、2種以上併用することもできる。
本発明に係るエチレン重合用触媒は、オレフィン類が予備重合されていてもよい。
なお本発明に係るエチレン重合用触媒は、上記のような各成分以外にも、エチレンの重合に有用な他の成分を含むことができる。
【0054】
エチレンの重合方法
本発明に係るエチレンの重合方法(本重合)では、上記のような固体状チタン触媒成分[I]と有機金属化合物[II]とからなるエチレン重合用触媒の存在下にエチレンを重合させるが、エチレンと少量の他のオレフィン類を共重合させてもよい。
【0055】
このようなオレフィン類としては、具体的に、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、具体的に、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。さらにはビニル化合物、他の不飽和化合物、ポリエン化合物などを共重合させることもでき、たとえば
スチレン、置換スチレン類、アリルベンゼン、置換アリルベンゼン類、ビニルナフタレン類、置換ビニルナフタレン類、アリルナフタレン類、置換アリルナフタレン類などの芳香族ビニル化合物、
ビニルシクロペンタン、置換ビニルシクロペンタン類、ビニルシクロヘキサン、置換ビニルシクロヘキサン類、ビニルシクロヘプタン、置換ビニルシクロヘプタン類、アリルノルボルナンなどの脂環族ビニル化合物、
シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンなどの環状オレフィン、
アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、4-トリメチルシリル-1-ブテン、6-トリメチルシリル-1-ヘキセン、8-トリメチルシリル-1-オクテン、10-トリメチルシリル-1-デセンなどのシラン系不飽和化合物などを共重合させることもできる。
【0056】
また上記の共重合モノマーを2種以上用いてエチレンと共重合させることもできる。
本発明において、エチレンの重合では、固体状チタン触媒成分[I](または予備重合触媒)は、重合容積1リットル当りチタン原子に換算して、通常は約0.0001〜1.0ミリモルの量で用いることが望ましい。有機金属化合物[II]は、該触媒成分[II]中の金属原子が、重合系中の固体状チタン触媒成分[I]中のチタン原子1モルに対し、通常約1〜2000モル好ましくは約5
〜500モルとなるような量で用いることが望ましい。
【0057】
重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法あるいは気相重合法いずれにおいても実施することができる。
重合がスラリー重合の反応形態を採る場合には、重合溶媒として通常重合不活性な有機溶媒を用いられる。この有機溶媒としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素などを用いることができる。これらは組み合わせて用いてもよい。また有機溶媒とともに反応温度において液状である共重合モノマーを用いることもできる。
【0058】
重合条件は重合の形態あるいは得られるエチレン重合体の種類などによっても異なるが、重合は、通常、約20〜300℃好ましくは約50〜150℃の温度で、常圧〜100kg/cm2 好ましくは約2〜50kg/cm2 の圧力下に行われる。
【0059】
重合時に水素を用いて得られる重合体の分子量を調節することができる。
上記のような重合は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行なうことができる。さらに重合を、反応条件を変えて2段以上に分けて行うこともできる。
【0060】
本発明では、エチレンを重合させる際に、上記したような特定の固体状チタン触媒成分を用いて触媒を形成しており、これによって粒子性状に優れたエチレン重合体を極めて高い重合活性で製造することができる。このため得られるエチレン重合体は、重合体単位当りの触媒含量とくにハロゲン含量が少なく、成形時に金型発錆を生じにくい。また微粉含量が少なく、粒子性状に優れたエチレン重合体が得られるので、特にペレタイズせずに使用することもできる。
【0061】
このような本発明で得られるエチレン重合体の嵩比重は、0.20〜0.60g/cc好ましくは0.25〜0.60g/ccであることが望ましい。
またこのエチレン重合体のメルトフローレートMFR(ASTM D1238Eに準拠、190℃)は、0.01〜5000g/10分であることが望ましい。上記のような本発明で得られるエチレン重合体には、必要に応じて耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料、染料、無機あるいは有機充填剤などを配合することもできる。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、微粉含量が少なく、粒子性状に優れたエチレン重合体を触媒単位当り極めて高収率で製造することができる固体状チタン触媒成分、これを含むエチレン重合用触媒およびこの触媒を用いたエチレンの重合方法が提供される。
【0063】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、固体状チタン触媒成分の組成、粒度、嵩比重は下記のように測定した。
(1)Mg、Ti含有量
ICP分析(島津製作所、ICPF 1000TR)
(2)Cl含有量
硝酸銀滴定法により測定した。
(3)OR基含有量
10重量%の水を加えたアセトン溶液に十分乾燥した触媒を加え、加水分解して得られたROHをガスクロマトグラフィーで定量した。
(4)粒度分布
振動機(飯田製作所、ロータップ製)および
ふるい(Bunsei Furui、内径200mm)を用いて測定した。
(5)嵩比重:JIS K−6721で測定
【0064】
【参考例1】
「固体状チタン触媒成分の調製」
無水塩化マグネシウム4.76g(50ミリモル)、デカン28.1mlおよび2-エチルヘキシルアルコール16.3g(125ミリモル)を130℃で3時間加熱反応させて均一溶液とした後、この溶液中にテトラエトキシシラン3.1g(15ミリモル)を添加し、50℃にてさらに2時間攪拌混合を行ない、テトラエトキシシランを溶液中に溶解させた。
【0065】
このようにして得られた均一溶液全量を室温に冷却した後、0℃に保持された四塩化チタン200ml(1.8モル)中に、攪拌下、1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を0℃で1時間保持し、その後1時間45分かけて110℃に昇温し、その後2時間攪拌下同温度に保持した。
【0066】
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を分離し、この固体部を110℃のデカンおよびヘキサンで洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した後固体状チタン触媒成分のヘキサン懸濁液を得た。
得られた固体状チタン触媒成分の組成を表2に示す。
【0067】
「重合」
内容積1リットルのオートクレーブ中に、窒素雰囲気下、精製n-ヘプタン500mlを装入し、トリエチルアルミニウム0.5ミリモル、および上記で得られた固体状チタン触媒成分のヘキサン懸濁液をチタン原子換算で0.005ミリモル相当量加えた後、80℃に昇温し、水素を4.0kg/cm2G 供給し、次いで全圧が8.0kg/cm2G となるようにエチレンを連続的に2時間供給した。重合温度は80℃に保った。
【0068】
重合終了後、エチレン重合体をn-ヘプタン溶媒から分離して、乾燥した。
乾燥後、184.9gのパウダー状重合体が得られた。このパウダー状重合体のMFRは2.8g/10分、見かけ嵩比重は0.33g/ccであった。この結果を表3に示す。
またこのパウダー状重合体の粒度分布を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【参考例2】
参考例1において、触媒成分調製時に110℃での反応時間を2時間から1.5時間に変えた以外は、参考例1と同様にして触媒成分を調製し、重合を行なった。結果を表2および表3に示す。
【0071】
【参考例3】
参考例1において、触媒成分調製時に反応温度を110℃から105℃に変えた以外は、参考例1と同様にして触媒成分を調製し、重合を行なった。結果を表2および表3に示す。
【0072】
【参考例4】
参考例1において、触媒成分調製時にデカンの量を28.1mlから29.3mlに、2-エチルヘキシルアルコールの量を16.3g(125ミリモル)から15.3g(117.5ミリモル)に変えた以外は、参考例1と同様にして触媒成分を調製し、重合を行なった。結果を表2および表3に示す。
【0073】
【参考例5】
参考例1において、触媒成分調製時にデカンの量を28.1mlから37.3mlに変えた以外は、参考例1と同様にして触媒成分を調製し、重合を行なった。結果を表2および表3に示す。
【0074】
【比較例1】
「固体状チタン触媒成分の調製」
無水塩化マグネシウム4.76g(50ミリモル)、デカン29.3mlおよび2-エチルヘキシルアルコール15.3g(117.5ミリモル)を130℃で3時間加熱反応させて均一溶液とした後、この溶液中に安息香酸エチル0.88g(5.85ミリモル)を添加し、130℃にてさらに1時間攪拌混合を行ない、安息香酸エチルを溶液中に溶解させた。
【0075】
このようにして得られた均一溶液全量を室温に冷却した後、0℃に保持された四塩化チタン200ml(1.8モル)中に、攪拌下、1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を1時間30分かけて80℃に昇温し、80℃に達したところで安息香酸エチル2.34g(15.6ミリモル)を添加し、これより2時間攪拌下同温度に保持した。
【0076】
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を分離し、この固体部を20mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び90℃で2時間加熱反応させた。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を分離し、110℃のデカンおよびヘキサンで洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した後固体状チタン触媒成分のヘキサン懸濁液を得た。固体状チタン触媒成分の組成を表2に示す。
【0077】
このようにして得られた固体状チタン触媒成分を用いた以外は、参考例1と同様にして重合を行なった。重合結果を表3に示す。
【0078】
【比較例2】
「固体状チタン触媒成分の調製」
無水塩化マグネシウム7.14g(75ミリモル)、デカン37.5mlおよび2-エチルヘキシルアルコール29.3g(225ミリモル)を130℃で2時間加熱反応させて均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸1.67g(11.3ミリモル)を添加し、130℃にてさらに1時間攪拌混合を行ない、無水フタル酸を溶液中に溶解させた。
【0079】
このようにして得られた均一溶液全量を室温に冷却した後、−20℃に保持された四塩化チタン200ml(1.8モル)中に、1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、その後2時間攪拌下同温度に保持した。
【0080】
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を分離し、この固体部を200mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱反応させた。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を分離し、110℃のデカンおよびヘキサンで洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した後固体状チタン触媒成分のヘキサン懸濁液を得た。固体状チタン触媒成分の組成を表2に示す。このようにして得られた固体状チタン触媒成分を用いた以外は、参考例1と同様にして重合を行なった。重合結果を表3に示す。
【0081】
【比較例3】
「固体状チタン触媒成分の調製」
内容積400mlの四ツ口フラスコ中、無水塩化マグネシウム2.86g(30ミリモル)をデカン150mlに懸濁させ、攪拌しながらエタノール8.3g(180ミリモル)を1時間にわたって滴下装入後、室温で1時間反応させた。次いでジエチルアルミニウムモノクロリド10.1g(84ミリモル)を室温で滴下装入し、30℃でで1時間反応させた。
【0082】
次いで四塩化チタン56.9g(300ミリモル)を加えた後、加熱して80℃で3時間攪拌した。反応終了後、固液分離し、得られた固体部をヘキサンにて洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した後固体状チタン触媒成分のヘキサン懸濁液を得た。固体状チタン触媒成分の組成を表2に示す。このようにして得られた固体状チタン触媒成分を用いた以外は、参考例1と同様にして重合を行なった。重合結果を表3に示す。
【0083】
【比較例4】
参考例1の固体状チタン触媒成分の調製において、マグネシウム溶液と四塩化チタンとを接触させた後の温度(昇温温度)110℃を90℃に変えた以外は、参考例1と同様にして固体状チタン触媒成分を調製した。得られた固体状チタン触媒成分を表2に示す。この固体状チタン触媒成分を用いた以外は、参考例1と同様に行った。76.1gのパウダー状エチレン重合体が得られた。このパウダー状エチレン重合体のMFRは2.4g/10分、見かけ嵩比重は0.31g/ccであった。この結果を表3に示す。
【0084】
【比較例5】
参考例1において、マグネシウム溶液と四塩化チタンとを接触させた後の温度(昇温温度)110℃を120℃に変えた以外は、参考例1と同様にして固体状チタン触媒成分を調製し、重合を行った。結果を表2および表3に示す。
【0085】
【比較例6】
参考例1において、触媒成分調製時にテトラエトキシシランの量を3.1g(15ミリモル)から2.1g(10ミリモル)に変えた以外は、参考例1と同様にして触媒成分を調製し、重合を行なった。結果を表2および表3に示す。
【0086】
【比較例7】
参考例1において、触媒成分調製時にテトラエトキシシランの量を3.1g(15ミリモル)から4.2g(20ミリモル)に変えた以外は、参考例1と同様にして触媒成分を調製し、重合を行なった。結果を表2および表3に示す。
【0087】
【比較例8】
参考例1において、触媒成分調製時にテトラエトキシシランの量を3.1g(15ミリモル)から2.1g(10ミリモル)に変え、マグネシウム溶液と四塩化チタンとを接触させた後の温度(昇温温度)110℃を90℃に変えた以外は、参考例1と同様にして触媒成分を調製し、重合を行なった。結果を表2および表3に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【実施例1】
「固体状チタン触媒成分の調製」
無水塩化マグネシウム4.76g(50ミリモル)、デカン28.1mlおよび2-エチルヘキシルアルコール16.3g(125ミリモル)を130℃で3時間加熱反応させて均一溶液とした後、この溶液中にテトラエトキシシラン3.1g(15ミリモル)を添加し、50℃にてさらに2時間攪拌混合を行ない、テトラエトキシシランを溶液中に溶解させた。
【0091】
このようにして得られた均一溶液全量を室温に冷却した後、0℃に保持された四塩化チタン200ml(1.8モル)中に、攪拌下、1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を0℃で1時間保持し、その後1時間45分かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでテトラエトキシシラン1.0g(5ミリモル)を添加した。
【0092】
さらに110℃で2時間攪拌した。2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を分離し、この固体部を110℃のデカンおよびヘキサンで洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した後、固体状チタン触媒成分のヘキサン懸濁液を得た。固体状チタン触媒成分の組成を表4に示す。
【0093】
「重合」
内容積1リットルのオートクレーブ中に、窒素雰囲気下、精製n-ヘプタン500mlを装入し、トリエチルアルミニウム0.5ミリモル、および上記で得られた固体状チタン触媒成分のヘキサン懸濁液をチタン原子換算で0.005ミリモル相当量加えた後、80℃に昇温し、水素を4.0kg/cm2G 供給し、次いで全圧が8.0kg/cm2G となるようにエチレンを連続的に2時間供給した。重合温度は、80℃に保った。
重合終了後、エチレン重合体をn-ヘプタン溶媒から分離して、乾燥した。
この結果を表5に示す。
【0094】
【実施例2】
実施例1において、110℃に昇温したところでのテトラエトキシシラン(2回目)の添加量を1.0g(5ミリモル)から2.1g(10ミリモル)に変えた以外は、実施例1と同様にして触媒成分を調製し、重合を行なった。結果を表4および表5に示す。
【0095】
【比較例9】
実施例2において、触媒成分調製時の昇温温度110℃を120℃に上げ、また2回目のテトラエトキシシランの添加を120℃に達したところで行った以外は、実施例2と同様にして触媒成分を調製し、重合を行なった。結果を表4および表5に示す。
【0096】
【比較例10】
実施例2において、触媒成分調製時の昇温温度110℃を90℃に変え、また2回目のテトラエトキシシランの添加を90℃に達したところで行った以外は、実施例2と同様にして触媒成分を調製し、重合を行なった。結果を表4および表5に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る固体状チタン触媒成分およびエチレン重合用触媒の調製工程を示す。
Claims (3)
- (a)液状マグネシウム化合物と、(b)液状チタン化合物とを、
該マグネシウム化合物(a)1モルに対して0.25〜0.35モルの量の(c)活性水素を有さない有機ケイ素化合物の存在下に接触させ、
得られた接触物(i)を昇温して105〜115℃の範囲内の所定温度に保持する過程において、保持温度よりも10℃低い温度から昇温終了時までの間または昇温終了後に、前記マグネシウム化合物(a)1モルに対して0.5モル以下の量の(c)活性水素を有さない有機ケイ素化合物を添加して接触物(i)と接触させて得られる、 マグネシウム、チタン、ハロゲン、および(c)活性水素を有さない有機ケイ素化合物を含有する固体状チタン触媒成分。 - [I]請求項1に記載の固体状チタン触媒成分と、
[II]有機金属化合物と、
からなることを特徴とするエチレン重合用触媒。 - 請求項2に記載の触媒の存在下に、エチレンを重合させるかエチレンとコモノマーとを共重合させることを特徴とするエチレンの重合方法。
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