JP3643350B2 - エチレン系重合体組成物の製造方法、エチレン系重合体組成物粒子および該組成物粒子から得られるフィルム - Google Patents

エチレン系重合体組成物の製造方法、エチレン系重合体組成物粒子および該組成物粒子から得られるフィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、エチレン系重合体組成物の製造方法、エチレン系重合体組成物粒子、および該組成物粒子から得られるフィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、特定触媒を用いた2段階の重合により、エチレンを高活性で重合させ、粒子性状に優れたエチレン系重合体組成物を製造する方法、粒子性状に優れシンタリングを生じにくく、後工程を効率よく行うことのできるエチレン系重合体組成物粒子、および該組成物粒子から得られる厚みばらつきが少なく引裂強度に優れたフィルムに関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ホモポリエチレン、直鎖状低密度エチレン重合体(LLDPE)、エチレン・α−オレフィン共重合体などのエチレン系重合体は、透明性、機械的強度などに優れ、フィルムなどとして広く利用されている。
このようなエチレン系重合体の製造方法は、従来種々知られているが、重合用触媒として、チタン、マグネシウム、ハロゲンおよび任意成分としての電子供与体を含むチタン触媒成分を含むチーグラー型触媒を用いると、エチレン系重合体を高い重合活性で製造し得ることが知られている。このうちでも特にチタン触媒成分として液状状態に調製されたハロゲン含有マグネシウム化合物と、液状チタン化合物と、電子供与体とから得られる固体状チタン触媒成分を用いると、高活性でエチレン系重合体を製造し得ることが知られている。
【0003】
ところでこのようなエチレン系重合体の製造においては、エチレンやα−オレフィンをより一層高い活性で重合させることができれば、生産性が向上するだけでなく、重合体当たりの触媒残渣、特にハロゲン量が低減されるので、成形時の金型発錆などの問題点を解消することもできる。このためエチレンやα−オレフィンをより一層高い活性で重合させることができるようなエチレン系重合体の製造方法の出現が望まれている。
【0004】
近年、エチレンの重合を高活性で行う方法としては、液状マグネシウム化合物と、液状チタン化合物と、活性水素を有さない有機ケイ素化合物とを接触させて得られる固体状チタン触媒成分を含有するエチレン重合用触媒を用いる方法(特開平9−328514号公報)、アルミノシロキサン、アルミニウムアルキルとカリクスアーレンの反応生成物、アルミニウムアルキルとシクロデキストリンの反応生成物から選ばれるアルミニウム化合物と、ハロゲン含有マグネシウム化合物およびチタン化合物を含むオレフィン重合用触媒を用いる方法(特開平10−53612号公報)などが提案されており、これらの触媒を用いて粒子性状に優れた重合体を製造することが提案されている。
【0005】
このような状況において、工業的にさらに効率よくエチレン系重合体を製造する方法の確立が強く望まれていた。また重合直後のエチレン系重合体は、スラリー法、気相法などにかかわらず、通常パウダー状で得られるが、このとき流動性に優れ、かつ微粉末などの粒子を含まず粒子性状に優れたエチレン系重合体、すなわち粒径分布の小さなエチレン系重合体を製造することが望ましい。このように粒子性状に優れたエチレン系重合体は、用途によってはペレタイズせずそのままで使用することができるなどの種々の利点を有している。また、高温時のべたつき、すなわちシンタリングが生じにくいエチレン系重合体の出現が強く望まれていた。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、エチレンやα−オレフィンを高活性で重合させることができ、しかも粒子性状に優れ、シンタリングが生じにくく成形性に優れたエチレン系重合体組成物を効率よく製造する方法を提供することを目的としている。また、本発明は、成形性に優れ、シンタリングが生じにくく、かつ粒径分布が小さいエチレン系重合体組成物粒子を提供するとともに、該組成物粒子から得られる厚みばらつきが少なく引裂強度に優れたフィルムを提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明のエチレン系重合体組成物の製造方法は、
(a)液状マグネシウム化合物と、
(b)液状チタン化合物とを、
(c)有機ケイ素化合物
の存在下に接触させて得られる固体状チタン触媒成分を含有するエチレン重合用触媒を用いて、
(I)エチレンまたはエチレンと他のα−オレフィンとを重合して、α−オレフィン含有
量が30重量%以下であって、極限粘度[η]が下記エチレン系重合体(ii)の少なくとも1.5倍であって、かつ1〜12dl/gの範囲にある
エチレン系重合体(i)を製造する工程と、
(II)エチレンまたはエチレンと他のα−オレフィンとを重合して、α−オレフィン含有量が15重量%以下であって、極限粘度[η]が0.3〜3dl/gの範囲にある
エチレン系重合体(ii)を製造する工程と
を有し、
工程(I)で得たエチレン系重合体(i)の存在下で工程(II)を行うか、または、工程(II)で得たエチレン系重合体(ii)の存在下で工程(I)を行い、極限粘度[η]が1〜6dl/gの範囲にあり、密度が0.94g/cm3以上であるエチレン系重合体組成物を製造することを特徴としている。
【0008】
本発明のエチレン系重合体組成物の製造方法では、上記工程(I)および工程(II)は、スラリー重合法により行われることも好ましい。
本発明に係るエチレン系重合体組成物粒子は、上記の製造方法で製造され、ASTM D1238Eにより190℃で測定したメルトフローレート(MFR)が0.0001〜0.5g/10分の範囲にあり、分子量分布(Mw/Mn)が20〜45の範囲にあるエチレン系重合体組成物からなり、次式により求められる粒径分布指数が、1.1〜2.0の範囲にあり、
【0009】
【数2】
Figure 0003643350
【0010】
(上記式において、ポリマーD16はエチレン系重合体組成物粒子全体の16重量%を分級できたところの粒径を、ポリマーD84 はエチレン系重合体組成物粒子全体の84重量%を分級できたところの粒径をそれぞれ示す。)
嵩密度が0.30〜0.45g/mlの範囲にあり、かつ、
流動性指数が45〜90の範囲
にあることを特徴としている。
【0011】
本発明で得られるエチレン系重合体組成物粒子を、フィルム用途に応用した場合は、厚みばらつきが小さく引裂強度に優れるという特徴を示す。
本発明に係るフィルムは、上記エチレン系重合体組成物粒子から得られ、厚みばらつきが小さく引裂強度に優れる。
【0012】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るエチレン系重合体組成物の製造方法、エチレン系重合体組成物粒子および該組成物粒子から得られるフィルムについて具体的に説明する。
なお、本発明において、「重合」という語は、単独重合のみならず共重合を包含した意味で用いられることがあり、また「重合体」という語は、単独重合体のみならず共重合体を包含した意味で用いられることがある。
【0013】
<エチレン系重合体組成物の製造方法>
本発明のエチレン系重合体組成物の製造方法では、重合に特定の固体状チタン触媒成分を含有するエチレン重合用触媒を用いる。
<(A)固体状チタン触媒成分>
本発明で用いるエチレン重合用触媒は、(a)液状マグネシウム化合物と、(b)液状チタン化合物とを、(c)有機ケイ素化合物または有機ケイ素アルミニウム化合物の存在下に接触させて得られる固体状チタン触媒成分を含有する。
【0014】
以下、このような固体状チタン触媒成分を調製する際に用いる各成分について説明する。
<(a)液状マグネシウム化合物>
本発明で用いる固体状チタン触媒成分を調製する際に用いられる、マグネシウム化合物は液状状態のマグネシウム化合物であり、マグネシウム化合物が固体状であるときには液状化して用いられる。マグネシウム化合物としては、還元能を有するマグネシウム化合物(a−1)および還元能を有さないマグネシウム化合物(a−2)を用いることができる。
【0015】
<(a−1)還元能を有するマグネシウム化合物>
還元能を有するマグネシウム化合物としては、例えば下式で表される有機マグネシウム化合物を挙げることができる。
n MgR2-n
(式中、nは0≦n<2であり、Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20シクロアルキル基であり、nが0である場合2個のRは同一でも異なっていてもよい。Xはハロゲンである。)
このような還元能を有する有機マグネシウム化合物としては、具体的には、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、オクチルブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどのジアルキルマグネシウム化合物;エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウムなどのアルキルマグネシウムハライド;ブチルエトキシマグネシウム、エチルブトキシマグネシウム、オクチルブトキシマグネシウムなどのアルキルマグネシウムアルコキシド;その他ブチルマグネシウムハイドライドなどが挙げられる。
【0016】
<(a−2)還元能を有さないマグネシウム化合物>
還元能を有さないマグネシウム化合物としては、具体的には、
塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、沃化マグネシウム、弗化マグネシウムなどのハロゲン化マグネシウム;
メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムなどのアルコキシマグネシウムハライド;
フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムなどのアリロキシマグネシウムハライド、エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n−オクトキシマグネシウム、2−エチルヘキソキシマグネシウムなどのアルコキシマグネシウム;
フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムなどのアリロキシマグネシウム;
ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムなどのマグネシウムのカルボン酸塩、マグネシウム金属、水素化マグネシウムなどが挙げられる。
【0017】
これらの還元能を有さないマグネシウム化合物(a−2)は、上述した還元能を有するマグネシウム化合物(a−1)から誘導した化合物、あるいは触媒成分の調製時に誘導した化合物であってもよい。還元能を有さないマグネシウム化合物(a−2)を、還元能を有するマグネシウム化合物(a−1)から誘導するには、例えば還元能を有するマグネシウム化合物(a−1)を、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、シロキサン化合物などのOH基や活性な炭素−酸素結合を有する化合物;ハロゲン含有シラン化合物、ハロゲン含有アルミニウム化合物、酸ハライドなどのハロゲン含有化合物などと接触させればよい。
【0018】
さらに本発明では、後述する有機ケイ素化合物または有機ケイ素アルミニウム化合物(c)を用いて、還元能を有するマグネシウム化合物(a-1) から還元能を有さない化合物(a-2) を誘導することもできる。この際マグネシウム化合物は2種以上組み合わせて用いることもできる。
なお上記のようなマグネシウム化合物は、アルミニウム、亜鉛、ホウ素、ベリリウム、ナトリウム、カリウムなどのマグネシウム以外の金属化合物、例えば後述する有機アルミニウム化合物との錯化合物、複化合物であってもよく、あるいはこれら他の金属化合物と混合して用いることもできる。
【0019】
本発明で用いられる固体状チタン触媒成分を調製する際に用いる液状マグネシウム化合物としては、上述した以外のマグネシウム化合物を使用することもできるが、調製する固体状チタン触媒成分中において、ハロゲン含有マグネシウム化合物の形で存在することが好ましく、従ってハロゲンを含まないマグネシウム化合物を用いる場合には、触媒成分調製の過程でハロゲン含有化合物と接触反応させることが好ましい。
【0020】
本発明で用いる液状マグネシウム化合物としては、上述した化合物の中でも、還元能を有さないマグネシウム化合物(a−2)が好ましく、特にハロゲン含有マグネシウム化合物が好ましく、さらにこれらの中でも塩化マグネシウム、アルコキシ塩化マグネシウム、アリロキシ塩化マグネシウムを好ましく用いることができる。
【0021】
本発明では上記のようなマグネシウム化合物が固体であるときには、電子供与体(d−1)を用いてマグネシウム化合物を液状化することができる。このような電子供与体(d−1)としては、アルコール類、カルボン酸類、アルデヒド類、アミン類、金属酸エステル類などを用いることができる。
アルコール類としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−メチルペンタノール、2−エチルブタノール、ヘプタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ウンデセノール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコールなどの脂肪族アルコール類;シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノールなどの脂環族アルコール類;ベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール、イソプロピルベンジルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、α,α−ジメチルベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、ナフトールなどの芳香族アルコール類;n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1−ブトキシ−2−プロパノール、メチルカルビトールなどのアルコキシ基含有アルコール類;トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどのハロゲン含有アルコール類などが挙げられる。
【0022】
カルボン酸類としては、炭素数7以上のカルボン酸が好ましく、例えばカプリル酸、2−エチルヘキサノイック酸、ノニリック酸、ウンデシレニック酸などが挙げられる。
アルデヒド類としては、炭素数7以上のアセトアルデヒドが好ましく、例えばカプリルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ナフトアルデヒドなどが挙げられる。
【0023】
アミン類としては、炭素数6以上のアミン類が好ましく、例えばヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ラウリルアミンなどが挙げられる。
金属酸エステル類としては、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラヘキソキシチタン、テトラブトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウムなどが挙げられる。なおこの金属酸エステル類中には、(c−1)活性水素を有さない有機ケイ素化合物として後述するようなケイ酸エステルは含まれない。
【0024】
これらの電子供与体(d−1)は、2種以上併用することもでき、また後述するような上記以外の電子供与体(d)を併用することもできる。これらのうちでも、アルコール類、金属酸エステル類が好ましく、特に炭素数6以上のアルコール類が好ましく用いられる。
上記のような電子供与体(d−1)を用いてマグネシウム化合物を液状化するに際し、例えば電子供与体(d−1)として炭素数6以上の電子供与体を用いる場合には、電子供与体は、マグネシウム化合物1モルに対して通常約1モル以上、好ましくは1〜40モル、さらに好ましくは1.5〜12モルの量で用いられる。また電子供与体(d−1)として、炭素数5以下の電子供与体を用いる場合には、マグネシウム化合物1モルに対して通常約15モル以上の量で用いられる。
【0025】
固体状マグネシウム化合物と電子供与体(d−1)との接触時には、炭化水素溶媒を用いることができる。このような炭化水素溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、灯油などの脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘキセンなどの脂環族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素類;四塩化炭素、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などを用いることができる。
【0026】
例えば、このような炭化水素溶媒のうち芳香族炭化水素を用い、電子供与体(d−1)としてアルコール類を用いる場合には、アルコール類の種類(炭素数)にかかわらず、上記の炭素数6以上の電子供与体の使用量として示した量で用いればマグネシウム化合物を溶解することができる。また脂肪族炭化水素および/または脂環族炭化水素を用いる場合には、電子供与体(d−1)としてのアルコール類は、上述したような炭素数に応じた量で用いられる。
【0027】
本発明では、炭化水素溶媒中で固体状マグネシウム化合物と電子供与体(d−1)とを接触させて調製した液状マグネシウム化合物(a)を用いることが好ましい。固体状マグネシウム化合物を電子供与体(d−1)に溶解するには、固体状マグネシウム化合物と電子供与体(d−1)とを好ましくは炭化水素溶媒の共存下に接触させ、必要に応じて加熱する方法が一般的である。この接触は、通常0〜300℃、好ましくは20〜180℃、より好ましくは50〜150℃の温度で、15分間〜15時間程度、好ましくは30分間〜10時間程度で行われる。
【0028】
<(b)液状チタン化合物>
液状チタン化合物としては、特に4価のチタン化合物が好ましく用いられる。このような四価のチタン化合物としては、次式で示される化合物を挙げることができる。
Ti(OR)g 4-g
(式中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、0≦g≦4である。)
このような化合物としては、具体的には、
TiCl4、TiBr4、TiI4 などのテトラハロゲン化チタン;
Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC25)Cl3、Ti(O n-C49)Cl3、Ti(OC25)Br3、Ti(O iso-C49)Br3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;
Ti(OCH32Cl2、Ti(OC252Cl2、Ti(O n-C492Cl2、Ti(OC252Br2などのジハロゲン化ジアルコキシチタン;
Ti(OCH33Cl、Ti(OC253Cl、Ti(On-C493Cl、Ti(OC253 Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;
Ti(OCH34、Ti(OC254、Ti(O n-C494、Ti(O iso-C494、Ti(O 2−エチルヘキシル)4などのテトラアルコキシチタンなどが挙げられる。これらの中でもテトラハロゲン化チタンが好ましく、特に四塩化チタンが好ましい。
【0029】
これらのチタン化合物は、2種以上組み合わせて用いることもできる。また、これらのチタン化合物は、マグネシウム化合物(a)を液状化する際に用いる溶媒として上述したような炭化水素溶媒に希釈して用いてもよい。
<(c)有機ケイ素化合物または有機ケイ素アルミニウム化合物)>
固体状チタン触媒成分の調製には、有機ケイ素化合物(c−1)または有機ケイ素アルミニウム化合物(c−2)が用いられる。
【0030】
<(c−1)有機ケイ素化合物>
有機ケイ素化合物(c−1)としては、活性水素を有さない有機ケイ素化合物が好ましく用いられ、例えば次式
1 x2 y Si(OR3z
式中R1およびR2は、それぞれ独立して炭化水素基またはハロゲンである。
3は炭化水素基である。
【0031】
1、R2およびR3が示す炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基などが挙げられ、これらはハロゲン、アミノ基で置換されていてもよい。
xは0≦x<2であり、yは0≦y<2であり、zは0<z≦4である。
で表される化合物が挙げられる。
【0032】
このような式で示される有機ケイ素化合物としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(2−エチルヘキシロキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、2−メチルシクロペンチルトリメトキシシラン、2,3−ジメチルシクロペンチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、2−ノルボルナントリメトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2−ノルボルナントリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、トリメチルフェノキシシラン、メチルトリアリロキシ(allyloxy)シラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ビス(2−メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ビス(2,3−ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビスo−トリルジメトキシシラン、ビスm−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、ビス(エチルフェニル)ジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスp−トリルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリシクロペンチルメトキシシラン、トリシクロペンチルエトキシシラン、ジシクロペンチルメチルメトキシシラン、ジシクロペンチルエチルメトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、シクロペンチルジメチルメトキシシラン、シクロペンチルジエチルメトキシシラン、ジシクロペンチルメチルエトキシシラン、シクロペンチルジメチルエトキシシランなどが挙げられる。
【0033】
また、上記式で示される有機ケイ素化合物以外にも、有機ケイ素化合物(c−1)としてジメチルテトラエトキシジシロキサンを用いることができる。
これらのうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランなどが好ましく用いられ、触媒活性の点からテトラエトキシシランが特に好ましく用いられる。
【0034】
なお本発明では、固体状チタン触媒成分を調製する際には必ずしも上記のような活性水素を有さない有機ケイ素化合物(c−1)そのものを用いなくても、固体状チタン触媒成分を調製する過程で活性水素を有さない有機ケイ素化合物を生成しうる他の化合物を用いることもできる。
<(c−2)有機ケイ素アルミニウム化合物>
有機ケイ素アルミニウム化合物(c−2)としては、ケイ素およびアルミニウムを含有する有機化合物をいずれも用いることができるが、本発明ではこのうちアルミノシロキサン化合物が好ましく用いられる。
【0035】
アルミノシロキサン化合物としては、例えば次式で表される化合物が挙げられる。
〔Al(OR4)2(OSiR5 3)〕m
〔Al(OR6)(OSiR7 32p、または
〔Al(OSiR8 332
これらの式において、R4〜R8は、それぞれ独立に、炭素数が1〜12のアルキル基または炭素数が6〜12のアリール基であり、mおよびpは2以上の整数である。これらの式において、R4およびR6は、好ましくは、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチルよりなる群から選ばれる1種以上であり、R5、R7およびR8は、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、フェニルよりなる群から選ばれる1種以上である。
【0036】
本発明では、有機ケイ素アルミニウム化合物(c−2)としては、Al:Siのモル比が1:1、1:2または1:3のアルミノシロキサン化合物が好ましく用いられる。
上述した式〔Al(OR4)2(OSiR5 3)〕mで表される化合物は、AlとSiとのモル比が1:1であって、具体的には、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。なお、本明細書中においては、メチル基をMe、イソプロピル基をiPrとそれぞれ表すこともある。
【0037】
【化1】
Figure 0003643350
【0038】
【化2】
Figure 0003643350
【0039】
また、上述した式〔Al(OR6)(OSiR7 32pで表される化合物は、AlとSiとのモル比が1:2であって、具体的には、例えば下記式で表される化合物が挙げられる。
【0040】
【化3】
Figure 0003643350
【0041】
【化4】
Figure 0003643350
【0042】
さらに、上述した式〔Al(OSiR8 332 で表される化合物は、AlとSiとのモル比が1:3であって、具体的には、例えば下記式で表される化合物が挙げられる。
【0043】
【化5】
Figure 0003643350
【0044】
このようなアルミノシロキサン化合物は、どのような方法で調製してもよいが、例えば、K.Forting、W.E.Streib、K.G.Caulton、O.Poncelet およびL.G.Hubert-Pfalzgret、Polyhedron、10(14)、1639-1646(1991)などに記載された方法によって調製することができる。調製されたアルミノシロキサン化合物は、IRおよび1H−NMRにより構造を識別することができる。
【0045】
例えば、本発明で用いることのできるアルミノシロキサン化合物[Al(OiPr)2 (OSiMe3)]m は、次のような分光情報を有している。
IR(cm-1): 1250(Si−C);−1180、1130(C−CH3);1170;950(Si−O);760;640(Al−OR)1 H NMR(CDCl3 ;0.1M、25℃)(ppm):4.47−4.08(m、OCHMe2 、2H);1.42;1.27;1.47;1.36;1.21;1.10;1.06(d、J=6Hz、OCHMe2 、12H);0.25、0.22、0.21(s、OSiMe2 、9H)
<(d)他の電子供与体>
本発明に係る固体状チタン触媒成分は、上述した(a)液状マグネシウム化合物、(b)液状チタン化合物および(c)有機ケイ素化合物または有機ケイ素アルミニウム化合物の他に、必要に応じて他の電子供与体(d)を含有していてもよい。
【0046】
このような他の電子供与体(d)としては、例えば有機酸エステル、有機酸ハライド、有機酸無水物、エーテル、ケトン、第3アミン、亜リン酸エステル、リン酸エステル、カルボン酸アミド、ニトリル、脂肪族カーボネート、ピリジン類などが挙げられる。
より具体的には、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸i−ブチル、酢酸t−ブチル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、クロル酢酸メチル、ジクロル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、ピバリン酸エチル、酪酸メチル、吉草酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチルなどの炭素数2〜18の有機酸エステル類;
アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、トルイル酸クロリドなどの炭素数2〜15の酸ハライド類;
無水酢酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水トリメリット酸、無水テトラヒドロフタル酸などの酸無水物;
メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルベンジルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどの炭素数2〜20のエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルn−ブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾキノン、シクロヘキサノンなどの炭素数3〜20のケトン類;
トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどの第3アミン類;
亜リン酸トリメチル、トリエチルホスファイト、トリn−プロピルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト、トリn−ブチルホスファイト、トリイソブチルホスファイト、ジエチルn−ブチルホスファイト、ジエチルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類;
リン酸トリメチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリトリルなどのリン酸エステル類;
酢酸N,N−ジメチルアミド、安息香酸N,N−ジエチルアミド、トルイル酸N,N−ジメチルアミドなどの酸アミド類;
アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリルなどのニトリル類;
炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレンなどの脂肪族カーボネート;
ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、ジメチルピリジンなどのピリジン類などを挙げることができる。これらの化合物は、2種以上併用することもできる。
【0047】
<固体状チタン触媒成分(A)の調製>
本発明に係る固体状チタン触媒成分(A)は、上述した各成分から、例えば下記(1)または(2)のような方法により調製することができる。
(1)液状マグネシウム化合物(a)と、液状チタン化合物(b)とを、該マグネシウム化合物(a)1モルに対して0.25〜0.35モルの量の有機ケイ素化合物または有機ケイ素アルミニウム化合物(c)(以下単に「有機ケイ素化合物(c)」ともいう)の存在下に接触させ、得られた接触物を90〜115℃の範囲内の温度に昇温して、この温度に保持する方法。
(2)上記(1)と同様にして調製した接触物を、昇温して90〜115℃の範囲内の温度に保持する過程において、保持温度よりも10℃低い温度から昇温終了時までの間または昇温終了後に、前記マグネシウム化合物(a)1モルに対して0.5モル以下の量の有機ケイ素化合物(c)を添加して、接触物と接触させる方法。
【0048】
本発明に係る固体状チタン触媒成分(A)の調製では、これらの方法のうちでも、得られる固体状チタン触媒成分の触媒活性の点で方法(1)が好ましい。
これらの方法において、各成分を接触させる際には、有機ケイ素化合物(c)は液状マグネシウム化合物(a)に対して、上記のように特定された量で用いられるのが望ましい。液状チタン化合物(b)は、接触により特別な析出手段を加えなくとも固体状物を析出させうる充分な量で用いられることが好ましい。液状チタン化合物(b)の使用量は、その種類、接触条件、有機ケイ素化合物(c)の使用量などによっても異なるが、液状マグネシウム化合物(a)1モルに対しては、通常約1モル以上であることが好ましく、さらには約5〜約200モル、特に約10〜約100モルであることがより好ましい。またチタン化合物(b)は、有機ケイ素化合物(c)1モルに対しては、1モルを超える量で用いることが好ましく、さらには5モル以上の量で用いることが特に好ましい。
【0049】
上述した固体状チタン触媒成分(A)の調製方法をより具体的に説明する。
固体状チタン触媒成分(A)の調製に用いられる液状マグネシウム化合物(a)および/またはチタン化合物(b)は、有機ケイ素化合物(c)を含んでいてもよい。この場合、マグネシウム化合物(a)とチタン化合物(b)との接触時に、有機ケイ素化合物(c)を新たに添加する必要はないが、添加してもよい。いずれの場合においてもマグネシウム化合物(a)に対する有機ケイ素化合物(c)の合計量が上記の範囲内であればよい。
【0050】
有機ケイ素化合物(c)を含有する液状マグネシウム化合物(a)は、例えば有機ケイ素化合物(c)を、液状マグネシウム化合物(b)とを所定時間接触させることにより得られる。この際の接触時間(t)は、接触温度(Temp)が55℃以下の場合は、t>(3−(Temp−50)/5)時間であり、好ましくはt>(4−(Temp−50)/5)時間である。接触温度が55℃を越える場合は、接触時間が少なくとも1時間であり、好ましくは2時間以上である。接触温度は、通常20〜100℃であり、55℃を越えることが好ましく、90℃以下であることが好ましい。
【0051】
固体状チタン触媒成分(A)の調製方法(1)では、有機ケイ素化合物(c)の存在下、液状マグネシウム化合物(a)と液状チタン化合物(b)との接触を、この接触によって急速に固体状物が生じないような低い温度で行っており、具体的には−70〜+50℃、好ましくは−50〜+30℃、さらに好ましくは−40〜+20℃の温度で行うことが望ましい。接触に用いられる各溶液の温度は異なっていてもよい。なお接触当初、接触温度が低すぎて接触物中に固体状物が析出しない時には、低温での接触を長時間行って固体状物を析出させることもできる。
【0052】
調製方法(1)では、上記で得られた接触物を、次いで90〜115℃の範囲内の温度まで徐々に昇温して固体状物を徐々に析出させ、この温度を保持する。保持時間は通常0.5時間〜6時間、好ましくは1時間〜4時間程度である。なお昇温に要する時間は、反応器のスケールなどにより大きく異なる。
このような条件で、有機ケイ素化合物(c)の存在下に、液状マグネシウム化合物(a)と液状チタン化合物(b)とを接触させると、粒度分布の良好な顆粒状または球状の固体状チタン触媒成分を得ることができる。そしてこのように粒子性状に優れた固体状チタン触媒成分を用いてエチレンをスラリー重合させると、顆粒状または球状で粒度分布に優れ、嵩密度が大きく流動性も良好なエチレン重合体を得ることができる。
【0053】
また、上述した固体状チタン触媒成分(A)の調製方法(2)は、上記調製方法(1)と同様に、接触物を90〜115℃の範囲内の温度に昇温し、この温度を通常0.5時間〜6時間、好ましくは1時間〜4時間保持するが、この過程において、前記マグネシウム化合物(a)1モルに対して0.5モル以下の量の有機ケイ素化合物(c)をさらに添加して前記接触物と有機ケイ素化合物(c)とを接触させる。このとき該有機ケイ素化合物(c)は、保持温度よりも10℃低い温度から昇温終了時までの間か、または昇温終了後(好ましくは直後)に、前記接触物に添加される。
【0054】
上記のようにして調製される固体状チタン触媒成分(A)は、マグネシウム、チタン、ハロゲン、および(c)有機ケイ素化合物を含有している。このような固体状チタン触媒成分は、マグネシウム/チタン(原子比)は、約2〜約100、好ましくは約4〜約50、さらに好ましくは約5〜約30であり、特に有機ケイ素化合物(c−1)を用いた場合では、マグネシウム/チタン(モル比)は、3.0〜4.0、好ましくは3.1〜3.8、より好ましくは3.2〜3.7であり、チタン原子が7.8重量%以上、好ましくは8.0重量%以上含有されていることが望ましい。ハロゲン/チタン(原子比)は、約4〜約100好ましくは約5〜約90さらに好ましくは約8〜約50であり、有機ケイ素化合物(c)/チタン(モル比)は、約0.01〜約100好ましくは約0.1〜約10さらに好ましくは約0.2〜約6であることが望ましい。
【0055】
また、有機ケイ素化合物(c)/マグネシウム(モル比)は、約0.001〜約0.1、好ましくは約0.002〜約0.08、特に好ましくは0.005〜0.05であることが望ましい。
本発明で用いる固体状チタン触媒成分(A)は、これら成分以外にも他の成分例えば担体などを含有してもよい。担体を用いる場合には、具体的には、上述した触媒成分に対して、担体を500重量%以下、好ましくは400重量%以下、より好ましくは300重量%以下、さらに好ましくは200重量%以下の量で含有していてもよい。触媒成分の組成は、固体状チタン触媒成分を大量のヘキサンで充分洗浄した後、0.1〜1Torr、室温の条件下で2時間以上乾燥した後、誘導結合プラズマ原子発光分光分析(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy)、ガスクロマトグラフィーなどにより測定することができる。
【0056】
本発明に係る固体状チタン触媒成分(A)の形状は、顆粒状またはほぼ球状であることが望ましく、その比表面積は、約10m2/g以上、好ましくは約30〜500m2/g程度であることが望ましい。本発明では、固体状チタン触媒成分は、通常炭化水素溶媒で洗浄した後に用いられる。
<エチレン重合用触媒>
本発明では、上述した固体状チタン触媒成分(A)を含有するエチレン重合用触媒を用いる。
【0057】
このうち本発明で用いるエチレン重合用触媒としては、上述した固体状チタン触媒成分(A)と、有機金属化合物(B)とから形成される触媒が好ましく用いられる。本発明で用いるエチレン重合用触媒を形成しうる有機金属化合物は、周期律表第1、2族および第13族から選ばれる金属を含むものが好ましく、具体的には、有機アルミニウム化合物、第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化合物、第2族金属の有機金属化合物などを挙げることができる。
【0058】
有機アルミニウム化合物としては、例えば、下記式で示される有機アルミニウム化合物を例示することができる。
a n AlX3-n
(式中、Ra は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Xはハロゲンまたは水素であり、nは1〜3である。)
上記式中において、Ra は、炭素数1〜12の炭化水素基、例えばアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などである。
【0059】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ 2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;
イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;
ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。
【0060】
また有機アルミニウム化合物として、下記式で示される化合物を用いることもできる。
a n AlY3-n
上記式中、Ra は上記と同様であり、Yは−ORb基、−OSiRc 3基、−OAlRd 2基、−NRe 2基、−SiRf 3基または−N(Rg)AlRh 2基であり、nは1〜2であり、Rb、Rc、RdおよびRhはそれぞれ独立にメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などの炭化水素基であり、Reは水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、RfおよびRgはメチル基、エチル基などである。
【0061】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には、以下のような化合物が挙げられる。
▲1▼ Ra n Al(ORb3-nで表される化合物、例えばジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシドなど、
▲2▼ Ra n Al(OSiRc)3-nで表される化合物、例えばEt2Al(OSiMe3)、(iso-Bu)2Al(OSiMe3)、(iso-Bu)2Al(OSiEt3)など、
▲3▼ Ra n Al(OAlRd 2)3-nで表される化合物、例えばEt2AlOAlEt2、(iso-Bu)2AlOAl(iso-Bu)2 など、
▲4▼ Ra n Al(NRe 23-nで表される化合物、例えばMe2AlNEt2、Et2AlNHMe、Me2AlNHEt、Et2AlN(Me3Si)2、(iso-Bu)2AlN(Me3Si)2 など、
▲5▼ Ra n Al(SiRf 3)3-nで表される化合物、例えば(iso-Bu)2AlSiMe3など、
▲6▼ Ra n Al〔N(Rg)−AlRh 23-nで表される化合物、例えばEt2AlN(Me)−AlEt2、(iso-Bu)2AlN(Et)Al(iso-Bu)2 など。
【0062】
またこれに類似した化合物、例えば酸素原子、窒素原子を介して2以上のアルミニウムが結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。より具体的には、(C25)2AlOAl(C25)2、(C49)2AlOAl(C49)2、(C25)2AlN(C25)Al(C25)2、など、さらにメチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類を挙げることができる。
【0063】
第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物としては、下記一般式で表される化合物を例示できる。
1AlRj 4
(式中、M1はLi、Na、Kであり、Rjは炭素数1〜15の炭化水素基である。)
このような化合物としては、具体的には、LiAl(C25)4 、LiAl(C715)4 などが挙げられる。
【0064】
第2族金属の有機金属化合物としては、下記一般式で表される化合物を例示できる。
k l 2
(式中、Rk、Rlは炭素数1〜15の炭化水素基あるいはハロゲンであり、互いに同一でも異なっていてもよいが、いずれもがハロゲンである場合は除く。M2はMg、Zn、Cdである)
具体的には、ジエチル亜鉛、ジエチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどが挙げられる。
【0065】
上記のような有機金属化合物のうちでも、Ra 3AlX3-n、Ra n Al(ORb3-n、Ra n Al(OAlRd 2)3-n で表される化合物、特にトリアルキルアルミニウムが好ましく用いられる。これらの化合物は、2種以上併用することもできる。
本発明で用いられるエチレン重合用触媒は、オレフィン類が予備重合されていてもよい。なお本発明で用いられるエチレン重合用触媒は、上記のような各成分以外にも、エチレンの重合に有用な他の成分を含むことができる。
【0066】
このような本発明で用いられるエチレン重合用触媒は、エチレンの重合あるいは共重合に極めて高い活性を示す。
<重合>
本発明では、上述した固体状チタン触媒成分(A)を含有する触媒を用いて、エチレンを単独で重合するかまたはエチレンと他のα−オレフィンとを共重合して、エチレン系重合体組成物を製造するが、重合は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。好ましくは、以下の工程(I)および(II)を有する多段工程により、エチレンを単独で重合するかまたはエチレンと他のα−オレフィンとを共重合して、エチレン系重合体組成物を製造する。
【0067】
本発明において、エチレンと他のα−オレフィンとを共重合する際に用いられるエチレン以外の他のα−オレフィンとしては、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの直鎖状または分岐上のα−オレフィンが挙げられる。これらの他のα−オレフィンは、単独で用いられてもよく、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0068】
また、本発明における重合では、本発明の目的を損なわない範囲で、少量のビニル化合物、環状オレフィン、ポリエン化合物などの他の不飽和化合物などを共重合させることもでき、例えばスチレン、置換スチレン類、アリルベンゼン、置換アリルベンゼン類、ビニルナフタレン類、置換ビニルナフタレン類、アリルナフタレン類、置換アリルナフタレン類などの芳香族ビニル化合物;ビニルシクロペンタン、置換ビニルシクロペンタン類、ビニルシクロヘキサン、置換ビニルシクロヘキサン類、ビニルシクロヘプタン、置換ビニルシクロヘプタン類、アリルノルボルナンなどの脂環族ビニル化合物;シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどの環状オレフィン;アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、4−トリメチルシリル−1−ブテン、6−トリメチルシリル−1−ヘキセン、8−トリメチルシリル−1−オクテン、10−トリメチルシリル−1−デセンなどのシラン系不飽和化合物などを共重合させてもよい。
【0069】
工程(I)は、上述した固体状チタン触媒成分(A)を含有する触媒を用いて、エチレンを単独重合するかまたはエチレンと他のα−オレフィンとを共重合する工程であり、
α−オレフィン含有量が30重量%以下、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜10重量%であって、極限粘度[η]が後述する工程(II)で得られるエチレン系重合体(ii)の少なくとも1.5倍、好ましくは2倍以上、より好ましくは3〜20倍であり、かつ1〜12dl/g、好ましくは1.5〜12dl/g、より好ましくは2〜10dl/gの範囲にあるエチレン系重合体(i)を製造する工程である。また、エチレン系共重合体組成物をフィルム用途に使用する場合には、エチレン系重合体(i)の極限粘度[η]は、エチレン系重合体(ii)の極限粘度[η]の、5〜20倍、好ましくは7〜15倍であることが望ましい。
なお、極限粘度([η])は、135℃、デカリン中で測定される。
【0070】
なお、エチレン系重合体(i)の極限粘度[η]は、エチレン系重合体(ii)の極限粘度[η]の少なくとも1.5倍であって重合可能な範囲であれば上限は特に限定されないが、通常50倍以下であることが好ましい。
また工程(II)は、エチレンを単独重合するかまたはエチレンと他のα−オレフィンとを重合する工程であり、
α−オレフィン重合量が15重量%以下、好ましくは0〜10重量%、より好ましくは0〜5重量%であって、極限粘度[η]が0.3〜3dl/g、好ましくは0.4〜2.5dl/g、より好ましくは0.5〜2dl/gの範囲にあるエチレン系重合体(ii)を製造する工程である。
【0071】
エチレン系重合体(ii)のα−オレフィン含有量が上記範囲内であると、環境応力ひび割れに対する抵抗力が優れた組成物が得られるため好ましく、また、エチレン系重合体(ii)の極限粘度[η]が上記範囲内であると、加工性および衝撃強度や引っ張り強度に優れた組成物が得られ、表面肌荒れの少ない成形品を製造しうるため好ましい。
【0072】
本発明では、工程(I)で得たエチレン系重合体(i)の存在下で工程(II)を行うか、または、工程(II)で得たエチレン系重合体(ii)の存在下で工程(I)を行う。このとき、一方の工程(先の工程)で得られたエチレン系重合体の存在下で行う工程(後の工程)では、新たに上述したエチレン重合用触媒を用いてもよいが、先の工程で使用したエチレン重合用触媒を引き続き使用するのが好ましい。先の工程で使用したエチレン重合用触媒を引き続き使用する場合には、触媒使用量を低減できるほか、フィッシュアイ発生の少ない組成物が得られるため好ましい。
【0073】
このように本願発明では、先の工程で得たエチレン系重合体の存在下で、後の工程でエチレン系重合体を生成させて、エチレン系重合体組成物を製造するが、後の工程で生成したエチレン系重合体の極限粘度は、下記式により求めることができる。
[η]C=WA[η]A+WB[η]B
式中、[η]Aは先の工程で得たエチレン系重合体の極限粘度、[η]Bは後の工程で得たエチレン系重合体の極限粘度、[η]Cはエチレン系重合体組成物をそれぞれ示し、WAはエチレン系重合体組成物中の先の工程で得たエチレン系重合体の重量比、WBはエチレン系重合体組成物中の後の工程で得たエチレン系重合体の重量比をそれぞれ示す。また、WA+WB=1である。
【0074】
工程(I)および工程(II)における重合は、スラリー重合であっても気相重合であってもよいが、スラリー重合であるのが好ましい。また、工程(I)および工程(II)における重合は、不活性溶媒の存在下で行われてもよい。重合に用いることのできる不活性溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などのような脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどのような脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどのような芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素などを挙げることができる。
【0075】
本発明における工程(I)および工程(II)では、上述したエチレン重合用触媒は、重合容積1リットルあたり、Ti原子に換算して、通常0.0001〜0.1ミリモル、好ましくは0.001〜0.05ミリモル程度の量で用いるのが好ましい。
工程(I)および工程(II)における重合条件は特に限定されるものではないが、通常、約20〜120℃、好ましくは50〜100℃の温度で、常圧〜9.8MPa(常圧〜100kg/cm2)、好ましくは約0.2〜4.9MPa(約2〜50kg/cm2)の圧力下に行われるのが望ましい。有機金属化合物(B)を併用する場合は、該有機金属化合物(B)中の金属原子が、固体状チタン触媒成分(B)中のチタン原子1モルに対して、通常1〜2000モルとなるような量で用いる。
【0076】
また、工程(I)および工程(II)では、水素存在下に重合を行うことによって、得られる重合体の分子量を調節することもできる。
本発明で得られるエチレン系重合体組成物は、工程(I)で得たエチレン系重合体(i)および工程(II)で得たエチレン系重合体(ii)を含有する。
本発明では、得られるエチレン系重合体組成物の全量を100重量部とするときに、工程(I)で得られるエチレン系重合体(i)が40〜70重量部、好ましくは45〜60重量部、工程(II)で得られるエチレン系重合体(ii)が60〜30重量部、好ましくは55〜40重量部の割合となるように、工程(I)および工程(II)を行うのが望ましい。
【0077】
本発明では、このような工程(I)および工程(II)を有するエチレン系重合体組成物の製造方法により、極限粘度[η]が1〜6dl/g、好ましくは1.5〜5dl/gであって、密度が0.94g/cm3以上、好ましくは0.94〜0.97g/cm3、より好ましくは0.95〜0.97g/cm3であるエチレン系重合体組成物が得られる。
【0078】
本発明で得られるエチレン系重合体組成物は、α−オレフィン含量が20重量%以下、好ましくは0〜10重量%であるのが望ましい。また、本発明で得られるエチレン系重合体組成物の分子量分布(Mw/Mn)は、多段階の重合により比較的広く、通常20〜45、好ましくは25〜40程度であるのが望ましい。また、本発明のエチレン系重合体組成物の製造方法では、上述した工程(I)および工程(II)に加えて、得られたエチレン系重合体組成物を50〜110℃程度、好ましくは70〜110℃程度で乾燥する、乾燥工程を有していてもよい。本発明により得られたエチレン系重合体組成物は、シンタリング温度が高く、加熱を伴う乾燥を行った場合にもべたつきを生じにくく、また優れた粒径分布により局部的な過熱を生じにくいため、効率よく乾燥を行うことができる。
【0079】
なお、上記固体状チタン触媒成分(A)を含有する触媒を用いて、エチレンを単独で重合するかまたはエチレンと他のα−オレフィンとを共重合する際に、上述したように二つの工程に分けることなく一段で重合した場合は、得られるエチレン系重合体の嵩比重は、通常0.30〜0.45g/ml、好ましくは0.33〜0.45g/ml程度になる。
【0080】
また一段で重合した場合に得られるエチレン系重合体のメルトフローレートMFR(ASTM D1238Eに準拠、190℃)は、0.01〜5000g/10分であることが望ましい。
このような本発明のエチレン系重合体組成物の製造方法では、エチレン系重合体組成物を極めて高い重合活性で製造することができ、粒子性状に優れたエチレン系重合体組成物が得られる。このため、得られるエチレン系重合体組成物は、重合体組成物単位あたりの触媒含有量が少なく、成形時に金型発錆を生じにくい。また、本発明で得られるエチレン系重合体組成物は、粒径分布が狭く、分子量分布が比較的広いため、成形性に優れるとともに、成形時などの高温条件下においてもべたつきを生じにくい。
【0081】
<エチレン系重合体組成物粒子>
本発明のエチレン系重合体組成物粒子は、エチレンを単独重合するかまたはエチレンと他のα−オレフィンとを共重合して得られ、ASTM D1238Eに準拠して190℃で測定したメルトフローレート(MFR)が0.0001〜0.5g/10分、好ましくは0.0005〜0.3g/10分の範囲にあり、分子量分布(Mw/Mn)が20〜45、好ましくは25〜40の範囲にあるエチレン系重合体組成物からなる。このようなエチレン系重合体組成物は、極限粘度[η]が1〜6dl/g、好ましくは1.5〜5dl/gの範囲にあることも望ましく、また、密度が0.94g/cm3以上、好ましくは0.94〜0.97g/cm3、より好ましくは0.95〜0.97g/cm3程度であることも望ましい。また、α−オレフィン含量が20重量%以下、好ましくは0〜10重量%であることも望ましい。
【0082】
また、本発明のエチレン系重合体組成物粒子は、次式により求められる粒径分布指数が1.1〜2.0、好ましくは1.1〜1.8、より好ましくは1.1〜1.6の範囲にあり、
【0083】
【数3】
Figure 0003643350
【0084】
(上記式において、ポリマーD16は重合体組成物全体の16重量%を分級できたところの粒径を、ポリマーD84は重合体組成物全体の84重量%を分級できたところの粒径をそれぞれ示す。)
嵩密度が0.30〜0.45g/ml、好ましくは0.32〜0.45g/mlの範囲にあり、かつ、
流動性指数が45〜90、好ましくは50〜90の範囲にある。
【0085】
なお、エチレン系重合体組成物の分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、カラム:東ソー製GMHHR-H(S)-HT 30cm×2、GMH-HTL 30cm×2、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流速:1.0ml/min、温度:140℃の条件下で測定することにより求めることができる。
【0086】
また、エチレン系重合体組成物粒子の粒径分布指数は、ふるいにより求めた粒径分布より、上記式に従って求めることができ、嵩密度はJIS K-6721 により求めることができ、流動性指数は、Carrの方法(Chemical Engineering,Jan.,18/1965)の方法で、圧縮度、安息角、スパチュラ角および均一度を測定することにより求めることができる。
【0087】
このような本発明のエチレン系重合体組成物粒子は、上述した本発明のエチレン系重合体組成物の製造方法により好適に製造でき、上述した本発明のエチレン系重合体組成物の製造方法において、工程(I)および工程(II)の重合をスラリー重合により行った場合に、より好適に製造することができる。
本発明のエチレン系重合体組成物粒子は、上述のように特定のMFRと比較的広い分子量分布を有するエチレン系重合体組成物からなり、粒径分布が狭く、かつ特定の嵩密度および流動性指数を有している。
【0088】
このため本発明のエチレン系重合体組成物粒子は、シンタリング温度が高く、乾燥時などの高温下でもべたつきを生じにくく、粒子同士の接着も起こりにくいため、運搬、保管、成形機への導入などの種々の場合において取り扱いが容易である。また、微粉をほとんど含まず、粒子性状に優れるため、ペレット化することなくそのまま成形に供することもできる。さらに本発明のエチレン系重合体組成物粒子は成形性に優れ、これを成形して得られる成形品は、衝撃強度や引っ張り強度に優れ、表面肌荒れも少なく、成形金型への発錆も生じにくい。
【0089】
このように本発明のエチレン系重合体組成物粒子は、運搬、保管、成形機への導入、成形などの後工程が、工業的に極めて効率的であり、該粒子から得られる成形体も優れた性状を有する。
上記のような本発明で得られるエチレン系重合体組成物およびエチレン系重合体組成物粒子には、必要に応じて耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料、染料、無機あるいは有機充填剤などを配合することもできる。
【0090】
本発明に係るエチレン系重合体組成物およびエチレン系重合体組成物粒子は成形性に優れており、カレンダー成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、プレス成形、スタンピングモールド成形等で成形することができる。
エチレン系重合体組成物およびエチレン系重合体組成物粒子からシートまたはフィルムを成形するには、例えば上記エチレン系重合体組成物(粒子)を押出成形する方法がある。押出成形する際には、従来公知の押出装置および成形条件を採用することができ、例えば単軸スクリュー押出機、混練押出機、ラム押出機、ギヤ押出機などを用いて、溶融したエチレン系重合体組成物をTダイなどから押出すことによりシートまたはフィルム(未延伸)に成形することができる。
【0091】
延伸フィルムは、上記のような押出シートまたは押出フィルム(未延伸)を、例えばテンター法(縦横延伸、横縦延伸)、同時二軸延伸法、一軸延伸法により延伸することにより得られる。またインフレーションフィルムを製造することもできる。インフレーションフィルムの製造は、上記エチレン系重合体組成物粒子を溶融し、環状スリットダイを介して押出し、所定の空気流によって膨張させることにより行われる。溶融したエチレン系重合体組成物粒子を押出しする際の樹脂温度は、180〜250℃とすることが好適である。ダイ面からの白化点高さはダイ径の8〜15倍であることが望ましい。また膨比は1.5〜6倍が好ましい。
【0092】
発明に係るエチレン系重合体組成物粒子から上記のようにしてフィルムは、厚みが5〜60μm、好ましくは6〜50μmであることが望ましい。
このようにして得られるフィルムは、厚みのばらつきが小さく引裂強度に優れるという特徴をもつ。
ここで本発明において、フィルムの厚みばらつきが小さいとは、アンリツ社製のフィルム厚み連続測定装置K−306AおよびK−310Cを用いて、15mm間隔で膜厚を測定した標準偏差値が1.5μm以下であることを意味する。
【0093】
また、引裂強度に優れるとは、JIS K7128に準じて測定したエルメンドルフ引裂強度がMD方向70N/cm以上、TD方向700N/cm以上であることを意味する。
【0094】
【発明の効果】
本発明によれば、微粉含量が少なく、粒子性状に優れ、成形性に優れるとともに、乾燥時や成形時などの高温条件下においてもべたつきを生じにくい、工業的取り扱いに優れたエチレン系重合体組成物を極めて高い重合活性で製造することができる。
【0095】
本発明のエチレン系重合体組成物粒子は、成形時などの加熱時にもべたつきを生じにくく、粒子同士の接着が起こりにくく、工業的取り扱いが容易である。また、成形性に優れ、成形金型への発錆も生じにくい。さらに微粉をほとんど含まず、粒子性状に優れ、ペレット化することなくそのまま成形に供することもできる。さらに、本発明のエチレン系重合体組成物粒子を成形して得られる成形品は、衝撃強度や引っ張り強度に優れ、表面肌荒れも少ない。また、フィルム用途に用いた場合は、厚みのばらつきが小さく引裂強度に優れる。
【0096】
本発明に係るフィルムは、上記エチレン系重合体組成物粒子から得られ、厚みのばらつきが小さく、引裂強度に優れる。
【0097】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、固体状チタン触媒成分の組成、重合体組成物粒子の粒径分布および嵩比重は、下記の方法により測定した。
・MgおよびTi含有量
ICP分析機(島津製作所、ICPF 1000TR)により測定した。
・Cl含有量
硝酸銀滴定法により測定した。
・粒径分布
振動機(飯田製作所、ロータップ製)およびふるい(Bunsei Furui、内径200mm)を用いて測定した。
・嵩比重
JIS K−6721により測定した。
・シンタリング温度
1リットルのガラス製オートクレーブに、重合体組成物100gおよびヘキサン250mlを装入し、密閉した後に攪拌速度300rpmで30分間攪拌する。次に、昇温速度1℃/minで昇温しながらスラリー状態を観察し、膨潤したときの温度を測定し、シンタリング温度とする。
・フィルム物性
アンリツ社製のフィルム厚み連続測定装置K−306AおよびK−310Cを用いて、15mm間隔で膜厚を測定して、計算によりばらつきを求めた。すなわち、これらの装置でフィルム厚みの平均厚みと標準偏差値を測定し、標準偏差値をフィルムの厚みばらつきとした。エルメンドルフ引裂強度は、JIS K7128に準じて引裂試験を行って求めた。
【0098】
〔固体状チタン触媒成分(A)の調製〕
【0099】
【合成例1】
無水塩化マグネシウム 5.0kg(52.5mol)、デカン 21.5kgおよび2−エチルヘキシルアルコール 17.1kg(131.3mol)を140℃で8時間加熱反応させて均一溶液とした後、この溶液中にテトラエトキシシラン3.28kg(15.8mol)を添加し、60℃でさらに2時間攪拌反応を行い、テトラエトキシシランを溶液中に溶解し、均一溶液を得た。
【0100】
得られた均一溶液全量を40℃まで冷却し、その温度で保持したものを、2℃に保持された四塩化チタン 140リットル中に、攪拌下2時間かけて滴下装入した。装入終了後、この混合液を温度2℃で1時間保持し、その後3時間かけて105℃に昇温し、その温度で攪拌下1時間保持して反応させた。
1時間の反応終了後、熱ろ過にて固体部を分離し、この固体部を、洗浄液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで90℃のヘキサンで充分洗浄し、固体状チタン触媒成分(A−1)のヘキサン懸濁液を得た。得られた固体状チタン触媒成分(A−1)の組成を表1に示す。
【0101】
【合成例2】
無水塩化マグネシウム 1.90kg(20mol)を、脱水精製したヘキサン 50リットルに懸濁させ、攪拌しながらエタノール 5.57kg(121mol)を滴下し、30℃で1時間反応させた。これに6.44kg(53.4mol)のジエチルアルミニウムクロライドを30℃で滴下し、その温度で2時間攪拌を続けた。次いでこれに四塩化チタン 2.99kg(157.6mol)を加え、系を80℃に昇温し、その温度で攪拌下3時間保持して反応させた。
【0102】
反応後の固体部を分取し、この固体部を、洗浄液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで室温下のヘキサンで充分洗浄し、固体状チタン触媒成分(A−2)のヘキサン懸濁液を得た。得られた固体状チタン触媒成分(A−2)の組成を表1に示す。
【0103】
【合成例3】
無水塩化マグネシウム 4.76g(50ミリモル)、デカン 28.1mlおよび2−エチルヘキシルアルコール 16.3g(125ミリモル)を130℃で3時間加熱反応させて均一溶液とした後、この溶液中にテトラエトキシシラン 3.1g(15ミリモル)を添加し、60℃にてさらに2時間攪拌混合を行い、テトラエトキシシランを溶液中に溶解させた。
【0104】
このようにして得られた均一溶液全量を40℃まで冷却しその温度で保持した後、2℃に保持された四塩化チタン 200ml(1.8モル)中に、攪拌下、1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を2℃で1時間保持し、その後3時間かけて105℃に昇温し、その後1時間攪拌下、同温度に保持した。
【0105】
1時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を分離し、この固体部を90℃のデカンおよびヘキサンで洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄し、固体状チタン触媒成分(A−3)のヘキサン懸濁液を得た。得られた固体状チタン触媒成分(A−3)の組成を表1に示す。
【0106】
【合成例4】
合成例3において、触媒成分調製時にテトラエトキシシランを添加した後の反応温度を60℃から65℃に変更した以外は、合成例3と同様にして触媒成分を調製した。得られた固体状チタン触媒成分(A−4)の組成を表1に示す。
【0107】
【合成例5】
合成例3において、触媒成分調製時にテトラエトキシシランを添加した後の反応温度を60℃から70℃に変更した以外は、合成例3と同様にして触媒成分を調製した。得られた固体状チタン触媒成分(A−5)の組成を表1に示す。
【0108】
【合成例6】
合成例3において、触媒成分調製時に反応温度を105℃から110℃に、反応時間を1時間から2時間に変えた以外は合成例3と同様にして触媒成分を調製した。得られた固体状チタン触媒成分(A−6)の組成を表1に示す。
【0109】
【合成例7】
合成例3において、触媒成分調製時に反応温度を105℃から120℃に、反応時間を1時間から2時間に変えた以外は合成例3と同様にして触媒成分を調製した。得られた固体状チタン触媒成分(A−7)の組成を表1に示す。
【0110】
【合成例8】
合成例3において、触媒成分調製時に添加するテトラエトキシシランの量を3.1g(15ミリモル)から1.7g(8ミリモル)に変えた以外は、合成例3と同様にして触媒成分を調製した。得られた固体状チタン触媒成分(A−8)の組成を表1に示す。
【0111】
【合成例9】
合成例3において、触媒成分調製時の反応温度を105℃から125℃に変えた以外は合成例3と同様にして触媒成分を調製した。得られた固体状チタン触媒成分(A−9)の組成を表1に示す。
なお、下記表1に示す合成例3〜9の固体状触媒成分の組成のうち、ケイ素の量は約0.1〜0.5重量%、その他(Ti、Mg、OEt、OEHおよびSi以外のもの)はハロゲンである。
【0112】
【表1】
Figure 0003643350
【0113】
〔重合〕
【0114】
【実施例1】
連続式スラリー重合装置を用い、以下のようにして二段重合を行った。
まず、一段目の重合装置に、合成例1で調製した固体状チタン触媒成分(A−1)を、チタン原子換算で3.8mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hrの割合で連続的に供給し、また、エチレンを14.1kg/hr、ヘキサンを40リットル/hrの割合で連続的に供給し、さらに一定のガス組成を維持するために、エチレンとともに水素および窒素を、水素/エチレンが10.3(モル比)、エチレン濃度が7モル%となる条件で連続的に供給して、全圧0.52Mpa、重合温度85℃の条件でエチレンのホモ重合を行った。一段目の重合で得られた重合溶液中のエチレン重合体は、MFRが797g/10分、シンタリング温度が105℃であり、極限粘度[η]が0.52dl/gであった。
【0115】
次に、一段目の重合で得られた重合溶液を水素除去した後に、二段目の重合装置に移送した。また、二段目の重合装置に、エチレンを13.9kg/hr、1−ブテンを0.29kg/hr、ヘキサンを53リットル/hrの割合で連続的に供給し、さらに一定のガス組成を維持するために、エチレンおよび1−ブテンとともに、水素および窒素を、1−ブテン/エチレンが0.141(モル比)、水素/エチレンが0.109(モル比)、エチレン濃度が10.6モル%となる条件で連続的に供給して、全圧0.27Mpa、重合温度80℃の条件で、一段目の重合で得られた重合溶液の存在下でエチレンと1−ブテンとの重合を行った。二段目の重合で得られたエチレン系重合体(エチレン・1−ブテン共重合体)は、極限粘度[η]が5.21dl/gであり、1−ブテン含量は4.1重量%であった。
【0116】
得られたエチレン系重合体組成物は、密度が0.948g/cm3であり、1−ブテン含量は2.0重量%であり、MFRが0.079g/10分であり、シンタリング温度は95℃であり、極限粘度[η]が2.82dl/gであった。また、一段目の重合で得られたエチレン重合体と二段目の重合で得られたエチレン系重合体との重量比は、51:49であった。得られたエチレン系重合体組成物の物性を、表2、表3および表4に示す。
【0117】
【実施例2】
実施例1で用いたものと同様の連続式スラリー装置を用い、一段目の重合装置に、合成例1で調製した固体状チタン触媒成分(A−1)をチタン原子換算で2.1mmol/hr、トリエチルアルミニウムを30mmol/hrの割合で連続的に供給し、また、エチレンを12kg/hr、ヘキサンを40リットル/hrの割合で連続的に供給し、さらに一定のガス組成を維持するために、エチレンとともに水素および窒素を、水素/エチレンが8.5(モル比)、エチレン濃度が8.9モル%となる条件で連続的に供給して、全圧0.83Mpa、重合温度85℃の条件でエチレンのホモ重合を行った。一段目の重合で得られた重合溶液中のエチレン重合体は、MFRが855g/10分、シンタリング温度が105℃であり、極限粘度[η]が0.51dl/gであった。
【0118】
次に、一段目の重合で得られた重合溶液を水素除去した後に、二段目の重合装置に移送した。また、二段目の重合装置に、エチレンを11.5kg/hr、1−ブテンを0.3kg/hr、ヘキサンを53リットル/hrの割合で連続的に供給し、さらに一定のガス組成を維持するために、エチレンおよび1−ブテンとともに、水素および窒素を、1−ブテン/エチレンが0.069(モル比)、水素/エチレンが0.068(モル比)、エチレン濃度が20.2モル%となる条件で連続的に供給して、全圧0.26Mpa、重合温度80℃の条件で、一段目の重合で得られた重合溶液の存在下でエチレンと1−ブテンとの重合を行った。二段目の重合で得られたエチレン系重合体(エチレン・1−ブテン共重合体)は、極限粘度[η]が5.20dl/gであり、1−ブテン含量は4.1重量%であった。
【0119】
得られたエチレン系重合体組成物は、密度が0.948g/cm3であり、1−ブテン含量は2.0重量%であり、MFRが0.081g/10分、シンタリング温度は95℃であり、極限粘度[η]が2.81dl/gであった。また、一段目の重合で得られたエチレン重合体と二段目の重合で得られたエチレン系重合体との重量比は、51:49であった。得られたエチレン系重合体組成物の物性を、表2、表3および表4に示す。
【0120】
【比較例1】
実施例1で用いたものと同様の連続式スラリー装置を用い、一段目の重合装置に、合成例2で調製した固体状チタン触媒成分(A−2)を、チタン原子換算で4.2mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hrの割合で連続的に供給し、また、エチレンを14.1kg/hr、ヘキサンを40リットル/hrの割合で連続的に供給し、さらに一定のガス組成を維持するために、エチレンとともに水素および窒素を、水素/エチレンが11.4(モル比)、エチレン濃度が6.2モル%となる条件で連続的に供給して、全圧0.51Mpa、重合温度85℃の条件でエチレンのホモ重合を行った。一段目の重合で得られた重合溶液中のエチレン重合体は、MFRが796g/10分、シンタリング温度が102℃であり、極限粘度[η]が0.52dl/gであった。
【0121】
次に、一段目の重合で得られた重合溶液を水素除去した後に、二段目の重合装置に移送した。また、二段目の重合装置に、エチレンを13.9kg/hr、1−ブテンを0.27kg/hr、ヘキサンを53リットル/hrの割合で連続的に供給し、さらに一定のガス組成を維持するために、エチレンおよび1−ブテンとともに、水素および窒素を、1−ブテン/エチレンが0.194(モル比)、水素/エチレンが0.122(モル比)、エチレン濃度が9.2モル%となる条件で連続的に供給して、全圧0.27Mpa、重合温度80℃の条件で、一段目の重合で得られた重合溶液の存在下でエチレンと1−ブテンとの重合を行った。二段目の重合で得られたエチレン系重合体(エチレン・1−ブテン共重合体)は、極限粘度[η]が5.62dl/gであり、1−ブテン含量は4.1重量%であった。
【0122】
得られたエチレン系重合体組成物は、密度が0.948g/cm3であり、1−ブテン含量は2.0重量%であり、MFRが0.063g/10分、シンタリング温度は92℃であり、極限粘度[η]が3.02dl/gであった。また、一段目の重合で得られたエチレン重合体と二段目の重合で得られたエチレン系重合体との重量比は、51:49であった。得られたエチレン系重合体組成物の物性を、表2、表3および表4に示す。
【0123】
【比較例2】
実施例1で用いたのと同様の連続式スラリー装置を用い、一段目の重合装置に、合成例2で調製した固体状チタン触媒成分(A−2)をチタン原子換算で2.5mmol/hr、トリエチルアルミニウムを40mmol/hrの割合で連続的に供給し、また、エチレンを12kg/hr、ヘキサンを40リットル/hrの割合で連続的に供給し、さらに一定のガス組成を維持するために、エチレンとともに水素および窒素を、水素/エチレンが9.3(モル比)、エチレン濃度が8モル%となる条件で連続的に供給して、全圧0.79Mpa、重合温度85℃の条件でエチレンのホモ重合を行った。一段目の重合で得られた重合溶液中のエチレン重合体は、MFRが836g/10分、シンタリング温度が102℃であり、極限粘度[η]が0.51dl/gであった。
【0124】
次に、一段目の重合で得られた重合溶液を水素除去した後に、二段目の重合装置に移送した。また、二段目の重合装置に、エチレンを11.5kg/hr、1−ブテンを0.26kg/hr、ヘキサンを53リットル/hrの割合で連続的に供給し、さらに一定のガス組成を維持するために、エチレンおよび1−ブテンとともに、水素および窒素を、1−ブテン/エチレンが0.1(モル比)、水素/エチレンが0.097(モル比)、エチレン濃度が17.1モル%となる条件で連続的に供給して、全圧0.29Mpa、重合温度80℃の条件で、一段目の重合で得られた重合溶液の存在下でエチレンと1−ブテンとの重合を行った。二段目の重合で得られたエチレン系重合体(エチレン・1−ブテン共重合体)は、極限粘度[η]が5.18であり、1−ブテン含量は3.9重量%であった。
【0125】
得られたエチレン系重合体組成物は、密度が0.949/cm3であり、1−ブテン含量は1.9重量%であり、MFRが0.083g/10分、シンタリング温度は92℃であり、極限粘度[η]が2.80dl/gであった。また、一段目の重合で得られたエチレン重合体と二段目の重合で得られたエチレン系重合体との重量比は、51:49であった。得られたエチレン系重合体組成物の物性を、表2、表3および表4に示す。
【0126】
【表2】
Figure 0003643350
【0127】
【表3】
Figure 0003643350
【0128】
【表4】
Figure 0003643350
【0129】
【参考例1】
内容積1リットルのオートクレーブ中に、窒素雰囲気下、精製n−ヘプタン 500mlを装入し、トリエチルアルミニウム 0.5ミリモル、および合成例3で得られた固体状チタン触媒成分(A−3)のヘキサン懸濁液をチタン原子換算で0.03ミリモル相当量加えた後、80℃に昇温し、水素を0.5Mpa供給し、次いで全圧が0.6Mpaとなるようにエチレンを連続的に1.5時間供給した。重合温度は80℃に保った。
【0130】
重合終了後、エチレン重合体をn−ヘプタン溶媒から分離して乾燥した。
乾燥後、106.6gのパウダー状重合体が得られた。このパウダー状重合体のMFRは71g/10分、見かけ嵩比重は0.35g/mlであった。
この結果を表6に示す。またこのパウダー状重合体の粒度分布を表5に示す。
【0131】
【表5】
Figure 0003643350
【0132】
【参考例2】
参考例1において、固体状チタン触媒成分(A−3)の代わりに、固体状チタン触媒成分(A−4)を用いた以外は、参考例1と同様にして重合を行った。結果を表6に示す。
【0133】
【参考例3】
参考例1において、固体状チタン触媒成分(A−3)の代わりに、固体状チタン触媒成分(A−5)を用いた以外は、参考例1と同様にして重合を行った。結果を表6に示す。
【0134】
【参考例4】
参考例1において、固体状チタン触媒成分(A−3)の代わりに、固体状チタン触媒成分(A−6)を用いた以外は、参考例1と同様にして重合を行った。結果を表6に示す。
【0135】
【参考例5】
参考例1において、固体状チタン触媒成分(A−3)の代わりに、固体状チタン触媒成分(A−7)を用いた以外は、参考例1と同様にして重合を行った。結果を表6に示す。
【0136】
【参考例6】
参考例1において、固体状チタン触媒成分(A−3])の代わりに、固体状チタン触媒成分(A−8)を用いた以外は、参考例1と同様にして重合を行った。結果を表6に示す。
【0137】
【参考例7】
参考例1において、固体状チタン触媒成分(A−3)の代わりに、固体状チタン触媒成分(A−9)を用いた以外は、参考例1と同様にして重合を行った。結果を表6に示す。
【0138】
【表6】
Figure 0003643350
【0139】
【成形実施例1】
実施例2で得られたエチレン系重合体組成物粒子を、環状スリットダイを介して押出し、所定の空気流によって膨張させることによってフィルムを得た。ポリエチレン樹脂組成物を押出しする際の樹脂温度は、210℃、ダイ面からの白化点高さはダイ径の13倍、また膨比は3倍であった。
【0140】
得られたフィルムの平均厚み、厚みばらつき、エルメンドルフ引裂強度(MD方向とTD方向)を表7に示した。
【0141】
【成形比較例1】
成形実施例1において、実施例2で得られたエチレン系重合体組成物粒子の代わりに、比較例2で得られた重合体組成物粒子を用いた以外は、成形実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの平均厚み、厚みばらつき、エルメンドルフ引裂強度(MD方向とTD方向)を表7に示した。
【0142】
【表7】
Figure 0003643350

Claims (4)

  1. (a)液状マグネシウム化合物と、
    (b)液状チタン化合物とを、
    (c)有機ケイ素化合物
    の存在下に接触させて得られる固体状チタン触媒成分を含有するエチレン重合用触媒を用いて、
    (I)エチレンまたはエチレンと他のα−オレフィンとを重合して、α−オレフィン含有量が30重量%以下であって、極限粘度[η]が下記エチレン系重合体(ii)の少なくとも1.5倍であって、かつ1〜12dl/gの範囲にある
    エチレン系重合体(i)を製造する工程と、
    (II)エチレンまたはエチレンと他のα−オレフィンとを重合して、α−オレフィン含有量が15重量%以下であって、極限粘度[η]が0.3〜3dl/gの範囲にある
    エチレン系重合体(ii)を製造する工程と
    を有し、
    工程(I)で得たエチレン系重合体(i)の存在下で工程(II)を行うか、または、工程(II)で得たエチレン系重合体(ii)の存在下で工程(I)を行い、極限粘度[η]が1〜6dl/gの範囲にあり、密度が0.94g/cm3以上であるエチレン系重合体組成物を製造することを特徴とするエチレン系重合体組成物の製造方法。
  2. 上記工程(I)および工程(II)が、スラリー重合法により行われる、請求項1に記載のエチレン系重合体組成物の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法によって得られ、ASTM D1238Eに準拠し190℃で測定したメルトフローレートが0.0001〜0.5g/10分の範囲にあり、分子量分布(Mw/Mn)が20〜45の範囲にあるエチレン系重合体組成物からなり、
    次式により求められる粒径分布指数が、1.1〜2.0の範囲にあり、
    Figure 0003643350
    (上記式において、ポリマーD16はエチレン系重合体組成物粒子全体の16重量%を分級できたところの粒径を、ポリマーD84はエチレン系重合体組成物粒子全体の84重量%を分級できたところの粒径をそれぞれ示す。)
    嵩密度が0.30〜0.45g/mlの範囲にあり、かつ、
    流動性指数が45〜90の範囲にあることを特徴とするエチレン系重合体組成物粒子。
  4. 請求項3に記載のエチレン系重合体組成物粒子から得られ、厚みばらつきが小さく引裂強度に優れることを特徴とするフィルム。
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