JP3865970B2 - 磁器組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波特性に優れ、電子通信機器等の高周波デバイスに適用する磁器組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
高周波特性に優れる磁器組成物として、フォルステライト磁器組成物が知られている。フォルステライトは、MgOと、SiO2の反応生成物より構成されている。
かかるフォルステライトにおいて、原料粉末における不純物量を規制し、粉末の粒度を制御することにより、フォルステライトの、高周波領域における誘電損失を小さくする技術が開発されている(特開平5−262562号公報)。かかるフォルステライトにおいては、tanδは、10-4〜10-5の境界領域にある。
【0003】
しかしながら、例えば、情報伝送量の増大に対応するには、高速通信技術の開発の要請が高まっている。通信の高速化には、高周波デバイス材料が、信号を遅延・減衰させないように、低誘電率及び低誘電損失であることが望まれる。
また、通信周波数帯の細分化に対応して、通信周波数の精密化・安定化も望まれている。このためには、誘電率の温度依存性を小さくすることが重要である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明では、マイクロ波領域において誘電率の温度依存性が制御された磁器組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フォルステライトを含め、他の化合物につき、低誘電損失と誘電率の温度依存性につき検討し、フォルステライトの誘電率の温度係数(τ:+116ppm)を小さくするために、フォルステライトとは逆の温度係数を有する材料としてチタン酸カルシウム(τ:−1800ppm)を選び、これをフォルステライトに配合し、さらに、チタン酸カルシウムを配合することによって生じる誘電損失の増加をスピネルの追加によって抑制できた。すなわち、本発明は、フォルステライトと、チタン酸カルシウムと、スピネルのモル分率(フォルステライト:チタン酸カルシウム:スピネル)が、これら三成分系の組成図において、フォルステライトのモル分率が0%超え81%以下であり、チタン酸カルシウムのモル分率が10%越え50%未満であり、スピネルのモル分率が9%以上90%未満である組成領域にあり、周波数(GHz)/誘電体損失(tanδ)が、20,000以上である、磁器組成物を提供する。本発明は、フォルステライトと、チタン酸カルシウムと、スピネルのモル分率(フォルステライト:チタン酸カルシウム:スピネル)が、これら三成分系の組成図において、フォルステライトのモル分率が0%超え81%以下であり、チタン酸カルシウムのモル分率が10%越え50%未満であり、スピネルのモル分率が9%以上90%未満である組成領域にあり、27°〜28゜の範囲に出現する回折ピークのフォルステライト結晶の主回折ピークに対する相対強度が6%以下である、磁器組成物を提供する。
【0006】
本発明は、フォルステライトと、チタン酸カルシウムと、スピネルのモル分率(フォルステライト:チタン酸カルシウム:スピネル)が、これら三成分系の組成図において、フォルステライトのモル分率が0%超え81%以下であり、チタン酸カルシウムのモル分率が10%越え50%未満であり、スピネルのモル分率が9%以上90%未満である組成領域にあり、誘電率の温度係数(τ)が、−100ppm/℃以上+50ppm/℃以下である、磁器組成物を提供する。
【0007】
また、本発明は、フォルステライトと、チタン酸カルシウムと、スピネルのモル分率(フォルステライト:チタン酸カルシウム:スピネル)が、これら三成分系の組成図において、フォルステライトのモル分率が0%以上81%以下であり、チタン酸カルシウムのモル分率が10%以上50%以下であり、スピネルのモル分率が9%以上90%以下である組成領域にあり、周波数(GHz)/誘電体損失(tanδ)が、20,000以上である、磁器組成物を提供する。本発明は、フォルステライトと、チタン酸カルシウムと、スピネルのモル分率(フォルステライト:スピネル:チタン酸カルシウム)が、これら三成分系の組成図において、フォルステライトのモル分率が0%以上81%以下であり、チタン酸カルシウムのモル分率が10%以上50%以下であり、スピネルのモル分率が9%以上90%以下である組成領域にあり、誘電率の温度係数(τ)が、−100ppm/℃以上+50ppm/℃以下である、磁器組成物を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の磁器組成物は、フォルステライトと、スピネルと、チタン酸カルシウム、のうち、少なくとも2成分を主要構成要素とする磁器組成物である。なお、本発明の磁器組成物には、これらの主要組成物以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で他の物質(化合物)を含めることができる。
【0009】
本発明の磁器組成物においては、これらの主要構成要素のモル分率、あるいは、主要構成要素に含まれる成分元素の酸化物換算値によって特徴付けることができる。
主要構成要素による特徴付けは、焼成前の磁器組成物における特徴付け及び磁器組成物の原料混合工程における特徴付けに適しており、成分元素の酸化物換算値は、焼成後の組成物(いわゆる磁器の状態)における特徴付けに適している。
【0010】
主要構成要素三成分のモル分率は、三成分系組成図において表示できる。ここで三成分系組成図とは、一般に三成分系状態図における組成の表示法として用いられている図を意味する。
本発明の磁器組成物における、これら三成分系組成図を図1に示す。
本磁器組成物における上記主要構成要素のモル分率は、図1において、少なくとも2成分を含む組成領域の範囲にある。
【0011】
本発明の磁器組成物は、この組成領域において、本発明の磁器組成物は、誘電率の温度係数(τ)が−100ppm/℃以上+50ppm/℃以下の磁器組成物である。好ましくは下限値が−80ppm/℃以上であり、より好ましくは、−70ppm/℃以上である。また、好ましくは、上限値は、+40ppm/℃以下である。
誘電率の温度係数は、誘電体共振器法によって測定される。また、測定温度範囲は、誘電体の使用温度範囲内において求めるのが好ましい。具体的には、20℃〜80℃の範囲であり、より具体的には27℃から80℃の範囲である。
【0012】
また、本発明の磁器組成物は、この組成領域において、周波数(GHz)/誘電体損失(tanδ)が、20,000以上である、磁器組成物である。ここで、周波数(GHz)/誘電体損失(tanδ)は、以下、Qf値ともいう。さらに好ましくは、Qf値が、38,000以上であり、より好ましくは、57,000以上である。
Qf値は、誘電体損失と、その誘電体損失を測定した周波数(GHz)から求めることができる。本発明の磁器組成物においては、20GHz〜60GHzの範囲でのQf値であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の磁器組成物は、より具体的には、その23GHzにおける誘電体損失(tanδ)が10×10-4以下の磁器組成物である。より好ましくは、6×10-4以下の磁器組成物である。さらに好ましくは、5×10-4以下の磁器組成物である。誘電体損失は、誘電体共振器法によって測定される。
【0014】
上記誘電率の温度係数及び/又は誘電体損失を備える磁器組成物は、主要構成要素として少なくともチタン酸カルシウムとスピネルとを含んでいることが好ましい。
例えば、フォルステライトのモル分率0%以上81%以下であり、チタン酸カルシウムのモル分率10%以上50%以下であり、スピネルのモル分率9%以上90%以下の範囲であることが好ましい。このモル分率の範囲は、図1において、範囲(A1+A2)に相当する。より好ましくは、チタン酸カルシウムがさらに10%以上40%以下である。この範囲は、図1において、格子で示される範囲A2に相当する。
なお、範囲(A1+A2)あるいは範囲A2において、フォルステライトのモル分率が1%以上であることが好ましく、より好ましくは、5%以上である。
【0015】
この組成物範囲(A1+A2)は、同時に、成分元素の酸化物換算値のモル分率(%)がMgO:25%以上61%以下、SiO2:0%以上29%以下、CaO:3%以上25%以下、TiO2:3%以上25%以下、Al2O3:2%以上45%以下の範囲である。より好ましい範囲A2は、MgO:30%以上61%以下、SiO2:0%以上29%以下、CaO:3%以上20%以下、TiO2:3%以上20%以下、Al2O3:2%以上45%以下の範囲である。
【0016】
また、少なくともフォルステライトを主要構成要素として含む場合には、好ましくは、フォルステライトのモル分率(%)が0%超え81%以下であり、チタン酸カルシウムのモル分率が10%越え50%未満であり、スピネルのモル分率が9%以上90%未満の範囲にあることが好ましい。この範囲は、図1の(A1+A2)領域内において、辺CT−SP上の点で規定されるモル分率を含まない領域である。より好ましくは、さらにチタン酸カルシウムが10%越え40%未満である。この範囲は、図1のA2領域内の辺CT−SP上の点で規定されるモル分率を含まない領域である。
なお、フォルステライトを主要構成要素として含む場合には、いずれにおいても、フォルステライトのモル分率が1%以上であることが好ましく、より好ましくは、5%以上である。
【0017】
この範囲は、同時に、成分元素の酸化物換算値のモル分率がMgO:30%超え61%以下、SiO2:0%超え29%以下、CaO:3%以上25%未満、TiO2:3%以上25%未満、Al2O3:2%以上45%未満の範囲である。より好ましい範囲は、MgO30%越え61%以下、SiO2:0%越え29%以下、CaO:3%以上20%未満、TiO2:3%以上20%未満、Al2O3:2%以上45%以下である。
【0018】
また、チタン酸カルシウムとスピネルのみを主要構成要素として含む磁器組成物の場合の、チタン酸カルシウム:スピネルのモル分率は、10%:90%以上50%:50%の範囲であることが好ましい。酸化物換算値では、MgO:25%以上40%以下、SiO2:0%、CaO:5%以上25%以下、TiO2:10%以上25%以下、Al2O3:25%以上40%以下であることが好ましい。
【0019】
以上説明したように、本発明の磁器組成物は、フォルステライト、チタン酸カルシウム、及びスピネルのうち少なくとも2成分を主要構成要素として含み、成分元素の酸化物換算値のモル分率がMgO:25%以上61%、SiO2:0%以上29%以下、CaO:3%以上25%以下、TiO2:3%以上25%以下、Al2O3:2%以上45%以下の範囲であることが好ましく、より好ましい範囲は、MgO30%以上61%以下、SiO2:0%以上29%以下、CaO:3%以上20%以下、TiO2:3%以上20%以下、Al2O3:2%以上45%以下の範囲である。この組成範囲においては、優れた誘電損失と、制御された誘電率の温度係数の磁器組成物(焼成体)が得られる。具体的には、周波数(GHz)/誘電体損失(tanδ)が、20,000以上である、磁器組成物である。ここで、周波数(GHz)/誘電体損失(tanδ)は、以下、Qf値ともいう。さらに好ましくは、Qf値が、38,000以上であり、より好ましくは、57,000以上である。
より、具体的には、23GHzにおける誘電体損失が10×10-4以下、より好ましくは、6×10-4以下となり、さらに好ましくは、5×10-4以下となる。
また、誘電率の温度係数が−100ppm/℃以上+50ppm/℃以下、好ましくは、−80ppm/℃以上+40ppm/℃以下、さらに好ましくは−70ppm/℃以上+40ppm/℃以下となる。
【0020】
(磁器組成物の調製方法)
フォルステライトは、MgOとSiO2が2:1の組成からなる。スピネルは、MgAl2O4の組成を有する。また、チタン酸カルシウムは、CaTiO3である。
【0021】
本発明の磁器組成物における、フォルステライトの製造方法は特に限定しない。例えば、天然鉱物原料、あるいは酸化物系原料であるMgOとSiO2から合成することにより得られる。いずれの原料においても、Al2O3や、CaO、Fe2O3、ZrO2等の不純物の存在を排除しないが、このような不純物が制御されていることが好ましい。Al2O3が0.10%以下、CaOが0.05%以下、Fe2O3が0.05%以下、ZrOが0.40%以下、さらに、その他の不純物が0.01%以下であることが好ましい。なお、製造工程において、かかる不純物の種類及び含量が制御されることが好ましい。
【0022】
フォルステライト粉末は、例えば、固相法によって得ることができる。具体的には、MgO粉末とSiO2粉末とを、モル比が2:1となるように採取し、ウレタンボールを用いてボールミルにより混合する。混合は、好ましくは20時間以上とする。次いで、混合物を100度で24時間乾燥して、原料混合物とする。この混合物を1200℃で仮焼してフォルステライトを合成した。このフォルステライトをジルコニアボールを用いて蒸留水中で24時間粉砕し、その後、100℃で24時間乾燥してフォルステライト粉末とした。Al2O3が0.10%以下、CaOが0.05%以下、Fe2O3が0.05%以下、ZrOが0.40%以下、さらに、その他の不純物が0.01%以下であることが好ましい。
フォルステライト粉末は、平均粒径が3μm以下であることが好ましい。より好ましくは、1.5μm以下である。また、粒径1μm以下のものが粉末を構成する50%以上の粒子の粒径が1μm以下であることが好ましい。
【0023】
なお、上記した固相法によるフォルステライト粉末の合成工程の各工程において、従来公知の他の手段を用いることができる。
【0024】
また、チタン酸カルシウム及びスピネルの製造方法も特に限定しない。チタン酸カルシウム及びスピネルの、従来公知の各種合成方法をそれぞれ使用することができる。なお、純度や粉末の場合の粒径は制御されていることが好ましい。
【0025】
各原料粉末は、本磁器組成物を特徴付ける組成で混合され、本磁器組成物が得られる。組成は、上記した主要構成要素のモル分率で混合されることが好ましい。磁器組成物には、主要構成要素以外に、必要に応じて、各種添加物を添加することもできる。成形して焼成する場合には、有機系バインダー等が添加される。
均一な混合物を得るには、従来公知の各種方法を用いることができる。凍結乾燥、自然乾燥、マイクロ波乾燥等である。
【0026】
混合物が、適当な成形手段により所望の形状に成形され、焼成されることにより、焼結磁器組成物が得られる。
焼成に先だって、乾燥、あるいはバインダー等を除去する、脱脂処理が行われる。ついで、焼結される。焼結は、組成に応じて適切な温度及び時間で実施される。好ましい焼結温度は、1100℃〜1600℃であり、より好ましくは、1150℃〜1500℃である。
【0027】
得られた焼成体においては、優れた誘電体損失及び/又は制御された誘電率の温度係数の磁器組成物(成形体)が得られる。具体的には、周波数(GHz)/誘電体損失(tanδ)が、20,000以上である、磁器組成物である。ここで、周波数(GHz)/誘電体損失(tanδ)は、以下、Qf値ともいう。さらに好ましくは、Qf値が、38,000以上であり、より好ましくは、57,000以上である。より具体的には、23GHzにおける誘電体損失が10×10-4以下、より好ましくは、6×10-4以下、さらに好ましくは、5×10-4以下となる。また、誘電率の温度係数が−100ppm/℃以上+50ppm/℃以下、好ましくは、−70ppm/℃以上+40ppm/℃以下となる。
【0028】
得られた焼成体につき、X線回折分析(CuKα、特性X線:1.54Å)を行うと、フォルステライトとチタン酸カルシウムとを主要構成要素として含む磁器組成物にあっては、回折角(2θ)が27゜〜28゜の範囲に未知結晶物質の回折ピークが観察されている。特に、焼成温度が高くなるにつれて、チタン酸カルシウムの回折ピークの強度低下に伴って増加する。スピネルを主要構成要素として含む磁器組成物の焼成体においては、チタン酸カルシウムの回折ピークの強度の低下と未知結晶物質の回折ピークの増加の傾向が抑制される。
フォルステライトとチタン酸カルシウムとを主要構成要素として含む磁器組成物にあっては、この回折ピークの、フォルステライト結晶の主回折ピーク(35゜〜37゜)に対する相対強度は、6%以下であることが好ましい。
【0029】
以上説明したことから、本発明は以下の態様を採ることもできる。
(1)フォルステライトと、チタン酸カルシウムと、スピネルのうち、少なくとも二成分を主要構成要素とし、フォルステライトのモル分率0%以上81%以下、チタン酸カルシウムのモル分率10%以上50%以下、スピネルのモル分率9%以上90%以下の範囲で混合して原料混合物を調製し、
この原料混合物を焼成することを特徴とする、磁器組成物の製造方法。
(2)前記(1)において、前記チタン酸カルシウムのモル分率が10%以上40%以下である、磁器組成物の製造方法。
(3)フォルステライトと、チタン酸カルシウムと、スピネルのうち、少なくともフォルステライトとチタン酸カルシウムとを主要構成要素とする原料混合物を調製し、焼成し、X線回折パターンにおける回折角(2θ)27゜〜28゜の範囲の回折ピークの、フォルステライトの主回折ピークに対する相対強度が6%以下に制御する、磁器組成物の製造方法。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を具現化した実施例について説明する。
まず、原料粉末の合成について説明する。なお、スピネルは、純度99.9%、粒径0.3 μmの市販品を用いた。
1)フォルステライトの合成
酸化珪素(SiO2:純度99.8%、粒径0.7 μm市販品)と酸化マグネシウム(MgO:純度99.99%、粒径0.05μm市販品)を1対2のモル比で合計100gとなるように量り採り、径10mmのポリウレタン被覆鉄球石100個と水220mlと共に容積1000mlのポリエチレン瓶に入れ、60RPM で48時間混合した。
こうして得られたスラリーを開孔100μmの篩を通した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得る。
この乾燥粉末を、純度99.9%のアルミナ磁器坩堝に入れ、1150℃で3時間、大気雰囲気中で仮焼し、フォルステライトを合成した。
【0031】
2)チタン酸カルシウムの合成
炭酸カルシウム(試薬特級)と酸化チタン(試薬特級)を1対1のモル比で合計100gとなるように量り採り、径10mmのポリウレタン被覆鉄球石100個と水300mlと共に容積1000mlのポリエチレン瓶に入れ、60RPM で48時間混合した。こうして得られたスラリーを開孔100μmの篩をとおして後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
この乾燥粉末を、純度99.9%のアルミナ磁器坩堝に入れ、1400℃で3時間、大気雰囲気中で仮焼し、チタン酸カルシウムを合成した。
【0032】
3)調合、成形、焼成
フォルステライトと、チタン酸カルシウムと、スピネルとの三成分について、図3〜5に示す実施例、比較例及び対照例のモル分率で原料混合物を混合し、凍結乾燥して素地を調製し、成形、焼成し、磁器を得て、実施例、比較例及び対照例の試料とした。なお、各実施例、比較例及び対照例のモル分率に対応する点が、図2の三成分系組成図において示されている。実施例に対応する組成の点は、実施例の番号で示され、比較例に対応する組成の点は、下線を施した比較例の番号で示され、対照例に対応する組成の点は、二重下線を施した対照例の番号で示されている。
得られた磁器の誘電損失tanδ(23GHz)と誘電率の温度係数を測定した。さらに、誘電損失の値から、Qf値を求めた。誘電損失及び誘電率の温度係数は、誘電体共振器法JISR1627−1996に基づいて測定した。なお、誘電率の温度係数は、試料を所定の各温度に制御した恒温槽内にセットして各温度(27℃、45℃、63℃、80℃)での誘電率を測定し、(誘電率−温度)の直線を求め、この勾配から算出した。
また、得られた磁器につき、粉末X線回折パターン(CuKα、特性X線:1.54Å)を得た。
【0033】
原料粉末の混合物は、湿式ボールミル混合し、ポリビニルアルコールを1重量%混合溶解して凍結乾燥した後、150メッシュの篩に通して素地とした。
この原料混合物を、径15mm、厚み10mmの円柱体に金型一軸成形し、
さらに、3000kg/cm2で静水圧成形後、400℃で、6時間脱脂(大気雰囲気)し、さらに、1140℃〜1600℃で2時間焼成して、焼結体を得た。
図2〜4には、主要構成要素のモル分率、各成分元素の酸化物換算値のモル分率、誘電損失及び誘電率の温度係数、Qf値及び未知結晶物質ピークの相対強度を併せて示す。
【0034】
これらの結果によれば、実施例1〜21において、−90ppm/℃以上+40ppm/℃以下の温度係数であった。特に、実施例1〜14及び実施例19〜21において、−70ppm/℃以上+40ppm/℃以下であった。
また、実施例1〜17においては、−90ppm/℃以上+40ppm/℃以下の温度係数と、5×10-4以下の誘電損失(Qf値としては、46000以上)を得ることができた。
また、実施例1〜14においては、−70ppm/℃以上+40ppm/℃以下の温度係数と、5×10-4以下の誘電損失(Qf値としては、46000以上)を得ることができた。
また、実施例15〜17においては、5×10-4以下の誘電損失(Qf値としては、46000以上)と、約80ppm/℃の温度係数が得られた。
また、図2の三成分系組成図において、実施例1、2,3,4,5,6,7,8,15,16,17,12,13,及び14によって規定され包囲される領域を好ましい組成領域であることがわかった。また、実施例1、2,3,4,9,16,17,12,13及び14によって規定され包囲される領域も好ましい組成領域であることがわかった。
【0035】
なお、フォルステライトとスピネルとのみを含む磁器組成物である比較例1〜5においては、低い誘電損失が得られたが、温度係数において好ましくなかった。
また、スピネルのみの磁器組成物(対照例1)及びフォルステライトのみの磁器組成物(対照例2)は、いずれも、良好な誘電損失が得られたが、温度係数において好ましくなかった。
【0036】
X線回折結果からは、実施例1〜14、15〜17及び19では、2θが27°〜28°の未知結晶物質の回折ピークのフォルステライト結晶の主回折ピーク(2θが35°〜37°)に対する相対強度が、いずれも6%以下であった。
以上の結果から、この未知結晶物質の回折ピークのフォルステライトの回折ピークに対する相対強度を6%以下、好ましくは、4%以下に制御することにより、良好な誘電損失及び誘電率の温度係数が得られることがわかった。
【0037】
【発明の効果】
この発明によれば、マイクロ波領域において誘電率の温度依存性が制御された磁器組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フォルステライト(MS)、チタン酸カルシウム(CT)、スピネル(SP)の三成分系組成図を示す図である。
【図2】実施例1〜21、比較例1〜6、対照例1及び2の磁器組成物における、フォルステライト(MS)、チタン酸カルシウム(CT)、スピネル(SP)のモル分率を図示した三成分系組成図である。
【図3】実施例1〜21の磁器組成物におけるモル分率、酸化物換算のモル分率、誘電率の温度係数、誘電損失、Qf値、及び未知結晶物質ピークの相対強度(%)を示した図である。
【図4】比較例1〜6の磁器組成物におけるモル分率、酸化物換算のモル分率、誘電率の温度係数、誘電損失、Qf値、及び未知結晶物質ピークの相対強度(%)を示した図である。
【図5】対照例1及び2の磁器組成物におけるモル分率、酸化物換算のモル分率、誘電率の温度係数、誘電損失、Qf値、及び未知結晶物質ピークの相対強度(%)を示した図である。
Claims (5)
- フォルステライトと、チタン酸カルシウムと、スピネルのモル分率(フォルステライト:チタン酸カルシウム:スピネル)が、これら三成分系の組成図において、フォルステライトのモル分率が0%超え81%以下であり、チタン酸カルシウムのモル分率が10%越え50%未満であり、スピネルのモル分率が9%以上90%未満である組成領域にあり、周波数(GHz)/誘電体損失(tanδ)が、20,000以上である、磁器組成物。
- フォルステライトと、チタン酸カルシウムと、スピネルのモル分率(フォルステライト:チタン酸カルシウム:スピネル)が、これら三成分系の組成図において、フォルステライトのモル分率が0%超え81%以下であり、チタン酸カルシウムのモル分率が10%越え50%未満であり、スピネルのモル分率が9%以上90%未満である組成領域にあり、27°〜28゜の範囲に出現するX線回折ピークのフォルステライト結晶の主回折ピークに対する相対強度が6%以下である、磁器組成物。
- フォルステライトと、チタン酸カルシウムと、スピネルのモル分率(フォルステライト:チタン酸カルシウム:スピネル)が、これら三成分系の組成図において、フォルステライトのモル分率が0%超え81%以下であり、チタン酸カルシウムのモル分率が10%越え50%未満であり、スピネルのモル分率が9%以上90%未満である組成領域にあり、誘電率の温度係数(τ)が、−100ppm/℃以上+50ppm/℃以下である、磁器組成物。
- フォルステライトと、チタン酸カルシウムと、スピネルのモル分率(フォルステライト:チタン酸カルシウム:スピネル)が、これら三成分系の組成図において、フォルステライトのモル分率が0%以上81%以下であり、チタン酸カルシウムのモル分率が10%以上50%以下であり、スピネルのモル分率が9%以上90%以下である組成領域にあり、周波数(GHz)/誘電体損失(tanδ)が、20,000以上である、磁器組成物。
- フォルステライトと、チタン酸カルシウムと、スピネルのモル分率(フォルステライト:スピネル:チタン酸カルシウム)が、これら三成分系の組成図において、フォルステライトのモル分率が0%以上81%以下であり、チタン酸カルシウムのモル分率が10%以上50%以下であり、スピネルのモル分率が9%以上90%以下である組成領域にあり、誘電率の温度係数(τ)が、−100ppm/℃以上+50ppm/℃以下である、磁器組成物。
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