JP3865358B2 - 有機el装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばITO等の透明導電膜の形成方法に関し、特に有機EL装置のアノード電極に好適な透明導電膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、フルカラーフラットパネルディスプレイ用の素子として、有機EL装置が注目されている。有機EL装置は、蛍光性有機化合物を電気的に励起して発光させる自発光型素子で、高輝度、高視野角、面発光、薄型で多色発光が可能であり、しかも数Vという低電圧の直流印加で発光する全固体素子で、かつ低温においてもその特性の変化が少ないという特徴を有している。
【0003】
図5は、一般的な有機EL装置の構成を示すものである。
図5に示すように、この有機EL装置100は、例えばガラス基板101上に形成された透明導電膜(アノード電極)102の上に、それぞれ有機材料からなる正孔注入輸送層103及び発光層104が形成され、さらに、その上にカソード電極105が形成されている。そして、アノード電極102とカソード電極105との間に約8V程度の低電圧を印加するように構成されている。
【0004】
従来、有機EL装置の透明導電膜としては、電気抵抗の低い金属であるITO(Indium Tin Oxide)からなる膜が多く用いられている。
従来、このような透明導電膜は、ITO等の成膜材料を用い、基板を加熱しながらスパッタリングを行うことにより形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、有機EL装置のアノード電極用の透明導電膜としては、低抵抗であることに加え、表面が平坦で、しかも、仕事関数値の大きな(5.2eV程度)ものであることが望まれる。
【0006】
しかしながら、上述した方法によって得られた透明導電膜は、仕事関数の値が上記5.2eVに達しない(小さい)。このため、従来は、透明導電膜に対して200℃より高い温度で熱処理を行うことによって所望の仕事関数値の透明導電膜を得るようにしている。
【0007】
しかし、このような従来例にあっては、基板を加熱しながら透明導電膜を形成する際に透明導電膜の表面が粗くなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、成膜時の高温熱処理による問題がなく、しかも低抵抗の透明導電膜を備えた有機EL装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた本発明は、スパッタリング法により成膜対象物の表面に透明導電膜を形成し、前記透明導電膜上に有機層を形成する有機EL装置の製造方法であって、成膜中に前記成膜対象物を加熱せず、スパッタリングガスと酸素を導入してスパッタリングを行い、前記成膜対象物上にITOからなる透明導電膜を形成する工程と、前記透明導電膜を大気中又は真空中でアニールする工程と、アニールされた前記透明導電膜表面に前記有機層を形成する工程とを有し、前記スパッタリングにおける酸素の導入量を、アニールしない透明導電膜の比抵抗が最小となる導入量より少なくなるように定めることを特徴とする。
本発明は、非加熱のスパッタリングの際に導入される酸素の量に応じて成膜後の透明導電膜の比抵抗が極小値をとるという知見に加え、成膜後のアニールの有無によって、透明導電膜の比抵抗の最小値がそれぞれ異なるとともに、それぞれの最小値におけるスパッタリング時の酸素導入量も異なるという知見に基づいてなされたもので、スパッタリングにおける酸素の導入量を、アニールしない透明導電膜の比抵抗が最小となる導入量より少なくなるように定めることにより、アニール後において比抵抗が小さくなるスパッタ時の酸素導入量を確実に決定することができ、これにより最適のアノード電極を有する種々の有機EL装置を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る有機EL装置の実施の形態をその製造方法とともに詳細に説明する。
図1(a)〜(d)は、本発明の有機EL装置の製造方法の参考例を示す工程図、図2(a)〜(e)は、本発明の有機EL装置の製造方法の実施の形態を示す工程図である。
【0011】
ここでは、まず、図1(a)に示すように、例えばガラス基板10からなる透明な基板(成膜対象物)10を用意する。そして、この基板10を大気に曝さずにスパッタリング室(図示せず)内に搬入し、図1(b)に示すように、基板10の表面にスパッタリング法によりアノード電極として例えばITOからなる厚さ150nm程度の透明導電膜11を形成する。
【0012】
そして、基板10を加熱せずにスパッタリングを行う。これにより、アモルファス状態の透明導電膜11aが得られる。
【0013】
また、本例においては、スパッタリング室内の圧力を0.3〜1.0Paとすることが好ましい。
【0014】
本例にあっては、スパッタリングの際に、スパッタリングガスとしてアルゴン(Ar)を、反応性ガスとして酸素(O2)を含むガスをスパッタリング室内に導入する。
【0015】
その際、表面形態の観点から、アルゴン及び酸素からなるガスに、さらに適量の水(H2O)又は水素(H2)を添加することが好ましい。
【0016】
好ましい酸素及び水又は水素の添加量は、後述するアニールの有無によって異なり、この点については後に詳述する。
【0017】
その後、図1(c)(d)に示すように、透明導電膜11が形成された基板10を、大気に曝さずに有機蒸着装置(図示せず)内に搬入し、有機薄膜12、13を積層させることにより、有機ELパネル1Aが得られる。
【0018】
さらに、有機薄膜13の表面に、Li等からなる電子注入層と、AlLi等からなる金属薄膜(図示せず)を形成し、フォトリソグラフィ法等によって所定のパターニングを行い、パターニングされた金属薄膜をカソード電極とする。そして、このような構成において、アノード電極とカソード電極との間に電圧を印加すると、アノード電極とカソード電極の交差部分の有機薄膜12、13中に電流が流れ、その部分を発光させることができる。
【0019】
一方、本発明においては、図2(a)〜(e)に示すように、アモルファス状態の透明導電膜11aに対して所定のアニールを行い、その後、上述した有機薄膜12、13を形成する。
【0020】
すなわち、上記アモルファス状態の透明導電膜11aが形成された基板10を、例えば真空状態のアニール室(図示せず)内に搬入し、温度200〜250℃で所定時間アニールを行う。これにより、図2(c)に示すように、結晶化した透明導電膜11が得られる。そして、上述した参考例と同様の工程によって透明導電膜1の表面に有機薄膜12、13を積層させることにより、図2(e)に示す有機ELパネル1Bが得られる。
【0021】
図3(a)(b)は、アニール時間と透明導電膜(ITO膜)11の比抵抗との関係を示すグラフで、図3(a)は、真空中でアニールを行った場合を示すもの、図3(b)は、大気中でアニールを行った場合を示すものである。
【0022】
本発明の場合、アニールは真空中又は大気中のいずれの雰囲気でも行うことができ、いずれの雰囲気においても、アニールの時間に応じて透明導電膜11の比抵抗が小さくなる。
【0023】
しかし、図3(a)(b)から理解されるように、大気中でのアニールの場合は比抵抗の値が約2×10-4Ω・cmまで低下するのに30分以上必要であるのに対し、真空中でのアニールの場合は5分以下の短時間で比抵抗の値が約2×10-4Ω・cmまで低下する。
【0024】
したがって、本発明の場合、真空中でアニールを行えば、プロセス時間を短縮することができ、生産効率を向上させることができる。
【0025】
図4は、本実施の形態においてスパッタリングの際に導入する酸素(O2)の量と透明導電膜(ITO膜)の比抵抗との関係を示すグラフである。
【0026】
図4に示すように、本発明においては、アニールした透明導電膜11の方が、アニールしない透明導電膜11aより比抵抗の最小値を小さくすることができる。
この場合、透明導電膜11の比抵抗が最小となる酸素の導入量は、アニールしない透明導電膜11aと、アニールした透明導電膜11とで異なっている。
【0027】
アニールしない透明導電膜11aにおいて、透明導電膜11aの低抵抗化のためには、約0.6sccmの酸素を導入することが好ましい。
【0028】
一方、アニールした透明導電膜11において、透明導電膜11の低抵抗化のためには、約0.2sccmの酸素を導入することが好ましい。
【0029】
本実施の形態においては、非加熱で形成したITO膜はアモルファスであるため、アニールを行った後であっても膜の表面は平坦である。この場合、スパッタリングガスに適量の水又は水素を添加することにより、as depoでより安定なアモルファス膜が得られ、より平坦なITO膜が得られるようになる。
【0030】
以上述べたように本実施の形態によれば、非加熱下において所定量の酸素を含むガスを導入してスパッタリングを行うことによって、所望の透明導電膜11が得られる。
【0031】
なお、図1(a)〜(d)に示す参考例のようにアニールを行わない場合には、少ない工程数で有機EL装置1Aが得られ、生産効率の向上に寄与することができる。
【0032】
この有機EL装置1Aは、透明導電膜11aの抵抗値がやや高いが、画素構成が単純マトリクス型のものであれば十分に実用可能である。
【0033】
一方、図2(a)〜(e)に示す実施の形態のように、スパッタリングの後に、所定の温度で所定時間アニールを行うようにすれば、透明導電膜11の抵抗値をより小さくすることができる。
【0034】
なお、この実施の形態の有機EL装置1Bは、画素構成がアクティブマトリクス型のものに好適である。
【0035】
このように、本実施の形態によれば、表面が平坦で最適のアノード電極を有する種々の有機EL装置1を得ることができる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上述の実施の形態の場合は透明導電膜としてITOを用いた場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、例えば、他のあらゆる酸化物透明導電膜(In、Sn、Zn、Cdなどをベースとし、Sn、Al、Zn、Sbといった微量の添加物を一種類又は数種類組み合わせたもの)に本発明を適用することも可能である。
【0037】
また、本発明は有機EL装置のみならず、他の透明導電膜を用いる素子や装置に適用することができる。ただし、上記実施の形態のような有機EL装置に適用した場合に最も有効であることはもちろんである。
【0038】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、非加熱成膜後のアニールの有無によって、透明導電膜の比抵抗の最小値がそれぞれ異なるとともに、それぞれの最小値におけるスパッタリング時の酸素導入量も異なるという知見に基づき、アニール後において比抵抗が小さくなるスパッタ時の酸素導入量を確実に決定することができ、これにより最適のアノード電極を有する種々の有機EL装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d):本発明の有機EL装置の製造方法の参考例を示す工程図
【図2】(a)〜(e):本発明の有機EL装置の製造方法の実施の形態を示す工程図
【図3】(a):アニール時間と透明導電膜(ITO膜)の比抵抗との関係を示すグラフ(真空中でアニールを行った場合)
(b):アニール時間と透明導電膜(ITO膜)の比抵抗との関係を示すグラフ(大気中でアニールを行った場合)
【図4】 本実施の形態においてスパッタリングの際に導入する酸素(O2)の量と透明導電膜(ITO膜)の比抵抗との関係を示すグラフ
【図5】 一般的な有機EL装置の構成を示す断面図
【符号の説明】
1(1A、1B)……有機ELパネル(有機EL装置) 10……基板(成膜対象物)
11、11a……透明導電膜 12、13……有機薄膜
Claims (1)
- スパッタリング法により成膜対象物の表面に透明導電膜を形成し、前記透明導電膜上に有機層を形成する有機EL装置の製造方法であって、
成膜中に前記成膜対象物を加熱せず、スパッタリングガスと酸素を導入してスパッタリングを行い、前記成膜対象物上にITOからなる透明導電膜を形成する工程と、
前記透明導電膜を大気中又は真空中でアニールする工程と、
アニールされた前記透明導電膜表面に前記有機層を形成する工程とを有し、
前記スパッタリングにおける酸素の導入量を、アニールしない透明導電膜の比抵抗が最小となる導入量より少なくなるように定めることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
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