JP3865164B2 - 曝気装置の運転制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、曝気装置の運転制御方法に関し、特に、下水等の有機性汚水を活性汚泥により生物処理するオキシデーションディッチで硝化脱窒を行う場合、オキシデーションディッチに溶存酸素計を設置し、この溶存酸素計の溶存酸素計測値に基づいて、曝気装置を間欠運転又は曝気装置の回転数を制御するようにした曝気装置の運転制御を行うようにした曝気装置の運転制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、オキシデーションディッチにおいて硝化脱窒を行う方法として、オキシデーションディッチを、硝化のための好気ゾーンと脱窒のための嫌気ゾーンに分割する方法が用いられている。
この制御の手段として、一般的には、オキシデーションディッチの溶存酸素濃度(以下、「DO値」という場合がある。)を計測する溶存酸素計(以下、「DO計」という場合がある。)が用いられ、このDO計をオキシデーションディッチの所定の位置に設置して、DO計により計測した溶存酸素計測値(以下、「DO計測値」という場合がある。)に基づいて、DO計測値が所定の設定値付近でほぼ一定となるように、曝気装置を間欠運転(運転台数の制御)又は曝気装置の回転数を制御する方法が採用されている。
また、小規模なオキシデーションディッチでは、オキシデーションディッチ全体を経時的に好気状態又は嫌気状態にする方法が採用されており、この場合、DO計測値が所定の設定値に達した時に曝気装置を間欠運転(運転台数を制御)又は曝気装置の回転数を制御するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のオキシデーションディッチに溶存酸素計を設置し、該溶存酸素計の溶存酸素計測値に基づいて、曝気装置を間欠運転又は曝気装置の回転数を制御するようにした曝気装置の運転制御方法においては、例えば、DO計に生物膜等が付着すると正確なDO値が計測されず、過曝気の状態となるが、DO計が正常に作動しているか否かを判断する手段がなかったため、DO計の異常に対して適正に対処することができないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記従来の曝気装置の運転制御方法の有する問題点に鑑み、下水等の有機性汚水を活性汚泥により生物処理するオキシデーションディッチで硝化脱窒を行う場合、オキシデーションディッチに設置した溶存酸素計が正常に作動しているか否かを判断して、オキシデーションディッチが過曝気の状態になることを防止し、硝化脱窒処理を効率的に行うことができるようにした曝気装置の運転制御方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、オキシデーションディッチに溶存酸素計を設置し、該溶存酸素計の溶存酸素計測値に基づいて、曝気装置を間欠運転又は曝気装置の回転数を制御するようにした曝気装置の運転制御方法において、溶存酸素計測値が下限設定値以下になり、曝気装置の運転を行っても、溶存酸素計測値が下限設定値以下の状態が設定時間以上継続した場合に、溶存酸素計の異常と判断することを特徴とする。
【0006】
この曝気装置の運転制御方法は、溶存酸素計測値が下限設定値以下になり、曝気装置の運転を行っても、溶存酸素計測値が下限設定値以下の状態が設定時間以上継続した場合に、初めて溶存酸素計の異常と判断する、例えば、流入負荷が一時的に上昇し、オキシデーションディッチの酸素消費が活発になり、溶存酸素計測値が低下して下限設定値以下になった場合でも、その状態が設定時間以上継続するまでは、溶存酸素計が正常と判断して、通常の溶存酸素計の溶存酸素計測値に基づく運転制御を継続し、設定時間に達したとき、初めて異常と判断するようにし、これに応じた運転制御をする。
【0007】
また、同じ目的を達成するため、本発明の曝気装置の運転制御方法は、オキシデーションディッチに溶存酸素計を設置し、該溶存酸素計の溶存酸素計測値に基づいて、曝気装置を間欠運転又は曝気装置の回転数を制御するようにした曝気装置の運転制御方法において、オキシデーションディッチに設置したPH計のPH計測値が下限設定値以下になった場合に、溶存酸素計の異常と判断することを特徴とする。
【0008】
この曝気装置の運転制御方法は、オキシデーションディッチの硝化脱窒の割合、すなわち、オキシデーションディッチが過曝気の状態にあることをオキシデーションディッチに設置したPH計のPH計測値により検知し、このPH計測値が下限設定値以下になった場合に、溶存酸素計の異常と判断し、これに応じた運転制御をする。
【0009】
この場合において、溶存酸素計の異常と判断したとき、曝気装置をタイマーによる保護運転に切り換えるようにすることができる。
【0010】
これにより、過曝気の状態が継続することを防止するとともに、継続して曝気装置の運転を行うことができる。
【0011】
また、溶存酸素計の異常と判断したとき、溶存酸素計の表面を洗浄することができる。
【0012】
これにより、溶存酸素計に付着した生物膜等を除去することができ、継続して溶存酸素計の溶存酸素計測値に基づいて、曝気装置を運転制御することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の曝気装置の運転制御方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の曝気装置の運転制御方法を実施するオキシデーションディッチ1を示したもので、オキシデーションディッチには、通常、図示するような長円形のもののほか、円形等の循環水路式のものを用いることができる。
【0014】
オキシデーションディッチ1には、スクリュー式の曝気装置2が、1台又は2台以上設置されるとともに、DO計3及びPH計4が設置され、DO計3及びPH計4により計測した計測値は、制御盤5に取り込まれ、これにより曝気装置2の運転制御、例えば、運転台数、回転数等を制御するように構成されている。
【0015】
次に、上記設備による運転制御方法について説明する。
曝気装置2は、DO計3により計測したDO計測値に基づいて曝気装置2の運転を制御して、オキシデーションディッチ1を好気状態と嫌気状態とに交互に切り換え、間欠曝気により汚水の硝化脱窒処理を行うようにする。
この切り換え方法としては、曝気装置の運転と停止を切り換える間欠運転による方法と、曝気装置の回転数を変える方法とがあるが、以下、曝気装置の運転と停止を切り換える間欠運転による方法について説明する。
【0016】
DO計3により計測したDO計測値に基づいて曝気装置2の運転を制御する場合、図2(A)に示すように、DO計測値が、予め設定した上限設定値Aに達すると、制御盤5から曝気停止信号を出力し、曝気装置2による曝気を停止し、攪拌のみの運転を行うように切り換える。
この攪拌のみの運転時間がタイマにより予め設定した所定時間T0を経過すると、再び曝気を再開する。
この曝気の再開により徐々にDO計測値が上昇し、再びDO計測値が規定値Aに達すると、制御盤5から曝気停止信号を出力し、曝気装置2による曝気を停止し、攪拌のみの運転を行うように切り換える。
DO計の表面に生物膜等が付着せず、DO計3により正しくDO値の計測が行われている場合、この動作を順次繰り返して運転を行うようにする。
【0017】
ところで、曝気装置の運転を行っても、DO計測値が上昇せず、DO計測値が下限設定値B以下の状態が継続する場合がある。
この原因としては、流入負荷が一時的に上昇し、オキシデーションディッチの酸素消費が活発になってDO値が低下する場合が考えられるが、この場合は、流入負荷が低下すると、DO計測値は上昇することとなるため、DO計により正しくDO値の計測が行われていると判断して、上記の通常の動作を繰り返して運転を行うようにする。
【0018】
これに対して、DO計の表面に生物膜等が付着すると、DO計の生物膜が溶存酸素を消費するため、DO計により計測したDO計測値は、オキシデーションディッチの実際のDO値よりも低い値となる。
この状態で、DO計3により計測したDO計測値に基づいて曝気装置2の運転を制御すると、DO計測値が、予め設定した上限設定値Aに達し、曝気装置2による曝気を停止した後、攪拌のみの運転時間がタイマにより予め設定した所定時間T0を経過して再び曝気を再開するようにしても、図2(B)に示すように、DO計測値が下限設定値B以下の状態が継続することとなることから、この状態が、設定時間T以上継続した場合に、DO計3の表面に生物膜等が付着すること等によるDO計3の異常と判断するようにする。
【0019】
この場合において、設定時間Tは、地域の流入負荷変動や設備の仕様を考慮して設定する心要があるが、一般的には、12〜24時間程度に設定することが望ましく、また、下限設定値Bは、DO計の設置位置による影響を考慮して設定する必要があるが、一般的には、0.05〜0.2mg/リットル程度に設定することが望ましい。
【0020】
DO計3の異常と判断すると、DO計3により計測したDO計測値に基づく曝気装置2の運転制御を、タイマーによる保護運転に切り換えるようにして、過曝気の状態が継続することを防止するとともに、継続して曝気装置の運転を行うようにする。
【0021】
また、この場合、DO計3に付設したセンサ洗浄手段、例えば、図4に示すような、ノズル6からジェット水流をDO計3に向けて噴出するセンサ洗浄手段を用いて、DO計3の表面に付着した生物膜等を除去することにより、継続してDO計3のDO計測値に基づいて、曝気装置2を運転制御するようにすることができるようにする。
なお、センサ洗浄手段によってDO計3の表面に付着した生物膜等を除去するようにしても、DO計測値が下限設定値B以下の状態が継続する場合には、洗浄手段の異常またはDO計3の表面に生物膜等が付着すること以外のDO計3の異常と判断し、タイマーによる保護運転に切り換えるようにすることができる。
【0022】
また、DO計3の異常と判断した際に出力される異常信号により、ランプ表示や警報表示を作動させ、設備管理者等に知らせ、DO計3の表面に付着した生物膜等を人手により除去したり、DO計3を交換するようにすることもできる。
【0023】
ところで、DO計の表面に生物膜等が付着し、DO計により計測したDO計測値が、オキシデーションディッチの実際のDO値よりも低い値を示すことにより、曝気が必要以上に継続された場合には、脱窒が進まず、硝化のみが進行するものとなる。
このように、硝化のみが進行すると、汚水のアルカリ度が低下することとなる。
この観点から、図3に示すように、オキシデーションディッチ1の硝化脱窒の割合、すなわち、オキシデーションディッチ1が過曝気の状態にあることを、オキシデーションディッチ1に設置したPH計3により計測したPH計測値により検知し、このPH計測値が下限設定値C以下になった場合に、DO計3の表面に生物膜等が付着すること等によるDO計3の異常と判断するようにすることができる。
【0024】
この場合において、下限設定値Cは、地域の流入負荷変動や設備の仕様を考慮して設定する心要があるが、一般的には、硝化脱窒が正常に行われているオキシデーションディッチのPH値が6.5〜7.5であることから、5.5〜6.5の範囲で設定することが望ましい。
【0025】
DO計3の異常と判断すると、上記の場合と同様、DO計3により計測したDO計測値に基づく曝気装置2の運転制御を、タイマーによる保護運転に切り換えるようにして、過曝気の状態が継続することを防止するとともに、継続して曝気装置の運転を行うようにするか、DO計3に付設したセンサ洗浄手段を用いて、DO計3の表面に付着した生物膜等を除去することにより、継続してDO計3のDO計測値に基づいて、曝気装置2を運転制御するようにすることができる。
【0026】
なお、DO計測値が下限設定値B以下の状態で設定時間T以上継続した場合に、DO計3の異常と判断する方法と、PH計測値が下限設定値C以下になった場合に、DO計3の異常と判断する方法は、それぞれ単独で用いても十分その目的を達成することができるが、必要に応じて、2つの方法を併用することもでき、この場合には、DO計3の異常の判断をより確実に行うことができる。
【0027】
以上、本発明の曝気装置の運転制御方法を、DO計3により計測したDO計測値に基づいて曝気装置2の運転を制御して、オキシデーションディッチ1を好気状態と嫌気状態とに交互に切り換え、間欠曝気により汚水の硝化脱窒処理を行う場合に適用した例について説明したが、本発明の曝気装置の運転制御方法は、このほか、曝気装置の回転数を制御するようにする場合や、大規模なオキシデーションディッチにおける硝化のための好気ゾーンと脱窒のための嫌気ゾーンに分割するために、両ゾーンの境界付近にDO計を設けて、DO計測値が所定の設定値付近でほぼ一定となるように、曝気装置を間欠運転又は曝気装置の回転数を制御する場合にも適用することができる。
なお、オキシデーションディッチを硝化を行う好気ゾーンと脱窒を行う嫌気ゾーンに分割する場合の、DO値の下限設定値B及びPH値の下限設定値Cは、上記実施例の設定値よりも小さい値に設定するようにする。
【0028】
【発明の効果】
本第1発明の曝気装置の運転制御方法によれば、溶存酸素計測値が下限設定値以下になり、曝気装置の運転を行っても、溶存酸素計測値が下限設定値以下の状態が設定時間以上継続した場合に、溶存酸素計の異常と判断するようにしているので、一時的な流入負荷による溶存酸素濃度の低下等と、溶存酸素計の故障とを峻別して、これに応じた運転制御をすることができ、これにより、オキシデーションディッチが過曝気の状態になることを防止し、硝化脱窒処理を効率的に行うことができる。
【0029】
また、本第2発明の曝気装置の運転制御方法によれば、オキシデーションディッチの硝化脱窒の割合、すなわち、オキシデーションディッチが過曝気の状態にあることをオキシデーションディッチに設置したPH計のPH計測値により検知し、このPH計測値が下限設定値以下になった場合に、溶存酸素計の異常と判断し、これに応じた運転制御をすることができ、これにより、オキシデーションディッチが過曝気の状態になることを防止し、硝化脱窒処理を効率的に行うことができる。
【0030】
そして、溶存酸素計の異常と判断したとき、曝気装置をタイマーによる保護運転に切り換えることにより、過曝気の状態が継続することを防止するとともに、継続して曝気装置の運転を行うことができる。
【0031】
また、溶存酸素計の異常と判断したとき、溶存酸素計の表面を洗浄することにより、溶存酸素計に付着した生物膜等を除去することができ、継続して溶存酸素計の溶存酸素計測値に基づいて、曝気装置を運転制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の曝気装置の運転制御方法を実施する設備を示す平面図である。
【図2】溶存酸素計測値の変化を示すグラフで、(A)はDO計の正常時を、(B)はDO計の異常時を示す。
【図3】DO計の異常時のPH計測値の変化を示すグラフである。
【図4】DO計に付設したセンサ洗浄手段の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 オキシデーションディッチ
2 曝気装置
3 溶存酸素計
4 PH計
5 制御盤
6 センサ洗浄手段

Claims (4)

  1. オキシデーションディッチに溶存酸素計を設置し、該溶存酸素計の溶存酸素計測値に基づいて、曝気装置を間欠運転又は曝気装置の回転数を制御するようにした曝気装置の運転制御方法において、溶存酸素計測値が下限設定値以下になり、曝気装置の運転を行っても、溶存酸素計測値が下限設定値以下の状態が設定時間以上継続した場合に、溶存酸素計の異常と判断することを特徴とする曝気装置の運転制御方法。
  2. オキシデーションディッチに溶存酸素計を設置し、該溶存酸素計の溶存酸素計測値に基づいて、曝気装置を間欠運転又は曝気装置の回転数を制御するようにした曝気装置の運転制御方法において、オキシデーションディッチに設置したPH計のPH計測値が下限設定値以下になった場合に、溶存酸素計の異常と判断することを特徴とする曝気装置の運転制御方法。
  3. 溶存酸素計の異常と判断したとき、曝気装置をタイマーによる保護運転に切り換えるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の曝気装置の運転制御方法。
  4. 溶存酸素計の異常と判断したとき、溶存酸素計の表面を洗浄するようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の曝気装置の運転制御方法。
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