JP3862889B2 - 同期発電機制御装置および同期発電機制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、火力発電所や原子力発電所などにおいてタンデム型タービンやクロスコンパウンド型タービンに接続された同期発電機を制御する同期発電機制御装置および同期発電機制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図9は従来の同期発電機制御装置を示すブロック図である。図10は、例えば特公平4−35975号公報に記載された従来の系統安定化装置を示すブロック図である。図9において、6は同期発電機101の出力電流を検出する変成器であり、7は同期発電機101の出力電圧を検出する変成器である。15は変成器6,7により検出された同期発電機101の出力電圧の値および出力電流の値から、同期発電機101より出力される有効電力を計算し、所定の基準値からの有効電力の偏差を示す偏差信号を出力する電力計測器である。9はタービン105の軸の回転数(すなわち、同期発電機101の回転子の回転数)を計測し、所定の基準回転数からの偏差を示す偏差信号を出力する回転数計測器である。
【0003】
16は電力計測器15による有効電力の偏差および回転数計測器9によるタービン軸の回転数の偏差に基づいて自動電圧調整装置10に対する補助信号を生成する系統安定化装置(PSS)である。
【0004】
図10の系統安定化装置16は、同期発電機101の回転子の回転数に対する系統安定化回路22と、同期発電機101の出力電圧に対する系統安定化回路28とを有する2並列型系統安定化装置である。図10の系統安定化装置16において、31は回転数計測器9より端子23を介して回転子の回転数の偏差信号を供給され、その偏差信号のうち、所定の周波数以下の成分を通過させるローパスフィルタである。22はローパスフィルタ31により高周波成分を除去された回転子の回転数の偏差信号を供給され、回転子の回転数の偏差に対応する補助信号を生成する系統安定化回路である。
【0005】
系統安定化回路22において、22aは通常{Tr1×S/(1+Tr1×S)}×{1/(1+Th1×S)}なる伝達関数(ただし、Tr1およびTh1は所定の定数である)を有し、入力される信号に対する応動範囲を定めるフィルタ回路であり、22bは通常Kp×(1+Tp2×S)/(1+Tp1×S)なる伝達関数(ただし、Kp、Tp1およびTp2は所定の定数である)を有し、レギュレータ26,励磁装置8,同期発電機101などによる時間遅れを補正する増幅/位相補正回路であり、22cは同期発電機101に対する励磁系の特性を考慮して、増幅/位相補正回路22bの出力信号の電圧値をその励磁系に適当な電圧値以下に制限するリミッタ回路である。
【0006】
32は電力計測器15より端子29を介して有効電力の偏差信号を供給され、その偏差信号のうち、所定の周波数以上の成分を通過させるハイパスフィルタである。28はハイパスフィルタ32により低周波成分を除去された有効電力の偏差信号を供給され、同期発電機101より出力される有効電力の偏差に対応する補助信号を生成する系統安定化回路である。
【0007】
系統安定化回路28において、28aは通常{Tr2×S/(1+Tr2×S)}×{1/(1+Th2×S)}なる伝達関数(ただし、Tr2およびTh2は所定の定数である)を有し、入力される信号に対する応動範囲を定めるフィルタ回路であり、28bは通常Kw×(1+Tw2×S)/(1+Tw1×S)なる伝達関数(ただし、Kw、Tw1およびTw2は所定の定数である)を有し、レギュレータ26,励磁装置8,同期発電機101などによる時間遅れを補正する増幅/位相補正回路であり、28cは同期発電機101に対する励磁系の特性を考慮して、増幅/位相補正回路28bの出力信号の電圧値をその励磁系に適当な電圧値以下に制限するリミッタ回路である。
【0008】
30は系統安定化回路22の出力値から系統安定化回路28の出力値を減算し、その計算結果を加算器18に出力する減算器である。
【0009】
図9に戻り、17は変成器7により検出された出力電圧の、所定の基準値からの偏差を計算し、その偏差を示す偏差信号を出力する電圧比較部である。18は電圧比較部17からの偏差信号と系統安定化装置16により生成された補助信号とを加算し、その結果の信号を自動電圧調整装置10に供給する加算器である。
【0010】
10は同期発電機101の出力電圧を安定化するように、加算器18からの信号に対して所定の処理を実行し、処理後の信号を励磁装置8に供給する自動電圧調整装置(AVR)である。図10の自動電圧調整装置10において、19は加算器18の出力信号から、ダンピング回路24の出力信号を減算し、その計算結果の信号をレギュレータ26に出力する減算器であり、24は、励磁装置8の出力を減算器19に所定の伝達特性でフィードバックするダンピング回路であり、26は同期発電機101の出力電圧を所定の設定電圧にするように励磁装置8への制御信号を生成するレギュレータである。
【0011】
8は自動電圧調整装置10からの信号に基づいて同期発電機101の界磁巻線を励磁する励磁装置である。
【0012】
なお、図9において、タービン105に機械的に接続された同期発電機101は、必要に応じて同期発電機101を電気系統104から切り離す遮断器102と主変圧器103を介して電気系統104に接続されている。
【0013】
次に動作について説明する。
変成器6は同期発電機101の出力電流を検出し、変成器7は同期発電機101の出力電圧を検出する。電力計測器15は、変成器6,7により検出された同期発電機101の出力電圧の値および出力電流の値から、同期発電機101より出力される有効電力を計算し、所定の基準値からの有効電力の偏差を示す偏差信号を出力する。
【0014】
一方、回転数計測器9は、同期発電機101の回転子の回転数を計測し、その回転数の、所定の基準回転数からの偏差を示す偏差信号を出力する。
【0015】
そして、系統安定化装置16は、電力計測器15による有効電力の偏差および回転数計測器9による回転数の偏差に基づいて自動電圧調整装置10に対する補助信号を生成する。
【0016】
系統安定化装置16においては、ローパスフィルタ31が、回転数計測器9より端子23を介して供給された回転子の回転数の偏差信号のうち、所定の周波数以下の成分を通過させ、系統安定化回路22が、ローパスフィルタ31により高周波成分を除去された回転数の偏差信号に対応する補助信号を生成する。なお、系統安定化回路22においては、フィルタ回路22aが、入力された信号の直流成分と高周波成分を除去し、増幅/位相補正回路22bが、レギュレータ26、励磁装置8、同期発電機101などによる時間遅れを補正し、リミッタ回路22cが、増幅/位相補正回路22bの出力信号の電圧値をその励磁系に適当な電圧値以下に制限する。このようにして生成された補助信号は、減算器30に供給される。
【0017】
一方、ハイパスフィルタ32が、電力計測器15より端子29を介して供給された有効電力の偏差信号のうち、所定の周波数以上の成分を通過させ、系統安定化回路28が、ハイパスフィルタ32により低周波成分を除去された有効電力の偏差信号に対応する補助信号を生成する。なお、系統安定化回路28においては、フィルタ回路28aが、入力された信号の直流成分と高周波成分を除去し、増幅/位相補正回路28bが、レギュレータ26、励磁装置8、同期発電機101などによる時間遅れを補正し、リミッタ回路28cが、増幅/位相補正回路28bの出力信号の電圧値をその励磁系に適当な電圧値以下に制限する。このようにして生成された補助信号は、減算器30に供給される。
【0018】
そして、減算器30は、系統安定化回路22の出力値から系統安定化回路28の出力値を減算し、その計算結果を加算器18に出力する。加算器18は、電圧比較部17からの偏差信号と系統安定化装置16からの補助信号とを加算し、その結果の信号を自動電圧調整装置10に供給する。
【0019】
自動電圧調整装置10は、同期発電機101の出力電圧を安定化するように、加算器18からの信号に対して所定の処理を実行し、処理後の信号を励磁装置8に供給する。なお、自動電圧調整装置10においては、減算器19が、加算器18の出力信号から、ダンピング回路24の出力信号を減算し、その計算結果の信号をレギュレータ26に出力し、ダンピング回路24が、励磁装置8の出力を減算器19に所定の伝達特性でフィードバックし、レギュレータ26が、同期発電機101の出力電圧を所定の設定電圧にするように励磁装置8への制御信号を生成する。そして、励磁装置8は、自動電圧調整装置10からの信号に基づいて同期発電機101の界磁巻線を励磁する。
【0020】
このようにして、同期発電機101が制御される。上述のような2並列型系統安定化装置を使用した場合、比較的低い周波数成分(周期が3〜5秒程度の成分)を含む系統間振動に対しては、同期発電機101の回転子の回転数の偏差に基づいて系統安定化装置16のうちの系統安定化回路22が動作し、比較的高い周波数成分(周期が1秒程度の成分)を含む発電機間振動に対しては、同期発電機101の出力電圧の偏差に基づいて系統安定化装置16のうちの系統安定化回路28が動作する。したがって、2種類の動揺モードに対するダンピングが得られる。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
従来の同期発電機制御装置は以上のように構成されているので、予測可能な動揺モードに対しては、その動揺モードに対する系統安定化回路を設けることにより、その動揺を抑制することが可能であるが、動揺モードの数は電力系統の構成などに応じて異なるため、動揺モードの数が増加した場合、系統安定化回路を増設する必要があり、装置の規模およびコストを低減することが困難になるとともに、増幅/位相補正回路22b,28bの各定数は、所定の安定動作点の近傍で伝達関数を線形化して設定されているため、電力系統で発生する様々な系統事故について、その大きさの違いや不平衡事故であることなどの系統事故の様相の違いに応じて系統を安定化させることが困難であるなどの課題があった。
【0022】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、主変圧器の電力系統側への出力電圧、有効電力および無効電力に基づいてその出力電圧と前記同期発電機の内部相差角との位相差の偏差を計算し、その位相差の偏差、同期発電機の出力する有効電力の偏差、および、同期発電機の回転数の偏差に基づいて制御信号を生成するようにして、装置の構成を変えることなく動揺モードの増加に対応して良好な制御を実行することができるとともに、例えば同期発電機101の出力電圧の平均値に応じて系統事故の様相を判別し、それに応じて増幅/位相補正回路22b,28bの定数を変化させるようにして、系統事故の様相に拘わらず電力系統を安定化させることができる同期発電機制御装置および同期発電機制御方法を得ることを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る同期発電機制御装置は、主変圧器の電力系統側への出力電圧および出力電流を計測する計測手段と、計測手段により計測された出力電圧および出力電流から、主変圧器の電力系統へ出力される有効電力および無効電力を計算する電力計算手段と、主変圧器の電力系統側への出力電圧、有効電力および無効電力に基づいてその出力電圧と同期発電機の内部相差角との位相差の偏差を計算する位相差計算手段と、位相差計算手段により計算された位相差の偏差、同期発電機の出力する有効電力の偏差、および、同期発電機の回転数の偏差に基づいて制御信号を生成する制御信号生成手段と、制御信号生成手段により生成された制御信号に従って同期発電機を制御する制御手段と、予め事故の規模に対応する定数が設定され、系統事故発生時に検出される事故の規模に応じた定数を発生する判定手段とを備え、制御信号生成手段は、位相差計算手段により計算された位相差の偏差に対して設けられ、判定手段により発生された定数に応じてその伝達特性を変化させる第1のフィルタと、同期発電機の出力する有効電力の偏差に対する第2のフィルタと、同期発電機の回転数の偏差に対する第3のフィルタと、第1のフィルタから第3のフィルタの出力を加算し、その結果を制御信号として出力する加算手段とを備えたものである。
【0024】
この発明に係る同期発電機制御装置は、主変圧器の電力系統側への出力電圧および出力電流を計測する計測手段と、計測手段により計測された出力電圧および出力電流から、主変圧器の電力系統へ出力される有効電力および無効電力を計算する電力計算手段と、並列接続された各同期発電機より出力される無効電力を計測する無効電力計測手段と、主変圧器の電力系統側への出力電圧、有効電力および無効電力に基づいてその出力電圧と同期発電機の内部相差角との位相差の偏差を計算する位相差計算手段と、無効電力計測手段により計測された各同期発電機の無効電力、主変圧器の電力系統側への出力電圧、有効電力および無効電力に基づいて、並列接続した同期発電機間の無効電力の潮流に対応した位相差を補正分として計算し、位相差計算手段によって計算された位相差の偏差をその補正分により補正する位相差補正手段と、位相差補正手段により計算された位相差の偏差、同期発電機の出力する有効電力の偏差、および、同期発電機の回転数の偏差に基づいて制御信号を生成する制御信号生成手段と、制御信号生成手段により生成された制御信号に従って同期発電機を制御する制御手段とを備えたものである。
【0025】
この発明に係る同期発電機制御装置は、予め事故の規模に対応する定数が設定され、系統事故発生時に検出される事故の規模に応じた定数を発生する判定手段を備え、制御信号生成手段は、位相差計算手段により計算された位相差の偏差に対して設けられ、判定手段 により発生された定数に応じてその伝達特性を変化させる第1のフィルタと、同期発電機の出力する有効電力の偏差に対する第2のフィルタと、同期発電機の回転数の偏差に対する第3のフィルタと、第1〜第3のフィルタの出力を加算し、その結果を制御信号として出力する加算手段とを備えたものである。
【0026】
この発明に係る同期発電機制御方法は、主変圧器の電力系統側への出力電圧および出力電流を計測するステップと、計測した出力電圧および出力電流から、主変圧器の電力系統へ出力される有効電力および無効電力を計算するステップと、並列接続された各同期発電機より出力される無効電力を計測するステップと、主変圧器の電力系統側への出力電圧、有効電力および無効電力に基づいてその出力電圧と同期発電機の内部相差角との位相差の偏差を計算するステップと、計測された各同期発電機の無効電力、主変圧器の電力系統側への出力電圧、有効電力および無効電力に基づいて、並列接続した前記同期発電機間の無効電力の潮流に対応した位相差を補正分として計算し、計算された位相差の偏差をその補正分により補正するステップと、補正した位相差の偏差、同期発電機の出力する有効電力の偏差、および、同期発電機の回転数の偏差に基づいて制御信号を生成するステップと、生成した制御信号に従って同期発電機を制御するステップとを備えたものである。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による同期発電機制御装置の構成例を示すブロック図である。図2は図1の電力計測器および位相差推定回路の詳細な構成を示すブロック図である。図3は図1の系統安定化装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【0028】
図1において、6は同期発電機101の出力電流を検出する変成器であり、7は同期発電機101の出力電圧を検出する変成器である。15は変成器6,7により検出された同期発電機101の出力電圧の値および出力電流の値から、同期発電機101より出力される有効電力を計算し、所定の基準値からの有効電力の偏差を示す偏差信号を出力する電力計測器である。9はタービン(タンデム型タービン)105の軸の回転数(すなわち、同期発電機101の回転子の回転数)を計測し、所定の基準回転数からの偏差を示す偏差信号を出力する回転数計測器である。
【0029】
11は主変圧器103の電力系統104側(すなわち、2次側母線)への出力電流を検出する変成器(計測手段)であり、12は主変圧器103の電力系統104側への出力電圧を検出する変成器(計測手段)である。13は変成器11,12により検出された主変圧器103の電力系統104側への出力電圧の値および出力電流の値から、主変圧器103より出力される有効電力および無効電力を計算する電力計測器(電力計算手段)である。
【0030】
図2の電力計測器13において、41は変成器12により検出された電圧に基づいて、主変圧器103の出力電圧の値を出力する電圧検出部であり、42は変成器11により検出された電流に基づいて、主変圧器103の出力電流の値を出力する電流検出部であり、43は電圧検出部41からの値および電流検出部42からの値に基づいて、主変圧器103から電力系統104側へ出力される有効電力の値Phと無効電力の値Qhとを計算する電力変換部である。
【0031】
図1に戻り、14は主変圧器103の電力系統104側への出力電圧、有効電力および無効電力を電力計測器13より供給され、主変圧器103の電力系統104側への出力電圧と同期発電機101の内部相差角との位相差を計算し、その位相差の、所定の基準値からの偏差を示す偏差信号を出力する位相差推定回路(位相差計算手段)である。電力系統104に生じる電力動揺と、同期発電機101の内部相差角の動揺とは互いに関連して発生する。しかしながら、同期発電機101の内部相差角を直接計測することは困難であるので、内部相差角の代わりに、主変圧器103の電力系統104側への出力電圧と同期発電機101の内部相差角との位相差が位相差推定回路14により計算される。この位相差は、系統事故などによる電力動揺が発生し主変圧器103を通過する潮流が変化すると、それに応じて変化する。そこで、この位相差が内部相差角の代わりに利用されている。
【0032】
図2の位相差推定回路14において、46は同期発電機101の界磁電圧値Efd、同期発電機101の出力電圧値Vtおよび主変圧器103の電力系統104側の出力電圧値Vhを供給され、式(1)に従って上記位相差の基準値δh0を計算する位相差基準値算出部である。
【数1】
ここで、xdは同期発電機101の同期リアクタンスのd軸成分であり、xqは同期リアクタンスのq軸成分であり、xd’は同期発電機101の過渡リアクタンスのd軸成分であり、xtは主変圧器103のリアクタンスである。なお、これらの値はすべて既知である。
【0033】
47は主変圧器103の電力系統104側への出力電圧値Vh、有効電力値Ph、および無効電力値Qhを供給され、式(2)に従って上記位相差δhを計算する位相差推定部である。
【数2】
ここで、raは同期発電機101の電機子抵抗である。なお、この値は既知である。
【0034】
48は位相差基準値算出部46による位相差の基準値δh0から位相差推定部47による位相差δhを減算し、その減算の結果を補助信号(制御信号)として系統安定化装置16Aに出力する減算器である。
【0035】
図1に戻り、16Aは電力計測器15による有効電力の偏差、回転数計測器9によるタービン軸の回転数の偏差、および、位相差推定回路14による主変圧器103の電力系統104側への出力電圧と同期発電機101の内部相差角との位相差の偏差に基づいて、上記有効電力の偏差、上記回転数の偏差、および、上記位相差の偏差を抑制するための、自動電圧調整装置10に対する補助信号を生成する系統安定化装置(PSS)(制御信号生成手段)である。
【0036】
図3の系統安定化装置16Aにおいて、31は回転数計測器9より端子23を介して回転子の回転数の偏差信号を供給され、その偏差信号のうち、所定の周波数以下の成分を通過させるローパスフィルタである。22は、ローパスフィルタ31より高周波成分を除去された回転数の偏差信号を供給され、回転数の偏差に対応する補助信号を生成する系統安定化回路(第3のフィルタ)である。
【0037】
系統安定化回路22において、22aは通常{Tr1×S/(1+Tr1×S)}×{1/(1+Th1×S)}なる伝達関数(ただし、Tr1およびTh1は所定の定数である)を有し、入力される信号に対する応動範囲を定めるフィルタ回路であり、22bは通常Kp×(1+Tp2×S)/(1+Tp1×S)なる伝達関数(ただし、Kp、Tp1およびTp2は所定の定数である)を有し、レギュレータ26,励磁装置8,同期発電機101などによる時間遅れを補正する増幅/位相補正回路であり、22cは同期発電機101に対する励磁系の特性を考慮して、増幅/位相補正回路22bの出力信号の電圧値をその励磁系に適当な電圧値以下に制限するリミッタ回路である。
【0038】
32は電力計測器15より端子29を介して有効電力の偏差信号を供給され、その偏差信号のうち、所定の周波数以上の成分を通過させるハイパスフィルタである。28はハイパスフィルタ32により低周波成分を除去された有効電力の偏差信号を供給され、同期発電機101より出力される有効電力の偏差に対応する補助信号を生成する系統安定化回路(第2のフィルタ)である。
【0039】
系統安定化回路28において、28aは通常{Tr2×S/(1+Tr2×S)}×{1/(1+Th2×S)}なる伝達関数(ただし、Tr2およびTh2は所定の定数である)を有し、入力される信号に対する応動範囲を定めるフィルタ回路であり、28bは通常Kw×(1+Tw2×S)/(1+Tw1×S)なる伝達関数(ただし、Kw、Tw1およびTw2は所定の定数である)を有し、レギュレータ26,励磁装置8,同期発電機101などによる時間遅れを補正する増幅/位相補正回路であり、28cは同期発電機101に対する励磁系の特性を考慮して、増幅/位相補正回路28bの出力信号の電圧値をその励磁系に適当な電圧値以下に制限するリミッタ回路である。
【0040】
36は位相差推定回路14より端子33を介して上記位相差の偏差信号を供給され、上記位相差の偏差に対応する補助信号を生成する系統安定化回路(第1のフィルタ)である。
系統安定化回路36において、36aは通常{Tr3×S/(1+Tr3×S)}×{1/(1+Th3×S)}なる伝達関数(ただし、Tr3およびTh3は所定の定数である)を有し、入力される信号に対する応動範囲を定めるフィルタ回路であり、36bは通常Kδ×(1+Tδ2×S)/(1+Tδ1×S)なる伝達関数(ただし、Kδ、Tδ1およびTδ2は所定の定数である)を有し、レギュレータ26,励磁装置8,同期発電機101などによる時間遅れを補正する増幅/位相補正回路であり、36cは同期発電機101に対する励磁系の特性を考慮して、増幅/位相補正回路36bの出力信号の電圧値をその励磁系に適当な電圧値以下に制限するリミッタ回路である。
【0041】
37は系統安定化回路22の出力値、系統安定化回路28の出力値、および系統安定化回路36の出力値を加算し、その計算結果を加算器18に出力する加算器(加算手段)である。
【0042】
図1に戻り、17は変成器7により検出された出力電圧の、所定の基準値からの偏差を計算し、その偏差を示す偏差信号を出力する電圧比較部である。18は電圧比較部17からの偏差信号と系統安定化装置16Aにより生成された補助信号とを加算し、その結果の信号を自動電圧調整装置10に供給する加算器である。
【0043】
10は同期発電機101の出力電圧が所定の基準値になるように、加算器18からの信号に対して所定の処理を実行し、処理後の信号を励磁装置8に供給する自動電圧調整装置(AVR)(制御手段)である。図3の自動電圧調整装置10において、19は加算器18の出力信号から、ダンピング回路24の出力信号を減算し、その計算結果の信号をレギュレータ26に出力する減算器であり、24は励磁装置8の出力を減算器19に所定の伝達特性でフィードバックし、電圧制御を安定化するダンピング回路であり、26は同期発電機101の出力電圧を所定の設定電圧にするように励磁装置8への制御信号を生成するレギュレータである。
【0044】
8は自動電圧調整装置10からの信号に基づいて同期発電機101の界磁巻線を励磁する励磁装置(制御手段)である。
【0045】
なお、図1において、タービン105に機械的に接続された同期発電機101は、必要に応じて同期発電機101を電気系統104から切り離す遮断器102と主変圧器103を介して電気系統104に接続されている。これらの部位は同期発電機制御装置に特に含まれなくてもよい。
【0046】
次に動作について説明する。
変成器6は同期発電機101の出力電流を検出し、変成器7は同期発電機101の出力電圧を検出する。そして、電力計測器15は、変成器6,7により検出された同期発電機101の出力電圧の値および出力電流の値から、同期発電機101より出力される有効電力を計算し、所定の基準値からの有効電力の偏差を示す偏差信号を出力する。
【0047】
一方、回転数計測器9は、同期発電機101の回転子の回転数を計測し、所定の基準回転数からの偏差を示す偏差信号を出力する。
【0048】
また、変成器11は主変圧器103の電力系統104側への出力電流を検出し、変成器12は主変圧器103の電力系統104側への出力電圧を検出し、電力計測器13は、変成器11,12により検出された主変圧器103の電力系統104側への出力電圧の値および出力電流の値から、主変圧器103より出力される有効電力および無効電力を計算する。そして、位相差推定回路14は、主変圧器103の電力系統104側への出力電圧、有効電力および無効電力を電力計測器13より供給され、主変圧器103の電力系統104側への出力電圧と同期発電機101の内部相差角との位相差を計算し、その位相差の、所定の基準値からの偏差を示す偏差信号を出力する。
【0049】
なお、電力計測器13においては、電圧検出部41が、変成器12により検出された電圧に基づいて主変圧器103の出力電圧の値を出力し、電流検出部42が、変成器11により検出された電流に基づいて主変圧器103の出力電流の値を出力し、電力変換部43が、電圧検出部41からの値および電流検出部42からの値に基づいて、主変圧器103から電力系統104側へ出力される有効電力の値と無効電力の値とを計算する。
【0050】
また、位相差推定回路14においては、位相差基準値算出部46が、同期発電機101の界磁電圧値Efd、同期発電機101の出力電圧値Vtおよび主変圧器103の電力系統104側の出力電圧値Vhを供給され、式(1)に従って上記位相差の基準値δh0を計算し、位相差推定部47が、主変圧器103の電力系統104側への出力電圧値Vh、有効電力値Ph、および無効電力値Qhを供給され、式(2)に従って上記位相差δhを計算する。そして、減算器48が、位相差基準値算出部46による位相差の基準値δh0から位相差推定部47による位相差δhを減算し、その減算の結果を補助信号として系統安定化装置16Aに出力する。
【0051】
次に、系統安定化装置16Aは、電力計測器15による有効電力の偏差、回転数計測器9によるタービン軸の回転数の偏差、および、位相差推定回路14による主変圧器103の電力系統104側への出力電圧と同期発電機101の内部相差角との位相差の偏差に基づいて、上記有効電力の偏差、上記回転数の偏差、および、上記位相差の偏差を抑制するための、自動電圧調整装置10に対する補助信号を生成する。
【0052】
なお、系統安定化装置16Aにおいては、ローパスフィルタ31が、回転数計測器9より端子23を介して供給された回転子の回転数の偏差信号のうち、所定の周波数以下の成分を通過させ、系統安定化回路22が、ローパスフィルタ31により高周波成分を除去された回転子の回転数の偏差信号を供給され、回転子の回転数の偏差に対応する補助信号を生成する。なお、系統安定化回路22においては、フィルタ回路22aが、入力された信号の直流成分と高周波成分を除去し、増幅/位相補正回路22bが、レギュレータ26,励磁装置8,同期発電機101などによる時間遅れを補正し、リミッタ回路22cが、増幅/位相補正回路22bの出力信号の電圧値をその励磁系に適当な電圧値以下に制限する。このようにして生成された補助信号は、加算器37に供給される。
【0053】
一方、ハイパスフィルタ32が、電力計測器15より端子29を介して供給された有効電力の偏差信号のうち、所定の周波数以上の成分を通過させ、系統安定化回路28が、ハイパスフィルタ32により低周波成分を除去された有効電力の偏差信号に対応する補助信号を生成する。なお、系統安定化回路28においては、フィルタ回路28aが、入力された信号の直流成分と高周波成分を除去し、増幅/位相補正回路28bが、レギュレータ26,励磁装置8,同期発電機101などによる時間遅れを補正し、リミッタ回路28cが、増幅/位相補正回路28bの出力信号の電圧値をその励磁系に適当な電圧値以下に制限する。このようにして生成された補助信号は、加算器37に供給される。
【0054】
また、系統安定化回路36は、位相差推定回路14より端子33を介して上記位相差の偏差信号を供給され、上記位相差の偏差に対応する補助信号を生成する。なお、系統安定化回路36においては、フィルタ回路36aが、入力された信号の直流成分と高周波成分を除去し、増幅/位相補正回路36bが、レギュレータ26,励磁装置8,同期発電機101などによる時間遅れを補正し、リミッタ回路36cが、増幅/位相補正回路36bの出力信号の電圧値をその励磁系に適当な電圧値以下に制限する。このようにして生成された補助信号は、加算器37に供給される。
【0055】
そして加算器37は、系統安定化回路22の出力値、系統安定化回路28の出力値、および系統安定化回路36の出力値を加算し、その計算結果を加算器18に出力する。
【0056】
一方、電圧比較部17は、変成器7により検出された出力電圧の、所定の基準値からの偏差を計算し、その偏差を示す偏差信号を加算器18に出力する。
【0057】
そして、加算器18は、電圧比較部17からの偏差信号と系統安定化装置16Aからの補助信号とを加算し、その結果の信号を自動電圧調整装置10に供給する。
【0058】
自動電圧調整装置10は、同期発電機101の出力電圧を安定化するように、加算器18からの信号に対して所定の処理を実行し、処理後の信号を励磁装置8に供給する。なお、自動電圧調整装置10においては、減算器19が、加算器18の出力信号から、ダンピング回路24の出力信号を減算し、その計算結果の信号をレギュレータ26に出力し、ダンピング回路24が、励磁装置8の出力を減算器19に所定の伝達特性でフィードバックし、レギュレータ26が、同期発電機101の出力電圧を所定の設定電圧にするように励磁装置8への制御信号を生成する。そして、励磁装置8は、自動電圧調整装置10からの信号に基づいて同期発電機101の界磁巻線を励磁する。
【0059】
このようにして、同期発電機101が制御される。なお、系統安定化回路36には、増幅/位相補正回路36bが1つだけ設けられているが、複数の増幅/位相補正回路36bを設けるようにしてもよい。また、系統安定化回路36は、アナログ回路で構成してもよいし、デジタル回路で構成してもよい。
【0060】
以上のように、この実施の形態1によれば、同期発電機101の出力有効電力の偏差、および、同期発電機101の回転子の回転数の偏差の他、主変圧器103の電力系統104側への出力電圧と同期発電機101の内部相差角との位相差の偏差を抑制するようにしたので、装置の構成を変えることなく動揺モードの増加に対応して同期発電機101を良好に制御することができるという効果が得られる。
【0061】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による同期発電機制御装置の系統安定化装置、事故様相判定回路などを示すブロック図である。図5は事故様相判定回路の詳細な構成を示すブロック図である。
【0062】
図4において、51は同期発電機101の出力電圧、および、発電所内に設けられる系統事故を検出する図示せぬ装置より供給される系統事故発生信号を供給され、それらの値に応じて事故の様相を判定し、それらの値に応じて系統安定化回路36における増幅/位相補正回路36bの定数Kδの値を設定する事故様相判定回路(判定手段)である。図5の事故様相判定回路51において、61は同期発電機101の出力電圧値Vtを供給され、その電圧値の所定の期間の平均値を計算する平均値演算回路である。62はその平均値が所定の基準電圧値の10パーセント以下であるか否かを判定し、その平均値が所定の基準電圧値の10パーセント以下である場合には1を出力し、そうでない場合には0を出力する判定回路であり、63はその平均値が所定の基準電圧値の70パーセント以下であり、かつ10パーセントより大きいか否かを判定し、その平均値が所定の基準電圧値の70パーセント以下であり、かつ10パーセントより大きい場合には1を出力し、そうでない場合には0を出力する判定回路であり、64はその平均値が所定の基準電圧値の70パーセントより大きいか否かを判定し、その平均値が所定の基準電圧値の70パーセントより大きい場合には1を出力し、そうでない場合には0を出力する判定回路である。
【0063】
65は系統事故発生時に値が1であり、そうでない時には値が0である系統事故発生信号と、判定回路62の出力値とを供給され、それらの論理積を計算し、その計算結果を係数設定部68に出力するAND回路であり、66は系統事故発生信号と判定回路63の出力値とを供給され、それらの論理積を計算し、その計算結果を係数設定部68に出力するAND回路であり、67は系統事故発生信号と判定回路64の出力値とを供給され、それらの論理積を計算し、その計算結果を係数設定部68に出力するAND回路である。
【0064】
68はAND回路67の出力値が1である場合には、大きな擾乱が発生したと判断し、それに対応する値を定数Kδに設定し、AND回路66の出力値が1である場合には、中程度の擾乱が発生したと判断し、それに対応する値を定数Kδに設定し、AND回路65の出力値が1である場合には、小さな擾乱が発生したと判断し、それに対応する値を定数Kδに設定する係数設定部である。
【0065】
なお、実施の形態2による同期発電機のその他の構成要素については、実施の形態1によるものと同様であるので、その説明を省略する。
【0066】
次に動作について説明する。
図6は事故発生時からの時間と事故様相判定回路51の出力値との関係の例を示す図である。
【0067】
系統事故が発生すると、系統事故発生信号の値が1になり、判定回路62〜64の出力値がAND回路65〜67を介して係数設定部68に供給される。なお、系統事故が発生していない場合には、AND回路65〜67の出力値はすべてゼロになる。
【0068】
平均値演算回路61により計算された、同期発電機の出力電圧の平均値が所定の基準電圧値の10パーセント以下である場合には値(1,0,0)がAND回路65〜67を介して係数設定部68に供給される。そして、係数設定部68は、その値(1,0,0)に応じて、図6の波形(c)に示すように、値Kδ3を定数Kδに設定する。
【0069】
一方、同期発電機の出力電圧の平均値が所定の基準電圧値の70パーセント以下であり、かつ10パーセントより大きい場合には値(0,1,0)がAND回路65〜67を介して係数設定部68に供給される。そして、係数設定部68は、その値(0,1,0)に応じて、図6の波形(b)に示すように、値Kδ2を定数Kδに設定する。
【0070】
また、同期発電機の出力電圧の平均値が所定の基準電圧値の70パーセントより大きい場合には値(0,0,1)がAND回路65〜67を介して係数設定部68に供給される。そして、係数設定部68は、その値(0,0,1)に応じて、図6の波形(a)に示すように、値Kδ1を定数Kδに設定する。
【0071】
その後、事故が除去された場合、系統事故発生信号の値が0に変化し、それに応じて、AND回路65〜67からの値が(0,0,0)に変化すると、係数設定部68は、図6に示すように、定数Kδの値を所定の値Kδ3に徐々に収束させる。
【0072】
なお、実施の形態2による同期発電機のその他の動作については、実施の形態1によるものと同様であるので、その説明を省略する。また、基準電圧値の10パーセントおよび70パーセントを系統事故の規模の判別の境界としているが他の値としてもよい。また、事故様相判定回路51は、アナログ回路で構成してもよいし、デジタル回路で構成してもよい。
【0073】
以上のように、この実施の形態2によれば、同期発電機101の出力電圧、および、発電所内に設けられる系統事故を検出する図示せぬ装置より供給される系統事故発生信号に基づいて系統事故の様相を判定し、それに応じた値に増幅/位相補正回路36bの定数Kδを設定するようにしたので、系統事故の様相に拘わらず電力系統を安定化させることができるという効果が得られる。
【0074】
実施の形態3.
図7はこの発明の実施の形態3による同期発電機制御装置の構成例を示すブロック図である。この実施の形態3による同期発電機制御装置は、クロスコンパウンド型タービン105A,105Bに機械的に接続され、互いに電気的に並列に接続された同期発電機101A,101Bを制御するものである。なお、図7には、同期発電機101Aを制御する部分のみが記載されており、図示せぬ同期発電機101Bを制御する部分も同様に構成される。
【0075】
図7において、71Aはプライマリ機(またはセカンダリ機)である同期発電機101Aの出力電流を検出する変成器であり、71Bはセカンダリ機(またはプライマリ機)である同期発電機101Bの出力電流を検出する変成器である。72Aは変成器71Aにより検出された電流値および変成器7により検出された出力電圧値に基づいて、同期発電機101Aより出力される無効電力を計算する電力計測器(無効電力計測手段)であり、72Bは変成器71Bにより検出された電流値および変成器7により検出された出力電圧値に基づいて、同期発電機101Bより出力される無効電力を計算する電力計測器(無効電力計測手段)である。
【0076】
73は電力計測器72A,72Bによる無効電力、電力計測器13からの有効電力値Ph、無効電力値Qh、および出力電圧値Vhに基づいて、同期発電機101A,101B間の無効電力の潮流に対応した上記位相差を、位相差推定回路14の出力値の補正分として計算する位相差補正回路(位相差計算手段)であり、74は位相差補正回路73による補正分を、位相差推定回路14による補助信号に加算する加算器(位相差計算手段)である。
【0077】
なお、その他の構成要素については実施の形態1によるものと同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
次に動作について説明する。
この実施の形態3においては、変成器71Aが同期発電機101Aの出力電流を検出し、電力計測器72Aが、その電流値および変成器7により検出された出力電圧値に基づいて、同期発電機101Aより出力される無効電力を計算するとともに、変成器71Bが同期発電機101Bの出力電流を検出し、電力計測器72Bが、その電流値および変成器7により検出された出力電圧値に基づいて、同期発電機101Bより出力される無効電力を計算する。
【0079】
そして、位相差補正回路73は、電力計測器72A,72Bによる無効電力、電力計測器13からの有効電力値Ph、無効電力値Qh、および出力電圧値Vhに基づいて、同期発電機101A,101B間の無効電力の潮流に対応した上記位相差を、位相差推定回路14の出力値の補正分として計算し、加算器74が、位相差補正回路73による補正分を、位相差推定回路14による補助信号に加算する。このように補正分を加算された補助信号が系統安定化装置16Aに供給される。
【0080】
クロスコンパウンド型タービンに接続された同期発電機では、系統事故発生時に、プライマリ機とセカンダリ機との間で無効電力の授受が行われる。したがって、主変圧器103を通過する無効電力だけを考慮しても正確に電力動揺に対処することができないので、上述のように、プライマリ機およびセカンダリ機よりそれぞれ出力される無効電力も考慮して電力動揺に正確に対処するようになされている。
【0081】
なお、図7に記載された部分の回転数計測器9により計測されたタービン105Aの軸の回転数に応じて、同期発電機101Aの制御が実行され、図示せぬ部分の回転数計測器9により計測されたタービン105Bの軸の回転数に応じて、同期発電機101Bの制御が実行される。
【0082】
その他の動作については実施の形態1によるものと同様であるので、その説明を省略する。
【0083】
以上のように、この実施の形態3によれば、プライマリ機およびセカンダリ機よりそれぞれ出力される無効電力も考慮して、主変圧器103の電力系統104側への出力電圧と同期発電機101の内部相差角との位相差の偏差を抑制するようにしたので、クロスコンパウンド型タービンに接続された複数の同期発電機101A,101Bを、動揺モードの増加に対応して良好に制御することができるという効果が得られる。
【0084】
実施の形態4.
図8はこの発明の実施の形態4による同期発電機制御装置の位相差推定回路、系統安定化装置などを示すブロック図である。図8に示すように、この実施の形態4による同期発電機制御装置は、実施の形態3による同期発電機制御装置に、実施の形態2と同様に事故様相判定回路51を追加したものである。
【0085】
なお、その他の構成要素については実施の形態3によるものと同様であるので、その説明を省略する。また、事故様相判定回路51の構成および動作は、実施の形態2のものと同様であるので、その説明を省略する。
【0086】
以上のように、この実施の形態4によれば、実施の形態2と同様に、同期発電機101A,101Bの出力電圧、および、発電所内に設けられる系統事故を検出する図示せぬ装置より供給される系統事故発生信号に基づいて系統事故の様相を判定し、それに応じた値に増幅/位相補正回路36bの定数Kδを設定するようにしたので、系統事故の様相に拘わらず電力系統を安定化させることができるという効果が得られる。
【0087】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、主変圧器の電力系統側への出力電圧および出力電流から、主変圧器の電力系統へ出力される有効電力および無効電力を計算し、主変圧器の電力系統側への出力電圧、有効電力および無効電力に基づいてその出力電圧と同期発電機の内部相差角との位相差の偏差を計算し、その位相差の偏差、同期発電機の出力する有効電力の偏差、および、同期発電機の回転数の偏差に基づいて制御信号を生成し、その制御信号に従って同期発電機を制御するように構成したので、装置の構成を変えることなく動揺モードの増加に対応して同期発電機を良好に制御することができるという効果がある。
また、判定手段により発生された事故の規模に対応する定数に応じてその伝達特性を変化させる第1のフィルタの出力、同期発電機の出力する有効電力の偏差に対する第2のフィルタの出力、および同期発電機の回転数の偏差に対する第3のフィルタの出力を加算し、その結果を制御信号とするように構成したので、系統事故の様相に拘わらず電力系統を安定化させることができるという効果がある。
【0088】
この発明によれば、主変圧器の電力系統側への出力電圧および出力電流から、主変圧器の電力系統へ出力される有効電力および無効電力を計算するとともに、並列接続された各同期発電機より出力される無効電力を計測し、主変圧器の電力系統側への出力電圧、有効電力および無効電力、並びに、無効電力計測手段により計測された各同期発電機の無効電力に基づいてその出力電圧と同期発電機の内部相差角との位相差の偏差を計算し、その位相差の偏差、同期発電機の出力する有効電力の偏差、および、同期発電機の回転数の偏差に基づいて制御信号を生成し、その制御信号に従って同期発電機を制御するように構成したので、例えばクロスコンパウンド型タービンに接続された複数の同期発電機を、動揺モードの増加に対応して良好に制御することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による同期発電機制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】 図1の電力計測器および位相差推定回路の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】 図1の系統安定化装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】 この発明の実施の形態2による同期発電機制御装置の系統安定化装置、事故様相判定回路などを示すブロック図である。
【図5】 事故様相判定回路の詳細な構成を示すブロック図である。
【図6】 事故発生時からの時間と事故様相判定回路の出力値との関係の例を示す図である。
【図7】 この発明の実施の形態3による同期発電機制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図8】 この発明の実施の形態4による同期発電機制御装置の位相差推定回路、系統安定化装置などを示すブロック図である。
【図9】 従来の同期発電機制御装置を示すブロック図である。
【図10】 従来の系統安定化装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
8 励磁装置(制御手段)、10 自動電圧調整装置(制御手段)、11,12 変成器(計測手段)、13 電力計測器(電力計算手段)、14 位相差推定回路(位相差計算手段)、16A 系統安定化装置(制御信号生成手段)、22 系統安定化回路(第3のフィルタ)、28 系統安定化回路(第2のフィルタ)、36 系統安定化回路(第1のフィルタ)、37 加算器(加算手段)、51 事故様相判定回路(判定手段)、72A,72B 電力計測器(無効電力計測手段)、73 位相差補正回路(位相差計算手段)、74 加算器(位相差計算手段)、101,101A,101B 同期発電機、103 主変圧器、104 電力系統。
Claims (4)
- 主変圧器を介して電力系統に接続された同期発電機を制御する同期発電機制御装置において、
前記主変圧器の前記電力系統側への出力電圧および出力電流を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された出力電圧および出力電流から、前記主変圧器の前記電力系統へ出力される有効電力および無効電力を計算する電力計算手段と、
前記主変圧器の前記電力系統側への出力電圧、有効電力および無効電力に基づいてその出力電圧と前記同期発電機の内部相差角との位相差の偏差を計算する位相差計算手段と、
前記位相差計算手段により計算された位相差の偏差、前記同期発電機の出力する有効電力の偏差、および、前記同期発電機の回転数の偏差に基づいて制御信号を生成する制御信号生成手段と、
前記制御信号生成手段により生成された制御信号に従って前記同期発電機を制御する制御手段と、
予め事故の規模に対応する定数が設定され、系統事故発生時に検出される事故の規模に応じた定数を発生する判定手段とを備え、
前記制御信号生成手段は、
前記位相差計算手段により計算された位相差の偏差に対して設けられ、前記判定手段により発生された定数に応じてその伝達特性を変化させる第1のフィルタと、
前記同期発電機の出力する有効電力の偏差に対する第2のフィルタと、
前記同期発電機の回転数の偏差に対する第3のフィルタと、
前記第1のフィルタから第3のフィルタの出力を加算し、その結果を制御信号として出力する加算手段とを備えたことを特徴とする同期発電機制御装置。 - 主変圧器を介して電力系統に接続された所定の数の並列接続の同期発電機を制御する同期発電機制御装置において、
前記主変圧器の前記電力系統側への出力電圧および出力電流を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された出力電圧および出力電流から、前記主変圧器の前記電力系統へ出力される有効電力および無効電力を計算する電力計算手段と、
並列接続された各同期発電機より出力される無効電力を計測する無効電力計測手段と、
前記主変圧器の前記電力系統側への出力電圧、有効電力および無効電力に基づいてその出力電圧と前記同期発電機の内部相差角との位相差の偏差を計算する位相差計算手段と、
前記無効電力計測手段により計測された各同期発電機の無効電力、前記主変圧器の前記電力系統側への出力電圧、有効電力および無効電力に基づいて、並列接続した前記同期発電機間の無効電力の潮流に対応した位相差を補正分として計算し、前記位相差計算手段によって計算された位相差の偏差をその補正分により補正する位相差補正手段と、
前記位相差補正手段により計算された位相差の偏差、前記同期発電機の出力する有効電力の偏差、および、前記同期発電機の回転数の偏差に基づいて制御信号を生成する制御信号生成手段と、
前記制御信号生成手段により生成された制御信号に従って前記同期発電機を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする同期発電機制御装置。 - 予め事故の規模に対応する定数が設定され、系統事故発生時に検出される事故の規模に応じた定数を発生する判定手段を備え、
制御信号生成手段は、
前記位相差計算手段により計算された位相差の偏差に対して設けられ、前記判定手段により発生された定数に応じてその伝達特性を変化させる第1のフィルタと、
前記同期発電機の出力する有効電力の偏差に対する第2のフィルタと、
前記同期発電機の回転数の偏差に対する第3のフィルタと、
前記第1〜第3のフィルタの出力を加算し、その結果を制御信号として出力する加算手段とを備えたことを特徴とする請求項2記載の同期発電機制御装置。 - 主変圧器を介して電力系統に接続された所定の数の並列接続の同期発電機を制御する同期発電機制御方法において、
前記主変圧器の前記電力系統側への出力電圧および出力電流を計測するステップと、
計測した前記出力電圧および前記出力電流から、前記主変圧器の前記電力系統へ出力される有効電力および無効電力を計算するステップと、
並列接続された各同期発電機より出力される無効電力を計測するステップと、
前記主変圧器の前記電力系統側への出力電圧、有効電力および無効電力に基づいてその出力電圧と前記同期発電機の内部相差角との位相差の偏差を計算するステップと、
計測された各同期発電機の無効電力、前記主変圧器の前記電力系統側への出力電圧、有効電力および無効電力に基づいて、並列接続した前記同期発電機間の無効電力の潮流に対応した位相差を補正分として計算し、前記計算された位相差の偏差をその補正分により補正するステップと、
補正した前記位相差の偏差、前記同期発電機の出力する有効電力の偏差、および、前記同期発電機の回転数の偏差に基づいて制御信号を生成するステップと、
生成した前記制御信号に従って前記同期発電機を制御するステップとを備えたことを特徴とする同期発電機制御方法。
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