JP3860630B2 - 水酸化カルシウムの製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水酸化カルシウム(消石灰)の製造法に係り、特に、比表面積が大きく、反応性が高い水酸化カルシウムの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水酸化カルシウムを製造する場合、酸化カルシウム(生石灰)及び消化水を消化機に定量供給し、消化機内で混合攪拌して生石灰の消化(水和)を行う。消化機から排出された水酸化カルシウムは熟成機に供給され、消化ムラをなくし、付着水分を均一にして排出される。この間に、余分な水分は蒸発し、熟成機出口で水分が殆ど0になるよう消化水量を調節する。
【0003】
水酸化カルシウム(消石灰)の主要な用途の一つとして、焼却炉等の燃焼排ガスの浄化があるが、これに用いる消石灰は排ガス中の塩化水素や硫黄酸化物との反応性が良いものが望ましい。特公平6−8194号には、酸化カルシウムを水30〜50容量部及びメタノール等の有機溶剤50〜70容量部よりなる消和液体により一定の反応温度のもとで消化させることによる高比表面積の水酸化カルシウムの製造法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特公平6−8194号では、可燃性の有機溶剤を多量に添加するため、コスト高であると共に、製造安全面において不利である。
【0005】
本発明は、比表面積が大きく反応性の高い水酸化カルシウムを安全に効率良く製造できる水酸化カルシウムの製造法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の水酸化カルシウムの製造法は、消化機に酸化カルシウム及び水を供給して消化させ、該消化機からの消化物を熟成機を通す水酸化カルシウムの製造法において、消化機に反応遅延剤を添加した25℃以下の水を酸化カルシウムの消化当量の2.5倍〜5.0倍で供給する工程と、消化機から取り出された消化物を解砕機で解砕した後、熟成機に供給する工程と、熟成機から取り出された熟成物を乾燥機を通して乾燥させる工程と、乾燥機から取り出される水酸化カルシウムが60℃以下となるように乾燥機内で冷却する工程とを含むことを特徴とするものである。また、消化機に酸化カルシウム及び水を供給して消化させ、消化機からの消化物を熟成機を通す水酸化カルシウムの製造法において、消化機に反応遅延剤を添加した25℃以下の水を酸化カルシウムの消化当量の2.5倍〜5.0倍で供給する工程と、熟成機から取り出された熟成物を解砕機で解砕した後、乾燥機に供給し、乾燥機に通して乾燥させる工程と、乾燥機から取り出される水酸化カルシウムが60℃以下となるように乾燥機内で冷却する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0007】
かかる本発明方法によって製造される水酸化カルシウムは、比表面積が大きく、反応性に優れたものとなる。この理由の一つとして、消化機に多量の水を添加することにより消化機内の過度の昇温が防止され、消化速度が遅くなることが挙げられる。
【0008】
本発明では、消化機に供給する酸化カルシウムは、2mm以下とくに150μm以下であることが好ましい。
【0009】
また、本発明では、消化水に反応遅延剤(好ましくは糖類とくにソルビット)を添加することにより、生成する水酸化カルシウムが微粒化して比表面積が大きくなり、反応性が高くなる。この理由は、必らずしも明確ではないが、これらの添加物の添加により生石灰の急激な水和が緩和され、生石灰粒子が水和の際に粒子表面から徐々に水と反応し、生石灰粒子表面から微細な消石灰粒子が剥落する如く生成するためであろうと推察される。
【0012】
この乾燥機では、取り出される水酸化カルシウムが60℃以下となるように水酸化カルシウムを乾燥機内部で冷却するのが好ましい。
【0013】
このように乾燥機から取り出される水酸化カルシウムの温度を低くすることにより、生成した水酸化カルシウムが高温の高活性状態のまま空気と接触することが防止され、空気中のCO2 や水分の吸収による比表面積の低下が防止される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明では、消化機への供給水量を、消化機に供給される酸化カルシウムの消化当量(理論水和量)の2.5倍以上とする。消化当量は、消化当量の2.5〜5.0倍とりわけ3.0〜3.5倍とするのが好ましい。このように水を過剰に添加することにより、消化機内の温度を低くし、高比表面積の水酸化カルシウムが得られるようになる。
【0015】
本発明の水酸化カルシウムの製造方法では、酸化カルシウム(生石灰)を水で消化する際、反応遅延剤を添加するのが好ましい。
【0016】
この反応遅延剤としては、糖類とくにソルビットが好適であるが、その他の反応遅延剤を用いても良い。例えば、乳酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸及びその塩などのオキシカルボン酸が挙げられる。
【0017】
ソルビット以外の糖類としてはブドウ糖またはショ糖が好ましい。
【0018】
ジエチレングリコールなどのエチレングリコール類、トリエタノールアミンなどのエタノールアミン類、金属コハク酸のナトリウム塩、カリウム塩、リグニンスルホン酸のナトリウム塩なども用いることができる。
【0019】
この反応遅延剤は、生石灰と消化水との反応速度を遅延させる効果があり、その添加量は、酸化カルシウムに対し0.1〜10%とりわけ0.3〜3%とくに0.5〜2%が好ましい。
【0020】
0.1%より少ないと反応性の改善が不十分であり、10%超ではコスト高となる。
【0021】
本発明では、この添加物を消化水に加えて混合撹拌した後、この消化水を消化機に供給するのが好ましい。混合攪拌のための装置は、攪拌機付の混合容器でもよいし、連続式のラインミキサーの如きものでもよい。
【0022】
この消化機に供給される水の温度は25℃以下とくに5〜15℃とりわけ8〜12℃が好ましい。このように低温の水を消化機に供給することにより、消化機内の消化反応を遅くすることができる。また、この低温水の温度を年間を通じて一定(例えば10℃)とするのが好ましく、このようにすることにより、消化機内の消化反応温度を年間を通じてほぼ一定の温度とすることができ、製品品質を一定にすることができるようになる。
【0023】
消化機に供給する酸化カルシウムは、なるべく粒径が小さいものであることが好ましく、このようにすることにより、比表面積が大きな消石灰を製造することができる。消化機に供給される酸化カルシウムは、2mm以下とりわけ150μm以下であることが好ましい。150μm以下にするには、酸化カルシウムをローラーミル等で粉砕すれば良い。
【0024】
消化機としては2軸あるいは多軸タイプの消化機が好適であり、これを採用することにより、酸化カルシウムと水との混合消化が1軸タイプ消化機に比べ均一になり、安定して高比表面積水酸化カルシウムが得られるようになる。
【0025】
この消化機から取り出される消化物は、通常の場合団粒状となっているので、解砕機にて解砕してから熟成機に供給するのが好ましい。このように解砕することにより、団粒の原因となっている水分のバラツキが解消され、得られる水酸化カルシウムの比表面積が増大するようになる。
【0026】
消化物は、この後、熟成機に導入されて熟成される。
【0027】
この熟成機としては、内部に撹拌羽根が設けられたものなど各種のものを用いることができる。消化物を熟成機を通すことにより、消化物中の水分が均一化される。
【0028】
熟成機から取り出された熟成物は、好ましくは、解砕機で解砕して乾燥し易くしてから乾燥機に供給し、過剰な水分を飛ばし、好ましくは、水分0.1〜0.5%とくに0.1〜0.2%となるように乾燥する。
【0029】
この乾燥機内で高温の空気と過度に長時間接していると、水酸化カルシウムが該空気中のCO2 や水分と反応して比表面積が低下するため、100〜400℃とりわけ120〜180℃に20〜60minとりわけ20〜30min滞留させて比較的短時間で乾燥させるのが好ましい。また、水酸化カルシウムがこの乾燥機から高温のまま取り出されると、該水酸化カルシウムが空気中のCO2 や水分を多量に吸収するおそれがあるから、乾燥機内において水酸化カルシウムを60℃以下とくに20〜30℃程度に冷却してから水酸化カルシウムを取り出すのが好ましい。
【0030】
従って、この乾燥機としては、水酸化カルシウム入口側に加熱手段を備え、水酸化カルシウム出口側に冷却手段を備えたものが好ましい。この加熱手段としては、例えば、撹拌スクリュの内部に水蒸気を流通させるようにしたものを採用できる。冷却手段としては例えば水冷ジャケットを用いることができる。
【0031】
図1は本発明の水酸化カルシウムの製造法を実施するのに好適な生石灰消化装置の概略図である。
【0032】
水が冷却器1で冷却された後、ラインミキサ2に導入される。このラインミキサ2に反応遅延剤(薬剤)が溶かし込まれた水が導入され、冷却された水と混合される。この水が2軸タイプの消化機4に定量供給される。
【0033】
この消化機4内には生石灰ホッパー3から生石灰が定量供給され、消化機4内において攪拌羽根によって生石灰と消化水とが混合され、消化反応が行われる。消化機4内の消化反応で生成した水分を含む消石灰は、第1解砕機5で解砕された後、熟成機6内に導入され、攪拌羽根によって攪拌され、熟成される。
【0034】
熟成機6で熟成された消石灰は、第2解砕機7で解砕された後、乾燥機8に導入され、攪拌羽根で攪拌され、乾燥される。
【0035】
この撹拌羽根にはボイラ9からの水蒸気が流通されており、該乾燥機8内の消石灰入口側において消石灰が乾燥される。
【0036】
乾燥機8の消石灰出口側には水冷ジャケットが設けられ、消石灰が冷却される。水冷ジャケットには、冷却塔10、11で冷却された冷却水が循環されている。このように乾燥機8で水分を除去した後、粉砕機(図示略)で粉砕し、分級機(図示略)で所定の粒度以下に分級し、製品とする。
【0037】
なお、乾燥機8としては、パドルドライヤー、ベルト乾燥機、バンド乾燥機、ロータリー乾燥機、流動乾燥機、気流乾燥機、電磁波乾燥機、赤外(遠赤外)乾燥機等いずれでもよいが、できるだけ炭酸ガスとの接触を避け、水酸化カルシウムが炭酸化して、炭酸カルシウムになることを避けるため、上記のように水蒸気流通型の撹拌羽根を備えたものなど間接加熱式のものが好ましい。
【0038】
【実施例】
以下、実施例及び比較例について説明する。なお、以下の例におけるクエン酸活性度(CAA)とは、0.4Nクエン酸溶液100ml(30℃)を攪拌しながら水酸化カルシウム3.705gを投入し、フェノールフタレインを指示薬として、液が微紅色から濃赤色に変色するまでの時間(秒)を測定した値である。このCAA値の小さいものほど活性が大きい。
【0039】
実施例1
図1に示す装置を用い、次の条件で消石灰を製造した。
Figure 0003860630
このようにして得られた水酸化カルシウムを150μm以下に粉砕して水酸化カルシウムを製造した。この水酸化カルシウムの比表面積とCAAの測定結果を表1に示す。
【0040】
実施例2
消化水量を消化当量の5.0倍としたこと以外は実施例1と同様にして水酸化カルシウムを製造した。この水酸化カルシウムの比表面積とCAAの測定結果を表1に示す。
【0041】
実施例3
消化機4へ供給される水のソルビット濃度が10%となるようにソルビットの添加量を変えたこと以外は実施例1と同様にして水酸化カルシウムを製造した。この水酸化カルシウムの比表面積とCAAの測定結果を表1に示す。
【0042】
実施例4
ソルビットの代わりにブドウ糖を用いたこと以外は実施例1と同様にして水酸化カルシウムを製造した。この水酸化カルシウムの比表面積とCAAの測定結果を表1に示す。
【0043】
実施例5
ソルビットの代わりにトリエタノールアミンを用いたこと以外は実施例1と同様にして水酸化カルシウムを製造した。この水酸化カルシウムの比表面積とCAAの測定結果を表1に示す。
【0044】
実施例6
ソルビットの代わりにグルコン酸ナトリウムを用いたこと以外は実施例1と同様にして水酸化カルシウムを製造した。この水酸化カルシウムの比表面積とCAAの測定結果を表1に示す。
【0045】
比較例1
消化水量を水酸化カルシウム当量の2.3倍と少なくしたこと以外は実施例1と同様にして水酸化カルシウムを製造した。この水酸化カルシウムの比表面積とCAAの測定結果を表1に示す。
【0046】
比較例2
消化水量を水酸化カルシウム当量の7.0倍と著しく過剰にしたこと以外は実施例1と同様にして水酸化カルシウムを製造した。この水酸化カルシウムの比表面積とCAAの測定結果を表1に示す。
【0047】
比較例3
何も溶解させてない水を消化機4に供給したこと以外は実施例1と同様にして水酸化カルシウムを製造した。この水酸化カルシウムの比表面積とCAAの測定結果を表1に示す。
【0048】
比較例4
消化機4に供給される消化水の水温を30℃と高い温度としたこと以外は実施例1と同様にして水酸化カルシウムを製造した。この水酸化カルシウムの比表面積とCAAの測定結果を表1に示す。
【0049】
比較例5
第1解砕機5及び第2解砕機7のいずれをも取り払ったこと以外は実施例1と同様にして水酸化カルシウムを製造した。この水酸化カルシウムの比表面積とCAAの測定結果を表1に示す。
【0050】
比較例6
乾燥機8の冷却塔10、11の運転を停止し、乾燥機8から150℃の乾燥物を取り出すようにしたこと以外は実施例1と同様にして水酸化カルシウムを製造した。この水酸化カルシウムの比表面積とCAAの測定結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
Figure 0003860630
【0052】
表1から明らかな通り、実施例1〜6によると比表面積が大きく、しかも活性度の高い(CAA値の低い)消石灰が得られる。一方、比較例1〜6にあっては、いずれも比表面積が小さく、活性度も低い(CAA値が高い)ことが認められる。
【0053】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によると著しく比表面積が大きく活性度の高い水酸化カルシウムを安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施するのに好適な消化装置の構成図である。
【符号の説明】
1 冷却装置
2 ラインミキサ
3 生石灰ホッパー
4 消化機
5,7 解砕機
6 熟成機
8 乾燥機

Claims (16)

  1. 消化機に酸化カルシウム及び水を供給して消化させ、前記消化機からの消化物を熟成機を通す水酸化カルシウムの製造法において、
    前記消化機に反応遅延剤を添加した25℃以下の水を酸化カルシウムの消化当量の2.5倍〜5.0倍で供給する工程と、
    前記消化機から取り出された消化物を解砕機で解砕した後、前記熟成機に供給する工程と、
    前記熟成機から取り出された熟成物を乾燥機に通して乾燥させる工程と、
    前記乾燥機から取り出される水酸化カルシウムが60℃以下となるように乾燥機内で冷却する工程と
    を含むことを特徴とする水酸化カルシウムの製造法。
  2. 請求項1において、消化機に供給される酸化カルシウムの粒径が2mm以下であることを特徴とする水酸化カルシウムの製造法。
  3. 請求項1において、消化機に供給される酸化カルシウムの粒径が150μm以下であることを特徴とする水酸化カルシウムの製造法
  4. 請求項において、前記反応遅延剤は糖類であることを特徴とする水酸化カルシウムの製造法。
  5. 請求項において、前記糖類はソルビットであり、消化機に供給される水のソルビット濃度が0.06〜12.0wt%であることを特徴とする水酸化カルシウムの製造法。
  6. 請求項1ないしのいずれか1項において、前記消化機は2軸あるいは多軸タイプの消化機であることを特徴とする水酸化カルシウムの製造法。
  7. 請求項1ないしのいずれか1項において、前記熟成機から取り出される熟成物を解砕機で解砕した後、前記乾燥機に供給することを特徴とする水酸化カルシウムの製造法。
  8. 請求項1ないしのいずれか1項において、前記乾燥機から取り出された乾燥物の比表面積が40m2/g以上であることを特徴とする水酸化カルシウムの製造法。
  9. 消化機に酸化カルシウム及び水を供給して消化させ、前記消化機からの消化物を熟成機を通す水酸化カルシウムの製造法において、
    前記消化機に反応遅延剤を添加した25℃以下の水を酸化カルシウムの消化当量の2.5倍〜5.0倍で供給する工程と、
    前記熟成機から取り出された熟成物を解砕機で解砕した後、乾燥機に供給し、前記乾燥機に通して乾燥させる工程と、
    前記乾燥機から取り出される水酸化カルシウムが60℃以下となるように乾燥機内で冷却する工程と
    を含むことを特徴とする水酸化カルシウムの製造法。
  10. 請求項9において、消化機に供給される酸化カルシウムの粒径が2mm以下であることを特徴とする水酸化カルシウムの製造法。
  11. 請求項9において、消化機に供給される酸化カルシウムの粒径が150μm以下であることを特徴とする水酸化カルシウムの製造法。
  12. 請求項9において、前記反応遅延剤は糖類であることを特徴とする水酸化カルシウムの製造法。
  13. 請求項12において、前記糖類はソルビットであり、消化機に供給される水のソルビット濃度が0.06〜12.0wt%であることを特徴とする水酸化カルシウムの製造法。
  14. 請求項9ないし13のいずれか1項において、前記消化機は2軸あるいは多軸タイプの消化機であることを特徴とする水酸化カルシウムの製造法。
  15. 請求項9ないし14のいずれか1項において、消化機から取り出された消化物を解砕機で解砕した後、前記熟成機に供給することを特徴とする水酸化カルシ ウムの製造法。
  16. 請求項9ないし15のいずれか1項において、前記乾燥機から取り出された乾燥物の比表面積が40m 2 /g以上であることを特徴とする水酸化カルシウムの製造法。
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