JP3859537B2 - 移動電源車 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両のシャーシ上に防音室を設け、その防音室内に発電機と、その発電機を駆動するエンジンとを収納した移動電源車に関するものである。特に、発電機の側方の壁面部分を内板と外板の二重板構造とし、その内板と外板との間を防音室外から防音室内へのエアー導入通路とした移動電源車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
移動電源車とは、シャーシ上の防音室内に載せた発電機により電気を車外に供給する手段を有する車両のことである。防音室は、トラックのシャーシ上に設けたもの、トラクタートレーラー形式のトラックのトレーラー部分のシャーシ上に設けたもの、ワンボックスカーの運転室より後ろ側のシャーシ上に設けたものなどがある。
【0003】
この移動電源車は、携帯電話、PHSの中継基地の非常時緊急電源、地上での航空機のエンジン停止時における電源供給手段、また、テレビ、ラジオなどの放送中継用電源や、屋外で行われる各種行事に用いる電源、及び屋内で行われる作業の常設電源に対する補強用電源などの目的で、短期使用型の電源を供給するために用いられている。
【0004】
このような移動電源車の発電機の駆動機関としては、ガスタービンエンジン、ガスエンジン、ジーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどを用いる。これらのエンジンは発生する騒音が大きいため、通常、上述の防音室はカバーで覆い、その騒音の低減を図った防音室としている。さらに、そのカバー内側にグラスウール等の吸音材を貼り付けて、カバーの遮音性能を向上させている場合が多い。
【0005】
その駆動機関の中でも、特に以下の理由からディーゼルエンジンが主に用いられている。
(1) ガソリンエンジンや、タービンエンジンに比べて丈夫であり寿命が長い。
(2) 2000rpm以下の低回転数におけるトルクが高く、4極以上の発電機と直結して使用することができる。
(3) 熱効率がよい等の理由から、他のエンジンに比べて燃費がよい。
(4) 通常燃料として使用される軽油又はA重油が安価で、その取り扱いが比較的容易である。
【0006】
なお、本発明に用いる「発電機」とは、JIS C 4004 (1992年度版)の用語の定義で定義されたものを示すが、通常は、界磁と電機子を有しそのどちらかが回転することにより、両者を相対運動させて発電する構造となっている。なお、燃料電池やナトリウム硫黄電池、鉛蓄電池などの電池類による発電装置と区別する場合は、回転型発電機ともいう。
また、界磁と電機子のうち回転する方を回転子といい、固定された方を固定子という。
【0007】
この発電機においては、エンジンの駆動動力により回転子が回転すれば、その回転速度に比例した周波数の交流が生じるが、その交流は、そのまま負荷に供給する場合と、周波数などを変換したり、整流したりして使用する場合がある。
移動電源車などの発電装置においては、瞬時にその負荷量が大きく変動する場合があり、そのような場合にエンジンは、その負荷量の変動に時間差なしにその馬力を変動させることは不可能であるため、結果としてどうしてもその時間差の分だけ、回転子の回転速度が変動してしまう。回転速度が変動すれは、それに比例して発電機の発生する周波数も変動する。
【0008】
この周波数の変動は、発電機の出力をそのまま負荷に供給する場合はもちろん負荷に影響するが、周波数などを変換したり、整流したりして使用する場合においても、負荷に供給する電気の周波数や電圧などの変動につながる。この周波数や電圧の変動が大きいと、負荷側の故障につながる場合や、目的の仕事を達成するに不都合となる場合がある。さらに、負荷量を急激に増やした場合には、エンジンの馬力が追従できなくなって発電機が停止してしまう場合もある。
【0009】
このような問題に対処するため、移動電源車によっては、サイズの大きな発電機を用い、その分回転子の長さや回転半径を大きくして、その慣性モーメントの増大により瞬時の負荷変動による発電機回転子の回転速度変動を押さえる方法が取られていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、移動電源車は、もともと商用電源の不備な場所、あるいは貧弱な場所に電力を供給する目的で製造されたものであり、山中の小道や街中の路地を通過した先の場所での使用を要求されることも時々ある。
このような場合には、より小型の車両からなる移動電源車が望ましい。
【0011】
これに対し、上述のように発電機の周波数変動を押さえるために発電機を大きくすれば、その分だけより大型の車両で移動電源車を製作しなければならず、そのため、山中の小道や街中の路地を通過することがより難しくなる。あるいは、規則上、通過を禁止される場合も出てくる。
そのため、負荷変動に対する発電機の周波数変動が小さく、しかも山中の小道や街中の路地を通過することが可能な移動電源車を製作するためにはこのような矛盾を克服する必要があるが、発明者らはこのような2つの要求を同時に満たすために新規の手段を着想し、本発明としたものである。
【0012】
従って、本発明が解決しようとする課題は、大きな負荷変動に対する発電機の周波数変動がより小さく、しかも山中の小道や街中の路地を通過することが可能な移動電源車を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
即ち、本発明に係る移動電源車は、車両のシャーシ上に設けられた防音室を設け、その防音室内に交流を発生させる発電機と、前記車両を駆動するエンジンとは別に前記発電機を駆動するエンジンを収納し、前記発電機の回転子を回転させ且つ発電機を駆動するエンジンの出力軸に、前記発電機の周波数変動を小さくすべく、前記発電機のケーシングの内側より大きい直径のフライホイールを取り付けた点にある。
【0014】
請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明の移動電源車のエンジンを正味平均有効圧力0.8MPa以上のジーゼルエンジンとしたことである。
【0015】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は請求項2にかかる発明の移動電源車の、発電機の側方の壁面部分を内板と外板の二重板構造とし、その内板と外板との間を防音室外から防音室内へのエアー導入通路としたことである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明の移動電源車の一実施形態について、図1から図4を用いて説明する。
図1は本実施形態の移動電源車の外観を示す斜視図であり、図中の一点鎖線Cは、従来の例による移動電源車の長さを示した線である。
本実施形態の移動電源車は、トラックのシャーシ4上に運転室4cとは独立した防音カバー1aを有する。この防音カバー1aの両側面には、それぞれ前後2枚の点検扉1cを有し、後部には発電装置操作用の扉1dを有する。それぞれの点検扉1cの下方には、外気を吸入するため、多数の吸気孔5aがあけられている。
【0017】
また、防音カバー1a上面には、油圧シリンダーにより開閉する天井蓋1bが取り付けられており、シャーシ4下側右側部には、トラック走行用と発電用の両方兼用の燃料タンク4aが取り付けられている。
図2、図3、図4はそれぞれ本実施形態の移動電源車の防音カバーを切断した部分切断側面図、部分切断水平面図、部分切断後面図である。なお、正面図は通常のトラックとほぼ同じなので省略した。また、各図面の切断位置についても省略した。
【0018】
防音カバー1a内は、車外に電力を供給するための発電ユニットAを収納する防音室1とその別室6で構成されている。発電ユニットAは発電機2と、その発電機2を駆動するため、その発電機2に直結されたディーゼルエンジン3とで構成されている。
また、シャーシ4下側左側部には、トラック走行用と発電装置運転用を兼用した蓄電池4bが取り付けられている。
【0019】
防音室1前側には、防音室の別室6に設置され、エンジン3の排気音を消音するマフラー6aと、エンジン3の排気をそのマフラー6aに送る排気管6bと、マフラー6aからの排気をトラック上方に排出する煙突6cが設けられている。エンジン3の前方には防音室1から別室6に通じる開口6dが開けられており、その開口6dにエンジン3の冷却水を冷却するラジエター3aが隣接して取付けられている。
【0020】
また、そのラジエター3a直後にはエンジン3に直結したラジエターファン3bが存在している。
発電機2後方には発電装置の制御機器を収納した制御盤2b、発電装置を監視操作する操作パネル2cと、発電機2からの電力を車外の設備等に供給するための端子板2aが取り付けられている。また、発電機2の上側には、防音室1に吸入された空気の一部をエンジン3の燃料の燃焼用空気としてエンジン3に吸入するためのエアークリーナー3cが設置されている。
【0021】
以上のようなエンジン発電ユニットAからは、さまざまな騒音が発生するが、その騒音を遮断するため、防音カバー1aの内側などにはグラスウールなどの吸音材1eが張り詰められている。この吸音材1eはその厚みが大きければ大きいほどその消音効果を発揮する。
【0022】
また、前述の吸気孔5aは、そのままではその孔から前記騒音が装置外に筒抜けとなるため、発電機2及びエンジン3の側方の壁面部分に存在する点検扉1cの大部分を内板5bと外板5cの二重板構造とし、その内板5bと外板5cとの間を防音室外から防音室内へのエアー導入通路5としている。
【0023】
より詳しくは、内板5bの両側部及び底部の全端部を側板5d及び底板5eで外板5cに連結し、エアー導入通路5を屈曲したダクト状としている。そして、外板5cの内側の外、内板5b、側板5d、底板5eの両面に吸音材1eを張り付け、吸気孔5aから出て行く騒音を低減している。そのため、本形態の移動電源車は、このエアー通路5形成のために、その横幅のうち多くを使用することとなる。
【0024】
図5はこのような実施形態の移動電源車の発電ユニットの部分破断側面図である。本発明においては、発電機2の回転子2dを回転させるための出力軸を構成するエンジン3のクランクシャフト3eの軸3f部分と回転子の軸2e部分の結合部分に、発電機2のケーシング2fの内径より大きい直径のフライホイール7を取り付けた。このフライホイール7はフライホイールハウジング7aの中に収められている。
【0025】
このフライホイール7は全周にわたり厚肉で慣性モーメントが大きいため、負荷変動に対する発電機2の瞬時における周波数変動がより小さくなった。たとえば、発電機の負荷を定格力率、75%負荷から20%負荷まで急に減じたり、その逆の場合の周波数変動がより小さくなった(代表的な負荷急変試験)。
【0026】
なお、ジーゼルエンジン3には、エンジン排気の勢いを用いて吸気側の空気を押し込むターボチャージャー3dが、吸気と排気の間に取り付けられている場合があるが、このような場合には、正味平均有効圧力が0.8MPa以上となる事が多い。
ここで正味平均有効圧力は次の数式により算出した値である。
【0027】
【数1】
Figure 0003859537
【0028】
ここに、Peは発電機定格出力時におけるエンジンの軸出力(kW):Vはピストンの総工程容積(リットル):nは回転速度(min−1(rpm)):Dはシリンダ内径(cm):Sはピストンの工程(m):Zはシリンダ数:Πは円周率:iは定数で4サイクルエンジンの場合は1/2,2サイクルエンジンの場合は1とする。ただし()内は単位である。
【0029】
エンジン3が、このような正味平均有効圧力0.8MPa(メガパスカル)以上のジーゼルエンジンの場合は、定格周波数で無負荷運転中に突然定格負荷を加えるとエンジンがそれに耐えられずに停止してしまうことが多い。
このような場合において、本発明に係るフライホイール7を使用することにより、定格周波数で無負荷運転中に突然加えることのできる負荷量を大きくすることもできるようになる。しかも、発電機2のサイズは、発電機2のケーシング2fの内径より小さい直径のフライホイールを取り付けた場合と同じであるため、移動電源車の大きさも同じで済むわけである。
【0030】
図6は従来の移動電源車の発電ユニットの部分破断側面図である。また、図7は、従来の移動電源車の防音カバーを切断した部分切断水平面図、図8は、同部分切断後面図である。
従来の発電ユニットBのフライホイール8aの直径は、ケーシング8fの内径より小さいのが通常であり、図6〜図8のように、発電機8のサイズを大きくして回転子8dを大きくし、その結果、負荷変動に対する発電機8の瞬時周波数変動を小さくしたものがあった。
【0031】
しかし、回転子8dは、その回りに巻線を巻くため、全周にわたり厚肉のウエイトとすることができず、回転子の軸8eから放射状に取り付けられるなどしている。そのため、回転子8dの慣性モーメントを増大させようとすると、発電機8のサイズをかなり大きくしなければならない。
【0032】
その結果、防音室9を大きくしなければならず、図7の場合は、防音室9及び防音カバー9aの長さが長くなり、制御盤8b及び操作パネル8cの位置が後側に延びた位置となる。図1の本発明にかかる移動電源車の後側に、従来の移動電源車の場合の車後端の位置を一点鎖線Cに示した。
また、図3及び図4のように本発明の移動電源車の場合には、発電機2の両横側に余裕がある。そのため、この部分にケーブル等を収納することができる。
【0033】
これに対し、図7及び図8のように、従来の移動電源車の場合は、発電機8の両横などにその余裕がない。
また、フライホイール7,8a部分を含むエンジン3の回りには、そのエンジン3からの熱放射があるため、もともとケーブル等の収納スペースにはできない。そのため、フライホイール7を大きくしても、ケーブル等の収納スペース減少にはつながらない。
【0034】
なお、発電機には、回転子の軸2e,8eに固定されたファン2g,8gが内蔵されており、このファンにより発電機後側からファンの方へ風を吸い込み中の巻線等を冷却するようになっている。そのための空気の通路は確保しておく必要がある。
以上、本発明の移動電源車における一実施形態について詳細に説明したが、本発明は、以上の形態以外にもその技術的思想を変更しない範囲で、種々の形態にして実現することができる。
【0035】
例えば、図3及び図4の移動電源車の発電機2の両横側の余裕を狭くして、幅の細い移動電源車としてもよい。また、、その余裕分を、エアー導入通路5の幅の拡大に使用して防音室1内へのエアー吸入量の増大に使用してもよい。
また、移動電源車の長さを図7の移動電源車並にし、その分を、複電圧出力仕様のためのトランスや電圧切替盤などのオプション設備スペースなどに充てても良い。
【0036】
【発明の効果】
請求項1にかかる発明によると、車両のシャーシ上に防音室を設け、その防音室内に発電機と、その発電機を駆動するエンジンとを収納し、前記発電機の回転子を回転させるための前記エンジンの出力軸に、前記発電機のケーシングの内径より大きい直径のフライホイールを取り付けたことを特徴とする移動電源車としたので、大きな負荷変動に対する発電機の周波数変動がより小さく、しかも、発電機の外径や長さを大きくしないで済む。
【0037】
そのため、幅及び高さが小さい車両からなるものとすることができるため、経済的な移動電源車とすることができるばかりでなく、山中の小道や街中の路地を通過することがより容易な移動電源車とすることができる。また、発電機の周囲に余裕が生じるので、その部分に変圧器や制御装置などのオプション装置、付属部品などを設置、収納することができる。
また、本発明は既存の移動電源車のうち発電機駆動用エンジンの出力軸部分に特徴があるのみなので、従来の移動電源車のうちその部分を改造するだけで、本発明の移動電源車とすることができる。従って、従来の移動電源車からの改造が容易であるという利点もある。
【0038】
請求項2にかかる発明によると、移動電源車のエンジンが正味平均有効圧力0.8MPa以上のジーゼルエンジンである場合に請求項1にかかる発明を適用することにより、請求項1の効果をより顕著に奏する移動電源車とすることができる。しかも、正味平均有効圧力が0.8MPa以上のジーゼルエンジンの場合は、負荷量を急激に増やした場合に、エンジンの馬力が追従できなくなって発電機が停止してしまう可能性が多分にあるが、本発明の移動電源車とすることにより、発電機停止に至らない負荷変動量を増大させることができる。
【0039】
請求項3にかかる発明によると、請求項1又は請求項2にかかる発明の移動電源車の発電機の側方の壁面部分を内板と外板の二重板構造とし、その内板と外板との間を防音室外から防音室内へのエアー導入通路としたので、請求項1又は請求項2の効果を奏する外、発電機の側方の余裕部分にエアー導入通路を設けるため、そのエアー導入通路を十分な大きさとすることができ、従ってエンジン吸気量不足などの問題がない。しかも、移動電源車の発電機の側方の壁面部分を内板と外板の二重板構造としたので、車外に発する騒音がたいへん少ない移動電源車となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる移動電源車の外観を示す斜視図。
【図2】本発明にかかる移動電源車の防音カバーを切断した部分切断側面図。
【図3】同部分切断水平面図。
【図4】同部分切断後面図。
【図5】本発明にかかる移動電源車の発電ユニットの部分破断側面図。
【図6】従来の移動電源車の発電ユニットの部分破断側面図。
【図7】従来の移動電源車の防音カバーを切断した部分切断水平面図。
【図8】同部分切断後面図。
【符号の説明】
A 発電ユニット
B 従来の発電ユニット
C 従来の移動電源車の長さを示す線
1 防音室
1a 防音カバー
1e 吸音材
2 発電機
2d 回転子
2e 回転子の軸
2f ケーシング
3 エンジン
3e クランクシャフト
3f クランクシャフトの軸
4 シャーシ
4c 運転室
5 エアー導入通路
5a 吸気孔
5b 内板
5c 外板
5d 側板
5e 底板
6 別室
7 フライホイール
7a フライホイールハウジング

Claims (3)

  1. 車両のシャーシ上に設けられた防音室を設け、その防音室内に交流を発生させる発電機と、前記車両を駆動するエンジンとは別に前記発電機を駆動するエンジンを収納し、前記発電機の回転子を回転させ且つ発電機を駆動するエンジンの出力軸に、前記発電機の周波数変動を小さくすべく、前記発電機のケーシングの内側より大きい直径のフライホイールを取り付けたことを特徴とする移動電源車。
  2. 前記エンジンは正味平均有効圧力0.8MPa以上のジーゼルエンジンである請求項1記載の移動電源車。
  3. 前記発電機の側方の壁面部分を内板と外板の二重板構造とし、その内板と外板との間を防音室外から防音室内へのエアー導入通路とした請求項1又は2記載の移動電源車。
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