JP3859503B2 - 地震被害発生推定方法および地震被害発生推定装置 - Google Patents

地震被害発生推定方法および地震被害発生推定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は地震被害発生推定方法および地震被害発生推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ガスや上下水道の配管網は一般に、一般家庭向けなどの燃料用ガスや水道水のような公共的資源を所定の地域内の需要家に対して確実に供給するために、その供給対象地域内に、あたかも人体における血管網のように複雑な形状のネットワーク状に設置されている。例えば都市ガスの配管網では、いわゆる導管はほぼ全体的に、ガス供給時業者が管轄している所定地域内の地下に埋設されており、一般に埋設管と呼ばれている。但し、少数ではあるが、部分的には導管が地上に露出している場所もある。
【0003】
このような配管網(換言すれば埋設管のネットワーク)では、地震が発生した場合、その地震の規模如何によっては、配管に破損が生じることもあり得るので、安全を確保できるように、そのときの地震に起因して配管に生じた被害状況を正確に把握することが必要である。
【0004】
そこで、従来の技術では、過去に地震が発生した際の配管の被害状況に関して現在までに得られている情報に基づいて、統計的に、地震に因る配管の「被災率」を求めるようにしていた。
【0005】
例えば、いわゆる神戸大震災が発生したときの、神戸阪神地区における配管網に生じた被害発生の状況を、配管の材質やバルブの品種などの観点から調査し、その情報を統計的に処理して、神戸大震災規模の地震が生じた場合などに配管網に生じる被害発生確率を予め定めておく。そして同様の規模の地震が生じた際には、その予め定められた被害発生確率に基づいて、地震に因る配管の被災率を求める。あるいは、さらに他の複数の既往地震における配管網の被害発生確率を調べ、それらのデータから統計的に、地震の規模と配管網の被災率との相関関係を求めておき、実際に地震が発生した際には、あらかじめ求めておいた相関関係に基づいて、そのとき発生した地震の規模に対応した配管網の被災率を求める。
【0006】
このように、従来の技術では、地震が発生した場合、その地震に起因した配管の被害の発生状況を、過去に報告されている地震とそれに因る被害に関する情報とに基づいて予め求めておいた統計的なデータから、「被災率」のような形で確率論的(あるいは統計的)に推測していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の技術では、地震が発生した際の配管の被災状況を、例えば「淡路地区における1970年に埋設された配管の破損確率は50%」というように、確率論的にしか推定することができない。このため、発生した地震に起因した配管の破損の有無を明確に把握することが困難である。
【0008】
さらに具体的には、実際に地震が発生した場合、配管は破損しているか破損していないかのどちらかの状態であって、例えば「配管の破損確率は50%」といった推定では、配管が破損しているか否かは実際上、不明である。このように、従来の技術では、破損の有無を明確に(2値的に)把握することができないので、安全を確保するための対処を確実かつ迅速に行うことは困難である。また、地震に起因して配管網のうちのどの位置に破損が生じているのかを正確に把握することができない。
【0009】
また、従来の技術では、過去に発生した地震(既往地震)に因る配管の被災に関するデータを統計的に処理して配管の破損確率を求めているため、既往地震の規模やそのときの配管の被災に関して、必ずしも全ての場合を網羅できるほど十分多量のデータが把握されているわけではなく、求められた破損確率の信頼性(確度あるいは確からしさ)が必ずしも十分ではない。また、地震対策のために地震発生時の配管の被災に関する情報の収集を本格的に開始したのは近年になってからであるため、配管の被災に関する情報(事例)の収集量は必ずしも十分なものとは言えないのが現状である。このため、従来の技術では、実際に地震が発生した際に推定される配管の破損確率の精度は、必ずしも高くない。
【0010】
例えば、近年では神戸大震災における配管の被災に関する情報が得られているので、この神戸大震災と同規模の地震が発生した場合には、比較的高い精度で配管の破損確率を求めることが可能であると考えられる。ところが、将来発生する地震は必ずしも神戸大震災の規模程度あるいはそれ以下のものとは限らないのであるから、例えば神戸大震災よりも大規模の(未曾有の)地震が発生した場合などには、実質的に正確な破損確率を得ることが困難である。
【0011】
また、上記のような従来の統計的な手法による配管の破損確率の推定方法の不都合を補完するために、地震が発生した際に配管網のうちの要所ごとを実際に掘り返すなどしてその位置の埋設管の状態を調べる、というような、いわゆる実地検分を行うことも考えられるが、実際には、地震が発生してからそのような埋設管を掘り返す作業を行っていたのでは、安全策を施す以前に手間が掛かってしまい、既に手遅れとなる場合が多く、安全を確保するための対処法としては不適格であることは言うまでもない。しかも、地震が発生した場合、交通や電話等による通信などのアクセスが遮断されてしまい、地震による被災の現況を調査しようとしても埋設管の位置にまで到達することさえできないという場合もある。このため、要所ごとの埋設管の状態を実地検分するといった手法は、地震が発生した場合には、実質的に役に立たないことが多い。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、地震が発生した際に、それがどのような規模の地震であっても、都市ガスや水道などの配管網における配管の破損の発生の有無、および破損が発生している場合にはその発生箇所を、具体的に高精度に推定することができる地震被害発生推定方法および地震被害発生推定装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明による地震被害推定方法は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動に関するデータと、配管の破損強度に関するデータと、所定地域に地震が発生した際に観測される地震動の大きさまたはその地震によって与えられる外力の大きさに関するデータとに基づいて、地震に起因した配管の破損の発生の有無を推定する、というものである。
【0014】
また、本発明による地震被害推定装置は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動に関するデータと、配管の破損強度に関するデータと、所定地域に地震が発生した際に観測される地震動の大きさまたはその地震によって与えられる外力の大きさに関するデータとに基づいて、地震に起因した配管の破損の発生の有無を推定する破損発生推定手段を備えている。
【0015】
すなわち本発明による地震被害推定方法または地震被害推定装置では、従来のような既往地震の大きさおよびそれに因って発生した配管の破損に関する統計的なデータに基づいて確率論的に配管の破損の発生を推定するのではなく、ガス導管のような配管が設けられている地盤の固有振動に関するデータ(TまたはL)と、その配管の破損強度に関するデータ(DcrまたはSIcrまたはUcrまたはFcr)と、その配管網が配設されている所定地域に地震が発生した際に観測(間接的計測を含む)される地震動の大きさまたはその地震によって与えられる外力の大きさに関するデータ(SIまたはUまたはF)とに基づいて、そのとき発生した地震に起因した配管の破損の発生の有無を推定する。しかもこのとき、所定地域に設けられた配管網をあらかじめ複数のセグメントに分けて掌握し、その各セグメントごとに、地震に起因した配管の破損の発生の有無を推定する。
【0016】
さらに詳細には、本発明による地震被害推定方法は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動周期または固有振動波長と配管の破損が生じる臨界変形量とに基づいて、配管に破損が発生する臨界の地震動値である臨界地震動値を求めておき、地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値と臨界地震動値とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を各セグメントごとに推定する。
【0017】
また、本発明による地震被害推定装置は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動周期または固有振動波長と配管の破損が生じる臨界変形量とに基づいて求められた、配管に破損が発生する臨界の地震動値である臨界地震動値を記憶する臨界値記憶手段と、所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値と臨界地震動値とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を各セグメントごとに推定する破損発生推定手段とを備えている。
【0018】
すなわち、本発明による地震被害推定方法または地震被害推定装置では、配管網における各セグメントごとで、それぞれ「地盤の揺れ易さ」のデータとして地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)のデータと、配管の破損が生じる臨界値として臨界変形量(Dcr)のデータとを用いて、臨界地震動値(SIcr)をあらかじめ求めておき、地震が発生した際に、その地震の地震動値(SI)と臨界地震動値(SIcr)とを比較して、各セグメントの配管に破損が発生したか否かを推定する。
【0019】
例えば、地震が発生した際に観測(間接的計測を含む;以下同様)された地震動値が、あるセグメントの臨界地震動値を超えた値であった場合には、そのセグメントの配管にはそのときの地震で破損が生じたものと推定し、地震動値が臨界地震動値以下の値であった場合には、破損が生じなかったものと推定する。または、安全率をより高く見積って、地震が発生した際に観測された地震動値が、あるセグメントの臨界地震動値以上の値であった場合には、そのセグメントの配管にはそのときの地震で破損が生じたものと推定し、地震動値がそのセグメントの臨界地震動値未満の値であった場合には、そのセグメントの配管にはそのときの地震で破損が生じなかったものと推定するようにしてもよい。
【0020】
あるいは、本発明による地震被害推定方法は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動周期または固有振動波長と配管の破損が生じる臨界変形量とに基づいて、配管に破損が発生する臨界の地震振幅である臨界地震振幅値を求めておき、地震が発生した際に、その地震で観測される地震振幅値と臨界地震振幅値とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を各セグメントごとに推定する。
【0021】
また、本発明による地震被害推定装置は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動周期または固有振動波長と配管の破損が生じる臨界変形量とに基づいて求められた、配管に破損が発生する臨界の地震振幅である臨界地震振幅値を記憶する臨界値記憶手段と、所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震振幅値と臨界地震振幅値とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を各セグメントごとに推定する破損発生推定手段とを備えている。
【0022】
すなわち、本発明による地震被害推定方法または地震被害推定装置では、配管網における各セグメントごとで、それぞれ地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)のデータと、配管の破損が生じる臨界値として臨界変形量(Dcr)のデータとを用いて、臨界地震振幅値(Ucr)をあらかじめ求めておき、地震が発生した際にその地震の振幅値(U)と臨界地震振幅値(Ucr)とを比較して、各セグメントの配管に破損が発生したか否かを推定する。
【0023】
あるいは、本発明による地震被害推定方法は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動周期または固有振動波長と配管の破損が生じる臨界応力値とに基づいて、配管に破損が発生する臨界の地震動値である臨界地震動値を求めておき、所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値と臨界地震動値とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を各セグメントごとに推定する。
【0024】
また、本発明による地震被害推定装置は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動周期または固有振動波長と配管の破損が生じる臨界応力値とに基づいて求められた、配管に破損が発生する臨界の地震動値である臨界地震動値を記憶する臨界値記憶手段と、所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値と臨界地震動値とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を各セグメントごとに推定する破損発生推定手段とを備えている。
【0025】
すなわち、本発明による地震被害推定方法または地震被害推定装置では、配管網における各セグメントごとで、それぞれ地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)のデータと、配管の破損が生じる臨界値として臨界応力値(Fcr)のデータとに基づいて、臨界地震動値(SIcr)をあらかじめ求めておき、地震が発生した際にその地震の地震動値(SI)と臨界地震動値(SIcr)とを比較して、各セグメントの配管に破損が発生したか否かを推定する。
【0026】
なお、上記のような本発明による地震被害推定方法または地震被害推定装置では、いわゆる地球物理学的な観点などに基づいて、地球上または上記のような配管網が設けられている所定地域において発生し得る(可能性のある)最大規模の地震の地震動値や地震振幅値よりも大きな臨界地震動値や臨界地震振幅値を有するセグメントについては、「恒常的に破損なし」、と予め推定しておくようにしてもよい。
【0027】
このようにすることにより、どのように大規模な地震が生じても配管の破損が生じることのないセグメントについては、実際に地震が発生した際の被害推定を省略することができ、延いては少なくともその分の情報処理の手間が簡略化される。
【0028】
本発明による他の地震被害推定方法は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地震が発生した際に想定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損強度に関するデータと、地震が発生した際に観測または推定される流動量に関するデータとに基づいて、発生した地震に起因した配管の破損の発生の有無を推定する、というものである。
【0029】
また、本発明による他の地震被害推定装置は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地震が発生した際に想定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損強度に関するデータと、地震が発生した際に観測または推定される流動量に関するデータとに基づいて、発生した地震に起因した配管の破損の発生の有無を推定する破損発生推定手段を備えている。
【0030】
すなわち、本発明による他の地震被害推定方法または地震被害推定装置では、地震が発生した際に想定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損強度に関するデータ(δcrまたはUcrまたはFcr)と、地震が発生した際に観測または推定される流動量に関するデータ(δまたはUまたはF)とに基づいて、発生した地震に因って引き起こされる地盤の流動化に起因した配管の破損の発生の有無を推定する。
【0031】
さらに詳細には、本発明による他の地震被害推定方法は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地震が発生した際に想定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損が生じる臨界変形量を求めておき、地震が発生した際に、その地震による地盤の流動化に起因して観測または想定される流動量と臨界変形量とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を各セグメントごとに推定する。
【0032】
また、本発明による他の地震被害推定装置は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに求められる、地震が発生した際に想定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損が生じる臨界変形量を記憶する臨界値記憶手段と、地震が発生した際に、その地震による地盤の流動化に起因して観測または推定される流動量と臨界変形量とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を各セグメントごとに推定する破損発生推定手段とを備えている。
【0033】
すなわち、本発明による他の地震被害推定方法または地震被害推定装置では、地震が発生した際に想定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管に破損が生じる臨界変形量(δcr)と、地震に因って引き起こされる地盤の流動化に起因して観測または想定される流動量(δ)とを比較して、そのときの地震に因る配管の破損の発生の有無を推定する。しかもこのとき、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けてその各セグメントごとに個別にデータを掌握して、その各セグメントごとに、発生した地震に因る配管の破損の発生の有無を推定する。
【0034】
例えば、発生した地震によって観測または想定される流動量(δ)が配管の臨界変形量(δcr)を超えた値である場合には、配管が破損したものと推定し、流動量(δ)が配管の臨界変形量(δcr)以下の場合には、配管には破損が生じていないものと推定する。または、安全率をより高く見積って、流動量(δ)が臨界変形量(δcr)以上の値である場合には、配管が破損したものと推定し、流動量(δ)が配管の臨界変形量(δcr)未満の場合には、配管には破損が生じていないものと推定するようにしてもよい。
【0035】
あるいは、本発明による他の地震被害推定方法は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地震が発生した際に想定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損が生じる臨界変形量を求めておき、所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値または地震振幅値に基づいて、地震による地盤の流動化に起因した流動量を推定し、その流動量と臨界変形量とを比較して、そのときの地震に起因した配管の破損の発生の有無を各セグメントごとに推定する。
【0036】
また、本発明による他の地震被害推定装置は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに求められる、地震が発生した際に想定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損が生じる臨界変形量を記憶する臨界値記憶手段と、地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値または地震振幅値に基づいて、そのときの地震による地盤の流動化に起因した流動量を推定し、その流動量と臨界変形量とを比較して、地震に起因した配管の破損の発生の有無を各セグメントごとに推定する破損発生推定手段とを備えている。
【0037】
すなわち、本発明による他の地震被害推定方法または地震被害推定装置では、地震が発生した際に想定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管に破損が生じる臨界変形量(δcr)を求めておき、地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値(SI)または地震振幅値(U)に基づいて、その地震に因って引き起こされる地盤の流動化に起因して生じる流動量(δ)を推定し、その流動量(δ)と配管の臨界変形量(δcr)とを比較することで、そのときの地震に因る配管の破損の発生の有無を推定する。
【0038】
なお、本発明による他の地震被害推定方法または地震被害推定装置では、配管網の配管のうち、地盤の流動化の影響を実質的に受ける護岸から所定距離内にある配管を有するセグメントに対してのみ、地盤の流動化に起因した配管の破損の発生の有無の推定を行うようにしてもよい。
【0039】
すなわち、護岸から所定距離以内(例えば護岸から100メートルの距離以内のような)では、他の地勢の場所と比較して地盤の流動化に起因して発生する地盤の流動量(δ)が特に大きいことを、本発明者らは確認した。そこで、特にそのように地盤の流動化が発生しやすい傾向のある場所を、地盤の流動化に起因した配管の破損が生じやすい要注意箇所として注目し、そのような条件に当てはまるセグメントについて特に重点的に地盤の流動化に起因した配管の破損の発生の有無の推定を行い、地盤の流動化の発生する確率の低い、その他のセグメントに関しては、地盤の流動化に起因した破損の発生の有無の推定を省略するようにしてもよい。
【0040】
このようにすることにより、地盤の流動化の発生する確率の低いセグメントについては、実際に地震が発生した際の地盤の流動化に起因した被害推定を省略することができ、延いては少なくともその分の情報処理の手間が簡略化される。
【0041】
また、地盤の流動化に起因した流動量(δ)として、護岸に対して直交方向の流動量を推定し、かつ配管に破損が生じる臨界変形量(δcr)を護岸に対して直交方向に取るようにしてもよい。
【0042】
すなわち、上記のような護岸から所定距離以内で生じる地盤の流動量(地盤の流動化に起因した地盤の水平方向変形量)は、殆どの場合、護岸の岸壁に対して直交方向に最も顕著に生じるので、そのような護岸に対して直交方向での地盤の流動量(δ)と、それと同方向での配管の臨界変形量(δcr)とを比較して、地盤の流動化に起因した破損の発生の有無の推定を行うことが望ましい。
【0043】
ここで、上記の地震被害推定方法または地震被害推定装置においては、配管網を、配管の接続形態に着目した所定の分類法に則して個々のセグメントに離散化して掌握し、その個々のセグメントごとに、地震に起因した配管の破損の発生の有無の推定を行うようにすることも望ましい。
【0044】
さらに詳細には、そのような分類法としては、配管の接続形態を構造力学的およびトポロジー的な観点に基づいて、所定の長さ以上の直線型、屈曲を有する曲管型、途中に分岐を有するT字型の、少なくとも3種類に分類するものとし、この分類法に基づいて、配管網を個々のセグメントに分けて考えることなどが有効である。但し、このような分類法のみには限定されないことは言うまでもない。この他にも、例えば、直線部、曲管部、T字型分岐部、H字型分岐部の4種類に分類することなども可能である。あるいはさらに詳細に、上記の分類に加えてバルブの有無をも含めた分類法なども可能である。
【0045】
また、上記の地震被害推定装置では、臨界値記憶手段が、各セグメントごとに、所定地域内におけるそのセグメントの地理的な位置に関するデータとそのセグメントに関する臨界地震動値のデータとを対応付けて予め記憶しておき、破損発生推定手段が、地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値と臨界地震動値とを比較して、その地震に起因した配管の破損がどの位置のセグメントに発生したかを推定するようにしてもよい。
【0046】
また、上記の他の地震被害推定装置では、臨界値記憶手段が、各セグメントごとに、そのセグメントの地理的な位置に関するデータと地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損が生じる臨界変形量とを対応付けて予め記憶しておき、破損発生推定手段が、地震が発生した際に、その地震で観測または推定される流動量と臨界変形量とを比較して、その地震に起因した配管の破損がどの位置のセグメントに発生したかを推定するようにしてもよい。
【0047】
そしてさらに、所定地域内の配管網の地図を画面に表示すると共に、破損発生推定手段によって推定された破損発生位置を地図中に表示する、破損発生位置表示手段を備えるようにしてもよい。このようにすることにより、実際に地震が発生した際に、所定地域内の配管網の地図中に、配管の破損が発生したことが推定される箇所を自動的に表示して、地震に起因して配管網中に生じた破損箇所をユーザーに対して一目瞭然に提示することができる。
【0048】
なお、本発明による地震被害推定方法および地震被害推定装置は、上記の配管網として、都市ガスの配管網や上・下水道の配管網などに適用可能である。あるいはその他にも種々の配管網に適用可能であることは言うまでもない。
【0049】
ここで、上記の解決手段の説明文中の( )内に示したSI,δ,U等の記号は、それぞれ地震動値、地盤の流動量、地震振幅値等を示すもので、その各物理量の明確な定義および具体的な内容については、以下に述べる実施の形態中に詳述してある。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0051】
図1は、本発明の一実施の形態に係る地震被害推定装置の概要構成を表したものである。なお、本発明の実施の形態に係る地震被害推定方法は、この地震被害推定装置の動作あるいは作用によって具現化されるものであるから、以下、それらを併せて説明する。
【0052】
この地震被害推定装置は、所定地域に設けられている都市ガスの配管網について、その地域に地震が発生した際の配管の被害状況(配管の破損発生の有無およびその位置)を推定するもので、臨界値記憶部(臨界値記憶手段)100と、破損発生推定部(破損発生推定手段)200と、破損発生位置表示部(破損発生位置表示手段)300とから、その主要部が構成されている。
【0053】
臨界値記憶部100は、例えば関東地域ほぼ全域のような所定地域内に網目状に張り巡らされた配管網を、例えば所定の大きさのメッシュ状に区切って複数のセグメントごとで分割掌握するようにして、その各セグメントごとに、識別番号(N=1,2,3…)を付して、地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)と配管の破損が生じる臨界変形量(Dcr)とに基づいて予め求められた、そのセグメント内の配管に破損が発生する臨界の地震動値である臨界地震動値(SIcr)のデータと、地震が発生した際の地盤の流動化に起因した流動方向で配管に破損が生じることが予め推定される流動臨界変形量(δcr)のデータと、そのセグメントが所定地域における地図上のどの位置に存在しているのかについてのデータ((x,y);例えば直交座標のデータ)とを、対応付けて記憶している。またこの臨界値記憶部100は、配管網が配設されている地域の地図および配管網を破損発生位置表示部300の表示デバイス302の画面に表示するためのデータ等も記憶している。
【0054】
例えば、第nセグメント(N=n)について、その第nセグメントの地図中での位置のデータが(x,y)、地盤の固有振動周期がT、固有振動波長がL、臨界変形量がDcr、流動臨界変形量がδcrである場合、臨界値記憶部100には、第nセグメントのデータとして、{N=n,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr}という最大7種類のデータが一纏まりにして記憶されている。このデータは、臨界値記憶部100から読み出される際にも、上記のように{N,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr}という一纏まりの状態で取り扱われる。なお、地震が発生した際に用いるデータが実質的にn,(x,y),SIcr,δcrの4種類のデータである場合には、それ以外の用いられないデータであるT,L,Dcrについては、例えばバックデータとして別途に保持しておき、臨界値記憶部100には{n,(x,y),δcr,SIcr}というデータを一纏まりの状態で記憶させておくようにしてもよい。このようにすることにより、記憶や読み出しの対象となるデータ量の低減化を図ることができるので望ましい。
【0055】
配管網を複数のセグメント(N=1,2,3…)に分ける際の分割法としては、例えば1辺が0.5[km]の正方形のメッシュを想定し、そのメッシュによって配管網が張り巡らされている所定地域を区分けして、その個々のメッシュごとを各セグメントとして取り扱うことなどが可能である。そして各セグメントの例えば中心点あるいは図心の位置などを、地図中でのそのセグメントの位置のデータ(x,y)とすることが可能である。
【0056】
ここで、メッシュの1辺の寸法を小さくすればするほど、位置的な精度は高くなるが、セグメントの個数が多くなってデータ処理の手間などが繁雑化する傾向にある。逆に、メッシュの1辺の寸法を大きくすればするほど、セグメントの個数が少なくなってデータ処理の手間などは簡易化するが、位置的な精度が低くなる傾向にある。従って、位置的な精度とセグメントの個数の多さとの兼ね合いを考慮して、メッシュの寸法を適切な大きさに設定することが望ましい。また、地図や破損発生位置を表示する表示デバイス302の画面の表示解像度に対して余りにも微細な表示寸法となってしまうような細かい寸法にメッシュを設定することは無意味であるから、そのような表示デバイス302の解像度なども考慮に入れることが望ましい。
【0057】
あるいは、詳細は後述するが、配管の接続形態(構造力学的および幾何学的な配管形状)に着目して、配管網を、直線の部分と、屈曲の部分と、T字型に分岐した部分とに分類するといった分類法に基づいて細分化(離散化)し、その個々の部分をそれぞれ各セグメントとして取り扱うようにしてもよい。この場合にも、各セグメントの例えば中心点あるいは図心の位置などを、地図中でのそのセグメントの位置のデータ(x,y)として用いればよい。
【0058】
地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)のデータは、配管網が配設されている所定地域内の地盤の要所ごとにボーリング調査を行って得ることができる。例えば、管理対象の地域として首都圏の東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県における、ガス導管が設けられている要所ごとの地盤について、合計数万箇所を実地にボーリング調査して、それらの各地点の実測値を得ることなどが可能である。あるいは、その配管が配設されている地域の地盤に関する既存の(過去に調査済みの)データを利用してもよいことは言うまでもない。
【0059】
ここで、地震とは地盤の振動現象であるから、地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)のうちの一方のデータが得られたならば、そのデータに基づいて他方のデータについても算出することができる。従って、両者のうち少なくともいずれか一方のデータを実地調査によって得ればよい。但し、実地で調査した実測値を直接に地盤のデータとして用いる方が、実測値に基づいて算出された値(あるいは間接計測値)のデータを用いるよりも、データとして高精度であることが期待できるという点からすれば、より望ましいものであることは言うまでもない。
【0060】
地震の直接的な振動力(破壊力)による臨界変形量(Dcr)のデータ、および地震によって引き起こされる地盤の流動化に因る流動臨界変形量(δcr)のデータは、それぞれ、各セグメントごとの具体的な配管に関する種類(例えば都市ガスの配管網の場合、溶接接合鋼管、ダクタイル鋳鉄管、ねずみ鋳鉄管等)、口径(内径)、材質、その他の仕様(例えば補強処置済み/未着手など)等の各種データに基づいて配管の強度解析を行って求めることができる。
【0061】
あるいはさらに、配管の強度解析結果等に基づいて、臨界変形量(Dcr)のデータや流動臨界変形量(δcr)のデータを算出し、そのデータを既往地震の事例調査によって得られた被害事例のデータ等の情報に基づいてキャリブレーションするなどして、データのさらなる高信頼化を図るようにしてもよい。
【0062】
さらに具体的には、臨界変形量(Dcr)、流動臨界変形量(δcr)は、どちらも本質的に配管やバルブの構造力学的な強度に関する数値(許容応力あるいは許容変位などの物理量)である。従って、地震の振動による破壊力が外力として配管網に加えられた際の、配管やバルブの構造力学的な強度解析あるいは破壊実験を行うことで、理論的または実験的に、精確な臨界変形量(Dcr)および流動臨界変形量(δcr)の値を求めることができる。
【0063】
その際の配管やバルブの構造力学的強度の解析手法それ自体については、例えば、ある一つのセグメント内の配管を、所定の金属材料からなる筒状構造と見做して、その筒状構造に対して有限要素法による強度解析を行うなどして、臨界変形量(Dcr)や流動臨界変形量(δcr)を求めることができる。
【0064】
あるいは、配管の接続形状を考慮に入れて、一つのセグメント内の配管を、直線の部分と、屈曲(曲管)の部分と、T字型に分岐した部分とに分類するなどして、その個々の種類ごとでそれぞれ別個に臨界変形量を求めた上で、それらのうちの最小の値を、そのセグメントにおける臨界変形量(Dcr)のデータとして採用することなども可能である。また流動臨界変形量(δcr)についても同様に、一つのセグメント内の配管を、上記のように接続形状に基づいて細かく分類し、その個々の種類ごとで個別に流動臨界変形量を求めた上で、それらのうちの最小の値を、そのセグメントにおける流動臨界変形量(δcr)のデータとして採用することが可能である。
【0065】
上記のようにして求められた臨界変形量(Dcr)の値と、そのセグメントにおける地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)の値とに基づいて、臨界地震動値(SIcr)または臨界地震振幅値(Ucr)が求められる。
【0066】
さらに詳細には、図2に一例を示したように、ある配管の臨界変形量(Dcr)に対して、その配管に破損が生じはじめる臨界の地震振幅値(あるいは許容地震振幅値)である臨界地震振幅値(Ucr)が一義的に定まるが、このとき配管が埋設されている地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)の値によって、臨界変形量(Dcr)と臨界地震振幅値(Ucr)との対応関係を示すグラフ(曲線)は異なったものとなることが確認されている。これは換言すれば、一般に1つの配管に関して、その配管の臨界変形量(Dcr)と、その配管が埋設されている地盤の固有振動周期T)または固有振動波長(L)との、2つの変数に対して、1つの臨界地震振幅値(Ucr)が定まるという関数関係(すなわちF(Dcr,T or L)=Ucr)が成り立っているということである(すなわちFを関数とすると、F(Dcr,TまたはL)=Ucr)。
【0067】
従って、例えばあるセグメントにおける配管の臨界変形量がDcr、その配管が埋設されている地盤の固有振動周期がT=0.7[s](このときL=200[m])である場合には、そのセグメントにおける臨界地震振幅値の値Ucrは、図2に示したように、T:0.7[s](L:200[m])の場合の曲線に基づいて求めることができる。あるいは、例えば地盤の固有振動周期がT=1[s](このときL=400[m])の場合には、図2中に示したようなさらに緩やかな単調増加を示す曲線に基づいてUcrの値を求めることができる。
【0068】
ここで、地震は地盤の振動現象であるから、臨界地震振幅値(Ucr)と臨界地震動値(SIcr)との間には、SIcr=2π・Ucr/Tなる式で表される関係が成り立っている。従って、この関係式を用いて、上記のようにして得られた臨界地震振幅値(Ucr)から、臨界地震動値(SIcr)を求めることができる。このようにして得られた臨界地震動値(SIcr)は、最終的に、破損発生推定部200によって、地震に起因した配管の破損の有無を推定する際に用いられる。
【0069】
あるいは、臨界地震振幅値(Ucr)を用いて配管の破損の有無を推定するように破損発生推定部200が設定されている場合には、上記のようにして求めた臨界地震振幅値(Ucr)を直接に用いればよく、従ってこの場合には、臨界地震振幅値(Ucr)に対応した臨界地震動値(SIcr)の算出は省略してもよいことは言うまでもない。
【0070】
ここで、近年では、地震で観測される地震動値(SI)のデータは、他の種類のデータと比べて、観測および入手することが容易で、かつ配管に掛かる外力を算出するのに極めて好適なものとなっている。従って、このようなデータの入手や取扱が簡便であるという点で、臨界地震動値(SIcr)を予め求めておき、その臨界地震動値(SIcr)と地震発生時に観測された地震動値(SI)とを、破損発生推定部200で比較するように設定することが望ましい。
【0071】
一方、流動臨界変形量(δcr)のデータについては、全てのセグメントあるいは全ての配管に対して流動臨界変形量を求めておくようにしてもよいが、地震に因る地盤の流動化が発生したときに実質的に配管の破損を引き起こすような流動量が生じるのは、実際には護岸の付近に限られており、しかもその護岸付近での流動化による地盤の変位は護岸線に対してほぼ直交方向であることが多いということを、本発明者らは確認している。従って、例えば護岸から100[m]以内の領域に位置している配管またはそのような配管を有しているセグメントのみを、破損発生推定の対象として取り扱うものとし、その他の配管またはセグメントについては、流動臨界変形量(δcr)のデータの記憶やそれに基づいた破損発生の推定動作などは行わない(省略する)ようにしてもよい。このようにすることにより、少なくともその省略した分のデータ量やデータ処理を簡略化することができるという利点が得られる。
【0072】
また、流動臨界変形量(δcr)の推定は、流動化に起因して地盤の変位が最も発生しやすい方向である護岸線に対してほぼ直交方向から配管に対して外力が加えられた場合を想定した配管の構造力学的な強度解析等を行うことによって求めることが望ましいことは言うまでもない。
【0073】
また、この流動臨界変形量(δcr)のデータを求める際にも、臨界変形量(Dcr)の場合と同様に、直線型、曲管型、T字型等のような配管の接続形態に着目した分類法に則して配管網を複数のセグメントに離散化して考えて、その個々のセグメントごとに強度解析等を行うようにしてもよい。
【0074】
あるいはさらに、このようにして流動臨界変形量(δcr)のデータを求めておき、この流動臨界変形量(δcr)を生じさせる流動臨界地震動値(SIcr´)または流動臨界地震振幅値(Ucr´)を、例えば成り立つことが既に確認されている地震動値と流動量との間の相関関係あるいは関係式に基づいて算出しておき、その流動臨界地震動値(SIcr´)または地震振幅値(Ucr´)を、実際に地震が発生した際に観測される地震動値(SI)または地震振幅値(U)と比較するように設定してもよい。
【0075】
但し、これのみには限定されないことは言うまでもなく、この他にも、地震が発生した際に実際に生じた流動量(δ)を、例えば地上探査衛星から撮影した護岸付近の映像または画像データあるいは護岸付近に設けられた地盤流動量計測用の変位センサなどによって観測(実測)し、その観測された流動量の値δと流動臨界変形量の値δcrとを比較するようにしてもよい。
【0076】
破損発生推定部200は、SI比較判定部201と、δ比較判定部202とを備えている。SI比較判定部201は、地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値(SI)と、各セグメントごとの臨界地震動値(SIcr)とを比較して、そのとき発生した地震に起因してどの位置のセグメントに配管の破損が生じたかを推定する。またδ比較判定部202も同様に、地震が発生した際、その地震で観測または推定される流動量(δ)と各セグメントまたは所定のセグメントごとの流動臨界変形量(δcr)とを比較して、そのときの地震に因る地盤の流動化に起因してどの位置のセグメントに配管の破損が生じたかについてを推定する。
【0077】
さらに詳細には、配管網が配設されている地域に地震が発生した際に、その地震で観測された地震動値(SI)が破損発生推定部200に入力されると、破損発生推定部200のSI比較判定部201では、臨界値記憶部100に記憶されている全てのセグメントに関するデータ{N,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr;N=1,2,3…}を読み出し、その個々のセグメントごとに、地震動値(SI)と臨界地震動値(SIcr)とを比較して、地震動値(SI)が臨界地震動値(SIcr)以上である(SIcr≦SI)セグメントには破損が生じているものと判定して、そのセグメントの位置のデータを破損発生位置表示部300へと送出する。しかし地震動値(SI)が臨界地震動値(SIcr)未満である(SIcr>SI)場合には、そのセグメントには破損が生じていないものと判定する。このときそのセグメントの位置のデータは送出されない。
【0078】
また、配管網が配設されている地域に地震が発生した際に、その地震に因る地盤の流動化に起因して護岸から所定距離内の領域に生じたことが観測された流動量(δ)の値が、破損発生推定部200に入力されと、この破損発生推定部200のδ比較判定部202では、臨界値記憶部100に記憶されている全てのセグメントのうちから、前述の護岸から所定距離内の領域の配管を有するセグメントのデータを選択して読み出し、その読み出された個々のセグメントごとに、流動量の値δと流動臨界変形量の値δcrとを比較して、流動量(δ)が流動臨界変形量(δcr)以上の値である(δcr≦δ)セグメントには破損が生じているものと判定して、そのセグメントの位置のデータを破損発生位置表示部300へと送出する。しかし流動量(δ)が流動臨界変形量(δcr)未満(δcr>δ)である場合には、そのセグメントには破損が生じていないものと判定する。
【0079】
なお、上記のような地震が発生した際に観測される地震動値(SI)や流動量(δ)のデータの入力は、例えばユーザーが観測結果を手入力するように設定してもよく、あるいは地震を観測している関係機関によって送られて来た観測値のデータを自動的に入力するように設定してもよいことは言うまでもない。
【0080】
ここで、例えば200[kine]以上のような、所定地域内で発生する可能性のある最大規模の地震に対応した地震動値(SImax )よりも大きな臨界地震動値(SIcr>SImax )を有するセグメントについては、そのような最大級の地震に対しても耐震的であるということであるから、「恒常的に破損なし」と予め推定しておくようにしてもよい。あるいは臨界地震動値(SIcr)の代りに臨界地震振幅値(Ucr)を用いる場合にも同様に、発生する可能性のある最大規模の地震に対応した地震振幅値(Umax )よりも大きな臨界地震振幅値(Ucr>Umax )を有するセグメントについては、「恒常的に破損なし」と、予め推定しておくようにしてもよい。
【0081】
このように十分な強度(SIcrまたはUcr)を備えた配管については「恒常的に破損なし」と予め決定しておくことにより、少なくともその分は地震動値(SI)と臨界地震動値(SIcr)との比較の手間(それに要する時間およびデータ処理)を省略することが可能となり、延いては地震被害推定方法のさらなる簡易化およびそれに要するデータ処理量のさらなる低減化を達成することができるので望ましい。
【0082】
また、地盤の流動化に起因した破損についても同様に、例えば5[m]以上のように、配管網が設けられている所定地域内の護岸付近で発生する可能性のある最大の流動量(δmax )よりも大きな流動臨界変形量(δcr>δmax )を有するセグメントについては、そのような最大級の流動化が生じても破損しないということなのであるから、「恒常的に破損なし」と予め推定しておくようにしてもよい。なお、上記のSImax =200[kine]やδmax =5[m]などの値については、一例として掲げたものであって、実際には、このような数値のみに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0083】
そしてこのように「恒常的に破損なし」と推定されたセグメントについては、地震動値や流動量に基づいた地震被害推定を行う必要が無い旨を示す情報(例えばフラグ)を、そのセグメントに関する一纏まりのデータ{n,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr}の中に付記して臨界値記憶部100に記憶させておくようにすればよい。
【0084】
破損発生位置表示部300は、データ処理回路301と表示デバイス302とを、その主要部として備えている。この破損発生位置表示部300では、地震が発生した際、その地震に因る地震動または地盤の流動化によって配管に破損が生じているものと判定されたセグメントの位置のデータが破損発生推定部200から送られて来ると、データ処理回路301が、送られて来たセグメントの位置のデータ(x,y)と配管網が設けられた地域全体の地図のデータとに基づいて、表示デバイス302によって表示される地図中に破損が発生していることが推定される位置を例えばピンポイントに示すための表示データを作成する。
【0085】
表示デバイス302は、例えばカラー表示が可能な液晶表示装置などを用いて、その表示画面に、所定地域全体の地図の画像と、その中にピンポイントに示される破損発生位置の画像とを、合成して表示する。例えば地図全体の地の色を緑色とし、配管網を例えば圧力等級別などに分類して、その分類ごとに黄色や青のような異なった色で示すようにしておく。そして、そのような地図中に、地震が発生した際に配管の破損が発生したと推定される位置を、例えば赤色のような目立つ警戒色で表示する。さらには、その配管破損が発生した位置の警戒色のピンポイントの表示を点滅させるようにしてもよい。あるいは、破損が発生していることが推定されるセグメントを面的に(そのセグメントを他のセグメントとは異なる色で塗り潰して)示すようにすることなども可能であることは言うまでもない。なお、地震動に因る破損発生位置と、地盤の流動化に因る破損発生位置とを、異なった色や点滅状態で表示するなどして、破損の発生位置と共に、その破損の発生要因を一目瞭然で判別できるようにしてもよい。
【0086】
次に、本実施の形態に係る地震被害発生推定装置の主要な動作について説明する。図3は、その主要な動作の流れを表したものである。
【0087】
地震が発生すると、その地震で観測された地震動値(SI)および護岸付近の所定領域における流動量(δ)が破損発生推定部200に入力される(S1)。またその一方で、臨界値記憶部100に記憶されている各セグメントのデータが読み出されて破損発生推定部200に入力され(S2)、地域全体の地図のデータが読み出されて破損発生位置表示部300に入力される(S3)。このとき、予め「恒常的に破損なし」と判定されているセグメントに関しては、そのセグメントのデータは読み出さないようにしてもよい(図示省略)。
【0088】
そして破損発生推定部200では、各セグメントの臨界地震動値(SIcr)をそれぞれ地震動値(SI)と比較する(S4)。その結果、臨界地震動値(SIcr)が地震動値(SI)よりも大きい場合(SIcr>SI)には(S4のN)、そのセグメントには配管の破損が生じていないものと判定する(S5)。しかし臨界地震動値(SIcr)が地震動値(SI)以下である場合(SIcr≦SI)には(S4のY)、そのセグメントには地震動に因る配管の破損が生じているものと判定して(S6)、そのセグメントの位置のデータを破損発生位置表示部300に送出する(S7)。
【0089】
地盤の流動化による破損発生の推定についても同様に、破損発生推定部200は、各セグメントの流動臨界変形量(δcr)をそれぞれ流動量(δ)と比較する(S8)。このとき、予め「恒常的に破損なし」と判定されているセグメントに関しては、そのセグメントのデータは読み出さないようにしてもよい(図示省略)。あるいは、護岸から所定距離内の領域の配管を有するセグメントのデータのみを抽出して読み出し、それ以外のセグメントのデータは読み出さないようにしてもよい(図示省略)。
【0090】
そしてその比較の結果、流動臨界変形量(δcr)が流動量(δ)よりも大きい場合(δcr>δ)には(S8のN)、そのセグメントには配管の破損が生じていないものと判定する(S9)。しかし流動臨界変形量(δcr)が流動量(δ)以下である場合(δcr≦δ)には(S8のY)、そのセグメントには流動化に因る配管の破損が生じているものと判定して(S10)、そのセグメントの位置のデータを破損発生位置表示部300に送出する(S7)。
【0091】
続いて、配管の破損が生じているものと判定されたセグメントの位置のデータを破損発生位置表示部300が受けると、データ処理回路301が、送られて来たセグメントの位置のデータ(x,y)と配管網が設けられた地域全体の地図のデータとに基づいて、表示デバイス302によって表示される地図中に破損発生位置をピンポイントに示すための表示データを作成する(S11)。そしてその表示データに基づいて、表示デバイス302の画面上に、所定地域全体の地図とその中での破損が発生していることが推定される位置とを合成して表示する(S12)。
【0092】
例えば、ある地域における配管の形状ごとで臨界地震動値(SIcr)が図4(A)に一例を模式的に示したような分布状態となっている場合、この地域に地震動値SI=100[kine]の地震が発生したときには、図4(B)に示したように、臨界地震動値がSIcr=90[kine](すなわちSIcr=90<SI=100)であるバルブの部分に破損が発生すると推定され、この部分が破損発生位置としてピンポイントに表示される。図4(B)では、この部分を×印で示している。
【0093】
このようにして、本実施の形態に係る地震被害発生推定装置によれば、配管網が設けられている所定地域内の地図中で配管の破損発生位置を例えばピンポイントで表示することにより、ユーザーは、配管の破損が所定地域内のどの位置に発生しているかを、確率論的あるいは統計的ではなく、一目瞭然に、かつ精確に、リアルタイムで確認することができる。
【0094】
ところで、臨界地震動値(SIcr)または臨界地震振幅値(Ucr)や流動臨界変形量(δcr)のデータを得るために配管の構造力学的な強度解析を行う際などに、配管の接続形態に着目して、直線の部分(直線型)と、屈曲した部分(曲管型)と、T字状に分岐した部分(T字型)の3種類、あるいはさらにそれに加えて、T字型の分岐部が近接して接続されている形状であるH字型の部分(H字型)との、4種類に配管網を分類するといった分類法に基づいて、配管網の形状を細分化(離散化)して考え(分掌し)、その離散化した個々の部分ごとに、それぞれ各セグメントとして取り扱うという、配管網を離散化して解析する手法が有効であることは既に述べた通りであるが、これについて、ここでさらに詳細に説明する。
【0095】
図5(A)に一例を示したような形状の配管網について、上記のような分類法配によって離散化して分掌する手法を適用した場合、図5(B)に示したような各単位要素に離散化することができる。このようにして離散化された各単位要素について、それぞれの接続形状に対応した構造力学的な強度解析を個別に(各単位要素ごとで独立して)行って、臨界地震動値(SIcr)または臨界地震振幅値(Ucr)のデータや流動臨界変形量(δcr)のデータを得ることができる。その個々の単位要素の導管(例えば円筒形状の構造として)やバルブ(例えばフランジ付き円筒形状の構造として)の材料力学的あるいは構造力学的な強度解析については、例えば有限要素法を用いて行うようにしてもよく、あるいは強度試験を行うなどして実験的に強度を確認してもよいことは言うまでもない。
【0096】
この図5(A)に示した配管網400の一例の場合では、離散化された合計16個の各単位要素に対して図5(B)に示したように識別番号を付すと、直線型は4番,9番,14番,16番、曲管型は5番,7番,11番、T字型は1番,2番,3番,6番,8番,10番,15番、T字型が近接してなるH字型は12番、左記の各種導管以外の形状としてはバルブの13番、のように分類することができ、これらの各番号(図5(B)においては符号1,2,3…16)を付した単位要素ごとで個別に強度解析を行って、そのそれぞれの臨界(許容)変位量(Dcr)または臨界(許容)応力値(Fcr)を求め、さらにその値に基づいて、各単位要素ごとの臨界地震動値(SIcr)または臨界地震振幅値(Ucr)等を求めることができる。
【0097】
但し、配管の強度解析の手法としては、このような離散化によって配管網を分掌(分割掌握)してその最小単位の要素である各単位要素ごとに強度解析を行う、ということのみには限定されない。この他にも、例えば配管網全体をいわゆるワイヤーフレームモデル(F.B.D;フリー・ボディ・タイヤグラム)あるいはメッシュのように見做して、その配管網の全体に対して有限要素法を適用し、その配管網全体についてのいわゆる全体剛性マトリックスを解いて強度解析を行うようにすることなども可能である。また、離散化にあたっての具体的な分類法についても、上記のようなもののみには限定されないことは言うまでもない。
【0098】
なお、本発明による地震被害推定装置および地震被害推定方法の主旨は、所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動に関するデータと、配管の破損強度に関するデータと、所定地域に地震が発生した際に観測される地震動の大きさまたはその地震によって与えられる外力の大きさに関するデータとに基づいて、地震に起因した配管の破損の発生の有無を推定する、ということにあるが、これに基づいた具体的な装置や方法としては、上記に説明したような態様のみには限定されないことは言うまでもない。この他にも、例えば、配管に破損が発生する臨界の地震振幅である臨界地震振幅値(Ucr)を記憶しておき、地震が発生した際に、その地震で観測された地震振幅値(U)と、臨界地震振幅値(Ucr)とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を各セグメントごとに推定することも可能である。
【0099】
また、上記の実施の形態では、配管に破損が発生する臨界の地震動値である臨界地震動値(SIcr)を、配管の破損が生じる臨界変形量(Dcr)に基づいて求めるようにしているが、これを配管の破損が生じる臨界応力値(Fcr)に基づいて求めるようにしてもよい。これは流動化に因る破損に関する強度解析についても同様である。
【0100】
また、バルブ等も含めて配管の破損の有無およびその破損の発生位置についての推定結果は、上記のような表示デバイスの画面に表示することのみには限定されないことは言うまでもない。この他にも、例えばカラープリンタ装置などによって所定地域の地図および破損発生位置を印刷出力することや、地図などのような画像としてではなく文字情報として、破損発生位置の座標等を印字出力することなども可能である。
【0101】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし13のいずれかに記載の地震被害推定方法または請求項14ないし29のいずれかに記載の地震被害推定装置によれば、従来技術の場合のような既往地震の大きさおよびそれに因って発生した配管の破損に関する統計的なデータに基づいて確率論的に配管の破損の発生を推定するのではなく、ガス導管のような配管が設けられている地盤の固有振動に関するデータと、その配管の破損強度に関するデータと、その配管網が配設されている所定地域に地震が発生した際に観測される地震動の大きさまたはその地震によって与えられる外力の大きさに関するデータとに基づいて、そのとき発生した地震に起因した配管の破損の発生の有無を、各セグメントごとに推定し、あるいはそれとは別に、地震が発生した際に推定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損強度に関するデータと、所定地域に地震が発生した際に観測または推定される流動量に関するデータとに基づいて、地震に因って引き起こされる地盤の流動化に起因した配管の破損の発生の有無を推定するようにしたので、地震が発生した際に、それがどのような地震であっても、都市ガスや水道などの配管網における配管の破損の発生の有無、および破損が発生している場合にはその破損の発生箇所を、確率論的あるいは統計的にではなく、具体的かつ精確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る地震被害推定装置の概要構成を表した図である。
【図2】配管が埋設されている地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)の値および臨界変形量(Dcr)と、臨界地震振幅値(Ucr)との、対応関係のグラフ(曲線)の一例を表した図である。
【図3】図1に示した地震被害発生推定装置の主要な動作の流れを表した図である。
【図4】配管網の形状およびその強度解析の結果(A)、およびその配管網に関してSI=100[kine]の地震が発生した場合に推定される破損箇所(B)の一例を表した図である。
【図5】配管網の形状(A)、およびその配管網を個々の単位要素に離散化して分掌する手法(B)の一例を表した図である。
【符号の説明】
100…臨界値記憶部、200…破損発生推定部、201…SI比較判定部、202…δ比較判定部、300…破損発生位置表示部、301…データ処理回路、302…表示デバイス

Claims (29)

  1. 所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動に関するデータと、配管の破損強度に関するデータと、前記所定地域に地震が発生した際に観測される地震動の大きさまたはその地震によって与えられる外力の大きさに関するデータとに基づいて、前記地震に起因した配管の破損の発生の有無を推定する
    ことを特徴とする地震被害推定方法。
  2. 所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動周期または固有振動波長と配管の破損が生じる臨界変形量とに基づいて、前記配管に破損が発生する臨界の地震動値である臨界地震動値を求めておき、
    前記所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値と前記臨界地震動値とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を前記各セグメントごとに推定する
    ことを特徴とする地震被害推定方法。
  3. 所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動周期または固有振動波長と配管の破損が生じる臨界変形量とに基づいて、前記配管に破損が発生する臨界の地震振幅である臨界地震振幅値を求めておき、
    前記所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震振幅値と前記臨界地震振幅値とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を前記各セグメントごとに推定する
    ことを特徴とする地震被害推定方法。
  4. 所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動周期または固有振動波長と配管の破損が生じる臨界応力値とに基づいて、前記配管に破損が発生する臨界の地震動値である臨界地震動値を求めておき、
    前記所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値と前記臨界地震動値とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を前記各セグメントごとに推定する
    ことを特徴とする地震被害推定方法。
  5. 発生する可能性のある最大規模の地震に対応した地震動値よりも大きな臨界地震動値を有するセグメントについては、恒常的に破損なし、と予め推定しておく
    ことを特徴とする請求項2または4記載の地震被害推定方法。
  6. 発生する可能性のある最大規模の地震に対応した地震振幅値よりも大きな臨界地震振幅値を有するセグメントについては、恒常的に破損なし、と予め推定しておく
    ことを特徴とする請求項3記載の地震被害推定方法。
  7. 所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地震が発生した際に推定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損強度に関するデータと、前記所定地域に地震が発生した際に観測または推定される流動量に関するデータとに基づいて、前記地震に起因した配管の破損の発生の有無を推定する
    ことを特徴とする地震被害推定方法。
  8. 所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地震が発生した際に推定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損が生じる臨界変形量を求めておき、
    前記所定地域に地震が発生した際に、その地震による地盤の流動化に起因して観測または推定される流動量と前記臨界変形量とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を前記各セグメントごとに推定する
    ことを特徴とする地震被害推定方法。
  9. 所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地震が発生した際に推定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損が生じる臨界変形量を求めておき、
    前記所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値または地震振幅値に基づいて、前記地震による地盤の流動化に起因した流動量を推定し、その流動量と前記臨界変形量とを比較して、前記地震に起因した配管の破損の発生の有無を前記各セグメントごとに推定する
    ことを特徴とする地震被害推定方法。
  10. 前記配管網の配管のうち、地盤の流動化の影響を実質的に受ける護岸から所定距離内にある配管を有するセグメントに対してのみ、前記配管の破損の発生の有無の推定を行う
    ことを特徴とする請求項8または9記載の地震被害推定方法。
  11. 前記所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値または地震振幅値に基づいて、前記地震による地盤の流動化に起因した流動量として前記護岸に対して直交方向の流動量を推定し、
    かつ地震が発生した際に推定される地盤の流動化に起因した流動方向として前記護岸に対して直交方向の流動量を推定する
    ことを特徴とする請求項10記載の地震被害推定方法。
  12. 前記配管網を、配管の接続形態に着目した所定の分類法に則して分類することで複数のセグメントに離散化し、その個々のセグメントごとに、前記地震に起因した配管の破損の発生の有無の推定を行う
    ことを特徴とする請求項1ないし9のうちのいずれか1つの項に記載の地震被害推定方法。
  13. 前記分類法として、前記配管の接続形態を、所定の長さ以上の直線型、曲管型、T字型に分類する
    ことを特徴とする請求項12記載の地震被害推定方法。
  14. 所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動に関するデータと、配管の破損強度に関するデータと、前記所定地域に地震が発生した際に観測される地震動の大きさまたはその地震によって与えられる外力の大きさに関するデータとに基づいて、前記地震に起因した配管の破損の発生の有無を推定する破損発生推定手段を備えた
    ことを特徴とする地震被害推定装置。
  15. 所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動周期または固有振動波長と配管の破損が生じる臨界変形量とに基づいて求められた、前記配管に破損が発生する臨界の地震動値である臨界地震動値を記憶する臨界値記憶手段と、
    前記所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値と前記臨界地震動値とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を前記各セグメントごとに推定する破損発生推定手段と
    を備えたことを特徴とする地震被害推定装置。
  16. 所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動周期または固有振動波長と配管の破損が生じる臨界変形量とに基づいて求められた、前記配管に破損が発生する臨界の地震振幅である臨界地震振幅値を記憶する臨界値記憶手段と、
    前記所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震振幅値と前記臨界地震振幅値とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を前記各セグメントごとに推定する破損発生推定手段と
    を備えたことを特徴とする地震被害推定装置。
  17. 所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地盤の固有振動周期または固有振動波長と配管の破損が生じる臨界応力値とに基づいて求められた、前記配管に破損が発生する臨界の地震動値である臨界地震動値を記憶する臨界値記憶手段と、
    前記所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値と前記臨界地震動値とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を前記各セグメントごとに推定する破損発生推定手段と
    を備えたことを特徴とする地震被害推定装置。
  18. 発生する可能性のある最大規模の地震に対応した地震動値よりも大きな臨界地震動値を有するセグメントについては、恒常的に破損なし、と予め推定しておく
    ことを特徴とする請求項15または17記載の地震被害推定装置。
  19. 発生する可能性のある最大規模の地震に対応した地震振幅値よりも大きな臨界地震振幅値を有するセグメントについては、恒常的に破損なし、と予め推定しておく
    ことを特徴とする請求項16記載の地震被害推定装置。
  20. 所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに、地震が発生した際に推定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損強度に関するデータと、前記所定地域に地震が発生した際に観測または推定される流動量に関するデータとに基づいて、前記地震に起因した配管の破損の発生の有無を推定する破損発生推定手段を備えた
    ことを特徴とする地震被害推定装置。
  21. 所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに求められる、地震が発生した際に推定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損が生じる臨界変形量を記憶する臨界値記憶手段と、
    前記所定地域に地震が発生した際に、その地震による地盤の流動化に起因して観測または推定される流動量と前記臨界変形量とを比較して、その地震に起因した配管の破損の発生の有無を前記各セグメントごとに推定する破損発生推定手段と
    を備えたことを特徴とする地震被害推定装置。
  22. 所定地域に設けられた配管網を複数のセグメントに分けて、その各セグメントごとに求められる、地震が発生した際に推定される地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損が生じる臨界変形量を記憶する臨界値記憶手段と、
    前記所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値または地震振幅値に基づいて、前記地震による地盤の流動化に起因した流動量を推定し、その流動量と前記臨界変形量とを比較して、前記地震に起因した配管の破損の発生の有無を前記各セグメントごとに推定する破損発生推定手段と
    を備えたことを特徴とする地震被害推定装置。
  23. 前記配管網の配管のうち、地盤の流動化の影響を実質的に受ける護岸から所定距離内にある配管を有するセグメントに対してのみ、前記配管の破損の発生の有無の推定を行う
    ことを特徴とする請求項21または22記載の地震被害推定装置。
  24. 前記所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値または地震振幅値に基づいて、前記地震による地盤の流動化に起因した流動量として前記護岸に対して直交方向の流動量を推定し、
    かつ地震が発生した際に推定される地盤の流動化に起因した流動方向として前記護岸に対して直交方向の流動量を推定する
    ことを特徴とする請求項22または23記載の地震被害推定装置。
  25. 前記配管網を、配管の接続形態に着目した所定の分類法に則して分類することで複数のセグメントに離散化し、その離散化された個々のセグメントごとに、前記地震に起因した配管の破損の発生の有無の推定を行う
    ことを特徴とする請求項14ないし24のうちのいずれか1つの項に記載の地震被害推定装置。
  26. 前記分類法として、前記配管の接続形態を、直線型、曲管型、T字型に分類する
    ことを特徴とする請求項25記載の地震被害推定装置。
  27. 前記臨界値記憶手段が、前記各セグメントごとに、そのセグメントの前記所定地域における地理的な位置に関するデータと前記臨界地震動値のデータとを対応付けて予め記憶しておき、
    前記破損発生推定手段が、前記所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測される地震動値と前記臨界地震動値とを比較して、その地震に起因した配管の破損が、どの位置のセグメントに発生したかを推定する
    ことを特徴とする請求項15または17記載の地震被害推定装置。
  28. 前記臨界値記憶手段が、前記各セグメントごとに、そのセグメントの前記所定地域における地理的な位置に関するデータと前記地盤の流動化に起因した流動方向での配管の破損が生じる臨界変形量とを対応付けて予め記憶しておき、
    前記破損発生推定手段が、前記所定地域に地震が発生した際に、その地震で観測または推定される流動量と前記臨界変形量とを比較して、その地震に起因した配管の破損が、どの位置のセグメントに発生したかを推定する
    ことを特徴とする請求項21または22記載の地震被害推定装置。
  29. 前記所定地域に設けられた前記配管網の地図を表示すると共に、地震が発生した際に、前記破損発生推定手段によって配管の破損が発生することが推定されたセグメントの位置を前記地図中に表示する、破損発生位置表示手段を、さらに備えた
    ことを特徴とする請求項27または28記載の地震被害推定装置。
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