JP2004271391A - 配管網地震被害状態シミュレーションシステムおよび配管網地震被害状態シミュレーション方法 - Google Patents
配管網地震被害状態シミュレーションシステムおよび配管網地震被害状態シミュレーション方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】地震動の情報の入力に対応して、所定種類の流体を輸送対象とした配管網における地震動に起因した被害発生箇所の推定を行う配管網被害推定手段であるサーバー20と、その配管網被害推定手段によって推定された被害発生箇所の情報に基づいて、配管網における流体の圧力状態または漏洩状態のうち少なくともいずれかの解析を行う配管網流体状態解析手段である解析装置30とを少なくとも備えてシステムの主要部が構成されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばガス配管網などにおける配管網地震被害状態シミュレーションシステムおよび配管網地震被害状態シミュレーション方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ガスや上下水道の配管網は一般に、一般家庭向けなどの燃料用ガスや水道水のような公共的資源を所定の地域内の需要家に対して確実に供給するために、その供給対象地域内に、あたかも人体における血管網のように複雑な形状のネットワーク状に設置されている。例えば都市ガスの配管網では、いわゆる導管はほぼ全体的に、ガス供給時業者が管轄している所定地域内の地下に埋設されており、一般に埋設管と呼ばれている。但し、少数ではあるが、部分的には導管が地上に露出している場所もある。
【0003】
このような配管網(換言すれば埋設管のネットワーク)では、地震が発生した場合、その地震の規模如何によっては、配管に破損等の被害が発生し、その発生箇所を中心として、例えばガス漏洩や圧力異変等が生じる虞がある。このため、輸送対象として可燃性のガスを取り扱うガス供給事業者等としては、ガス配管網における安全を確保できるように、地震に起因して配管に生じる被害状況を正確に把握すること、そしてそのような配管網の被害に起因して発生する虞のあるガス漏洩や圧力異常などの発生状態などを予め解析しておき、実際の地震が発生した場合にも即座に的確に対応することができるようにしておくことが必要となる。
【0004】
特に、実際に地震が発生して、ガス漏洩や圧力異変等が生じた場合、それらに対して適切な緊急処置を短時間のうちに施すことなく放置しておいたりなどすると、火災や爆発等のいわゆる二次災害を引き起こす要因となってしまう虞がある。このため、ガス供給事業者等としては、地震対策に関する防災活動の一環として、例えば過去に発生した地震の震度や震源の位置などに関する記録に基づいて仮想の地震発生を想定し、その地震が発生した際のガス配管網の被害状況やガス漏洩状況等のシミュレーションを行って、地震発生時の状況に対する緊急処置を行うための訓練を行うことが必要である。
【0005】
そのような地震が発生した際のガス配管網の被害状況やガス漏洩状況等のシミュレーションを行うことができる装置またはシステムもしくは方法については、従来、有効なものは提案されておらず、従って実用化されていないことは言うまでもなかった。
【0006】
但し、地震発生時の配管網における被害状況を推定するシステムとしてならば、例えば特開2000−75040号公報、特開2002−168963号公報、特開平11−84017号公報、特開2002−162893公報等にて提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−75040号公報(発明の詳細な説明全体)
【特許文献2】
特開2002−168963号公報(発明の詳細な説明全体)
【特許文献3】
特開平11−84017号公報(発明の詳細な説明全体)
【特許文献4】
特開2002−162893公報(発明の詳細な説明全体)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来提案された技術は、いずれも地震に対する配管網の破損等の状況を推定または解析することを企図したものであり、輸送対象であるガスのような流体の漏洩状態や圧力状態などの解析やシミュレーションを行うことについては、全く考慮されておらず、示唆すらされていないものであった。
【0009】
このため、ガス配管網のような可燃性の(従って緊急の対処が必要である場合の多い)流体等を取り扱う配管網における防災訓練等の用途上、最も重要である、ガス漏洩や圧力異変などの状態のシミュレーションを訓練時に行うことが全くできなかった。
【0010】
ここで、特開2002−162893公報にて提案された技術は、上記のような地震発生時を想定して訓練シナリオを予め設定してデータベース化しておき、そのうちから適宜のシナリオを選択して用いて地震発生時の防災訓練を行うというものである。この技術によれば、災害位置・規模に応じた災害を模擬し、訓練参加者の立場毎に、時々刻々とネットワーク経由で災害訓練シナリオを提供することができるようになる。また、防災組織の運営上の訓練を行うということを主な目的としており、その意味では、防災組織の全体的な訓練を行うことが可能なものである。
【0011】
しかしながら、この技術についても、基本的に、ガス漏洩や圧力異変等の状態を地震に起因した配管網の被害状況と対応付けて解析するものではなく、ガスの状態等の解析とは無関係に予め多数の訓練シナリオを人為的に作製しておき、そのなかから適宜に選択した訓練シナリオを用いて訓練を行う、というものであるため、実際の地震発生時に配管網中に発生する被害箇所や、その箇所ごとでのガス漏洩や圧力異変等の具体的な状態についての、より現実的な(実際に起こり得るという、いわゆるリアルな)シミュレーションを行うことは、基本的に困難あるいは不可能であった。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、配管網における輸送・供給対象であるガスのような流体に関しての、地震発生時に想定される具体的な漏洩状態や圧力状態についての、より現実的な(リアルな)解析やシミュレーションを行うことができる配管網地震被害状態シミュレーションシステムおよび配管網地震被害状態シミュレーション方法を提供することにある。
【0013】
また、より望ましくは、配管網におけるガスのような流体に関しての、地震発生時に想定される具体的な漏洩状態や圧力状態についての、時系列的な解析やシミュレーション(例えばガス漏洩状態の時間的変化のシミュレーションなど)を行うことができる配管網地震被害状態シミュレーションシステムおよび配管網地震被害状態シミュレーション方法を提供することにある。
【0014】
さらに望ましくは、上記のような配管網における流体の具体的な漏洩状態や圧力状態についての解析やシミュレーションを行うと共に、それに対して例えば遠隔操作等によってガバナの弁装置を遮断するといった防災処理操作などの訓練を行うこともできる配管網地震被害状態シミュレーションシステムおよび配管網地震被害状態シミュレーション方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明による配管網地震被害状態シミュレーションシステムは、地震動の情報の入力に対応して、所定種類の流体を輸送対象とした配管網における前記地震動に起因した被害発生箇所の推定を行う配管網被害推定手段と、前記配管網被害推定手段によって推定された被害発生箇所の情報に基づいて、前記配管網における前記流体の圧力状態または漏洩状態のうち少なくともいずれかの解析を行う配管網流体状態解析手段とを備えている。
【0016】
また、本発明による配管網地震被害状態シミュレーション方法は、地震動の情報の入力に対応して、所定種類の流体を輸送対象とした配管網における前記地震動に起因した被害発生箇所の推定を行う配管網被害推定プロセスと、前記配管網被害推定プロセスによって推定された被害発生箇所の情報に基づいて、前記配管網における前記流体の圧力状態または漏洩状態のうち少なくともいずれかの解析を行う配管網流体状態解析プロセスとを含んだものである。
【0017】
本発明による配管網地震被害状態シミュレーションシステムまたは配管網地震被害状態シミュレーション方法では、地震動の情報の入力に対応して、配管網における地震動に起因した被害発生箇所の推定を行い、それによって推定された被害発生箇所の情報に基づいて、配管網における流体の圧力状態または漏洩状態のうち少なくともいずれかの解析を行う。
【0018】
このように、まず地震動の情報に対応して、配管網中のどこに(どの箇所に)配管の破損や亀裂等の構造力学的な被害が発生するかを推定し、その推定された箇所が被害を受けたということを解析条件に含めて、配管網における流体の圧力状態や漏洩状態の解析を行う。これにより、地震が発生した場合に想定される具体的な漏洩状態や圧力状態についての、よりリアルな解析やシミュレーションが実行される。
【0019】
なお、上記の配管網流体状態解析による解析結果の情報は、記憶装置等に一時記憶あるいは蓄積しないで直接的に表示出力あるいは印刷出力してもよいが、少なくとも前記地震動の情報と対応付けて、解析結果記憶手段などに格納する(記憶させる)ようにすることが望ましい。このようにすることにより、例えば震源位置および震度のような地震動の情報を情報読み出しの際の検索キーワードとして用いるなどして、その所望の震源位置および震度の地震動に対応した圧力状態や漏洩状態の解析結果の情報を読み出すことが可能となるからである。
【0020】
すなわち、地震動の情報のうちから選択された地震動の情報が入力されると、解析結果記憶手段に記憶されている情報のうちから、前記入力された地震動の情報に対応した解析結果の情報を読み出すようにしてもよい。
【0021】
また、前記配管網流体状態解析手段は、前記流体の圧力状態または漏洩状態のうち少なくともいずれかについての時系列的な解析を行うようにすることが、より望ましい。このようにすることにより、地震発生後の配管網における流体の圧力状態や漏洩状態の時間的な変化(圧力の推移や漏洩量の時間的増減など)についてを、より現実的にシミュレートすることが可能となる。
【0022】
また、前記地震動の情報の入力を行う地震動情報入力手段と、前記配管網流体状態解析手段によって解析された解析結果の情報または前記解析結果記憶手段から読み出された解析結果の情報を出力する解析結果情報出力手段とを備えるなどして、配管網地震被害状態シミュレーションを行うにあたっての解析条件となる震源地や震度など地震動の情報を入力し、その解析条件に基づいて解析された結果である流体の圧力状態や漏洩状態の情報を出力可能とすることで、条件入力から解析結果出力までを一貫して行うことができる配管網地震被害状態シミュレーションシステムが構築される。
【0023】
また、前記配管網被害推定手段による推定結果を出力する被害推定結果情報出力手段を備えるようにしてもよい。
【0024】
さらには、前記地震動情報入力手段と、前記被害推定結果情報出力手段とを、同一の入出力端末装置によって具現化するようにしてもよい。
【0025】
このようにすることにより、ユーザは入力した地震動の情報に対応して推定された配管網の被害発生箇所の情報を、圧力状態や漏洩状態などの地震被害状態の解析を行う以前に、確認することが可能となるので、ユーザは自らの最も所望する条件に近い前提条件を事前に容易に選定することができ、そのような前提条件に基づいたユーザの所望に則したシミュレーションを実行することが可能となる。
【0026】
また、前記配管網流体状態解析手段が、配管網被害推定手段によって推定された被害発生箇所の情報以外の入力ルートから、前記配管網における被害発生箇所の仮想された情報の入力を受けて、当該仮想された被害発生箇所の情報に基づいて前記解析を行う機能を、さらに備えたものであるようにしてもよい。
【0027】
このようにすることにより、ユーザは、被害推定の結果に基づくのではなしに、例えば配管網における所望の位置に破損等の被害が発生した場合を想定して、その場合での圧力状態や漏洩状態についての解析を実行することが可能となり、解析条件の選択の自由度が高くなる。
【0028】
また、前記配管網が、所定の地震動に対応して自動的に弁閉動作を行う弁装置を備えたものであり、前記配管網流体状態解析手段が、前記弁閉動作が行われたことを解析条件に含めた前記配管網における前記流体の圧力状態または漏洩状態の解析を行うようにしてもよい。
【0029】
あるいは、前記配管網が、前記流体の圧力状態を調節する機能を有するガバナを備えたものであるようにしてもよい。
【0030】
すなわち、例えばガス配管網の場合には、一般に、いわゆるガバナと呼ばれるような、圧力調節弁装置としての機能と所定の地震動に対応して自動的に弁閉動作を行う遮断弁装置としての機能とを兼備した弁装置が、要所ごとに配設されている。従って、実際に地震が発生した際には、ガバナの自動的な弁閉動作によって、配管網におけるガスの圧力分布やガス漏洩状態が影響を受けることとなるので、より現実的なシミュレーションを実現するためには、このガバナのような弁装置の動作(機能)も解析条件のうちに含めた解析をすることが望ましいからである。
【0031】
また、前記配管網が、遠隔操作によって弁開閉動作が可能な弁装置を備えたものであり、前記配管網流体状態解析手段が、前記遠隔操作の仮想的な入力を受けて、当該遠隔操作に対応した前記弁装置の弁開閉動作が行われたものと仮想し、当該弁開閉動作が行われたことを解析条件に含めた前記配管網における前記流体の圧力状態または漏洩状態の解析を行うようにしてもよい。
【0032】
すなわち、例えばガス配管網の場合には、一般に、要所ごとにガバナが配設されていることは既述した通りであるが、そのガバナには遠隔操作によって弁開閉動作が可能な弁装置を備えたものがある。従って、ガスのような流体の圧力状態や漏洩状態の解析結果の情報を用いて地震対策のための訓練シミュレーションを行う場合などには、ガバナを遠隔操作して、いわゆる二次災害等を防ぐという処置に関する訓練シミュレーション等を行うことなども必要であるから、そのようなガバナを遠隔操作することを解析条件に含めての解析を行うことができるようにすることが望ましいのである。あるいはさらに、そのようなガバナを遠隔操作することを解析条件に含めての解析結果を利用して、ガバナの遠隔操作に関してのシミュレーションを実行することができるようにすることなども望ましい。
【0033】
また、前記解析結果記憶手段は、前記配管網流体状態解析手段による解析結果を前記遠隔操作の情報と共に記憶するようにしてもよい。
【0034】
このようにすることにより、ガバナのような遠隔操作が可能な弁装置を有する配管網における、その弁装置の遠隔操作による影響を受けた場合の流体の圧力状態や漏洩状態についての解析結果をも記憶することが可能となる。
【0035】
ここで、前記流体が可燃性のガスであり、前記配管網が、前記ガスを輸送または供給対象としたガス配管網であることは、最も望ましい態様である。
【0036】
すなわち、本発明による配管網地震被害状態シミュレーションシステムまたは配管網地震被害状態シミュレーション方法は、ガス配管網における地震に起因したガス漏洩状態や圧力異変などのような被害状態についての時系列的なシミュレーションなどに特に有効に適用可能なものである。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明の一実施の形態に係る配管網地震被害状態シミュレーションシステムの概要構成を表したものである。
【0039】
なお、本発明の実施の形態に係る配管網地震被害状態シミュレーション方法は、この配管網地震被害状態シミュレーションシステムの動作あるいは作用によって具現化されるものであるから、以下、それらを併せて説明する。
【0040】
この配管網地震被害状態シミュレーションシステムは、端末装置10と、サーバ20と、解析装置30と、記憶装置40とから、その主要部が構成されている。
【0041】
端末装置10は、サーバ20によって行われる被害推定および解析装置30における解析のための境界条件や解析条件等として用いられる地震動の情報の入力を行うという地震動情報入力手段としての機能と、サーバ20による被害発生箇所の推定結果とは別にユーザ等によって仮想された被害発生箇所の情報を解析装置30に直接に入力するための仮想被害発生箇所情報入力手段としての機能と、ユーザ等によって仮想されたガバナに対する仮想的な遠隔操作の入力を行うための仮想遠隔操作入力手段としての機能と、解析装置30による解析結果の情報または記憶手段から読み出された解析結果の情報を出力する解析結果情報出力手段としての機能と、サーバ20による推定結果の情報を出力する被害推定結果情報出力手段としての機能とを、兼ね備えたものである。
【0042】
この端末装置10では、上記の各種情報の入力は、例えばテン・キーやマウスのような入力装置400によって行われ、上記の各種情報の出力は、例えばCRTまたは液晶表示デバイスのような表示デバイス302とデータ処理回路301とを備えた表示装置300などによって行われる。あるいは、各種情報の出力はプリンタ装置(図示省略)のような印刷出力装置によって行われるようにしてもよい。
【0043】
ここで、入力装置400によって入力された情報は、端末装置10の本体であるパソコン本体のような情報処理装置によって適宜にデータ処理されるなどしてサーバ20あるいは解析装置30へと伝送されるように設定されていることは言うまでもない。
【0044】
また、サーバ20あるいは解析装置30から出力された情報は、パソコン本体のような情報処理装置によって適宜にデータ処理されるなどした後に表示装置300に送られて、その表示装置300におけるCRTのような表示デバイス302の画面に表示される。あるいは、印刷装置に送られて配管網中でのガス漏洩発生箇所や圧力分布を示す図表等として印刷出力される。
【0045】
なお、この端末装置10は、単数で使用するようにしてもよいが、複数台を用意しておき、そのうちの1つは解析条件を入力して訓練シミュレーションの進行を制御するためのものとして用いるものとし、他のものは被訓練者がシミュレーションによる訓練を受けるために用いるようにしてもよい。
【0046】
サーバ20は、端末装置10からの地震動の情報の入力を受けると、配管網における地震動に起因した被害発生箇所の推定を行うという配管網被害推定手段としての機能を備えたものである。このサーバ20による被害発生箇所の推定結果は、表示装置300によって表示出力される。
【0047】
また、このサーバ20は、配管網中の要所ごとに配設されているガバナに対する仮想的な遠隔操作が端末装置10の仮想遠隔操作入力手段としての機能によって行われた場合、その遠隔操作に対応したガバナの仮想的な弁開閉動作を、このガバナ内にソフトウエア的に構築されたガス配管網中で仮想的に行うことで、解析装置30による解析を行う際の解析条件の一つとして、ガバナの仮想的な弁開閉状態を盛り込む。
【0048】
例えばユーザが、震災訓練などにおいて、配管網中のあるガバナに対して弁装置を閉じる動作を実行させるための仮想的な遠隔操作を行った場合、そのガバナの弁装置があたかも実際に閉じられた状態になったものとサーバ20は仮想する。そして解析装置30は、サーバ20からの情報(配管網における破損発生位置やガバナによるガス遮断状態のデータ等)を受けて、ガバナの弁装置が閉じられた状態になったことを解析条件として含めたうえで、その場合の配管網におけるガスの圧力状態や漏洩状態に関する解析(シミュレーション)を行う。
【0049】
このサーバ20における、入力された地震動の情報に対応してガス配管網の地震被害発生箇所を推定する機能について、さらに詳細に説明する。
【0050】
このサーバ20は、図2に示したように、臨界値記憶部100と、破損発生推定部200とを備えており、外部の解析装置30および端末装置10(の表示装置300ならびに入力装置400)に接続されている。
【0051】
臨界値記憶部100は、例えば関東地域ほぼ全域のような所定地域内に網目状に張り巡らされた都市ガスの配管網を、例えば所定の大きさのメッシュ状に区切って複数のセグメントごとで分割掌握するようにして、そのセグメント毎に、識別番号(N=1,2,3…)を付して、地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)と配管の破損が生じる臨界変形量(Dcr)とに基づいて予め求められた、そのセグメント内の配管に破損が発生する臨界の地震動値である臨界地震動値(SIcr)のデータと、地震が発生した場合の地盤の流動化に起因した流動方向で配管に破損が生じることが予め推定される流動臨界変形量(δcr)のデータと、そのセグメントが所定地域における地図上のどの位置に存在しているのかについてのデータ((x,y);例えば直交座標のデータ)とを、対応付けて記憶している。またこの臨界値記憶部100は、配管網が配設されている地域の地図および配管網を表示装置300の表示デバイス302の画面に表示するためのデータ等も記憶している。
【0052】
例えば、第nセグメント(N=n)について、その第nセグメントの地図中での位置のデータが(x,y)、地盤の固有振動周期がT、固有振動波長がL、臨界変形量がDcr、流動臨界変形量がδcrである場合、臨界値記憶部100には、第nセグメントのデータとして、{N=n,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr}という最大7種類のデータが一纏まりにして記憶されている。このデータは、臨界値記憶部100から読み出される際にも、上記のように{N,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr}という一纏まりの状態で取り扱われる。なお、入力された地震動の情報に対応して発生する配管の破損等の被害を推定する際に用いるデータが実質的にn,(x,y),SIcr,δcrの4種類のデータである場合には、それ以外の用いられないデータであるT,L,Dcrについては、例えばバックデータとして別途に保持しておき、臨界値記憶部100には{n,(x,y),δcr,SIcr}というデータを一纏まりの状態で記憶させておくようにしてもよい。このようにすることにより、記憶や読み出しの対象となるデータ量の低減化を図ることができるので望ましい。
【0053】
配管網を複数のセグメント(N=1,2,3…)に分ける際の分割法としては、例えば1辺が0.5[km]の正方形のメッシュを想定し、そのメッシュによって配管網が張り巡らされている所定地域を区分けして、その個々のメッシュごとを各セグメントとして取り扱うことなどが可能である。そして各セグメントの例えば中心点あるいは図心の位置などを、地図中でのそのセグメントの位置のデータ(x,y)とすることが可能である。なお、メッシュの寸法は、位置的な精度とセグメントの個数の多さとの兼ね合いを考慮して適切な大きさに設定することが望ましい。また、地図や破損発生位置を表示する表示デバイス302の画面の表示解像度に対して余りにも微細な表示寸法となってしまうような細かい寸法にメッシュを設定することは無意味であるから、そのような表示デバイス302の解像度なども考慮に入れることが望ましい。
【0054】
あるいは、詳細は後述するが、配管の接続形態(構造力学的および幾何学的な配管形状)に着目して、配管網を、直線の部分と、屈曲の部分と、T字型に分岐した部分とに分類するといった分類法に基づいて細分化し、その個々の部分をそれぞれ離散化された各セグメントとして取り扱うようにしてもよい。この場合にも、各セグメントの例えば中心点あるいは図心の位置などを、地図中でのそのセグメントの位置のデータ(x,y)として用いればよい。
【0055】
地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)のデータは、配管網が配設されている所定地域内の地盤の要所ごとにボーリング調査を行って得ることができる。例えば、管理対象の地域として首都圏の東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県における、ガス導管が設けられている要所ごとの地盤について、合計数万箇所を実地にボーリング調査して、それらの各地点の実測値を得ることなどが可能である。あるいは、その配管が配設されている地域の地盤に関する既存の(過去に調査済みの)データを利用してもよいことは言うまでもない。
【0056】
地震の直接的な振動力(破壊力)による臨界変形量(Dcr)のデータ、および地震によって引き起こされる地盤の流動化に因る流動臨界変形量(δcr)のデータは、それぞれ、セグメントごとの具体的な配管に関する種類(例えば都市ガスの配管網の場合、溶接接合鋼管、ダクタイル鋳鉄管、ねずみ鋳鉄管等)、口径(内径)、材質、その他の仕様(例えば補強処置済み/未着手など)等の各種データに基づいて配管の強度解析を行って求めることができる。あるいはさらに、配管の強度解析結果等に基づいて、臨界変形量(Dcr)のデータや流動臨界変形量(δcr)のデータを算出し、そのデータを既往地震の事例調査によって得られた被害事例のデータ等の情報に基づいてキャリブレーションするなどして、データのさらなる高信頼化を図るようにしてもよい。
【0057】
さらに具体的に5は、臨界変形量(Dcr)、流動臨界変形量(δcr)は、どちらも本質的に配管やバルブの構造力学的な強度に関する数値(許容応力あるいは許容変位などの物理量)である。従って、地震の振動による破壊力が外力として配管網に加えられた際の、配管やバルブの構造力学的な強度解析あるいは破壊実験を行うことで、理論的または実験的に、精確な臨界変形量(Dcr)および流動臨界変形量(δcr)の値を求めることができる。
【0058】
その際の配管やバルブの構造力学的強度の解析手法それ自体については、例えば、ある一つのセグメント内の配管を、所定の金属材料からなる筒状構造と見做して、その筒状構造に対して有限要素法による強度解析を行うなどして、臨界変形量(Dcr)や流動臨界変形量(δcr)を求めることができる。
【0059】
あるいは、配管の接続形状を考慮に入れて、一つのセグメント内の配管を、直線の部分と、屈曲(曲管)の部分と、T字型に分岐した部分とに分類するなどして、その個々の種類ごとでそれぞれ別個に臨界変形量を求めた上で、それらのうちの最小の値を、そのセグメントにおける臨界変形量(Dcr)のデータとして採用することなども可能である。また流動臨界変形量(δcr)についても同様に、一つのセグメント内の配管を、上記のように接続形状に基づいて細かく分類し、その個々の種類ごとで個別に流動臨界変形量を求めた上で、それらのうちの最小の値を、そのセグメントにおける流動臨界変形量(δcr)のデータとして採用することが可能である。
【0060】
上記のようにして求められた臨界変形量(Dcr)の値と、そのセグメントにおける地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)の値とに基づいて、臨界地震動値(SIcr)または臨界地震振幅値(Ucr)が求められる。
【0061】
さらに詳細には、図3に一例を示したように、ある配管の臨界変形量(Dcr)に対して、その配管に破損が生じはじめる臨界の地震振幅値(あるいは許容地震振幅値)である臨界地震振幅値(Ucr)が一義的に定まるが、このとき配管が埋設されている地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)の値によって、臨界変形量(Dcr)と臨界地震振幅値(Ucr)との対応関係を示すグラフ(曲線)は異なったものとなることが確認されている。これは換言すれば、一般に1つの配管に関して、その配管の臨界変形量(Dcr)と、その配管が埋設されている地盤の固有振動周期T)または固有振動波長(L)との、2つの変数に対して、1つの臨界地震振幅値(Ucr)が定まるという関数関係(すなわちF(Dcr,T or L)=Ucr)が成り立っているということである(すなわちFを関数とすると、F(Dcr,TまたはL)=Ucr)。
【0062】
従って、例えばあるセグメントにおける配管の臨界変形量がDcr、その配管が埋設されている地盤の固有振動周期がT=0.7[s](このときL=200[m])である場合には、そのセグメントにおける臨界地震振幅値の値Ucrは、図3に示したようなT=0.7[s](L:200[m])の場合の曲線に基づいて求めることができる。あるいは、例えば地盤の固有振動周期がT=1[s](このときL=400[m])の場合には、T=0.7[s]の場合よりもさらに緩やかな単調増加を示す曲線に基づいてUcrの値を求めることができる。
【0063】
ここで、地震は地盤の振動現象であるから、臨界地震振幅値(Ucr)と臨界地震動値(SIcr)との間には、SIcr=2π・Ucr/Tなる式で表される関係が成り立っている。従って、この関係式を用いて、上記のようにして得られた臨界地震振幅値(Ucr)から、臨界地震動値(SIcr)を求めることができる。このようにして得られた臨界地震動値(SIcr)は、最終的に、破損発生推定部200によって、地震に起因した配管の破損(被害)の有無を推定する際に用いられる。あるいは、臨界地震振幅値(Ucr)を用いて配管の破損の有無を推定するように破損発生推定部200が設定されており、従って解析条件を与えるための地震動の情報の一要素として臨界地震振幅値(Ucr)が入力装置400を介して入力されるように設定されている場合には、上記のようにして求めた臨界地震振幅値(Ucr)を直接に用いればよく、従ってこの場合には、臨界地震振幅値(Ucr)に対応した臨界地震動値(SIcr)の算出は省略してもよいことは言うまでもない。
【0064】
近年では、地震で観測される地震動値(SI)のデータは、他の種類のデータと比べて、観測および入手することが容易で、かつ配管に掛かる外力を算出するのに極めて好適なものとなっている。従って、このようなデータの入手や取り扱いが簡便であり地震動の評価・判断等のための基準となる単位として一般化しているという点で、臨界地震動値(SIcr)を予め求めておき、その臨界地震動値(SIcr)と入力された地震動の情報のうちに含まれている地震動値(SI)とを、破損発生推定部200で比較するように設定することが望ましい。
【0065】
他方、流動臨界変形量(δcr)のデータについては、全てのセグメントあるいは全ての配管に対して流動臨界変形量を求めておくようにしてもよいが、地震に因る地盤の流動化が発生したときに実質的に配管の破損を引き起こすような流動量が生じるのは、実際には護岸の付近に限られており、しかもその護岸付近での流動化による地盤の変位は護岸線に対してほぼ直交方向であることが多いということを、本発明者らは確認している。従って、例えば護岸から100[m]以内の領域に位置している配管またはそのような配管を有しているセグメントのみを、破損発生推定の対象として取り扱うものとし、その他の配管またはセグメントについては、流動臨界変形量(δcr)のデータの記憶やそれに基づいた破損発生の推定動作などは省略してもよい。このようにすることにより、少なくともその省略した分のデータ量やデータ処理を簡略化することができるという利点が得られる。また、流動臨界変形量(δcr)の推定は、流動化に起因して地盤の変位が最も発生しやすい方向である護岸線に対してほぼ直交方向から配管に対して外力が加えられた場合を想定した配管の構造力学的な強度解析等を行うことによって求めることが望ましいことは言うまでもない。
【0066】
この流動臨界変形量(δcr)のデータを求める際にも、臨界変形量(Dcr)の場合と同様に、直線型、曲管型、T字型等のような配管の接続形態に着目した分類法に則して配管網を複数のセグメントに離散化して考えて、その個々のセグメントごとに強度解析等を行うようにしてもよい。あるいはさらに、このようにして流動臨界変形量(δcr)のデータを求めておき、この流動臨界変形量(δcr)を生じさせる流動臨界地震動値(SIcr´)または流動臨界地震振幅値(Ucr´)を、例えば成り立つことが既に確認されている地震動値と流動量との間の相関関係あるいは関係式に基づいて算出しておき、その流動臨界地震動値(SIcr´)または地震振幅値(Ucr´)を、地震動の情報として入力された地震動値(SI)または地震振幅値(U)と比較するように設定してもよい。但しこれのみには限定されないことは言うまでもない。
【0067】
破損発生推定部200は、SI比較判定部201と、δ比較判定部202とを備えている。SI比較判定部201は、入力された地震動の情報に含まれている地震動値(SI)と、セグメント毎の臨界地震動値(SIcr)とを比較して、地震動に対応してどの位置のセグメントに配管の破損が生じるかを推定する。また、δ比較判定部202も同様に、地震動に起因して発生することが推定される流動量(δ)と各セグメントまたは所定のセグメントごとの流動臨界変形量(δcr)とを比較して、そのときの地震に因る地盤の流動化に起因してどの位置のセグメントに配管の破損が生じるかについてを推定する。
【0068】
さらに詳細には、地震動値(SI)の情報およびその震源位置の情報を含んだ地震動の情報が入力装置400から破損発生推定部200へと入力されると、破損発生推定部200のSI比較判定部201では、臨界値記憶部100に記憶されている全てのセグメントに関するデータ{N,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr;N=1,2,3…}を読み出し、その個々のセグメントごとに、地震動値(SI)と臨界地震動値(SIcr)とを比較して、地震動値(SI)が臨界地震動値(SIcr)以上である(SIcr≦SI)セグメントには破損が生じると推定して、そのセグメントの位置のデータを表示装置300へと送出する。地震動値(SI)が臨界地震動値(SIcr)未満である(SIcr>SI)場合には、そのセグメントには破損が生じないと推定し、そのセグメントの位置のデータは送出されない。
【0069】
また、入力された地震動の情報に含まれている、地盤の流動化に起因して護岸から所定距離内の領域に生じることが観測される流動量(δ)の値が、破損発生推定部200に入力されると、この破損発生推定部200のδ比較判定部202では、臨界値記憶部100に記憶されている全てのセグメントのうちから、前述の護岸から所定距離内の領域の配管を有するセグメントのデータを選択して読み出し、その読み出された個々のセグメントごとに、流動量の値δと流動臨界変形量の値δcrとを比較して、流動量(δ)が流動臨界変形量(δcr)以上の値である(δcr≦δ)セグメントには破損が生じると推定し、そのセグメントの位置のデータを表示装置300へと送出する。しかし流動量(δ)が流動臨界変形量(δcr)未満(δcr>δ)である場合には、そのセグメントには破損が生じないものと推定する。
【0070】
ここで、例えば200[kine]以上のような、所定地域内で発生する可能性のある最大規模の地震に対応した地震動値(SImax )よりも大きな臨界地震動値(SIcr>SImax )を有するセグメントについては、そのような最大級の地震に対しても耐震的であるということであるから、「恒常的に破損なし」と予め推定しておくようにしてもよい。あるいは臨界地震動値(SIcr)の代りに臨界地震振幅値(Ucr)を用いる場合にも同様に、発生する可能性のある最大規模の地震に対応した地震振幅値(Umax )よりも大きな臨界地震振幅値(Ucr>Umax )を有するセグメントについては、「恒常的に破損なし」と、予め推定しておくようにしてもよい。このように十分な強度(SIcrまたはUcr)を備えた配管については「恒常的に破損なし」と予め決定しておくことにより、少なくともその分は地震動値(SI)と臨界地震動値(SIcr)との比較の手間(それに要する時間およびデータ処理)を省略することが可能となり、延いては地震被害推定方法のさらなる簡易化およびそれに要するデータ処理量のさらなる低減化を達成することができるので望ましい。
【0071】
また、地盤の流動化に起因した破損についても同様に、例えば5[m]以上のように、配管網が設けられている所定地域内の護岸付近で発生する可能性のある最大の流動量(δmax )よりも大きな流動臨界変形量(δcr>δmax )を有するセグメントについては、そのような最大級の流動化が生じても破損しないということなのであるから、「恒常的に破損なし」と予め推定しておくようにしてもよい。なお、上記のSImax =200[kine]やδmax =5[m]などの値については、一例として掲げたものであって、実際には、このような数値のみに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0072】
なお、このように「恒常的に破損なし」と推定されたセグメントについては、地震動値や流動量に基づいた地震被害推定を行う必要が無い旨を示す情報(例えばフラグ)を、そのセグメントに関する一纏まりのデータ{n,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr}の中に付記して臨界値記憶部100に記憶させておくようにすることが望ましい。
【0073】
表示装置300は、データ処理回路301と表示デバイス302とを、その主要部として備えている。この表示装置300では、地震動または地盤の流動化に因って配管に破損が生じると推定されたセグメントの位置のデータが破損発生推定部200から送られて来ると、データ処理回路301が、その送られて来たセグメントの位置のデータ(x,y)と配管網が設けられた地域全体の地図のデータとに基づいて、表示デバイス302によって表示される地図中に破損が発生していることが推定される位置を例えばピンポイントで表示するための表示データを作成する。そして表示デバイス302が、例えばカラー表示が可能な液晶表示デバイスまたはCRTなどを用いて、その表示画面に、所定地域全体の地図の画像と、その中にピンポイントに示される破損発生位置の画像とを、合成して表示する。
【0074】
例えば地図全体の地の色を緑色とし、配管網を例えば圧力等級別などに分類して、その分類ごとに黄色や青のような異なった色で示すようにしておく。そして、そのような地図中に、地震動に対応して配管の破損が発生すると推定される位置を、例えば赤色のような目立つ警戒色で表示する。さらには、その配管破損被害の発生が推定される位置の警戒色のピンポイントの表示を点滅させるようにしてもよい。地震動に因る破損発生位置と、地盤の流動化に因る破損発生位置とを、異なった色や点滅状態で表示するなどして、破損の発生位置と共に、その破損の発生要因の種類別を一目瞭然で判別できるようにしてもよい。また、この表示デバイス302では、自動的または遠隔操作によって開閉動作が行われる各ガバナの弁装置の開閉状態を、例えば弁装置が開状態であるガバナは青色で表示し、弁装置が閉状態であるガバナは赤色で表示する、というように、一目瞭然で判別できるようにすることが望ましい。
【0075】
このようにして、サーバ20では、入力された地震動の情報に対応して、配管網における被害発生箇所(地震に因る破損等の被害が発生する箇所)を推定する。そしてその推定結果の情報を、表示装置300が表示出力する。
【0076】
なお、配管網中に配設されるガバナが、所定の地震振幅値以上の大きさの地震動を受けると自動的に弁装置を遮断状態にするという、いわゆる自動感震遮断機能を備えたものである場合には、そのようなガバナの自動感震遮断機能についても境界条件や解析条件等の要素の一つとして含めて被害推定や圧力・漏洩解析を行うことなども可能である。その場合には、理想論的には所定値を超えた大きさの一つの地震動に対しては、同一管区の配管網中における全てのガバナで一斉に弁遮断が行われることになる筈である。
【0077】
しかし、実際には、各ガバナが設置されている場所ごとで、共振振動数や揺れ易さといった地震動に対する地盤的な条件が異なっていることが多いので、同じ一つの地震動に対して、ある地点のガバナでは感震遮断が実行され、他の地点のガバナでは遮断が行われない、といった場合もあり得る。
【0078】
そこで、このような自動感震遮断機能を備えたガバナを有する配管網の場合には、例えば予め各地点における地震動に対する揺れ易さを評価し、それを0〜1までの重み付け係数(これを例えばwとする)として数値化しておき、地震動の大きさの情報が例えばSI値で入力されるように設定されている場合には、そのSI値に各ガバナの重み付け係数wを乗算するなどして、当該ガバナで遮断が行われる遮断臨界SI値(これを例えばSIshとする)と比較することで、一つの地震動に対して遮断が行われるガバナと遮断が行われないガバナとを推定することなどが可能である。
【0079】
例えば、入力された地震動の情報の一要素として含まれている地震の大きさを示すSI値がSという値であり、遮断の有無の推定の対象となるガバナの揺れ易さを評価してなる重み付け係数がwであり、そのガバナの遮断臨界SI値がSIshであるとすると、当該ガバナの遮断の有無は、Sとwとを乗算してなる値が、SIshの値未満である場合には(S・w<SIsh)、当該ガバナは遮断を行わないものと推定され、SIshの値以上である場合には(S・w≧SIsh)、当該ガバナは遮断を行うものと推定される。
【0080】
あるいは、そのような自動的な推定には依らずに、ユーザが直接的に配管網中のガバナのうちから任意のガバナを選択して、そのガバナのみが地震動に対応した遮断を行わないような状態をサーバ20および解析装置30が仮想的に作り出すようにしてもよいことは言うまでもない。
【0081】
解析装置30は、サーバ20によって推定された被害発生箇所の情報に基づいて、配管網におけるガスの圧力状態(位置的な圧力分布およびその各位置での圧力値の時間的推移)やガス漏洩状態(ガス漏洩の発生位置およびその各位置ごとのガス漏洩状態の時間的推移)の解析を行うものである。従って、この解析装置30は、例えば一般的な直管内での流体の挙動についての数値風洞的な解析を行う解析装置等とは全く異なったものであることは言うまでもない。
【0082】
この解析装置30で行われる、配管網におけるガスの圧力状態・漏洩状態に関する解析について、さらに詳細に説明する。
【0083】
この解析装置30では、基本的に、配管網全体を一単位のブロックに分けて、そのブロック毎で配管損傷に起因したガス漏洩の時間的推移や圧力状態の推移等の解析を行う。そしてそのブロック毎の解析結果を纏めて、配管網全体の解析結果のデータを出力する。
【0084】
図4は、配管網全体を各単位ブロックに分けた場合の、その一単位のブロック内における配管構成の一例をマップ化して模式的に表したものである。ここで、図4では、太い配管として描いてあるものが中圧配管41を示しており、それよりも細い配管として描いてあるものが低圧配管42を示している。また、図4で×印を付した部分が、入力された地震動の情報に対応してサーバ20によって推定された破損発生箇所44を示している。なお、図4では、ブロック45内の需要家の住居46や配管構成等は模式化して描いてあるので、実際よりもかなり簡略化されているが、実際の配管構成や住居などの密度や配置の複雑さは、図4に示したものよりもさらに高度なものとなっていることは言うまでもない。
【0085】
一単位のブロック内の配管では、一般に、隣接する他のブロックとの境目ごとに設けられて常時閉状態にあるブロックバルブ47によって、その隣接する他のブロックとの間でのガスの導通を隔絶されている。また、中圧配管41と低圧配管42との接続部ごとに、所定の大きさ以上の地震動に対応して自動的に弁装置の遮断を行う機能および遠隔操作によって弁装置の遮断を行う機能と中圧配管41から低圧配管42へと供給(輸送)するガスの圧力調節を行う機能とを併せ持ったガバナ48が、それぞれ配設されている。
【0086】
一般に、実際に地震が発生すると、理論的には、図4に示したような一つのブロック内の全てのガバナ48a,48b,48c,48dが感震動作して自動的に遮断状態になるので、図4に示したような一つのブロック内に配管破損が生じてその部分からガス漏洩が発生したがそのガス漏れに対する処置を施さなかった、といった場合でも、ブロック内の配管内のガスの圧力が外部のいわゆる大気圧(ゲージ圧)と均衡するまではガス漏洩が続くが、やがて圧力が均衡状態に達すると、ガス漏れは止まることとなる。
【0087】
しかし実際には、図5(A)に一例を模式的に示したように、地震に起因して、配管網中の破損発生箇所44に配管破損が生じた状態となり、かつブロック内のほとんどのガバナ48a,48b,48cは遮断状態になっている一方で図5(A)の右上の位置にあるガバナ48dが未遮断状態になっている、といった状況になる場合もある。このような場合には、破損発生箇所44からのガス漏洩に起因して低圧配管42の内部における圧力低下が生じ、この圧力低下に対応して、ガバナ48dは、その本来の機能により、低圧配管42内の圧力を正常な状態に戻すために中圧配管41から低圧配管42へのガスの供給(導通)流量を増加させるように機能する。このため、図5(B)に示したように、配管網中の破損発生箇所44からのガスの漏洩流量は、未遮断状態のガバナ48dによる供給量の増加機能によって助長されてしまい、むしろ増加する。そこで、このような場合には、未遮断状態のガバナ48dを、外部からの遠隔操作などによって強制的に遮断状態にすることが要請される。従って、本実施の形態に係る配管網地震被害状態シミュレーションシステムは、上記のような未遮断状態のガバナ48dに対して強制的に遮断状態にするという遠隔操作に関する訓練シミュレーション等を行うことができるものであることが、より望ましい。
【0088】
図6は、低圧配管および中圧配管ならびにガバナの組み合わせおよび配管形状を最も簡略化した1ブロック内の配管構成の基本形を想定し、その配管構成に損傷が発生した場合における、ガスの圧力状態・漏洩状態の時間的推移等の解析方法の一例についてを説明するための図である。ここでは、低圧配管42の断面積は一様にAL、一連の低圧配管42の総延長はL、通常時のガスの設定圧力はPL−nol 、外気圧はPG とし、地震動に起因して配管の破損箇所が低圧配管42における一箇所に発生しており、その破損箇所からのガス漏洩の単位時間当たりの流量はQであるものとする。また、一つのブロック内の一連の低圧配管42は、中圧配管41にガバナ48を介して接続されているがその部分以外は両端がブロックバルブ47(図6では図示省略)によって閉じられた管状の閉鎖空間と見做すことができる。
【0089】
ガバナ48が、地震動に対応して自動的に、あるいは遠隔操作によって手動的に、遮断状態になった場合には、この1ブロック内の配管構成は図7(A)に示したような管状の閉鎖空間と考えることができる。従って、このような場合には、配管破損が生じると、それ以降、流量Qのガス漏洩が続き、低圧配管42内のガスの圧力PLは通常時の設定圧力PL−nol から外気圧PG にまで低下して行く。そしてこのガス漏洩は、低圧配管42内のガスの圧力PLが外気圧PG と均衡すると(PL=PG になると)、停止する。従って、この場合の低圧配管42内のガスの圧力Pの時系列的推移(時間的変化)は、図7(B)に一例を示したように、時間Δtに亘って、圧力PLが設定圧力PL−nol から外気圧PG までΔPに亘って徐々に低下して行くという様相となる。
【0090】
あるいは、図8(A)に一例を示したように、ガバナ48が未遮断状態にある場合には、ガス漏洩に起因した圧力低下に対応して、ガバナ48が、低圧配管42内の圧力PLを正常な状態に戻すために中圧配管41から低圧配管42へのガスの供給流量を増加させるように機能する。このため、低圧配管42内の圧力PLよりも高い圧力PMに設定されている中圧配管41から低圧配管42へとガスが供給されることによって、低圧配管42内のガスの圧力PLは配管損傷のない通常時の設定圧力PL−nol よりも高い圧力値となる。また、この場合のガス漏洩の流量Qは、ガバナ48が遮断状態になっている場合よりも大きな流量となる。しかも、この状態はガバナ48が遮断されない限りは継続することとなる。従って、この場合の低圧配管42内のガスの圧力PLの時系列的推移は、図8(B)に一例を示したように、配管破損が生じると、その直後にはガス漏洩に起因したガスの流失に因って低圧配管42内の圧力PLは通常時の圧力PL−nolから若干低下するが、その圧力低下に対応してガバナ48が圧力PMでガスを低圧配管42へと大量に供給し続けるので、結局、低圧配管42内の圧力PLは通常時の圧力PL−nolよりも高い状態となる。その状態はガバナ48を遮断状態にするまで継続されることとなる。そして例えば遠隔操作によってガバナ48が遮断状態に切り替えられると、圧力状態は図7(B)に示したような推移を辿って、低圧配管42内のガスの圧力PLが外気圧PG と均衡するに至り、ガス漏洩が停止する。
【0091】
一つのブロック内での圧力状態およびガス漏洩状態は、概ね上記のような2種類の時系列的推移のうちのいずれかまたはそれらを組み合わせた様相となる。
【0092】
なお、流量Qや圧力Pの時間的変化の具体的なパターンについては、例えば図7(B)に示したような指数関数的なものとなることなどが想定されるが、さらに詳細には、実際の配管網における時間的変化パターンをガス漏洩実験等により予め確認して関数化しておき、その関数を用いて、設定圧力PL−nol 、外気圧PG 、流量Q等の具体的な各数値を代入することなどによって解析することができる。また、ガス漏洩が継続する時間Δtは、圧力Pが設定圧力PL−nol から外気圧PG に低下するまでの時間を境界条件として、上記の流量Qや圧力Pの時間的変化のパターンを表した関数に基づいて算出することができる。また、漏洩したガスの総量は、流量Qを時間Δtに亘って積分することによって算出することができる。
【0093】
なお、配管損傷箇所が複数である場合には、最も簡易化した解析手法としては、その複数箇所のガス漏洩の流量Qや圧力変化ΔPの線形的な総和を演算することで、一つのブロック内での圧力状態およびガス漏洩状態の解析結果を得るようにすることなどが可能である。
【0094】
解析装置30は、このようにして個々に解析されたブロック毎での圧力状態およびガス漏洩状態の解析結果を纏めることによって、配管網全体の圧力状態およびガス漏洩状態の時系列的推移の解析結果を得ることができる。そしてその解析結果は、例えば端末装置10の表示デバイス302の画面に、図4,図5等で示したようなマップ画像として配管損傷箇所を表示すると共に、そのマップ画像の中からユーザが選択した箇所についての圧力状態およびガス漏洩状態の時系列的推移の解析結果を図7(B)、図8(B)に示したようなグラフで表示して、地震発生時の配管網地震被害状態シミュレーションを実行することができる。また、その解析結果のデータは記憶装置40に蓄積させておくようにすることができる。
【0095】
記憶装置40は、上記のようにして解析装置30で行われた解析結果のデータを、解析条件として入力された地震動の情報と対応付けて記憶する。このようにすることで、ユーザは、この記憶装置40に記憶され蓄積されているデータのうちから、例えば震源位置(x,y)および震度(SI)のような地震動の情報を訓練シミュレーション等を行う際の検索キーワードとして用いて、所望の震源位置および震度を想定した地震動に対応した圧力状態や漏洩状態の解析結果の情報を端末装置10によって読み出すことができる。
【0096】
またさらには、地震動に対応した圧力状態や漏洩状態の解析結果の情報をガバナ48の遠隔操作の情報と共に関連付けて、地震防災訓練シミュレーションの履歴あるいは過去ログ的なデータとして記憶装置40に蓄積してくようにすることで、後にそれを読み出して、地震防災訓練のケーススタディを行うための資料等となる情報として利用することができるようにしてもよい。
【0097】
あるいは、本実施の形態に係る配管網地震被害状態シミュレーションシステムを繰り返し利用して行くうちに、記憶装置40に蓄積されたデータは、多様な解析条件に対応した多様な状況についての圧力状態や漏洩状態の解析結果を有するものとなって行くので、そのようなデータは、単に地震防災訓練用のシミュレーションに利用するだけでなく、例えば実際に震災が発生して、被災地域における配管網(における中圧配管41や低圧配管42)やガバナ48等の被害状況やガス遮断状況についての情報収集が困難あるいは不可能となった場合などに、そのとき実際に発生した地震動のデータが入手できれば、被災地域における被害状況を高い確度で推定するためのシミュレーションを行うために利用することなども可能である。
【0098】
次に、本実施の形態に係る地震防災訓練用のシミュレーションシステムの主要な動作について説明する。図9は、この地震防災訓練用のシミュレーションシステムの動作の主要な流れを表したものである。
【0099】
まず、ユーザは、解析条件として震源地(x,y)および地震動値SIなど地震動の情報を、端末装置10の入力装置400によって入力する(S1)。
【0100】
サーバ20は、入力された地震動の情報に対応して、配管網における破損発生箇所44の推定と(S2)、各ガバナ48の自動遮断の有無の推定とを行う(S3)。その推定結果の情報(データ)は、一旦、端末装置10に送られて、配管網のマップ画像およびそのなかでの破損発生箇所44のピンポイント表示が、端末装置10の表示装置300の画面に表示される(S4)。ユーザは、その画像をチェックして、自らの意図している訓練シミュレーション等に適合したものである場合には(S5のY)、そのときの推定結果の情報は解析装置30に伝送される。しかしここでユーザが推定結果に満足しなかった場合には(S5のN)、そのときの推定結果の情報(データ)は破棄され、ユーザは今回とは異なった解析条件を入力する。すると、再度、上記のS1からS5までのステップが繰り返される(S5のN〜S1〜S5)。
【0101】
解析装置30では、サーバ20から伝送されて来た破損発生箇所44の推定結果の情報および各ガバナ48の自動遮断の有無の推定結果の情報に基づいて、ブロック毎での圧力状態およびガス漏洩状態の時系列的推移を解析し(S6)、それらの解析結果の情報(データ)を纏めて、配管網全体の解析結果を端末装置10の画面などに表示させる(S7)。
【0102】
続いて、ガバナ48の遠隔操作の訓練を行うシミュレーションの場合などには、被訓練者は端末装置10の画面などに表示された解析結果を参照しながら、入力装置400によってガバナ48の仮想的な遠隔操作を行う(S8)。するとサーバ20および解析装置30は、被訓練者によって入力された遠隔操作に基づいて、このシステム内での仮想的なガバナ48の遮断動作が行われた場合の再解析を行って(S9)、その再解析の結果を端末装置10の画面などに表示させる(S10)。そしてこのときの再解析結果を蓄積することをユーザが所望する場合には(S11のY)、その再解析結果のデータを、記憶装置40に記憶させる(S12)。
【0103】
あるいは、解析結果のデータが記憶装置40に多数蓄積されており、そのなかから適宜に所望の地震動に対応したデータを読み出して訓練シミュレーション等を開始することをユーザが所望する場合には、図10に示したように、ユーザは、まず、解析条件として震源地(x,y)および地震動値SIなど地震動の情報を、データ検索用のキーワードとして、端末装置10の入力装置400によって入力する(S21)。
【0104】
すると端末装置10またはサーバ20は、入力された地震動の情報((x,y),SI)をデータ検索用のキーワードとして用いて、そのキーワードに適合した解析結果のデータを、記憶装置40に蓄積されている過去の解析結果のデータのなかから検索して読み出す(S22)。そしてそのデータに基づいて破損発生箇所44のピンポイント表示や圧力状態およびガス漏洩状態の時系列的推移の表示を、表示装置300の画面に出力する(S23)。
【0105】
それに続いて、もしもガバナ48の遮断に関しての遠隔操作の訓練を行う場合には(S24のY)、ユーザは例えばガバナ訓練開始の命令を入力することで、図9に基づいて説明したようなS8〜S12の各ステップが実行されて、ガバナ48に対する遠隔操作の訓練シミュレーションが実行される。
【0106】
以上のように、本実施の形態に係る配管網地震被害状態シミュレーションシステムまたはそれによって具現化される配管網地震被害状態シミュレーション方法では、入力された地震動の情報(SI,(x,y)など)に対応して、配管網中のどこに配管破損や亀裂等の構造力学的な被害が発生するか、その破損発生箇所44をサーバ20が推定し、その推定された箇所が被害を受けたということを解析条件に含めて、解析装置30が配管網におけるガスの圧力状態や漏洩状態の解析を行うようにしたので、地震が発生した場合に想定される具体的な漏洩状態や圧力状態についての、よりリアルな解析やシミュレーションを実行することができる。
【0107】
また、解析装置30によって、ガスの圧力状態または漏洩状態についての時系列的な解析を行うようにしたので、地震発生後の配管網におけるガスの圧力状態や漏洩状態の時間的変化(圧力の推移や漏洩量の時間的増減など)についての、時間的な変化も含めての、さらにリアルなシミュレーションを実現することができる。
【0108】
また、ユーザが入力した地震動の情報に対応してサーバ20で推定された配管網の破損発生箇所44の情報を、圧力状態や漏洩状態などの地震被害状態の解析を行う以前に確認することができるようにしているので、ユーザは、自らの最も所望する条件に近いシミュレーションや訓練を行うに当って解析装置30に入力することが必要かつ有効な解析条件や破損発生状況などの前提条件を事前に容易に選定することが可能となり、またそのような前提条件に基づいたユーザの所望に則した有効なシミュレーションを確実に、かつ迅速に行うことが可能となっている。
【0109】
また、サーバ20による破損発生箇所44の推定結果に基づいた解析を行うこと以外に、配管網における所望の位置に破損等の被害が発生した場合をユーザが仮想して、その場合での圧力状態や漏洩状態についての解析を実行することも可能であるようにしたので、シミュレーションや訓練を行うに当っての解析条件や被害状況の選択の自由度をさらに高いものとすることができる。
【0110】
また、配管網におけるガスの圧力分布やガス漏洩状態に多大な影響を与えるガバナ48の自動遮断や遠隔操作による遮断動作も解析条件のうちに含めた解析を行うことができるようにしたので、さらにリアルなシミュレーションを実現することが可能となっている。
【0111】
なお、解析結果の情報は、記憶装置40に一時記憶あるいは蓄積しないで直接的に表示出力あるいは印刷出力してもよいことは言うまでもない。
【0112】
また、本実施の形態では、圧力・漏洩状態の解析対象の流体として可燃性のガスを想定した場合について説明したが、これのみには限定されない。この他にも、例えば石油や上・下水のような液体状の流体を輸送するための配管網や、所定の管区地域内にほぼ平面的に敷設された配管網のみならず所定の建築物内に立体的に配設された配管網などにも、本実施の形態に係る配管網地震被害状態シミュレーションシステムまたは配管網地震被害状態シミュレーション方法を適用可能であることは言うまでもない。
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし13のいずれかに記載の配管網地震被害状態シミュレーションシステムまたは請求項14ないし26のいずれかに記載の配管網地震被害状態シミュレーション方法によれば、まずユーザ等によって入力された地震動の情報に対応して、配管網中のどの箇所に配管の破損や亀裂等の構造力学的な被害が発生するかを推定し、その推定された箇所が被害を受けたということを解析条件に含めたうえで、配管網における流体の圧力状態や漏洩状態の解析を行うようにしたので、地震発生時に想定される具体的な漏洩状態や圧力状態についての、よりリアルな解析やシミュレーションを実行することができる。延いては、そのような配管網における流体の具体的な圧力異変や漏洩などについての地震発生時の状態の仮想的な実現(シミュレーション)を利用して、より現実的で効果的な地震対策訓練を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る配管網地震被害状態シミュレーションシステムの概要構成を表した図である。
【図2】サーバ20の機能的な概要構成を表した図である。
【図3】臨界変形量(Dcr)と臨界地震振幅値(Ucr)との対応関係を示すグラフである。
【図4】一単位のブロック内における配管構成の一例をマップ化して模式的に表した図である。
【図5】一単位のブロック内における配管等の被害発生およびガバナの未遮断状態に起因したガス漏洩状態の一例を模式的に表した図である。
【図6】低圧配管および中圧配管ならびにガバナの組み合わせおよび配管形状を最も簡略化した1ブロック内の配管構成の基本形を想定し、その配管構成に損傷が発生した場合における、ガスの圧力状態・漏洩状態の時間的推移等の解析方法の一例についてを説明するための図である。
【図7】一単位のブロック内における配管等の被害が発生し、かつガバナが遮断状態になった場合のガス漏洩状態の一例を模式的に表した図(A)およびその場合の圧力・漏洩状態の時系列的推移を表した図(B)である。
【図8】一単位のブロック内における配管等の被害発生およびガバナの未遮断状態に起因したガス漏洩状態の一例を模式的に表した図(A)およびその場合の圧力・漏洩状態の時系列的推移を表した図(B)である。
【図9】本実施の形態に係る地震防災訓練用のシミュレーションシステムの動作の主要な流れを表した図である。
【図10】解析結果のデータが記憶装置に多数蓄積されており、そのなかから適宜に所望の地震動に対応したデータを読み出して訓練シミュレーション等を開始する場合の動作の主要な流れを表した図である。
【符号の説明】
10…端末装置、20…サーバ、30…解析装置、40…記憶装置、41…中圧配管、42…低圧配管、44…破損発生箇所、48…ガバナ
Claims (26)
- 地震動の情報の入力に対応して、所定種類の流体を輸送対象とした配管網における前記地震動に起因した被害発生箇所の推定を行う配管網被害推定手段と、
前記配管網被害推定手段によって推定された被害発生箇所の情報に基づいて、前記配管網における前記流体の圧力状態または漏洩状態のうち少なくともいずれかの解析を行う配管網流体状態解析手段と
を備えたことを特徴とする配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 前記配管網流体状態解析手段による解析結果の情報を少なくとも前記地震動の情報と対応付けて記憶する解析結果記憶手段を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 前記地震動の情報のうちから選択された地震動の情報が入力されると、前記解析結果記憶手段に記憶されている情報のうちから、前記入力された地震動の情報に対応した解析結果の情報を読み出す解析結果読出手段を備えた
ことを特徴とする請求項2記載の配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 前記配管網流体状態解析手段は、前記流体の圧力状態または漏洩状態のうち少なくともいずれかについての時系列的な解析を行う
ことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 前記地震動の情報の入力を行う地震動情報入力手段と、
前記配管網流体状態解析手段によって解析された解析結果の情報または前記解析結果記憶手段から読み出された解析結果の情報を出力する解析結果情報出力手段とを備えた
ことを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 前記配管網被害推定手段による推定結果の情報を出力する被害推定結果情報出力手段を備えた
ことを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 前記地震動情報入力手段と、前記被害推定結果情報出力手段とが、同一の入出力端末装置によって兼備されている
ことを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 前記配管網流体状態解析手段が、配管網被害推定手段によって推定された被害発生箇所の情報以外に、前記配管網における被害発生箇所の仮想された情報の入力を受けて、当該仮想された被害発生箇所の情報に基づいて前記解析を行う機能を、さらに備えている
ことを特徴とする請求項1ないし7のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 前記配管網が、所定の地震動に対応して自動的に弁閉動作を行う弁装置を備えたものであり、
前記配管網流体状態解析手段は、前記弁閉動作が行われたことを解析条件に含めた前記配管網における前記流体の圧力状態または漏洩状態の解析を行う
ことを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 前記配管網が、遠隔操作によって弁開閉動作が可能な弁装置を備えたものであり、
前記配管網流体状態解析手段は、前記遠隔操作の入力を受けて、当該遠隔操作に対応した前記弁装置の弁開閉動作が行われたものと仮想し、当該弁開閉動作が行われたことを解析条件に含めた前記配管網における前記流体の圧力状態または漏洩状態の解析を行う
ことを特徴とする請求項1ないし9のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 前記解析結果記憶手段が、前記配管網流体状態解析手段による解析結果を前記遠隔操作の情報と共に記憶する
ことを特徴とする請求項10記載の配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 前記配管網が、前記流体の圧力状態を調節する機能を有するガバナを備えたものである
ことを特徴とする請求項1ないし11のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 前記流体が可燃性のガスであり、
前記配管網が、前記ガスを輸送または供給対象としたガス配管網である
ことを特徴とする請求項1ないし12のうちいずれか1つの項に記載のガス配管網用の配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 地震動の情報の入力に対応して、所定種類の流体を輸送対象とした配管網における前記地震動に起因した被害発生箇所の推定を行う配管網被害推定プロセスと、
前記配管網被害推定プロセスによって推定された被害発生箇所の情報に基づいて、前記配管網における前記流体の圧力状態または漏洩状態のうち少なくともいずれかの解析を行う配管網流体状態解析プロセスと
を含んだことを特徴とする配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 前記配管網流体状態解析プロセスによる解析結果の情報を少なくとも前記地震動の情報と対応付けて記憶手段に格納する解析結果記憶プロセスを含んだ
ことを特徴とする請求項14記載の配管網地震被害状態シミュレーションシステム。 - 前記地震動の情報のうちから選択された地震動の情報が入力されると、前記解析結果記憶プロセスに記憶されている情報のうちから、前記入力された地震動の情報に対応した解析結果の情報を読み出す解析結果読出プロセスを含んだ
ことを特徴とする請求項15記載の配管網地震被害状態シミュレーション方法。 - 前記配管網流体状態解析プロセスでは、前記流体の圧力状態または漏洩状態のうち少なくともいずれかについての時系列的な解析を行う
ことを特徴とする請求項14ないし16のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーション方法。 - 前記地震動の情報の入力を行う地震動情報入力プロセスと、
前記配管網流体状態解析プロセスによって解析された解析結果の情報または前記解析結果記憶プロセスから読み出された解析結果の情報を出力する解析結果情報出力プロセスと
を含んだことを特徴とする請求項14ないし17のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーション方法。 - 前記配管網被害推定プロセスによる推定結果の情報を出力する被害推定結果情報出力プロセスを含んだ
ことを特徴とする請求項14ないし18のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーション方法。 - 前記地震動情報入力プロセスと、前記被害推定結果情報出力プロセスとが、同一の入出力端末装置によって実行される
ことを特徴とする請求項14ないし19のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーション方法。 - 前記配管網流体状態解析プロセスでは、配管網被害推定プロセスによって推定された被害発生箇所の情報以外に、前記配管網における被害発生箇所の仮想された情報の入力を受けて、当該仮想された被害発生箇所の情報に基づいて前記解析を行う
ことを特徴とする請求項14ないし20のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーション方法。 - 前記配管網が、所定の地震動に対応して自動的に弁閉動作を行う弁装置を備えたものであり、
前記配管網流体状態解析プロセスでは、前記弁閉動作が行われたことを解析条件に含めて前記配管網における前記流体の圧力状態または漏洩状態の解析を行う
ことを特徴とする請求項14ないし21のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーション方法。 - 前記配管網が、遠隔操作によって弁開閉動作が可能な弁装置を備えたものであり、
前記配管網流体状態解析プロセスでは、前記遠隔操作の入力を受けて、当該遠隔操作に対応した前記弁装置の弁開閉動作が行われたものと仮想し、当該弁開閉動作が行われたことを解析条件に含めて前記配管網における前記流体の圧力状態または漏洩状態の解析を行う
ことを特徴とする請求項14ないし22のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーション方法。 - 前記解析結果記憶プロセスでは、前記配管網流体状態解析プロセスによる解析結果を前記遠隔操作の情報と共に記憶する
ことを特徴とする請求項23記載の配管網地震被害状態シミュレーション方法。 - 前記配管網が、前記流体の圧力状態を調節する機能を有するガバナを備えたものである
ことを特徴とする請求項14ないし24のうちいずれか1つの項に記載の配管網地震被害状態シミュレーション方法。 - 前記流体が可燃性のガスであり、
前記配管網が、前記ガスを輸送または供給対象としたガス配管網であり、
前記配管網における前記ガスの圧力状態または漏洩状態のシミュレーションを行う
ことを特徴とする請求項14ないし25のうちいずれか1つの項に記載のガス配管網用の配管網地震被害状態シミュレーション方法。
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