JP2004303001A - 地震防災システムおよび配管網における遮断弁装置の制御方法ならびに地震防災・訓練方法 - Google Patents
地震防災システムおよび配管網における遮断弁装置の制御方法ならびに地震防災・訓練方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】システムの構成を繁雑化することなく、リアルなシミュレーションによる訓練機能と実際の地震発生時の防災機能とを併せ持っており、また誤遮断やハッカーに因る不法侵入等の虞のない地震防災システムまたは配管網における遮断弁装置の制御方法もしくは地震防災・訓練方法を実現する。
【解決手段】実際の地震が発生した際に実行される機能である地震発生時情報収集機能および地震発生時防災機能と、訓練時に実行される機能である訓練時仮想情報生成機能および訓練時仮想防災機能とを、主情報処理装置であるサーバ20の一つのハードウェアで兼備するようにしている。また、サーバ20及び端末装置10は、管理対象の全区域内の配管網を複数個のブロックに分けて、そのブロックごとで1ブロック内の全てのガバナ31を一斉に遮断状態にする制御を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】実際の地震が発生した際に実行される機能である地震発生時情報収集機能および地震発生時防災機能と、訓練時に実行される機能である訓練時仮想情報生成機能および訓練時仮想防災機能とを、主情報処理装置であるサーバ20の一つのハードウェアで兼備するようにしている。また、サーバ20及び端末装置10は、管理対象の全区域内の配管網を複数個のブロックに分けて、そのブロックごとで1ブロック内の全てのガバナ31を一斉に遮断状態にする制御を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば都市ガスの配管網のような流体を輸送する配管網における、地震発生時の防災活動を支援・実行するための、地震防災システムおよび配管網における遮断弁装置の制御方法ならびに地震防災・訓練方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ガスや上下水道の配管網は一般に、一般家庭向けなどの燃料用ガスや水道水のような公共的資源を所定の地域内の需要家に対して確実に供給するために、その供給対象地域内に、あたかも人体における血管網のように複雑な形状のネットワーク状に設置されている。例えば都市ガスの配管網では、いわゆる導管はほぼ全体的に、ガス供給時業者が管轄している所定地域内の地下に埋設されており、一般に埋設管と呼ばれている。但し、少数ではあるが、部分的には導管が地上に露出している場所もある。
【0003】
都市ガスのような燃料用流体を輸送するための配管網では、地震が発生した場合、その地震の規模如何によっては、配管に破損等の被害が発生し、その発生箇所を中心として、例えばガス漏洩や圧力異変等が生じる虞がある。このため、輸送対象として可燃性のガスを取り扱うガス供給事業者等としては、ガス配管網における安全を確保できるように、地震に起因して配管に生じる被害状況を正確に把握すること、そしてそのような配管網の被害に起因して発生する虞のあるガス漏洩や圧力異常などの発生状態などを情報収集して、即座に的確に対応することができるようにしておくことが必要となる。
【0004】
実際に地震が発生してガス漏洩や圧力異変等が生じた場合には、短時間のうちに適切な緊急処置を施すことなく放置しておいたりなどすると、火災や爆発等のいわゆる二次災害を引き起こす要因となってしまう虞がある。例えば、ガス配管網では一般に、上流側の中圧導管から下流(末端)側の低圧導管へとガスを供給する地点ごとに、いわゆるガバナが設けられており、このガバナによってガスの供給圧力が調節されるようになっているが、地震発生時に低圧導管が破損するなどして漏洩が生じた場合には、ガバナが導通状態を続けていると、ガスが供給され続けて、ガス漏洩がむしろ助長されてしまう。このため、特に被災地域内の配管網では、確実に全てのガバナあるいはそれに代る緊急時の遮断弁装置等を遮断状態にすることが必要である。従って、従来、個々のガバナや遮断弁装置を個別に遠隔操作して遮断を行うという機能を有する地震防災システムが提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−75040号公報(発明の詳細な説明全体)
【特許文献2】
特開2002−168963号公報(発明の詳細な説明全体)
【特許文献3】
特開平11−84017号公報(発明の詳細な説明全体)
【特許文献4】
特開2002−162893公報(発明の詳細な説明全体)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、遮断する必要のない地域については、地震発生時のような緊急時にあっても熱エネルギや電気エネルギの源として利用価値の高いガスを供給停止すると、例えば被災地における防災活動のために必要なエネルギ源を遮断することになる虞があるので、全管区のガバナや遮断弁装置を全て遮断状態にすることは望ましくない。
【0007】
しかも、実際には都市ガス供給者が管理すべき配管網の全管区内には、例えば3000箇所以上のような極めて多数の箇所にガバナや遮断弁装置が設置されているが、それら全てについて個々に、遮断が必要であるか否かを短時間で的確に判断して過不足なく人的に遠隔操作することは、地震発生時のような緊急事態であるという状況とも相俟って、極めて困難あるいは不可能である。
【0008】
また、地震発生時には、上記のようなガバナや遮断弁装置を遠隔操作する機能を備えた地震防災システムでは、遠隔操作を行う際に利用する通信システムや情報処理装置などにも故障や通信異常や動作異常等が生じる確率が高い。このため、遮断が必要であるガバナを遮断状態にすることができなかったり、あるいは逆に、遮断しなくともよい(あるいは遮断することは望ましくない)ガバナを遮断状態にしてしまったりするといった不都合が生じる虞がある。
【0009】
また、実際の地震が発生した際に、いわゆる「ぶっつけ本番」的に地震防災システムを操作して防災活動を行っても、その地震防災システムについて操作者が不慣れであることや、それと共に緊急事態であることに因る精神的なプレッシャ(圧迫感・重圧感)などに起因して、的確で迅速な防災活動を冷静に行うことが困難となる虞がある。このため、ガス供給事業者等としては、地震対策に関する防災活動の一環として、例えば過去に発生した地震の震度や震源の位置などに関する記録に基づくなどして仮想の地震発生を想定し、そのような地震が発生した際のガス配管網の被害状況やガス漏洩状況等のシミュレーションによる訓練を行うなどして、操作者等が地震発生時の状況に対する的確な緊急処置を沈着・冷静に行うことができるようにしておくことが必要である。
【0010】
しかしながら、そのような地震が発生した際のガス配管網の被害状況やガス漏洩状況等のシミュレーションを行うことができる装置またはシステムもしくは方法については、従来、有効なものは提案されておらず、従って実用化されていないことは言うまでもなかった。
【0011】
しかも、折角そのような防災シミュレーションシステムを構築しても、実際の防災活動を行うための地震防災システムとは異なったシステムや操作方法であると、訓練の意味を成さないので、地震防災システムと同様の遮断機能や情報収集機能や表示出力機能などを仮想的に実現するシステムが望まれるが、そのようなシステムはそれ自体で極めて繁雑なものとなる傾向にある。
【0012】
また、特開2002−162893公報にて提案された技術では、地震発生時を想定した訓練シナリオを予め設定してデータベース化しておき、そのうちから適宜のシナリオを選択して用いて地震発生時の防災訓練を行うというものであるが、この技術によれば、災害位置・規模に応じた災害を模擬し、訓練参加者の立場毎に、時々刻々とネットワーク経由で災害訓練シナリオを提供することができるようになる。また、防災組織の運営上の訓練を行うということを主な目的としており、その意味では、防災組織の全体的な訓練を行うことが可能なものとなっている。
【0013】
しかしながら、この技術についても、基本的に、ガス漏洩やガバナの遮断状態などのシミュレーションを行うのではなく、そのようなシミュレーションとは無関係に予め多数の訓練シナリオを人為的に想定して作製しておき、そのなかから適宜に選択した訓練シナリオを用いて訓練を行う、というものであるため、実際の地震発生時に配管網中に発生する被害箇所や、その箇所ごとでのガス漏洩や圧力異変等の具体的な状態についての、より現実的な(実際に起こり得るという、いわゆるリアルな)シミュレーションを行って、それに対して遮断の遠隔操作を行う訓練を実現できる、という観点では、基本的に不十分なものであった。
【0014】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、第1に、地震発生時の防災のために遮断が必要なガバナまたは遮断弁装置を確実に遮断することができる地震防災システムおよび配管網における遮断弁装置の制御方法ならびに地震防災・訓練方法を提供することにある。
【0015】
また、第2に、地震発生時にはシステムやその遠隔操作に動作異常や通信異常が発生する虞があるが、そのような異常が発生した場合であっても、不必要なガバナや遮断弁装置の遮断を行うことなく、防災に必要な遮断のみを確実に行うことができる地震防災システムおよび配管網における遮断弁装置の制御方法ならびに地震防災・訓練方法を提供することにある。
【0016】
また、第3に、システムの全体的な構成を繁雑化することなく、地震発生時のガス配管網の被害状況やガス漏洩状況および遮断の遠隔操作等のシミュレーションによるリアルな訓練を行うことができる地震防災システムおよび配管網における遮断弁装置の制御方法ならびに地震防災・訓練方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1の地震防災システムは、所定種類の流体を輸送する配管網中に設置され前記流体の遮断を行う機能を備えた遮断弁装置と、前記遮断弁装置とは離れた位置に設置されて前記遮断弁装置の動作を遠隔操作によって制御する遮断弁遠隔制御装置であって、前記配管網を複数個のブロックに分けてそのブロックごとに1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御を行う機能を備えた遮断弁遠隔制御装置とを備えている。
【0018】
また、本発明による配管網における遮断弁装置の制御方法は、所定種類の流体を輸送する配管網中に設置された遮断弁装置によって前記流体の遮断を行うプロセスと、前記遮断弁装置の動作を遠隔制御する遮断弁遠隔制御プロセスであって、前記配管網を複数個のブロックに分けて、ブロックごとに1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御を行う遮断弁遠隔制御プロセスとを含んでいる。
【0019】
すなわち、本発明による第1の地震防災システムまたは本発明による配管網における遮断弁装置の制御方法では、全管区内の(換言すれば管理対象の全区域内の)配管網を複数個のブロックに分けて、そのブロックごとで、1ブロック内の全ての遮断弁装置を一斉に遮断状態にする制御を行うことによって、地震発生時に例えば1ブロック内に配管の破損等が発生してガスのような輸送対象である流体の漏洩が生じた際に、当該ブロックへのガスのような流体の供給を確実に遮断することができる。
【0020】
ここで、前記各ブロックは、1ブロック内の全ての遮断弁装置が遮断状態になると当該1ブロックとその外部との間での前記流体の出入が完全に遮断されるように設定されていることが望ましい。上記のような地震発生時に配管の破損に起因した漏洩等が発生した際に、当該ブロックに対してその外部の配管網から供給されるガスのような輸送対象である流体の流入を完全に遮断して、それ以上、漏洩等が継続することを防止することが可能となるからである。
【0021】
また、前記1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行わせるための命令電文を前記遮断弁遠隔制御装置に対して入力する端末装置を備えており、前記端末装置は、前記命令電文として、前記遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行わせるための命令の電文と当該遮断弁装置が設置されているブロックの識別情報の電文とを組み合わせてなる電文を前記1ブロック内の全ての遮断弁装置のそれぞれに対して1対1に対応するように生成し、前記全ての遮断弁装置に対する電文を一纏まりにして前記遮断弁遠隔制御装置へと送出し、前記遮断弁遠隔制御装置は、前記端末装置から一纏まりの電文が送られて来ると、当該一纏まりの複数個の電文中に含まれているブロックの識別情報の電文のうちに他とは異なった識別情報が一つでも混在している場合には、当該ブロックにおける遮断弁装置を遮断状態に制御する動作は行わないようにすることが望ましい。
【0022】
すなわち、1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行わせるにあたり、遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行わせるための命令の電文と当該遮断弁装置が設置されているブロックの識別情報の電文とを組み合わせてなる電文を1ブロック内の全ての遮断弁装置のそれぞれに対して1対1に対応するように生成し、それら全ての遮断弁装置に対する電文を一纏まりにして、端末装置から遮断弁遠隔制御装置へと送信することなどが有効であるが、この場合、例えば地震被害等に起因してシステムや通信手段に故障や動作異常が生じていると、一纏まりの複数個の電文中に含まれているブロックの識別情報の電文のうちに、他とは異なった識別情報が混在してしまうといった異常が生じることなどがあり得る。逆に、異常のない正しい電文であれば、一纏まりの複数個の電文中に含まれている識別情報は、全て同じくその当該ブロックについてのものである筈である。そこで、一纏まりの複数個の電文中に、他とは異なった識別情報が一つでも混在している場合には、そのときの電文は異常なものであるとして、その電文にて指定されている当該ブロックにおける遮断弁装置を遮断状態に制御する動作は行わないようにすることで、システム異常や通信異常等に起因した誤遮断あるいはハッカーの違法なシステム侵入等を防止することができる。
【0023】
あるいは、前記端末装置は、前記命令電文として、同一内容の電文を所定の複数回に亘って繰り返し送出し、前記遮断弁遠隔制御装置は、前記端末装置から前記同一内容の電文が前記所定の複数回に亘って繰り返し送られて来た場合には、前記遮断弁装置を遮断状態にする制御を行うが、前記端末装置から前記同一内容の電文が前記所定の複数回とは異なった回数送られて来た場合には、前記遮断弁装置を遮断状態にする制御は行わないようにすることなども望ましい。
【0024】
すなわち、例えば地震被害等に起因してシステムや通信手段に故障や動作異常が生じていると、端末装置から同一内容の電文が所定の複数回に亘って繰り返し送出されるのではなくて、その所定の回数未満あるいは所定の回数超などの異常な回数の電文が送出される可能性が高い。そこで、このような所定の回数とは異なった回数の電文が送られて来た(受信した)場合には、遮断弁遠隔制御装置は、遮断弁装置を遮断状態にする制御は行わないようにする。しかし同一内容の電文が前記所定の複数回に亘って繰り返し送られて来た場合には、正しい電文が送られて来たものとして、その電文に従って、遮断弁装置を遮断状態にする制御を行う。このようにすることにより、システム異常や通信異常等に起因した誤遮断を防止することができる。
【0025】
あるいは、前記遮断弁遠隔制御装置は、前記遮断弁装置を制御するに際して、当該遮断弁装置に対して同一内容の制御信号を所定の複数回に亘って繰り返し送出し、前記遮断弁装置は、前記遮断弁遠隔制御装置から前記同一内容の制御信号が前記所定の複数回に亘って繰り返し送られて来た場合には、前記遮断状態にする制御を行うが、前記遮断弁遠隔制御装置から前記同一内容の制御信号が前記所定の複数回とは異なった回数送られて来た場合には、前記遮断状態にする制御は行わないようにしてもよい。
【0026】
すなわち、例えば地震被害等に起因してシステムや通信手段に故障や動作異常が生じていると、遮断弁遠隔制御装置から同一内容の制御信号が所定の複数回に亘って繰り返し送出されるのではなくて、その所定の回数未満あるいは所定の回数超などの異常な回数の制御信号が送出される可能性が高い。そこで、このような所定の回数とは異なった回数に亘って制御信号が送られて来た(受信した)場合には、遮断弁装置は、その制御信号に基づいた遮断の動作は行わないようにする。しかし同一内容の制御信号が所定の複数回に亘って繰り返し送られて来た場合には、遮断弁装置は、正しい制御信号が送られて来たものとして、その制御信号に従って遮断状態にする動作を行う。このようにすることにより、システム異常や通信異常等に起因した誤遮断やハッカーに因る不法なシステム侵入等を防止することができる。
【0027】
あるいは誤遮断等をさらに確実に防止するためには、前記命令電文または前記制御信号の繰り返しの周期が所定範囲内である場合にのみ、前記制御または前記動作を行うようにすることが望ましい。
【0028】
なお、前記遮断弁装置は、地震動を計測する地震動計測装置が付設されて、所定の大きさ以上の地震動が前記地震動計測装置で計測された場合にはそれに対応して自動的に前記遮断状態にする動作を行う自動感震遮断の機能をさらに備えており、前記遮断弁装置または前記遮断弁遠隔制御装置もしくは前記端末装置は、地震の発生を検知する地震発生検知装置をさらに備えて、所定の規模以上の地震が検知された場合には、地震が発生したものと自動的に判断し、前記命令電文または前記制御信号に対応して前記1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御を行うことが可能な状態を所定時間に亘って継続するが、所定の規模未満の地震の発生が検知された場合または地震が全く検知されていない場合には、前記命令電文または前記制御信号の有無に関わらず、前記1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御は行わないようにしてもよい。
【0029】
すなわち、地震発生検知装置をさらに備えて、所定の規模以上の地震が検知された場合には、地震が発生したものと自動的に判断して、上記のように1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御を行うことが可能な状態を所定時間に亘って継続する。しかし、例えば地震が全く検知されていない場合には、このとき地震が発生していないのであるから、上記のような命令電文や制御信号を受けても、遮断を行うことは妥当ではなく誤遮断の可能性が極めて高い。よって、所定の規模未満の地震の発生が検知された場合または地震が全く検知されていない場合には、命令電文または制御信号の有無に関わらず、1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御は行わないようにすることで、誤遮断を防止することができる。
【0030】
本発明による第2の地震防災システムは、所定種類の流体を輸送する配管網中に設置され前記流体の遮断を行う機能を備えた遮断弁装置であって外部から入力される制御信号に対応して前記遮断を行う動作が遠隔操作される遮断弁装置と、前記遮断弁装置に付設されて、前記遮断弁装置の遮断状態に関する情報、前記流体の圧力に関する情報、前記流体の流量に関する情報、前記遮断弁装置の設置された位置にて計測される地震動の情報のうち、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する情報を検出して出力する地震時遠隔監視装置と、前記地震時遠隔監視装置から離れた位置に設置されて、実際の地震発生時に前記地震時遠隔監視装置から送られて来た情報に基づいて、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する前記配管網中における地理的な分布の情報を収集および処理して出力または記憶する地震発生時情報収集機能、および実際の地震発生時に前記遮断弁装置に対して遮断動作を遠隔操作する地震発生時防災機能と、訓練時に入力される仮想的な地震動データに基づいて、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する前記配管網中における地理的な分布の情報を仮想的に生成して出力または記憶する訓練時仮想情報生成機能、および訓練時に前記遮断弁装置に対して前記遮断動作を仮想的に遠隔操作する訓練時仮想防災機能とを、一つのハードウェアで兼備する主情報処理装置と、前記遮断動作を実際に遠隔操作するための電文または前記仮想的な地震動データもしくは前記遮断動作を仮想的に遠隔操作するための電文を前記主情報処理装置に対して入力する機能と、前記主情報処理装置から出力された情報を表示出力または印刷出力もしくは記憶する機能とを備えた端末装置とを備えている。
【0031】
また、本発明による地震防災・訓練方法は、所定種類の流体を輸送する配管網中に設置され前記流体の遮断を行う機能を備えた遮断弁装置に対して、外部から入力される制御信号に対応して前記遮断の動作を遠隔操作する遠隔操作プロセスと、前記遮断弁装置の遮断状態に関する情報、前記流体の圧力に関する情報、前記流体の流量に関する情報、前記遮断弁装置の設置された位置にて計測される地震動の情報のうち、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する情報を得る遠隔監視プロセスと、実際の地震発生時に前記遠隔監視プロセスによって得られた情報に基づいて、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する前記配管網中における地理的な分布の情報を収集および処理して出力または記憶する地震発生時情報収集プロセス、および実際の地震発生時に前記遮断弁装置に対して前記遮断の動作を遠隔操作する地震発生時防災プロセスと、訓練時に入力される仮想的な地震動データに基づいて、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する前記配管網中における地理的な分布の情報を仮想的に生成して出力または記憶する訓練時仮想情報生成プロセス、および訓練時に前記遮断弁装置の遮断状態を仮想的に遠隔操作する訓練時仮想防災プロセスと、前記地震発生時情報収集プロセスによって収集された情報を記憶する地震発生時情報記憶プロセスと、前記訓練時仮想防災プロセスによって生成された情報を記憶する訓練時情報記憶プロセスとを含んでおり、前記地震発生時防災プロセスでは、前記訓練時情報記憶プロセスで記憶された情報を読み出して使用可能であり、前記訓練時仮想防災プロセスでは、前記地震発生時情報記憶プロセスで記憶された情報を読み出して使用可能であるというものである。
【0032】
すなわち、本発明による第2の地震防災システムまたは地震防災・訓練方法では、実際の地震が発生した際に実行される機能である地震発生時情報収集機能および地震発生時防災機能と、訓練時に実行される機能である訓練時仮想情報生成機能および訓練時仮想防災機能とを、一つの主情報処理装置のハードウェアで兼備するようにしている。このようにすることにより、システムの全体的な構成を繁雑なものとすることなく、かつ訓練時のシミュレーションをリアルなものとすることができる。
【0033】
ここで、前記地震発生時情報収集機能によって収集された情報を記憶する地震発生時情報記憶装置と、前記訓練時仮想情報生成機能によって生成された情報を記憶する訓練時情報記憶装置とを備えており、前記主情報処理装置または前記端末装置は、実際の地震発生時には前記訓練時情報記憶装置に記憶されている情報を読み出して使用することが可能であり、訓練時には前記地震発生時情報記憶装置に記憶されている情報を読み出して使用することが可能であるように設定されているようにしてもよい。
【0034】
このようにすることにより、実際に地震が発生した際に収集された情報を訓練時に用いることができるので、極めてリアルなシミュレーションによる訓練の実現が可能となる。また逆に、実際に地震が発生した際に、その地震に起因して、例えばシステムの一部や通信手段の一部に地震被害が生じるなどして、一部の地域の実際の被災状況や遮断状態についての情報が得られない場合などには、その地域に関するそのときの実際の地震動の大きさに対応した、訓練時に生成してなるデータを、訓練時情報記憶装置から検索して読み出すことで、実際に通信手段を介して得ることができなかった情報を補完することが可能となる。
【0035】
なお、前記端末装置は、前記遮断動作を実際に遠隔操作するための電文と、前記遮断動作を仮想的に遠隔操作するための電文とで、異なった電文を用いるように設定されており、前記主情報処理装置は、前記遮断動作を実際に遠隔操作するための電文を受けた場合には前記遮断弁装置を遮断状態にする制御を行うが、前記仮想的に遠隔操作するための電文を受けた場合には前記遮断弁装置を遮断状態にする制御を行わないように設定されているようにすることが望ましい。
【0036】
すなわち、上記のように実際の地震発生時に実行される地震発生時情報収集機能および地震発生時防災機能と、訓練時に実行される機能である訓練時仮想情報生成機能および訓練時仮想防災機能とを、一つの主情報処理装置のハードウェアで兼備するようにした場合には、実際の地震発生時に実際の遮断を行うための電文と仮想的に遮断動作を行うための電文とを同一の電文にしたのでは、例えば訓練時に誤って実際の遮断を行うための電文を主情報処理装置や遮断弁装置に送出してしまい誤遮断を引き起こす虞がある。そこで、実際に遠隔操作するための電文と、仮想的に遠隔操作するための電文とで、異なった電文を用いるようにすることによって、誤遮断を防止することが可能となる。
【0037】
また、前記端末装置は、前記地震発生時情報収集機能を実行している際に収集された情報の表示出力または印刷出力と、訓練時仮想情報生成機能を実行している際に生成された情報の表示出力または印刷出力とを、視覚的に識別可能な互いに異なった態様で出力するようにしてもよい。
【0038】
すなわち、上記のように実際の地震発生時に実行される地震発生時情報収集機能および地震発生時防災機能と、訓練時に実行される機能である訓練時仮想情報生成機能および訓練時仮想防災機能とを、一つの主情報処理装置のハードウェアで兼備させて、実際の地震発生時の防災活動も訓練時のシミュレーションも一つの主情報処理装置および端末装置を用いて行うことにすると、このシステムの操作者は、例えば上記のような実際の地震発生時に、訓練時に生成してなるデータを訓練時情報記憶装置から検索して読み出して用いる際などに、そのとき表示出力または印刷出力されている情報が、実際にそのときリアルタイムに現地から収集された情報であるのか、それとも訓練時にシミュレーションによってリアルに生成された情報であるのかを、的確に判別(区別)することが困難なものとなる虞がある。そこで、端末装置が、地震発生時情報収集機能を実行している際に実際に収集された情報の表示出力または印刷出力と、訓練時仮想情報生成機能を実行している際に仮想的に生成された情報の表示出力または印刷出力とを、視覚的に識別可能な互いに異なった態様で出力するように設定することによって、実際に収集された情報と仮想的に生成されて蓄積されていた情報とを、操作者が明確に判別することが可能となる。
【0039】
また、前記遮断弁装置は、地震動を計測する地震動計測装置が付設されており、所定の大きさ以上の地震動が前記地震動計測装置で計測された場合には自動的に前記遮断を行う自動感震遮断の機能を備えており、前記主情報処理装置は、訓練時に入力される仮想的な地震動データに基づいて、前記遮断弁装置の仮想的な自動感震遮断状態の情報を生成する機能を備えており、前記端末装置は、前記主情報処理装置によって生成された仮想的な自動感震遮断状態の情報に基づいて、前記配管網における前記遮断弁装置の仮想的な自動感震遮断状態の地理的な分布に関する情報を表示出力または印刷出力もしくは記憶する機能を備えているようにすることが望ましい。
【0040】
このようにすることにより、訓練時に自動感震遮断の地理的な分布についてのリアルなシミュレーションを行って、その自動感震遮断の分布状況に対応した的確な遠隔操作についてのリアルな訓練を行うことなどが可能となる。
なお、前記流体が可燃性のガスであり、前記配管網が、前記ガスを輸送または供給対象としたガス配管網であることは、最も望ましい態様である。
【0041】
すなわち、本発明は、ガス配管網における地震に起因したガス漏洩状態や圧力異変などのような被害状態についての時系列的なシミュレーションなどに特に有効に適用可能なものである。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0043】
図1は、本発明の一実施の形態に係る地震防災システムの概要構成を表したものである。
【0044】
なお、本発明の実施の形態に係る配管網における遮断弁装置の制御方法または地震防災・訓練方法は、この地震防災システムの動作あるいは作用によって具現化されるものであるから、以下、それらを併せて説明する。
【0045】
この地震防災システムは、端末装置10と、サーバ20と、遠隔監視装置30と、記憶装置40と、解析装置50とから、その主要部が構成されており、実際の地震が発生した際に実行される機能である地震発生時情報収集機能および地震発生時防災機能と、訓練時に実行される機能である訓練時仮想情報生成機能および訓練時仮想防災機能とを、主情報処理装置であるサーバ20が一つのハードウェアで兼備している。その地震発生時の機能と訓練時の機能とは、切り替えて使用することも可能であり、あるいは両方を一度に並行して走らせることも可能となっている。
【0046】
地震時遠隔監視装置30は、都市ガスの配管網が敷設されている都市ガス供給エリア内の、例えば3700か所のような極めて多数の主要拠点ごとに配置されているガバナ31に付設されて、その拠点ごとで地震発生時の各種情報の収集およびガバナ31の遠隔遮断制御を行うものである。
【0047】
この地震時遠隔監視装置30は、さらに詳細には、SIセンサ32と、感震器33と、圧力センサ34と、流量センサ35と、遠隔遮断ユニット36と、情報処理ユニット37と、通信ユニット38とを備えている。
【0048】
ガバナ31は、基幹配管である中圧導管から末端配管である低圧導管へと供給されるガスの圧力を調節する圧力調整弁としての機能と、地震発生時などに遠隔遮断あるいは自動感震遮断を行う、いわゆる遮断弁装置としての機能とを、備えたものである。
【0049】
SIセンサ32は、この地震時遠隔監視装置30が設置されている地点における地震発生時に観測されるSI値の情報を出力する。
【0050】
感震器33は、この地震時遠隔監視装置30が設置されている地点における、地震発生時に観測される震動加速度(Gal)を計測し、その震動加速度計測値の情報を出力する。
【0051】
圧力センサ34は、それが付設されている中圧配管におけるガスの圧力を計測して、その圧力の計測値の情報を出力する。また、流量センサ35は、それが付設されている中圧配管におけるガスの流量を計測して、その流量計測値の情報を出力する。
【0052】
遠隔遮断ユニット36は、地震発生時などに、後述する情報処理ユニット37によって制御されて、ガバナ31を自動的に遮断する制御を行う。あるいは、ユーザによって端末装置10の入力装置400からの命令を受けたサーバ20が制御信号を送出すると、その制御信号によって遠隔操作されてガバナ31を遮断する制御を行う。また、例えば地震に起因した災害等の危険性が解消された際などには、端末装置10からの命令を受けてサーバ20によって遠隔操作されて、それまで遮断状態にあったガバナ31を復帰する(開状態に戻す)制御を行う。
【0053】
また、この遠隔遮断ユニット36は、SIセンサ32で計測されたSI値が10[kine]および感震器33で計測された震動加速度が50[Gal]以上となった場合にのみ遠隔遮断命令を受け付けるようにすることで、地震発生時の確実な遮断を行うと共に正常時の誤遮断やハッカーによる不法なシステム侵入等を防止するという、ゲート機能なども備えている。換言すれば、このゲート機能は、感震器33で計測された震動加速度が50[Gal]未満の場合には、遠隔遮断命令を受けても、遠隔遮断は行わない。なお、このゲート機能は、地震時遠隔監視装置30以外にも、サーバ20または端末装置10に設けるようにしてもよい。
【0054】
さらには、この遠隔遮断ユニット36は、図2に模式的に示したように、サーバ20から通信手段39等を介して遠隔操作によってガバナ31を遮断する制御を行うための制御信号を受けるが、例えば3回のような所定の複数回数に亘って繰り返し同一の制御信号を受けた場合であって、かつその繰り返しの周期が所定範囲内である場合にのみ、正しい制御信号が伝送されて来たものとしてガバナ31を遮断する制御を行うが、それ以外の例えば1回や4回のような、所定の回数とは異なった回数の制御信号を受けた場合、あるいは所定の回数通りの3回であってもその繰り返しの周期が所定の周期とは著しく異なっていた場合などには、通信手段39の異常あるいはサーバ20の異常などのような何らかの異常に起因した異常な制御信号が伝送されて来たものと推定して、その制御信号を受信してもガバナ31を遮断する制御は行わない。
【0055】
情報処理ユニット37は、SIセンサ32から送られて来たSI値および震動加速度の計測値の情報、圧力センサ34から送られて来たガスの圧力の計測値の情報、流量センサ35から送られて来たガスの流量の計測値の情報を、それぞれサーバ20で処理可能となるようにデータ化して、その各種類の情報のデータに対してその各々が計測された時刻の情報を付け合わせて、通信ユニット38および一般電話回線のような39等を介して外部のサーバ20へと送出する。
【0056】
また、この情報処理ユニット37は、SIセンサ32から出力されたSI値や震動加速度の情報に基づいて、例えばSI値が所定のしきい値を超えた大きさであった場合(換言すれば地震動が所定の大きさを超えた強い震動であった場合)などには、それを検知して、遠隔遮断ユニット36に対してガバナ31を自動的に遮断する制御を行う制御信号を伝送する。その制御信号を受けて、遠隔遮断ユニット36では、前述したように、ガバナ31を遮断する制御を行う。あるいは、外部の端末装置10から入力された遠隔操作命令に対応してサーバ20から通信ユニット38および一般電話回線のような通信手段39等を介して遠隔遮断を行うための制御信号が伝送されて来ると、その制御信号を遠隔遮断ユニット36に入力して、その命令に従った遠隔遮断制御を遠隔遮断ユニット36に実行させる。
【0057】
また、この情報処理ユニット37は、ガバナ31が遮断状態にあるか開放状態にあるかについての情報を、通信ユニット38等を介してサーバ20に伝送する機能も備えている。
【0058】
サーバ20は、このシステムにおける主情報処理装置であり、地震時遠隔監視装置30から離れた位置に設置されて、実際の地震が発生した際に実行される機能である地震発生時情報収集機能および地震発生時防災機能と、訓練時に実行される機能である訓練時仮想情報生成機能および訓練時仮想防災機能とを、一つのハードウェアで兼備している。その地震発生時の機能と訓練時の機能とは、切り替えて使用することも可能であり、あるいは両方を一度に並行して走らせることも可能である。
【0059】
地震発生時情報収集機能は、実際の地震発生時に地震時遠隔監視装置30から送られて来た情報に基づいて、遮断弁装置であるガバナ31の遮断状態に関する配管網中における地理的な分布の情報を収集および処理して表示出力および印刷出力ならびに記憶する機能である。
【0060】
さらに詳細には、この機能では、サーバ20は、地震時遠隔監視装置30によって計測されて伝送されて来た地震動の情報であるSI値および震動加速度のデータと、配管網中のガスの圧力や流量に関するデータおよびガバナ31の開閉状態についての情報とを、拠点ごとの地震時遠隔監視装置30から通信手段39を介して収集する。すなわち、サーバ20は、地震情報収集手段(あるいは地震情報収集装置)としての機能を備えており、またそのようにして地震発生時に実際に収集された地震発生時のデータを記憶するための主記憶装置21を内蔵している。
【0061】
配管網が敷設されたガス供給区域内(全管区内)に設置されている、いずれかの地震時遠隔監視装置30で、例えば震度3以上の地震動が検知されて、その旨の情報が当該地震時遠隔監視装置30からサーバ20へと伝送されて来ると、この地震防災システム全体が地震モードに移行して、上記のような情報収集を行う。また、このサーバ20では、一つの地震が発生すると、その地震の発生時点から例えば6時間のような所定時間に亘って検出された地震動の情報を、1つの地震に関する一連の地震動の情報としてとらえて、その1つの地震に関する一連のSI値および震動加速度の情報(地震動の情報)と、その地震が発生した際のガスの圧力状態および流量状態ならびにガバナ31の遮断状態に関する情報とを、対応付けて一つの地震における情報として纏めて主記憶装置21に記憶させる。
【0062】
地震発生時防災機能は、実際の地震発生時に、端末装置10から伝送されて来る命令電文に基づいて、地震時遠隔監視装置30に対して制御信号を送信することで、ガバナ31を遠隔操作して遠隔遮断の制御を行うという、遮断弁遠隔制御装置としての機能である。
【0063】
さらに詳細には、この地震発生時防災機能では、図3に模式的に示したように、端末装置10が、命令電文として、ガバナ31を遮断状態に制御する動作を行わせるための命令の電文とその制御対象のガバナ31が設置されているブロックの識別情報の電文とを組み合わせてなる電文を、1ブロック内の全てのガバナ31のそれぞれに対して1対1に対応するように生成し、その1ブロック内の全てのガバナ31に対する電文を一纏まりにして(区切り文字等によって前端と後端とが区切られた一連の1ログのデータとして)、地震時遠隔監視装置30へと送出する。そして遮断弁遠隔制御装置として機能するサーバ20では、端末装置10から一纏まりの電文が送られて来ると、その一纏まりの複数個の電文中に含まれているブロックの識別情報の電文のうちに、他とは異なった識別情報が一つでも混在している場合には、その1ブロックにおける全てのガバナ31を一斉に遮断状態に制御する動作は行わない。
【0064】
またさらには、図4に模式的に示したように、端末装置10が、例えば一般電話回線のような通信手段392を介してサーバ20へと、命令電文として同一内容の電文を例えば2回のような所定の複数回に亘って繰り返し送出する。そしてサーバ20は、端末装置10から同一内容の電文が2回のような所定の複数回に亘って繰り返し所定の周期で送られて来た場合には、ガバナ31を遮断状態にする制御を行うが、端末装置10から同一内容の電文が例えば1回や3回のような、所定の複数回とは異なった回数送られて来た場合、または2回のような所定の回数であっても所定の周期として許容できる範囲を逸脱した異常な周期で送られて来た場合には、ガバナ31を遮断状態にする制御は行わない。
【0065】
ここで、上記の各ブロックは、1ブロック内の全ての遮断弁装置が遮断状態になると当該1ブロックとその外部との間でのガスの出入が完全に遮断されるように設定されている。このブロックは、管区内の全配管網に亘って予め設定されていることは言うまでもない。
【0066】
このようにすることにより、地震発生時の通信手段392の被災などに起因した異常な命令電文等に因る誤遮断あるいはハッカーによるシステムへの不法な侵入等を防ぐことができ、かつ所定の大きさ以上の地震動を受けて被災した確率が高いブロック内の全てのガバナ31を一斉に確実に遮断状態にすることで、ガバナ31の遮断忘れ等に起因した当該ブロックにおけるガス漏洩の継続やそれに起因した火災などの二次災害等の発生を確実に防止することができる。
【0067】
図5は、配管網全体を各単位ブロックに分けた場合の、その一単位のブロック内における配管構成の一例をマップ化して模式的に表したものである。また、この図5に示したような地図的(地理的)な画像が、実際の地震発生時にガバナ31の遮断状態の地理的な分布の情報として、端末装置10の表示装置300に表示される。ここで、図5では、太い配管として描いてあるものが中圧導管41を示しており、それよりも細い配管として描いてあるものが低圧導管42を示している。また、図5で×印を付した部分が、入力された地震動の情報に対応してサーバ20によって推定された破損発生箇所44を示している。なお、図5では、ブロック45内の需要家の住居46や配管構成等は模式化して描いてあるので、実際よりもかなり簡略化されているが、実際の配管構成や住居などの密度や配置の複雑さは、図5に示したものよりもさらに高度なものとなっていることは言うまでもない。
【0068】
一単位のブロック内の配管では、一般に、隣接する他のブロックとの境目ごとに設けられて常時閉状態にあるブロックバルブ47によって、その隣接する他のブロックとの間でのガスの導通を隔絶されている。また、中圧導管41と低圧導管42との接続部ごとに、所定の大きさ以上の地震動に対応して自動的に弁装置の遮断を行う機能および遠隔操作によって弁装置の遮断を行う機能と中圧導管41から低圧導管42へと供給(輸送)するガスの圧力調節を行う機能とを併せ持ったガバナ31a,31b,31c,31dが、それぞれ配設されている。
【0069】
一般に、実際に地震が発生すると、理論的には、図5に示したような一つのブロック内の全てのガバナ31a,31b,31c,31dが自動感震動作を行って自動的に遮断状態になるので、図5に示したような一つのブロック内に配管破損が生じてその部分からガス漏洩が発生したがそのガス漏れに対する処置を施さなかった、といった場合でも、ブロック内の配管内のガスの圧力が外部のいわゆる大気圧(ゲージ圧)と均衡するまではガス漏洩が続くが、やがて圧力が均衡状態に達すると、ガス漏れは止まることとなる。
【0070】
しかし実際には、図6(B)に一例を示したように、例えば図6(B)の右上の位置にあるガバナ31dが設置されている地点の地盤のみが、何らかの要因で地震による揺れが少なかった場合には、そのときの地震に起因して配管網中の破損発生箇所44に配管破損が生じた状態となり、かつブロック内のほとんどのガバナ31a,31b,31cは遮断状態になっている一方でガバナ31dが未遮断状態になっている、といった状況になる場合もある。
【0071】
このような場合には、破損発生箇所44からのガス漏洩に起因して低圧導管42の内部における圧力低下が生じ、この圧力低下に対応して、ガバナ31dは、その本来の機能により、低圧導管42内の圧力を正常な状態に戻すために中圧導管41から低圧導管42へのガスの供給(導通)流量を増加させるように機能する。このため、図6(B)に示したように、配管網中の破損発生箇所44からのガスの漏洩流量は、未遮断状態のガバナ31dによる供給量の増加機能によって助長されてしまい、いつまでもガス漏洩が続くことになる。
【0072】
そこで、このような場合には、未遮断状態のガバナ31dを、外部からの遠隔操作によって強制的に遮断状態にすることが要請されるが、実際には、全配管網における未遮断状態の全てのガバナ31を、操作者が端末装置10の表示出力の画像等を目視で確認しながら手作業で確実に遮断することは、従来の技術では困難あるいは不可能であった。しかし、そのように一つのブロック内に配管破損が生じてその部分からガス漏洩が発生したがそのガス漏れに対する処置を施さなかった、といった場合でも、本実施の形態の地震防災システムによれば、図6(A)に示したように、1ブロックにおける全てのガバナ31を一斉に遮断状態に制御することができるので、そのブロックの外部(の中圧導管41)からのガスの供給を確実に停止してガスの供給について隔絶状態にすることで、その1ブロックにおけるガス漏洩を確実に停止させることができる。
【0073】
なお、このサーバ20は、さらに、例えば50[kine]のような所定の規模以上の地震が検知された場合には、地震が発生したものと自動的に判断し、上記の命令電文に対応して1ブロック内の全てのガバナ31を遮断状態にする制御を行うことが可能な状態を、例えば6時間のような所定時間に亘って継続するが、所定の規模未満の地震の発生が検知された場合または地震が全く検知されていない場合には、命令電文の有無に関わらず、上記のような1ブロック内の全てのガバナ31を遮断状態にする制御は行わないようにしてもよい。このようにすることにより、地震発生時以外の正常時における、いわゆる誤遮断やハッカーの侵入等を防止することができると共に、地震発生時には1ブロック内の全てのガバナ31を一斉に遮断状態する制御を確実に行うことができる。
【0074】
訓練時仮想情報生成機能は、訓練時に入力される仮想的な地震動データに基づいて、ガバナ31の仮想的な自動感震遮断状態に関する配管網中における地理的な分布の情報を仮想的に生成して、その地理的な画像を表示出力および印刷出力ならびに記憶する機能である。
【0075】
また、この訓練時仮想情報生成機能では、ガバナ31の仮想的な遮断制御以外にも、配管網の材料力学的な破損状態などの推定を行うという配管網被害推定の機能や、仮想的に与えられた地震動のデータに対して配管網におけるガスの圧力や流量状態のシミュレーションを行うという配管網流体状態解析の機能なども備えている。なお、配管網流体状態解析については、サーバ20によって推定された配管網被害推定のデータに基づいて、解析装置50によってその主要な解析が行われる。
【0076】
訓練時仮想防災機能は、訓練時にガバナ31に対して遮断動作を仮想的に遠隔操作し、その操作によって仮想的な遮断が行われたガバナ31については、上記の訓練時仮想情報生成機能によって生成された配管網中における地理的な分布の情報に反映させる(情報に追加あるいは修正を加えることで、訓練時のシミュレーションにおける当該ガバナ31の仮想的な状態の情報を遮断状態に書き替える、あるいは逆に、遮断状態であったものを、仮想的な遠隔操作に対応して開放状態に書き替える)機能である。
【0077】
これら訓練時のシミュレーション機能である訓練時仮想情報生成機能と訓練時仮想防災機能とで生成され、あるいはさらにそれに仮想的な遠隔操作の情報が追加されるなどして一部分を書き替えられたデータは、解析結果記憶手段である記憶装置40に記憶される。
【0078】
さらに詳細には、訓練時には、サーバ20は、端末装置10から地震動の大きさの情報(SIまたはGalなどの値)が入力されると、その大きさの地震動に起因した配管網における被害発生箇所の推定を行うという、配管網被害推定手段としての機能を備えている。このサーバ20による被害発生箇所の推定結果は、表示装置300によって表示出力される。なお、このとき入力される地震動の情報は、仮想的なものでもよく、あるいは実際に地震が発生した際に観測された地震動の大きさのデータであってもよい。訓練時のシミュレーションを行う場合には、仮想的な地震動の情報を入力することになる。あるいは、実際に地震が発生した際に、例えば一部の地域での地震動のデータや被害状況のデータなどの情報収集ができなかった場合などにも、取り敢えず近似的に、その地域の近傍で観測された地震動のデータを入力して、訓練時のシミュレーションと同様の推定を行うことなども可能である。
【0079】
このサーバ20は、配管網中の要所ごとに配設されているガバナ31に対する仮想的な遠隔操作が端末装置10の仮想遠隔操作入力手段としての機能によって行われた場合、その遠隔操作に対応したガバナ31の仮想的な弁開閉動作を、このガバナ31内にソフトウエア的に構築されたガス配管網中で仮想的に行うことで、解析装置50による解析を行う際の解析条件の一つとして、ガバナ31の仮想的な弁開閉状態を盛り込む。
【0080】
例えばユーザが、訓練時において、配管網中のあるガバナ31に対して弁装置を閉じる動作を実行させるための仮想的な遠隔操作を行った場合、そのガバナ31の弁装置があたかも実際に閉じられた状態になったものとサーバ20は仮想する。そして解析装置50は、サーバ20からの情報(配管網における破損発生位置やガバナ31によるガス遮断状態のデータ等)を受けて、ガバナ31の弁装置が閉じられた状態になったことを解析条件として含めたうえで、その場合の配管網におけるガスの圧力状態や漏洩状態に関する解析(シミュレーション)を行う。
【0081】
このサーバ20における、入力された地震動の情報に対応してガス配管網の地震被害発生箇所を推定する機能、およびガスの圧力ならびに流量の解析を行え機能、ならびに仮想的な遮断のシミュレーションを行う機能について、さらに詳細に説明する。
【0082】
サーバ20は、図7に示したように、臨界値記憶部100と、破損発生推定部200とを備えており、外部の解析装置50および端末装置10(の表示装置300ならびに入力装置400)に接続されている。
【0083】
臨界値記憶部100は、例えば関東地域ほぼ全域のような所定地域内に網目状に張り巡らされた都市ガスの配管網を、例えば所定の大きさのメッシュ状に区切って複数のセグメント(このセグメントは上記の「ブロック」とは異なる)ごとで分割掌握するようにして、そのセグメントごとに、識別番号(N=1,2,3…)を付して、地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)と配管の破損が生じる臨界変形量(Dcr)とに基づいて予め求められた、そのセグメント内の配管に破損が発生する臨界の地震動値である臨界地震動値(SIcr)のデータと、地震が発生した場合の地盤の流動化に起因した流動方向で配管に破損が生じることが予め推定される流動臨界変形量(δcr)のデータと、そのセグメントが所定地域における地図上のどの位置に存在しているのかについてのデータ((x,y);例えば直交座標のデータ)とを、対応付けて記憶している。また、この臨界値記憶部100は、配管網が配設されている地域の地図および配管網を、表示装置300の表示デバイス302の画面に表示するためのデータ等も記憶している。
【0084】
例えば、第nセグメント(N=n)について、その第nセグメントの地図中での位置のデータが(x,y)、地盤の固有振動周期がT、固有振動波長がL、臨界変形量がDcr、流動臨界変形量がδcrである場合、臨界値記憶部100には、第nセグメントのデータとして、{N=n,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr}という最大7種類のデータが一纏まりにして記憶されている。このデータは、臨界値記憶部100から読み出される際にも、上記のように{N,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr}という一纏まりの状態で取り扱われる。なお、入力された地震動の情報に対応して発生する配管の破損等の被害を推定する際に用いるデータが実質的にn,(x,y),SIcr,δcrの4種類のデータである場合には、それ以外の用いられないデータであるT,L,Dcrについては、例えばバックデータとして別途に保持しておき、臨界値記憶部100には{n,(x,y),δcr,SIcr}というデータを一纏まりの状態で記憶させておくようにしてもよい。このようにすることにより、記憶や読み出しの対象となるデータ量の低減化を図ることができるので望ましい。
【0085】
配管網を複数のセグメント(N=1,2,3…)に分ける際の分割法としては、例えば1辺が0.5[km]の正方形のメッシュを想定し、そのメッシュによって配管網が張り巡らされている所定地域を区分けして、その個々のメッシュごとを各セグメントとして取り扱うことなどが可能である。そして各セグメントの例えば中心点あるいは図心の位置などを、地図中でのそのセグメントの位置のデータ(x,y)とすることが可能である。なお、メッシュの寸法は、位置的な精度とセグメントの個数の多さとの兼ね合いを考慮して適切な大きさに設定することが望ましい。また、地図や破損発生位置を表示する表示デバイス302の画面の表示解像度に対して余りにも微細な表示寸法となってしまうような細かい寸法にメッシュを設定することは無意味であるから、そのような表示デバイス302の解像度なども考慮に入れることが望ましい。
【0086】
あるいは、詳細は後述するが、配管の接続形態(構造力学的および幾何学的な配管形状)に着目して、配管網を、直線の部分と、屈曲の部分と、T字型に分岐した部分とに分類するといった分類法に基づいて細分化し、その個々の部分をそれぞれ離散化された各セグメントとして取り扱うようにしてもよい。この場合にも、各セグメントの例えば中心点あるいは図心の位置などを、地図中でのそのセグメントの位置のデータ(x,y)として用いればよい。
【0087】
地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)のデータは、配管網が配設されている所定地域内の地盤の要所ごとにボーリング調査を行って得ることができる。例えば、管理対象の地域として首都圏の東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県における、ガス導管が設けられている要所ごとの地盤について、合計数万箇所を実地にボーリング調査して、それらの各地点の実測値を得ることなどが可能である。あるいは、その配管が配設されている地域の地盤に関する既存の(過去に調査済みの)データを利用してもよいことは言うまでもない。
【0088】
地震の直接的な振動力(破壊力)による臨界変形量(Dcr)のデータ、および地震によって引き起こされる地盤の流動化に因る流動臨界変形量(δcr)のデータは、それぞれ、セグメントごとの具体的な配管に関する種類(例えば都市ガスの配管網の場合、溶接接合鋼管、ダクタイル鋳鉄管、ねずみ鋳鉄管等)、口径(内径)、材質、その他の仕様(例えば補強処置済み/未着手など)等の各種データに基づいて配管の強度解析を行って求めることができる。あるいはさらに、配管の強度解析結果等に基づいて、臨界変形量(Dcr)のデータや流動臨界変形量(δcr)のデータを算出し、そのデータを既往地震の事例調査によって得られた被害事例のデータ等の情報に基づいてキャリブレーションするなどして、データのさらなる高信頼化を図るようにしてもよい。
【0089】
さらに具体的には、臨界変形量(Dcr)、流動臨界変形量(δcr)は、どちらも本質的に配管やバルブの構造力学的な強度に関する数値(許容応力あるいは許容変位などの物理量)である。従って、地震の振動による破壊力が外力として配管網に加えられた際の、配管やバルブの構造力学的な強度解析あるいは破壊実験を行うことで、理論的または実験的に、精確な臨界変形量(Dcr)および流動臨界変形量(δcr)の値を求めることができる。
【0090】
その際の配管やバルブの構造力学的強度の解析手法それ自体については、例えば、ある一つのセグメント内の配管を、所定の金属材料からなる筒状構造と見做して、その筒状構造に対して有限要素法による強度解析を行うなどして、臨界変形量(Dcr)や流動臨界変形量(δcr)を求めることができる。
【0091】
あるいは、配管の接続形状を考慮に入れて、一つのセグメント内の配管を、直線の部分と、屈曲(曲管)の部分と、T字型に分岐した部分とに分類するなどして、その個々の種類ごとでそれぞれ別個に臨界変形量を求めた上で、それらのうちの最小の値を、そのセグメントにおける臨界変形量(Dcr)のデータとして採用することなども可能である。また流動臨界変形量(δcr)についても同様に、一つのセグメント内の配管を、上記のように接続形状に基づいて細かく分類し、その個々の種類ごとで個別に流動臨界変形量を求めた上で、それらのうちの最小の値を、そのセグメントにおける流動臨界変形量(δcr)のデータとして採用することが可能である。
【0092】
上記のようにして求められた臨界変形量(Dcr)の値と、そのセグメントにおける地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)の値とに基づいて、臨界地震動値(SIcr)または臨界地震振幅値(Ucr)が求められる。
【0093】
さらに詳細には、図8に一例を示したように、ある配管の臨界変形量(Dcr)に対して、その配管に破損が生じはじめる臨界の地震振幅値(あるいは許容地震振幅値)である臨界地震振幅値(Ucr)が一義的に定まるが、このとき配管が埋設されている地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)の値によって、臨界変形量(Dcr)と臨界地震振幅値(Ucr)との対応関係を示すグラフ(曲線)は異なったものとなることが確認されている。これは換言すれば、一般に1つの配管に関して、その配管の臨界変形量(Dcr)と、その配管が埋設されている地盤の固有振動周期T)または固有振動波長(L)との、2つの変数に対して、1つの臨界地震振幅値(Ucr)が定まるという関数関係(すなわちF(Dcr,T or L)=Ucr)が成り立っているということである(すなわちFを関数とすると、F(Dcr,TまたはL)=Ucr)。
【0094】
従って、例えばあるセグメントにおける配管の臨界変形量がDcr、その配管が埋設されている地盤の固有振動周期がT=0.7[s](このときL=200[m])である場合には、そのセグメントにおける臨界地震振幅値の値Ucrは、図8に示したようなT=0.7[s](L:200[m])の場合の曲線に基づいて求めることができる。あるいは、例えば地盤の固有振動周期がT=1[s](このときL=400[m])の場合には、T=0.7[s]の場合よりもさらに緩やかな単調増加を示す曲線に基づいてUcrの値を求めることができる。
【0095】
ここで、地震は地盤の振動現象であるから、臨界地震振幅値(Ucr)と臨界地震動値(SIcr)との間には、SIcr=2π・Ucr/Tなる式で表される関係が成り立っている。従って、この関係式を用いて、上記のようにして得られた臨界地震振幅値(Ucr)から、臨界地震動値(SIcr)を求めることができる。このようにして得られた臨界地震動値(SIcr)は、最終的に、破損発生推定部200によって、地震に起因した配管の破損(被害)の有無を推定する際に用いられる。あるいは、臨界地震振幅値(Ucr)を用いて配管の破損の有無を推定するように破損発生推定部200が設定されており、従って解析条件を与えるための地震動の情報の一要素として臨界地震振幅値(Ucr)が入力装置400を介して入力されるように設定されている場合には、上記のようにして求めた臨界地震振幅値(Ucr)を直接に用いればよく、従ってこの場合には、臨界地震振幅値(Ucr)に対応した臨界地震動値(SIcr)の算出は省略してもよいことは言うまでもない。
【0096】
近年では、地震で観測される地震動値(SI)のデータは、他の種類のデータと比べて、観測および入手することが容易で、かつ配管に掛かる外力を算出するのに極めて好適なものとなっている。従って、このようなデータの入手や取り扱いが簡便であり地震動の評価・判断等のための基準となる単位として一般化しているという点で、臨界地震動値(SIcr)を予め求めておき、その臨界地震動値(SIcr)と入力された地震動の情報のうちに含まれている地震動値(SI)とを、破損発生推定部200で比較するように設定することが望ましい。
【0097】
他方、流動臨界変形量(δcr)のデータについては、全てのセグメントあるいは全ての配管に対して流動臨界変形量を求めておくようにしてもよいが、地震に因る地盤の流動化が発生したときに実質的に配管の破損を引き起こすような流動量が生じるのは、実際には護岸の付近に限られており、しかもその護岸付近での流動化による地盤の変位は護岸線に対してほぼ直交方向であることが多いということを、本発明者らは確認している。従って、例えば護岸から100[m]以内の領域に位置している配管またはそのような配管を有しているセグメントのみを、破損発生推定の対象として取り扱うものとし、その他の配管またはセグメントについては、流動臨界変形量(δcr)のデータの記憶やそれに基づいた破損発生の推定動作などは省略してもよい。このようにすることにより、少なくともその省略した分のデータ量やデータ処理を簡略化することができるという利点が得られる。また、流動臨界変形量(δcr)の推定は、流動化に起因して地盤の変位が最も発生しやすい方向である護岸線に対してほぼ直交方向から配管に対して外力が加えられた場合を想定した配管の構造力学的な強度解析等を行うことによって求めることが望ましいことは言うまでもない。
【0098】
この流動臨界変形量(δcr)のデータを求める際にも、臨界変形量(Dcr)の場合と同様に、直線型、曲管型、T字型等のような配管の接続形態に着目した分類法に則して配管網を複数のセグメントに離散化して考えて、その個々のセグメントごとに強度解析等を行うようにしてもよい。あるいはさらに、このようにして流動臨界変形量(δcr)のデータを求めておき、この流動臨界変形量(δcr)を生じさせる流動臨界地震動値(SIcr´)または流動臨界地震振幅値(Ucr´)を、例えば成り立つことが既に確認されている地震動値と流動量との間の相関関係あるいは関係式に基づいて算出しておき、その流動臨界地震動値(SIcr´)または地震振幅値(Ucr´)を、地震動の情報として入力された地震動値(SI)または地震振幅値(U)と比較するように設定してもよい。但しこれのみには限定されないことは言うまでもない。
【0099】
破損発生推定部200は、SI比較判定部201と、δ比較判定部202とを備えている。SI比較判定部201は、入力された地震動の情報に含まれている地震動値(SI)と、セグメントごとの臨界地震動値(SIcr)とを比較して、地震動に対応してどの位置のセグメントに配管の破損が生じるかを推定する。また、δ比較判定部202も同様に、地震動に起因して発生することが推定される流動量(δ)と各セグメントまたは所定のセグメントごとの流動臨界変形量(δcr)とを比較して、そのときの地震に因る地盤の流動化に起因してどの位置のセグメントに配管の破損が生じるかについてを推定する。
【0100】
さらに詳細には、地震動値(SI)の情報およびその震源位置の情報を含んだ地震動の情報が入力装置400から破損発生推定部200へと入力されると、破損発生推定部200のSI比較判定部201では、臨界値記憶部100に記憶されている全てのセグメントに関するデータ{N,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr;N=1,2,3…}を読み出し、その個々のセグメントごとに、地震動値(SI)と臨界地震動値(SIcr)とを比較して、地震動値(SI)が臨界地震動値(SIcr)以上である(SIcr≦SI)セグメントには破損が生じると推定して、そのセグメントの位置のデータを表示装置300へと送出する。地震動値(SI)が臨界地震動値(SIcr)未満である(SIcr>SI)場合には、そのセグメントには破損が生じないと推定し、そのセグメントの位置のデータは送出されない。
【0101】
また、入力された地震動の情報に含まれている、地盤の流動化に起因して護岸から所定距離内の領域に生じることが観測される流動量(δ)の値が、破損発生推定部200に入力されると、この破損発生推定部200のδ比較判定部202では、臨界値記憶部100に記憶されている全てのセグメントのうちから、前述の護岸から所定距離内の領域の配管を有するセグメントのデータを選択して読み出し、その読み出された個々のセグメントごとに、流動量の値δと流動臨界変形量の値δcrとを比較して、流動量(δ)が流動臨界変形量(δcr)以上の値である(δcr≦δ)セグメントには破損が生じると推定し、そのセグメントの位置のデータを表示装置300へと送出する。しかし流動量(δ)が流動臨界変形量(δcr)未満(δcr>δ)である場合には、そのセグメントには破損が生じないものと推定する。
【0102】
ここで、例えば200[kine]以上のような、所定地域内で発生する可能性のある最大規模の地震に対応した地震動値(SImax )よりも大きな臨界地震動値(SIcr>SImax )を有するセグメントについては、そのような最大級の地震に対しても耐震的であるということであるから、「恒常的に破損なし」と予め推定しておくようにしてもよい。あるいは臨界地震動値(SIcr)の代りに臨界地震振幅値(Ucr)を用いる場合にも同様に、発生する可能性のある最大規模の地震に対応した地震振幅値(Umax )よりも大きな臨界地震振幅値(Ucr>Umax )を有するセグメントについては、「恒常的に破損なし」と、予め推定しておくようにしてもよい。このように十分な強度(SIcrまたはUcr)を備えた配管については「恒常的に破損なし」と予め決定しておくことにより、少なくともその分は地震動値(SI)と臨界地震動値(SIcr)との比較の手間(それに要する時間およびデータ処理)を省略することが可能となり、延いては地震被害推定方法のさらなる簡易化およびそれに要するデータ処理量のさらなる低減化を達成することができるので望ましい。
【0103】
また、地盤の流動化に起因した破損についても同様に、例えば5[m]以上のように、配管網が設けられている所定地域内の護岸付近で発生する可能性のある最大の流動量(δmax )よりも大きな流動臨界変形量(δcr>δmax )を有するセグメントについては、そのような最大級の流動化が生じても破損しないということなのであるから、「恒常的に破損なし」と予め推定しておくようにしてもよい。なお、上記のSImax =200[kine]やδmax =5[m]などの値については、一例として掲げたものであって、実際には、このような数値のみに限定されるものではないことは言うまでもない。また、このように「恒常的に破損なし」と推定されたセグメントについては、地震動値や流動量に基づいた地震被害推定を行う必要が無い旨を示す情報(例えばフラグ)を、そのセグメントに関する一纏まりのデータ{n,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr}の中に付記して臨界値記憶部100に記憶させておくようにすることが望ましい。
【0104】
ここで、特に低圧導管の被害推定についてさらに詳細に説明する。低圧導管の被害推定を良好な精度で行うために、低圧導管のうち特にねじ継手鋼管について、地盤条件等に着目して、兵庫県南部地震での被害分析を行って被害率推定式を作成し、その分析結果を用いた。すなわち、被害率の特徴を簡潔かつ的確に表現するために、被害率推定式の形式を、R=C1・C2・φ(SI)とした。ここに、Rは被害率推定値(件/km),C1 は地盤条件区分に応じて、またC2は液状化の程度に応じて、それぞれ被害率を増減させる係数である。φ(SI)は基準となる地盤条件での被害率であり、導管総延長の多い(殆どの低圧導管が密集している)沖積平野における被害率として定義してある。またSIは地震動のSI値である。なお液状化が発生するとSI値に対する被害の関係が不明瞭となる傾向があるため、液状化の影響は別途C2にて取り込むようにすることが望ましい。被害率φ(SI)は図12に示したような式によって算出される。図12に示した式では、SI値に換算した低圧導管の耐力は対数正規分布し、被害率はSI値が耐力を上回る確率(被害確率)に被害率の取り得る最大値を乗じることで求まることを仮定している。ここに、R0は沖積平野で見込まれる被害率の最大値、λ,ξはそれぞれ対数正規分布の平均,分散である。この式により、被害率はSI値の増加とともに増加し、SI値が大きくなるとR0に漸近するという性質を持つことが分かる。R0,λ,ξは、「沖積平野」における被害の分析結果にSI値が60[kine]以下のデータとして調査された地震のうち沖積平野に該当するデータを加えて回帰分析を行うことによって得たものである。このようにして作成した推定式による被害率の推定値と、実際の地震の発生で被災した際の実際の被害率とを比較した結果、推定結果は実被害率と良好な一致を示すことが確認された。そこで、本実施の形態に係る地震防災システムでは、このような実際の地震発生時の被害についての統計的分析等から得られた計算式等の情報を用いて、低圧導管についてさらに良好な精度で被害推定を行うことができる。
【0105】
表示装置300は、端末装置10における表示出力を行うためのもので、データ処理回路301と表示デバイス302とを、その主要部として備えている。この表示装置300では、地震動または地盤の流動化に因って配管に破損が生じると推定されたセグメントの位置のデータが破損発生推定部200から送られて来ると、データ処理回路301が、その送られて来たセグメントの位置のデータ(x,y)と配管網が設けられた地域全体の地図のデータとに基づいて、表示デバイス302によって表示される地図中に破損が発生していることが推定される位置を例えばピンポイントで表示するための表示データを作成する。そして表示デバイス302が、例えばカラー表示が可能な液晶表示デバイスまたはCRTなどを用いて、その表示画面に、所定地域全体の地図の画像と、その中にピンポイントに示される破損発生位置の画像とを、合成して表示する。
【0106】
例えば地図全体の地の色を緑色とし、配管網を例えば圧力等級別などに分類して、その分類ごとに黄色や青のような異なった色で示すようにしておく。そして、そのような地図中に、地震動に対応して配管の破損が発生すると推定される位置を、例えば赤色のような目立つ警戒色で表示する。さらには、その配管破損被害の発生が推定される位置の警戒色のピンポイントの表示を点滅させるようにしてもよい。地震動に因る破損発生位置と、地盤の流動化に因る破損発生位置とを、異なった色や点滅状態で表示するなどして、破損の発生位置と共に、その破損の発生要因の種類別を一目瞭然で判別できるようにしてもよい。また、この表示デバイス302では、自動的または遠隔操作によって開閉動作が行われる各ガバナ31の遮断状態(開閉状態)を、例えば開状態であるガバナ31は青色で表示し、閉状態であるガバナ31は赤色で表示する、というように、一目瞭然で判別できるようにすることが望ましい。
【0107】
なお、このような配管の破損発生位置や発生要因の種類別の色分けや地図の図形形状等の形式は、実際の地震が発生した際に収集された情報に基づいて表示装置300で図5や図6に示したような地図的な画像表示を行う際にも、同じ形式で表示することが望ましい。但し、実際の地震発生時の地震防災モードでの表示であるか、訓練時のシミュレーションモードによる表示であるかを、明確に判別可能とするためには、例えば、そのモードごとで、表示する画面の背景色を変更するように設定することなどが望ましい。例えば、訓練時のシミュレーションモードの場合には表示する画面の背景色を黄色とし、実際の地震発生時の地震防災モードの場合には表示する画面の背景色を赤色とすることなどが有効である。あるいは一つの画面内に、実際に現地の地震時遠隔監視装置30から情報収集されたデータに基づいた情報が表示されるブロックと、シミュレーションによって生成された情報が表示されるブロックとが、混在している場合などには、そのブロックのモードごとに異なった色で表示するようにしてもよい。
【0108】
サーバ20では、このようにして、入力された地震動の情報に対応して、配管網における被害発生箇所(地震に因る破損等の被害が発生する箇所)を推定する。そしてその推定結果の情報を、端末装置10の表示装置300によって表示出力する。また、図示しない印刷装置などによって印刷出力するようにしてもよい。また、そのようにして生成された推定結果のデータは、記憶装置40に記憶される。
【0109】
なお、所定の地震振幅値以上の大きさの地震動を受けると自動的にガバナ31を遮断状態にする、いわゆる自動感震遮断機能を備えているので、そのようなガバナ31の自動感震遮断機能についても境界条件や解析条件等の要素の一つとして含めて被害推定や圧力・漏洩解析を行う。
【0110】
この場合、理想論的には所定値を超えた大きさの一つの地震動に対しては、同一管区の配管網中における全てのガバナ31で一斉に弁遮断が行われることになる筈である。しかし、実際には、各ガバナ31が設置されている場所ごとで、共振振動数や揺れ易さといった地震動に対する地盤的な条件が異なっていることが多いので、同じ一つの地震動に対して、ある地点のガバナ31では感震遮断が実行され、他の地点のガバナ31では遮断が行われない、といった場合もあり得る。そこで、このような自動感震遮断機能を備えたガバナ31を有する配管網の場合には、例えば予め各地点における地震動に対する揺れ易さを評価し、それを0〜1までの重み付け係数(これを例えばwとする)として数値化しておき、地震動の大きさの情報が例えばSI値で入力されるように設定されている場合には、そのSI値に各ガバナ31の重み付け係数wを乗算するなどして、当該ガバナ31で遮断が行われる遮断臨界SI値(これを例えばSIshとする)と比較することで、一つの地震動に対して遮断が行われるガバナ31と遮断が行われないガバナ31とを推定することなどが可能である。
【0111】
例えば、入力された地震動の情報の一要素として含まれている地震の大きさを示すSI値がSという値であり、遮断の有無の推定の対象となるガバナ31の揺れ易さを評価してなる重み付け係数がwであり、そのガバナ31の遮断臨界SI値がSIshであるとすると、当該ガバナ31の遮断の有無は、Sとwとを乗算してなる値が、SIshの値未満である場合には(S・w<SIsh)、当該ガバナ31は遮断を行わないものと推定され、SIshの値以上である場合には(S・w≧SIsh)、当該ガバナ31は遮断を行うものと推定される。
【0112】
あるいは、そのような自動的な推定には依らずに、ユーザが直接的に配管網中のガバナ31のうちから任意のガバナ31を選択して、そのガバナ31のみが地震動に対応した遮断を行わないような状態をサーバ20および解析装置50が仮想的に作り出すようにしてもよいことは言うまでもない。
【0113】
解析装置50は、サーバ20によって推定された被害発生箇所の情報に基づいて、配管網におけるガスの圧力状態(位置的な圧力分布およびその各位置での圧力値の時間的推移)やガス漏洩状態(ガス漏洩の発生位置およびその各位置ごとのガス漏洩状態の時間的推移)の解析を行うものである。従って、この解析装置50は、例えば一般的な直管内での流体の挙動についての数値風洞的な解析を行う解析装置等とは全く異なったものであることは言うまでもない。
【0114】
この解析装置50で行われる、配管網におけるガスの圧力状態・漏洩状態に関する解析について、さらに詳細に説明する。
【0115】
この解析装置50では、基本的に、配管網全体を上記の図5,図6に基づいて説明したような一単位のブロックに分けて、そのブロックごとで配管損傷に起因したガス漏洩の時間的推移や圧力状態の推移等の解析を行う。そしてそのブロックごとの解析結果を纏めて、配管網全体の解析結果のデータを出力する。
【0116】
図9は、低圧導管および中圧導管ならびにガバナ31の組み合わせおよび配管形状を最も簡略化した1ブロック内の配管構成の基本形を想定し、その配管構成に損傷が発生した場合における、ガスの圧力状態・漏洩状態の時間的推移等の解析方法の一例についてを説明するための図である。ここでは、低圧導管42の断面積は一様にAL、一連の低圧導管42の総延長はL、通常時のガスの設定圧力はPL−nol 、外気圧はPG とし、地震動に起因して配管の破損箇所が低圧導管42における一箇所に発生しており、その破損箇所からのガス漏洩の単位時間当たりの流量はQであるものとする。また、一つのブロック内の一連の低圧導管42は、中圧導管41にガバナ31を介して接続されているがその部分以外は両端がブロックバルブ47(図9では図示省略)によって閉じられた管状の閉鎖空間と見做すことができる。
【0117】
ガバナ31が、地震動に対応して自動的に、あるいは遠隔操作によって手動的に、遮断状態になった場合には、この1ブロック内の配管構成は図10(A)に示したような管状の閉鎖空間と考えることができる。従って、このような場合には、配管破損が生じると、それ以降、流量Qのガス漏洩が続き、低圧導管42内のガスの圧力PLは通常時の設定圧力PL−nol から外気圧PG にまで低下して行く。そしてこのガス漏洩は、低圧導管42内のガスの圧力PLが外気圧PG と均衡すると(PL=PG になると)、停止する。従って、この場合の低圧導管42内のガスの圧力Pの時系列的推移(時間的変化)は、図10(B)に一例を示したように、時間Δtに亘って、圧力PLが設定圧力PL−nol から外気圧PG までΔPに亘って徐々に低下して行くという様相となる。
【0118】
あるいは、図11(A)に一例を示したように、ガバナ31が未遮断状態にある場合には、ガス漏洩に起因した圧力低下に対応して、ガバナ31が、低圧導管42内の圧力PLを正常な状態に戻すために中圧導管41から低圧導管42へのガスの供給流量を増加させるように機能する。このため、低圧導管42内の圧力PLよりも高い圧力PMに設定されている中圧導管41から低圧導管42へとガスが供給されることによって、低圧導管42内のガスの圧力PLは配管損傷のない通常時の設定圧力PL−nol よりも高い圧力値となる。また、この場合のガス漏洩の流量Qは、ガバナ31が遮断状態になっている場合よりも大きな流量となる。しかも、この状態はガバナ31が遮断されない限りは継続することとなる。従って、この場合の低圧導管42内のガスの圧力PLの時系列的推移は、図11(B)に一例を示したように、配管破損が生じると、その直後にはガス漏洩に起因したガスの流失に因って低圧導管42内の圧力PLは通常時の圧力PL−nolから若干低下するが、その圧力低下に対応してガバナ31が圧力PMでガスを低圧導管42へと大量に供給し続けるので、結局、低圧導管42内の圧力PLは通常時の圧力PL−nolよりも高い状態となる。その状態はガバナ31を遮断状態にするまで継続されることとなる。そして例えば遠隔操作によってガバナ31が遮断状態に切り替えられると、圧力状態は図10(B)に示したような推移を辿って、低圧導管42内のガスの圧力PLが外気圧PG と均衡するに至り、ガス漏洩が停止する。
【0119】
一つのブロック内での圧力状態およびガス漏洩状態は、概ね上記のような2種類の時系列的推移のうちのいずれかまたはそれらを組み合わせた様相となる。
【0120】
なお、流量Qや圧力Pの時間的変化の具体的なパターンについては、例えば図10(B)に示したような指数関数的なものとなることなどが想定されるが、さらに詳細には、実際の配管網における時間的変化パターンをガス漏洩実験等により予め確認して関数化しておき、その関数を用いて、設定圧力PL−nol 、外気圧PG 、流量Q等の具体的な各数値を代入することなどによって解析することができる。また、ガス漏洩が継続する時間Δtは、圧力Pが設定圧力PL−nol から外気圧PG に低下するまでの時間を境界条件として、上記の流量Qや圧力Pの時間的変化のパターンを表した関数に基づいて算出することができる。また、漏洩したガスの総量は、流量Qを時間Δtに亘って積分することによって算出することができる。
【0121】
なお、配管損傷箇所が複数である場合には、最も簡易化した解析手法としては、その複数箇所のガス漏洩の流量Qや圧力変化ΔPの線形的な総和を演算することで、一つのブロック内での圧力状態およびガス漏洩状態の解析結果を得るようにすることなどが可能である。
【0122】
解析装置50は、このようにして個々に解析されたブロックごとでの圧力状態およびガス漏洩状態の解析結果を纏めることによって、配管網全体の圧力状態およびガス漏洩状態の時系列的推移の解析結果を得ることができる。そしてその解析結果は、例えば端末装置10の表示デバイス302の画面に、図5,図6で示したような、実際の地震発生時に表示されるマップ画像とほぼ同様の形式の画像として配管損傷箇所を表示すると共に、そのマップ画像の中からユーザが選択した箇所についての圧力状態およびガス漏洩状態の時系列的推移の解析結果を図10(B)、図11(B)に示したようなグラフで表示して、配管網の仮想的な地震に因って生じることが推定される被害状態のシミュレーションを実行することができる。また、その解析結果のデータは記憶装置40に蓄積させることができる。
【0123】
記憶装置40は、上記のようにして解析装置50で行われた解析結果のデータを、解析条件として入力された地震動の情報と対応付けて記憶する。このようにすることで、ユーザは、この記憶装置40に記憶され蓄積されているデータのうちから、例えば震源位置(x,y)および震度(SI)のような地震動の情報を訓練シミュレーション等を行う際の検索キーワードとして用いて、所望の震源位置および震度を想定した地震動に対応した圧力状態や漏洩状態の解析結果の情報を端末装置10によって読み出すことができる。
【0124】
またさらには、地震動に対応した圧力状態や漏洩状態の解析結果の情報をガバナ31の遠隔操作の情報と共に関連付けて、地震防災訓練シミュレーションの履歴あるいは過去ログ的なデータとして記憶装置40に蓄積してくようにすることで、後にそれを読み出して、地震防災訓練のケーススタディを行うための資料等となる情報として利用することができるようにすることも望ましい。
【0125】
あるいは、本実施の形態に係る配管網地震被害状態シミュレーションシステムを繰り返し利用して行くうちに、記憶装置40に蓄積されたデータは、多様な解析条件に対応した多様な状況についての圧力状態や漏洩状態の解析結果を有するものとなって行くので、そのようなデータは、単に地震防災の訓練用のシミュレーションに利用するだけでなく、例えば実際に震災が発生して、被災地域における配管網(における中圧導管41や低圧導管42)やガバナ31等の被害状況やガス遮断状況についての情報収集が困難あるいは不可能となった場合などに、そのとき実際に発生した地震動のデータが入手できれば、被災地域における被害状況を高い確度で推定するためのシミュレーションを行うために利用することなども可能となる。または、逆に、主記憶装置21に記憶されている実際の地震発生時に収集された各種のデータは、訓練時に読み出して利用するようにしてもよい。このようにすることにより、現実に地震が発生した際に収集された情報を用いた訓練だけに、まさに極めてリアルな訓練を実現することが可能である。このように、本実施の形態に係るシステムでは、主記憶装置21に記憶されている地震発生時に収集された情報(データ)を、訓練時に読み出して使用することが可能であり、また記憶装置40に記憶されている訓練時に生成(解析または推定)された情報(データ)を、実際の地震発生時に読み出して使用することが可能である。このようなことは、サーバ20を中心としたこのシステムが地震発生時の防災システムとしての機能と、訓練時のシミュレーションシステムとしての機能とを、一つのシステムで併せ持っているからこそ可能となるものである。しかも、本実施の形態に係るシステムでは、それをシステム全体を繁雑化することなしに可能としている。
【0126】
端末装置10は、サーバ20によって行われる被害推定および解析装置50における解析のための境界条件や解析条件等として用いられる地震動の情報の入力を行うという地震動情報入力手段としての機能と、サーバ20による被害発生箇所の推定結果とは別にユーザ等によって仮想された被害発生箇所の情報を解析装置50に直接に入力するための仮想被害発生箇所情報入力手段としての機能と、ユーザ等によって仮想されたガバナ31に対する仮想的な遠隔操作の入力を行うための仮想遠隔操作入力手段としての機能と、サーバ20による推定結果の情報を出力する被害推定結果情報出力手段としての機能と、解析装置50による解析結果の情報、あるいは記憶装置40または主記憶装置21から読み出された情報、もしくはサーバ20によって各地震時遠隔監視装置30から収集された各種情報を読み出して、配管網の地図的表示等と共に表示装置300の画面に表示出力する情報出力手段としての機能と、ユーザが所望する拠点の地震時遠隔監視装置30に対してサーバ20を介してアクセスし遠隔遮断ユニット36を遠隔操作してガバナ31の強制遮断を行うことや、1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行わせるための命令電文やガバナ31を各個別に遠隔操作して遮断を遠隔制御するための命令電文をサーバ20に入力する地震時(防災用)遠隔操作入力手段としての機能とを、兼ね備えている。
【0127】
この端末装置10では、上記の各種情報の入力は、例えばテン・キーやマウスのような入力装置400によって行われ、上記の各種情報の出力は、例えばCRTまたは液晶表示デバイスのような表示デバイス302とデータ処理回路301とを備えた表示装置300などによって行われる。あるいは、各種情報の出力はプリンタ装置(図示省略)のような印刷出力装置によって行われるようにしてもよい。
【0128】
ここで、入力装置400によって入力された情報は、端末装置10の本体であるパソコン本体のような情報処理装置によって適宜にデータ処理されるなどしてサーバ20あるいは解析装置50へと伝送されるように設定されていることは言うまでもない。
【0129】
また、サーバ20あるいは解析装置50から出力された情報は、パソコン本体のような情報処理装置によって適宜にデータ処理されるなどした後に表示装置300に送られて、その表示装置300におけるCRTのような表示デバイス302の画面に表示される。あるいは、印刷装置に送られて配管網中でのガス漏洩発生箇所や圧力分布を示す図表等として印刷出力される。
【0130】
この端末装置10は、単数で使用するようにしてもよいが、複数台を用意しておき、そのうちの1つは解析条件を入力して訓練シミュレーションの進行を制御するためのものとして用いるものとし、他のものは被訓練者がシミュレーションによる訓練を受けるために用いるようにしてもよい。
【0131】
この端末装置10では、遮断動作を実際に遠隔操作するための電文と、遮断動作を仮想的に遠隔操作するための電文とで、異なった電文を用いるように設定されている。そして主情報処理装置であるサーバ20は、端末装置10から、遮断動作を実際に遠隔操作するための電文を受けた場合には、ガバナ31を実際に遮断状態にする制御を行うが、仮想的に遠隔操作するための電文を受けた場合には、ガバナ31を実際に遮断状態にする制御は行わないように設定されている。このようにすることにより、例えば訓練時の仮想的な遠隔遮断の命令電文が誤って通信手段392等を介してサーバに伝送されたりなどした場合でも、ガバナ31でいわゆる誤遮断が生じることや、いわゆるハッカーの侵入に起因した誤動作やシステム妨害などを、簡易な手法で確実に防止することができる。
【0132】
なお、本実施の形態では、圧力・漏洩状態の解析対象の流体として可燃性のガスを想定した場合について説明したが、これのみには限定されない。この他にも、例えば石油や上・下水道水のような液体状の流体を輸送するための配管網や、所定の管区地域内にほぼ平面的に敷設された配管網のみならず所定の建築物内に立体的に配設された配管網などにも、本実施の形態に係る地震防災システムまたは配管網における遮断弁装置の制御方法もしくは地震防災・訓練方法を適用可能であることは言うまでもない。
【0133】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし7のいずれかに記載の地震防災システムまたは請求項14ないし20のいずれかに記載の配管網における遮断弁装置の制御方法によれば、管理対象の全区域内の配管網を複数個のブロックに分けて、そのブロックごとで、1ブロック内の全ての遮断弁装置を一斉に遮断状態にする制御を行うことによって、地震発生時に例えば1ブロック内に配管の破損等が発生してガスのような輸送対象である流体の漏洩が生じた際に、当該ブロックへのガスのような流体の供給を確実に遮断することができるようにしたので、地震発生時の防災のために遮断が必要なガバナまたは遮断弁装置を確実に遮断することが可能となるという効果を奏する。
【0134】
また、特に請求項3ないし7のいずれかに記載の地震防災システムまたは請求項16ないし20のいずれかに記載の配管網における遮断弁装置の制御方法によれば、一般に電話回線のような通信手段などでは地震発生時には通信異常等が発生する虞があるが、そのような異常が発生した場合であっても、不必要なガバナや遮断弁装置のいわゆる誤遮断を行うことなく、防災に必要な遮断のみを確実に実行することができるという効果を奏する。
【0135】
また、請求項8記載ないし13のいずれかに記載の地震防災システムまたは請求項21記載ないし25のいずれかに記載の地震防災・訓練方法によれば、実際の地震が発生した際に実行される機能である地震発生時情報収集機能および地震発生時防災機能と、訓練時に実行される機能である訓練時仮想情報生成機能および訓練時仮想防災機能とを、一つの主情報処理装置のハードウェアで兼備するようにしたので、システムの全体的な構成を繁雑なものとすることなく、訓練時のシミュレーションをリアルなものとすることができるという効果を奏する。
【0136】
また、特に請求項9記載の地震防災システムまたは請求項21記載の地震防災・訓練方法によれば、地震発生時には、訓練時にシミュレーションで生成された情報を読み出して使用可能であり、訓練時には、震発生時に収集された情報を読み出して使用可能であるようにしたので、訓練時には実際の地震で収集された情報に基づいた極めてリアルなシミュレーションを実現することが可能となり、また地震発生時には、例えば一部の地域で実際の被災状況の情報が収集できなくなっても、その部分の情報については、訓練時にシミュレーションで生成された情報を用いて補うことが可能となる。しかも、訓練時に行ったシミュレーション結果のデータの蓄積と、実際の地震発生時に収集したデータの蓄積とが、互いに相乗効果を与え合って、地震発生時の防災モードおよび訓練時の訓練モードの両方のモードについて相乗的に情報量が増大するので、その両方のモードについて、このシステムの利用を継続して行くにつれて、さらに精細で確実な情報を利用することができるようになって行くという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る地震防災システムの概要構成を表した図である。
【図2】サーバから地震時遠隔監視装置へと送出される制御信号について模式的に表した図である。
【図3】端末装置からサーバへと送出される1ブロックに対しての一斉遮断を行うための一纏まりの命令電文について模式的に表した図である。
【図4】端末装置からサーバへと送出される1ブロックに対しての一斉遮断を行うための命令電文について模式的に表した図である。
【図5】1ブロック内における配管構成およびその地理的な画像表示の一例を表した図である。
【図6】1ブロック内における配管等の被害発生およびガバナの未遮断状態に起因したガス漏洩状態についての画像表示の一例を簡易化して表した図(B)およびその後に遠隔遮断を行って、当該1ブロック内の全てのガバナを一斉に遮断状態にした画像表示の一例を簡易化して表した図(A)である。
【図7】サーバ内の機能的な概要構成を表した図である。
【図8】臨界変形量(Dcr)と臨界地震振幅値(Ucr)との対応関係を示すグラフである。
【図9】低圧導管および中圧導管ならびにガバナの組み合わせおよび配管形状を最も簡略化した1ブロック内の配管構成の基本形を想定し、その配管構成に損傷が発生した場合における、ガスの圧力状態・漏洩状態の時間的推移等の解析方法の一例についてを説明するための図である。
【図10】一単位のブロック内における配管等の被害が発生し、かつガバナが遮断状態になった場合のガス漏洩状態の一例を模式的に表した図(A)およびその場合の圧力・漏洩状態の時系列的推移を表した図(B)である。
【図11】一単位のブロック内における配管等の被害発生およびガバナの未遮断状態に起因したガス漏洩状態の一例を模式的に表した図(A)およびその場合の圧力・漏洩状態の時系列的推移を表した図(B)である。
【図12】低圧導管の被害推定に用いられる計算式の一例を表したものである。
【符号の説明】
10…端末装置、20…サーバ、21…主記憶装置、30…地震時遠隔監視装置、40…記憶装置、50…解析装置、300…表示装置、400…入力装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば都市ガスの配管網のような流体を輸送する配管網における、地震発生時の防災活動を支援・実行するための、地震防災システムおよび配管網における遮断弁装置の制御方法ならびに地震防災・訓練方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ガスや上下水道の配管網は一般に、一般家庭向けなどの燃料用ガスや水道水のような公共的資源を所定の地域内の需要家に対して確実に供給するために、その供給対象地域内に、あたかも人体における血管網のように複雑な形状のネットワーク状に設置されている。例えば都市ガスの配管網では、いわゆる導管はほぼ全体的に、ガス供給時業者が管轄している所定地域内の地下に埋設されており、一般に埋設管と呼ばれている。但し、少数ではあるが、部分的には導管が地上に露出している場所もある。
【0003】
都市ガスのような燃料用流体を輸送するための配管網では、地震が発生した場合、その地震の規模如何によっては、配管に破損等の被害が発生し、その発生箇所を中心として、例えばガス漏洩や圧力異変等が生じる虞がある。このため、輸送対象として可燃性のガスを取り扱うガス供給事業者等としては、ガス配管網における安全を確保できるように、地震に起因して配管に生じる被害状況を正確に把握すること、そしてそのような配管網の被害に起因して発生する虞のあるガス漏洩や圧力異常などの発生状態などを情報収集して、即座に的確に対応することができるようにしておくことが必要となる。
【0004】
実際に地震が発生してガス漏洩や圧力異変等が生じた場合には、短時間のうちに適切な緊急処置を施すことなく放置しておいたりなどすると、火災や爆発等のいわゆる二次災害を引き起こす要因となってしまう虞がある。例えば、ガス配管網では一般に、上流側の中圧導管から下流(末端)側の低圧導管へとガスを供給する地点ごとに、いわゆるガバナが設けられており、このガバナによってガスの供給圧力が調節されるようになっているが、地震発生時に低圧導管が破損するなどして漏洩が生じた場合には、ガバナが導通状態を続けていると、ガスが供給され続けて、ガス漏洩がむしろ助長されてしまう。このため、特に被災地域内の配管網では、確実に全てのガバナあるいはそれに代る緊急時の遮断弁装置等を遮断状態にすることが必要である。従って、従来、個々のガバナや遮断弁装置を個別に遠隔操作して遮断を行うという機能を有する地震防災システムが提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−75040号公報(発明の詳細な説明全体)
【特許文献2】
特開2002−168963号公報(発明の詳細な説明全体)
【特許文献3】
特開平11−84017号公報(発明の詳細な説明全体)
【特許文献4】
特開2002−162893公報(発明の詳細な説明全体)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、遮断する必要のない地域については、地震発生時のような緊急時にあっても熱エネルギや電気エネルギの源として利用価値の高いガスを供給停止すると、例えば被災地における防災活動のために必要なエネルギ源を遮断することになる虞があるので、全管区のガバナや遮断弁装置を全て遮断状態にすることは望ましくない。
【0007】
しかも、実際には都市ガス供給者が管理すべき配管網の全管区内には、例えば3000箇所以上のような極めて多数の箇所にガバナや遮断弁装置が設置されているが、それら全てについて個々に、遮断が必要であるか否かを短時間で的確に判断して過不足なく人的に遠隔操作することは、地震発生時のような緊急事態であるという状況とも相俟って、極めて困難あるいは不可能である。
【0008】
また、地震発生時には、上記のようなガバナや遮断弁装置を遠隔操作する機能を備えた地震防災システムでは、遠隔操作を行う際に利用する通信システムや情報処理装置などにも故障や通信異常や動作異常等が生じる確率が高い。このため、遮断が必要であるガバナを遮断状態にすることができなかったり、あるいは逆に、遮断しなくともよい(あるいは遮断することは望ましくない)ガバナを遮断状態にしてしまったりするといった不都合が生じる虞がある。
【0009】
また、実際の地震が発生した際に、いわゆる「ぶっつけ本番」的に地震防災システムを操作して防災活動を行っても、その地震防災システムについて操作者が不慣れであることや、それと共に緊急事態であることに因る精神的なプレッシャ(圧迫感・重圧感)などに起因して、的確で迅速な防災活動を冷静に行うことが困難となる虞がある。このため、ガス供給事業者等としては、地震対策に関する防災活動の一環として、例えば過去に発生した地震の震度や震源の位置などに関する記録に基づくなどして仮想の地震発生を想定し、そのような地震が発生した際のガス配管網の被害状況やガス漏洩状況等のシミュレーションによる訓練を行うなどして、操作者等が地震発生時の状況に対する的確な緊急処置を沈着・冷静に行うことができるようにしておくことが必要である。
【0010】
しかしながら、そのような地震が発生した際のガス配管網の被害状況やガス漏洩状況等のシミュレーションを行うことができる装置またはシステムもしくは方法については、従来、有効なものは提案されておらず、従って実用化されていないことは言うまでもなかった。
【0011】
しかも、折角そのような防災シミュレーションシステムを構築しても、実際の防災活動を行うための地震防災システムとは異なったシステムや操作方法であると、訓練の意味を成さないので、地震防災システムと同様の遮断機能や情報収集機能や表示出力機能などを仮想的に実現するシステムが望まれるが、そのようなシステムはそれ自体で極めて繁雑なものとなる傾向にある。
【0012】
また、特開2002−162893公報にて提案された技術では、地震発生時を想定した訓練シナリオを予め設定してデータベース化しておき、そのうちから適宜のシナリオを選択して用いて地震発生時の防災訓練を行うというものであるが、この技術によれば、災害位置・規模に応じた災害を模擬し、訓練参加者の立場毎に、時々刻々とネットワーク経由で災害訓練シナリオを提供することができるようになる。また、防災組織の運営上の訓練を行うということを主な目的としており、その意味では、防災組織の全体的な訓練を行うことが可能なものとなっている。
【0013】
しかしながら、この技術についても、基本的に、ガス漏洩やガバナの遮断状態などのシミュレーションを行うのではなく、そのようなシミュレーションとは無関係に予め多数の訓練シナリオを人為的に想定して作製しておき、そのなかから適宜に選択した訓練シナリオを用いて訓練を行う、というものであるため、実際の地震発生時に配管網中に発生する被害箇所や、その箇所ごとでのガス漏洩や圧力異変等の具体的な状態についての、より現実的な(実際に起こり得るという、いわゆるリアルな)シミュレーションを行って、それに対して遮断の遠隔操作を行う訓練を実現できる、という観点では、基本的に不十分なものであった。
【0014】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、第1に、地震発生時の防災のために遮断が必要なガバナまたは遮断弁装置を確実に遮断することができる地震防災システムおよび配管網における遮断弁装置の制御方法ならびに地震防災・訓練方法を提供することにある。
【0015】
また、第2に、地震発生時にはシステムやその遠隔操作に動作異常や通信異常が発生する虞があるが、そのような異常が発生した場合であっても、不必要なガバナや遮断弁装置の遮断を行うことなく、防災に必要な遮断のみを確実に行うことができる地震防災システムおよび配管網における遮断弁装置の制御方法ならびに地震防災・訓練方法を提供することにある。
【0016】
また、第3に、システムの全体的な構成を繁雑化することなく、地震発生時のガス配管網の被害状況やガス漏洩状況および遮断の遠隔操作等のシミュレーションによるリアルな訓練を行うことができる地震防災システムおよび配管網における遮断弁装置の制御方法ならびに地震防災・訓練方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1の地震防災システムは、所定種類の流体を輸送する配管網中に設置され前記流体の遮断を行う機能を備えた遮断弁装置と、前記遮断弁装置とは離れた位置に設置されて前記遮断弁装置の動作を遠隔操作によって制御する遮断弁遠隔制御装置であって、前記配管網を複数個のブロックに分けてそのブロックごとに1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御を行う機能を備えた遮断弁遠隔制御装置とを備えている。
【0018】
また、本発明による配管網における遮断弁装置の制御方法は、所定種類の流体を輸送する配管網中に設置された遮断弁装置によって前記流体の遮断を行うプロセスと、前記遮断弁装置の動作を遠隔制御する遮断弁遠隔制御プロセスであって、前記配管網を複数個のブロックに分けて、ブロックごとに1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御を行う遮断弁遠隔制御プロセスとを含んでいる。
【0019】
すなわち、本発明による第1の地震防災システムまたは本発明による配管網における遮断弁装置の制御方法では、全管区内の(換言すれば管理対象の全区域内の)配管網を複数個のブロックに分けて、そのブロックごとで、1ブロック内の全ての遮断弁装置を一斉に遮断状態にする制御を行うことによって、地震発生時に例えば1ブロック内に配管の破損等が発生してガスのような輸送対象である流体の漏洩が生じた際に、当該ブロックへのガスのような流体の供給を確実に遮断することができる。
【0020】
ここで、前記各ブロックは、1ブロック内の全ての遮断弁装置が遮断状態になると当該1ブロックとその外部との間での前記流体の出入が完全に遮断されるように設定されていることが望ましい。上記のような地震発生時に配管の破損に起因した漏洩等が発生した際に、当該ブロックに対してその外部の配管網から供給されるガスのような輸送対象である流体の流入を完全に遮断して、それ以上、漏洩等が継続することを防止することが可能となるからである。
【0021】
また、前記1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行わせるための命令電文を前記遮断弁遠隔制御装置に対して入力する端末装置を備えており、前記端末装置は、前記命令電文として、前記遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行わせるための命令の電文と当該遮断弁装置が設置されているブロックの識別情報の電文とを組み合わせてなる電文を前記1ブロック内の全ての遮断弁装置のそれぞれに対して1対1に対応するように生成し、前記全ての遮断弁装置に対する電文を一纏まりにして前記遮断弁遠隔制御装置へと送出し、前記遮断弁遠隔制御装置は、前記端末装置から一纏まりの電文が送られて来ると、当該一纏まりの複数個の電文中に含まれているブロックの識別情報の電文のうちに他とは異なった識別情報が一つでも混在している場合には、当該ブロックにおける遮断弁装置を遮断状態に制御する動作は行わないようにすることが望ましい。
【0022】
すなわち、1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行わせるにあたり、遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行わせるための命令の電文と当該遮断弁装置が設置されているブロックの識別情報の電文とを組み合わせてなる電文を1ブロック内の全ての遮断弁装置のそれぞれに対して1対1に対応するように生成し、それら全ての遮断弁装置に対する電文を一纏まりにして、端末装置から遮断弁遠隔制御装置へと送信することなどが有効であるが、この場合、例えば地震被害等に起因してシステムや通信手段に故障や動作異常が生じていると、一纏まりの複数個の電文中に含まれているブロックの識別情報の電文のうちに、他とは異なった識別情報が混在してしまうといった異常が生じることなどがあり得る。逆に、異常のない正しい電文であれば、一纏まりの複数個の電文中に含まれている識別情報は、全て同じくその当該ブロックについてのものである筈である。そこで、一纏まりの複数個の電文中に、他とは異なった識別情報が一つでも混在している場合には、そのときの電文は異常なものであるとして、その電文にて指定されている当該ブロックにおける遮断弁装置を遮断状態に制御する動作は行わないようにすることで、システム異常や通信異常等に起因した誤遮断あるいはハッカーの違法なシステム侵入等を防止することができる。
【0023】
あるいは、前記端末装置は、前記命令電文として、同一内容の電文を所定の複数回に亘って繰り返し送出し、前記遮断弁遠隔制御装置は、前記端末装置から前記同一内容の電文が前記所定の複数回に亘って繰り返し送られて来た場合には、前記遮断弁装置を遮断状態にする制御を行うが、前記端末装置から前記同一内容の電文が前記所定の複数回とは異なった回数送られて来た場合には、前記遮断弁装置を遮断状態にする制御は行わないようにすることなども望ましい。
【0024】
すなわち、例えば地震被害等に起因してシステムや通信手段に故障や動作異常が生じていると、端末装置から同一内容の電文が所定の複数回に亘って繰り返し送出されるのではなくて、その所定の回数未満あるいは所定の回数超などの異常な回数の電文が送出される可能性が高い。そこで、このような所定の回数とは異なった回数の電文が送られて来た(受信した)場合には、遮断弁遠隔制御装置は、遮断弁装置を遮断状態にする制御は行わないようにする。しかし同一内容の電文が前記所定の複数回に亘って繰り返し送られて来た場合には、正しい電文が送られて来たものとして、その電文に従って、遮断弁装置を遮断状態にする制御を行う。このようにすることにより、システム異常や通信異常等に起因した誤遮断を防止することができる。
【0025】
あるいは、前記遮断弁遠隔制御装置は、前記遮断弁装置を制御するに際して、当該遮断弁装置に対して同一内容の制御信号を所定の複数回に亘って繰り返し送出し、前記遮断弁装置は、前記遮断弁遠隔制御装置から前記同一内容の制御信号が前記所定の複数回に亘って繰り返し送られて来た場合には、前記遮断状態にする制御を行うが、前記遮断弁遠隔制御装置から前記同一内容の制御信号が前記所定の複数回とは異なった回数送られて来た場合には、前記遮断状態にする制御は行わないようにしてもよい。
【0026】
すなわち、例えば地震被害等に起因してシステムや通信手段に故障や動作異常が生じていると、遮断弁遠隔制御装置から同一内容の制御信号が所定の複数回に亘って繰り返し送出されるのではなくて、その所定の回数未満あるいは所定の回数超などの異常な回数の制御信号が送出される可能性が高い。そこで、このような所定の回数とは異なった回数に亘って制御信号が送られて来た(受信した)場合には、遮断弁装置は、その制御信号に基づいた遮断の動作は行わないようにする。しかし同一内容の制御信号が所定の複数回に亘って繰り返し送られて来た場合には、遮断弁装置は、正しい制御信号が送られて来たものとして、その制御信号に従って遮断状態にする動作を行う。このようにすることにより、システム異常や通信異常等に起因した誤遮断やハッカーに因る不法なシステム侵入等を防止することができる。
【0027】
あるいは誤遮断等をさらに確実に防止するためには、前記命令電文または前記制御信号の繰り返しの周期が所定範囲内である場合にのみ、前記制御または前記動作を行うようにすることが望ましい。
【0028】
なお、前記遮断弁装置は、地震動を計測する地震動計測装置が付設されて、所定の大きさ以上の地震動が前記地震動計測装置で計測された場合にはそれに対応して自動的に前記遮断状態にする動作を行う自動感震遮断の機能をさらに備えており、前記遮断弁装置または前記遮断弁遠隔制御装置もしくは前記端末装置は、地震の発生を検知する地震発生検知装置をさらに備えて、所定の規模以上の地震が検知された場合には、地震が発生したものと自動的に判断し、前記命令電文または前記制御信号に対応して前記1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御を行うことが可能な状態を所定時間に亘って継続するが、所定の規模未満の地震の発生が検知された場合または地震が全く検知されていない場合には、前記命令電文または前記制御信号の有無に関わらず、前記1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御は行わないようにしてもよい。
【0029】
すなわち、地震発生検知装置をさらに備えて、所定の規模以上の地震が検知された場合には、地震が発生したものと自動的に判断して、上記のように1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御を行うことが可能な状態を所定時間に亘って継続する。しかし、例えば地震が全く検知されていない場合には、このとき地震が発生していないのであるから、上記のような命令電文や制御信号を受けても、遮断を行うことは妥当ではなく誤遮断の可能性が極めて高い。よって、所定の規模未満の地震の発生が検知された場合または地震が全く検知されていない場合には、命令電文または制御信号の有無に関わらず、1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御は行わないようにすることで、誤遮断を防止することができる。
【0030】
本発明による第2の地震防災システムは、所定種類の流体を輸送する配管網中に設置され前記流体の遮断を行う機能を備えた遮断弁装置であって外部から入力される制御信号に対応して前記遮断を行う動作が遠隔操作される遮断弁装置と、前記遮断弁装置に付設されて、前記遮断弁装置の遮断状態に関する情報、前記流体の圧力に関する情報、前記流体の流量に関する情報、前記遮断弁装置の設置された位置にて計測される地震動の情報のうち、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する情報を検出して出力する地震時遠隔監視装置と、前記地震時遠隔監視装置から離れた位置に設置されて、実際の地震発生時に前記地震時遠隔監視装置から送られて来た情報に基づいて、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する前記配管網中における地理的な分布の情報を収集および処理して出力または記憶する地震発生時情報収集機能、および実際の地震発生時に前記遮断弁装置に対して遮断動作を遠隔操作する地震発生時防災機能と、訓練時に入力される仮想的な地震動データに基づいて、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する前記配管網中における地理的な分布の情報を仮想的に生成して出力または記憶する訓練時仮想情報生成機能、および訓練時に前記遮断弁装置に対して前記遮断動作を仮想的に遠隔操作する訓練時仮想防災機能とを、一つのハードウェアで兼備する主情報処理装置と、前記遮断動作を実際に遠隔操作するための電文または前記仮想的な地震動データもしくは前記遮断動作を仮想的に遠隔操作するための電文を前記主情報処理装置に対して入力する機能と、前記主情報処理装置から出力された情報を表示出力または印刷出力もしくは記憶する機能とを備えた端末装置とを備えている。
【0031】
また、本発明による地震防災・訓練方法は、所定種類の流体を輸送する配管網中に設置され前記流体の遮断を行う機能を備えた遮断弁装置に対して、外部から入力される制御信号に対応して前記遮断の動作を遠隔操作する遠隔操作プロセスと、前記遮断弁装置の遮断状態に関する情報、前記流体の圧力に関する情報、前記流体の流量に関する情報、前記遮断弁装置の設置された位置にて計測される地震動の情報のうち、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する情報を得る遠隔監視プロセスと、実際の地震発生時に前記遠隔監視プロセスによって得られた情報に基づいて、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する前記配管網中における地理的な分布の情報を収集および処理して出力または記憶する地震発生時情報収集プロセス、および実際の地震発生時に前記遮断弁装置に対して前記遮断の動作を遠隔操作する地震発生時防災プロセスと、訓練時に入力される仮想的な地震動データに基づいて、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する前記配管網中における地理的な分布の情報を仮想的に生成して出力または記憶する訓練時仮想情報生成プロセス、および訓練時に前記遮断弁装置の遮断状態を仮想的に遠隔操作する訓練時仮想防災プロセスと、前記地震発生時情報収集プロセスによって収集された情報を記憶する地震発生時情報記憶プロセスと、前記訓練時仮想防災プロセスによって生成された情報を記憶する訓練時情報記憶プロセスとを含んでおり、前記地震発生時防災プロセスでは、前記訓練時情報記憶プロセスで記憶された情報を読み出して使用可能であり、前記訓練時仮想防災プロセスでは、前記地震発生時情報記憶プロセスで記憶された情報を読み出して使用可能であるというものである。
【0032】
すなわち、本発明による第2の地震防災システムまたは地震防災・訓練方法では、実際の地震が発生した際に実行される機能である地震発生時情報収集機能および地震発生時防災機能と、訓練時に実行される機能である訓練時仮想情報生成機能および訓練時仮想防災機能とを、一つの主情報処理装置のハードウェアで兼備するようにしている。このようにすることにより、システムの全体的な構成を繁雑なものとすることなく、かつ訓練時のシミュレーションをリアルなものとすることができる。
【0033】
ここで、前記地震発生時情報収集機能によって収集された情報を記憶する地震発生時情報記憶装置と、前記訓練時仮想情報生成機能によって生成された情報を記憶する訓練時情報記憶装置とを備えており、前記主情報処理装置または前記端末装置は、実際の地震発生時には前記訓練時情報記憶装置に記憶されている情報を読み出して使用することが可能であり、訓練時には前記地震発生時情報記憶装置に記憶されている情報を読み出して使用することが可能であるように設定されているようにしてもよい。
【0034】
このようにすることにより、実際に地震が発生した際に収集された情報を訓練時に用いることができるので、極めてリアルなシミュレーションによる訓練の実現が可能となる。また逆に、実際に地震が発生した際に、その地震に起因して、例えばシステムの一部や通信手段の一部に地震被害が生じるなどして、一部の地域の実際の被災状況や遮断状態についての情報が得られない場合などには、その地域に関するそのときの実際の地震動の大きさに対応した、訓練時に生成してなるデータを、訓練時情報記憶装置から検索して読み出すことで、実際に通信手段を介して得ることができなかった情報を補完することが可能となる。
【0035】
なお、前記端末装置は、前記遮断動作を実際に遠隔操作するための電文と、前記遮断動作を仮想的に遠隔操作するための電文とで、異なった電文を用いるように設定されており、前記主情報処理装置は、前記遮断動作を実際に遠隔操作するための電文を受けた場合には前記遮断弁装置を遮断状態にする制御を行うが、前記仮想的に遠隔操作するための電文を受けた場合には前記遮断弁装置を遮断状態にする制御を行わないように設定されているようにすることが望ましい。
【0036】
すなわち、上記のように実際の地震発生時に実行される地震発生時情報収集機能および地震発生時防災機能と、訓練時に実行される機能である訓練時仮想情報生成機能および訓練時仮想防災機能とを、一つの主情報処理装置のハードウェアで兼備するようにした場合には、実際の地震発生時に実際の遮断を行うための電文と仮想的に遮断動作を行うための電文とを同一の電文にしたのでは、例えば訓練時に誤って実際の遮断を行うための電文を主情報処理装置や遮断弁装置に送出してしまい誤遮断を引き起こす虞がある。そこで、実際に遠隔操作するための電文と、仮想的に遠隔操作するための電文とで、異なった電文を用いるようにすることによって、誤遮断を防止することが可能となる。
【0037】
また、前記端末装置は、前記地震発生時情報収集機能を実行している際に収集された情報の表示出力または印刷出力と、訓練時仮想情報生成機能を実行している際に生成された情報の表示出力または印刷出力とを、視覚的に識別可能な互いに異なった態様で出力するようにしてもよい。
【0038】
すなわち、上記のように実際の地震発生時に実行される地震発生時情報収集機能および地震発生時防災機能と、訓練時に実行される機能である訓練時仮想情報生成機能および訓練時仮想防災機能とを、一つの主情報処理装置のハードウェアで兼備させて、実際の地震発生時の防災活動も訓練時のシミュレーションも一つの主情報処理装置および端末装置を用いて行うことにすると、このシステムの操作者は、例えば上記のような実際の地震発生時に、訓練時に生成してなるデータを訓練時情報記憶装置から検索して読み出して用いる際などに、そのとき表示出力または印刷出力されている情報が、実際にそのときリアルタイムに現地から収集された情報であるのか、それとも訓練時にシミュレーションによってリアルに生成された情報であるのかを、的確に判別(区別)することが困難なものとなる虞がある。そこで、端末装置が、地震発生時情報収集機能を実行している際に実際に収集された情報の表示出力または印刷出力と、訓練時仮想情報生成機能を実行している際に仮想的に生成された情報の表示出力または印刷出力とを、視覚的に識別可能な互いに異なった態様で出力するように設定することによって、実際に収集された情報と仮想的に生成されて蓄積されていた情報とを、操作者が明確に判別することが可能となる。
【0039】
また、前記遮断弁装置は、地震動を計測する地震動計測装置が付設されており、所定の大きさ以上の地震動が前記地震動計測装置で計測された場合には自動的に前記遮断を行う自動感震遮断の機能を備えており、前記主情報処理装置は、訓練時に入力される仮想的な地震動データに基づいて、前記遮断弁装置の仮想的な自動感震遮断状態の情報を生成する機能を備えており、前記端末装置は、前記主情報処理装置によって生成された仮想的な自動感震遮断状態の情報に基づいて、前記配管網における前記遮断弁装置の仮想的な自動感震遮断状態の地理的な分布に関する情報を表示出力または印刷出力もしくは記憶する機能を備えているようにすることが望ましい。
【0040】
このようにすることにより、訓練時に自動感震遮断の地理的な分布についてのリアルなシミュレーションを行って、その自動感震遮断の分布状況に対応した的確な遠隔操作についてのリアルな訓練を行うことなどが可能となる。
なお、前記流体が可燃性のガスであり、前記配管網が、前記ガスを輸送または供給対象としたガス配管網であることは、最も望ましい態様である。
【0041】
すなわち、本発明は、ガス配管網における地震に起因したガス漏洩状態や圧力異変などのような被害状態についての時系列的なシミュレーションなどに特に有効に適用可能なものである。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0043】
図1は、本発明の一実施の形態に係る地震防災システムの概要構成を表したものである。
【0044】
なお、本発明の実施の形態に係る配管網における遮断弁装置の制御方法または地震防災・訓練方法は、この地震防災システムの動作あるいは作用によって具現化されるものであるから、以下、それらを併せて説明する。
【0045】
この地震防災システムは、端末装置10と、サーバ20と、遠隔監視装置30と、記憶装置40と、解析装置50とから、その主要部が構成されており、実際の地震が発生した際に実行される機能である地震発生時情報収集機能および地震発生時防災機能と、訓練時に実行される機能である訓練時仮想情報生成機能および訓練時仮想防災機能とを、主情報処理装置であるサーバ20が一つのハードウェアで兼備している。その地震発生時の機能と訓練時の機能とは、切り替えて使用することも可能であり、あるいは両方を一度に並行して走らせることも可能となっている。
【0046】
地震時遠隔監視装置30は、都市ガスの配管網が敷設されている都市ガス供給エリア内の、例えば3700か所のような極めて多数の主要拠点ごとに配置されているガバナ31に付設されて、その拠点ごとで地震発生時の各種情報の収集およびガバナ31の遠隔遮断制御を行うものである。
【0047】
この地震時遠隔監視装置30は、さらに詳細には、SIセンサ32と、感震器33と、圧力センサ34と、流量センサ35と、遠隔遮断ユニット36と、情報処理ユニット37と、通信ユニット38とを備えている。
【0048】
ガバナ31は、基幹配管である中圧導管から末端配管である低圧導管へと供給されるガスの圧力を調節する圧力調整弁としての機能と、地震発生時などに遠隔遮断あるいは自動感震遮断を行う、いわゆる遮断弁装置としての機能とを、備えたものである。
【0049】
SIセンサ32は、この地震時遠隔監視装置30が設置されている地点における地震発生時に観測されるSI値の情報を出力する。
【0050】
感震器33は、この地震時遠隔監視装置30が設置されている地点における、地震発生時に観測される震動加速度(Gal)を計測し、その震動加速度計測値の情報を出力する。
【0051】
圧力センサ34は、それが付設されている中圧配管におけるガスの圧力を計測して、その圧力の計測値の情報を出力する。また、流量センサ35は、それが付設されている中圧配管におけるガスの流量を計測して、その流量計測値の情報を出力する。
【0052】
遠隔遮断ユニット36は、地震発生時などに、後述する情報処理ユニット37によって制御されて、ガバナ31を自動的に遮断する制御を行う。あるいは、ユーザによって端末装置10の入力装置400からの命令を受けたサーバ20が制御信号を送出すると、その制御信号によって遠隔操作されてガバナ31を遮断する制御を行う。また、例えば地震に起因した災害等の危険性が解消された際などには、端末装置10からの命令を受けてサーバ20によって遠隔操作されて、それまで遮断状態にあったガバナ31を復帰する(開状態に戻す)制御を行う。
【0053】
また、この遠隔遮断ユニット36は、SIセンサ32で計測されたSI値が10[kine]および感震器33で計測された震動加速度が50[Gal]以上となった場合にのみ遠隔遮断命令を受け付けるようにすることで、地震発生時の確実な遮断を行うと共に正常時の誤遮断やハッカーによる不法なシステム侵入等を防止するという、ゲート機能なども備えている。換言すれば、このゲート機能は、感震器33で計測された震動加速度が50[Gal]未満の場合には、遠隔遮断命令を受けても、遠隔遮断は行わない。なお、このゲート機能は、地震時遠隔監視装置30以外にも、サーバ20または端末装置10に設けるようにしてもよい。
【0054】
さらには、この遠隔遮断ユニット36は、図2に模式的に示したように、サーバ20から通信手段39等を介して遠隔操作によってガバナ31を遮断する制御を行うための制御信号を受けるが、例えば3回のような所定の複数回数に亘って繰り返し同一の制御信号を受けた場合であって、かつその繰り返しの周期が所定範囲内である場合にのみ、正しい制御信号が伝送されて来たものとしてガバナ31を遮断する制御を行うが、それ以外の例えば1回や4回のような、所定の回数とは異なった回数の制御信号を受けた場合、あるいは所定の回数通りの3回であってもその繰り返しの周期が所定の周期とは著しく異なっていた場合などには、通信手段39の異常あるいはサーバ20の異常などのような何らかの異常に起因した異常な制御信号が伝送されて来たものと推定して、その制御信号を受信してもガバナ31を遮断する制御は行わない。
【0055】
情報処理ユニット37は、SIセンサ32から送られて来たSI値および震動加速度の計測値の情報、圧力センサ34から送られて来たガスの圧力の計測値の情報、流量センサ35から送られて来たガスの流量の計測値の情報を、それぞれサーバ20で処理可能となるようにデータ化して、その各種類の情報のデータに対してその各々が計測された時刻の情報を付け合わせて、通信ユニット38および一般電話回線のような39等を介して外部のサーバ20へと送出する。
【0056】
また、この情報処理ユニット37は、SIセンサ32から出力されたSI値や震動加速度の情報に基づいて、例えばSI値が所定のしきい値を超えた大きさであった場合(換言すれば地震動が所定の大きさを超えた強い震動であった場合)などには、それを検知して、遠隔遮断ユニット36に対してガバナ31を自動的に遮断する制御を行う制御信号を伝送する。その制御信号を受けて、遠隔遮断ユニット36では、前述したように、ガバナ31を遮断する制御を行う。あるいは、外部の端末装置10から入力された遠隔操作命令に対応してサーバ20から通信ユニット38および一般電話回線のような通信手段39等を介して遠隔遮断を行うための制御信号が伝送されて来ると、その制御信号を遠隔遮断ユニット36に入力して、その命令に従った遠隔遮断制御を遠隔遮断ユニット36に実行させる。
【0057】
また、この情報処理ユニット37は、ガバナ31が遮断状態にあるか開放状態にあるかについての情報を、通信ユニット38等を介してサーバ20に伝送する機能も備えている。
【0058】
サーバ20は、このシステムにおける主情報処理装置であり、地震時遠隔監視装置30から離れた位置に設置されて、実際の地震が発生した際に実行される機能である地震発生時情報収集機能および地震発生時防災機能と、訓練時に実行される機能である訓練時仮想情報生成機能および訓練時仮想防災機能とを、一つのハードウェアで兼備している。その地震発生時の機能と訓練時の機能とは、切り替えて使用することも可能であり、あるいは両方を一度に並行して走らせることも可能である。
【0059】
地震発生時情報収集機能は、実際の地震発生時に地震時遠隔監視装置30から送られて来た情報に基づいて、遮断弁装置であるガバナ31の遮断状態に関する配管網中における地理的な分布の情報を収集および処理して表示出力および印刷出力ならびに記憶する機能である。
【0060】
さらに詳細には、この機能では、サーバ20は、地震時遠隔監視装置30によって計測されて伝送されて来た地震動の情報であるSI値および震動加速度のデータと、配管網中のガスの圧力や流量に関するデータおよびガバナ31の開閉状態についての情報とを、拠点ごとの地震時遠隔監視装置30から通信手段39を介して収集する。すなわち、サーバ20は、地震情報収集手段(あるいは地震情報収集装置)としての機能を備えており、またそのようにして地震発生時に実際に収集された地震発生時のデータを記憶するための主記憶装置21を内蔵している。
【0061】
配管網が敷設されたガス供給区域内(全管区内)に設置されている、いずれかの地震時遠隔監視装置30で、例えば震度3以上の地震動が検知されて、その旨の情報が当該地震時遠隔監視装置30からサーバ20へと伝送されて来ると、この地震防災システム全体が地震モードに移行して、上記のような情報収集を行う。また、このサーバ20では、一つの地震が発生すると、その地震の発生時点から例えば6時間のような所定時間に亘って検出された地震動の情報を、1つの地震に関する一連の地震動の情報としてとらえて、その1つの地震に関する一連のSI値および震動加速度の情報(地震動の情報)と、その地震が発生した際のガスの圧力状態および流量状態ならびにガバナ31の遮断状態に関する情報とを、対応付けて一つの地震における情報として纏めて主記憶装置21に記憶させる。
【0062】
地震発生時防災機能は、実際の地震発生時に、端末装置10から伝送されて来る命令電文に基づいて、地震時遠隔監視装置30に対して制御信号を送信することで、ガバナ31を遠隔操作して遠隔遮断の制御を行うという、遮断弁遠隔制御装置としての機能である。
【0063】
さらに詳細には、この地震発生時防災機能では、図3に模式的に示したように、端末装置10が、命令電文として、ガバナ31を遮断状態に制御する動作を行わせるための命令の電文とその制御対象のガバナ31が設置されているブロックの識別情報の電文とを組み合わせてなる電文を、1ブロック内の全てのガバナ31のそれぞれに対して1対1に対応するように生成し、その1ブロック内の全てのガバナ31に対する電文を一纏まりにして(区切り文字等によって前端と後端とが区切られた一連の1ログのデータとして)、地震時遠隔監視装置30へと送出する。そして遮断弁遠隔制御装置として機能するサーバ20では、端末装置10から一纏まりの電文が送られて来ると、その一纏まりの複数個の電文中に含まれているブロックの識別情報の電文のうちに、他とは異なった識別情報が一つでも混在している場合には、その1ブロックにおける全てのガバナ31を一斉に遮断状態に制御する動作は行わない。
【0064】
またさらには、図4に模式的に示したように、端末装置10が、例えば一般電話回線のような通信手段392を介してサーバ20へと、命令電文として同一内容の電文を例えば2回のような所定の複数回に亘って繰り返し送出する。そしてサーバ20は、端末装置10から同一内容の電文が2回のような所定の複数回に亘って繰り返し所定の周期で送られて来た場合には、ガバナ31を遮断状態にする制御を行うが、端末装置10から同一内容の電文が例えば1回や3回のような、所定の複数回とは異なった回数送られて来た場合、または2回のような所定の回数であっても所定の周期として許容できる範囲を逸脱した異常な周期で送られて来た場合には、ガバナ31を遮断状態にする制御は行わない。
【0065】
ここで、上記の各ブロックは、1ブロック内の全ての遮断弁装置が遮断状態になると当該1ブロックとその外部との間でのガスの出入が完全に遮断されるように設定されている。このブロックは、管区内の全配管網に亘って予め設定されていることは言うまでもない。
【0066】
このようにすることにより、地震発生時の通信手段392の被災などに起因した異常な命令電文等に因る誤遮断あるいはハッカーによるシステムへの不法な侵入等を防ぐことができ、かつ所定の大きさ以上の地震動を受けて被災した確率が高いブロック内の全てのガバナ31を一斉に確実に遮断状態にすることで、ガバナ31の遮断忘れ等に起因した当該ブロックにおけるガス漏洩の継続やそれに起因した火災などの二次災害等の発生を確実に防止することができる。
【0067】
図5は、配管網全体を各単位ブロックに分けた場合の、その一単位のブロック内における配管構成の一例をマップ化して模式的に表したものである。また、この図5に示したような地図的(地理的)な画像が、実際の地震発生時にガバナ31の遮断状態の地理的な分布の情報として、端末装置10の表示装置300に表示される。ここで、図5では、太い配管として描いてあるものが中圧導管41を示しており、それよりも細い配管として描いてあるものが低圧導管42を示している。また、図5で×印を付した部分が、入力された地震動の情報に対応してサーバ20によって推定された破損発生箇所44を示している。なお、図5では、ブロック45内の需要家の住居46や配管構成等は模式化して描いてあるので、実際よりもかなり簡略化されているが、実際の配管構成や住居などの密度や配置の複雑さは、図5に示したものよりもさらに高度なものとなっていることは言うまでもない。
【0068】
一単位のブロック内の配管では、一般に、隣接する他のブロックとの境目ごとに設けられて常時閉状態にあるブロックバルブ47によって、その隣接する他のブロックとの間でのガスの導通を隔絶されている。また、中圧導管41と低圧導管42との接続部ごとに、所定の大きさ以上の地震動に対応して自動的に弁装置の遮断を行う機能および遠隔操作によって弁装置の遮断を行う機能と中圧導管41から低圧導管42へと供給(輸送)するガスの圧力調節を行う機能とを併せ持ったガバナ31a,31b,31c,31dが、それぞれ配設されている。
【0069】
一般に、実際に地震が発生すると、理論的には、図5に示したような一つのブロック内の全てのガバナ31a,31b,31c,31dが自動感震動作を行って自動的に遮断状態になるので、図5に示したような一つのブロック内に配管破損が生じてその部分からガス漏洩が発生したがそのガス漏れに対する処置を施さなかった、といった場合でも、ブロック内の配管内のガスの圧力が外部のいわゆる大気圧(ゲージ圧)と均衡するまではガス漏洩が続くが、やがて圧力が均衡状態に達すると、ガス漏れは止まることとなる。
【0070】
しかし実際には、図6(B)に一例を示したように、例えば図6(B)の右上の位置にあるガバナ31dが設置されている地点の地盤のみが、何らかの要因で地震による揺れが少なかった場合には、そのときの地震に起因して配管網中の破損発生箇所44に配管破損が生じた状態となり、かつブロック内のほとんどのガバナ31a,31b,31cは遮断状態になっている一方でガバナ31dが未遮断状態になっている、といった状況になる場合もある。
【0071】
このような場合には、破損発生箇所44からのガス漏洩に起因して低圧導管42の内部における圧力低下が生じ、この圧力低下に対応して、ガバナ31dは、その本来の機能により、低圧導管42内の圧力を正常な状態に戻すために中圧導管41から低圧導管42へのガスの供給(導通)流量を増加させるように機能する。このため、図6(B)に示したように、配管網中の破損発生箇所44からのガスの漏洩流量は、未遮断状態のガバナ31dによる供給量の増加機能によって助長されてしまい、いつまでもガス漏洩が続くことになる。
【0072】
そこで、このような場合には、未遮断状態のガバナ31dを、外部からの遠隔操作によって強制的に遮断状態にすることが要請されるが、実際には、全配管網における未遮断状態の全てのガバナ31を、操作者が端末装置10の表示出力の画像等を目視で確認しながら手作業で確実に遮断することは、従来の技術では困難あるいは不可能であった。しかし、そのように一つのブロック内に配管破損が生じてその部分からガス漏洩が発生したがそのガス漏れに対する処置を施さなかった、といった場合でも、本実施の形態の地震防災システムによれば、図6(A)に示したように、1ブロックにおける全てのガバナ31を一斉に遮断状態に制御することができるので、そのブロックの外部(の中圧導管41)からのガスの供給を確実に停止してガスの供給について隔絶状態にすることで、その1ブロックにおけるガス漏洩を確実に停止させることができる。
【0073】
なお、このサーバ20は、さらに、例えば50[kine]のような所定の規模以上の地震が検知された場合には、地震が発生したものと自動的に判断し、上記の命令電文に対応して1ブロック内の全てのガバナ31を遮断状態にする制御を行うことが可能な状態を、例えば6時間のような所定時間に亘って継続するが、所定の規模未満の地震の発生が検知された場合または地震が全く検知されていない場合には、命令電文の有無に関わらず、上記のような1ブロック内の全てのガバナ31を遮断状態にする制御は行わないようにしてもよい。このようにすることにより、地震発生時以外の正常時における、いわゆる誤遮断やハッカーの侵入等を防止することができると共に、地震発生時には1ブロック内の全てのガバナ31を一斉に遮断状態する制御を確実に行うことができる。
【0074】
訓練時仮想情報生成機能は、訓練時に入力される仮想的な地震動データに基づいて、ガバナ31の仮想的な自動感震遮断状態に関する配管網中における地理的な分布の情報を仮想的に生成して、その地理的な画像を表示出力および印刷出力ならびに記憶する機能である。
【0075】
また、この訓練時仮想情報生成機能では、ガバナ31の仮想的な遮断制御以外にも、配管網の材料力学的な破損状態などの推定を行うという配管網被害推定の機能や、仮想的に与えられた地震動のデータに対して配管網におけるガスの圧力や流量状態のシミュレーションを行うという配管網流体状態解析の機能なども備えている。なお、配管網流体状態解析については、サーバ20によって推定された配管網被害推定のデータに基づいて、解析装置50によってその主要な解析が行われる。
【0076】
訓練時仮想防災機能は、訓練時にガバナ31に対して遮断動作を仮想的に遠隔操作し、その操作によって仮想的な遮断が行われたガバナ31については、上記の訓練時仮想情報生成機能によって生成された配管網中における地理的な分布の情報に反映させる(情報に追加あるいは修正を加えることで、訓練時のシミュレーションにおける当該ガバナ31の仮想的な状態の情報を遮断状態に書き替える、あるいは逆に、遮断状態であったものを、仮想的な遠隔操作に対応して開放状態に書き替える)機能である。
【0077】
これら訓練時のシミュレーション機能である訓練時仮想情報生成機能と訓練時仮想防災機能とで生成され、あるいはさらにそれに仮想的な遠隔操作の情報が追加されるなどして一部分を書き替えられたデータは、解析結果記憶手段である記憶装置40に記憶される。
【0078】
さらに詳細には、訓練時には、サーバ20は、端末装置10から地震動の大きさの情報(SIまたはGalなどの値)が入力されると、その大きさの地震動に起因した配管網における被害発生箇所の推定を行うという、配管網被害推定手段としての機能を備えている。このサーバ20による被害発生箇所の推定結果は、表示装置300によって表示出力される。なお、このとき入力される地震動の情報は、仮想的なものでもよく、あるいは実際に地震が発生した際に観測された地震動の大きさのデータであってもよい。訓練時のシミュレーションを行う場合には、仮想的な地震動の情報を入力することになる。あるいは、実際に地震が発生した際に、例えば一部の地域での地震動のデータや被害状況のデータなどの情報収集ができなかった場合などにも、取り敢えず近似的に、その地域の近傍で観測された地震動のデータを入力して、訓練時のシミュレーションと同様の推定を行うことなども可能である。
【0079】
このサーバ20は、配管網中の要所ごとに配設されているガバナ31に対する仮想的な遠隔操作が端末装置10の仮想遠隔操作入力手段としての機能によって行われた場合、その遠隔操作に対応したガバナ31の仮想的な弁開閉動作を、このガバナ31内にソフトウエア的に構築されたガス配管網中で仮想的に行うことで、解析装置50による解析を行う際の解析条件の一つとして、ガバナ31の仮想的な弁開閉状態を盛り込む。
【0080】
例えばユーザが、訓練時において、配管網中のあるガバナ31に対して弁装置を閉じる動作を実行させるための仮想的な遠隔操作を行った場合、そのガバナ31の弁装置があたかも実際に閉じられた状態になったものとサーバ20は仮想する。そして解析装置50は、サーバ20からの情報(配管網における破損発生位置やガバナ31によるガス遮断状態のデータ等)を受けて、ガバナ31の弁装置が閉じられた状態になったことを解析条件として含めたうえで、その場合の配管網におけるガスの圧力状態や漏洩状態に関する解析(シミュレーション)を行う。
【0081】
このサーバ20における、入力された地震動の情報に対応してガス配管網の地震被害発生箇所を推定する機能、およびガスの圧力ならびに流量の解析を行え機能、ならびに仮想的な遮断のシミュレーションを行う機能について、さらに詳細に説明する。
【0082】
サーバ20は、図7に示したように、臨界値記憶部100と、破損発生推定部200とを備えており、外部の解析装置50および端末装置10(の表示装置300ならびに入力装置400)に接続されている。
【0083】
臨界値記憶部100は、例えば関東地域ほぼ全域のような所定地域内に網目状に張り巡らされた都市ガスの配管網を、例えば所定の大きさのメッシュ状に区切って複数のセグメント(このセグメントは上記の「ブロック」とは異なる)ごとで分割掌握するようにして、そのセグメントごとに、識別番号(N=1,2,3…)を付して、地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)と配管の破損が生じる臨界変形量(Dcr)とに基づいて予め求められた、そのセグメント内の配管に破損が発生する臨界の地震動値である臨界地震動値(SIcr)のデータと、地震が発生した場合の地盤の流動化に起因した流動方向で配管に破損が生じることが予め推定される流動臨界変形量(δcr)のデータと、そのセグメントが所定地域における地図上のどの位置に存在しているのかについてのデータ((x,y);例えば直交座標のデータ)とを、対応付けて記憶している。また、この臨界値記憶部100は、配管網が配設されている地域の地図および配管網を、表示装置300の表示デバイス302の画面に表示するためのデータ等も記憶している。
【0084】
例えば、第nセグメント(N=n)について、その第nセグメントの地図中での位置のデータが(x,y)、地盤の固有振動周期がT、固有振動波長がL、臨界変形量がDcr、流動臨界変形量がδcrである場合、臨界値記憶部100には、第nセグメントのデータとして、{N=n,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr}という最大7種類のデータが一纏まりにして記憶されている。このデータは、臨界値記憶部100から読み出される際にも、上記のように{N,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr}という一纏まりの状態で取り扱われる。なお、入力された地震動の情報に対応して発生する配管の破損等の被害を推定する際に用いるデータが実質的にn,(x,y),SIcr,δcrの4種類のデータである場合には、それ以外の用いられないデータであるT,L,Dcrについては、例えばバックデータとして別途に保持しておき、臨界値記憶部100には{n,(x,y),δcr,SIcr}というデータを一纏まりの状態で記憶させておくようにしてもよい。このようにすることにより、記憶や読み出しの対象となるデータ量の低減化を図ることができるので望ましい。
【0085】
配管網を複数のセグメント(N=1,2,3…)に分ける際の分割法としては、例えば1辺が0.5[km]の正方形のメッシュを想定し、そのメッシュによって配管網が張り巡らされている所定地域を区分けして、その個々のメッシュごとを各セグメントとして取り扱うことなどが可能である。そして各セグメントの例えば中心点あるいは図心の位置などを、地図中でのそのセグメントの位置のデータ(x,y)とすることが可能である。なお、メッシュの寸法は、位置的な精度とセグメントの個数の多さとの兼ね合いを考慮して適切な大きさに設定することが望ましい。また、地図や破損発生位置を表示する表示デバイス302の画面の表示解像度に対して余りにも微細な表示寸法となってしまうような細かい寸法にメッシュを設定することは無意味であるから、そのような表示デバイス302の解像度なども考慮に入れることが望ましい。
【0086】
あるいは、詳細は後述するが、配管の接続形態(構造力学的および幾何学的な配管形状)に着目して、配管網を、直線の部分と、屈曲の部分と、T字型に分岐した部分とに分類するといった分類法に基づいて細分化し、その個々の部分をそれぞれ離散化された各セグメントとして取り扱うようにしてもよい。この場合にも、各セグメントの例えば中心点あるいは図心の位置などを、地図中でのそのセグメントの位置のデータ(x,y)として用いればよい。
【0087】
地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)のデータは、配管網が配設されている所定地域内の地盤の要所ごとにボーリング調査を行って得ることができる。例えば、管理対象の地域として首都圏の東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県における、ガス導管が設けられている要所ごとの地盤について、合計数万箇所を実地にボーリング調査して、それらの各地点の実測値を得ることなどが可能である。あるいは、その配管が配設されている地域の地盤に関する既存の(過去に調査済みの)データを利用してもよいことは言うまでもない。
【0088】
地震の直接的な振動力(破壊力)による臨界変形量(Dcr)のデータ、および地震によって引き起こされる地盤の流動化に因る流動臨界変形量(δcr)のデータは、それぞれ、セグメントごとの具体的な配管に関する種類(例えば都市ガスの配管網の場合、溶接接合鋼管、ダクタイル鋳鉄管、ねずみ鋳鉄管等)、口径(内径)、材質、その他の仕様(例えば補強処置済み/未着手など)等の各種データに基づいて配管の強度解析を行って求めることができる。あるいはさらに、配管の強度解析結果等に基づいて、臨界変形量(Dcr)のデータや流動臨界変形量(δcr)のデータを算出し、そのデータを既往地震の事例調査によって得られた被害事例のデータ等の情報に基づいてキャリブレーションするなどして、データのさらなる高信頼化を図るようにしてもよい。
【0089】
さらに具体的には、臨界変形量(Dcr)、流動臨界変形量(δcr)は、どちらも本質的に配管やバルブの構造力学的な強度に関する数値(許容応力あるいは許容変位などの物理量)である。従って、地震の振動による破壊力が外力として配管網に加えられた際の、配管やバルブの構造力学的な強度解析あるいは破壊実験を行うことで、理論的または実験的に、精確な臨界変形量(Dcr)および流動臨界変形量(δcr)の値を求めることができる。
【0090】
その際の配管やバルブの構造力学的強度の解析手法それ自体については、例えば、ある一つのセグメント内の配管を、所定の金属材料からなる筒状構造と見做して、その筒状構造に対して有限要素法による強度解析を行うなどして、臨界変形量(Dcr)や流動臨界変形量(δcr)を求めることができる。
【0091】
あるいは、配管の接続形状を考慮に入れて、一つのセグメント内の配管を、直線の部分と、屈曲(曲管)の部分と、T字型に分岐した部分とに分類するなどして、その個々の種類ごとでそれぞれ別個に臨界変形量を求めた上で、それらのうちの最小の値を、そのセグメントにおける臨界変形量(Dcr)のデータとして採用することなども可能である。また流動臨界変形量(δcr)についても同様に、一つのセグメント内の配管を、上記のように接続形状に基づいて細かく分類し、その個々の種類ごとで個別に流動臨界変形量を求めた上で、それらのうちの最小の値を、そのセグメントにおける流動臨界変形量(δcr)のデータとして採用することが可能である。
【0092】
上記のようにして求められた臨界変形量(Dcr)の値と、そのセグメントにおける地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)の値とに基づいて、臨界地震動値(SIcr)または臨界地震振幅値(Ucr)が求められる。
【0093】
さらに詳細には、図8に一例を示したように、ある配管の臨界変形量(Dcr)に対して、その配管に破損が生じはじめる臨界の地震振幅値(あるいは許容地震振幅値)である臨界地震振幅値(Ucr)が一義的に定まるが、このとき配管が埋設されている地盤の固有振動周期(T)または固有振動波長(L)の値によって、臨界変形量(Dcr)と臨界地震振幅値(Ucr)との対応関係を示すグラフ(曲線)は異なったものとなることが確認されている。これは換言すれば、一般に1つの配管に関して、その配管の臨界変形量(Dcr)と、その配管が埋設されている地盤の固有振動周期T)または固有振動波長(L)との、2つの変数に対して、1つの臨界地震振幅値(Ucr)が定まるという関数関係(すなわちF(Dcr,T or L)=Ucr)が成り立っているということである(すなわちFを関数とすると、F(Dcr,TまたはL)=Ucr)。
【0094】
従って、例えばあるセグメントにおける配管の臨界変形量がDcr、その配管が埋設されている地盤の固有振動周期がT=0.7[s](このときL=200[m])である場合には、そのセグメントにおける臨界地震振幅値の値Ucrは、図8に示したようなT=0.7[s](L:200[m])の場合の曲線に基づいて求めることができる。あるいは、例えば地盤の固有振動周期がT=1[s](このときL=400[m])の場合には、T=0.7[s]の場合よりもさらに緩やかな単調増加を示す曲線に基づいてUcrの値を求めることができる。
【0095】
ここで、地震は地盤の振動現象であるから、臨界地震振幅値(Ucr)と臨界地震動値(SIcr)との間には、SIcr=2π・Ucr/Tなる式で表される関係が成り立っている。従って、この関係式を用いて、上記のようにして得られた臨界地震振幅値(Ucr)から、臨界地震動値(SIcr)を求めることができる。このようにして得られた臨界地震動値(SIcr)は、最終的に、破損発生推定部200によって、地震に起因した配管の破損(被害)の有無を推定する際に用いられる。あるいは、臨界地震振幅値(Ucr)を用いて配管の破損の有無を推定するように破損発生推定部200が設定されており、従って解析条件を与えるための地震動の情報の一要素として臨界地震振幅値(Ucr)が入力装置400を介して入力されるように設定されている場合には、上記のようにして求めた臨界地震振幅値(Ucr)を直接に用いればよく、従ってこの場合には、臨界地震振幅値(Ucr)に対応した臨界地震動値(SIcr)の算出は省略してもよいことは言うまでもない。
【0096】
近年では、地震で観測される地震動値(SI)のデータは、他の種類のデータと比べて、観測および入手することが容易で、かつ配管に掛かる外力を算出するのに極めて好適なものとなっている。従って、このようなデータの入手や取り扱いが簡便であり地震動の評価・判断等のための基準となる単位として一般化しているという点で、臨界地震動値(SIcr)を予め求めておき、その臨界地震動値(SIcr)と入力された地震動の情報のうちに含まれている地震動値(SI)とを、破損発生推定部200で比較するように設定することが望ましい。
【0097】
他方、流動臨界変形量(δcr)のデータについては、全てのセグメントあるいは全ての配管に対して流動臨界変形量を求めておくようにしてもよいが、地震に因る地盤の流動化が発生したときに実質的に配管の破損を引き起こすような流動量が生じるのは、実際には護岸の付近に限られており、しかもその護岸付近での流動化による地盤の変位は護岸線に対してほぼ直交方向であることが多いということを、本発明者らは確認している。従って、例えば護岸から100[m]以内の領域に位置している配管またはそのような配管を有しているセグメントのみを、破損発生推定の対象として取り扱うものとし、その他の配管またはセグメントについては、流動臨界変形量(δcr)のデータの記憶やそれに基づいた破損発生の推定動作などは省略してもよい。このようにすることにより、少なくともその省略した分のデータ量やデータ処理を簡略化することができるという利点が得られる。また、流動臨界変形量(δcr)の推定は、流動化に起因して地盤の変位が最も発生しやすい方向である護岸線に対してほぼ直交方向から配管に対して外力が加えられた場合を想定した配管の構造力学的な強度解析等を行うことによって求めることが望ましいことは言うまでもない。
【0098】
この流動臨界変形量(δcr)のデータを求める際にも、臨界変形量(Dcr)の場合と同様に、直線型、曲管型、T字型等のような配管の接続形態に着目した分類法に則して配管網を複数のセグメントに離散化して考えて、その個々のセグメントごとに強度解析等を行うようにしてもよい。あるいはさらに、このようにして流動臨界変形量(δcr)のデータを求めておき、この流動臨界変形量(δcr)を生じさせる流動臨界地震動値(SIcr´)または流動臨界地震振幅値(Ucr´)を、例えば成り立つことが既に確認されている地震動値と流動量との間の相関関係あるいは関係式に基づいて算出しておき、その流動臨界地震動値(SIcr´)または地震振幅値(Ucr´)を、地震動の情報として入力された地震動値(SI)または地震振幅値(U)と比較するように設定してもよい。但しこれのみには限定されないことは言うまでもない。
【0099】
破損発生推定部200は、SI比較判定部201と、δ比較判定部202とを備えている。SI比較判定部201は、入力された地震動の情報に含まれている地震動値(SI)と、セグメントごとの臨界地震動値(SIcr)とを比較して、地震動に対応してどの位置のセグメントに配管の破損が生じるかを推定する。また、δ比較判定部202も同様に、地震動に起因して発生することが推定される流動量(δ)と各セグメントまたは所定のセグメントごとの流動臨界変形量(δcr)とを比較して、そのときの地震に因る地盤の流動化に起因してどの位置のセグメントに配管の破損が生じるかについてを推定する。
【0100】
さらに詳細には、地震動値(SI)の情報およびその震源位置の情報を含んだ地震動の情報が入力装置400から破損発生推定部200へと入力されると、破損発生推定部200のSI比較判定部201では、臨界値記憶部100に記憶されている全てのセグメントに関するデータ{N,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr;N=1,2,3…}を読み出し、その個々のセグメントごとに、地震動値(SI)と臨界地震動値(SIcr)とを比較して、地震動値(SI)が臨界地震動値(SIcr)以上である(SIcr≦SI)セグメントには破損が生じると推定して、そのセグメントの位置のデータを表示装置300へと送出する。地震動値(SI)が臨界地震動値(SIcr)未満である(SIcr>SI)場合には、そのセグメントには破損が生じないと推定し、そのセグメントの位置のデータは送出されない。
【0101】
また、入力された地震動の情報に含まれている、地盤の流動化に起因して護岸から所定距離内の領域に生じることが観測される流動量(δ)の値が、破損発生推定部200に入力されると、この破損発生推定部200のδ比較判定部202では、臨界値記憶部100に記憶されている全てのセグメントのうちから、前述の護岸から所定距離内の領域の配管を有するセグメントのデータを選択して読み出し、その読み出された個々のセグメントごとに、流動量の値δと流動臨界変形量の値δcrとを比較して、流動量(δ)が流動臨界変形量(δcr)以上の値である(δcr≦δ)セグメントには破損が生じると推定し、そのセグメントの位置のデータを表示装置300へと送出する。しかし流動量(δ)が流動臨界変形量(δcr)未満(δcr>δ)である場合には、そのセグメントには破損が生じないものと推定する。
【0102】
ここで、例えば200[kine]以上のような、所定地域内で発生する可能性のある最大規模の地震に対応した地震動値(SImax )よりも大きな臨界地震動値(SIcr>SImax )を有するセグメントについては、そのような最大級の地震に対しても耐震的であるということであるから、「恒常的に破損なし」と予め推定しておくようにしてもよい。あるいは臨界地震動値(SIcr)の代りに臨界地震振幅値(Ucr)を用いる場合にも同様に、発生する可能性のある最大規模の地震に対応した地震振幅値(Umax )よりも大きな臨界地震振幅値(Ucr>Umax )を有するセグメントについては、「恒常的に破損なし」と、予め推定しておくようにしてもよい。このように十分な強度(SIcrまたはUcr)を備えた配管については「恒常的に破損なし」と予め決定しておくことにより、少なくともその分は地震動値(SI)と臨界地震動値(SIcr)との比較の手間(それに要する時間およびデータ処理)を省略することが可能となり、延いては地震被害推定方法のさらなる簡易化およびそれに要するデータ処理量のさらなる低減化を達成することができるので望ましい。
【0103】
また、地盤の流動化に起因した破損についても同様に、例えば5[m]以上のように、配管網が設けられている所定地域内の護岸付近で発生する可能性のある最大の流動量(δmax )よりも大きな流動臨界変形量(δcr>δmax )を有するセグメントについては、そのような最大級の流動化が生じても破損しないということなのであるから、「恒常的に破損なし」と予め推定しておくようにしてもよい。なお、上記のSImax =200[kine]やδmax =5[m]などの値については、一例として掲げたものであって、実際には、このような数値のみに限定されるものではないことは言うまでもない。また、このように「恒常的に破損なし」と推定されたセグメントについては、地震動値や流動量に基づいた地震被害推定を行う必要が無い旨を示す情報(例えばフラグ)を、そのセグメントに関する一纏まりのデータ{n,(x,y),T,L,Dcr,δcr,SIcr}の中に付記して臨界値記憶部100に記憶させておくようにすることが望ましい。
【0104】
ここで、特に低圧導管の被害推定についてさらに詳細に説明する。低圧導管の被害推定を良好な精度で行うために、低圧導管のうち特にねじ継手鋼管について、地盤条件等に着目して、兵庫県南部地震での被害分析を行って被害率推定式を作成し、その分析結果を用いた。すなわち、被害率の特徴を簡潔かつ的確に表現するために、被害率推定式の形式を、R=C1・C2・φ(SI)とした。ここに、Rは被害率推定値(件/km),C1 は地盤条件区分に応じて、またC2は液状化の程度に応じて、それぞれ被害率を増減させる係数である。φ(SI)は基準となる地盤条件での被害率であり、導管総延長の多い(殆どの低圧導管が密集している)沖積平野における被害率として定義してある。またSIは地震動のSI値である。なお液状化が発生するとSI値に対する被害の関係が不明瞭となる傾向があるため、液状化の影響は別途C2にて取り込むようにすることが望ましい。被害率φ(SI)は図12に示したような式によって算出される。図12に示した式では、SI値に換算した低圧導管の耐力は対数正規分布し、被害率はSI値が耐力を上回る確率(被害確率)に被害率の取り得る最大値を乗じることで求まることを仮定している。ここに、R0は沖積平野で見込まれる被害率の最大値、λ,ξはそれぞれ対数正規分布の平均,分散である。この式により、被害率はSI値の増加とともに増加し、SI値が大きくなるとR0に漸近するという性質を持つことが分かる。R0,λ,ξは、「沖積平野」における被害の分析結果にSI値が60[kine]以下のデータとして調査された地震のうち沖積平野に該当するデータを加えて回帰分析を行うことによって得たものである。このようにして作成した推定式による被害率の推定値と、実際の地震の発生で被災した際の実際の被害率とを比較した結果、推定結果は実被害率と良好な一致を示すことが確認された。そこで、本実施の形態に係る地震防災システムでは、このような実際の地震発生時の被害についての統計的分析等から得られた計算式等の情報を用いて、低圧導管についてさらに良好な精度で被害推定を行うことができる。
【0105】
表示装置300は、端末装置10における表示出力を行うためのもので、データ処理回路301と表示デバイス302とを、その主要部として備えている。この表示装置300では、地震動または地盤の流動化に因って配管に破損が生じると推定されたセグメントの位置のデータが破損発生推定部200から送られて来ると、データ処理回路301が、その送られて来たセグメントの位置のデータ(x,y)と配管網が設けられた地域全体の地図のデータとに基づいて、表示デバイス302によって表示される地図中に破損が発生していることが推定される位置を例えばピンポイントで表示するための表示データを作成する。そして表示デバイス302が、例えばカラー表示が可能な液晶表示デバイスまたはCRTなどを用いて、その表示画面に、所定地域全体の地図の画像と、その中にピンポイントに示される破損発生位置の画像とを、合成して表示する。
【0106】
例えば地図全体の地の色を緑色とし、配管網を例えば圧力等級別などに分類して、その分類ごとに黄色や青のような異なった色で示すようにしておく。そして、そのような地図中に、地震動に対応して配管の破損が発生すると推定される位置を、例えば赤色のような目立つ警戒色で表示する。さらには、その配管破損被害の発生が推定される位置の警戒色のピンポイントの表示を点滅させるようにしてもよい。地震動に因る破損発生位置と、地盤の流動化に因る破損発生位置とを、異なった色や点滅状態で表示するなどして、破損の発生位置と共に、その破損の発生要因の種類別を一目瞭然で判別できるようにしてもよい。また、この表示デバイス302では、自動的または遠隔操作によって開閉動作が行われる各ガバナ31の遮断状態(開閉状態)を、例えば開状態であるガバナ31は青色で表示し、閉状態であるガバナ31は赤色で表示する、というように、一目瞭然で判別できるようにすることが望ましい。
【0107】
なお、このような配管の破損発生位置や発生要因の種類別の色分けや地図の図形形状等の形式は、実際の地震が発生した際に収集された情報に基づいて表示装置300で図5や図6に示したような地図的な画像表示を行う際にも、同じ形式で表示することが望ましい。但し、実際の地震発生時の地震防災モードでの表示であるか、訓練時のシミュレーションモードによる表示であるかを、明確に判別可能とするためには、例えば、そのモードごとで、表示する画面の背景色を変更するように設定することなどが望ましい。例えば、訓練時のシミュレーションモードの場合には表示する画面の背景色を黄色とし、実際の地震発生時の地震防災モードの場合には表示する画面の背景色を赤色とすることなどが有効である。あるいは一つの画面内に、実際に現地の地震時遠隔監視装置30から情報収集されたデータに基づいた情報が表示されるブロックと、シミュレーションによって生成された情報が表示されるブロックとが、混在している場合などには、そのブロックのモードごとに異なった色で表示するようにしてもよい。
【0108】
サーバ20では、このようにして、入力された地震動の情報に対応して、配管網における被害発生箇所(地震に因る破損等の被害が発生する箇所)を推定する。そしてその推定結果の情報を、端末装置10の表示装置300によって表示出力する。また、図示しない印刷装置などによって印刷出力するようにしてもよい。また、そのようにして生成された推定結果のデータは、記憶装置40に記憶される。
【0109】
なお、所定の地震振幅値以上の大きさの地震動を受けると自動的にガバナ31を遮断状態にする、いわゆる自動感震遮断機能を備えているので、そのようなガバナ31の自動感震遮断機能についても境界条件や解析条件等の要素の一つとして含めて被害推定や圧力・漏洩解析を行う。
【0110】
この場合、理想論的には所定値を超えた大きさの一つの地震動に対しては、同一管区の配管網中における全てのガバナ31で一斉に弁遮断が行われることになる筈である。しかし、実際には、各ガバナ31が設置されている場所ごとで、共振振動数や揺れ易さといった地震動に対する地盤的な条件が異なっていることが多いので、同じ一つの地震動に対して、ある地点のガバナ31では感震遮断が実行され、他の地点のガバナ31では遮断が行われない、といった場合もあり得る。そこで、このような自動感震遮断機能を備えたガバナ31を有する配管網の場合には、例えば予め各地点における地震動に対する揺れ易さを評価し、それを0〜1までの重み付け係数(これを例えばwとする)として数値化しておき、地震動の大きさの情報が例えばSI値で入力されるように設定されている場合には、そのSI値に各ガバナ31の重み付け係数wを乗算するなどして、当該ガバナ31で遮断が行われる遮断臨界SI値(これを例えばSIshとする)と比較することで、一つの地震動に対して遮断が行われるガバナ31と遮断が行われないガバナ31とを推定することなどが可能である。
【0111】
例えば、入力された地震動の情報の一要素として含まれている地震の大きさを示すSI値がSという値であり、遮断の有無の推定の対象となるガバナ31の揺れ易さを評価してなる重み付け係数がwであり、そのガバナ31の遮断臨界SI値がSIshであるとすると、当該ガバナ31の遮断の有無は、Sとwとを乗算してなる値が、SIshの値未満である場合には(S・w<SIsh)、当該ガバナ31は遮断を行わないものと推定され、SIshの値以上である場合には(S・w≧SIsh)、当該ガバナ31は遮断を行うものと推定される。
【0112】
あるいは、そのような自動的な推定には依らずに、ユーザが直接的に配管網中のガバナ31のうちから任意のガバナ31を選択して、そのガバナ31のみが地震動に対応した遮断を行わないような状態をサーバ20および解析装置50が仮想的に作り出すようにしてもよいことは言うまでもない。
【0113】
解析装置50は、サーバ20によって推定された被害発生箇所の情報に基づいて、配管網におけるガスの圧力状態(位置的な圧力分布およびその各位置での圧力値の時間的推移)やガス漏洩状態(ガス漏洩の発生位置およびその各位置ごとのガス漏洩状態の時間的推移)の解析を行うものである。従って、この解析装置50は、例えば一般的な直管内での流体の挙動についての数値風洞的な解析を行う解析装置等とは全く異なったものであることは言うまでもない。
【0114】
この解析装置50で行われる、配管網におけるガスの圧力状態・漏洩状態に関する解析について、さらに詳細に説明する。
【0115】
この解析装置50では、基本的に、配管網全体を上記の図5,図6に基づいて説明したような一単位のブロックに分けて、そのブロックごとで配管損傷に起因したガス漏洩の時間的推移や圧力状態の推移等の解析を行う。そしてそのブロックごとの解析結果を纏めて、配管網全体の解析結果のデータを出力する。
【0116】
図9は、低圧導管および中圧導管ならびにガバナ31の組み合わせおよび配管形状を最も簡略化した1ブロック内の配管構成の基本形を想定し、その配管構成に損傷が発生した場合における、ガスの圧力状態・漏洩状態の時間的推移等の解析方法の一例についてを説明するための図である。ここでは、低圧導管42の断面積は一様にAL、一連の低圧導管42の総延長はL、通常時のガスの設定圧力はPL−nol 、外気圧はPG とし、地震動に起因して配管の破損箇所が低圧導管42における一箇所に発生しており、その破損箇所からのガス漏洩の単位時間当たりの流量はQであるものとする。また、一つのブロック内の一連の低圧導管42は、中圧導管41にガバナ31を介して接続されているがその部分以外は両端がブロックバルブ47(図9では図示省略)によって閉じられた管状の閉鎖空間と見做すことができる。
【0117】
ガバナ31が、地震動に対応して自動的に、あるいは遠隔操作によって手動的に、遮断状態になった場合には、この1ブロック内の配管構成は図10(A)に示したような管状の閉鎖空間と考えることができる。従って、このような場合には、配管破損が生じると、それ以降、流量Qのガス漏洩が続き、低圧導管42内のガスの圧力PLは通常時の設定圧力PL−nol から外気圧PG にまで低下して行く。そしてこのガス漏洩は、低圧導管42内のガスの圧力PLが外気圧PG と均衡すると(PL=PG になると)、停止する。従って、この場合の低圧導管42内のガスの圧力Pの時系列的推移(時間的変化)は、図10(B)に一例を示したように、時間Δtに亘って、圧力PLが設定圧力PL−nol から外気圧PG までΔPに亘って徐々に低下して行くという様相となる。
【0118】
あるいは、図11(A)に一例を示したように、ガバナ31が未遮断状態にある場合には、ガス漏洩に起因した圧力低下に対応して、ガバナ31が、低圧導管42内の圧力PLを正常な状態に戻すために中圧導管41から低圧導管42へのガスの供給流量を増加させるように機能する。このため、低圧導管42内の圧力PLよりも高い圧力PMに設定されている中圧導管41から低圧導管42へとガスが供給されることによって、低圧導管42内のガスの圧力PLは配管損傷のない通常時の設定圧力PL−nol よりも高い圧力値となる。また、この場合のガス漏洩の流量Qは、ガバナ31が遮断状態になっている場合よりも大きな流量となる。しかも、この状態はガバナ31が遮断されない限りは継続することとなる。従って、この場合の低圧導管42内のガスの圧力PLの時系列的推移は、図11(B)に一例を示したように、配管破損が生じると、その直後にはガス漏洩に起因したガスの流失に因って低圧導管42内の圧力PLは通常時の圧力PL−nolから若干低下するが、その圧力低下に対応してガバナ31が圧力PMでガスを低圧導管42へと大量に供給し続けるので、結局、低圧導管42内の圧力PLは通常時の圧力PL−nolよりも高い状態となる。その状態はガバナ31を遮断状態にするまで継続されることとなる。そして例えば遠隔操作によってガバナ31が遮断状態に切り替えられると、圧力状態は図10(B)に示したような推移を辿って、低圧導管42内のガスの圧力PLが外気圧PG と均衡するに至り、ガス漏洩が停止する。
【0119】
一つのブロック内での圧力状態およびガス漏洩状態は、概ね上記のような2種類の時系列的推移のうちのいずれかまたはそれらを組み合わせた様相となる。
【0120】
なお、流量Qや圧力Pの時間的変化の具体的なパターンについては、例えば図10(B)に示したような指数関数的なものとなることなどが想定されるが、さらに詳細には、実際の配管網における時間的変化パターンをガス漏洩実験等により予め確認して関数化しておき、その関数を用いて、設定圧力PL−nol 、外気圧PG 、流量Q等の具体的な各数値を代入することなどによって解析することができる。また、ガス漏洩が継続する時間Δtは、圧力Pが設定圧力PL−nol から外気圧PG に低下するまでの時間を境界条件として、上記の流量Qや圧力Pの時間的変化のパターンを表した関数に基づいて算出することができる。また、漏洩したガスの総量は、流量Qを時間Δtに亘って積分することによって算出することができる。
【0121】
なお、配管損傷箇所が複数である場合には、最も簡易化した解析手法としては、その複数箇所のガス漏洩の流量Qや圧力変化ΔPの線形的な総和を演算することで、一つのブロック内での圧力状態およびガス漏洩状態の解析結果を得るようにすることなどが可能である。
【0122】
解析装置50は、このようにして個々に解析されたブロックごとでの圧力状態およびガス漏洩状態の解析結果を纏めることによって、配管網全体の圧力状態およびガス漏洩状態の時系列的推移の解析結果を得ることができる。そしてその解析結果は、例えば端末装置10の表示デバイス302の画面に、図5,図6で示したような、実際の地震発生時に表示されるマップ画像とほぼ同様の形式の画像として配管損傷箇所を表示すると共に、そのマップ画像の中からユーザが選択した箇所についての圧力状態およびガス漏洩状態の時系列的推移の解析結果を図10(B)、図11(B)に示したようなグラフで表示して、配管網の仮想的な地震に因って生じることが推定される被害状態のシミュレーションを実行することができる。また、その解析結果のデータは記憶装置40に蓄積させることができる。
【0123】
記憶装置40は、上記のようにして解析装置50で行われた解析結果のデータを、解析条件として入力された地震動の情報と対応付けて記憶する。このようにすることで、ユーザは、この記憶装置40に記憶され蓄積されているデータのうちから、例えば震源位置(x,y)および震度(SI)のような地震動の情報を訓練シミュレーション等を行う際の検索キーワードとして用いて、所望の震源位置および震度を想定した地震動に対応した圧力状態や漏洩状態の解析結果の情報を端末装置10によって読み出すことができる。
【0124】
またさらには、地震動に対応した圧力状態や漏洩状態の解析結果の情報をガバナ31の遠隔操作の情報と共に関連付けて、地震防災訓練シミュレーションの履歴あるいは過去ログ的なデータとして記憶装置40に蓄積してくようにすることで、後にそれを読み出して、地震防災訓練のケーススタディを行うための資料等となる情報として利用することができるようにすることも望ましい。
【0125】
あるいは、本実施の形態に係る配管網地震被害状態シミュレーションシステムを繰り返し利用して行くうちに、記憶装置40に蓄積されたデータは、多様な解析条件に対応した多様な状況についての圧力状態や漏洩状態の解析結果を有するものとなって行くので、そのようなデータは、単に地震防災の訓練用のシミュレーションに利用するだけでなく、例えば実際に震災が発生して、被災地域における配管網(における中圧導管41や低圧導管42)やガバナ31等の被害状況やガス遮断状況についての情報収集が困難あるいは不可能となった場合などに、そのとき実際に発生した地震動のデータが入手できれば、被災地域における被害状況を高い確度で推定するためのシミュレーションを行うために利用することなども可能となる。または、逆に、主記憶装置21に記憶されている実際の地震発生時に収集された各種のデータは、訓練時に読み出して利用するようにしてもよい。このようにすることにより、現実に地震が発生した際に収集された情報を用いた訓練だけに、まさに極めてリアルな訓練を実現することが可能である。このように、本実施の形態に係るシステムでは、主記憶装置21に記憶されている地震発生時に収集された情報(データ)を、訓練時に読み出して使用することが可能であり、また記憶装置40に記憶されている訓練時に生成(解析または推定)された情報(データ)を、実際の地震発生時に読み出して使用することが可能である。このようなことは、サーバ20を中心としたこのシステムが地震発生時の防災システムとしての機能と、訓練時のシミュレーションシステムとしての機能とを、一つのシステムで併せ持っているからこそ可能となるものである。しかも、本実施の形態に係るシステムでは、それをシステム全体を繁雑化することなしに可能としている。
【0126】
端末装置10は、サーバ20によって行われる被害推定および解析装置50における解析のための境界条件や解析条件等として用いられる地震動の情報の入力を行うという地震動情報入力手段としての機能と、サーバ20による被害発生箇所の推定結果とは別にユーザ等によって仮想された被害発生箇所の情報を解析装置50に直接に入力するための仮想被害発生箇所情報入力手段としての機能と、ユーザ等によって仮想されたガバナ31に対する仮想的な遠隔操作の入力を行うための仮想遠隔操作入力手段としての機能と、サーバ20による推定結果の情報を出力する被害推定結果情報出力手段としての機能と、解析装置50による解析結果の情報、あるいは記憶装置40または主記憶装置21から読み出された情報、もしくはサーバ20によって各地震時遠隔監視装置30から収集された各種情報を読み出して、配管網の地図的表示等と共に表示装置300の画面に表示出力する情報出力手段としての機能と、ユーザが所望する拠点の地震時遠隔監視装置30に対してサーバ20を介してアクセスし遠隔遮断ユニット36を遠隔操作してガバナ31の強制遮断を行うことや、1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行わせるための命令電文やガバナ31を各個別に遠隔操作して遮断を遠隔制御するための命令電文をサーバ20に入力する地震時(防災用)遠隔操作入力手段としての機能とを、兼ね備えている。
【0127】
この端末装置10では、上記の各種情報の入力は、例えばテン・キーやマウスのような入力装置400によって行われ、上記の各種情報の出力は、例えばCRTまたは液晶表示デバイスのような表示デバイス302とデータ処理回路301とを備えた表示装置300などによって行われる。あるいは、各種情報の出力はプリンタ装置(図示省略)のような印刷出力装置によって行われるようにしてもよい。
【0128】
ここで、入力装置400によって入力された情報は、端末装置10の本体であるパソコン本体のような情報処理装置によって適宜にデータ処理されるなどしてサーバ20あるいは解析装置50へと伝送されるように設定されていることは言うまでもない。
【0129】
また、サーバ20あるいは解析装置50から出力された情報は、パソコン本体のような情報処理装置によって適宜にデータ処理されるなどした後に表示装置300に送られて、その表示装置300におけるCRTのような表示デバイス302の画面に表示される。あるいは、印刷装置に送られて配管網中でのガス漏洩発生箇所や圧力分布を示す図表等として印刷出力される。
【0130】
この端末装置10は、単数で使用するようにしてもよいが、複数台を用意しておき、そのうちの1つは解析条件を入力して訓練シミュレーションの進行を制御するためのものとして用いるものとし、他のものは被訓練者がシミュレーションによる訓練を受けるために用いるようにしてもよい。
【0131】
この端末装置10では、遮断動作を実際に遠隔操作するための電文と、遮断動作を仮想的に遠隔操作するための電文とで、異なった電文を用いるように設定されている。そして主情報処理装置であるサーバ20は、端末装置10から、遮断動作を実際に遠隔操作するための電文を受けた場合には、ガバナ31を実際に遮断状態にする制御を行うが、仮想的に遠隔操作するための電文を受けた場合には、ガバナ31を実際に遮断状態にする制御は行わないように設定されている。このようにすることにより、例えば訓練時の仮想的な遠隔遮断の命令電文が誤って通信手段392等を介してサーバに伝送されたりなどした場合でも、ガバナ31でいわゆる誤遮断が生じることや、いわゆるハッカーの侵入に起因した誤動作やシステム妨害などを、簡易な手法で確実に防止することができる。
【0132】
なお、本実施の形態では、圧力・漏洩状態の解析対象の流体として可燃性のガスを想定した場合について説明したが、これのみには限定されない。この他にも、例えば石油や上・下水道水のような液体状の流体を輸送するための配管網や、所定の管区地域内にほぼ平面的に敷設された配管網のみならず所定の建築物内に立体的に配設された配管網などにも、本実施の形態に係る地震防災システムまたは配管網における遮断弁装置の制御方法もしくは地震防災・訓練方法を適用可能であることは言うまでもない。
【0133】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし7のいずれかに記載の地震防災システムまたは請求項14ないし20のいずれかに記載の配管網における遮断弁装置の制御方法によれば、管理対象の全区域内の配管網を複数個のブロックに分けて、そのブロックごとで、1ブロック内の全ての遮断弁装置を一斉に遮断状態にする制御を行うことによって、地震発生時に例えば1ブロック内に配管の破損等が発生してガスのような輸送対象である流体の漏洩が生じた際に、当該ブロックへのガスのような流体の供給を確実に遮断することができるようにしたので、地震発生時の防災のために遮断が必要なガバナまたは遮断弁装置を確実に遮断することが可能となるという効果を奏する。
【0134】
また、特に請求項3ないし7のいずれかに記載の地震防災システムまたは請求項16ないし20のいずれかに記載の配管網における遮断弁装置の制御方法によれば、一般に電話回線のような通信手段などでは地震発生時には通信異常等が発生する虞があるが、そのような異常が発生した場合であっても、不必要なガバナや遮断弁装置のいわゆる誤遮断を行うことなく、防災に必要な遮断のみを確実に実行することができるという効果を奏する。
【0135】
また、請求項8記載ないし13のいずれかに記載の地震防災システムまたは請求項21記載ないし25のいずれかに記載の地震防災・訓練方法によれば、実際の地震が発生した際に実行される機能である地震発生時情報収集機能および地震発生時防災機能と、訓練時に実行される機能である訓練時仮想情報生成機能および訓練時仮想防災機能とを、一つの主情報処理装置のハードウェアで兼備するようにしたので、システムの全体的な構成を繁雑なものとすることなく、訓練時のシミュレーションをリアルなものとすることができるという効果を奏する。
【0136】
また、特に請求項9記載の地震防災システムまたは請求項21記載の地震防災・訓練方法によれば、地震発生時には、訓練時にシミュレーションで生成された情報を読み出して使用可能であり、訓練時には、震発生時に収集された情報を読み出して使用可能であるようにしたので、訓練時には実際の地震で収集された情報に基づいた極めてリアルなシミュレーションを実現することが可能となり、また地震発生時には、例えば一部の地域で実際の被災状況の情報が収集できなくなっても、その部分の情報については、訓練時にシミュレーションで生成された情報を用いて補うことが可能となる。しかも、訓練時に行ったシミュレーション結果のデータの蓄積と、実際の地震発生時に収集したデータの蓄積とが、互いに相乗効果を与え合って、地震発生時の防災モードおよび訓練時の訓練モードの両方のモードについて相乗的に情報量が増大するので、その両方のモードについて、このシステムの利用を継続して行くにつれて、さらに精細で確実な情報を利用することができるようになって行くという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る地震防災システムの概要構成を表した図である。
【図2】サーバから地震時遠隔監視装置へと送出される制御信号について模式的に表した図である。
【図3】端末装置からサーバへと送出される1ブロックに対しての一斉遮断を行うための一纏まりの命令電文について模式的に表した図である。
【図4】端末装置からサーバへと送出される1ブロックに対しての一斉遮断を行うための命令電文について模式的に表した図である。
【図5】1ブロック内における配管構成およびその地理的な画像表示の一例を表した図である。
【図6】1ブロック内における配管等の被害発生およびガバナの未遮断状態に起因したガス漏洩状態についての画像表示の一例を簡易化して表した図(B)およびその後に遠隔遮断を行って、当該1ブロック内の全てのガバナを一斉に遮断状態にした画像表示の一例を簡易化して表した図(A)である。
【図7】サーバ内の機能的な概要構成を表した図である。
【図8】臨界変形量(Dcr)と臨界地震振幅値(Ucr)との対応関係を示すグラフである。
【図9】低圧導管および中圧導管ならびにガバナの組み合わせおよび配管形状を最も簡略化した1ブロック内の配管構成の基本形を想定し、その配管構成に損傷が発生した場合における、ガスの圧力状態・漏洩状態の時間的推移等の解析方法の一例についてを説明するための図である。
【図10】一単位のブロック内における配管等の被害が発生し、かつガバナが遮断状態になった場合のガス漏洩状態の一例を模式的に表した図(A)およびその場合の圧力・漏洩状態の時系列的推移を表した図(B)である。
【図11】一単位のブロック内における配管等の被害発生およびガバナの未遮断状態に起因したガス漏洩状態の一例を模式的に表した図(A)およびその場合の圧力・漏洩状態の時系列的推移を表した図(B)である。
【図12】低圧導管の被害推定に用いられる計算式の一例を表したものである。
【符号の説明】
10…端末装置、20…サーバ、21…主記憶装置、30…地震時遠隔監視装置、40…記憶装置、50…解析装置、300…表示装置、400…入力装置
Claims (25)
- 所定種類の流体を輸送する配管網中に設置され前記流体の遮断を行う機能を備えた遮断弁装置と、
前記遮断弁装置とは離れた位置に設置されて前記遮断弁装置の動作を遠隔操作によって制御する遮断弁遠隔制御装置であって、前記配管網を複数個のブロックに分けてそのブロックごとに1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御を行う機能を備えた遮断弁遠隔制御装置と
を備えたことを特徴とする地震防災システム。 - 前記各ブロックは、1ブロック内の全ての遮断弁装置が遮断状態になると当該1ブロックとその外部との間での前記流体の出入が完全に遮断されるように設定されている
ことを特徴とする請求項1記載の地震防災システム。 - 前記1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行わせるための命令電文を前記遮断弁遠隔制御装置に対して入力する端末装置を備えており、
前記端末装置は、前記命令電文として、前記遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行わせるための命令の電文と当該遮断弁装置が設置されているブロックの識別情報の電文とを組み合わせてなる電文を、前記1ブロック内の全ての遮断弁装置のそれぞれに対して1対1に対応するように生成し、前記全ての遮断弁装置に対する電文を一纏まりにして前記遮断弁遠隔制御装置へと送出し、
前記遮断弁遠隔制御装置は、前記端末装置から一纏まりの電文が送られて来ると、当該一纏まりの複数個の電文中に含まれているブロックの識別情報の電文のうちに他とは異なった識別情報が一つでも混在している場合には、当該ブロックにおける遮断弁装置を遮断状態に制御する動作は行わない
ことを特徴とする請求項1または2記載の地震防災システム。 - 前記端末装置は、前記命令電文として、同一内容の電文を所定の複数回に亘って繰り返し送出し、
前記遮断弁遠隔制御装置は、前記端末装置から前記同一内容の電文が前記所定の複数回に亘って繰り返し送られて来た場合には、前記遮断弁装置を遮断状態にする制御を行うが、前記端末装置から前記同一内容の電文が前記所定の複数回とは異なった回数送られて来た場合には、前記遮断弁装置を遮断状態にする制御は行わない
ことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか一つの項に記載の地震防災システム。 - 前記遮断弁遠隔制御装置は、前記遮断弁装置を制御するに際して、当該遮断弁装置に対して同一内容の制御信号を所定の複数回に亘って繰り返し送出し、
前記遮断弁装置は、前記遮断弁遠隔制御装置から前記同一内容の制御信号が前記所定の複数回に亘って繰り返し送られて来た場合には、前記遮断状態にする制御を行うが、前記遮断弁遠隔制御装置から前記同一内容の制御信号が前記所定の複数回とは異なった回数送られて来た場合には、前記遮断状態にする制御は行わない
ことを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか一つの項に記載の地震防災システム。 - 前記命令電文または前記制御信号の繰り返しの周期が所定範囲内である場合にのみ、前記制御または前記動作を行う
ことを特徴とする請求項4または5記載の地震防災システム。 - 前記遮断弁装置は、地震動を計測する地震動計測装置が付設されて、所定の大きさ以上の地震動が前記地震動計測装置で計測された場合にはそれに対応して自動的に前記遮断状態にする動作を行う自動感震遮断の機能をさらに備えており、
前記遮断弁装置または前記遮断弁遠隔制御装置もしくは前記端末装置は、地震の発生を検知する地震発生検知装置をさらに備えて、所定の規模以上の地震が検知された場合には、地震が発生したものと自動的に判断し、前記命令電文または前記制御信号に対応して前記1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御を行うことが可能な状態を所定時間に亘って継続するが、所定の規模未満の地震の発生が検知された場合または地震が全く検知されていない場合には、前記命令電文または前記制御信号の有無に関わらず、前記1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御は行わない
ことを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか一つの項に記載の地震防災システム。 - 所定種類の流体を輸送する配管網中に設置され、前記流体の遮断を行う機能を備えた遮断弁装置であって、外部から入力される制御信号に対応して前記遮断を行う動作が遠隔操作される遮断弁装置と、
前記遮断弁装置に付設されて、前記遮断弁装置の遮断状態に関する情報、前記流体の圧力に関する情報、前記流体の流量に関する情報、前記遮断弁装置の設置された位置にて計測される地震動の情報のうち、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する情報を検出して出力する地震時遠隔監視装置と、
前記地震時遠隔監視装置から離れた位置に設置されて、実際の地震発生時に前記地震時遠隔監視装置から送られて来た情報に基づいて、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する前記配管網中における地理的な分布の情報を収集および処理して出力または記憶する地震発生時情報収集機能、および実際の地震発生時に前記遮断弁装置に対して遮断動作を遠隔操作する地震発生時防災機能と、訓練時に入力される仮想的な地震動データに基づいて、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する前記配管網中における地理的な分布の情報を仮想的に生成して出力または記憶する訓練時仮想情報生成機能、および訓練時に前記遮断弁装置に対して前記遮断動作を仮想的に遠隔操作する訓練時仮想防災機能とを、一つのハードウェアで兼備する主情報処理装置と、
前記遮断動作を実際に遠隔操作するための電文または前記仮想的な地震動データもしくは前記遮断動作を仮想的に遠隔操作するための電文を前記主情報処理装置に対して入力する機能と、前記主情報処理装置から出力された情報を表示出力または印刷出力もしくは記憶する機能とを備えた端末装置と
を備えたことを特徴とする地震防災システム。 - 前記地震発生時情報収集機能によって収集された情報を記憶する地震発生時情報記憶装置と、
前記訓練時仮想情報生成機能によって生成された情報を記憶する訓練時情報記憶装置とを備えており、
前記主情報処理装置または前記端末装置は、実際の地震発生時には前記訓練時情報記憶装置に記憶されている情報を読み出して使用することが可能であり、訓練時には前記地震発生時情報記憶装置に記憶されている情報を読み出して使用することが可能であるように設定されている
ことを特徴とする請求項8記載の地震防災システム。 - 前記端末装置は、前記遮断動作を実際に遠隔操作するための電文と、前記遮断動作を仮想的に遠隔操作するための電文とで、異なった電文を用いるように設定されており、
前記主情報処理装置は、前記遮断動作を実際に遠隔操作するための電文を受けた場合には、前記遮断弁装置を遮断状態にする制御を行うが、前記仮想的に遠隔操作するための電文を受けた場合には、前記遮断弁装置を遮断状態にする制御を行わないように設定されている
ことを特徴とする請求項8または9記載の地震防災システム。 - 前記端末装置は、前記地震発生時情報収集機能を実行している際に収集された情報の表示出力または印刷出力と、訓練時仮想情報生成機能を実行している際に生成された情報の表示出力または印刷出力とを、視覚的に識別可能な互いに異なった態様で出力するように設定されている
ことを特徴とする請求項8ないし10のうちいずれか一つの項に記載の地震防災システム。 - 前記遮断弁装置は、地震動を計測する地震動計測装置が付設されており、所定の大きさ以上の地震動が前記地震動計測装置で計測された場合には自動的に前記遮断を行う自動感震遮断の機能を備えており、
前記主情報処理装置は、訓練時に入力される仮想的な地震動データに基づいて、前記遮断弁装置の仮想的な自動感震遮断状態の情報を生成する機能を備えており、
前記端末装置は、前記主情報処理装置によって生成された仮想的な自動感震遮断状態の情報に基づいて、前記配管網における前記遮断弁装置の仮想的な自動感震遮断状態の地理的な分布に関する情報を表示出力または印刷出力もしくは記憶する機能を備えている
ことを特徴とする請求項8ないし11のうちいずれか一つの項に記載の地震防災システム。 - 前記流体が可燃性のガスであり、
前記配管網が、前記ガスを輸送または供給対象としたガス配管網である
ことを特徴とする、ガス配管網用の、請求項1ないし12のうちいずれか一つの項に記載の地震防災システム。 - 所定種類の流体を輸送する配管網中に設置された遮断弁装置によって前記流体の遮断を行うプロセスと、
前記遮断弁装置の動作を遠隔制御する遮断弁遠隔制御プロセスであって、前記配管網を複数個のブロックに分けて、ブロックごとに1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御を行う遮断弁遠隔制御プロセスと
を含んだことを特徴とする、配管網における遮断弁装置の制御方法。 - 前記各ブロックは、1ブロック内の全ての遮断弁装置が遮断状態になると当該1ブロックとその外部との間での前記流体の出入が完全に遮断されるように設定されている
ことを特徴とする請求項14記載の配管網における遮断弁装置の制御方法。 - 前記遮断弁遠隔制御プロセスが、前記遮断弁装置から離れて設置された遮断弁遠隔制御装置によって行われるように設定されており、
前記1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行わせるための命令電文を前記遮断弁遠隔制御装置に入力する命令電文入力プロセスをさらに有しており、
前記命令電文入力プロセスでは、前記命令電文として、前記遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行わせるための命令の電文と当該遮断弁装置が設置されているブロックの識別情報の電文とを組み合わせてなる電文を、前記1ブロック内の全ての遮断弁装置のそれぞれに対して1対1に対応するように生成して、前記全ての遮断弁装置に対する電文を一纏まりにして前記遮断弁遠隔制御装置へと送出し、
前記遮断弁遠隔制御プロセスでは、一纏まりの電文が送られて来ると、当該一纏まりの複数個の電文中に含まれているブロックの識別情報の電文のうちに他とは異なった識別情報が一つでも混在している場合には、当該ブロックにおける遮断弁装置を遮断状態に制御する動作は行わない
ことを特徴とする請求項14または15記載の配管網における遮断弁装置の制御方法。 - 前記命令電文入力プロセスでは、前記命令電文として、同一内容の電文を所定の複数回に亘って繰り返し送出し、
前記遮断弁遠隔制御プロセスでは、同一内容の電文が前記所定の複数回に亘って繰り返し送られて来た場合には、前記遮断弁装置を遮断状態に制御する動作を行うが、同一内容の電文が前記所定の複数回とは異なった回数送られて来た場合には、前記遮断弁装置を遮断状態に制御する動作は行わない
ことを特徴とする請求項14ないし16のうちいずれか一つの項に記載の配管網における遮断弁装置の制御方法。 - 前記遮断弁遠隔制御プロセスでは、前記遮断弁装置の動作を制御するに際して、当該遮断弁装置に対して同一内容の制御信号を所定の複数回に亘って繰り返し送出し、
前記遮断弁装置で前記流体の導通および遮断を行うプロセスでは、前記同一内容の制御信号が前記所定の複数回に亘って繰り返し送られて来た場合には、前記遮断状態にする動作を行うが、前記遮断弁遠隔制御装置から前記同一内容の制御信号が前記所定の複数回とは異なった回数送られて来た場合には、前記遮断状態にする動作は行わない
ことを特徴とする請求項14ないし17のうちいずれか一つの項に記載の配管網における遮断弁装置の制御方法。 - 前記命令電文または前記制御信号の繰り返しの周期が所定範囲内である場合にのみ、前記制御または前記動作を行う
ことを特徴とする請求項17または18記載の配管網における遮断弁装置の制御方法。 - 前記遮断弁装置で前記遮断を行うプロセスでは、所定の大きさ以上の地震動が計測された場合にはそれに対応して自動的に前記遮断を行う自動感震遮断のプロセスをさらに備えており、
前記遮断弁遠隔制御プロセスでは、所定の規模以上の地震が検知された場合には、地震が発生したものと自動的に判断し、前記命令電文または前記制御信号に対応して前記1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御を行うことが可能な状態を所定時間に亘って継続するが、所定の規模未満の地震の発生が検知された場合または地震が全く検知されていない場合には、前記命令電文または前記制御信号の有無に関わらず、前記1ブロック内の全ての遮断弁装置を遮断状態にする制御は行わない
ことを特徴とする請求項14ないし19のうちいずれか一つの項に記載の配管網における遮断弁装置の制御方法。 - 所定種類の流体を輸送する配管網中に設置され前記流体の遮断を行う機能を備えた遮断弁装置に対して、外部から入力される制御信号に対応して前記遮断の動作を遠隔操作する遠隔操作プロセスと、
前記遮断弁装置の遮断状態に関する情報、前記流体の圧力に関する情報、前記流体の流量に関する情報、前記遮断弁装置の設置された位置にて計測される地震動の情報のうち、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する情報を得る遠隔監視プロセスと、
実際の地震発生時に前記遠隔監視プロセスによって得られた情報に基づいて、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する前記配管網中における地理的な分布の情報を収集および処理して出力または記憶する地震発生時情報収集プロセス、および実際の地震発生時に前記遮断弁装置に対して前記遮断の動作を遠隔操作する地震発生時防災プロセスと、
訓練時に入力される仮想的な地震動データに基づいて、少なくとも前記遮断弁装置の遮断状態に関する前記配管網中における地理的な分布の情報を仮想的に生成して出力または記憶する訓練時仮想情報生成プロセス、および訓練時に前記遮断弁装置の遮断状態を仮想的に遠隔操作する訓練時仮想防災プロセスと、
前記地震発生時情報収集プロセスによって収集された情報を記憶する地震発生時情報記憶プロセスと、
前記訓練時仮想防災プロセスによって生成された情報を記憶する訓練時情報記憶プロセスとを含んでおり、
前記地震発生時防災プロセスでは、前記訓練時情報記憶プロセスで記憶された情報を読み出して使用可能であり、前記訓練時仮想防災プロセスでは、前記地震発生時情報記憶プロセスで記憶された情報を読み出して使用可能である
ことを特徴とする地震防災・訓練方法。 - 前記遠隔操作プロセスは、前記遮断弁装置を実際に遠隔操作するための電文が外部から入力されると、それに基づいて前記遮断弁装置を遮断状態にする遠隔操作を行うプロセスを含んでおり、
前記訓練時仮想防災プロセスは、前記遮断弁装置を仮想的に遠隔操作するための電文が外部から入力されると、それに基づいて前記遮断弁装置の遮断状態を仮想的に遠隔操作する情報を生成するプロセスを含んでおり、
前記遮断弁装置を実際に遠隔操作するための電文と、前記遮断弁装置を仮想的に遠隔操作するための電文とで、異なった電文を用いる
ことを特徴とする請求項21記載の地震防災・訓練方法。 - 前記地震発生時情報収集プロセスによって収集された情報と、前記訓練時仮想情報生成プロセスによって生成された情報とを、視覚的に識別可能な互いに異なった態様で表示出力または印刷出力するプロセスを備えた
ことを特徴とする請求項21または22記載の地震防災・訓練方法。 - 地震動を計測するプロセスと、
所定の大きさ以上の地震動が計測された場合には自動的に前記遮断弁装置を遮断状態にする自動感震遮断を行うプロセスと、
訓練時に入力される仮想的な地震動データに基づいて、前記遮断弁装置の仮想的な自動感震遮断状態の情報を生成するプロセスと、
前記生成された仮想的な自動感震遮断状態の情報に基づいて、前記配管網における前記遮断弁装置の仮想的な自動感震遮断状態の地理的な分布に関する情報を表示出力または印刷出力もしくは記憶するプロセスと
を含んだことを特徴とする請求項21ないし23のうちいずれか一つの項に記載の地震防災・訓練方法。 - 前記流体が可燃性のガスであり、
前記配管網が、前記ガスを輸送または供給対象としたガス配管網である
ことを特徴とする請求項21ないし24のうちいずれか一つの項に記載の地震防災・訓練方法。
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CN102184671A (zh) * | 2011-04-19 | 2011-09-14 | 中国地震局工程力学研究所 | 燃气管道地震安全控制演示系统 |
KR20190064047A (ko) * | 2017-11-30 | 2019-06-10 | 한국가스공사 | 도시가스 계량설비의 자동 단속 운전 시스템 및 방법 |
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2003
- 2003-03-31 JP JP2003096388A patent/JP2004303001A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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