JP3858929B2 - 樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、樹脂100重量部、防虫剤、防ダニ剤、忌避剤、防菌・防黴剤、防汚剤、除草剤、植物成長調節剤、経皮治療剤、防錆剤、滑剤、抗ブロッキング剤、界面活性剤、帯電防止剤から選ばれた少なくとも1種以上の活性化合物0.01〜200重量部、20℃における蒸気圧が0.001mmHg以上である蒸散性可塑剤0.1〜100重量部およびブリード促進剤0.1〜100重量部からなり、かつ、該蒸散性可塑剤の20℃における蒸気圧(P1)と該活性化合物の20℃における蒸気圧(P2)とが、式: P1/P2≧2を満たす樹脂組成物および該樹脂組成物を成形して得られる成形体を提供するものである。
本発明の樹脂組成物は、活性化合物のブリード量、ブリード開始時期や速度が制御された特徴を有する成形体を提供することができるものである。
本発明は、蒸散性が低い活性化合物に対してより好適に用いることができる。さらに本発明によれば、密封条件において、活性化合物が樹脂組成物中に安定的に保持され、開放条件下での使用中には蒸散性可塑剤の蒸散に伴い活性化合物がブリードするという特異な放出挙動を実現することができ、活性化合物の利用率を向上させ、安定的に長期間優れた活性を得ることができる。また、活性化合物のブリードが始まるタイミングを調節することができる。
活性化合物として防虫・殺虫活性化合物を用いる場合には、防虫・殺虫活性化合物として、各種の殺虫活性化合物、昆虫成長制御活性化合物等が例示できる。また、防虫活性化合物の効果を高める役割をもつ化合物(共力剤)を併用してもよい。
忌避活性化合物とは、虫等を忌避する効果を有する化合物であり、N,N−ジエチル−m−トリアミド、カラン−3,4−ジオール等の忌避剤が例示できる。
防菌・防黴、および防汚活性化合物としては、N−フェニルベンゾイソチアゾロン−3のようなイソチアゾリン系化合物、4,6−ジメチル−2−(6−フェニルピリジン−2−イル)ピリミジンのようなピリジルピリミジン系化合物、オキソニック酸、バイナジン等の防菌・防黴剤や防汚剤が例示できる。
除草、植物成長調節、経皮治療、防錆、滑り性、抗ブロッキング性、界面活性、帯電防止等の活性化合物としては、それぞれ、市販の除草剤、植物成長調節剤、防錆剤、滑剤、抗ブロッキング剤、界面活性剤、帯電防止剤等が例示できる。
Higuchiらの擬定常仮定(参考文献:Higuchiら、J.Pharm.Sci.,vol.50,874(1961))を本発明に適用すると、本発明における活性化合物のブリード速度は成形体の表面積、活性化合物の拡散係数の平方根および活性化合物の過飽和分に比例する。この知見より、活性化合物のブリード速度を制御する場合、例えば、ブリード速度を高めるためには、活性化合物の過飽和分を高めればよい。また、蒸散速度の速い蒸散性可塑剤、例えば、蒸気圧の高い蒸散性可塑剤を用いることにより、使用初期のブリード速度を高めることもできる。
これらの樹脂の中でも、ブリード速度を高めるという観点から、樹脂の分子鎖の運動性が高く、ガラス転移温度が低い樹脂がより好ましい、また、活性化合物との間で化学反応等を起こさないものが好ましい。特に、熱可塑性樹脂は賦形性、経済性に優れ、さらに、熱可塑性樹脂の種類や添加される添加剤の種類を適宜選択することで、活性化合物の溶解性や拡散性を広範囲で制御できることから、活性化合物のブリードを制御する素材としてより好ましい。また、本発明の樹脂組成物を成形加工するとき、活性化合物や蒸散性可塑剤の分解、環境への蒸散、冷却水への溶出等により、活性化合物や蒸散性可塑剤の消失を制御する観点から、活性化合物や蒸散性可塑剤の分解温度または沸点よりも低い温度で成形加工が可能な樹脂を、上記熱可塑性樹脂から選択することが好ましい。
ブリード促進剤の配合量は、前述したように、活性化合物のブリードが始まるタイミングにより、適宜設定できるが、通常、樹脂100 重量部に対して0.1〜100重量部であり、1〜50重量部がより好ましく、5 〜20重量部がさらに好ましい。
本発明の活性化合物、蒸散性可塑剤等の樹脂への配合方法は特に限定されるものではなく、原料を例えば、バンバリーミキサー、スーパーミキサー、押出機等の混合機を用いて混合後、粉末状あるいはペレット状の樹脂組成物とすることができる。
また、活性化合物や蒸散性可塑剤を含まない成形体を、後述する方法で、予め成形し、得られた成形体を活性化合物と蒸散性可塑剤からなる液体に浸漬、あるいは該液体を成形体に塗布する等により活性化合物と蒸散性可塑剤を成形体に含浸・吸収させる等の方法により、活性化合物および蒸散性可塑剤を配合してもよい。
成形体における、本発明の樹脂組成物層は、目的に応じてどの層に配されていてもよい。
〔実施例1〕
スーパーミキサー用いて、約30℃で原材料を投入し、徐々に130℃まで加熱した後、約80℃まで冷却することにより、表1に示す処方の粉末状の樹脂組成物を得た。次に、160℃に加熱したロールを用いて5分間混練して得たシートを、シートペレタイザーでペレット化した。このペレットを用いて、成形温度180℃でプレス成形を実施し、長さ8cm、幅5.2cm、厚み3mmのシートを得た(このシートの表面積は約91cm2であった)。このシートを、35℃に設定した循環式オーブン内に3日間開放条件で吊り下げた後、表面にブリードした成分を、紙(十條キンバリー製、キムワイプ)を用いて拭き取り、その重量を天秤を用いて精秤することにより、開放条件下でのブリード量を測定した。同時に、このシートをアルミホイルで密封した状態で、35℃、3日間のエージングを実施したのち、表面にブリードした成分とアルミホイルに付着した成分とを、上記と同様の方法で拭き取り精秤することにより、密封条件下でのブリード量を測定した。また、高温での保存時の外観状態を把握するため、50℃、3日間密閉保存時のシートの外観状態を目視にて観察した。 これらの結果を表3に示した。開放条件では後述する比較例1と比較して多量のブリードが認められ、密閉条件ではわずかな量のブリードしか認められず、密閉保存時のシートの外観状態も良好であった。
表1に示す処方とした以外は、実施例1と同様にして、開放条件および密封条件で、35℃、3日間のエージングを実施した後、ブリード量を測定した。また、50℃、3日間密閉保存時のシートの外観状態を目視にて観察した。これらの結果を表3に示した。開放条件では後述する比較例2、3と比較して多量のブリードが認められ、密閉条件ではわずかな量のブリードしか認められず、密閉保存時のシートの外観状態も良好であった。
表1に示す処方とした以外は、実施例1と同様にして、開放条件および密封条件で、35℃、3日間のエージングを実施した後、ブリード量を測定した。また、50℃、3日間密閉保存時のシートの外観状態を目視にて観察した。これらの結果を表3に示した。開放条件でブリードが認められるものの、密閉条件でもほぼ同量のブリードが認められ、密閉保存時のシートの外観状態は不良であり、包材に用いたアルミホイルへの付着が多く認められた。
DIDAに変えてDIDAと比べて相溶性が高い可塑剤であるDOAを用いた以外は、比較例3と同様にして、開放条件および密封条件で、35℃、3日間のエージングを実施した後、ブリード量を測定した。また、50℃、3日間密閉保存時のシートの外観状態を目視にて観察した。これらの結果を表3に示した。開放条件、密閉条件のいずれの場合にもほとんどブリードが認められなかった。
スーパーミキサー用いて、表2に示す処方の粉末状の樹脂組成物を得た後、この粉末を成形温度180℃で射出成形することにより、長さ35cm、幅1cm、厚み3mmの動物用首輪形状の成形品を得た(この成形品の表面積は約91cm2であった)。実施例1と同様にして、この成形品を、開放条件および密封条件で、35℃、3日間のエージングした後のブリード量を測定した。また、50℃、3日間密閉保存時の成形品の外観状態を目視にて観察した。これらの結果を表3に示した。開放条件では多量のブリードが認められ、密閉条件ではわずかな量のブリードしか認められず、密閉保存時のシートの外観状態も良好であった。
実施例6で用いた成形品を、23℃および35℃で28日間エージングし、この間のブリード量を7日毎に測定した結果を表4に示した。繰り返し拭き取った際にも、開放条件では比較例5と比較して多量のブリードが認められ、密閉条件ではわずかな量のブリードしか認められなかった。また、開放条件で14日間エージングした際にブリードした成分の組成分析をガスクロマトグラフィーを用いて実施したところ、23℃ではSUM32%、DIDA56%、イソステアリン酸12%であり、35℃ではSUM30%、DIDA58%、イソステアリン酸12%であった。
表2に示す処方とした以外は、実施例3と同様にして、開放条件および密封条件で、35℃、3日間のエージングを実施した後、ブリード量を測定した。また、50℃、3日間密閉保存時のシートの外観状態を目視にて観察した。これらの結果を表3に示した。開放条件でブリードが認められるものの、密閉条件でもほぼ同量のブリードが認められ、密閉保存時のシートの外観状態は不良であった。
比較例5で用いた成形品を、23℃および35℃で28日間エージングし、この間のブリード量を7日毎に測定した結果を表5に示した。繰り返し拭き取った際にも、開放条件でブリードが認められるものの、密閉条件でもほぼ同量のブリードが認められ、密閉保存時のシートの外観状態は不良であり、包材に用いたアルミホイルへの付着が多く認められた。また、繰り返し拭き取った際のブリード量は、減少する傾向にあった。開放条件で14日間エージングした際にブリードした成分の組成分析をガスクロマトグラフィーを用いて実施したところ、23℃ではSUM31%、DIDA69%であり、35℃ではSUM36%、DIDA64%であった。
<樹脂>
・樹脂A:ポリ塩化ビニル(住友化学工業(株)製、商品名:スミリット(平均重合度1300 懸濁重合品))
・樹脂B:ポリ塩化ビニル(住友化学工業(株)製、商品名:スミリット(平均重合度1100 乳化重合品))
<活性化合物>
・ペルメトリン:(住友化学工業(株)製、商品名:エクスミン、EXMと略、20℃での蒸気圧:5.5×10-7mmHg)
・d−フェノトリン(住友化学工業(株)製、商品名:スミスリン、SUMと略、20℃での蒸気圧:1.2×10-6mmHg)
・ピリプロキシフェン(住友化学工業(株)製、商品名:スミラブ、SLVと略、20℃での蒸気圧:2.2×10-6mmHg)
<蒸散性可塑剤>
・コハク酸、グルタル酸、アジピン酸の混合メチルエステル(三建化工株式会社製、DBAMと略、20℃での蒸気圧:0.1mmHg)
・リン酸トリエチル(黒金化成株式会社製、商品名:TEP 、20℃での蒸気圧:0.3mmHg)
<可塑剤>
・アジピン酸ジイソデシル(三建化工株式会社製、DIDAと略、20℃での蒸気圧:1×10-7mmHg)
・アジピン酸ジ2−エチルヘキシル(三建化工株式会社製、DOA と略、20℃での蒸気圧:7×10-7mmHg)
<安定剤>
・O−130P:旭電化工業株式会社(エポキシ化大豆油、二次可塑剤兼用)
LPZ−793L:堺化学製(液状バリウム−亜鉛系安定剤)
イソステアリン酸の配合量を8重量部とした以外は実施例7と同様にして、35℃で3日毎にブリード量(mg/91cm2)を測定した結果を表6に示した。
イソステアリン酸の配合量を4重量部とした以外は実施例7と同様にして、35℃で3日毎にブリード量(mg/91cm2)を測定した結果を表6に示した。
イソステアリン酸の配合量を6重量部とした以外は実施例7と同様にして、本発明の樹脂成形体を得た。この成形体は動物用首輪として優れた効果を示した。またこのシートを、35℃に設定した循環式恒温槽に吊し、約1週間毎に紙(十條キンバリー製、キムワイプ)を用いてこの検体の表裏を拭き取った。拭き取った紙をメタノールで抽出、希釈した後、液体クロマトグラフィーによる有効成分の定量分析を実施することにより、繰り返し拭き取り時のブリード量を測定した。スミスリンおよびスミラブの首輪表面へのブリード量の経時変化を図1および図2に示す。ブリード量は、液体クロマトグラフィーによる定量値を、首輪の表面積(91cm2)と前回の拭き取り実施日からの経過日数(原則7日)で除することにより算出した。有効な活性成分のブリードが約4カ月間持続して認められた。
<樹脂>
・樹脂C:ポリ塩化ビニル(住友化学工業(株)製、商品名:スミリット(平均重合度800 懸濁重合品))
・樹脂B:ポリ塩化ビニル(住友化学工業(株)製、商品名:スミリット(平均重合度1100 乳化重合品))
<活性化合物>
・フェノブカルブ:(住友化学工業(株)製、商品名:オスバック、BAKと略、20℃での蒸気圧:3.3×10-4mmHg)
<安定剤>
・ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルセバテート(日産フェロ株式会社製、商品名:NF90)
・4,4’−イソプロピリデンジフェノールアルキル(C12〜C15)ホスファイト(日産フェロ株式会社製、商品名:NF915)
・ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルセバテートとn−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3,5−t−ブチルフェニル)プロピオネートの混合物(日産フェロ株式会社製、商品名:Nx−803A)
・ビスフェノールAジグリシジルエーテル(日産フェロ株式会社製、商品名:909)
<加工助剤>
・低分子量ポリエチレン(日産フェロ株式会社製、商品名:Lub)
Claims (15)
- 樹脂100重量部、防虫剤、防ダニ剤、忌避剤、防菌・防黴剤、防汚剤、除草剤、植物成長調節剤、経皮治療剤、防錆剤、滑剤、抗ブロッキング剤、界面活性剤、帯電防止剤から選ばれた少なくとも1種以上の活性化合物0.01〜200重量部、20℃における蒸気圧が0.001mmHg以上である蒸散性可塑剤0.1〜100重量部およびブリード促進剤0.1〜100重量部からなり、かつ、該蒸散性可塑剤の20℃における蒸気圧(P1)と該活性化合物の20℃における蒸気圧(P2)とが、式: P1/P2≧2を満たす樹脂組成物。
- 蒸散性可塑剤が、常温(23℃)で液体状のエステルである請求項1記載の樹脂組成物。
- 活性化合物の20℃における蒸気圧が、0.01mmHg未満である請求項1記載の樹脂組成物。
- 活性化合物が、防虫剤、防ダニ剤、忌避剤、防菌・防黴剤、防汚剤から選ばれた少なくとも1種以上である請求項3記載の樹脂組成物。
- 活性化合物が、ピレスロイド系化合物、有機リン系化合物、カーバメート系化合物、幼若ホルモン様化合物から選ばれた少なくとも1種以上である請求項4記載の樹脂組成物。
- 活性化合物が、ピレスロイド系化合物および/または幼若ホルモン様化合物である請求項5記載の樹脂組成物。
- 活性化合物が、カーバメート系化合物および/または幼若ホルモン様化合物である請求項5記載の樹脂組成物。
- 樹脂が、ポリ塩化ビニル樹脂である請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 20℃における蒸気圧が0.0001mmHg未満である可塑剤0.1〜200重量部を添加してなる請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 蒸散性可塑剤の20℃における蒸気圧(P1)と活性化合物の20℃における蒸気圧(P2)が、式: P1/P2≧5を満たす請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
- ブリード促進剤が、カルボン酸である請求項1記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形して得られる成形体。
- 請求項4〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形して得られる動物用首輪。
- 請求項4〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形して得られる動物用イヤータッグ。
- 請求項4〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形して得られる動物用メダル。
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