JP3858618B2 - 液晶装置、その製造装置及び製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラビング密度を一定にして配向規制力を均一化した液晶装置、その製造装置及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶ライトバルブ等の液晶装置は、ガラス基板、石英基板等の2枚の基板間に液晶を封入して構成される。液晶ライトバルブでは、一方の基板に、例えば薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、TFTと称す)をマトリクス状に配置し、他方の基板に対向電極を配置して、両基板間に封止した液晶層の光学特性を画像信号に応じて変化させることで、画像表示を可能にする。
【0003】
TFTを配置したTFT基板と、TFT基板に対向配置される対向基板とは、別々に製造される。両基板は、パネル組立工程において高精度に貼り合わされた後、液晶が封入される。
【0004】
パネル組立工程においては、先ず、各基板工程において夫々製造されたTFT基板と対向基板との対向面、即ち、対向基板及びTFT基板の液晶層と接する面上に配向膜が形成され、次いでラビング処理が行われる。次に、一方の基板上の端辺に接着剤となるシール部が形成される。TFT基板と対向基板とをシール部を用いて貼り合わせ、アライメントを施しながら圧着硬化させる。シール部の一部には切り欠きが設けられており、この切り欠きを介して液晶を封入する。
【0005】
配向膜を形成してラビング処理を施すことで、電圧無印加時の液晶分子の配列が決定される。配向膜は、例えばポリイミドを約数十ナノメーターの厚さで塗布することにより形成される。液晶層に対向する両基板の面上に配向膜を形成することで、液晶分子を基板面に沿って配向処理することができる。ラビング処理は、形成された配向膜に異方性を発現させるものであり、配向膜に一定方向のラビング処理を施すことで、液晶分子の配列を規定することができる。
【0006】
図12はラビング装置を示す模式図である。
【0007】
ステージ110上に液晶基板101が載置されている。ステージ110は、水平方向に移動して基板101を搬送する。ステージ110の搬送路の上方にはラビングロール112が配設されている。ラビングロール112は周面にレーヨンのラビング布103が取り付けられている。ラビングロール112を回転させながらステージ110を搬送させて、ラビングロール112の回転及びステージ110の搬送によって、ラビング布103で基板全面を擦ってラビングを行う。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、配向膜に付与される配向規制力は、ラビング密度の影響を受ける。ラビング密度が高い場合には強い配向規制力が得られ、ラビング密度が低い場合には配向規制力は弱くなる。
【0009】
ラビング密度RSは下記(1)式によって与えられる。
【0010】
ラビング密度RS=NM(2πRf/V−1) …(1)
なお、N:擦り回数、M:ロール押し込み量、R:ロール径、f:ロール回転数、V:送り速度(テーブル速度)である。
【0011】
従って、N:擦り回数が多いほど、M:ロール押し込み量が大きいほど、R:ロール径が大きいほど、f:ロール回転数が多いほど、V:送り速度(テーブル速度)が小さいほどラビング密度は高くなる。
【0012】
しかしながら、上記(1)式に従って、N,M,R,f,Vを厳密に制御した場合であっても、各基板の配向規制力にむらが生じてしまうという問題点があった。特に、ラビング工程の比較的初期のロットにおいては、配向規制力のムラの発生が頻発する。配向規制力が弱くなると液晶のチルトムラが生じやすく、逆に、配向規制力が強くなるとリバースチルトドメインが生じやすくなる。このようなチルトむらを有する液晶基板を用いて液晶パネルを構成すると、画面内にチルトむらが表示されてしまい表示品質が低下する。
【0013】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、ラビング時に加熱,冷却する機構を備えることによりラビング密度を一定にして配向規制力にムラが生じることを防止することができる液晶装置、その製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る液晶装置の製造装置は、配向膜が形成された液晶基板が載置されるステージと、ラビング布が取り付けられたラビングロールによって前記配向膜を擦ってラビング処理を行う場合に前記ステージ上の前記液晶基板の温度を制御する温度制御手段とを具備したことを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、温度制御手段によって、ラビング処理時には液晶基板の温度が制御される。温度制御によって液晶基板全域のラビング密度を一様に制御することができる。
【0016】
本発明に係る液晶装置の製造装置は、基板上に形成された配向膜を擦ってラビング処理を行うためのラビング布が取り付けられたラビングロールと、ステージ上に載置された前記基板が前記ラビングロールによってラビング処理される場合に前記ラビング布の温度を制御する温度制御手段とを具備したことを特徴とする。
また、本発明に係る液晶装置の製造装置は、基板上に形成された配向膜を擦ってラビング処理を行うためのラビング布が取り付けられたラビングロールと、
ステージ上に載置された前記基板が前記ラビングロールによってラビング処理される場合に、前記ラビングロールに設けられた加熱手段を含めて前記ラビング布の温度を制御する温度制御手段とを具備したことを特徴とする。
また、本発明に係る液晶装置の製造装置は、前記加熱手段は、電熱線であることを特徴とする。
また、本発明に係る液晶装置の製造装置は、前記加熱手段は、前記ラビングロールの表面近傍に内臓されていることを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、温度制御手段によって、ラビング処理時にはラビング布の温度が制御される。温度制御によって液晶基板全域のラビング密度を一様に制御することができる。
【0018】
本発明に係る液晶装置の製造装置は、配向膜が形成された液晶基板が載置されるステージと、前記配向膜を擦ってラビング処理を行うラビング布が取り付けられたラビングロールと、前記ステージ上の液晶基板を前記ラビングロールによってラビング処理する場合に前記ステージ上の前記液晶基板及び前記ラビング布の少なくとも一方の温度を制御する温度制御手段とを具備したことを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、ラビング処理時には、ステージ上に載置された液晶基板及びラビングロールに取り付けられたラビング布の少なくとも一方の温度が温度制御手段によって制御される。これにより、液晶基板全域のラビング密度を一様に制御することができる。
【0020】
前記温度制御手段は、加熱手段であることを特徴とする。
【0021】
このような構成によれば、液晶基板、ラビング布又は液晶基板及びラビング布の温度を加熱することができる。これにより、ラビング工程の例えば初期においても、適正な温度を得ることができ、ラビング密度を均一にすることができる。
【0022】
また、前記温度制御手段は、加熱手段及び放熱手段であることを特徴とする。
【0023】
このような構成によれば、液晶基板、ラビング布又は液晶基板及びラビング布の温度を加熱すると共に放熱させることができる。これにより、ラビング工程の例えば初期及び所定時間経過後であっても、適正な温度を得ることができ、ラビング密度を均一にすることができる。
【0024】
また、前記温度制御手段は、ラビング工程中において、前記液晶基板、前記ラビング布又は前記液晶基板及びラビング布の温度を所定の温度範囲内に設定することを特徴とする。
【0025】
このような構成によれば、ラビング工程中には、常に適正な温度が得られ、ラビング密度を均一にすることができる。
【0026】
本発明に係る液晶装置の製造方法は、ステージ上に載置される液晶基板の温度を制御する温度制御手順と、ステージ又はラビング布が取り付けられたラビングロールを移動させて、前記ラビング布によって前記液晶基板上に形成された配向膜を擦ってラビング処理を行う手順とを具備したことを特徴とする。
【0027】
このような構成によれば、ラビング処理を行う前に、ステージ上に載置される液晶基板の温度が制御される。液晶基板の温度が所定の温度に到達すると、ステージ又はラビングロールを移動させて、ラビング布によって配向膜を擦ってラビング処理が行われる。ラビング処理時には液晶基板の温度が所定の温度に到達しているので、基板全域で一定のラビング密度が得られる。
【0028】
本発明に係る液晶装置の製造方法は、ラビングロールに取り付けられたラビング布の温度を制御する温度制御手順と、配向膜が形成された液晶基板が載置されるステージ又は前記ラビングロールを移動させて、前記ラビング布によって前記配向膜を擦ってラビング処理を行う手順とを具備したことを特徴とする。
【0029】
このような構成によれば、ラビング処理を行う前に、ラビングロールに取り付けられたラビング布の温度が制御される。ラビング布の温度が所定の温度に到達すると、ステージ又はラビングロールを移動させて、ラビング布によって配向膜を擦ってラビング処理が行われる。ラビング処理時にはラビング布の温度が所定の温度に到達しているので、基板全域で一定のラビング密度が得られる。
【0030】
本発明に係る液晶装置の製造方法は、ステージ上に載置される液晶基板の温度及びラビングロールに取り付けられたラビング布の温度の少なくとも一方を制御する温度制御手順と、前記ステージ又は前記ラビングロールを移動させて、前記ラビング布によって前記配向膜を擦ってラビング処理を行う手順とを具備したことを特徴とする。
【0031】
このような構成によれば、ラビング処理を行う前に、液晶基板及びラビング布の少なくとも一方の温度が制御される。液晶基板及びラビング布の少なくとも一方の温度が所定の温度に到達すると、ステージ又はラビングロールを移動させて、ラビング布によって配向膜を擦ってラビング処理が行われる。ラビング処理時には液晶基板及びラビング布の少なくとも一方の温度が所定の温度に到達しているので、基板全域で一定のラビング密度が得られる。
【0032】
前記温度制御手順は、加熱処理によって温度を変化させることを特徴とする。
【0033】
このような構成によれば、例えば、ラビング処理を行う前に、液晶基板、ラビング布又は液晶基板及びラビング布の温度が加熱される。これにより、ラビング工程の例えば初期においても、適正な温度を得ることができ、ラビング密度は均一となる。
【0034】
また、前記温度制御手順は、加熱処理及び放熱処理によって温度を変化させることを特徴とする。
【0035】
このような構成によれば、例えば、ラビング処理を行う前に、液晶基板、ラビング布又は液晶基板及びラビング布の温度が加熱され、ラビング処理の開始から所定の時間が経過すると放熱される。これにより、ラビング工程の例えば初期及び所定時間経過後であっても、適正な温度を得ることができ、ラビング密度は均一となる。
【0036】
本発明に係る液晶装置は、前記液晶装置の製造装置によってラビング処理されて製造されたことを特徴とする。
【0037】
このような構成によれば、ラビング密度が均一であるので、配向規制力が一様であり、チルトムラやリバースチルトが防止される。
【0038】
本発明に係る液晶装置は、前記液晶装置の製造方法によってラビング処理されて製造されたことを特徴とする。
【0039】
このような構成によれば、ラビング密度が均一であるので、配向規制力が一様であり、チルトムラやリバースチルトが防止される。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る液晶装置の製造装置を示す説明図である。図2は液晶装置の画素領域を構成する複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。図3はTFT基板等の素子基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図であり、図4は素子基板と対向基板とを貼り合わせて液晶を封入する組立工程終了後の液晶装置を、図3のH−H'線の位置で切断して示す断面図である。また、図5は液晶装置を詳細に示す断面図である。図6はパネル組立工程を示すフローチャートである。図7及び図8は配向規制力のムラの原因を説明するための説明図である。
【0041】
先ず、図7及び図8を参照して、配向規制力のムラの原因について説明する。図7及び図8は複数の液晶基板が形成されたマザーガラス基板を示しており、図12の従来装置によって製造したものを示している。図7(a)乃至(f)はマザーガラス基板の状態で配向膜にラビング処理を施す場合のラビング工程の最初のマザーガラス基板から6枚目までのマザーガラス基板のラビング処理後の状態を夫々示している。
【0042】
配向規制力のムラの原因を調べるために、ラビング工程による経時的なむらの変化を計測した。各マザーガラス基板はラビングステージ上において、位置決め用の切り欠きであるオリエンテーション・フラットを利用して位置決めされる。ラビングロールによって、矢印に示すように、図7の上方から下方(オリエンテーション・フラット側)に向かってラビングを行う。そうすると、図7(a)の工程最初のマザーガラス基板では、楕円で囲った部分、即ち、ラビングロールが基板表面を擦り始める部分において配向規制力が低い部分(以下、配向規制力低下領域という)が生じる。そして、図7(a)乃至(e)に示すように、配向規制力低下領域は工程が進行するにつれて次第に小さくなり、図7(f)に示すよう、工程の開始から6枚目のマザーガラス基板では、配向規制力のムラは生じない。
【0043】
また、図8(a)乃至(f)はラビング工程の開始から所定の時間経過後のマザーガラス基板からそれ以後の6枚目までのマザーガラス基板のラビング処理後の状態を夫々示している。
【0044】
図8(a)に示すように、ラビング工程の開始から所定時間経過後では、配向規制力にムラは生じていない。図8(b)に示す次のマザーガラス基板には、楕円で囲った部分、即ち、ラビングロールが基板表面を擦り終わる部分において配向規制力が高い部分(以下、配向規制力増大領域という)が生じる。そして、図8(b)乃至(f)に示すように、配向規制力増大領域は工程が進行するにつれて次第に大きくなる。
【0045】
即ち、ラビング工程の初期にはラビングロールの擦り始めの領域において配向規制力が低い部分が生じ、ラビング工程の中期には配向規制力は一様で、ラビング工程の開始から所定の期間が経過するとラビングロールの擦り終わりの領域において配向規制力が高い部分が生じていることから、配向規制力の変化はラビングロールの摩擦熱が関係するものと考えられる。ラビング時の熱が高いほど、エネルギーが供給量が大きくなって分子の揺らぎが大きくなり、配向膜を形成するポリイミド分子の配列状態、即ち、ラビング密度が高くなるものと考えられる。
【0046】
ラビング時の熱が所定の値よりも小さい場合には、配向規制力が低下し、ラビング時の熱が所定の値よりも大きい場合には、配向規制力が増大してしまうのである。
【0047】
そこで、本実施の形態は、温度管理を行うことで配向規制力のむらの発生を防止するようにしたものである。
【0048】
次に、図2乃至図5を参照して、液晶パネルの構造について説明する。
【0049】
液晶パネルは、図3及び図4に示すように、TFT基板等の素子基板10と対向基板20との間に液晶50を封入して構成される。素子基板10上には画素を構成する画素電極等がマトリクス状に配置される。図2は画素を構成する素子基板10上の素子の等価回路を示している。
【0050】
図2に示すように、画素領域においては、複数本の走査線3aと複数本のデータ線6aとが交差するように配線され、走査線3aとデータ線6aとで区画された領域に画素電極9aがマトリクス状に配置される。そして、走査線3aとデータ線6aの各交差部分に対応してTFT30が設けられ、このTFT30に画素電極9aが接続される。
【0051】
TFT30は走査線3aのON信号によってオンとなり、これにより、データ線6aに供給された画像信号が画素電極9aに供給される。この画素電極9aと対向基板20に設けられた対向電極21との間の電圧が液晶50に印加される。また、画素電極9aと並列に蓄積容量70が設けられており、蓄積容量70によって、画素電極9aの電圧はソース電圧が印加された時間よりも例えば3桁も長い時間の保持が可能となる。蓄積容量70によって、電圧保持特性が改善され、コントラスト比の高い画像表示が可能となる。
【0052】
図5は、一つの画素に着目した液晶パネルの模式的断面図である。
【0053】
ガラスや石英等の素子基板10には、LDD構造をなすTFT30が設けられている。TFT30は、チャネル領域1a、ソース領域1d、ドレイン領域1eが形成された半導体層に絶縁膜2を介してゲート電極をなす走査線3aが設けられてなる。TFT30上には第1層間絶縁膜4を介してデータ線6aが積層され、データ線6aはコンタクトホール5を介してソース領域1dに電気的に接続される。データ線6a上には第2層間絶縁膜7を介して画素電極9aが積層され、画素電極9aはコンタクトホール8を介してドレイン領域1eに電気的に接続される。
【0054】
走査線3a(ゲート電極)にON信号が供給されることで、チャネル領域1aが導通状態となり、ソース領域1dとドレイン領域1eとが接続されて、データ線6aに供給された画像信号が画素電極9aに与えられる。
【0055】
また、半導体層にはドレイン領域1eから延びる蓄積容量電極1fが形成されている。蓄積容量電極1fは、誘電体膜である絶縁膜2を介して容量線3bが対向配置され、これにより蓄積容量70を構成している。画素電極9a上にはポリイミド系の高分子樹脂からなる配向膜16が積層され、図1の装置によって所定方向にラビング処理されている。
【0056】
一方、対向基板20には、TFTアレイ基板のデータ線6a、走査線3a及びTFT30の形成領域に対向する領域、即ち各画素の非表示領域において第1遮光膜23が設けられている。この第1遮光膜23によって、対向基板20側からの入射光がTFT30のチャネル領域1a、ソース領域1d及びドレイン領域1eに入射することが防止される。第1遮光膜23上に、対向電極(共通電極)21が基板20全面に亘って形成されている。対向電極21上にポリイミド系の高分子樹脂からなる配向膜22が積層され、図1の装置によって所定方向にラビング処理されている。
【0057】
そして、素子基板10と対向基板20との間に液晶50が封入されている。これにより、TFT30は所定のタイミングでデータ線6aから供給される画像信号を画素電極9aに書き込む。書き込まれた画素電極9aと対向電極21との電位差に応じて液晶50の分子集合の配向や秩序が変化して、光を変調し、階調表示を可能にする。
【0058】
図3及び図4に示すように、対向基板20には表示領域を区画する額縁としての第2遮光膜42が設けられている。第2遮光膜42は例えば第1遮光膜23と同一又は異なる遮光性材料によって形成されている。
【0059】
第2遮光膜42の外側の領域に液晶を封入するシール材41が、素子基板10と対向基板20間に形成されている。シール材41は対向基板20の輪郭形状に略一致するように配置され、素子基板10と対向基板20を相互に固着する。シール材41は、素子基板10の1辺の一部において欠落しており、貼り合わされた素子基板10及び対向基板20相互の間隙には、液晶50を注入するための液晶注入口78が形成される。液晶注入口78より液晶が注入された後、液晶注入口78を封止材79で封止するようになっている。
【0060】
素子基板10のシール材41の外側の領域には、データ線駆動回路61及び実装端子62が素子基板10の一辺に沿って設けられており、この一辺に隣接する2辺に沿って、走査線駆動回路63が設けられている。素子基板10の残る一辺には、画面表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路63間を接続するための複数の配線64が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、素子基板10と対向基板20との間を電気的に導通させるための導通材65が設けられている。
【0061】
次に、図6を参照してパネル組立工程について説明する。素子基板10(TFT基板)と対向基板20とは、別々に製造される。ステップS1 ,S6 で夫々用意されたTFT基板及び対向基板20に対して、次のステップS2 ,S7 では、配向膜16,22となるポリイミド(PI)を形成する。次に、ステップS3 ,S8 において、素子基板10表面の配向膜16及び対向基板20表面の配向膜22に対して、ラビング処理を施す。
【0062】
次に、ステップS4 ,S9 において、洗浄工程を行う。この洗浄工程は、ラビング処理によって生じた塵埃を除去するためのものである。
【0063】
洗浄工程が終了すると、ステップS5 において、シール材41、及び導通材65(図3参照)を形成する。次に、ステップS10で、素子基板10と対向基板20とを貼り合わせ、ステップS11でアライメントを施しながら圧着し、シール材41を硬化させる。最後に、ステップS12において、シール材41の一部に設けた切り欠きから液晶を封入し、切り欠きを塞いで液晶を封止する。
【0064】
図1において、ステージ110は、上面に基板101が配置されるようになっている。基板101は、例えば、アレイ製造によって図5の素子基板10が多数形成されているマザーガラス基板である。基板101は図6のステップS2 における配向膜形成工程までが終了したものである。ステージ110は、基板101の表面に平行な所定方向に移動自在である。ステージ110の移動路、即ち、基板101の搬送路の上方には、ラビングロール112が設けられている。
【0065】
ラビングロール112は、円柱形状に構成され、円中心を軸にして周方向に回動自在である。ラビングロール112の周面には、例えばレーヨンで形成されたラビング布103が取り付けられている。ラビング布103の表面からは毛先104が伸びている。ラビングロール112とステージ110とは、ラビング布103による基板101へのラビング圧が所定値になるように、垂直方向の位置決めが行われている。
【0066】
ラビング時には、ラビング布103が基板101に接する部分では、ステージ110の進行方向(図1では紙面右方向)の逆方向となるように、ラビングロール112を回転させる(図1では時計方向)。基板101がラビング布103に所定の圧力で接しながら、その表面全体が擦られるように、ラビングロール112を回転させながら、ステージ110を搬送する。
【0067】
本実施の形態においては、ステージ110は、表面近傍において電熱線113が内蔵されており、基板101が載置される表面はホットプレートを構成するようになっている。電熱線113は発熱してステージ110の表面の温度を上昇させて、載置された基板101を加熱することができるようになっている。
【0068】
また、ラビングロール112には、表面近傍において電熱線115が内蔵されている。電熱線115は発熱してラビングロール112の表面の温度を上昇させて、ラビング布103を加熱することができるようになっている。
【0069】
次に、このように構成された実施の形態の作用について説明する。
【0070】
複数の素子基板が形成された基板101のラビング処理について説明する。図6の配向膜形成工程を終了した基板101をステージ110上に載置する。次いで、ステップS3 のラビング工程が実施される。
【0071】
本実施の形態においては、電熱線113の発熱によって、ステージ110表面の温度は比較的高い温度になっており、基板101は、ステージ110上に載置されることによって加熱されて、温度が所定の温度に到達する。一方、ラビングロール112に設けた電熱線115も発熱しており、ラビングロール112表面のラビング布103も加熱されて所定の温度に到達する。
【0072】
従って、ラビング工程の開始時点において、基板101表面及びラビング布103は所定の温度に到達している。なお、電熱線113,115の発熱タイミングは、ラビング工程の開始時点において基板101表面及びラビング布103の温度が所定値になるように適宜設定する。また、基板101表面及びラビング布103の温度が所定値に到達するまで、ラビング処理の開始を遅らせてもよい。
【0073】
この状態で、ステージ110をラビングロール112側に搬送する。また、ラビングロール112を回転させる。ラビングロール112が回転することによって、ラビング布103の毛先104によって基板101表面が擦られ、ステージ110の進行に伴って、ラビング布103は基板101の表面を擦りながら進行する。こうして、基板101の全面がラビング処理される。
【0074】
ラビング布103と基板101表面との摩擦によって摩擦熱が発生し、ラビング布103が最初に接触する基板101表面端部(以下、接触開始点という)での温度に比べて、ラビング布103が離間する基板101表面端部(以下、接触終了点という)での温度は高い。しかし、電熱線113,115の発熱によって、基板101表面及びラビング布103は所定の温度に到達しており、ラビング工程の初期においても、接触開始点の温度と接触終了点の温度との差は、比較的小さい。
【0075】
従って、熱の影響の点では、接触開始点から接触終了点までの基板101表面全域に亘って、略均一のラビング密度が得られる。
【0076】
このように本実施の形態においては、電熱線113,115によって基板101及びラビング布103を加熱しており、ラビング工程初期において基板101上の全域において一様な温度分布を得ることができる。これにより、ラビング工程の初期から基板全域に亘って一様なラビング密度を得ることができる。従って、ラビング工程の初期に製造した基板であっても、画面全域で一様な配向規制力を得ることができる。また、工程のいずれのロットにおける基板同士の配向規制力についても均一にすることができる。これにより、本実施の形態の装置によって製造した基板によって液晶パネルを構成すると、チルトむらの発生が抑制された高い表示品質の液晶パネルを得ることができる。
【0077】
なお、マザーガラス基板の状態でのラビング処理だけでなく、素子基板又は対向基板単体でのラビング処理にも適用可能である。また、複数の対向基板をパレット上に配置した状態でのラビング処理にも適用可能である。また、ラビング処理のためにステージ110を水平方向に移動させたが、ラビングロール112側を移動させるようにしてもよい。
【0078】
また、本実施の形態においては、ステージ110とラビングロール112の両方に電熱線を設けたが、いずれか一方に設けても同様の効果が得られることは明らかである。
【0079】
更に、本実施の形態においては、加熱することによってラビング密度を変更することも可能である。一般的には、ロール押し込み量を強くすることでラビング密度を大きくしている。しかし、この場合には、配向膜(ポリイミド)の削れカスが多くなってしまう。これに対し、本実施の形態においては、加熱によってラビング密度を変更することができるので、ラビング密度を大きくする場合でも削れカスが増大するという問題は発生しない。
【0080】
図9は本発明の第2の実施の形態に係る液晶装置の製造装置を示す説明図である。図9において図1と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0081】
本実施の形態は温度を測定して電熱線の発熱をフィードバック制御することによって配向規制力のむらの発生を確実に防止すると共に、ラビング工程の時間が長くなった場合でも、配向規制力の過剰付与を防止するものである。
【0082】
図7及び図8の測定結果から明らかなように、基板全域で配向規制力を一様にすることを可能とするためには、温度が所定の下限温度と上限温度との間の所定の温度範囲に制御される必要がある。本実施の形態をこの制御のために、温度を測定するセンサ121,122を有している。また、ステージ110表面近傍には電熱線126が内蔵されており、電熱線126は通電量が制御されることによって、ステージ110表面の温度を適宜設定することができるようになっている。また、ラビングロール112の表面近傍には電熱線127が内蔵されており、電熱線127は通電量が制御されることによって、ラビングロール112表面のラビング布103の温度を適宜設定することができるようになっている。
【0083】
センサ121は、ステージ110表面の温度を検出する。また、センサ122はラビングロール112の表面温度を検出する。センサ121,122の位置は、電熱線126,127の影響を直接受けない所定の位置に設定可能である。なお、センサ121はステージ110表面の温度を、センサ122はラビングロール112の表面温度を検出するようになっているが、図10に示すように、夫々基板101の表面温度とラビング布103の表面温度を、非接触式の赤外放射温度計131,132などにより直接検出してもよい。
【0084】
センサ121,122が検出する温度と、実際の工程において配向規制力を基板全域で一様にすることが可能な温度範囲との関係を予め求め、センサ121,122の検出温度によって、配向規制力を基板全域で一様にすることが可能な下限温度と上限温度とを判断する。計測部123は、センサ121,122の出力が与えられて、温度の測定結果をコントローラ124に出力する。
【0085】
コントローラ124は、温度の測定結果に従って、センサ121,122の検出温度が配向規制力を基板全域で一様にすることが可能な下限温度と上限温度との範囲内の温度になるように、温度制御部125を制御する。
【0086】
温度制御部125は、コントローラ124に制御されて、電熱線126,127のオン,オフ制御及び通電量の制御を行うことで、電熱線126,127の発熱量を制御するようになっている。駆動制御部128は、コントローラ124に制御されて、ステージ110上への基板101の搬送、ステージ110の移動及びラビングロール112の回転等の駆動制御を行うようになっている。
【0087】
次に、このように構成された実施の形態の動作について図11のフローチャートを参照して説明する。
【0088】
図11に示すラビング工程においては、ステップS21において、図6のステップS2 の配向膜形成工程を終了した基板101がステージ110上に搬送されて載置される。次のステップS22では、温度の測定が行われる。センサ121,122の温度検出結果は計測部123に供給されて、ステージ110表面の温度及びラビングロール112表面の温度が計測される。
【0089】
温度の計測結果はコントローラ124に供給される。コントローラ124は、ステップS23において、温度計測結果が下限温度以下であるか否かを判定する。いま、ラビング工程の初期では、下限温度以下であることが多く、この場合には、コントローラ124は温度制御部125を制御して電熱線126,127を発熱させる。
【0090】
温度制御部125は、ステップS24において電熱線126,127に通電を行って発熱させる。これにより、ステージ110表面及びラビングロール112表面の温度が上昇する。ステップS22,S23において、センサ121,122の検出温度が下限温度以下であるか否かが判定される。所定時間経過して温度が下限温度よりも大きくなると、コントローラ124は加熱を停止させ、ステップS25において上限温度以上になったか否かを判定する。上限温度に到達していない場合には、コントローラ124は、駆動制御部128を制御してラビングを開始させる。
【0091】
即ち、駆動制御部128はステージ110を進行させると共に、ラビングロール112を回転させる。これにより、ラビングロール112表面のラビングロール112によって、ステージ110上の基板101表面がラビング処理される。この場合には、ステージ110及びラビング布103の加熱によって、ラビング時の温度は十分な温度になっており、ラビング布103と基板101表面との摩擦熱が発生しても、接触開始点と接触終了点における温度差は比較的小さい。これにより、基板101表面で均一なラビング密度が得られ、基板全域に亘って一様な配向規制力が得られる。
【0092】
ラビング処理すべき基板が残っている場合には、処理をステップS28からステップS21に移行して、次の基板をステージ110上に載置する。以後、ステップS21〜S28の処理が繰返される。
【0093】
ラビング工程が所定時間経過すると、摩擦熱の影響によってラビング時の温度が上昇する。コントローラ124は、ステップS25において、センサ121,122の出力によって、均一な配向規制力が得られなくなる上限温度以上になったことを検出すると、ステップS26に移行して放熱を行う。コントローラ124は、ステップS25,S26によって、基板101及びラビング布103の温度が適正な温度に低下するまで待機する。
【0094】
コントローラ124は、ステップS25において、温度が上限温度よりも低くなったことを検出すると、次のステップS27に移行して、ラビング処理を開始させる。これにより、ラビング処理は常に下限温度と上限温度との間の適正な温度範囲で行われ、確実に配向規制力が一様な基板を製造することができる。
【0095】
このように、本実施の形態においては、温度を検出してフィードバック制御を行っており、確実に配向規制力が一様な基板を製造することができる。
【0096】
なお、本実施の形態においても、電熱線126,127のいずれか一方は省略可能であり、同様に、センサ121,122のいずれか一方も省略可能である。
【0097】
また、上記実施の形態においては、上限温度以上になった場合には、放熱するようにしたが、強制的に冷却することによって、工程に要する時間を短縮することも可能である。例えば、送風装置や冷却装置を備えることで、強制的に冷却してラビング処理が中断されることを防止することができる。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ラビング時に加熱,冷却する機構を備えることによりラビング密度を一定にして配向規制力にムラが生じることを防止することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る液晶装置の製造装置を示す説明図。
【図2】液晶装置の画素領域を構成する複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図。
【図3】TFT基板等の素子基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図。
【図4】素子基板と対向基板とを貼り合わせて液晶を封入する組立工程終了後の液晶装置を、図3のH−H'線の位置で切断して示す断面図。
【図5】液晶装置を詳細に示す断面図。
【図6】パネル組立工程を示すフローチャート。
【図7】配向規制力のムラの原因を説明するための説明図。
【図8】配向規制力のムラの原因を説明するための説明図。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る液晶装置の製造装置を示す説明図。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る液晶装置の製造装置を示す説明図。
【図11】第2の実施の形態の動作を説明するためのフローチャート。
【図12】従来例を示す模式図である。
【符号の説明】
101…基板
112…ラビングロール
103…ラビング布
113,115…電熱線
110…ステージ
Claims (7)
- 基板上に形成された配向膜を擦ってラビング処理を行うためのラビング布が取り付けられたラビングロールと、
ステージ上に載置された前記基板が前記ラビングロールによってラビング処理される場合に、前記ラビングロールに設けられた加熱手段を含めて前記ラビング布の温度を制御する温度制御手段とを具備したことを特徴とする液晶装置の製造装置。 - 前記加熱手段は、電熱線であることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置の製造装置。
- 前記加熱手段は、前記ラビングロールの表面近傍に内臓されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一つに記載の液晶装置の製造装置。
- 前記温度制御手段は、ラビング工程中において、前記基板、前記ラビング布又は前記基板及びラビング布の温度を所定の温度範囲内に設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の液晶装置の製造装置。
- ラビングロールに取り付けられたラビング布の温度を、前記ラビングロールに設けられた加熱手段を含めて制御する温度制御手順と、
配向膜が形成された基板が載置されるステージ又は前記ラビングロールを移動させて、前記ラビング布によって前記配向膜を擦ってラビング処理を行う手順とを具備したことを特徴とする液晶装置の製造方法。 - 請求項1乃至4のいずれか1つの液晶装置の製造装置によってラビング処理されて製造されたことを特徴とする液晶装置。
- 請求項5の液晶装置の製造方法によってラビング処理されて製造されたことを特徴とする液晶装置。
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